特開2019-157984(P2019-157984A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同メタル工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000003
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000004
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000005
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000006
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000007
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000008
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000009
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000010
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000011
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000012
  • 特開2019157984-内燃機関のクランク軸の軸受装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-157984(P2019-157984A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】内燃機関のクランク軸の軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/02 20060101AFI20190823BHJP
   F16C 9/04 20060101ALI20190823BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   F16C9/02
   F16C9/04
   F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-44900(P2018-44900)
(22)【出願日】2018年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174182
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 広人
(74)【代理人】
【識別番号】100084227
【弁理士】
【氏名又は名称】今崎 一司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
【テーマコード(参考)】
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA02
3J011JA02
3J011KA02
3J011KA08
3J011MA12
3J011NA01
3J011PA03
3J011RA03
3J033AA02
3J033AA04
3J033EA01
3J033GA01
3J033GA05
(57)【要約】
【課題】 半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面との間に生成物が堆積されにくく、半割軸受の損傷を防止することが可能な軸受装置を提供する。
【解決手段】 半割軸受31、32の裏金層表面82は、軸受保持穴の半円筒面に非装着状態にて、裏金層表面82における半割軸受31、32の軸線方向両端部を結ぶ仮想線Mから径方向の外側に向かって凸状曲面が、半割軸受31、32の周方向全長に亘って形成されている。このため、半割軸受31、32が有する凸状曲面は、隙間内のエンジンオイル及び生成物に対して隙間外に排出される圧力を選択的に与えることから、隙間内にエンジンオイル及び生成物が堆積されにくく、好適に半割軸受31、32の損傷を防止することができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸と、該クランク軸を回転自在に支持するすべり軸受と、該すべり軸受を保持する軸受保持穴を有する軸受ハウジングと、から成る軸受装置において、
前記すべり軸受は、各々が裏金層及び摺動層を有する一対の半割軸受から構成され、
前記軸受ハウジングは、各々が半円筒面を有する第1の分割体と第2の分割体とから構成され、
前記軸受保持穴は、一対の半円筒面が組み合わされることで円筒形状に形成されると共に、該半円筒面が前記軸受保持穴の軸線方向と平行になされ、
前記一対の半割軸受は、前記一対の半円筒面に装着され前記軸受保持穴に保持され、
前記軸受保持穴に非装着状態の半割軸受は、最小で、該半割軸受の周方向両端面から周方向中央部側に向かうそれぞれ円周角度45°の位置P1を基準として−5°〜+5°の円周角度の範囲、最大で、該半割軸受の周方向全長に亘る範囲において、前記裏金層表面が、該裏金層表面における前記半割軸受の軸線方向両端部を結ぶ仮想線Mから径方向の外側に向かう凸状曲面を有し、
前記軸受保持穴に前記一対の半割軸受が装着された状態では、前記裏金層表面が、前記軸受保持穴の軸線方向と平行となることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記凸状曲面の頂部は、前記半割軸受の軸線方向の中央部に位置することを特徴とする請求項1記載の軸受装置。
【請求項3】
前記凸状曲面の高さHは、0.001〜0.1mmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の軸受装置。
【請求項4】
前記半割軸受は、軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向に亘って一定であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれに記載の軸受装置。
【請求項5】
前記半割軸受は、該半割軸受の軸線方向の中央部を含み形成され、軸受壁厚が一定である平滑領域と、該平滑領域の軸線方向両側に形成され、軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向端部側に向かって小さくなる傾斜領域と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項6】
前記すべり軸受は、前記クランク軸のクランクピン部を支承するコンロッド軸受であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項7】
前記すべり軸受は、前記クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を支承するための軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、主軸受ハウジングの軸受保持穴に装着された主軸受に支承される。主軸受に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。また、ジャーナル部の直径方向には第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が主軸受の潤滑油溝と連通するようになっている。さらに、ジャーナル部の第1潤滑油路から、クランクアーム部を通る第2潤滑油路が分岐して形成され、この第2潤滑油路が、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。このようにして、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路及び第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の末端に開口した吐出口から、クランクピン部とコンロッド軸受ハウジングの軸受保持穴に装着されたコンロッド軸受の摺動面間に供給される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来から、主軸受及びコンロッド軸受には、一対の半割軸受から構成されるすべり軸受が採用されており、半割軸受は、裏金層と摺動層から構成される。また、主軸受ハウジング及びコンロッド軸受ハウジングは、第1の分割体と第2の分割体からなり、第1の分割体と第2の分割体は、それぞれが半円筒面を有し、主軸受ハウジング及びコンロッド軸受ハウジングの軸受保持穴は、一対の半円筒面が組み合わされることで円筒形状に形成される。そして、一対の半割軸受は、一対の半円筒面に装着され軸受保持穴に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開2011−231903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の内燃機関の構造的な課題として、半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面との間にエンジンオイル及び不完全燃焼生成物(カーボンスラッジ等。以下、不完全燃焼生成物を生成物と記載する。)が堆積されやすく、エンジンオイル及び生成物の堆積に起因した半割軸受の損傷が発生しやすいことが挙げられる。
【0006】
具体的には、半割軸受は、多くの場合、プレス加工により平板から半円筒形状に成形されるが、プレス加工時の残留応力の影響により、半割軸受の軸線方向の裏金層表面は、摺動層側(径方向内側)に向かって凹状曲面に形成されている。また、内燃機関の運転に伴い発生する動荷重により軸受保持穴が変形した際には、半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面との間には隙間が生成され、その隙間には周囲のエンジンオイル及び生成物が吸入されるが、従来の半割軸受は、裏金層表面に凹状曲面を有することから、隙間が半割軸受の軸線方向中央側に選択的に形成されてしまい、エンジンオイル及び生成物が隙間から排出されにくく、隙間内には次第に排出されないエンジンオイル及び生成物が堆積される。そして、堆積されたエンジンオイル及び生成物は、半割軸受の裏金層表面を押し上げ、堆積されたエンジンオイル及び生成物の径方向内側に位置する半割軸受の摺動層表面が部分的に隆起される。このため、隆起された摺動層表面は、クランク軸との直接接触の機会を増大させ、接触抵抗による発熱が増大し、最悪の場合には焼付き損傷に至る。
【0007】
また、特許文献2においては、摺動層と、第1の裏金層と、摺動層と第1の裏金層の間に設けられる第2の裏金層と、から成る一対の半割軸受が提供されている。ここで、第2の裏金層の熱膨張率は、第1の裏金層の熱膨張率よりも高いことを特徴としている。本構成によれば、第1の裏金層と第2の裏金層の熱膨張率の差から、半割軸受の温度を変化させることで半割軸受の軸線方向の形状を変化させることが可能となる。即ち、半割軸受が低温であるときには、半割軸受の裏金層表面が裏金層側に向かう凸状曲面を有し、半割軸受が高温であるときには、半割軸受の裏金層表面が摺動層側に向かう凹状曲面を有することとなる。しかしながら、本構成によれば、一対の半割軸受が高温状態で軸受保持穴に保持された状態で、動荷重により軸受保持穴に変形が生じた際には、一対の半割軸受の裏金層表面が摺動層側に向かう凹状曲面を有することから、軸受保持穴の変形に伴い発生する隙間が一対の半割軸受の軸線方向中央側に選択的に形成されてしまい、依然としてエンジンオイル及び生成物を隙間から排出しにくい構造であることに変わりはなく、上記した構造的な課題は根本的に解決されていない。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面との隙間にエンジンオイル及び生成物が堆積されにくく、半割軸受の損傷を防止することが可能な軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、内燃機関のクランク軸と、該クランク軸を回転自在に支持するすべり軸受と、該すべり軸受を保持する軸受保持穴を有する軸受ハウジングと、から成る軸受装置において、前記すべり軸受は、各々が裏金層及び摺動層を有する一対の半割軸受から構成され、前記軸受ハウジングは、各々が半円筒面を有する第1の分割体と第2の分割体とから構成され、前記軸受保持穴は、一対の半円筒面が組み合わされることで円筒形状に形成されると共に、該半円筒面が前記軸受保持穴の軸線方向と平行になされ、前記一対の半割軸受は、前記一対の半円筒面に装着され前記軸受保持穴に保持され、前記軸受保持穴に非装着状態の半割軸受は、最小で、該半割軸受の周方向両端面から周方向中央部側に向かうそれぞれ円周角度45°の位置P1を基準として−5°〜+5°の円周角度の範囲、最大で、該半割軸受の周方向全長に亘る範囲において、前記裏金層表面が、該裏金層表面における前記半割軸受の軸線方向両端部を結ぶ仮想線Mから径方向の外側に向かう凸状曲面を有し、前記軸受保持穴に前記一対の半割軸受が装着された状態では、前記裏金層表面が、前記軸受保持穴の軸線方向と平行となることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の軸受装置において、前記凸状曲面の頂部は、前記半割軸受の軸線方向の中央部に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明においては、請求項1または請求項2記載の軸受装置において、前記凸状曲面の高さHは、0.001〜0.1mmであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれに記載の軸受装置において、前記半割軸受は、軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向に亘って一定であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軸受装置において、前記半割軸受は、該半割軸受の軸線方向の中央部を含み形成され、軸受壁厚が一定である平滑領域と、該平滑領域の軸線方向両側に形成され、軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向端部側に向かって小さくなる傾斜領域と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受装置において、前記すべり軸受は、前記クランク軸のクランクピン部を支承するコンロッド軸受であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明においては、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受装置において、前記すべり軸受は、前記クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明においては、内燃機関の運転に伴い発生する動荷重により、軸受保持穴が変形した際には、半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面との間に隙間が生成され、同部には周囲のエンジンオイル及び生成物が吸入されるが、本発明の半割軸受が有する凸状曲面は、隙間内のエンジンオイル及び生成物に対して隙間外に排出される圧力を選択的に与えることから、隙間内にエンジンオイル及び生成物が堆積されにくく、好適に半割軸受の損傷を防止することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明においては、一般的に半割軸受の軸線方向中央部が最も高い負荷を受けるが、凸状曲面の頂部が半割軸受の軸線方向の中央部に位置することから、半割軸受の裏金層表面と軸受保持穴の半円筒面の密着が軸線方向中央部で最も維持されやすく、同部はエンジンオイル及び生成物が吸入される可能性が最も低い。このため、同部にエンジンオイル及び生成物が堆積されにくく、好適に半割軸受の損傷を防止することができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明においては、凸状曲面の高さHが最小で0.001mm以上であることで、隙間内のエンジンオイル及び生成物に対し、半割軸受及び軸受保持穴の半円筒面の軸線方向端部側に向かう圧力を働かせることができる。また、凸状曲面の高さHが大きくなると、エンジンオイル及び生成物に働く圧力は大きくなるが、背反として、半割軸受の軸線方向端部が、クランクピン部側に近づくことになり、クランクピン部側との接触の機会が増大することから、凸状曲面の高さHは、最大で0.1mm以下に抑えることが望ましい。
【0019】
また、請求項4に係る発明においては、半割軸受の軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向に亘って一定であることで、該半割軸受の摺動層表面に入力されるクランク軸の荷重を摺動層表面の広い範囲に分散させる(面圧を低く抑える)ことができるため、半割軸受への負荷が減少され、好適に半割軸受の損傷を防止することができる。
【0020】
また、請求項5に係る発明においては、半割軸受は、該半割軸受の軸線方向の中央部を含み形成され、軸受壁厚が一定である平滑領域と、該平滑領域の軸線方向両側に形成され、軸受壁厚が半割軸受の軸線方向端部側に向かって小さくなる傾斜領域を有するため、半割軸受の軸線方向端部における半割軸受とクランク軸の距離を離すことができ、接触回避により、好適に半割軸受の損傷を防止することができる。
【0021】
また、請求項6に係る発明のように、すべり軸受は、クランク軸のクランクピン部を支承するコンロッド軸受として用いることができる。
【0022】
また、請求項7に係る発明のように、すべり軸受は、クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】二つの軸受装置を含む構造体を示す図である。
図2】半割軸受の構造を示す断面図である。
図3】上図は、半割軸受の摺動層表面から見た図であり、下図は、側面から見た図である。
図4】(A)の上図は、第1実施形態の半割軸受の摺動層表面から見た図であり、(A)の下図は、第1実施形態の半割軸受の軸線方向の断面を示す図である。(B)の上図は、第2実施形態の半割軸受の摺動層表面から見た図面であり、(B)の下図は、第2実施形態の半割軸受の軸線方向の断面を示す図である。
図5】(A)は、半割軸受が軸受保持穴に装着された状態を示す図であり、(B)は、軸受保持穴の変形時の隙間を示す図である。
図6】(A)は、隙間にエンジンオイル及び生成物が吸引される状態を示す模式図であり、(B)は、隙間内をエンジンオイル及び生成物が移動する状態を示す模式図であり、(C)は、エンジンオイル及び生成物が排出された状態を示す模式図である。
図7】裏金層表面の加工方法の例を示す図である。
図8】上図は、第3実施形態の半割軸受の摺動層表面から見た図であり、下図は、第3実施形態の半割軸受の軸線方向の断面を示す図である。
図9】上図は、従来技術の半割軸受の摺動層表面から見た図であり、下図は、従来技術の半割軸受の軸線方向の断面を示す図である。
図10】従来技術の軸受保持穴の変形時の隙間を示す図である。。
図11】従来技術の半割軸受を用いた場合において、(A)は、隙間にエンジンオイル及び生成物が吸引される状態を示す模式図であり、(B)は、隙間内をエンジンオイル及び生成物が移動する状態を示す模式図であり、(C)は、エンジンオイル及び生成物が堆積された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(軸受装置の全体構成)
図1には、二つの軸受装置を含む構造体1が示されている。即ち、構造体1は、ジャーナル部6とクランクピン部5と図示されないクランクアーム部とを備えるクランク軸を有し、ジャーナル部6と軸受ハウジング(主軸受ハウジング)7と軸受保持穴75に装着される主軸受4とから成る一つ目の軸受装置と、クランクピン部5と軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)21と軸受保持穴26に装着されるコンロッド軸受3とから成る二つ目の軸受装置と、を含む。
【0026】
クランク軸におけるジャーナル部6とクランクピン部5とは、それぞれ主軸受4とコンロッド軸受3に回転自在に支持される。
【0027】
主軸受4に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック71の壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受4の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝41a内に送り込まれる。また、ジャーナル部6の直径方向には第1潤滑油路6aが貫通形成され、この第1潤滑油路6aの両端開口が主軸受4の潤滑油溝41aと連通するようになっている。さらに、ジャーナル部6の第1潤滑油路6aから、クランクアーム部を通る第2潤滑油路5aが分岐して形成され、この第2潤滑油路5aが、クランクピン部5の直径方向に貫通形成された第3潤滑油路5bに連通している。このようにして、シリンダブロック71の壁内のオイルギャラリーから貫通口を通じて主軸受4の内周面に形成された潤滑油溝41a内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路6a、第2潤滑油路5a及び第3潤滑油路5bを経て、第3潤滑油路5bの末端に開口した吐出口から、クランクピン部5とコンロッド軸受ハウジング21の軸受保持穴26に保持されたコンロッド軸受3の摺動面間に供給される
【0028】
軸受ハウジング(主軸受ハウジング)7は、半円筒面73を有する第1の分割体(主軸受ブロック側ハウジング)71と、半円筒面74を有する第2の分割体(主軸受キャップ側ハウジング)72と、から成り、軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)21は、半円筒面24を有する第1の分割体(コンロッド大端部側ハウジング)22と、半円筒面25を有する第2の分割体(コンロッドキャップ側ハウジング)23と、から成る。また、軸受保持穴75は、一対の半円筒面73、74が組み合されることで円筒形状に形成されると共に、半円筒面73、74がそれぞれ軸受保持穴75の軸線方向に平行になされる。同様に、軸受保持穴26は、一対の半円筒面24、25が組み合されることで円筒形状に形成されると共に、半円筒面24、25がそれぞれ軸受保持穴26の軸線方向に平行になされる。
【0029】
主軸受4は、半割軸受41、42が一対となり形成され、それら一対の半割軸受41、42が一対の半円筒面73、74に装着され、軸受保持穴75に保持される。同様に、コンロッド軸受3は、半割軸受31、32が一対となり形成され、それら一対の半割軸受31、32が一対の半円筒面24、25に装着され、軸受保持穴26に保持される。
【0030】
図2に示すように、半割軸受41、42及び31、32は、裏金層81と摺動層91とから成り、裏金層表面82と摺動層表面92をそれぞれ備える。裏金層81は0.05〜0.35%の炭素を含む合金鋼等からなり、摺動層91は、ホワイト合金(錫合金)、アルミニウム合金、銅合金等の軸受合金からなる。なお、摺動層表面92には、電気めっき、真空蒸着、吹き付け等の手段を以って、更に鉛系、錫系、アルミニウム合金、合成樹脂等の表面層(オーバレイ層)が皮膜されることもある。
【0031】
(軸受装置の詳細な構成)
以下、本発明の詳細な構成及び作用効果について、クランクピン部5と軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)21と軸受保持穴26に装着されるコンロッド軸受3とから成る二つ目の軸受装置を例として説明するが、ジャーナル部6と軸受ハウジング(主軸受ハウジング)7と軸受保持穴75に装着される主軸受4とから成る一つ目の軸受装置に置き換えても同様の効果を奏する。
【0032】
図1に示されるコンロッド軸受3は、図3に示す半円筒形状を有する半割軸受31、32が一対となり形成される。ここで、図3の上図は、半割軸受31、32の摺動層表面92側から見た図を示し、図3の下図は、半割軸受31、32の側面側から見た図を示している。半割軸受31、32は、それぞれ裏金層81及び摺動層91を有し、裏金層81は、半割軸受31、32の径方向外側に裏金層表面82を形成すると共に、摺動層91は、半割軸受31、32の径方向内側に摺動層表面92を形成する。
【0033】
図4(A)は、本発明における半割軸受31、32の詳細な構造を示している。図4(A)の上図は、半割軸受31、32の摺動層表面92側から見た図を示し、図4(A)の下図は、図3に示す半割軸受31、32の周方向端面100から45°の位置の断面図を示している。図4(A)に示すように、半割軸受31、32は、軸受壁厚T1が半割軸受31、32の軸線方向に亘って一定となるように形成される。また、図4(A)に示すように、半割軸受31、32の裏金層表面82は、軸受保持穴26の半円筒面24、25に非装着状態にて、裏金層表面82における半割軸受31、32の軸線方向両端部を結ぶ仮想線Mから径方向の外側(即ち、半割軸受31、32の裏金層81側(径方向外側))に向かって凸状曲面が、半割軸受31、32の周方向全長に亘って形成されている。また、凸状曲面の頂部は、半割軸受31、32の軸線方向の中央部に位置する。なお、図4(A)の下図に示される断面は、前述の通り、図3に示す半割軸受31、32の周方向端面100から45°の位置の断面として示されるが、断面の形状は、半割軸受31、32の周方向全長に亘って同じである。
【0034】
図5(A)に示すように、半割軸受31、32が軸受保持穴26の半円筒面24、25に装着された状態では、組付応力により、半割軸受31、32の裏金層表面82は、半円筒面24、25に密着されるように弾性変形され、軸受保持穴26(半円筒面24、25)の軸線方向と平行となっている。
【0035】
なお、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26(半円筒面24、25)が軸線方向で平行関係にあることを確認する手段の一つとしては、一般的にアタリ検査と呼ばれる手法を用いることができる。即ち、半割軸受31、32を装着前の半円筒面24、25に塗料(一般的にブルーペーストと呼ばれる青色の塗料)を塗布した上で、半割軸受31、32を半円筒面24、25に装着し、規定の締結トルクで組付する。この工程によって、半割軸受31、32の裏金層表面82には、半円筒面24、25との密着部分に塗料が転写される。その後、半割軸受31、32を取り出し、半割軸受31、32の裏金層表面82に転写された塗料を更に転写用紙や転写フィルムに転写させる。ここで、半割軸受31、32の軸線方向の中央から端部に亘る範囲まで、転写用紙や転写フィルムに塗料が同様に転写されていれば、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26(半円筒面24、25)は、半割軸受31、32が装着された状態で密着関係にあり、即ち平行な関係にあることを確認することができる。
【0036】
半割軸受31、32が装着される軸受保持穴26の半円筒面24、25には、内燃機関運転時の動荷重による変形が発生する。運転に伴う動荷重が小さい間には、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25は、組付応力による密着力により密着された関係が保たれた状態にある。しかし、動荷重が大きくなると、軸受保持穴26の半円筒面24、25の変形量が増大し、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25との密着力が低下する。
【0037】
軸受保持穴26の半円筒面24、25の変形量が大きくなると、半割軸受31、32の裏金層表面82は、部分的に軸受保持穴26の半円筒面24、25の変形に追従できなくなり、軸受保持穴26の半円筒面24、25との密着の関係が部分的に失われる。即ち、組付応力により、軸受保持穴26の半円筒面24、25と軸線方向で平行関係になるように弾性変形されていた半割軸受31、32の裏金層表面82が、密着力低下により非装着時の形状(即ち、図4(A)に示される半割軸受31、32の状態)に復元され、図5(B)に示すように、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25の端部側との間に隙間110が生成される。この際、発生した隙間110は、周囲の雰囲気よりも低圧であるため、図6(A)に示すように、隙間110周辺のエンジンオイル111及び生成物112は、隙間110に吸引される。
【0038】
隙間110が生成された後、軸受保持穴26の半円筒面24、25に働く動荷重が減少することにより、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25の密着が復元されるが、本実施形態の半割軸受31、32は、半割軸受31、32の裏金層81側(径方向外側)に向かって凸状曲面に形成されているため、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25の密着は、半割軸受31、32及び軸受保持穴26の半円筒面24、25の軸線方向中央側から復元されることになる。
【0039】
上記により、隙間110内のエンジンオイル111及び生成物112には、図6(B)に示すように、半割軸受31、32及び軸受保持穴26の半円筒面24、25の軸線方向端部側に向かう圧力F1が働くこととなり、隙間110からエンジンオイル111及び生成物112が良好に排出され、図6(C)に示される密着が完全に復元した状態において、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25の間にエンジンオイル111及び生成物112が堆積されにくく、好適に半割軸受31、32の損傷を防止することができる。
【0040】
なお、半割軸受31、32では、一般的に軸線方向中央部が最も高い負荷を受ける。本実施形態では、凸状曲面の頂部が半割軸受31、32の軸線方向の中央部に位置されていることにより、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25の密着は、軸線方向中央部で最も維持されやすく、同部はエンジンオイル111及び生成物112が吸入される可能性が最も低い。即ち、同部にエンジンオイル111及び生成物112が堆積されにくく、好適に半割軸受31、32の損傷を防止することができる。
【0041】
また、隙間110内のエンジンオイル111及び生成物112に対し、半割軸受31、32及び軸受保持穴26の半円筒面24、25の軸線方向端部側に向かう圧力F1を働かせるために、凸状曲面の高さHは、最小でも0.001mm以上与えられることが望ましい。また、凸状曲面の高さHが大きくなると、エンジンオイル111及び生成物112に働く圧力F1は大きくなるが、背反として、半割軸受31、32の軸線方向端部が、クランクピン部5側に近づくことになり、クランクピン部5側との接触の機会が増大することから、凸状曲面の高さHは、最大で0.1mm以下に抑えることが望ましい。なお、凸状曲面の高さHとは、図4(A)の下図に示すように、裏金層表面82における半割軸受31、32の軸線方向両端部を結ぶ仮想線Mから、凸状曲面の頂部までの高さとして表される。ここで、半割軸受31、32の外周面には、軸線方向両端の角縁部に面取を施すことも出来るが、このような面取を施す場合には、面取の表面は、本発明の「裏金層表面」には含まれない。
【0042】
更に、本発明の半割軸受31、32は、軸受壁厚が該半割軸受の軸線方向に亘って一定であるため、該半割軸受31、32の摺動層表面92に入力されるクランクピン部5の荷重を摺動層表面92の広い範囲に分散させる(面圧を低く抑える)ことができるため、半割軸受31、32への負荷が減少され、好適に半割軸受31、32の損傷を防止することができる。
【0043】
(従来技術の詳細な構成)
次に、本発明の実施例と対比させて、従来技術の詳細な構成について説明する。なお、軸受装置の全体構成は、本発明の実施例と同様であることから、説明を省略する。
【0044】
従来技術のコンロッド軸受は、図3に示す本発明の半割軸受31、32と同様に、半円筒形状を持つ半割軸受131、132が一対となり形成される。また、従来技術の半割軸受131、132は、本発明の半割軸受31、32と同様に、それぞれ裏金層及び摺動層を有し、裏金層は半割軸受131、132の径方向外側に裏金層表面182を形成すると共に、摺動層は、半割軸受131、132の径方向内側に摺動層表面192を形成する。
【0045】
図9に示すように、半割軸受131、132には、軸受壁厚T1が半割軸受131、132の軸線方向に亘って一定となるように形成される。ここで、図9の上図は、半割軸受131、132の摺動層表面192側から見た図を示し、図9の下図は、半割軸受131、132の周方向端面から45°の位置の断面図を示している。また、図9に示すように、半割軸受131、132の裏金層表面182には、軸受保持穴の半円筒面124、125に非装着状態にて、半割軸受131、132の軸線方向に、半割軸受131、132の摺動層側(径方向内側)に向かって凹状曲面が形成されている。また、凹状曲面の頂部は、半割軸受131、132の軸線方向の中央部に位置する。なお、図9の下図に示される断面は、前述の通り、半割軸受131、132の周方向端面から45°の位置の断面として示されるが、断面の形状は、半割軸受131、132の周方向全長に亘って同じである。
【0046】
図5に示す本発明の半割軸受31、32と同様に、半割軸受131、132が軸受保持穴の半円筒面124、125に装着された状態では、組付応力により、半割軸受131、132の裏金層表面182は、半円筒面124、125に密着されるように弾性変形され、軸受保持穴(半円筒面124、125)の軸線方向と平行となっている。
【0047】
半割軸受131、132が装着される軸受保持穴の半円筒面124、125には、内燃機関運転時の動荷重による変形が発生する。運転に伴う動荷重が小さい間には、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125は、組付応力による密着力により密着された関係が保たれた状態にある。しかし、動荷重が大きくなると、軸受保持穴の半円筒面124、125の変形量が増大し、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125のとの密着力が低下する。
【0048】
軸受保持穴の半円筒面124、125の変形量が大きくなると、半割軸受131、132の裏金層表面182は、部分的に軸受保持穴の半円筒面124、125の変形に追従できなくなり、軸受保持穴の半円筒面124、125との密着の関係が部分的に失われる。即ち、組付応力により、軸受保持穴の半円筒面124、125と軸線方向で平行関係になるように弾性変形されていた半割軸受131、132の裏金層表面182が、密着力低下により非装着時の形状(即ち、図9に示される半割軸受131、132の状態)に復元され、図10に示すように、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125の中央側との間に隙間210が生成される。この際、発生した隙間210は、周囲の雰囲気よりも低圧であるため、図11(A)に示すように、隙間210周辺のエンジンオイル211及び生成物212は、隙間210に吸引される。
【0049】
隙間210が生成された後、軸受保持穴の半円筒面124、125に働く動荷重が減少することにより、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125の密着が復元されるが、従来技術の半割軸受131、132は、半割軸受131、132の摺動層91側(径方向内側)に向かって凹状曲面に形成されているため、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125の密着は、半割軸受131、132及び軸受保持穴の半円筒面124、125の軸線方向端部側から復元されることになる。
【0050】
上記により、隙間210内のエンジンオイル211及び生成物212には、図11(B)に示すように、半割軸受131、132及び軸受保持穴の半円筒面124、125の軸線方向中央側に向かう圧力F2が働くこととなり、隙間210からエンジンオイル211及び生成物212が排出されにくく、図11(C)に示される密着が復元した状態において、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125の間にエンジンオイル211及び生成物212が堆積される。そして、堆積されたエンジンオイル211及び生成物212は、半割軸受131、132の裏金層表面182を押し上げるため、堆積されたエンジンオイル211及び生成物212の径方向内側に位置する半割軸受131、132の摺動層表面192が部分的に隆起される。このため、隆起された摺動層表面192は、クランクピン部との直接接触の機会を増大させ、接触抵抗による発熱が増大し、最悪の場合には焼付き損傷に至る。
【0051】
なお、半割軸受131、132では、一般的に軸線方向中央が最も高い負荷を受ける。従来技術では、凹状曲面の頂部が半割軸受131、132の軸線方向の中央部に位置されていることより、半割軸受131、132の裏金層表面182と軸受保持穴の半円筒面124、125の密着は、軸線方向中央で最も失われやすく、同部はエンジンオイル211及び生成物212が吸入される可能性が最も高い。即ち、同部にエンジンオイル211及び生成物212が堆積されやすく、半割軸受の損傷131、132が発生しやすい。
【0052】
従来技術の半割軸受131、132と対比して、本発明の半割軸受31、32は、軸受保持穴26の半円筒面24、25に非装着状態にて、半割軸受31、32の裏金層81側(径方向外側)に向かって凸状曲面に形成されているため、好適に半割軸受31、32の損傷を防止する作用を有することを理解することができる。
【0053】
(半割軸受の加工方法)
次に、本発明の半割軸受31、32の加工方法の一つの例を、図7を参照して説明する。本発明の半割軸受31、32については、以下の工程1〜6の手順で作成する。
【0054】
まず、工程1では、摺動層91と裏金層81を有する合板(バイメタル)をプレス加工により短冊状の平板に成型する(図示せず)。そして、工程2では、図7(A)に示すように、短冊状の平板の裏金層表面82に、軸線方向に凹状曲面を有する凹状ローラ130を押し当て、裏金層表面82に凸状曲面を形成すると共に、平板を半円筒形状(成形品)に加工する。その後、工程3では、図7(B)に示すように、成形品の凸状曲面に形成された裏金層表面82側を冶具140の表面に設置する。この段階では、裏金層表面82と冶具140の表面は完全に密着していない。
【0055】
次いで、工程4では、図7(C)に示すように、所定の締結トルクにより、成形品の裏金層表面82と冶具140の表面を密着させる。この際、締結トルクにより成形品が変形し、裏金層表面82の凸状曲面は、摺動層表面92の凸状曲面に転換される。そして、工程5では、図7(D)に示すように、所定の締結トルクをかけた状態で、摺動層表面92を、冶具140の表面の軸線方向に平行となるように除去加工する。その後、工程6では、図7(E)に示すように、締結トルクを除去することにより、成形品の壁厚が軸線方向に亘って一定であり、且つ、軸線方向に、裏金層81側(径方向外側)に向かって凸状曲面を有する半割軸受31、32に成形される。
【0056】
(別実施例)
次に、本発明における別実施形態として第2実施形態及び第3実施形態を示す。なお、上記した実施形態と構成及び作用が同様である部分については、説明を省略する。また、別実施形態においても、クランクピン部5と軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)21と軸受保持穴26に装着されるコンロッド軸受3とから成る二つ目の軸受装置に提供されるコンロッド軸受3を例として説明するが、ジャーナル部6と軸受ハウジング(主軸受ハウジング)7と軸受保持穴75に装着される主軸受4とから成る一つ目の軸受装置に提供される主軸受4に置き換えても同様の効果を奏する。
【0057】
まず、第2実施形態について、図4(B)を参照して説明する。図4(B)の上図は、半割軸受31、32の摺動層表面92側から見た図を示し、図4(B)の下図は、図3に示す半割軸受31、32の周方向端面100から45°の位置の断面図を示している。図4(B)に示すように、コンロッド軸受3を構成する半割軸受31、32の少なくとも一方は、半割軸受31、32の軸線方向の中央部を含み形成される軸受壁厚T1が一定である平滑領域と、該平滑領域の軸線方向両側に形成される軸受壁厚T2が半割軸受31、32の軸線方向端部側に向かって小さくなる傾斜領域93と、を有する。
【0058】
また、図4(B)に示すように、半割軸受31、32の少なくとも一方は、軸受保持穴26の半円筒面24、25に非装着状態にて、裏金層表面82が、半割軸受31、32の軸線方向に、半割軸受31、32の裏金層81側(径方向外側)に向かって凸状曲面に形成されている。この凸状曲面は、半割軸受31、32の周方向全長に亘る範囲で施される。また、凸状曲面の頂部は、半割軸受31、32の軸線方向の中央部に位置する。
【0059】
軸受装置は、例えばクランク軸の剛性不足等の理由から、半割軸受31、32の軸線方向端部とクランクピン部5が接触しやすい。別実施形態では、半割軸受31、32の軸線方向両側に傾斜領域93を有するため、半割軸受31、32とクランクピン部5の距離を離すことができ、接触回避により、好適に半割軸受31、32の損傷を防止することができる。
【0060】
また、第3実施形態について、図8を参照して説明する。図8の上図は、半割軸受31、32の摺動層表面92側から見た図を示し、図8の下図は、半割軸受31、32の側面側から見た図を示している。図8に示すように、半割軸受31、32の裏金層表面82は、軸受保持穴26の半円筒面24、25に非装着状態にて、半割軸受31、32の周方向端面100の両端面から周方向中央部側に向かうそれぞれ円周角度45°の位置P1を基準として−5°〜+5°の範囲Θ1において、凸状曲面を形成するようにしてもよい。ここで、Θ1以外の範囲における裏金層表面82は、凸状曲面である必要はなく、従来技術における凹状曲面でもよく、平滑面でもよい。一般的に軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)21は、半円筒面24、25の周方向両端部から45°位置(即ち、半割軸受31、32の周方向端面100から45°位置P1の位置)において、剛性が低く、特に同部では軸受保持穴26の半円筒面24、25の変形量が大きくなりやすいが、半割軸受31、32の周方向端面100の両端面から周方向中央部側に向かうそれぞれ円周角度45°の位置P1を基準として−5°〜+5°の範囲Θ1に凸状曲面が形成されることで、軸受保持穴26の半円筒部24、25の変形量が多い場合にも、半割軸受31、32の裏金層表面82と軸受保持穴26の半円筒面24、25との間の隙間にエンジンオイル111及び生成物112が堆積しにくい軸受装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 構造体
2 コンロッド
3 コンロッド軸受
4 主軸受
5 クランクピン部
6 ジャーナル部
7 軸受ハウジング(主軸受ハウジング)
21 軸受ハウジング(コンロッド軸受ハウジング)
22 第1の分割体(コンロッド大端部側ハウジング)
23 第2の分割体(コンロッドキャップ側ハウジング)
24、25 半円筒面
26 軸受保持穴
31、32 半割軸受
41、42 半割軸受
71 第1の分割体(主軸受ブロック側ハウジング)
72 第2の分割体(主軸受キャップ側ハウジング)
73、74 半円筒面
75 軸受保持穴
81 裏金層
82 裏金層表面
91 摺動層
92 摺動層表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11