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特開2019-157265厚さ制御可能なビスマスナノシート及びその合金の製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-157265(P2019-157265A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】厚さ制御可能なビスマスナノシート及びその合金の製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20190823BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20190823BHJP
   B01J 23/18 20060101ALI20190823BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20190823BHJP
   B01J 23/68 20060101ALI20190823BHJP
   B01J 23/843 20060101ALI20190823BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190823BHJP
【FI】
   B22F1/00 R
   B22F9/24 Z
   B01J23/18 Z
   B01J23/644 Z
   B01J23/68 Z
   B01J23/843 Z
   B82Y40/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-193284(P2018-193284)
(22)【出願日】2018年10月12日
(31)【優先権主張番号】201810204740.5
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512071123
【氏名又は名称】中国科学院▲長▼春▲応▼用化学研究所
【氏名又は名称原語表記】CHANGCHUN INSTITUTE OF APPLIED CHEMISTRY,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲維▼林
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲発▼
(72)【発明者】
【氏名】阮 明波
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 玉▲微▼
(72)【発明者】
【氏名】宋 平
【テーマコード(参考)】
4G169
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CB02
4G169CB74
4G169DA06
4G169EA08
4G169EB15X
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB27
4G169FB45
4G169FB58
4K017AA03
4K017BA10
4K017DA01
4K017EJ01
4K017FB07
4K018AA40
4K018BA20
4K018BB01
4K018BD10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】厚さ制御可能なビスマスナノシート及びその合金の製造方法の提供。
【解決手段】不活性ガスの保護下で、ビスマスの塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、NaBH又はLiBH等の強還元性のある溶液を還元剤とし、水溶液による還元の方法により、厚さが0.7nmの単原子層程度の厚さのビスマスナノシートを得ることができ、かつ、厚さ制御可能である。
【効果】本発明のビスマスナノシートは、優れたCO触媒還元性能を示し、過電位330mVの場合に、COに触媒作用してギ酸を生成するファラデー効率が98%まで達し、初期過電位が80mVと低く、安定性が75hと長くでき、かつ、300℃の温度で4h処理されても、ビスマスナノシートの厚さ及び触媒性能が殆ど変化なく、高い安定性を示す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマスの塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシートを調製する工程を含む、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法において、その具体的な実施様態は、ビスマスの塩類化合物をエチレングリコールエチルエーテルに入れて、溶液が透明になるまで超音波により均一に攪拌し、その後、不活性ガスの保護下で25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得ることである、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法において、
前記ビスマスの塩類化合物の使用量が0.5mmol〜5mmolであり、エチレングリコールエチルエーテルの使用量が200 mL〜300mLであり、
前記ビスマスの塩類化合物が塩化ビスマス又は硝酸ビスマスであり、還元時に用いられる還元液がNaBH又はLiBHであり、その使用量が20mmol〜40mmolである、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法において、前記ビスマスナノシートの厚さが0.7nm〜50nmであることを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法において、前記ビスマスナノシートの厚さが0.7nm〜4nmであることを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法において、前記ビスマスナノシートは、炭素系担体に担持されていてもよく、前記炭素系担体は、酸化GO、還元GO、BP又はXC−72である、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【請求項7】
ビスマスの塩類化合物、及びパラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシート合金を調製する工程を含む、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法において、その具体的な実施様態は、パラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物をエチレングリコールエチルエーテルに溶解して、超音波により均一に攪拌した後、不活性ガスの保護下で、25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、そして室温まで冷却し、その後、ビスマスの塩類化合物を入れて混合し、均一に攪拌した後、不活性ガスの雰囲気中で還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、乾燥した試料をチューブ炉中に置き、水素ガスを通し、300〜600℃で1〜3h焼成し、ビスマスナノシート合金を得ることである、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法において、
前記ビスマスの塩類化合物が塩化ビスマス又は硝酸ビスマスであり、その使用量が0.5mmol〜5mmolであり、エチレングリコールエチルエーテルの使用量が200 mL〜300mLであり、パラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物の使用量が0.5mmol〜5mmolであり、還元時に用いられる還元液がNaBH又はLiBHであり、その使用量が20mmol〜40mmolである、ことを特徴とする厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法。
【請求項10】
請求項1で製造のビスマスナノシート、請求項6で製造の担持型ビスマスナノシート又は請求項7で製造のビスマスナノシート合金の、二酸化炭素の高効率電気触媒還元への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料の製造方法に関するものであり、具体的には、厚さ制御可能なビスマスナノシート及びその合金の製造方法及び使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業革命以来、人間のエネルギー需要と利用が日々増加していると同時に、化石燃料の大量燃焼によるエネルギー問題や環境問題もますます顕著になってきている。大気中のCO濃度の蓄積は、温室効果の発生に繋がるのだけではなく、それもまた資源の浪費になる。大気中に排出されるCOを吸収して利用可能なエネルギー物質に転化することは、人間の活動によって大気中に排出されるCOの正味量を減らすだけでなく、化石燃料の枯渇によるエネルギー枯渇の問題をも部分的に解決できる。COの電気触媒還元には、太陽エネルギーや風力エネルギーなどのクリーンな再生可能エネルギーを使用して電力を供給できる。COをCO、アルカン、ギ酸、アルコール類などの物質に転化することにより、電力を変換してこれらのエネルギー密度の高い燃料に閉じ込めることは、効率の高い電気エネルギー貯蔵の方法の一つである。
【0003】
現在の状況に鑑みて、二酸化炭素の電気触媒還元には、まだ色々な課題がある。解決する必要があるのは、以下の数点がある。
【0004】
(1)COの還元反応は、高い過電位で行う必要がある場合が多く、必要とされるエネルギー量が非常に膨大であるため、反応の過電位を低減するように適切な触媒を探し出す必要がある。
【0005】
(2)COの還元反応の生成物が数多く、同時にこれに伴う水素析出の副反応が競争に関与する。このため、反応の選択率を向上させ、COをより多く我々の所望生成物に転化するように、適切な材料及び方法を探し出す必要がある。
【0006】
(3)反応過程において、触媒の活性が喪失しやすいため、触媒安定性がその実際的使用を制限する要因の一つである。
【0007】
多くの二酸化炭素電気触媒還元の反応過程において、2eを転移するだけでCO及びギ酸を生成できる。COは、毒性の物理的特性を有し、これに加えて、そのビジネス価値もギ酸よりも低いため、研究者らは、ギ酸の研究をより熱心にしている。ギ酸は、革なめし加工において防腐剤及び抗菌剤とすることができ、そのまま見込みのあるギ酸燃料電池を作成することもできる。これは、非常によいCOの回収利用方法の一つである。しかしながら、従来から報告された金属触媒を二酸化炭素のギ酸への転化に用いるとその効率が依然として非常に低いまま、必要とされる過電位が非常に高く、水素発生電位もかなりポジティブの方であり、安定性が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に存在している技術課題を解決しようとするものであり、厚さ制御可能なビスマスナノシート及びその合金の製造方法及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術課題を解決するために、本発明の技術的様態は、具体的に以下の通りである。
【0010】
厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法であって、ビスマスの塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシートを調製する工程を含む、厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法である。
【0011】
厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法であって、その具体的な実施様態の一つは、ビスマスの塩類化合物をエチレングリコールエチルエーテルに入れて、溶液が透明になるまで超音波により均一に攪拌し、その後、不活性ガスの保護下で25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得ることである、厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法。
【0012】
前記技術的様態において、前記ビスマスの塩類化合物の使用量が0.5mmol〜5mmolであり、エチレングリコールエチルエーテルの使用量が200〜300mLであり、前記ビスマスの塩類化合物が塩化ビスマス又は硝酸ビスマスであり、還元時に用いられる還元液がNaBH又はLiBHであり、その使用量が20〜40mmolである。
【0013】
前記技術的様態において、前記ビスマスナノシートの厚さが0.7nm−50nmである。
【0014】
前記技術的様態において、前記ビスマスナノシートの厚さが0.7nm−4nmである。
【0015】
前記技術的様態において、前記ビスマスナノシートは、炭素系担体に担持されていてもよく、前記炭素系担体は、酸化GO、還元GO、BP又はXC−72である。
【0016】
厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法であって、ビスマスの塩類化合物、及びパラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシート合金を調製する工程を含む、厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法である。
【0017】
厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法であって、その一種の実施様態は、パラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物をエチレングリコールエチルエーテルに溶解して、超音波により均一に攪拌した後、不活性ガスの保護下で、25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、そして室温まで冷却し、その後、ビスマスの塩類化合物を入れて混合し、均一に攪拌した後、不活性ガスの雰囲気中で還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、乾燥した試料をチューブ炉中に置き、水素ガスを通し、300〜600℃で1〜3h焼成し、ビスマスナノシート合金を得ることである、厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法である。
【0018】
前記技術的様態において、前記ビスマスの塩類化合物が塩化ビスマス又は硝酸ビスマスであり、その使用量が0.5mmol〜5mmolであり、エチレングリコールエチルエーテルの使用量が200〜300mLであり、パラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物の使用量が0.5mmol〜5mmolであり、還元時に用いられる還元液がNaBH又はLiBHであり、その使用量が20〜40mmolである。
【0019】
また、本発明は、前記製造方法で製造のビスマスナノシート、担持型ビスマスナノシート又はビスマスナノシート合金の、二酸化炭素の高効率電気触媒還元への使用を提供する。
【0020】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0021】
(1)従来技術で知られている金属ビスマス(Bi)フレークを合成する方法のほとんどは、電気化学的析出または電気化学的還元の方法を使用しており、単原子層程度の厚さを有するビスマスナノシートを得ることは非常に困難である。本発明は、水溶液による還元の方法でこのような原子レベルのビスマスナノシートを直接に製造することを初めて提案している。本出願では、不活性ガスの保護下で、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、一定濃度のNaBH又はLiBH等の強還元性のある溶液を還元剤とすることにより、初めて、厚さが僅か0.7nmである単原子レベルのビスマスナノシートを得ることができた。同時に、我々は、実験の条件を変更して異なる厚さのビスマスナノシートを製造することができ、厚さ制御可能な程度まで達している。
【0022】
(2)本発明が提供する製造方法で製造した単原子層程度の厚さのビスマスナノシートは、優れたCO触媒還元性能を示している。過電位が330mVの場合に、COに触媒作用してギ酸を生成するファラデー効率が98%まで達し、初期過電位が80mVと低く、安定性が75hと長くでき、かつ、他の副生成物がなく、ビスマス系触媒が抱えている多くの課題を改善しており、その低い過電位及び超高い安定性も大多数の同類型の触媒よりも優れている。同時に、異なる厚さのビスマスナノシートとそのCO電気触媒還元によるギ酸生成の性能との関連性についても検討した。
【0023】
(3)本発明が提供する製造方法は、プロセスフローが簡単でかつ環境にやさしく、過程全体が常温常圧で行われるものである。製造したビスマスナノシートが担体に担持されていてもよい。用いられる担体は、カーボン材料に属し、安価で入手しやすいものである。製造したビスマスナノシートは、合金化してビスマスナノシートを製造することもできる。それを炭素系担体と複合及びその合金化をした後に、依然として高い触媒性能を維持できる。また、電解液は、いずれも一般的によく見かける塩溶液であり、有機物の添加が一切ない。
【0024】
(4)本発明が提供する製造方法で製造したビスマスナノシートによるCOの電気触媒還元から生成したギ酸は、革なめし加工において防腐剤及び抗菌剤とすることができ、そのまま見込みのあるギ酸燃料電池を作成することもできる。これは、非常によいCOの回収利用方法の一つである。
【0025】
以下、添付図面および具体的な実施形態を組み合わせて本発明をさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの透過型電子顕微鏡図である。
図2図2は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの原子間力顕微鏡図である。
図3図3は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの300℃の温度で4h処理後の原子間力顕微鏡図である。
図4図4は、本発明の実施例2で製造したビスマスナノシートの原子間力顕微鏡図である。
図5図5は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが異なる電位でCOをギ酸へ還元したファラデー効率図である。
図6図6は、本発明の実施例1、2及び3で製造したビスマスナノシートによるCO還元のリニアスイープボルタモグラムの比較図である。
図7図7は、本発明の実施例4で製造した担持型ビスマスナノシートによるCO還元のリニアスイープボルタモグラム図である。
図8図8は、本発明の実施例5で製造したパラジウムビスマスナノシート合金によるCO還元のリニアスイープボルタモグラム図である。
図9図9は、本発明の実施例1、2及び3で製造したビスマスナノシートがCOをギ酸へ還元したファラデー効率の比較図。
図10図10は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが−0.58Vで75h作動した電流効率図である。
図11図11は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが−0.58VでCO還元に触媒作用してギ酸を生成したNMR検出図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を組み合わせて、本発明を詳述する。
【0028】
本発明は、ビスマスの塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシートを調製する工程を含む、厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法を提供する。
【0029】
厚さ制御可能なビスマスナノシートの製造方法の一種の具体的な実施形態は、ビスマスの塩類化合物0.5mmol〜5mmolをエチレングリコールエチルエーテル200〜300mLに入れて、溶液が透明になるまで超音波により均一に攪拌し、その後、不活性ガスの保護下で25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で20〜40mmolのNaBH又はLiBH還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得ることである。前記ビスマスナノシートの厚さは、0.7nm〜50nmであることが好ましく、厚さが0.7nm〜4nmであることがより好ましい。前記ビスマスの塩類化合物は、塩化ビスマス又は硝酸ビスマスである。製造したビスマスナノシートは、炭素系担体に担持されていてもよく、前記炭素系担体は、酸化GO、還元GO、BP又はXC−72である。
【0030】
また、本発明は、ビスマスの塩類化合物、及びパラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物を原料とし、エチレングリコールエチルエーテルを溶剤とし、水溶液による還元の方法によりビスマスナノシート合金を調製する工程を含む、厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法を提供する。
【0031】
厚さ制御可能なビスマスナノシート合金の製造方法の一種の具体的な実施形態は、パラジウム、ニッケル、亜鉛、金又は銅の塩類化合物0.5mmol〜5mmolをエチレングリコールエチルエーテル200〜300mLに溶解して、超音波により均一に攪拌した後、不活性ガスの保護下で、25〜120℃で攪拌して30〜60min反応し、そして室温まで冷却し、その後、ビスマスの塩類化合物0.5mmol〜5mmolを入れて混合し、均一に攪拌した後、不活性ガスの雰囲気中で20〜40mmolのNaBH又はLiBH還元液を滴下し、引き続き攪拌して15〜30min反応し、反応完了後、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、乾燥した試料をチューブ炉中に置き、水素ガスを通し、300〜600℃で1〜3h焼成し、ビスマスナノシート合金を得ることである。前記ビスマスの塩類化合物が塩化ビスマス又は硝酸ビスマスである。
【0032】
さらに、本発明は、前記製造方法で製造のビスマスナノシート、担持型ビスマスナノシート又はビスマスナノシート合金の、二酸化炭素の高効率電気触媒還元への使用を提供する。
【0033】
実施例1
厚さが0.7nmのビスマスナノシートの製造
塩化ビスマス0.5mmolをエチレングリコールエチルエーテル200mLに入れ、溶液が透明になるまで均一に超音波による攪拌をし、その後、不活性ガスの保護下で、25℃で攪拌して30min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で20mmolNaBHの還元液を滴下し、引き続き攪拌して15min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得た。厚さが0.7nmである。
【0034】
図1は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの透過型電子顕微鏡図であり、この図からわかるように、本実施例で製造したビスマスナノシートは、超薄肉のシート層構造を呈している。
【0035】
図2は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの原子間力顕微鏡図であり、図から分かるように、その平均厚さが0.70nmである。
【0036】
図3は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートの300℃の温度で4h処理後の原子間力顕微鏡図であり、図から分かるように、その平均厚さが0.72nmであり、高温処理前の厚さとほぼ一致している。
【0037】
図5は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが異なる電位でCOをギ酸へ還元したファラデー効率図であり、図から分かるように、電位が−0.58Vである場合、ギ酸生成のファラデー効率が最も高く、98%まで達し、水素ガスが僅か1%未満である。また、初期過電位がたかが0.13Vである場合、ギ酸生成のファラデー効率は、依然として33%まで達している。
【0038】
図10は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが−0.58Vで75h作動した電流効率図であり、この図からわかるように、このビスマスナノシート触媒の75h作動の期間内に、電流が殆ど減衰していなく、ギ酸生成のファラデー効率は、変化することなく98%のままである。これも、このビスマスナノシート触媒の超高い安定性を示している。
【0039】
図11は、本発明の実施例1で製造したビスマスナノシートが−0.58VでCO還元に触媒作用してギ酸を生成したNMR検出図であり、この図から明らかになるように、核磁気NMR(AV500)水素スペクトルの検出により、図の標記に示されるようにギ酸を確実に検出している。また、DMSOを内部標準として定量した。
【0040】
実施例2
厚さが4nmのビスマスナノシートの製造
硝酸ビスマス化合物2.5mmolをエチレングリコールエチルエーテル250mLに入れ、溶液が透明になるまで超音波による攪拌を均一にし、その後、不活性ガスの保護下で、70℃で攪拌して45min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で30mmolLiBHの還元液を滴下し、引き続き攪拌して20min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得た。厚さが4nmである。
【0041】
図4が本発明の実施例2で製造したビスマスナノシートの原子間力顕微鏡図である。この図からわかるように、このビスマスナノシートのシート層の厚さが4nmである。
【0042】
実施例3
厚さが13nmのビスマスナノシートの製造
硝酸ビスマス5mmolをエチレングリコールエチルエーテル300mLに入れ、溶液が透明になるまで超音波による攪拌を均一にし、その後、不活性ガスの保護下で120℃で攪拌して60min反応し、常温まで冷却した後、不活性ガスの雰囲気中で40mmolNaBHの還元液を滴下し、引き続き攪拌して30min反応し、反応完了後、超音波処理し、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、ビスマスナノシートを得た。厚さが13nmである。
【0043】
前記実施例1〜3で製造したビスマスナノシートを用いて二酸化炭素をギ酸へ電気触媒還元し、還元過程において、定電位還元過程中の電位制御範囲が−0.38V〜−1.08V(vs.RHE)である。電解還元時間は、75hである。
【0044】
図6は、本発明の実施例1、2及び3で製造したビスマスナノシートによるCO還元のリニアスイープボルタモグラムの比較図である。この図から明らかになるように、異なる厚さのビスマスナノシートは、COに対する応答が異なり、また、厚さが小さいほど、応答が顕著になり、厚さが0.7nmのシート層で示した電流が最も高く、初期電位が最も低い。
【0045】
図9は、本発明の実施例1、2及び3で製造したビスマスナノシートがCOをギ酸へ還元したファラデー効率の比較図である。図から分かるように、厚さが0.7nmのビスマスナノシートは、CO還元性能が最もよいものである。厚さが0.7nmであるピーク過電位(330mV)は、いずれも、4nm(430mV)及び13nm(530mV)のビスマスナノシートよりも低く、ギ酸生成のファラデー効率も他の2つの異なる厚さのものよりも顕著に高い。これによりも、ビスマスナノシートのシート層が薄肉であるほど、そのCO触媒還元性能がよい、ということをさらに証明している。
【0046】
実施例4
実施例1で製造した厚さが0.7nmのビスマスナノシートを酸化GOに担持し、担持型ビスマスナノシートを製造した。
【0047】
ただし、酸化GOの代わりに還元GO、BP又はXC−72を使用してもよい。
【0048】
実施例1で製造したビスマスナノシートを炭素系担体と複合しても、依然として高い触媒性能を維持できる。
【0049】
図7は、本発明の実施例4で製造した担持型ビスマスナノシートによるCO還元のリニアスイープボルタモグラム図である。図から分かるように、担持型ビスマスナノシートのCOに対する応答は、わりと高い。
【0050】
実施例5
パラジウムビスマスナノシート合金の製造
塩化パラジウム0.5mmolをエチレングリコールエチルエーテル200mlに溶解し、超音波による攪拌を均一にした後、不活性ガスの保護下で25℃で攪拌して30min反応し、そして室温まで冷却し、その後、塩化ビスマス0.5mmolを入れて混合し、均一に攪拌した後、不活性ガスの雰囲気中で20mmolNaBHの還元液を滴下し、引き続き攪拌して15min反応し、反応完了後、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、乾燥した試料をチューブ炉中に置き、水素ガスを通し、300℃で1h焼成し、パラジウムビスマスナノシート合金を得た。
【0051】
本実施例5で製造したパラジウムビスマスナノシート合金は、依然として高い触媒性能を維持できる。
【0052】
図8は、本発明の実施例5で製造のパラジウムビスマスナノシート合金によるCO還元のリニアスイープボルタモグラム図である。図から分かるように、パラジウムビスマスナノシート合金は、CO飽和の電解液で示した電流及び初期電位がいずれもN飽和の電解液よりも優れている。これは、パラジウムビスマスナノシート合金のCOに対する応答がわりと高いことを示している。
【0053】
実施例6
ニッケルビスマスナノシート合金の製造
硝酸ニッケル5mmolをエチレングリコールエチルエーテル300mLに溶解し、超音波による攪拌を均一にした後、不活性ガスの保護下で120℃で攪拌して60min反応し、そして室温まで冷却し、その後、硝酸ビスマス5mmolを入れて混合し、攪拌を均一にした後、不活性ガスの雰囲気中で40mmolLiBHの還元液を滴下し、引き続き攪拌して30min反応し、反応完了後、エタノール及び水でろ過、洗浄、収集をし、乾燥し、乾燥した試料をチューブ炉中に置き、水素ガスを通し、600℃で3h焼成し、ニッケルビスマスナノシート合金を得た。
【0054】
実施例6において、硝酸ニッケルの代わりに硝酸亜鉛、三塩化金又は塩化銅にした以外、同様に製造して、亜鉛ビスマスナノシート合金、金ビスマスナノシート合金及び銅ビスマスナノシート合金を得た。
【0055】
本実施例6で製造したパラジウムビスマスナノシート合金は、依然として高い触媒性能を維持できる。
【0056】
上述の実施例は、明瞭に説明するための例示に過ぎず、実施形態を限定するものではないことは明らかである。上記の説明に照らして、当業者であれば、さらに他の異なる形態の変形又は変更をすることができる。ここですべての実施形態を網羅的に列挙する必要性及び可能性がないが、それから導き出される自明な変形又は変更は、依然として本発明によって創出された保護の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】
2019157265000001.pdf