特開2019-157429(P2019-157429A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019157429-杭打機用防音装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-157429(P2019-157429A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】杭打機用防音装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20190823BHJP
【FI】
   E02D13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-42849(P2018-42849)
(22)【出願日】2018年3月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)試験日:平成29年12月13日 (2)試験場所:丸泰土木株式会社 佐倉機材センター(千葉県佐倉市生谷1208番地)
(71)【出願人】
【識別番号】392031918
【氏名又は名称】丸泰土木株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】梅田 巖
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050BB07
2D050CB12
2D050EE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油圧ハンマ等の杭打機による鋼管杭などの既製杭の打設時に発生する打撃音を効果的に低減できる杭打機用防音装置を提供する。
【解決手段】杭Aの頭部と杭打機Bとの当接面の外周を含む杭Aの外周を、杭Aの材軸方向の一定範囲に亘って覆う筒状の上部防音室2と、上部防音室2の下側に位置し、杭Aの上部防音室2より下側部分の外周を覆う下部防音室3とから構成する。下部防音室3と上部防音室2を連続する空間とする。下部防音室3を杭Aの側方に急拡大させて断面を上部防音室2より広くする。上部防音室2の室内側に吸音材、その室外側に遮音材を設置する。下部防音室3の側面と上面の室内側に吸音材を設置し、その室外側に側面遮音材と上面遮音材をそれぞれ設置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の打設時に発生する杭打機による杭の打撃音を低減する杭打機用防音装置であって、前記杭の頭部と前記杭打機との当接面の外周を含む前記杭の外周を前記杭の材軸方向の一定範囲に亘って覆う筒状の上部防音室と、当該上部防音室の下側に位置し、前記杭の前記上部防音室より下側部分の外周を覆う下部防音室とを備え、前記下部防音室は前記上部防音室と連続する空間をなし、かつ前記杭の側方に急拡大して断面が前記上部防音室より広くなっていることを特徴とする杭打機用防音装置。
【請求項2】
請求項1記載の杭打機用防音装置において、前記上部防音室と前記下部防音室は分割可能に構成され、かつ前記下部防音室は複数に分割可能に構成されていることを特徴とする杭打機用防音装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の杭打機用防音装置において、前記上部防音室および前記下部防音室の室内側に吸音材、室外側に遮音材がそれぞれ設置されていることを特徴とする杭打機用防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ハンマ等の杭打機による鋼管杭などの既製杭の杭打ちに用いられる杭打機用防音装置に関し、杭の打設時に発生する打撃音を効果的に低減できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ハンマ等の杭打機によって鋼管杭などの既製杭を打撃して地中に打設する杭は、大きな騒音や振動を伴うため法規制により現在市街地ではほとんど実施されていない。
【0003】
しかし、杭打機による杭打ちは施工速度が速く、効率的かつ経済的に杭打ちを行うことができ、また、支持層への貫入、支持力の推定が容易などのメリットがあるため、近年見直されている。
【0004】
ところで、杭打機による杭打ちには、通常、杭打ちに伴う打撃音を低減するための防音カバーが用いられる。例えば、特許文献1には、杭(12)の頭部と当該杭頭部に落とされた杭打機(14)が衝突する部分の外周を筒状に覆う筒状カバー(16)と、当該筒状カバー(16)の内側に設置され、筒状カバー(16)と杭(12)間の隙間を塞いで筒状カバー(16)の下部開口からの打撃音の音漏れを防止する吸音材からなる傘状の下面カバー(20)とを備えた杭打機用防音装置の発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、長尺の筒状に形成した防音シート(1)の胴部に大リング(2)と小リング(3)を交互に固定して伸縮可能な蛇腹状となし、この防音シート(1)の最上部を杭打機の下部に接続固定し得るようにした杭打機の防音カバーの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−150282号公報
【特許文献2】実開昭61−112052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の杭打機用防音装置および特許文献2の防音カバーは、いずれも杭の頭部または全体を単に防音材で覆って打撃音が周囲に漏れないようにするものであり、防音効果はもっぱら防音材の吸音と遮音によるものであるため自ずと限界があった。
【0008】
本発明は、以上の課題を開発するためになされたもので、油圧ハンマ等の杭打機による杭の打設時に発生する打撃音を効率的に低減できるようにした杭打機用防音装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、杭打機による杭の打設時に発生する杭の打撃音をきわめて効果的に低減できるようにした杭打機用防音装置の発明であり、前記杭の頭部と前記杭打機との当接面(杭頭部と杭打機との接触面)の外周を含む前記杭の外周を前記杭の材軸方向の一定範囲に亘って覆う筒状の上部防音室と、当該上部防音室の下側に位置し、前記杭の前記上部防音室より下方部分の外周を覆う下部防音室とを備え、前記下部防音室は前記上部防音室と連続する空間をなし、かつ前記杭の側方に急拡大して断面が前記上部防音室より広くなっていることを特徴とするものである。
【0010】
前記下部防音室を前記上部防音室と連続する空間とし、かつ前記杭の側方に急激に拡大させて前記上部防音室より広くすることで、杭の頭部と杭打機との当接面(杭頭部と杭打機との接触面)で発生した打撃音は、上部防音室内を伝わって下部防音室内で急激に拡散されることにより音エネルギーが減衰されるため、杭の打撃音は低減される。
【0011】
また、下部防音室で低減された音エネルギーは、下部防音室の内周に設置された発泡ウレタン等からなる吸音材に吸収され、さらに吸音材を透過した音エネルギーは吸音材の外側に設置された鋼板などからなる遮音材によって遮音されるため、杭の打撃音はさらに低減される。
【0012】
なお、上部防音室および下部防音室の形状は特に限定されるものではないが、上部防音室は円筒形状、下部防音室は直方体形状とするのが構造的に優れている。
【0013】
さらに、前記下部防音室を前記上部防音室より前記杭の径方向に大きく構成することにより、装置全体の重心が低くなり安定性が高められる。なお、下部防音室の内法高(天井高)は、下部防音室で杭の打止め管理などの杭打ちに伴う作業があることから、下部防音室でこれらの作業を円滑に行える高さが確保されていることが望ましい。
【0014】
また、前記上部防音室と前記下部防音室を分割可能に構成し、さらに前記下部防音室を複数に分割可能に構成することにより運搬や保管等に際して取り扱いが容易になる。
【0015】
なお、上部防音室も必要に応じて軸方向に複数に分割可能に構成することにより杭の長さに合わせて高さを変更することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特に下部防音室がその上側に位置する上部防音室と連続する空間に構成され、かつ杭の側方に急拡大して前記上部防音室より広く構成されていることで、杭の頭部と杭打機との当接面(杭頭部と杭打機との接触面)で発生した打撃音は、上部防音室内を伝わって下部防音室内で急激に拡散することにより音エネルギーが減衰されることにより杭の打撃音を低減することができる。
【0017】
さらに、下部防音室で減衰された音エネルギーは、下部防音室の内周に設置された発泡ウレタン等からなる吸音材に吸収され、さらに吸音材を透過した音エネルギーは吸音材の外側に設置された鋼板などからなる遮音材によって遮音されるため、杭の打撃音をさらに低減することができる。
【0018】
また、下部防音室を上部防音室より杭の側方向に大きく構成されているため、装置全体の重心が低く安定性に優れている。また、上部防音室と下部防音室が分割可能に構成され、さらに下部防音室が複数に分割可能に構成されているため、運搬や保管等に際して取扱いがきわめて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を図示したものであり、杭打機用防音装置の外観を示す斜視図である。
図2図1に図示する杭打機用防音装置の縦断面図である。
図3図1に図示する杭打機用防音装置の構造を図示したものであり、図3(a),(b)はそれぞれ図4(a)におけるイ−イ線、ロ−ロ線断面図である。
図4図1に図示する杭打機用防音装置の構造を図示したものであり、図4(a),(b)はそれぞれ図3におけるハ−ハ線、ニ−ニ線断面図である。
図5図1に図示する杭打機用防音装置の構造を図示したものであり、図5(a)は図4(b)におけるホ−ホ線断面図、図5(b)は図5(a)におけるヘ部拡大図、図5(c)は図5(b)におけるト−ト線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図5は、本発明の一実施形態を図示したものであり、図において、杭打機用防音装置1は、上部防音室2および当該上部防音室2の下側に位置する下部防音室3の地表面から出ている杭Aの全長を覆うことが可能な大きさに構成されている(図2参照)。
【0021】
上部防音室2は、杭打機Bによる打撃時の杭Aの頭部と杭打機Bとの当接面(杭頭部と杭打機との接触面)の外周を含む杭Aの外周を杭Aの軸方向の一定範囲に亘って覆う円筒形状に構成されている。
【0022】
また、コルゲートパイプやライナープレート等からなる遮音材2aと当該遮音材2aの内側に設置された発泡ウレタン等からなる吸音材2bとから二重に構成されている(図5参照)。
【0023】
また、上部防音室2は、下部防音室3の上端部のほぼ中央に立設され、かつ下部防音室3の上端部にアングル材と連結ボルト等からなる複数の接続用金具4によって脱着可能に固定されている。
【0024】
また、上部防音室2の上端部と下部防音室3の各コーナ部との間に転倒防止ワイヤー14が架設され、各転倒防止ワイヤー14の下端部14aは後述する吊受け及び転倒防止受け13の結束孔13aに結束されている。なお、接続用金具4は上部防音室2の周方向に一定間隔おきに取り付けられている。
【0025】
下部防音室3は、上部防音室2の下端面より下方の、杭Aの外周を覆う直方体の箱状に構成され、また、上部防音室2より杭Aの側方向(直径方向)に大きく構成され、これにより重心が低くなり安定性が図られている。
【0026】
さらに、下部防音室3内は上部防音室2内より杭Aの側方向に広く、かつ内法高(天井高)は、下部防音室3内で杭の打止め管理などの杭打ちに伴う作業があることから、下部防音室内でこれらの作業に可能な高さが確保されている。
【0027】
また、下部防音室3は、H形鋼などからなる複数の軸組材5より直方体の箱状に構成され、その側面と上面に発泡ウレタン等からなる吸音材6、その外側に鋼板からなる側面遮音材7aと上面遮音材7bがそれぞれ取り付けられ、さらに下面には鋼板からなる床板8が取り付けられている。なお、側面遮音材7aには厚さ4mm程度の鉄板が用いられ、上面遮音材7bと床板8には厚さ25mm程度の鉄板が用いられている。
【0028】
また、下部防音室3の上端面および下端面の中央に、杭Aが貫通可能な貫通孔9と10がそれぞれ形成され、貫通孔9を介して下部防音室3内と上部防音室2内は、連続するひとつの空間に連通している。また、貫通孔9の周縁部に鋼板からなる補強プレート11が貫通孔9の周方向にリング状に連続して取り付けられている。
【0029】
なお、符号12は下部防音室3の側面に設けられた出入口であり、出入口12には防音構造の扉が取り付けられている。また、符号13は転倒防止ワイヤー14の下端部14aを結束し、また、本装置1をクレーン等で吊る際に、吊りワイヤー15の端部15aを結束するための吊り受け及び転倒防止受けであり、各ワイヤー14,15の端部14a,15aをそれぞれ結束するための結束孔13a,13bを有し、かつ下部防音室3の各コーナ部の上端部に取り付けられている。
【0030】
このように構成された杭打機用防音装置1は、地上に立設された杭Aの上にクレーン等で吊って真上から被せられる。そして、杭Aの上端部を杭打機Bによって繰り返し打撃することにより杭Aを地盤中に打ち込むことができる。
【0031】
また、杭打機Bによる打撃音は、杭Aの頭部と杭打機Bとの当接面で最も大きく発生し、上部防音室2と杭Aとの間を下方に伝わり、下部防音室3内で急激に拡散することにより音エネルギーが減衰され、打撃音が低減される。
【0032】
また、下部防音室3で低減された音エネルギーは、下部防音室3の内周に設置された発泡ウレタン等からなる吸音材6に吸収され、さらに吸音材6を透過した音エネルギーは吸音材6の外側に設置された鋼板などからなる遮音材7によって遮音されるため、杭の打撃音はさらに低減される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、油圧ハンマ等の杭打機による鋼管杭などの既製杭の打設時に発生する打撃音を効果的に低減することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 杭打機用防音装置
2 上部防音室
2a 遮音材
2b 吸音材
3 下部防音室
4 接続用金具
5 軸組材
6 吸音材
7a 側面遮音材
7b 上面遮音材
8 床板
9 貫通孔
10 貫通孔
11 補強プレート
12 出入口
13 吊り受け及び転倒防止受け
13a 結束孔
13b 結束孔
14 転倒防止ワイヤー
15 吊りワイヤー
A 杭
B 杭打機
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2019年3月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の打設時に発生する杭打機による杭の打撃音を低減する杭打機用防音装置であって、前記杭の頭部と前記杭打機との当接面の外周を含む前記杭の外周を前記杭の材軸方向の一定範囲に亘って覆う筒状の上部防音室と、当該上部防音室の下側に位置し、前記杭の前記上部防音室より下側部分の外周を覆う下部防音室とを備え、前記上部防音室は円筒形状に、前記下部防音室は直方体の箱状にそれぞれ構成され、前記上部防音室と前記下部防音室は連続する空間に構成され、かつ前記下部防音室は前記上部防音室より前記杭の側方に広く大きく構成されていることで、前記打撃音が前記下部防音室で拡散するようになっていることを特徴とする杭打機用防音装置。
【請求項2】
請求項1記載の杭打機用防音装置において、前記上部防音室と前記下部防音室は分割可能に構成され、かつ前記下部防音室は複数に分割可能に構成されていることを特徴とする杭打機用防音装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の杭打機用防音装置において、前記上部防音室および前記下部防音室の室内側に吸音材、室外側に遮音材がそれぞれ設置されていることを特徴とする杭打機用防音装置。