【解決手段】L字形軸部材500を利用して形成される建設機械走行用の架台であり、左枠体200Lと右枠体200R、連結材300を備えたものである。左枠体200Lと右枠体200Rは外観視六面体の枠組構造であり、連結材300は左用連結孔320Lと右用連結孔320Rが設けられたものである。左右枠体200L,200Rの枠材と連結材300それぞれの連結孔220に挿通された接合材600によって、左枠体200L及び右枠体200Rと連結材300が連結される。
前記連結材(300)は、前記L字形軸部材(500)によって形成され、前記第1のフランジ(501)に前記左用連結孔(320L)及び前記右用連結孔(320R)が設けられるとともに、前記第2のフランジ(502)に該第1のフランジ(501)とは異なる配置で前記左用連結孔(320L)及び前記右用連結孔(320R)が設けられ、
前記連結材(300)の配置姿勢によって、前記左枠体(210L)及び前記右枠体(210R)の設置間隔を変更し得る、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の建設機械走行用架台。
第1のフランジ(501)と第2のフランジ(502)からなるL字形軸部材(500)によって形成される建設機械走行用架台(100)を用いて、建設機械(CR)の走行路を設置する方法であって、
前記建設機械走行用架台(100)は、左枠体(200L)と右枠体(200R)と連結材(300)を具備し
前記左枠体(200L)及び前記右枠体(200R)は、第1枠材(211)と第2枠材(212)と第3枠材(213)の3種類の枠材(210)で構成される外観視六面体の枠組構造であり、第1軸(X)に平行又は略平行に配置される4つの該第1枠材(211)と、該第1軸(X)に対して垂直となる第2軸(Y)に平行又は略平行に配置される4つの該第2枠材(212)と、該第1軸(X)及び該第2軸(Y)に対して垂直となる第3軸(Z)に平行又は略平行に配置される4つの該第3枠材(213)それぞれの端部を固定することで形成され、
前記左枠体(200L)及び前記右枠体(200R)の前記枠材(210)は、前記L字形軸部材(500)によって形成され、前記第1のフランジ(501)及び前記第2のフランジ(502)それぞれに連結孔(220)が設けられ、
前記連結材(300)には、左用連結孔(320L)及び右用連結孔(320R)が設けられ、
建設機械(CR)の走行方向と直角方向に間隔を設けて、前記左枠体(200L)と前記右枠体(200R)を設置する左右枠体設置工程と、
前記左枠体(200L)の前記枠材(210)に設けられた前記連結孔(220)と前記連結材(300)の前記左用連結孔(320L)の位置を合わせて接合材(600)を挿通して前記左枠体(200L)と前記連結材(300)を連結するとともに、前記右枠体(200R)の前記枠材(210)に設けられた前記連結孔(220)と前記連結材(300)の前記右用連結孔(320R)の位置を合わせて接合材(600)を挿通して前記右枠体(200R)と前記連結材(300)を連結することで、建設機械走行用架台(100)を構築する建設機械走行用架台構築工程と、
建設機械(CR)の走行方向に間隔を設けて2以上の箇所に構築された前記建設機械走行用架台(100)の上に、走行板(400)を載置する走行板載置工程と、を備え、
前記左右枠体設置工程では、鉛直又は略鉛直方向となる前記枠材(210)が、ともに同種類となるように前記左枠体(200L)と前記右枠体(200R)が設置される、ことを特徴とする建設機械用走行路設置方法。
【背景技術】
【0002】
住宅、あるいは店舗や事務所用の建屋など(以下、「住宅等」という。)の建設に当たっては、地盤に伝わる単位面積当たりの荷重を軽減し、上屋の安定を図り、あるいは不同沈下を避けるといった目的で、基礎が設置される。基礎工は、直接基礎と杭基礎に大別することができ、さらに直接基礎は単独基礎と、布基礎、ベタ基礎に分けることができる。例えば、集合住宅やオフィスビル等の高層ビル、あるいは橋台や大規模擁壁といった土木構造物などは、地盤の状況によって杭基礎が採用されることもあるが、比較的自重が小さい住宅等ではコンクリート造の布基礎やベタ基礎(以下、これらを総称して「布基礎等」という。)といった直接基礎が採用されるのが一般的である。
【0003】
基礎工事は当然ながら最初に行われる工種であり、そのため基礎は構造物の中で最も下に位置するものである。換言すれば、上部構造物(基礎を除く構造物)の建設は既に基礎が設置された状態で行われることとなり、例えば住宅等の場合であれば、布基礎等が構築された状態で上屋の建設作業が行われるわけである。
【0004】
住宅等を建設するには、バックホウやダンプトラック、コンクリートアジテータ車やコンクリートポンプ車、あるいはユニック車やトラッククレーンといった揚重機など、多種多様な建設機械が利用される。もちろん上部構造物の構築の際にもこれらの建設機械が利用されることがあり、すなわち布基礎等が構築された状態で種々の建設機械が施工現場に搬入される。通常、コンクリート造の布基礎等(特に若材齢のもの)は建設機械の自重や衝突荷重に対して極めて脆弱であることから、施工現場では布基礎等に十分配慮したうえで建設機械を搬入し、或いは使用することが求められる。そのため、既設の布基礎等が障壁となって、所望の建設機械が搬入できない、あるいは思うように建設機械が配置できず作業効率が悪くなる、といった問題が生じることも少なくなかった。
【0005】
そこで特許文献1では、作業車が建築物の基礎を乗り越えて移動するため、板状の合成樹脂発泡体を利用する技術について提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術は、作業車のアウトリガーとタイヤを積層した合成樹脂発泡体で支えるというものである。より具体的には、アウトリガーの伸長により作業車を持ち上げ、その状態でタイヤの下に合成樹脂発泡体を積層して敷設し、アウトリガーを縮めることで作業車の自重を一旦タイヤに預ける。その後、アウトリガーの下方にもタイヤと同じ程度に合成樹脂発泡体を積層して敷設し、再びアウトリガーの伸長により作業車を持ち上げ、さらにタイヤの下に合成樹脂発泡体を積層して敷設する。これらの工程を、タイヤ下面の位置が建築物の基礎を超える高さになるまで繰り返し行い、所定の通路を設置したうえで作業車が基礎を越えながら移動するわけである。
【0008】
このように特許文献1の技術は、アウトリガーを備えた作業車を対象としたものであり、当然ながらアウトリガーのない建設機械はこの技術を利用することができない。また、特許文献1でも触れているように通常のアウトリガーの伸長量はそれほど大きくないことから、建築物の基礎よりも高い位置まで作業車を持ち上げるためには、アウトリガーの伸長、タイヤ下への合成樹脂発泡体の敷設、タイヤへの自重移行、アウトリガーの下への合成樹脂発泡体の敷設という一連のサイクルを繰り返し行わなければならいない。
【0009】
本発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち既に基礎が設置された状態であっても容易かつ効率的に建設機械を搬入して配置することができる、建設機械用走行路の設置方法とこれに使用する建設機械走行用架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、山形鋼等の軸部材で枠組構造を形成するともに、左右に配置した枠組構造を連結材で固定することで、建設機械走行路の基礎(土台)を構築する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0011】
本発明の建設機械走行用架台(100)は、第1のフランジ(501)と第2のフランジ(502)からなるL字形軸部材(500)を利用して形成される建設機械走行用の架台(100)であり、左枠体(200L)と右枠体(200R)、連結材(300)を備えたものである。このうち左枠体(200L)と右枠体(200R)は、第1枠材(211)と第2枠材(212)、そして第3枠材(213)からなる枠材(210)で構成される外観視六面体の枠組構造であり、第1軸(X)に略平行(平行含む)に配置される4つの第1枠材(211)と、この第1軸(X)に対して垂直となる第2軸(Y)に略平行(平行含む)に配置される4つの第2枠材(212)と、これら第1軸(X)と第2軸(Y)に対して垂直となる第3軸(Z)に略平行(平行含む)に配置される4つの第3枠材(213)を用い、それぞれの端部を固定することで形成される。また左枠体(200L)と右枠体(200R)の枠材(210)は、L字形軸部材(500)によって形成されるもので、第1のフランジ(501)と第2のフランジ(502)それぞれに連結孔(220)が設けられている。また連結材(300)は、左用連結孔(320L)と右用連結孔(320R)が設けられたものである。そして、左枠体(200L)の枠材(210)に設けられた連結孔(220)と連結材(300)の左用連結孔(320L)に挿通された接合材(600)によって左枠体(210L)と連結材(300)が連結され、右枠体(200R)の枠材(210)に設けられた連結孔(220)と連結材(300)の右用連結孔(320R)に挿通された接合材(600)によって右枠体(200R)と連結材(300)が連結される。
【0012】
本発明の建設機械走行用架台(100)は、第1枠材(211)と第2枠材(212)、第3枠材(213)それぞれの軸方向寸法が異なるものとすることもできる。この場合、左枠体(200L)と右枠体(200R)の配置姿勢を変えることで、左右の枠体(200)の設置高さ、すなわち建設機械の走行高さを容易に変更することができる。
【0013】
本発明の建設機械走行用架台(100)は、第1のフランジ(501)と第2のフランジ(502)に設けられる連結孔(220)の配置が異なる連結材(300)を備えたものとすることもできる。より詳しくは、L字形軸部材(500)である連結材(300)の第1のフランジ(501)に左用連結孔(320L)と右用連結孔(320R)が設けられるとともに、第2のフランジ(502)に第1のフランジ(501)とは異なる配置で左用連結孔(320L)と右用連結孔(320R)が設けられる。この場合、連結材(300)の配置姿勢を変えることで、左枠体(200L)と右枠体(200R)の設置間隔を容易に変更することができる。
【0014】
本発明の建設機械用走行路設置方法は、本発明の建設機械走行用架台(100)を用いて建設機械(CR)の走行路を設置する方法であり、左右枠体設置工程と、建設機械走行用架台構築工程、走行板載置工程を備えた方法である。このうち、左右枠体設置工程では、建設機械(CR)の走行方向と直角方向に間隔を設けて左枠体(200L)と右枠体(200R)を設置する。また建設機械走行用架台構築工程では、左枠体(200L)の枠材(210)に設けられた連結孔(220)と連結材(300)の左用連結孔(320L)の位置を合わせて接合材(600)を挿通して左枠体(200L)と連結材(300)を連結するとともに、右枠体(200R)の枠材(210)に設けられた連結孔(220)と連結材(300)の右用連結孔(320R)の位置を合わせて接合材(600)を挿通して右枠体(200R)と連結材(300)を連結することで、建設機械走行用架台(100)を構築する。そして走行板載置工程では、建設機械(CR)の走行方向に間隔を設けて2以上の箇所に構築された建設機械走行用架台(100)の上に走行板(400)を載置する。なお、左右枠体設置工程では、略鉛直(鉛直含む)方向となる枠材(210)がともに同種類となるように(つまり、同じ高さとなるように)左枠体(200L)と右枠体(200R)が設置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建設機械走行用架台、及び建設機械用走行路設置方法には、次のような効果がある。
(1)建設機械走行用架台は、左枠体と右枠体を連結材で連結するだけで完成することから、施工現場でも極めて容易に構築することができる。
(2)建設機械走行用架台を構成する左右の枠体と連結材は、山形鋼等のL字形軸部材を主体として形成されることから、比較的手間が掛からず低コストで作成することができる。
(3)建設機械走行用架台を構成する左右の枠体と連結材は、いずれも比較的軽量であることから、容易に運搬・移動することができ、したがって所望の場所に柔軟に設置することができる。
(4)布基礎等を挟んで建設機械走行用架台を配置し、この布基礎等の上方に走行板を架け渡すことができるため、布基礎等に荷重が作用することなく、すなわち布基礎等に影響を及ぼすことなく建設機械が施工現場内を走行することができる。
(5)アウトリガーを備えた建設機械を配置する場合、建設機械走行用架台をアウトリガーの基礎台として利用することができ、その結果、施工現場内で柔軟に建設機械を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】建設機械の走行を支えるために配置された建設機械用走行路を示す正面図である。
【
図2】建設機械走行用架台を構成する枠体を模式的に示すモデル図である。
【
図3】代表的なL字形軸部材である山形鋼を示す部分斜視図である。
【
図4】L字形軸部材によって形成された枠体の斜視図である。
【
図5】補強材によって補強された枠体を示す斜視図である。
【
図6】(a)は連結材によって左枠体と右枠体を連結した建設機械走行用架台を示す正面図、(b)は(a)に示すA−A矢視図であって、枠材と連結材との接合を説明する詳細断面図である。
【
図7】(a)は狭い間隔で左右の枠体を連結した建設機械走行用架台を示す正面図、(b)は(a)と同一の連結材を用いて中間の間隔で左右の枠体を連結した建設機械走行用架台を示す正面図、(c)は(a)と同一の連結材を用いて広い間隔で左右の枠体を連結した建設機械走行用架台を示す正面図である。
【
図8】第1のフランジに設けた左用連結孔と右用連結孔の配置が、第2のフランジに設けた左用連結孔と右用連結孔の配置と異なる連結材を示す斜視図である。
【
図9】(a)は軸方向寸法がH
1である第1枠材と軸方向寸法がH
2である第2枠材で形成される面が正面(背面)となるように配置した枠体の正面図、(b)は軸方向寸法がH
2である第2枠材と軸方向寸法がH
3である第3枠材で形成される面が正面(背面)となるように配置した枠体の正面図、(c)は軸方向寸法がH
3である第3枠材と軸方向寸法がH
1である第1枠材で形成される面が正面(背面)となるように配置した枠体の正面図である。
【
図10】(a)は既に構築されたコンクリート造の布基礎等を避けて本発明の建設機械走行用架台を設置した状態を示す平面図、(b)はコンクリート造の布基礎等を交わして設置された建設機械用走行路を走行する建設機械を示す側面図である。
【
図11】本発明の建設機械用走行路設置方法の主な工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の建設機械走行用架台、及び建設機械用走行路設置方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0018】
本発明の建設機械走行用架台は、建設機械が走行するための走行路(以下、「建設機械用走行路」という。)を形成するための架台(基礎台)である。そしてこの建設機械用走行路は、建設機械が走行する方向(以下、単に「走行方向」という。)に間隔を設けて設置した建設機械走行用架台に走行板を架け渡すことで設置される。
図1は、建設機械CRの走行を支えるために配置された建設機械用走行路を示す正面図である。この図に示すように建設機械用走行路は、建設機械走行用架台100と走行板400で構成される。より詳しくは、左側に配置された枠体200(以下、「左枠体200L」という。)と右側に配置された枠体200(以下、「右枠体200R」という。)を連結材300が連結することで建設機械走行用架台100は形成され、走行方向に離れて配置された左枠体200L間に左側用の走行板400が架け渡されるとともに、同じく走行方向に離れて配置された右枠体200R間に右側用の走行板400が架け渡されることで建設機械用走行路は形成される。
【0019】
以下、本発明を構成する主要な要素ごとに詳しく説明する。なお、本発明の建設機械用走行路設置方法は、本発明の建設機械走行用架台100を使用する方法であるから、まずは建設機械走行用架台100について説明し、その後に建設機械用走行路設置方法について説明することとする。
【0020】
1.建設機械走行用架台
(枠体)
図2は建設機械走行用架台100を構成する枠体200を模式的に示すモデル図である。
この枠体200は、断面寸法に対して軸方向寸法が著しく大きな軸部材からなり、
図2に示すように外観視で六面体の枠組構造とされる。ただし、外観すると六面体に見えるだけであって、枠体200はあくまで軸部材(六面体の各辺に相当する部分)を構成要素とするものであり、六面体の各面に相当する部分は必ずしも構成要素とする必要はない。
【0021】
六面体の枠組構造となることから、枠体200は3種類の軸部材を有している。
図2に示すように第1軸Xと第2軸Y、そして第3軸Zからなる3つの軸を考えると、4本の第1の軸部材(以下、「第1枠材211」という。)はそれぞれ第1軸Xに対して平行(略平行含む)に配置され、4本の第2の軸部材(以下、「第2枠材212」という。)はそれぞれ第2軸Yに対して平行(略平行含む)に配置され、4本の第3の軸部材(以下、「第3枠材213」という。)はそれぞれ第3軸Zに対して平行(略平行含む)に配置される。なお第1軸Xと第2軸Y、第3軸Zはそれぞれ交差角が直角となるように設定され、すなわち第2軸Yは第1軸Xに対して垂直であって第3軸Zは第1軸X及び第2軸Yに対して垂直となるように設定される。また、4本の第1枠材211はそれぞれ同じ軸方向寸法(長さ)とされ、同様に4本の第2枠材211と第3枠材213もそれぞれ同じ軸方向寸法とされる。
【0022】
枠材(第1枠材211、第2枠材212、第3枠材213)は、断面寸法に対して軸方向寸法が著しく大きな軸部材が用いられると説明したが、軸部材のうち特に2つのフランジを具備する断面視でL字形の軸部材(以下、「L字形軸部材500」という。)を利用するとよい。
図3は、代表的なL字形軸部材500である山形鋼(いわゆるアングル)を示す部分斜視図である。この図に示す山形鋼のようにL字形軸部材500は、第1のフランジ501と第2のフランジ502が直交するように突き合わされたものであり、もちろん山形鋼に限らず平鋼を折り曲げ加工したものや、2つの部材(第1のフランジ501と第2のフランジ502)を突合せ溶接したもの、あるいは鋼製に限らず高強度の樹脂製とするなど、種々の態様のものをL字形軸部材500とすることができる。ただし、建設機械CRの自重が作用することから、相当程度の強度を有する材料を選択することが望ましい。
【0023】
図4はL字形軸部材500によって形成された枠体200の斜視図である。
この図に示す枠体200は次のように形成される。すなわち、軸方向寸法(長さ)が異なる3種類のL字形軸部材500を4本ずつ用意してそれぞれ第1枠材211、第2枠材212、第3枠材213とし、4本の第1枠材211を第1軸Xに対して平行(略平行含む)となるように配置し、同様に4本の第2枠材212を第2軸Yに対して平行(略平行含む)となるように、4本の第3枠材213を第3軸Zに対して平行(略平行含む)となるように配置し、そして12本の枠材(第1枠材211〜第3枠材213)それぞれの両端を溶接やビス接合等によって固定することで枠体200は形成される。なおL字形軸部材500は、
図2にも示すように、第1のフランジ501、第2のフランジ502ともに六面体を構成する各面の方向と平行(略平行含む)となる姿勢で配置するとよい。
【0024】
既述したとおり、枠体200には建設機械CRの自重が作用する。そのため枠体200は相当程度の強度を備えた構造とすることが望ましい。作用する荷重によっては12本の枠材(第1枠材211〜第3枠材213)のみで枠体200を構成することもできるが、建設機械CRの自重が比較的大きい場合や、それぞれの枠材の軸方向寸法(つまり曲げモーメントに対するスパン長)が大きい場合は、12本の枠材からなる基礎構造に対して補強材で補強するとよい。
図5は、補強材214によって補強された枠体200を示す斜視図である。この図では、第1軸X方向に配置した4本(2列)の補強材214と、第3軸Z方向に配置した4本(2列)の補強材214によって枠体200を補強している。もちろん第1軸X方向や第3軸Z方向に補強材214を配置する場合に限らず、第2軸Y方向に補強材214を配置して補強することもできるし、補強材214を斜材(ブレース材)として配置することで枠体200を補強することもできる。
【0025】
(左右枠体の連結)
図1に示すように建設機械走行用架台100を構成する枠体200は、左右1組となるように配置される。建設機械CRの左側クローラ(あるいはタイヤ)を支持するために左枠体200Lが配置され、建設機械CRの右側クローラ(あるいはタイヤ)を支持するために右枠体200Rが配置されるわけである。このとき、左枠体200Lと右枠体200Rを独立して設置しただけでは、横方向に自由に移動できるため位置がずれたり、平面回転が拘束されないためその向きが変わったり、あるいは建設機械CRの自重が作用することで側方に転倒するおそれがある。そこで本発明の建設機械走行用架台100は、連結材300によって左枠体200Lと右枠体200Rを連結することとした。なお、左右の枠体200を連結するこの連結材300は、枠体200の枠材と同様、断面寸法に対して軸方向寸法が著しく大きな軸部材で形成され、山形鋼といったL字形軸部材500や平鋼などによって形成される。
【0026】
図6(a)は、連結材300によって左枠体200Lと右枠体200Rを連結した建設機械走行用架台100を示す正面図である。
この図に示すように、左枠体200Lと右枠体200Rを配置したときに最も下に位置する枠材210(最下段の枠材210)同士を、連結材300が連結することによって建設機械走行用架台100は形成される。以下、建設機械走行用架台100を形成する手順の例について詳しく説明する。
【0027】
左枠体200Lと右枠体200Rが予定した位置に配置されると、左枠体200Lの最下段の枠材210に設けられた連結孔220と連結材300に設けられた左用連結孔320Lの位置を合わせるとともに、右枠体200Rの最下段の枠材210に設けられた連結孔220と連結材300に設けられた右用連結孔320Rの位置を合わせるように、連結材300を配置する。したがって、連結材300には1又は2以上の(図では3つの)左用連結孔320Lと1又は2以上の(図では3つの)右用連結孔320Rが設けられており、また枠体200を構成する枠材210のフランジには1又は2以上の連結孔220が設けられている。なお、枠体200を任意の姿勢で(特定の姿勢に限定されることなく)使用することができるように、枠体200を構成する全ての枠材210(第1枠材211、第2枠材212、第3枠材213)の両フランジ(第1のフランジ501と第2のフランジ502)に1又は2以上の連結孔220を設けておくとよい。また、左枠体200Lと右枠体200Rを配置した後に連結材300を配置すると説明したが、(特にL字形軸部材500の連結材300を採用する場合は)連結材300を配置した後に、連結材300の左用連結孔320L及び右用連結孔320Rと枠体200の連結孔220の位置を合わせるように左枠体200Lと右枠体200Rを配置することもできる。
【0028】
連結材300は、左枠体200Lと右枠体200Rの1面側だけに設置することもできるし、
図6(a)に示す手前側に加え紙面奥行側に位置する対向面にも設置することができる。左枠体200Lと右枠体200Rを対向する2面で(つまり2本の連結材300で)連結すれば、左右の枠体200はより強固に固定される反面、その分手間が掛かるという短所もある。したがって、1面側だけを連結するか、あるいは2面ともに連結するかは、状況に応じて適宜選択するとよい。さらに最下段の枠材210に加え、最上段の枠材210を連結したり、鉛直配置の枠材210を利用して中段位置で連結したり、必要に応じて連結材300による連結箇所(場所)は適宜選択することができる。
【0029】
左用連結孔320L及び右用連結孔320Rと連結孔220の位置を合わせて、左枠体200Lと右枠体200R、連結材300を配置することができると、
図6(b)示すように、左用連結孔320Lと連結孔220に挿通したボルト等の接合材600で接合することで、連結材300と左枠体200Lを連結する。同様に、右用連結孔320Rと連結孔220に挿通した接合材600で接合するよって、連結材300と右枠体200Rを連結する。なお、
図6(b)では連結材300としてL字形軸部材500を利用した場合を示しているため、連結材300の下側フランジの上に枠材210を載せているが、連結材300として平鋼を利用した場合は枠材210の鉛直フランジに連結材300を当接して接合すればよい。また、柔軟に位置合わせができるように、左用連結孔320Lと右用連結孔320Rは長穴として形成することもできる。
【0030】
左右の枠体200は建設機械CRの左右のクローラ(あるいはタイヤ)を支持するために配置すると説明したが、当然ながら左右のクローラ間隔は建設機械CRによってそれぞれ異なる。つまり、左枠体200Lと右枠体200Rを配置する間隔(走行方向と直角方向の間隔)は、走行させようとする建設機械CRに依存することになるわけである。そこで、連結材300に2以上の左用連結孔320Lと2以上の右用連結孔320Rを設けるとともに、枠体200を構成する各枠材210の各フランジにも2以上の連結孔220を設けておくとよい。
【0031】
図7は、同一の連結材300を用い、種々の間隔で左右の枠体200を連結した建設機械走行用架台100を示す正面図である。
図7(a)では、3つの左用連結孔320Lと左枠体200Lの3つの連結孔220の位置を合わせるとともに、3つの右用連結孔320Rと右枠体200Rの3つの連結孔220の位置を合わせて、左右の枠体200を連結している。このとき、位置合わせを行った全ての連結孔に接合材600を挿通してもよいし、左右1箇所(あるいは2箇所)ずつ接合材600を挿通してもよい。
図7(b)では、2つの左用連結孔320Lと左枠体200Lの2つの連結孔220の位置を合わせるとともに、2つの右用連結孔320Rと右枠体200Rの2つの連結孔220の位置を合わせることで、
図7(a)よりも広い間隔で左右の枠体200を連結している。ただし、使用している連結材300は
図7(a)と同じものである。また
図7(c)では、1つの左用連結孔320Lと左枠体200Lの1つの連結孔220の位置を合わせるとともに、1つの右用連結孔320Rと右枠体200Rの1つの連結孔220の位置を合わせることで、
図7(b)よりもさらに広い間隔で左右の枠体200を連結している。この場合も、使用している連結材300は
図7(a)と同じものである。
【0032】
ところで、連結材300の同一フランジに多数の左用連結孔320Lや右用連結孔320Rを設けると、連結材300そのものの部材強度が劣化し、ひいては左枠体200Lと右枠体200Rとの適切な連結が果たせないおそれもある。そこで、連結材300としてL字形軸部材500を利用し、第1のフランジ501と第2のフランジ502でそれぞれ連結孔の数や配置を変えるとよい。例えば
図8に示す連結材300はL字形軸部材500を利用しており、第1のフランジ501に設けられた左用連結孔321L及び右用連結孔320Rと、第2のフランジ502に設けられた左用連結孔322L及び右用連結孔320Rを比べると、その数と配置が異なっていることが分かる。これにより、連結材300を配置する姿勢に応じて、すなわち
図8のように第2のフランジ502が下面となる姿勢で配置するか、あるいは第1のフランジ501が下面となる姿勢で配置するかによって、連結する左右の枠体200の間隔を変えることができるうえに、同一フランジに多数の連結孔を設ける必要がないことから連結材300の部材強度の劣化も防ぐことができるわけである。
【0033】
後述するように、本発明の建設機械走行用架台100を利用すれば、既設の布基礎等を交わしつつ建設機械用走行路を設置することができる。建設機械走行用架台100の上に載置される走行板400を布基礎等よりも高い位置に置くことで、布基礎等が建設機械CRの走行にとって障害となることを回避するわけである。ところが、建設される上部構造物によって布基礎等の高さは異なるため、建設機械走行用架台100の高さ(つまり枠体200の高さ)は施工現場に応じて調整する必要がある。この場合、寸法が異なる種々の枠体200を用意するか、あるいは同種の枠体200を積み重ねることで高さを調整することが考えられる。しかしながら、前者の場合は多種の枠体200を製作する必要があるうえその保管や運搬にも費用がかかり、一方後者の場合は積み重ねる手間がかかるうえに建設機械用走行路が不安定になるという問題を指摘することができる。
【0034】
そこで、枠体200を構成する3種類の枠材210(第1枠材211、第2枠材212、第3枠材213)の軸方向寸法(長さ)をそれぞれ異なる大きさにするとよい。
図9は、軸方向寸法がH
1である第1枠材211と、軸方向寸法がH
2である第2枠材212、軸方向寸法がH
3である第3枠材213によって形成された枠体200を示す正面図であり、(a)は第1枠材211と第2枠材212で形成される面が正面(背面)となるように配置した正面図、(b)は第2枠材212と第3枠材213で形成される面が正面(背面)となるように配置した正面図、(c)は第3枠材213と第1枠材211で形成される面が正面(背面)となるように配置した正面図である。
図9(a)では、六面体の各面のうち第2枠材212と第3枠材213で形成される第2面232が底面となるように枠体200が配置された結果、枠体200の高さは略H
1となっている。また
図9(b)では、第3枠材213と第1枠材211で形成される第3面233が底面となるように枠体200が配置された結果、枠体200の高さは略H
2となっており、
図9(c)では、第1枠材211と第2枠材212で形成される第1面231が底面となるように枠体200が配置された結果、枠体200の高さは略H
3となっている。このように3種類の枠材210の軸方向寸法を変えることによって、1つの枠体200で3通りの高さで建設機械用走行路を設置することができるわけである。
【0035】
2.建設機械用走行路設置方法
次に本発明の建設機械用走行路設置方法について説明する。なお、本発明の建設機械用走行路設置方法は、既述したようにここまで説明した建設機械走行用架台100を使用して行う方法であり、したがって建設機械走行用架台100で説明した内容と重複する説明はここでは避け、本発明の建設機械用走行路設置方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、建設機械走行用架台100で説明したものと同様である。
【0036】
図10(a)は、既に構築されたコンクリート造の布基礎等BCを避けて本発明の建設機械走行用架台100を設置した状態を示す平面図であり、
図10(b)は、コンクリート造の布基礎等BCを交わして設置された建設機械用走行路を走行する建設機械CRを示す側面図である。
この図に示すように、建設機械CRの走行方向に間隔を設けて複数箇所に建設機械走行用架台100を設置し、設置された複数箇所の左枠体200Lの上に走行板400を架け渡すとともに、同じく設置された複数箇所の右枠体200Rの上に走行板400を架け渡すことで、建設機械用走行路は設置される。当然ながら建設機械走行用架台100は、布基礎等BCがない位置に設置され、
図10(b)に示すように、走行板400と布基礎等BCとの間にクリアランスが設けられるよう、高さを調整したうえで左右の枠体200は設置される。なお、ここで用いられる走行板400は、木製や鋼製の足場板など従来使用されている資材を採用することができる。また、
図10(a)にも示すように、建設機械用走行路のために設置する建設機械走行用架台100とは別に、建設機械CRのアウトリガーを載置するために単独で枠体200を設置してもよい。また
図10の例では、建設機械走行用架台100を建設機械CRの走行方向にも連結材300で連結しているが、現場の状況に応じてこの走行方向の連結材300は省略することもできる。
【0037】
図11は本発明の建設機械用走行路設置方法の主な工程を示すフロー図である。
この図を参照しながら、建設機械用走行路を設置する手順について詳しく説明する。はじめに必要となる左枠体200Lと右枠体200R、連結材300、走行板400を準備し、簡易な測量等を行うことで枠体200の設置位置を現地に示しておく(Step101)。
【0038】
続いて、鉛直(略鉛直含む)方向となる枠材210がともに同種類となるように(つまり両者の高さが揃うように)、左枠体200Lと右枠体200Rを設置し(Step102)、1組ごとに左枠体200Lと右枠体200Rを連結材300で連結していく(Step103)。このとき、1組の左枠体200Lと右枠体200Rを1箇所(1本の連結材300)で連結することもできるし、2箇所以上(2本以上の連結材300)で連結することができることは既述したとおりである。なお、左枠体200Lと右枠体200Rを設置し現地において連結材300で連結する手法に代えて、既に構築された(いわゆる地組された)建設機械走行用架台100を所定位置に設置する手法を採用することもできる。この場合、その重量が大きくなるため、揚重機等を利用して建設機械走行用架台100を所定位置に吊降ろすとよい。
【0039】
建設機械CRの走行方向に間隔を設けて計画した設置箇所すべてに建設機械走行用架台100を設置することができると、複数箇所の左枠体200Lの上に走行板400を架け渡すとともに、複数箇所の右枠体200Rの上に走行板400を架け渡し(Step104)、これにより建設機械用走行路が完成する。なお、建設機械CRを走行板400の上に載せるには、
図10(b)に示すように斜路SLを利用することもできるし、アウトリガーを備えた建設機械CRであればそのアウトリガーの伸縮を利用して走行板400上に載せることもできる。