特開2019-157624(P2019-157624A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2019157624-建築物のひび割れ補修方法 図000003
  • 特開2019157624-建築物のひび割れ補修方法 図000004
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  • 特開2019157624-建築物のひび割れ補修方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-157624(P2019-157624A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】建築物のひび割れ補修方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20190823BHJP
【FI】
   E04G23/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【公開請求】
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-119756(P2019-119756)
(22)【出願日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-91851(P2019-91851)
(32)【優先日】2019年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598005742
【氏名又は名称】伊藤 洋之輔
(74)【代理人】
【識別番号】100100963
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 陽男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋之輔
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB12
2E176BB15
(57)【要約】
【課題】 簡単な作業で、ひび割れ部の周辺部が注入材で汚れることがないように建築物のひび割れ部を補修する。
【解決手段】 タイル1張りの壁等にできたひび割れ部3を覆うように粘着テープ4を貼り、貼った粘着テープ4の上から、カッターナイフ等を使って前記ひび割れ部3に沿って切れ目5を入れる。その際、透明又は半透明の粘着テープを用いれば、微小なひび割れ部3でも、粘着テープ4の上からひび割れ部3を目で確認でき、ひび割れ部3に沿って確実に切れ目5を入れることができる。そして、切れ目5の上から前記ひび割れ部3に透明なシリコーンシーラントのような注入材を圧入した後に、前記粘着テープ4を剥がして取り除く。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひび割れ部を覆うように粘着テープを貼る工程と、貼った粘着テープの上から前記ひび割れ部に沿って切れ目を入れる工程と、該切れ目の上から前記ひび割れ部に注入材を圧入する工程と、注入材を圧入する工程完了後に前記粘着テープを剥がして取り除く工程とを備えたことを特徴とする建築物のひび割れ補修方法。
【請求項2】
前記粘着テープが透明又は半透明であることを特徴とする請求項1に記載の建築物のひび割れ補修方法。
【請求項3】
前記注入材がシリコーンシーラントであることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物のひび割れ補修方法。
【請求項4】
前記ひび割れ部が、タイル張りの壁に生じたひび割れ部であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の建築物のひび割れ補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート建築物の壁等に発生するひび割れを補修するための補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の建築物のひび割れ補修方法としては、例えば、特許文献1に、コンクリート構造物に生じたひび割れの補修方法として、コンクリート構造物に生じたひび割れ部に沿って、台座に設けた細長い注出口を合わせて注入材の注入器具を接着させ、その抽出口からひび割れ部に注入材を圧入する方法が示されている。注入材の圧入が終了したら、ヘラ等で注入器具を取り外して、コンクリート構造物に付着した接着材等をそぎ落として作業を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−32308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、このようにしてひび割れ部に注入材を注入していたが、そのような方法では、注入材がひび割れ部から周辺部に漏れ出て、周辺部が注入材で汚れて見苦しくなるという問題点があった。この問題は、タイル張りの壁に発生したひび割れに施こした場合には、漏れた接着材等を、汚れが目立たないようにシンナー等で洗浄しなければならず、かなりの手間がかかってしまう。そのため、ひび割れしたタイルを新しいタイルに張り替えることが多くなっていた。そして、タイルを張り替えるとなると、同色のタイルを探すのが極めて困難で、できるだけ近い色のタイルを用いても、補修部分が目立ってしまうという問題点もあった。一方、周辺部の汚れを防止する手段として、ひび割れ部の両側にマスキングテープ等を貼ったり、あとで剥がすことのできる接着材で、ひび割れ部から接着材が漏れないようにして養生して注入し、作業後にマスキングテープ等を剥がして取り除くという方法が行われていたが、ひび割れ部は必ずしも直線状にはならず、そのようなひび割れ部に沿って2枚のマスキングテープを貼る等の作業は非常に手間がかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、そのような問題点に鑑み、簡単な作業で、ひび割れ部の周辺部が注入材で汚れることなく補修できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、ひび割れ部を覆うように粘着テープを貼る工程と、貼った粘着テープの上から前記ひび割れ部に沿って切れ目を入れる工程と、該切れ目の上から前記ひび割れ部に注入材を圧入する工程と、注入材を圧入する工程完了後に前記粘着テープを剥がして取り除く工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記粘着テープが透明又は半透明であることを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記注入材がシリコーンシーラントであることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1,2又は3に係る発明において、前記ひび割れ部が、タイル張りの壁に生じたひび割れ部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に係る発明においては、ひび割れ部を粘着テープを貼って覆い、貼った粘着テープの上から前記ひび割れ部に沿って切れ目を入れ、該切れ目の上から前記ひび割れ部に注入材を圧入するようにしたので、手間をかけずにひび割れ部への注入材を圧入でき、また、注入材を圧入する工程完了後に前記粘着テープを剥がして取り除けば、ひび割れ部からはみ出した注入材は粘着テープとともに取り除かれるので、ひび割れ部の周辺部が汚れることがない。
【0011】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1に係る建築物のひび割れ補修方法において、前記粘着テープとして透明又は半透明のものを用いるようにしたので、幅の狭い小さなひび割れ部でも粘着テープの上から目で確認でき、確実に、ひび割れ部に沿って切れ目を入れることができる。
【0012】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1又は2に係る建築物のひび割れ補修方法において、前記注入材としてシリコーンシーラントを用いるようにしたので、ひび割れ部に充填された後、シリコーンシーラントは耐候性が高く、また、弾力性があって、地震等で補修後のひび割れ部に曲げ応力等が生じてもそれを吸収できて、補修後のひび割れ部を長期間良好な状態に維持できる。
【0013】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1,2又は3に係る建築物のひび割れ補修方法において、タイル張りの壁に生じたひび割れ部に適用するようにしたので、タイルの補修部分が目立ちにくく補修できるため、タイルを張り替えることなく補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】タイルのひび割れ補修方法を示す図である。
図2】注入材の注入器具を示す図である。
図3】タイルのひび割れ部に注入材を注入する状態を示す図である。
図4】建築物のタイル張りの壁にひび割れが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
ここでは、図4に示すような、建築物のタイル張りの壁にひび割れが生じた場合で説明する。コンクリートの構造体に、各タイル1間にタイル目地2を施して、多数のタイル1を張り付けた壁面では、コンクリートが収縮する等、何らかの理由でコンクリートの構造体にひびが発生すると、それに張り付けられたタイル1にもひびが入り、壁面にひび割れ部3が発生する。そのようなひび割れ部3に対して、何も対策を施さないと、ひび割れ部3から雨水等が浸入して、状態を悪化させてしまう。そのため、注入材を注入してひび割れ部3を塞ぐ必要があるが、前記従来の方法で注入材を注入すると、注入材がひび割れ部3から周辺部に漏れ出て、周辺部が汚れることも多く見苦しくなってしまう。
【0017】
一方、ひび割れ部3の両側にマスキングテープを貼るには非常に手間がかかってしまう。 そのような問題点を解決するため、次のようなひび割れ補修方法を開発した。
【0018】
図1は、タイルのひび割れ補修方法を示す図である。符号1,3は、図4のものに対応しており、4は透明な粘着テープ、5は、粘着テープ4の上からカッターナイフ等で、ひび割れ部3に沿って設けた切れ目である。ひび割れ部3を覆うように粘着テープを貼り、貼った粘着テープ4の上から、ひび割れ部3に沿ってカッターナイフ等で切れ目5を入れる。その際、粘着テープ4が透明であるため、粘着テープ4の上から、ひび割れ部3がよく見えるため、カッターナイフ等をひび割れ部3に沿って動かして切れ目5を入れることは簡単にできる。なお、粘着テープ4の上から、ひび割れ部3が見えればよいので、粘着テープ4は透明のものに限らず、半透明のものでもよい。
【0019】
粘着テープ4に、ひび割れ部3に沿って切れ目5を入れたら、切れ目5に合わせて注入器具を押し当て、切れ目5を通してひび割れ部3内に、例えば、一般にシリコーンシーラントと呼ばれているシリコーン系シーリング材のような注入材を注入する。注入器具6は、例えば、図2に示すように、ゴム材より成る本体の当接面に細長い抽出口7を設け、その抽出口7に連通させて、反対側の面に注入管8を設けたものを用いる。
【0020】
図3は、タイルのひび割れ部3に注入材を注入する状態を示す図である。粘着テープ4に入れた切れ目5に抽出口7を合わせて注入器具6を押し当てる。その際、注入器具6の本体はゴム材より成っているため、当接面を粘着テープ4の表面に密着させることができる。その状態で、注入管8に注入材容器の抽出口をセットして、圧力Pをかけて注入材9を、切れ目5を通してひび割れ部3の中に圧入する。ひび割れ部3の中に注入材9を圧入したら、粘着テープ4をタイル1から剥がして取り除く。
【0021】
なお、上記実施例では、粘着テープ4として透明や半透明のものを用いたが、必ずしもそれに限定されず、場合によっては、透明や半透明でない粘着テープでも使用可能である。すなわち、透明又は半透明の粘着テープ4を用いれば、ひび割れ部3が幅の狭い小さなものでも粘着テープの上からひび割れ部3を目で確認でき、確実に、ひび割れ部3に沿って切れ目5を入れることができるが、ひび割れ部3の幅が大きい場合は、粘着テープ4が透明又は半透明でなくても、上から手でなぞるだけでひび割れ部3が確認でき、カッターナイフ等を使って、ひび割れ部3に沿って切れ目5を入れることができる。
【0022】
また、上記実施例では、粘着テープ4の切れ目5への注入材9の圧入を、図2に示すような注入器具6を用いて行う場合で示し、そのように注入器具6を用いれば効率よくできるが、必ずしもそのような注入器具6を用いる必要はなく、ヘラを使って圧入してもよく、手の指を使ってもよい。
【0023】
また、上記実施例では、本発明をタイル張りの壁の補修に適用する場合で説明したが、本発明は、その他、コンクリート壁等、その他の構造体の補修にも適用できる。また、上記実施例では、注入材として、透明なシリコーンシーラントを用いたが、必ずしもシリコーンシーラントでなくてもよく、透明でなく、タイル1と同系統の色のものでもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 タイル
2 タイル目地
3 ひび割れ部
4 粘着テープ
5 切れ目
6 注入器具
7 抽出口
8 注入管
図1
図2
図3
図4