【課題】コンクリート構造物の点検者が、点検直後に簡便な方法で貼り付けでき、必要時に糊残りなく簡単に剥離でき、ひび割れを起因とするコンクリート構造物の劣化抑制可能なコンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法を提供する。
【解決手段】コンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法は、基材11と、基材11の一方の主面上に形成された粘着層12とを含む粘着テープ10を準備する工程と、粘着テープ10の粘着層側を、コンクリート14のひび割れ部15に貼り合わせる工程と、粘着テープ10を貼り合わせたコンクリート14を、一定期間、自然環境下で放置する工程と、前記放置後に、粘着テープ10を加熱して、コンクリート14から粘着テープ10を剥離する工程とを備え、粘着層12は、側鎖結晶化ポリマーを含み、粘着テープ10の加熱は、前記側鎖結晶化ポリマーの融点以上で実施される。
前記コンクリート劣化抑制粘着テープの粘着層における前記側鎖結晶化ポリマーの含有量が、前記ブチルゴム系粘着剤に含まれるブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法。
前記ブチルゴム系粘着剤は、ブチルゴムと、充填剤と、軟化剤と、粘着付与剤とを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法。
前記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータが7.3〜9.5のアクリル系モノマーとからなる共重合体であり、
前記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量が、1,000〜15,000である請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法。
前記コンクリート劣化抑制粘着テープの粘着層における前記側鎖結晶化ポリマーの含有量が、前記ブチルゴム系粘着剤に含まれるブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部である請求項7又は8に記載のコンクリート劣化抑制粘着テープ。
前記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータが7.3〜9.5のアクリル系モノマーとからなる共重合体であり、
前記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量が、1,000〜15,000である請求項7〜10のいずれか1項に記載のコンクリート劣化抑制粘着テープ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(コンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法)
先ず、本発明のコンクリート劣化抑制粘着テープの使用方法の実施形態について説明する。本実施形態のコンクリート劣化抑制粘着テープ(以下、単に粘着テープともいう。)の使用方法は、基材と、上記基材の一方の主面上に形成された粘着層とを含む粘着テープを準備する工程と、上記粘着テープの粘着層側を、コンクリートの劣化部分に貼り合わせる工程と、上記粘着テープを貼り合わせた上記コンクリートを、一定期間、自然環境下で放置する工程と、上記放置後に、上記粘着テープを加熱して、上記コンクリートから上記粘着テープを剥離する工程とを備えている。また、上記粘着テープの粘着層は、ブチルゴム系粘着剤と、側鎖結晶化ポリマーとを含み、上記粘着テープの加熱は、上記側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で実施され、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力が、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上であり、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力が、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度70℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下である。
【0012】
本実施形態の粘着テープの使用方法によれば、コンクリート構造部の点検直後に簡便に上記粘着テープをコンクリートの劣化部分に常温で貼り付けて、確実に接着を維持できると共に、必要に応じて加熱することにより糊残りなく簡単に剥がすことができる。また、上記粘着テープをコンクリートの劣化部分に貼り付けている間、コンクリートの劣化を防止できると共に、上記粘着テープ自体の耐久性及び耐疲労性が大きいため、長期間に渡ってコンクリートの劣化を防止できる。更に、上記粘着テープは、その粘着層に着色可能なため、上記粘着テープ自体の色を、コンクリート構造物の色に合わせることができるため、コンクリート構造物に貼り付けても美観を損ねない。
【0013】
また、本実施形態に使用する粘着テープは、その粘着層にブチルゴム系粘着剤を含むことにより、コンクリート構造物といった凹凸面に追従可能で、広い温度領域で外気とコンクリートとの接触を遮断でき、コンクリートのひび割れ等の劣化部分から雨水やCO
2の侵入を抑制できると共に、コンクリートの塩害やアルカリ骨材反応を防止することが可能となるため、コンクリート内の鉄筋の腐食を防止でき、ひび割れしたコンクリート構造物に対しての保護性能を確保することができる。
【0014】
更に、上記粘着テープの粘着層は、側鎖結晶化ポリマーを含んでいるので、上記粘着テープを、上記側鎖結晶化ポリマーの融点以上の温度で加熱することにより、上記粘着層の粘着力を低下させることができ、コンクリート側に粘着層の残渣(糊残り)を生じることなく、コンクリートから上記粘着テープを剥がすことができる。これにより、コンクリートのひび割れ部等の劣化部分の大きさを目視で容易に確認でき、その時点(通常は前回の点検時から5年経過時)において本格的な補修工事が必要か否か判断できる。一般的には、この時点で当該コンクリートの劣化(ひび割れ)が大きく進んでいる場合には、補修工事がなされ、当該コンクリートの劣化が進んでいない場合には、更に5年間の経過観察が行われる。
【0015】
上記側鎖結晶化ポリマーの示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークは、60℃以上であることが好ましい。これにより、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力を、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上とすることができ、且つ、上記粘着力を、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度70℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下とすることができる。
【0016】
上記粘着テープの粘着層の厚さは、200〜5000μmであることが好ましく、500〜1000μmがより好ましい。上記粘着層の厚さが200μmを下回ると、上記粘着層がコンクリートの表面の凹凸に追従できず粘着力が低下する傾向にあり、5000μmを超えてもコンクリートの表面の凹凸に対する追従性に大きな変化がないからである。
【0017】
上記粘着テープの粘着層における上記側鎖結晶化ポリマーの含有量は、上記ブチルゴム系粘着剤に含まれるブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。上記側鎖結晶化ポリマーの含有量が1質量部を下回ると、加熱時における上記粘着層の粘着力が低下しにくいからであり、上記含有量が20質量部を上回ると上記粘着層の粘着力が夏場の外気温度である30℃程度で低下して、コンクリートから上記粘着テープが剥がれるおそれがあるからである。
【0018】
上記ブチルゴム系粘着剤は、ブチルゴムと、充填剤と、軟化剤と、粘着付与剤とを含むことが好ましい。上記ブチルゴム系粘着剤が上記ブチルゴムを含むことで、上記粘着テープの塩水透過阻止性及び二酸化炭素透過阻止性を向上できる。
【0019】
上記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータ(SP値)が7.3〜9.5のアクリル系モノマーとからなる共重合体であることが好ましく、上記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜15,000であることが好ましい。上記側鎖結晶化ポリマーの示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークを60℃以上とするためにはポリマーの原料となるアルカン鎖を有する直鎖アクリレートの融点を45℃以上とする必要があり、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートが好ましい。これにより、上記側鎖結晶化ポリマーの示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークを60℃以上に設定できる。
【0020】
(コンクリート劣化抑制粘着テープ)
次に、本発明のコンクリート劣化抑制粘着テープの実施形態について説明する。本実施形態の粘着テープは、前述の粘着テープの使用方法の実施形態に使用する粘着テープであり、基材と、上記基材の一方の主面上に形成された粘着層とを含み、上記粘着層は、ブチルゴム系粘着剤と、側鎖結晶化ポリマーとを含み、示差走査熱量測定法で測定した上記側鎖結晶化ポリマーの吸熱ピークが、60℃以上であり、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力が、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上であり、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力が、JIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度70℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下である。
【0021】
本実施形態の粘着テープは、その粘着層にブチルゴム系粘着剤を含むことにより、コンクリート構造物といった凹凸面に追従可能で、広い温度領域で外気とコンクリートとの接触を遮断でき、コンクリートのひび割れ等の劣化部分から雨水やCO
2の侵入を抑制できると共に、コンクリートの塩害やアルカリ骨材反応を防止することが可能となるため、コンクリート内の鉄筋の腐食を防止でき、ひび割れしたコンクリート構造物に対しての保護性能を確保することができる。
【0022】
また、上記粘着テープの粘着層は、示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークが60℃以上の側鎖結晶化ポリマーを含んでいるので、上記粘着テープを60℃以上で加熱することにより、上記粘着層の粘着力を低下させることができ、コンクリート側に粘着層の残渣(糊残り)を生じることなく、コンクリートから上記粘着テープを剥がすことができる。具体的には、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力をJIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定した場合に、6N/10mm以上とすることができ、通常の環境下では接着力を維持できる。また、上記粘着層のコンクリートに対する粘着力をJIS Z0237に規定する180°ピール力として、温度70℃、相対湿度5%以下の環境下で測定した場合に、1N/10mm以下にすることができ、上記粘着テープを60℃以上に加熱することにより、必要に応じて糊残りなく簡単に剥離できる。
【0023】
更に、本実施形態の粘着テープは、基材を備えているため、その基材の色を各種調整することにより、コンクリート構造物に貼り付けた場合の美観を損なわずに、点検者が点検直後に簡便な方法で貼り付けでき、必要時に糊残りなく簡単に剥離でき、ひび割れを起因とするコンクリート構造物の劣化抑制が可能となる。
【0024】
以下、本実施形態の粘着テープの各構成部材について説明する。
【0025】
(基材)
本実施形態の粘着テープに用いる基材は、後述する粘着層を形成する基体となるものである。
【0026】
上記基材としては、プラスチック製基材が挙げられ、そのプラスチック製基材としては、具体的には、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体等)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリエチレンナフタレート:PEN、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリブチレンナフタレート:PBN等)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、及び、これらの樹脂の架橋体等の構成材料からなる基材が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が機械的特性及び価格面からより好ましい。これらの構成材料は、1種又は2種以上を使用できる。また、上記構成材料は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。また、機能性モノマーや改質性モノマーが構成材料にグラフトされていてもよい。
【0027】
上記基材の表面は、隣接する粘着層との密着性を向上させるために、公知の表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、具体的には、例えば、コロナ放電処理、オゾン暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等が挙げられる。また、下塗り剤によるコーティング処理(シリコーン処理等)、プライマー処理、マット処理、架橋処理等が上記基材に施されていてもよい。
【0028】
上記基材の形態は、単層でもよいし、2層以上積層された積層体でもよい。また、上記基材中には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、劣化防止剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の公知の助剤が添加されていてもよい。
【0029】
上記基材の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは30〜300μmであり、より好ましくは50〜150μmである。上記基材の厚さが30μm未満の場合、本実施形態の粘着テープ自体の強度が不足する傾向があり、300μmを超えると、コストが高くなる。
【0030】
(樹脂層)
上記基材の耐候性及び耐薬品性を確保するために、後述する粘着層が形成される基材の主面とは反対側の主面上に、樹脂層を配置することが好ましい。上記樹脂層を構成する樹脂としては、
フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。
【0031】
(粘着層)
本実施形態の粘着テープに用いる粘着層は、ブチルゴム系粘着剤と、示差走査熱量測定法で測定した吸熱ピークが60℃以上の側鎖結晶化ポリマーとを含んでいる。また、上記ブチルゴム系粘着剤は、ブチルゴムと、充填剤と、軟化剤と、粘着付与剤とを含むことが好ましい。
【0032】
上記粘着層の厚さは、コンクリート構造物の凹凸面への追従性に応じて決定でき、特に制限されるものではないが、200〜5000μmが好ましく、500〜1000μmがより好ましい。上記粘着層の厚さが、200μm未満だと、コンクリートのひび割れ表面の凹凸に追従できない傾向があり、また、温度23℃、相対湿度50%の環境下でのJIS Z0237に規定する180°ピール力が6N/10mmを得られない傾向にある。一方、上記粘着層の厚さが、5000μmを超えても、ひび割れ表面の凹凸に対する追従性に大きな変化はないが、剥離時にコンクリート構造物に糊残りが生じる傾向があるからである。
【0033】
上記ブチルゴム系粘着剤は、ブチルゴムと、架橋剤と、必要に応じて架橋促進剤と、充填剤と、軟化剤と、粘着付与剤と、必要に応じて老化防止剤とを混練して、架橋型ブチルゴムコンパウンドとして作製される。以下、上記ブチルゴム系粘着剤の形成材料を説明する。
【0034】
[ブチルゴム]
上記ブチルゴムとしては、レギュラーブチルゴム、部分架橋ゴム、タイヤのゴムチューブの熱分解品を用いた再生ブチルゴム等が使用できる。上記ブチルゴムは、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
[架橋剤]
上記架橋剤としては、硫黄や、チウラム系のテトラメチルチウラムスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、p−キノンジオキシム等が一般的に使用されるが、その中でもTMTDを使用するのが望ましい。
【0036】
上記架橋剤の添加量は、上記ブチルゴム100質量部に対して、少なくとも1質量部以上が必要であり、2〜10質量部が望ましい。上記添加量が1質量部未満では架橋度が低くなり、粘着剤の作製時に架橋工程に時間を要する傾向がある。また、上記添加量が10質量部を超えると、架橋度が高くなりすぎて、初期の練り落とし時間が長くなる傾向がある。
【0037】
[架橋促進剤]
上記架橋促進剤としては、チウラム系、チアゾール系、あるいはジチオカルバミン酸塩等が使用され、それぞれ併用して使用できる。上記架橋促進剤の添加量は、上記ブチルゴム100質量部に対して、上記架橋剤の種類及び添加量に合わせて添加されるため、通常2〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0038】
[充填剤]
上記充填剤は、上記ブチル系粘着剤に任意の色彩を持たせるために使用され、また、上記ブチルゴムの補強性を高めるためにも使用される。上記充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カーボンブラック等が使用できるが、特に、炭酸カルシウムや酸化チタンを用いることが望ましい。上記充填剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
上記充填剤の添加量は、上記ブチルゴム100質量部に対して、少なくとも60質量部以上が必要であり、特に、70〜130質量部が望ましい。上記添加量が60質量部未満では、粘着成分の凝集力が低下し、130質量部を超えると、ゴム弾性に劣る上、ムーニー粘度が高くなり過ぎ、上記ブチルゴム系粘着剤の主原料としては好ましくない。
【0040】
[軟化剤]
上記軟化剤としては、プロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン等が使用できるが、本粘着層の効果が好適に得られるという理由でプロセスオイルを使用するのが望ましい。上記軟化剤の添加量は、上記ブチルゴム100質量部に対して、少なくとも10質量部以上が必要であり、20〜60質量部が望ましい。上記添加量が10質量部未満では、上記ブチルゴムと上記充填剤とが均一になりにくく、加工性に劣るものとなり、上記添加量が60質量部を超えると、ムーニー粘度が低くなり過ぎる傾向がある。
【0041】
[粘着付与剤]
上記粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が使用できる。上記粘着付与剤の添加量は、上記架橋型ブチルゴムコンパウンド100質量部に対して、30〜70質量部が望ましい。上記添加量が30質量部未満では、所望の粘着力を発揮できない傾向があり、また、上記添加量が70質量部を超えると、低温条件下での使用において、初期接着性が低下する傾向にある。
【0042】
[老化防止剤]
上記粘着層を構成する粘着剤の耐老化性向上のためには老化防止剤の添加が効果的である。上記老化防止剤としては、例えばフェノール系、アミン系、ベンズイミダゾール系、硫黄系、燐系の老化防止剤を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの中でも、フェノール系、硫黄系の老化防止剤を用いることが好ましい。これらの老化防止剤を1種のみ使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
粘着剤の老化の主な要因は、主に粘着剤を構成するポリマーの酸化劣化である。老化防止剤は、ポリマーの酸化劣化を抑制する機構の違いから分類され、ラジカル連鎖禁止型と過酸化物分解型とに分けられる。
【0044】
上記ラジカル連鎖禁止型の老化防止剤は、分子内にラジカルと反応しやすいフェノール性の「−OH」や「−NH」を有している。そして、劣化によりポリマー中に生成したラジカル等と反応して、不活性化することで自動酸化を停止する効果がある。フェノール系、アミン系の老化防止剤は、ラジカル連鎖禁止型である。
【0045】
一方、過酸化物分解型の老化防止剤は、硫黄あるいは燐を含む化合物、ベンズイミダゾール系化合物が代表的であり、ポリマー中に生成したヒドロペルオキシド(ROOH)を分解し、安定な物質(ROH等)に変える。
【0046】
上記老化防止剤としては、上記ブチルゴム系粘着剤を任意の色に着色することを考えると、非汚染性のフェノール系老化防止剤が望ましい。上記老化防止剤の添加量は、上記ブチルゴム100質量部に対して、2〜10質量部が望ましい。上記添加量が2質量部未満では、上記ブチルゴム系粘着剤が劣化する傾向があり、上記添加量が10質量部を超えても、添加効果に大きな変化はない。
【0047】
次に、上記粘着層に含まれる側鎖結晶化ポリマーについて説明する。上記側鎖結晶化ポリマーは、示差走査熱量測定法(DSC)で測定した吸熱ピークが60℃以上である。DSCは、測定試料と基準物質との間の熱量の差を示差走査熱量計で計測することで、測定試料の融点等を測定する熱分析手法であり、本実施形態では、基準物質としてα−アルミナ等を用いることができる。
【0048】
上記側鎖結晶化ポリマーは、炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートと、溶解度パラメータ(SP値)が7.3〜9.5のアクリル系モノマーとからなる共重合体であることが好ましい。
【0049】
上記炭素数18以上のアルカン鎖を有する直鎖アクリレートとしては、例えば、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、リグノセリチルアクリレート、セロチニルアクリレート、モンタンニルアクリレート、メリシンニルアクリレート等を使用できる。上記直鎖アクリレートを用いることにより、上記側鎖結晶化ポリマーのDSCで測定した吸熱ピークを60℃以上とすることができる。
【0050】
また、上記溶解度パラメータが7.3〜9.5のアクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等を使用できる。上記アクリル系モノマーを用いることにより、上記側鎖結晶化ポリマーと前述のブチルゴム系粘着剤との相溶性を向上できる。
【0051】
また、上記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜15,000であることが好ましく、5000〜12000がより好ましい。
【0052】
上記粘着テープの粘着層における上記側鎖結晶化ポリマーの含有量は、前述のブチルゴム系粘着剤に含まれるブチルゴム100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましい。上記含有量が1質量部より少ないと、60℃以上で加熱した後の粘着力が低下せず、コンクリート構造物からの剥離が難しくなる。また、上記含有量が20質量部より多いと、60℃まで加熱する前に、夏場の高温時に剥離してしまう恐れがある。
【0053】
このような側鎖結晶化ポリマーを用いると、温度を60℃まで上げた場合に粘着力が低下する理由は定かではないが、次のように考えている。即ち、上記側鎖結晶化ポリマーは接着力が小さく、通常、上記側鎖結晶化ポリマーの温度が示差走査熱量測定法で測定したポリマー融点より低い場合には、粘着層の中に埋まった状態で存在しているが、上記側鎖結晶化ポリマーの温度が示差走査熱量測定法で測定したポリマー融点より高くなると、上記側鎖結晶化ポリマーの粘度が低下して、分子量が小さい側鎖結晶化ポリマーが、被着体と粘着層との界面に移動して、粘着力が低下するものと考えられる。
【0054】
続いて、本実施形態の粘着テープの製造方法について説明する。本実施形態の粘着テープの製造方法は、上記ブチルゴムと、上記架橋剤と、必要に応じて上記架橋促進剤と、上記充填剤と、上記軟化剤と、上記粘着付与剤と、必要に応じて上記老化防止剤とを混練して架橋型ブチルゴムコンパウンドを作製する工程と、上記架橋型ブチルゴムコンパウンドに上記側鎖結晶化ポリマーを加えて混練して、粘着層形成塗料を作製する工程と、上記粘着層形成塗料を上記基材の一方の主面に塗布して、上記基材の上に粘着層を形成する工程とを含んでいる。
【0055】
本実施形態の粘着テープの製造方法では、作製した粘着層の上に更に剥離シートを貼り合わせることもできる。
【0056】
次に、本実施形態の粘着テープを図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態の粘着テープの一例を示す概略断面図である。
図1において、粘着テープ10は、基材11の上に粘着層12を備えている。また、
図2は、本実施形態の粘着テープの他の例を示す概略断面図である。
図2において、粘着テープ20は、基材11の上に粘着層12を備え、更に粘着層12の上に剥離シート13を備えている。
【0057】
本実施形態の粘着テープは、JIS K7126に規定する20℃での二酸化炭素透過率が、0.5g/(m
2・24hr・1atm)以下であることが好ましい。上記二酸化炭素透過率が上記範囲内であれば、コンクリートの劣化を促進する二酸化炭素は勿論、コンクリートの劣化を促進する塩素イオン、水、酸素等も遮断することができる。
【0058】
続いて、本実施形態の粘着テープの使用方法について図面に基づき説明する。本実施形態の粘着テープの使用方法では、先ず、
図3に示すように、コンクリート14のひび割れ部15の上に、本実施形態の粘着テープ10の粘着層12側を貼り合わせる。この際、粘着テープ10を基材11側から加圧してもよい。
【0059】
図3の状態で、次回の点検時まで一定期間放置する。その放置期間、例えば、5年間は、コンクリート14のひび割れ部15が粘着テープ10で覆われているため、それ以上コンクリートの劣化は進行しないか、又はその進行が遅くなる。
【0060】
次に、例えば、5年後の次回点検時に、
図4に示すように、粘着テープ10に熱16を加えて、例えば、60〜70℃に加熱する。その際、粘着テープ10の粘着層12には、前述の側鎖結晶化ポリマーを含んでいるため、上記加熱時に粘着層12の粘着力が低下する。そのため、その後にコンクリート14から貼り合わせた粘着テープ10を剥離しても、
図5に示すように、コンクリート14の表面に上記粘着層の糊残りが生じることがない。これにより、コンクリートの劣化状態の確認が容易となる。その後、コンクリート14のひび割れ部15の拡大状況を中心に、コンクリート構造物の全体の劣化状況を踏まえて、その後の補修計画を作成する。例えば、ひび割れ部15が、粘着テープ10を貼り合わせた時と比べて著しく拡大している場合は、至急補修計画を立てることができる。
【0061】
以上の工程により、簡便な方法でコンクリートの劣化防止と、コンクリート構造物の修復の必要性の判断が可能となる。
【0062】
上記工程では、
図1に示した粘着テープ10を用いた例を示したが、
図2に示した粘着テープ20を用いる場合には、剥離シート13を剥がした後、粘着テープ20の粘着層12側をコンクリートに貼り合わせればよい。
【0063】
また、
図6は、コンクリートのひび割れ部から従来の粘着テープを剥離した状態の一例を示す概略断面図である。従来の粘着テープは、その粘着層に側鎖結晶化ポリマーを含んでいないので、常温でそのまま剥離する場合は勿論、加熱して剥離する場合でも、
図6に示すように、コンクリート14の表面に上記粘着層の糊残り12aが生じやすい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」は「質量部」を示す。
【0065】
(実施例1)
<樹脂層付き基材の作製>
先ず、PETフィルム(東レ社製、商品名“S−10”、厚さ:50μm)の片面に、下記成分からなる樹脂層形成塗料を、乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して乾燥し、その後、60℃で48時間保存することにより、PETフィルムの片面に樹脂層を形成させた樹脂層付き基材を作製した。
(1)フッ素系樹脂(ダイキン工業社製、商品名“ゼッフルGK−570”、固形分濃度:65質量%):100部
(2)イソシアネート系架橋剤(旭化成ケミカルズ社製、商品名“デュラネートTPA−100”、固形分濃度:100質量%):13.6部
【0066】
<ブチルゴム系粘着剤の作製>
次に、以下に示す材料を、ニーダーで十分に混練して、ブチルゴム系粘着剤を作製した。
(1)部分架橋ブチルゴム(伸工貿易社製、商品名“ケーラー5215A”):100部
(2)架橋剤(大内新興化学工業社製、商品名“バルノックGM”):0.1部
(3)充填剤(炭酸カルシウム):209.4部
(4)軟化剤(プロセスオイル):386.6部
(5)粘着付与剤(C5樹脂、日本ゼオン社製、商品名“クイントンA100”):21.8部
【0067】
<粘着層形成塗料の作製>
上記ブチルゴム系粘着剤に、側鎖結晶化ポリマーとしてベヘニルアクリレート(炭素数:25)/アクリル酸共重合体を5部加えて、ニーダーで十分に混練して、粘着層形成塗料を作製した。上記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量は7500であった。
【0068】
<粘着テープの作製>
上記樹脂層付き基材の樹脂層が形成されていない面に、上記粘着層形成塗料をカレンダで塗布して、厚さ500μmの粘着層を形成し、その後、上記粘着層の上に、離型PETフィルム(中本パックス社製、商品名“NS−50−ZW”、厚さ:50μm)を貼り合わせて、実施例1の粘着テープを作製した。
【0069】
(実施例2)
粘着層の厚みを300μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粘着テープを作製した。
【0070】
(実施例3)
粘着層の厚みを1000μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粘着テープを作製した。
【0071】
(実施例4)
上記ブチルゴム系粘着剤へのベヘニルアクリレート/アクリル酸共重合体の添加量を12部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粘着テープを作製した。
【0072】
(実施例5)
上記ブチルゴム系粘着剤へのベヘニルアクリレート/アクリル酸共重合体の添加量を3部とした以外は、実施例1同様にして、実施例5の粘着テープを作製した。
【0073】
(比較例1)
側鎖結晶化ポリマーとしてベヘニルアクリレート/アクリル酸共重合体に代えて、パルミチルアクリレート(炭素数:16)/アクリル酸共重合体を5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粘着テープを作製した。上記側鎖結晶化ポリマーの重量平均分子量は8000であった。
【0074】
(比較例2)
側鎖結晶化ポリマーとしてベヘニルアクリレート/アクリル酸共重合体に代えて、パルミチルアクリレート/アクリル酸共重合体を0.5部用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の粘着テープを作製した。
【0075】
(比較例3)
上記ブチルゴム系粘着剤へのベヘニルアクリレート/アクリル酸共重合体の添加量を0部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の粘着テープを作製した。
【0076】
次に、上記実施例1〜5及び上記比較例1〜3で作製した粘着テープについて、粘着力、CO
2透過阻止性及びCl
-イオン透過阻止性(耐塩水性)を下記のように評価した。
【0077】
<粘着力>
作製した粘着テープから離型PETフィルムを全て剥離し、粘着テープの粘着層をモルタル板(エンジニアリングテストサービス社製、150mm×70mm×10mm)に貼り付けて測定サンプルを作製し、その測定サンプルを温度23℃、相対湿度50%に設定した恒温槽の中に入れて、JIS Z0237に準じて粘着力(180°ピール力)を測定した。次に、別の測定サンプルを温度70℃、相対湿度5%の恒温槽の中に入れて、JIS Z0237に準じて粘着力(180°ピール力)を測定した。
【0078】
また、上記両温度での粘着力の測定の後に、粘着テープを完全に剥がした後のモルタル板の表面を観察し、粘着剤の糊残りの有無を確認した。
【0079】
上記結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1において、糊残り「無し」とは、モルタル面に糊残りが全く観察されなかったものであり、糊残り「有り」とは、モルタル板のほぼ全面に糊残りが観察されたものであり、糊残り「一部有り」とは、モルタル板のほぼ全面に島状の糊残りが観察されたものである。
【0082】
<CO
2透過阻止性>
作製した粘着テープから離型PETフィルムを全て剥離した状態におけるCO
2透過率を、JIS K7126(プラスチックフィルム及びシートの気体透過度測定方法)に準じて測定し、下記基準でCO
2透過阻止性を評価した。
CO
2透過率が0.6g/(m
2・24hr・1atm)以下の場合:CO
2透過阻止性は良好と判断
CO
2透過率が0.6g/(m
2・24hr・1atm)を超える場合:CO
2透過阻止性は不良と判断
【0083】
<Cl
-イオン透過阻止性(耐塩水性)>
作製した粘着テープから離型PETフィルムを全て剥離し、粘着テープの粘着層を日本テストヒース社製のモルタルの底面に貼り合わせ、側面4面をエポキシ樹脂でコーティングした後、粘着テープを貼り合わせた面を、5%の食塩水溶液に50℃の条件下で1000時間浸漬させ、浸漬後、モルタルの中央部分から開裂して、モルタルの切断面に1%AgNO
3水溶液を噴霧して、切断面の色の変化を観察することにより、下記基準でCl
-イオンの透過阻止性を評価した。
切断面の色変化を観察しなかった場合:Cl
-イオンの透過阻止性は良好と判断
切断面の色変化を観察した場合:Cl
-イオンの透過阻止性は不良と判断
【0084】
上記結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表1から、実施例1〜5及び比較例1〜3の粘着テープは、23℃粘着力において満足する結果を得たことが分かる。また、実施例1〜5の70℃粘着力は、1N/10mm以下に低下しており、70℃の加熱により糊残りなく粘着テープを剥がすことができた。一方、比較例1〜3の70℃粘着力は、全て1N/10mmを超えており、70℃の加熱を行っても糊残りなく粘着テープを剥がすことができなかった。
【0087】
また、表2から、実施例1〜5及び比較例1〜3の粘着テープは、CO
2透過率、CO
2透過阻止性、Cl
-イオン透過阻止性のいずれにおいて良好な結果を得たことが分かる。これは、粘着テープの透過性は、通常、ベースとなるPETフィルムに大きく依存するためと考えられるからである。