特開2019-158488(P2019-158488A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-158488(P2019-158488A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】距離測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20190823BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   G01B11/00 G
   G01B9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-43811(P2018-43811)
(22)【出願日】2018年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久利
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064CC10
2F064EE01
2F064FF01
2F064FF05
2F064GG22
2F064GG49
2F064HH02
2F064HH07
2F064JJ01
2F065AA06
2F065DD02
2F065FF52
2F065GG06
2F065GG22
2F065JJ02
2F065JJ25
2F065LL04
2F065LL42
2F065LL46
2F065QQ24
2F065QQ29
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】スペイシアルフィルタを不要とし、より簡素化された光学系を用いて対物距離を測定することができる距離測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
距離測定装置10は、光源11からの光を測定対象Tに集光させて照射する照射光学系と、測定対象Tから反射される反射光を入射光として、入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子14と、回折光学素子14から出射された2つの次数の回折光により生じた干渉縞を検出する光検出素子16と、光検出素子14で得られた検出結果に基づいて光検出素子14から測定対象Tまでの対物距離aを算出する距離算出部17とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を測定対象に集光させて照射する照射光学系と、
前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子と、
前記回折光学素子から出射された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を検出する光検出素子と、
前記光検出素子で得られた検出結果に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出部と
を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定装置において、
前記回折光学素子は、2次元的に、かつ周期的に配列された凹凸構造を有する回折格子を備える
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離測定装置において、
前記回折格子は、前記凹凸構造が正弦波形状の断面形状を有しする透過型の位相回折格子であり、前記正弦波形状に含まれる山と谷との段差Dは、D=n(m+1/2)λ・cosφ、(ただし、nは前記回折格子の材質の屈折率、mは整数であり、m=0,±1,・・・、λは光源から出射される光の波長、φは前記回折格子の任意の入射角)を満たす
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の距離測定装置において、
前記回折格子は、前記凹凸構造が正弦波形状の断面形状を有する反射型の位相回折格子であり、前記正弦波形状に含まれる山と谷との段差Dは、D=(m+1/2)λ・cosφ/2、(ただし、mは整数であり、m=0,±1,・・・、λは光源から出射される光の波長、φは前記回折格子の任意の入射角)を満たす
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載に距離測定装置において、
前記回折光学素子は、液晶層と、前記液晶層の表面に沿って配置された複数の電極とを有し、前記複数の電極のそれぞれから前記液晶層に個別に電圧を印加して、前記液晶層を入射する前記入射光に対して位相変調を行う空間光変調器を備える
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の距離測定装置において、
前記回折光学素子から出射された前記2つの次数の回折光を集光させる集光レンズをさらに備え、
前記光検出素子は、前記集光レンズによって集光された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を検出し、
前記距離算出部は、前記集光レンズから前記測定対象までの対物距離を算出する
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の距離測定装置において、
前記回折光学素子は、出射される前記2つの次数の回折光を、回折方向と光軸に直交する方向に集光させる機能をさらに備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の距離測定装置において、
前記照射光学系は、
前記光源からの光を集光させる光源レンズと、
前記光源レンズから出射する光を前記測定対象に向けるビームスプリッタと
を備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項9】
光源からの光を測定対象に集光させて照射する照射ステップと、
前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折ステップと、
前記回折ステップで出射された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を光検出素子で検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップで得られた検出結果に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出ステップと
を備えることを特徴とする距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定装置および方法に関し、特に物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて測定対象までの対物距離を測定する光学的距離測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光等の光を用いて、測定対象までの対物距離を非接触で測定できる光学的測定装置が知られている。このような光学的測定装置は、単に測定対象までの対物距離を測定するだけではなく、測定対象の表面形状測定や、薄膜の厚さ測定等、様々な用途に応用されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、測定対象を反射した反射光を回折させる振幅型の回折格子と、回折格子からの回折光を結像面に集光させる集光レンズと、結像面上に配置されて、回折光のうち予め設定された異なる2つの次数の回折光のみを透過させ、他の次数の回折光を遮断するスペイシアルフィルタとを有する距離測定装置を開示している。
【0004】
特許文献1に記載された距離測定装置ではスペイシアルフィルタを用いて、振幅型の回折格子で生じた多数の次数の回折光から、予め設定された2つの次数の回折光のみを透過させる。そして、その2つの次数の回折光を干渉させて対物距離を測定する。
【0005】
より詳細には、特許文献1に記載された距離測定装置では、矩形波状の透過率分布を有する振幅型の回折格子が用いられている。そのため、特許文献1に記載された距離測定装置では、所望する特定の次数の回折光、例えば、±1次の回折光だけでなく、高次の回折光や、回折せずにそのまま直進透過する0次の回折光が現れる。
【0006】
また、特許文献1に記載された距離測定装置では、予め設定された2つの次数の回折光のみを干渉させるために、集光レンズを用いてフーリエ変換を行い、このフーリエ変換面にてスペイシアルフィルタで所望する2つの次数の回折光をフィルタリングして透過させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−194347号公報
【特許文献2】特開2013−186350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では、集光レンズおよびスペイシアルフィルタの位置を好適な位置に調整する必要があり、この調整が十分でない場合には、干渉縞が乱れ距離測定を行うことが困難となる場合がある。また、スペイシアルフィルタには、高い加工精度が要求されるため、光学系の構成が複雑となる問題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、スペイシアルフィルタを不要とし、より簡素化された光学系を用いて対物距離を測定することができる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る距離測定装置は、光源からの光を測定対象に集光させて照射する照射光学系と、前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子と、前記回折光学素子から出射された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を検出する光検出素子と、前記光検出素子で得られた検出結果に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折光学素子は、2次元的に、かつ周期的に配列された凹凸構造を有する回折格子を備えていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折格子は、前記凹凸構造が正弦波形状の断面形状を有する透過型の位相回折格子であり、前記正弦波形状に含まれる山と谷との段差Dは、D=n(m+1/2)λ・cosφ、(ただし、nは前記回折格子の材質の屈折率、mは整数であり、m=0,±1,・・・、λは光源から出射される光の波長、φは前記回折格子の任意の入射角)を満たしていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折格子は、前記凹凸構造が正弦波形状の断面形状を有する反射型の位相回折格子であり、前記正弦波形状に含まれる山と谷との段差Dは、D=(m+1/2)λ・cosφ/2、(ただし、mは整数であり、m=0,±1,・・・、λは光源から出射される光の波長、φは前記回折格子の任意の入射角)を満たしていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折光学素子は、液晶層と、前記液晶層の表面に沿って配置された複数の電極とを有し、前記複数の電極のそれぞれから前記液晶層に個別に電圧を印加して、前記液晶層を入射する前記入射光に対して位相変調を行う空間光変調器を備えていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折光学素子から出射された前記2つの次数の回折光を集光させる集光レンズをさらに備え、前記光検出素子は、前記集光レンズによって集光された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を検出し、前記距離算出部は、前記集光レンズから前記測定対象までの対物距離を算出してもよい。
【0016】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記回折光学素子は、出射される前記2つの次数の回折光を、回折方向と光軸に直交する方向に集光させる機能をさらに備えていてもよい。
【0017】
また、本発明に係る距離測定装置において、前記照射光学系は、前記光源からの光を集光させる光源レンズと、前記光源レンズから出射する光を前記測定対象に向けるビームスプリッタとを備えていてもよい。
【0018】
また、本発明に係る距離測定方法は、光源からの光を測定対象に集光させて照射する照射ステップと、前記測定対象から反射される反射光を入射光として、前記入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折ステップと、前記回折ステップで出射された前記2つの次数の回折光により生じた干渉縞を光検出素子で検出する光検出ステップと、前記光検出ステップで得られた検出結果に基づいて前記光検出素子から前記測定対象までの対物距離を算出する距離算出ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象から反射された入射光の位相を変えて、予め設定された2つの次数の回折光を出射する回折光学素子を有するので、スペイシアルフィルタを不要とし、より簡素化された光学系を用いて対物距離を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る距離測定装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る距離測定の原理を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る回折光学素子による回折を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る異なる次数の回折光と光スポット間隔との関係を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る光スポット間隔と光路差との関係を説明する図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る検出面に生じた干渉縞を示す画像例である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る距離算出部を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る距離測定装置の動作を説明するフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る距離測定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図9を参照して詳細に説明する。
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る距離測定装置10の構成を示す模式図である。
距離測定装置10は、測定対象Tに光を照射して反射させ、その反射光に基づいて測定対象Tまでの対物距離を測定する。
【0022】
距離測定装置10は、光源11、光源レンズ12、ビームスプリッタ13、回折光学素子14、集光レンズ15、光検出素子16、および距離算出部17を備える。距離測定装置10は、例えば、上記構成が図示しないケーシング内部に収納されていてもよい。
【0023】
光源11と、光源レンズ12と、ビームスプリッタ13とは、光源11から出射される光を測定対象Tに集光して照射する照射光学系を構成する。
【0024】
光源11は、距離測定に用いる単一波長の光(単色光)を発する装置である。光源11としては、半導体レーザ装置、ナトリウムランプのような単色光や、白色光源と狭帯域バンドパスフィルタにより単一波長化された光を発する装置を用いることができる。
【0025】
光源レンズ12は、光源11から出射された光を集光してビームスプリッタ13へ出射する。
【0026】
ビームスプリッタ13は、集光学系の光路O上に配置されて、光源レンズ12で集光された光源11からの光を反射して、光路Oに沿って測定対象Tの光スポットAに照射する。また、ビームスプリッタ13は、光スポットAで拡散反射された反射光のうち、光路O方向に反射された反射光を回折光学素子14に入射させる。
【0027】
回折光学素子14は、光路O上に配置され、ビームスプリッタ13を透過した測定対象Tからの反射光が入射される。回折光学素子14は、予め設定された回折特性により入射光を制御し、入射光の位相を変えて回折特性に基づく、予め設定された2つの次数の回折光のみを出射する。
【0028】
より詳細には、回折光学素子14は、凹凸構造が2次元に、かつ周期的に配列された回折格子で構成される。本実施の形態では、回折光学素子14として、透過型の位相回折格子を用いる場合について説明するが、反射型の位相回折格子を用いてもよい。
【0029】
回折光学素子14は、石英やZnSeなどの光学基板表面に微細な凹凸構造が形成され、凹凸構造による光の回折現象を利用して入射光の強度分布を所望の分布に整形することができる素子である。より具体的には、回折光学素子14は、必要とされる次数の回折光、例えば、±1次の回折光のみを出力し、その他の不要な次数の回折光を出射しないことができる。
【0030】
回折光学素子14は、凹凸構造が、例えば、正弦波形状の断面形状を有していてもよい。正弦波形状の断面形状を有することにより、回折光学素子14は、±1次の回折光のみを出射し、高次の回折光を除去することができる。
【0031】
また、本実施の形態に係る回折光学素子14は透過型の位相回折格子であるので、0次の回折光を除去するために、正弦波形状が有する山と谷との段差Dは、光路長で次の式(1)を満たす構成とすることができる。
D=n(m+1/2)λ・cosφ ・・・(1)
上式(1)において、nは回折光学素子14の材質の屈折率、mは整数(m=0,±1,・・・)、λは、光源11から出射される光の波長、φは回折光学素子14における任意の入射角を示す。
【0032】
一方、回折光学素子14として反射型の位相回折格子を用いる場合、正弦波形状が有する山と谷との段差Dは、光路長で次の式(2)を満たす構成とすることができる。
D=(m+1/2)λ・cosφ/2 ・・・(2)
上式(2)において、mは整数(m=0,±1,・・・)、λは、光源11から出射される光の波長、φは回折光学素子14における任意の入射角を示す。
【0033】
なお、上式(1)および(2)において、位相では、πとなるような段差Dを設計すればよい。すなわち、回折光学素子14から出射される回折光の位相が互いに逆位相となることにより打ち消し合い、0次の回折光が除去されることになる。
【0034】
また、回折光学素子14である位相型格子の格子周期dは、光源11の光の波長λに比べて十分に大きく、例えば、d>10λ程度とする。これにより、位相型格子として実用に足る構成とすることができる。
【0035】
上記の条件のもと、例えば、±1次の回折光を得るためには、所望の次数の出射光の分布を逆フーリエ変換した空間的な光路分布に基づいて回折光学素子14の格子形状を設計すればよいことになる(特許文献2参照)。
【0036】
集光レンズ15は、回折光学素子14による2つの次数の回折光を集光させる。本実施の形態では、集光レンズ15は、例えば凸レンズからなり、光路O上に配置されて、回折光学素子14から出射される2つの次数の回折光を結像面Qに集光させる。
【0037】
光検出素子16は、回折光学素子14から出射された2つの次数の回折光により発生した干渉縞を検出し、検出結果を出力する。より詳細には、光検出素子16は、検出面Iを有し、この検出面Iにおいて干渉縞を検出する。光検出素子16としては、例えば、CCD(Charged Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)リニアイメージセンサや、フォトダイオードアレイなどの一次元上に配置した受光素子が利用できる。
【0038】
距離算出部17は、光検出素子16で得られた検出結果から演算処理を行い、干渉縞の周期長を抽出し、得られた周期長に基づいて集光レンズ15から測定対象Tまでの対物距離を算出する。なお、距離算出部17の構成の詳細は後述する。
【0039】
[距離測定の原理]
次に、本発明に係る距離測定装置10における距離測定の原理について、図2から図5を参照して説明する。
【0040】
なお、図2では、距離測定装置10のうち、集光学系のみを要部として示し、投影光学系については省略している。また、図2から図5において、位相回折格子で構成される回折光学素子14における格子の一方の長手方向(紙面垂直方向)をX方向とし、格子の他方の長手方向(紙面上下方向)をY方向とし、格子面に垂直な方向(紙面左右方向)をZ方向とする。
【0041】
また、本来、レンズには光の入射方向に応じて2つの主点があり、それぞれの位置が異なるが、以下では、数式の複雑化を避けるため、集光レンズ15が薄肉単レンズからなり、主点がレンズ中心に1つだけ存在すると仮定して、各式を導出した。
【0042】
図2に示すように、測定対象Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離をaとし、主点から結像面Qまでの距離をbとし、集光レンズ15の焦点距離をfとした場合、これらの関係は、結像の公式(レンズの公式)により、次の式(3)で表される。
【数1】
【0043】
上式(3)からも分かるように、集光レンズ15から測定対象Tまでの対物距離aの変化に応じて、結像面Qの位置も変化するものとなる。
また、図3に示すように、回折光学素子14に形成された凹凸構造の間隔、すなわち格子周期をdとし、回折次数をk(k=0,±1,±2,・・・)とし、光源11の波長をλとし、各回折光の回折角θkとする。この場合、隣接する回折光間の光路差ΔLは、次の式(4)で表される。
【0044】
【数2】
【0045】
さらに、図4に示すように、回折光学素子14から出射された回折光は、集光レンズ15により、結像面Q上のY方向に複数の光スポットを形成する。ここで、異なる2つの次数k,k’の回折光の回折角をθk,θk’とし、これら回折光による光スポットをAk,Ak’とし、光軸と結像面が交わる点A0から光スポットAk,Ak’までのY方向に沿った距離をW1,W2とした場合、これら光スポットAk,Ak’のY方向のずれ幅Wは、次の式(5)で表される。
【0046】
【数3】
【0047】
ここで、上式(5)において、実際の回折光学素子14における凹凸構造の格子周期dは、kλ,k’λに比べて十分大きく、kλ/dおよびk’λ/dが十分小さい値となるため、式(5)は次の式(6)のように近似される。
【数4】
【0048】
一方、図5に示すように、結像面Q上の光スポットAk,Ak’の光スポット間隔をWとし、光スポットAk,Ak’からの回折光が光検出素子16の検出面Iに到達した到達点をVとする。また、光スポットAk,Ak’の中間点からZ方向に伸ばした線と光検出素子16の検出面Iとが交わる点をV0とし、検出面I上でY方向に沿ったV0からVまでの距離をPとする。結像面Qから検出面Iまでの距離をcとした場合、光スポットAkから到達点Vへの回折光の光路長Lkは三平方の定理により求められる。しかし、距離cに比較して光スポット間隔Wと距離Pとが十分小さいため、次の式(7)のように近似できる。
【0049】
【数5】
また、光スポットAkから到達点Vへの回折光の光路長Lk’も、光路長Lkと同様にして、次の式(8)のように近似できる。
【0050】
【数6】
【0051】
したがって、これら光路長Lk,Lk’の光路差ΔLは、次の式(9)で求められる。検出面I上では、この光路差ΔLにより干渉縞が生ずる。より具体的には、光路差ΔLが光の波長λの整数j(jは、0以上の整数)倍となる場合、検出面Iにおいて明線が生じる。
【0052】
【数7】
【0053】
ここで、検出面I上に生じた各明線のうち、隣接する明線の間隔が干渉縞ピッチpとなり、式(9)のj=1の場合に相当する。よって、光検出素子16の検出面I上に生じた干渉縞の干渉縞ピッチpは、式(9)を変形することにより、次の式(10)で求められる。
【数8】
【0054】
この際、光スポット間隔Wは式(6)で求められているため、これを式(10)に代入すれば、式(11)となる。
【数9】
【0055】
さらに、回折次数k,k’の次数差をΔkとし、集光レンズ15の主点から結像面Qまでの距離bと、結像面Qから検出面Iまでの距離cを、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離Lで置換する。この場合、式(11)は、次の式(12)となる。
【数10】
【0056】
したがって、干渉縞ピッチpは、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離Lに依存する関数で求められることが分かる。
この際、集光レンズ15の主点から結像面Qまでの距離bは、前述した式(3)に示したように、測定対象Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離aと、集光レンズ15の焦点距離fとで表される。これより、式(12)は式(13)のように変形できる。
【数11】
【0057】
ここで、集光レンズ15の焦点距離f、集光レンズ15の主点から検出面Iまでの距離L、および回折次数k,k’の次数差Δkは、それぞれ既知の値である。このことから、結果として、干渉縞ピッチpは、測定対象Tから主点Mすなわち集光レンズ15の位置までの対物距離aの関数となることが分かる。そのため、光検出素子16の検出面Iで検出される干渉縞ピッチpを測定することにより、次の式(14)により、測定対象Tまでの対物距離aを求めることができる。
【数12】
【0058】
図6は、光検出素子16で得られた検出結果の解析例である。ここでは、横軸が干渉縞に直行するY方向に沿った画像のピクセル位置[pic]を示し、縦軸が各ピクセル位置における光強度(無単位)である。得られた検出結果は、ほぼ正弦波形状をなしており、そのピーク位置が明線に相当している。したがって、ピーク位置間に存在するピクセル数から干渉縞ピッチpを示す実際の距離を算出できる。
【0059】
図7は、上述した対物距離aの算出に係る演算処理を行う距離算出部17の構成を示すブロック図である。
距離算出部17は、バス101を介して接続されるCPU103と主記憶装置104とを有する演算装置102、通信制御装置105、I/F106、外部記憶装置107、表示装置108等を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0060】
図7に示すように、光検出素子16は、I/F106を介して距離算出部17に接続されており、得られた検出結果をI/F106を介して距離算出部17に出力する。
表示装置108は、液晶ディスプレイなどで構成され、演算装置102による対物距離aの算出結果を表示する。
【0061】
通信制御装置105は、各種外部電子機器との間を通信ネットワークを介して接続するための制御装置である。通信制御装置105は、対物距離aの算出結果などを通信ネットワークを介して外部に送出してもよい。
【0062】
[距離測定装置の動作]
上述した構成を有する距離測定装置10の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0063】
まず、距離測定装置10に、測定対象Tが配置される。また、光源11の光量や露光時間などの初期調整が行われる。
【0064】
その後、光源11から出射された光は、光源レンズ12によって集光されて、ビームスプリッタ13により測定対象Tに向けて照射される(ステップS1)。次に、測定対象Tを反射した光は、ビームスプリッタ13を透過して、回折光学素子14に入射する。回折光学素子14は、予め設定された回折特性により入射光を制御し、入射光の位相を変えてその回折特性に基づく、予め設定された2つの次数の回折光のみを出射する(ステップS2)。
【0065】
次に、回折光学素子14から出射された2つの次数の回折光は、集光レンズ15によって集光される。そして、2つの次数の回折光により発生する干渉縞は、光検出素子16によって検出される(ステップS3)。
【0066】
その後、光検出素子16は、検出した干渉縞の情報を距離算出部17に入力する。そして、距離算出部17は、上述した距離測定の原理に基づく演算を行い、測定対象Tの対物距離aを算出する(ステップS5)。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態によれば、距離測定装置10は、測定対象Tから反射される反射光を入射光として、入射光の位相を変えて予め設定された2つの次数の回折光のみを出射する回折光学素子14を有するので、スペイシアルフィルタを不要とし、より簡素化された光学系を用いて対物距離aを測定することができる。
【0068】
また、回折光学素子14は、予め設定された2つの次数の回折光のみを出射するため、従来の振幅型の回折格子を用いた技術では必要とされた、フーリエ変換を行うためのレンズも不要となる。そのため、距離測定装置10は、フーリエ変換面の位置にスペイシアルフィルタを設置するためなどの光学系における精密な位置調整を行うことなく、対物距離aを測定することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る距離測定装置10は、回折光学素子14において、入射光の一部を遮断することなく回折光を出射する。そのため、振幅型の回折格子を用いた場合と比較して、本実施の形態に係る距離測定装置10は、所望の次数の回折光に対してより高い回折効率が得られる。その結果として、より信号強度の強い光を用いて距離測定を行うことができる。
【0070】
なお、説明した実施の形態では、距離測定装置10は、集光レンズ15を備え、収束光を構成する場合について説明した。しかし、距離測定装置10は、結像面Qにおいてフーリエ変換面を構成する必要はないため、集光レンズ15の代わりに、図9に示すように、レンズ15Aを用いて平行光や発散光を構成してもよい。
【0071】
また、集光レンズ15を用いずに、回折光学素子14から出射される2つの次数の回折光により発生する干渉縞を、直接的に、光検出素子16で検出する構成を採用してもよい。この場合、距離測定装置10は、対物距離aとして、光検出素子16の検出面Iから測定対象Tまでの距離を測定する。
【0072】
また、説明した実施の形態に係る距離測定装置10において、回折光学素子14と光検出素子16との間の光路O上に、回折光学素子14の回折方向と光軸に直交する方向に2つの次数の回折光を集光する手段を設けてもよい。集光手段としては、例えば、光の屈折を利用したシリンドリカルレンズや、反射鏡などが挙げられる。また、回折光学素子14自体にレンズの機能を設け、集光手段を構成してもよい。このような集光手段をさらに備えることで、距離測定装置10において、回折光の信号強度をより大きくさせることが可能となる。
【0073】
また、説明した実施の形態に係る距離測定装置10は、位相回折格子で構成される回折光学素子14を備える場合について説明した。しかし、回折光学素子14は、位相回折格子に限られず、例えば、空間光変調器を用いることができる。
【0074】
空間光変調器は、例えば、液晶層と、その液晶層の表面に沿って配置された複数の電極を有し、複数の電極のそれぞれから液晶層に個別に電圧を印加して、液晶層を入射する入射光に対して位相変調を行い、予め設定された2つの次数の回折光のみを出射する。空間光変調器を用いることにより、出射する2つの回折光の次数を用途に応じて可変とすることができる。
【0075】
以上、本発明の距離測定装置、および距離測定方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…距離測定装置、11…光源、12…光源レンズ、13…ビームスプリッタ、14…回折光学素子、15…集光レンズ、16…光検出素子、17…距離算出部、T…測定対象、Q…結像面、I…検出面、a…対物距離、p…干渉縞ピッチ、101…バス、102…演算装置、103…CPU、104…主記憶装置、105…通信制御装置、106…I/F、107…外部記憶装置、108…表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9