で表される含フッ素単量体、および、これらと共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であることを特徴とする放熱材料用含フッ素エラストマー組成物に関する。
熱伝導性窒化物フィラーは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、ガラス転移温度が25℃以下である非晶質の含フッ素エラストマー、および、熱伝導性窒化物フィラーを含む含フッ素エラストマー組成物であって、
含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド(VdF)、一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12で直鎖又は分岐していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体、および、これらと共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であることを特徴とする。
【0012】
本願発明で使用する含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体からなる共重合体である。
【0013】
含フッ素エラストマーは、特定の構成を有することによって、極めて低いガラス転移温度を示す。また、上記一般式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位を含む含フッ素ポリマーは、耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性を有しており、アンモニアにより劣化しにくい。また、架橋特性に優れており、製造が容易であるという利点もある。また、非晶質であることが好ましい。
【0014】
含フッ素エラストマーは、ガラス転移温度が25℃以下である。また、0℃以下とすることもできる。ガラス転移温度は、−5℃以下がより好ましく、−10℃以下が更に好ましい。更には−20℃以下とすることも可能である。含フッ素エラストマーは、このように極めて低いガラス転移温度を示すので、低温特性(耐寒性)にも優れる。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(日立テクノサイエンス社製、X−DSC823e)を用い、−75℃まで冷却した後、試料10mgを20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との交点を示す温度をガラス転移温度とした。
【0015】
耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、一般式(1)で表される含フッ素単量体は、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rfの炭素数は1〜6であることが好ましい。一般式(1)で表される含フッ素単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CFCF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
3等があげられ、なかでも、CH
2=CFCF
3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることが好ましい。
【0016】
含フッ素エラストマーは、更に、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体以外の他の単量体からなるものであってもよい。他の単量体としては、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種又は2種以上の単量体を使用してよい。
【0017】
他の単量体は、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル、及び、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、及び、架橋部位を与える単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。更に好ましくはTFEである。TFEのみであることも好ましい形態の一つである。
【0018】
含フッ素エラストマーにおいて、架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
3
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、又は臭素原子である。)で表される単量体、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
4
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
4は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は−CH
2OHである。)で表される単量体、があげられる。
【0019】
なかでも、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2I、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOH、及び、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CH
2OHからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2Iが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させて、圧縮永久歪を良好にすることができるので、特に好ましい。その他、後述する共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体として例示される単量体も好適に使用できる。
【0020】
含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比は、85/15〜20/80が好ましい。ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比は、22/78以上が好ましく、50/50以上がより好ましく、60/40以上が更に好ましい。また、他の単量体単位は、全単量体単位の0〜50モル%であるが、1〜40モル%がより好ましい。
【0021】
含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド、一般式(1)で表される含フッ素単量体(1)及び他の単量体のみからなる共重合体であることが好ましい。
【0022】
含フッ素エラストマーは、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有するものであってもよい。その場合、ヨウ素原子及び臭素原子の含有量の合計は0.001〜10重量%が好ましい。
【0023】
耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、含フッ素エラストマーは、
ビニリデンフルオライド及び含フッ素単量体(1)のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜22/78である共重合体(I)、
ビニリデンフルオライド、含フッ素単量体(1)、および、これらと共重合可能な他の単量体のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%である共重合体(II)、及び、
ビニリデンフルオライド、含フッ素単量体(1)、および、これらと共重合可能な他の単量体からなり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である共重合体(III)、
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
共重合体(I)は、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体のみからなり、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜22/78である。耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、共重合体(I)は、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜60/40が好ましい。
【0025】
共重合体(II)は、ビニリデンフルオライド、式(1)で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体のみからなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%である。耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、共重合体(II)は、ビニリデンフルオライド単位/式(1)で表される含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜50/50が好まく、85/15〜60/40がより好ましい。
【0026】
耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、共重合体(II)は、他の単量体単位は、全単量体単位の1〜40モル%が好ましい。他の単量体としては、上述したものが好適である。
【0027】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド、下記一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び上記含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体からなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜20/80であり、他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%であり、ガラス転移温度が25℃以下であり、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である。
【0028】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体、又は、ビニリデンフルオライド、下記一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体、並びに、ビニリデンフルオライド及び上記含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体のみからなる共重合体であることが好ましい。この場合、共重合体(III)は、実質的にビニリデンフルオライド、及び、式(1)で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体、若しくは、実質的にビニリデンフルオライド、式(1)で表される含フッ素単量体、及び上記他の単量体のみからなる共重合体であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、反応性乳化剤を使用して製造したものであってもよい。また、連鎖移動剤に由来するI末端等を含んでいてもよい。
【0029】
共重合体(III)は、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CH
2=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)で表される含フッ素単量体のみからなる共重合体であり、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が80/20〜20/80であることがより好ましい。
【0030】
共重合体(III)は、また、ビニリデンフルオライド単位/含フッ素単量体(1)単位のモル比が85/15〜50/50であり、他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であることも好ましい。
【0031】
各単量体単位の含有量は、NMR法により測定する値である。
【0032】
共重合体(III)は、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%である。ヨウ素原子及び臭素原子の含有量の合計は、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましい。ヨウ素含有量の測定は、試料(含フッ素ポリマー)12mgにNa
2SO
3を5mg混ぜ、純水20mlにNa
2CO
3とK
2CO
3とを1対1(重量比)で混合したものを30mg溶解した吸収液を用い、石英製の燃焼フラスコ中、酸素中で燃焼させ、30分放置後、島津20Aイオンクロマトグラフを用い測定することができる。検量線はKI標準溶液、ヨウ素イオン0.5ppmを含むもの又は1.0ppmを含むものを用いることができる。
【0033】
ヨウ素原子及び臭素原子の結合位置は、共重合体(III)の主鎖の末端でも側鎖の末端でもよく、もちろん両者であってもよい。このような共重合体においては、当該ヨウ素末端又は臭素末端が架橋点(架橋部位)となり、架橋密度が高い、架橋した含フッ素ポリマーが得られる他、パーオキサイド架橋をより容易に行うことが可能になる。
【0034】
共重合体(III)は、架橋部位を与える単量体としてヨウ素または臭素含有単量体を使用する、重合開始剤又は連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用する、ことなどによって製造することができる。
【0035】
共重合体(III)において、他の単量体は、ビニリデンフルオライド及び式(1)で表される含フッ素単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されず、1種又は2種以上の単量体を使用してよい。
【0036】
共重合体(III)において他の単量体は、全単量体単位の0〜50モル%であることが好ましい。1〜50モル%であることがより好ましい。
【0037】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基またはパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である。)で表されるヨウ素または臭素含有単量体(好ましくは、一般式:CH
2=CH(CF
2)
nI(nは2〜8の整数である。)で表されるヨウ素含有単量体)、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
3
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、又は臭素原子である。)で表される単量体、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
4
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
4は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子又は−CH
2OHである。)で表される単量体、一般式:
CR
2R
3=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
(式中、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7、は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。Zは、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数3〜18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1〜10のアルキレン若しくはオキシアルキレン基、又は、
−(Q)
p−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m(CF
2O)
n−CF
2−(Q)
p−
(式中、Qはアルキレンまたはオキシアルキレン基である。pは0または1である。m/nが0.2〜5である。)で表され、分子量が500〜10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0038】
上記一般式:
CR
2R
3=CR
4−Z−CR
5=CR
6R
7
で表される化合物としては、例えば、CH
2=CH−(CF
2)
2−CH=CH
2、CH
2=CH−(CF
2)
4−CH=CH
2、CH
2=CH−(CF
2)
6−CH=CH
2、下記式:
CH
2=CH−Z
1−CH=CH
2
(式中、Z
1は、−CH
2OCH
2−CF
2O−(CF
2CF
2O)
m1(CF
2O)
n1−CF
2−CH
2OCH
2−で表されるフルオロポリオキシアルキレン基であり、m1/n1は0.5であり、分子量は2000である。)で表される単量体等が挙げられる。
【0039】
架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CN、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COOH、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CN、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOH、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)CH
2OH、及び、CH
2=CHCF
2CF
2I、CH
2=CH(CF
2)
2CH=CH
2からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい形態の一つである。上記架橋部位を与える単量体としては、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2Iが、パーオキサイドを用いた架橋において、架橋密度を向上させて、圧縮永久歪を良好にすることができるので、特に好ましい。
【0040】
架橋部位を与える単量体としてはまた、たとえば、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1CHR
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R
1は、水素原子または−CH
3、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式:
CX
12=CX
1−Rf
1X
2
(式中、X
1は、水素原子、フッ素原子または−CH
3、Rf
1は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、X
2は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体(好ましくはCH
2=CH(CF
2)
nI(nは2〜8の整数である)で表されるヨウ素含有単量体)、一般式:
CF
2=CFO(CF
2CF(CF
3)O)
m(CF
2)
n−X
5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
5はヨウ素原子または臭素原子である)
で表される単量体、及び、一般式:
CH
2=CFCF
2O(CF(CF
3)CF
2O)
m(CF(CF
3))
n−X
5
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、X
5はヨウ素原子または臭素原子である)
で表される単量体、からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることも好ましい形態の一つである。このようなヨウ素または臭素含有単量体を上記他の単量体として使用することによって、共重合体(III)を製造することもできる。
【0041】
共重合体(III)において、架橋部位を与える単量体は、全単量体単位の0.01〜10モル%であることが好ましく、0.01〜2モル%であることがより好ましい。
【0042】
耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、含フッ素エラストマーは共重合体(III)であることが更に好ましい。
【0043】
含フッ素エラストマーは、耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性に優れ、アンモニアにより劣化しにくいことから、数平均分子量(Mn)が7000〜500000であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)が10000〜1000000であることが好ましく、Mw/Mnが1.3〜4.0であることが好ましい。上記数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、Mw/Mnは、GPC法により測定する値である。
【0044】
含フッ素エラストマーは、成形加工性が良好である点から、121℃におけるムーニー粘度(ML1+10(121℃))は2以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、同様に成型加工性が良好であるという点から、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。ムーニー粘度は、ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定した値である。
【0045】
含フッ素エラストマーは、一般的なラジカル重合法により製造することができる。重合形態は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のいずれの形態でもよいが、工業的に実施が容易であることから、乳化重合であることが好ましい。
【0046】
重合においては、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。共重合体の重合において、重合開始剤として油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0047】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω−ハイドロ−ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω−クロロ−テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω−ハイドロ−ドデカフルオロヘプタノイル−ω−ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル−パーオキサイド、ω−クロロ−ヘキサフルオロブチリル−ω−クロ−デカフルオロヘキサノイル−パーオキサイド、ω−ハイドロドデカフルオロヘプタノイル−パーフルオロブチリル−パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0048】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t−ブチルパーマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1〜20倍であってよい。
【0049】
ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱出来る範囲である。
【0050】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用でき、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサン酸アンモニウムなどの炭素数4〜20の直鎖又は分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましい。添加量(対重合水)は、好ましくは10〜5000ppmである。より好ましくは50〜5000ppmである。また、界面活性剤として反応性乳化剤を使用することができる。反応性乳化剤は、不飽和結合と親水基とをそれぞれ1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4、CH
2=CFCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2COONH
4、CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF(CF
3)COONH
4があげられる。添加量(対重合水)は、好ましくは10〜5000ppmである。より好ましくは、50〜5000ppmである。
【0051】
溶媒としては、連鎖移動性を持たない溶媒であることが好ましい。溶液重合の場合、ジクロロペンタフルオロプロパン(R−225)があげられ、乳化重合及び懸濁重合の場合、水、水と水溶性有機溶媒との混合物、又は、水と非水溶性有機溶媒との混合物があげられる。
【0052】
共重合体(I)及び(II)の重合において、連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0053】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
R
2I
xBr
y
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R
2は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0054】
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、2−ヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF
2Br
2、BrCF
2CF
2Br、CF
3CFBrCF
2Br、CFClBr
2、BrCF
2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF
2CF
2CF
2Br、BrCF
2CFBrOCF
3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0055】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、2−ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0056】
共重合体(III)の重合においては、連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することが好ましい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
R
2I
xBr
y
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R
2は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0057】
ヨウ素化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、2−ヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF
2Br
2、BrCF
2CF
2Br、CF
3CFBrCF
2Br、CFClBr
2、BrCF
2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF
2CF
2CF
2Br、BrCF
2CFBrOCF
3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、2−ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0058】
共重合体(III)の重合においては、連鎖移動剤として、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサンなどを使用することもできる。
【0059】
共重合体の重合において、重合温度、重合圧力及び重合時間は、溶媒や重合開始剤の種類によって異なるが、−15〜150℃、大気圧〜6.5MPa、1〜24時間であってよい。特に、溶液重合において重合開始剤としてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が−15〜50℃であることが好ましく、10〜35℃であることがより好ましい。乳化重合及び懸濁重合においてフッ素原子を含有する油溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が30〜95℃であることが好ましい。重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤を使用する場合、重合温度が0〜100℃であることが好ましく、10〜95℃であることがより好ましい。重合圧力は、放熱材料の圧縮永久歪の値が良好になるため、また、重合速度が上昇し、生産性が向上するため、1.0MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましく、3.0MPa以上が更に好ましく、4.5MPa以上が最も好ましい。
【0060】
上記共重合体は、水性分散液、粉末等のいかなる形態であってもよい。共重合体の粉末は、乳化重合の場合、重合上がりの分散液を凝析させ、水洗し、脱水し、乾燥することによって得ることができる。凝析は、硫酸アルミニウム等の無機塩又は無機酸を添加するか、機械的な剪断力を与えるか、分散液を凍結させることによって行うことができる。懸濁重合の場合は、重合上がりの分散液から回収し、乾燥することにより得ることができる。溶液重合の場合は、含フッ素ポリマーを含む溶液をそのまま乾燥させて得ることができるし、貧溶媒を滴下して精製することによっても得ることができる。
【0061】
共重合体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。特に、分子構造の異なる2種類の共重合体を併用する形態であってもよい。上記分子構造の異なる2種類の共重合体を併用する形態としては、分子構造の異なる共重合体(I)を2種類用いる形態、分子構造の異なる共重合体(II)を2種類用いる形態、分子構造の異なる共重合体(III)を2種類用いる形態、1種類の共重合体(I)と1種類の共重合体(II)を併用する形態、1種類の共重合体(I)と1種類の共重合体(III)を併用する形態、1種類の共重合体(II)と1種類の共重合体(III)を併用する形態が挙げられる。
【0062】
上述のように、2種類の含フッ素エラストマーを併用する場合には、1種類が分岐型含フッ素エラストマーであり、もう1種類が直鎖型含フッ素エラストマーであることが好ましい。より好ましくは、国際公開第2009/119409号パンフレットに記載されている、1種類が(A)パーオキサイド架橋可能な架橋部位を有し、数平均分子量が1,000〜300,000の範囲にあり、かつ絶対重量分子量および固有粘度を横軸が絶対重量分子量で縦軸が固有粘度であるマーク−ハウィンプロットにプロットしたときのマーク−ハウィン勾配aが0.6未満である分岐型含フッ素ポリマーであり、もう1種類が(B)数平均分子量が1,000〜250,000の範囲にあり、かつ絶対重量分子量および固有粘度を横軸が絶対重量分子量で縦軸が固有粘度であるマーク−ハウィンプロットにプロットしたときのマーク−ハウィン勾配aが0.6以上である直鎖型含フッ素ポリマーである形態、又は、1種類が(A)少なくとも1種のフルオロオレフィンを含むエチレン性不飽和化合物と、一般式:
CY
12=CY
2Rf
2X
2
(式中、Y
1、Y
2はフッ素原子、水素原子または−CH
3;Rf
2はエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X
2はヨウ素原子または臭素原子)で示される化合物とを共重合させる際に、上記一般式で示される化合物の添加を、重合開始剤添加後に重合系内に添加されるエチレン性不飽和化合物の全添加量の0〜10質量%添加した時期に開始することを特徴とする製造方法によって得られた分岐型含フッ素エラストマーであり、もう1種類が(B)数平均分子量が1,000〜250,000の範囲にあり、かつ絶対重量分子量および固有粘度を横軸が絶対重量分子量で縦軸が固有粘度であるマーク−ハウィンプロットにプロットしたときのマーク−ハウィン勾配aが0.6以上である直鎖型含フッ素エラストマーである形態である。このように、本発明における含フッ素エラストマーとしては、1種類が共重合体(II)若しくは共重合体(III)であって、パーオキサイド架橋可能な架橋部位を有し、数平均分子量が1,000〜300,000の範囲にあり、かつ絶対重量分子量および固有粘度を横軸が絶対重量分子量で縦軸が固有粘度であるマーク−ハウィンプロットにプロットしたときのマーク−ハウィン勾配aが0.6未満である分岐型含フッ素エラストマーであるか、又は、少なくとも1種のフルオロオレフィンを含むエチレン性不飽和化合物と、一般式:
CY
12=CY
2Rf
2X
2
(式中、Y
1、Y
2はフッ素原子、水素原子または−CH
3;Rf
2はエーテル結合性酸素原子を有していてもよく水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状の含フッ素アルキレン基;X
2はヨウ素原子または臭素原子)で示される化合物とを共重合させる際に、上記一般式で示される化合物の添加を、重合開始剤添加後に重合系内に添加されるエチレン性不飽和化合物の全添加量の0〜10質量%添加した時期に開始することを特徴とする製造方法によって得られた分岐型含フッ素エラストマーであり、もう1種類が共重合体(I)、共重合体(II)又は共重合体(III)であって、数平均分子量が1,000〜250,000の範囲にあり、かつ絶対重量分子量および固有粘度を横軸が絶対重量分子量で縦軸が固有粘度であるマーク−ハウィンプロットにプロットしたときのマーク−ハウィン勾配aが0.6以上である直鎖型含フッ素エラストマーである形態も好ましい形態である。
【0063】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は架橋剤を含め架橋させることができる。架橋剤は、架橋系、架橋する含フッ素エラストマーの種類(たとえば共重合組成、架橋性基の有無や種類など)、得られる架橋物の具体的用途や使用形態、そのほか混練条件などに応じて、適宜選択することができる。本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は架橋剤を含んでもよく、含まなくてもよい。
架橋剤を含む場合、その配合量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。架橋剤が、0.01質量部より少ないと、架橋度が不足するため、放熱材料の性能が損なわれる傾向があり、10質量部をこえると、架橋密度が高くなりすぎるため架橋時間が長くなることに加え、経済的にも好ましくない。
【0064】
架橋剤としては、ポリアミン架橋、ポリオール架橋及びパーオキサイド架橋で通常使用される架橋剤であれば特に限定されないが、ポリアミン化合物、ポリヒドロキシ化合物及び有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0065】
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどがあげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0066】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0067】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、含フッ素ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0068】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0069】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7―ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び放熱材料の物性が優れる点から、DBU−Bが好ましい。
【0070】
第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性及び放熱材料の物性が優れる点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0071】
架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0072】
架橋促進剤の配合量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01〜8質量部が好ましく、0.02〜5質量部がより好ましい。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、含フッ素ポリマーの架橋が充分に進行せず、得られる部品の耐燃料性、耐熱性、柔軟性及び耐寒性が低下する傾向があり、8質量部をこえると、架橋性組成物の成形加工性が低下する傾向がある。
【0073】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0074】
架橋剤が有機過酸化物である場合、架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び放熱材料の物性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0075】
架橋助剤の配合量は特に限定されないが、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、放熱材料の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
【0076】
架橋剤としてポリアミン化合物を使用するポリアミン架橋は、従来と同様に行うことができる。たとえば、含フッ素エラストマーと架橋剤、要すれば架橋促進剤、さらには適宜混合可能な他の添加剤とをロール練り後金型に入れ加圧して1次架橋し、ついで2次架橋する方法があげられる。一般に1次架橋の条件は、温度100〜200℃で、時間5〜120分間、圧力2〜10MPa程度の範囲から採用され、2次架橋の条件は温度150〜300℃で、時間30分間〜30時間程度の範囲から採用される。
【0077】
架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用するポリオール架橋は、従来と同様に行うことができる。たとえば、含フッ素エラストマーと架橋剤、要すれば架橋促進剤、さらには適宜混合可能な他の添加剤とをロール練り後金型に入れ加圧して1次架橋し、ついで2次架橋する方法があげられる。混練はインターナルミキサー、バンバリーミキサーなどが好ましく使用できる。一般に1次架橋は、2〜10MPa、100〜200℃で5〜60分間行うことができ、2次架橋は150〜300℃で30分間〜30時間行うことができる。
【0078】
架橋剤として有機過酸化物を使用するパーオキサイド架橋は、従来と同様に行うことができる。たとえば、含フッ素エラストマーと架橋剤、要すれば架橋促進剤、さらには適宜混合可能な他の添加剤とをロール練り後金型に入れ加圧して1次架橋し、ついで2次架橋する方法があげられる。一般に1次架橋は、2〜10MPa、100〜200℃で5〜60分間行うことができ、2次架橋は150〜300℃で30分間〜30時間行うことができる。
【0079】
含フッ素エラストマーが共重合体(III)である場合、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%であるため、ヨウ素末端又は臭素末端が架橋点(架橋部位)となり、架橋密度を更に高めることができる。
【0080】
含フッ素エラストマーが共重合体(III)である場合、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、架橋剤として有機過酸化物を含んでもよい。共重合体(III)は、ヨウ素原子及び臭素原子の少なくとも一方を有し、その含有量の合計が0.001〜10重量%であるため、有機過酸化物を含むことで、パーオキサイド架橋をより容易に行うことが可能になる。有機過酸化物としては、上述したものが挙げられ、中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3の少なくとも1種の化合物であることが好ましい。また、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は架橋助剤を含むことが好ましく、架橋助剤としては上述したものが挙げられ、中でも、架橋性及び成形品の物性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0081】
含フッ素エラストマーが共重合体(III)である場合、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の架橋助剤の配合量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10質量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、放熱材料の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
【0082】
含フッ素エラストマーが共重合体(III)である場合、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の架橋条件は、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよいが、通常、150〜300℃の温度で、1分〜24時間焼成する。また、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、架橋することができる。
【0083】
含フッ素エラストマーが共重合体(III)である場合、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、架橋剤として有機過酸化物を含み、パーオキサイド架橋により架橋することもできる。架橋剤として有機過酸化物を使用するパーオキサイド架橋は、従来と同様に行うことができる。たとえば、共重合体(III)と架橋剤、要すれば架橋促進剤、さらには適宜混合可能な他の添加剤とをロール練り後金型に入れ加圧して1次架橋し、ついで2次架橋する方法があげられる。一般に1次架橋は、2〜10MPa、100〜200℃で5〜60分間行うことができ、2次架橋は150〜300℃で30分間〜30時間行うことができる。
【0084】
本発明で使用する熱伝導性窒化物フィラーとしては、特に限定されるものではないが、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。熱伝導性窒化物フィラーとしては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。窒化物は熱伝導性が高く、熱伝導向上効果が高くなる。
【0085】
熱伝導性窒化物フィラーは、更にシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、メタクリル系シラン、フェニル系シラン、ビニル系シラン、アクリル系シラン、イソシアネート系シラン、イソシアヌレート系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン、パーフルオロ系シラン等が挙げられる。シランカップリング剤としては、メタクリル系シラン、フェニル系シラン、ビニル系シラン、アクリル系シラン、イソシアネート系シラン、イソシアヌレート系シラン、ウレイド系シラン、メルカプト系シラン及びパーフルオロ系シランからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0086】
熱伝導性窒化物フィラーは、粒子径が0.1〜200μmであることが好ましく、1〜150μmであることがより好ましく、2〜100μmであることが更に好ましい。
【0087】
熱伝導性窒化物フィラーの含有量は特に限定されないが、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物中、10〜90体積%が好ましく、30〜85体積%がより好ましい。熱伝導性窒化物フィラーの含有量が10体積%未満であると、熱伝導性が低下する傾向があり、90体積%をこえると、ゴムの混練が困難となったり、成形品の硬度が上昇したり、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物のムーニー粘度が上昇し、成形しにくくなる傾向がある。
【0088】
また、本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物は、必要に応じて含フッ素エラストマー組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、硫酸バリウム等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、架橋促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。例えば、カーボンブラックとしては、平均粒径は100nm以上が好ましく、150nm以上がより好ましい。カーボンブラックなどの充填剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、含フッ素エラストマー100重量部に対して0〜150重量部であることが好ましく、1〜100重量部であることがより好ましく、2〜50重量部であることが更に好ましい。また、ワックス等の加工助剤の含有量としては、パーオキサイド架橋可能な含フッ素エラストマー100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましい。
【0089】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物から得られた成形品の熱伝導率は特に限定されないが、0.5W/m・K以上が好ましく、1W/m・K以上がより好ましい。ここで、熱伝導率はレーザーフラッシュ法により求められた値である。
【0090】
本発明の放熱材料用含フッ素エラストマー組成物の250℃24時間後の重量減少率は特に限定されないが、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。ここで、250℃24時間後の重量減少率は、含フッ素エラストマー組成物を250℃に維持された電気炉中に24時間入れて取り出し、前後の重量減少量を加熱前の重量で割った百分率である。
【0091】
また、本発明は前記放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形して得られるシートに関する。本発明のシートは、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形することにより製造することもできるし、放熱材料用含フッ素エラストマー組成物を成形し、得られたシートを架橋することにより製造することもできる。本発明のシートは、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。本発明のシートは、高熱伝導性および高耐熱性を有しているため、放熱材料に好適に使用することができる。具体的には、発熱高温域が存在する車載インバータ、LEDヘッドライト、自動運転用カメラのGPU部分、熱電変換素子などのTIM材料等として使用することができる。
【0092】
架橋は、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよいが、通常、150〜300℃の温度で、1分〜24時間焼成する。また、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、架橋することができる。
【0093】
架橋方法としては、特に限定されず、スチーム架橋、加圧成形法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法が採用でき、常温常圧での放射線架橋法であってもよい。最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施してもよい。
【0094】
成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出し成形、トランスファー成形、射出成形等が挙げられる。
【実施例】
【0095】
つぎに本発明を、実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
実施例及び比較例で用いた表1に記載の各材料を以下に示す。
〔含フッ素エラストマー〕
・含フッ素エラストマー(1):VdF/2,3,3,3−テトラフルオロプロペン共重合体=77/23モル%、ML1+10(121℃)=25、ガラス転移温度=−15℃
・含フッ素エラストマー(2):VdF/HFP共重合体=78/22モル%、ML1+10(121℃)=25、ガラス転移温度=−20℃
【0097】
窒化アルミニウム(粒子径50μm:5μm:1μm=6:3:1(質量比))
【0098】
実施例1及び比較例1
表1に示す組成の含フッ素エラストマー組成物1及び2を調製した。含フッ素エラストマー組成物は、ラボプラストミルを用い、各含フッ素エラストマー(生ゴム)と窒化アルミニウムとを表1に示す量で配合し、通常の方法で混合した。得られた含フッ素エラストマー組成物1及び2を成形し、シートを得た。
【0099】
実施例および比較例で作製した組成物の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0100】
〔ムーニー粘度(ML1+10(121℃))〕
ASTM−D1646およびJIS K6300に準拠して測定する。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:121℃
【0101】
〔熱伝導率〕
レーザーフラッシュ法により評価した。
測定機器:アルバック理工社製 TC−7000
熱拡散率の決定方法:ハーフタイム法
測定温度:室温25℃
【0102】
〔重量減少率〕
含フッ素エラストマー組成物を250℃に維持された電気炉中に24時間入れて取り出し、前後の重量減少量を加熱前の重量で割った百分率を重量減少率とした。
【0103】
【表1】