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特開2019-158532放射線検出パネル、放射線検出器、および放射線検出パネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-158532(P2019-158532A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】放射線検出パネル、放射線検出器、および放射線検出パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20190823BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   G01T1/20 C
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
   G01T1/20 L
   A61B6/00 300Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-44610(P2018-44610)
(22)【出願日】2018年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】今井 庸晶
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB04
2G188CC12
2G188CC15
2G188CC17
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD47
4C093CA31
4C093CA41
4C093EB12
4C093EB17
4C093EB20
(57)【要約】
【課題】保護層の剥離を抑制することができる放射線検出パネル、放射線検出器、および放射線検出パネルの製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る放射線検出パネルは、基板と、前記基板の一方の面に設けられた複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子の上に設けられ、透光性を有する絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の上に設けられた保護層と、前記絶縁層と、前記保護層と、の間に設けられ、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料を含む接合層と、前記保護層の上に設けられ、前記複数の光電変換素子を覆うシンチレータと、少なくとも前記シンチレータを覆う防湿層と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた複数の光電変換素子と、
前記複数の光電変換素子の上に設けられ、透光性を有する絶縁層と、
少なくとも前記絶縁層の上に設けられた保護層と、
前記絶縁層と、前記保護層と、の間に設けられ、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料を含む接合層と、
前記保護層の上に設けられ、前記複数の光電変換素子を覆うシンチレータと、
少なくとも前記シンチレータを覆う防湿層と、
を備えた放射線検出パネル。
【請求項2】
前記保護層と、前記防湿層とは、絶縁性、水蒸気遮断性、透光性、前記シンチレータに含まれる物質に対する耐腐食性を有する請求項1記載の放射線検出パネル。
【請求項3】
前記保護層と、前記防湿層とは、ポリパラキシリレンを主成分として含んでいる請求項1または2に記載の放射線検出パネル。
【請求項4】
前記保護層と、前記防湿層とは、炭素結晶を主成分として含んでいる請求項1または2に記載の放射線検出パネル。
【請求項5】
前記シンチレータは、ハロゲン化合物を主成分として含んでいる請求項1〜4のいずれか1つに記載の放射線検出パネル。
【請求項6】
前記絶縁層が無機材料を含む場合には、
前記接合層は、前記無機材料と化学結合する反応基と、前記ポリパラキシリレンと化学結合する反応基とを有する材料を含んでいる請求項3または5に記載の放射線検出パネル。
【請求項7】
前記絶縁層が有機材料を含む場合には、
前記接合層は、前記有機材料と化学結合する反応基と、前記ポリパラキシリレンと化学結合する反応基とを有する材料を含んでいる請求項3または5に記載の放射線検出パネル。
【請求項8】
前記絶縁層が無機材料を含む場合には、
前記接合層は、前記無機材料と化学結合する反応基と、前記炭素結晶と化学結合する反応基とを有する材料を含んでいる請求項4または5に記載の放射線検出パネル。
【請求項9】
前記絶縁層が有機材料を含む場合には、
前記接合層は、前記有機材料と化学結合する反応基と、前記炭素結晶と化学結合する反応基とを有する材料を含んでいる請求項4または5に記載の放射線検出パネル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の放射線検出パネルと、
前記放射線検出パネルと電気的に接続された回路基板、および、通信回路基板の少なくともいずれかと、
を備えた放射線検出器。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の放射線検出パネルの製造方法であって、
複数の光電変換素子の上に、透光性を有する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料を含む接合層を形成する工程と、
前記接合層の上に保護層を形成する工程と、
前記保護層の上に、前記複数の光電変換素子を覆うシンチレータを形成する工程と、
少なくとも前記シンチレータを覆う防湿層を形成する工程と、
を備えた放射線検出パネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出パネル、放射線検出器、および放射線検出パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器の一例にX線検出器がある。X線検出器には、X線を蛍光に変換するシンチレータと、蛍光を電気信号に変換するアレイ基板とが設けられている。また、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータの上に反射部をさらに設ける場合もある。
シンチレータは、例えば、真空蒸着法などを用いて、アレイ基板の上に直接形成される場合がある。しかしながら、シンチレータは、CsI(ヨウ化セシウム):Tl(タリウム)やCsI:Na(ナトリウム)などのハロゲン化合物から形成されるため、シンチレータの形成時に、ハロゲンが配線などの材料と反応して腐食が生じ易いという問題がある。例えば、アレイ基板の表面には、フォトダイオードあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの複数の素子の他に、複数の素子を電気的に接続するための配線が設けられている。そのため、シンチレータの形成時に配線などが腐食するおそれがある。
【0003】
そこで、アレイ基板の表面に保護層を形成し、保護層の上にシンチレータを形成する技術が提案されている。
ところが、単に、アレイ基板の表面に保護層を形成すると、シンチレータの形成時などに、保護層がアレイ基板の表面から剥がれる場合がある。保護層がアレイ基板の表面から剥がれると、シンチレータとアレイ基板との間に隙間が生じ、シンチレータからアレイ基板に向かう光がこの隙間において反射したり拡散したりするおそれがある。その結果、アレイ基板への光の伝達効率が低下して、X線画像の画素の明るさや、X線画像の鮮明さが低下するおそれがある。X線画像の画素の明るさや、X線画像の鮮明さが低下すると、X線画像の画質が悪くなるおそれがある。
そこで、保護層の剥離を抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−192807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、保護層の剥離を抑制することができる放射線検出パネル、放射線検出器、および放射線検出パネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放射線検出パネルは、基板と、前記基板の一方の面に設けられた複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子の上に設けられ、透光性を有する絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の上に設けられた保護層と、前記絶縁層と、前記保護層と、の間に設けられ、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料を含む接合層と、前記保護層の上に設けられ、前記複数の光電変換素子を覆うシンチレータと、少なくとも前記シンチレータを覆う防湿層と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係るX線検出パネルおよびX線検出器を例示するための模式斜視図である。
図2】X線検出パネルの模式断面図である。
図3】(a)は、他の実施形態に係るX線検出器を例示するための模式断面図である。(b)は、(a)におけるB部の模式拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、本発明の実施形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
また、放射線検出器は、例えば、一般医療や歯科医療などに用いることができる。ただし、放射線検出器の用途は、これらに限定されるわけではない。
【0009】
(X線検出パネルおよびX線検出器)
図1は、本実施の形態に係るX線検出パネル10およびX線検出器1を例示するための模式斜視図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、図1においては、防湿層7などを省いて描いている。
図2は、X線検出パネル10の模式断面図である。
【0010】
放射線検出器であるX線検出器1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサである。
図1および図2に示すように、X線検出器1には、X線検出パネル10および回路基板20が設けられている。
X線検出パネル10には、アレイ基板2、シンチレータ3、反射層4、保護層5、接合層6、および防湿層7が設けられている。
【0011】
アレイ基板2は、シンチレータ3によりX線から変換された蛍光(可視光)を電気信号に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、配線パッド2d1、2d2、絶縁層2fなどを有する。
なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2などの数は例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
基板2aは、板状を呈し、無アルカリガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の面に複数設けられている。光電変換部2bは、矩形状を呈したものとすることができる。光電変換部2bは、平面視において、複数の制御ライン2c1と、複数のデータライン2c2と、により画された複数の領域のそれぞれに設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。なお、1つの光電変換部2bは、X線画像における1つの画素(pixel)に対応する。
【0013】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2が設けられている。
また、光電変換素子2b1において変換した電荷が供給される蓄積キャパシタを設けることができる。蓄積キャパシタは、例えば、矩形平板状を呈し、薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねることができる。なお、以下においては、一例として、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねる場合を例示する。
【0014】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードやCMOSセンサなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蓄積キャパシタの役割をはたす光電変換素子2b1への電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。
薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極は、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極は、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極は、対応する光電変換素子2b1と電気的に接続される。また、光電変換素子2b1のアノード側は、対応する図示しないバイアスラインと電気的に接続される。なお、バイアスラインが設けられない場合には、光電変換素子2b1のアノード側はバイアスラインに代えてグランドに電気的に接続される。
【0015】
制御ライン2c1は、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、例えば、行方向に延びている。1つの制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、回路基板20に設けられた読み出し回路と電気的に接続されている。
【0016】
データライン2c2は、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、例えば、行方向に直交する列方向に延びている。1つのデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、回路基板20に設けられた信号検出回路と電気的に接続されている。
【0017】
絶縁層2fは、光電変換部2b、制御ライン2c1、およびデータライン2c2の上に設けられている。絶縁層2fは、透光性と絶縁性を有する材料から形成することができる。絶縁層2fは、例えば、窒化ケイ素(SiN)などの無機材料から形成することができる。また、絶縁層2fは、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブチラールなどの有機材料から形成することもできる。
【0018】
シンチレータ3は、保護層5の上に設けられ、少なくとも複数の光電変換素子2b1を覆っている。シンチレータ3は、有効画素領域Aを覆うように設けられている。有効画素領域Aとは、基板2a上の複数の光電変換素子2b1が設けられた領域である。
シンチレータ3は、入射したX線を蛍光に変換する。
シンチレータ3は、ハロゲン化合物を主成分として含んでいる。シンチレータ3は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、ヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)、あるいは臭化セシウム(CsBr):ユーロピウム(Eu)などを用いて形成することができる。シンチレータ3は、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。真空蒸着法を用いてシンチレータ3を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ3が形成される。
【0019】
反射層4は、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために設けられている。すなわち、反射層4は、シンチレータ3において生じた蛍光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。
反射層4は、例えば、酸化チタン(TiO)などの光散乱性を有する粒子を含む樹脂層や、アルミニウムなどの金属を含む金属層などとすることができる。
なお、反射層4は、必ずしも必要ではなく、要求される感度特性などに応じて適宜設けられるようにすればよい。
【0020】
保護層5は、アレイ基板2を覆うように設けられている。
前述したように、シンチレータ3は、ヨウ化物や臭化物などのハロゲン化合物を用いて形成される。そのため、シンチレータ3を形成する際に、絶縁層2fから露出している制御ライン2c1の一部、データライン2c2の一部、配線パッド2d1、配線パッド2d2などが腐食するおそれがある。そのため、保護層5は、シンチレータ3を形成する際に腐食が生じるのを抑制するために設けられている。
保護層5は、例えば、絶縁性、水蒸気遮断性、透光性、シンチレータ3に含まれる物質に対する耐腐食性を有する材料から形成することができる。保護層5は、例えば、有機材料であるアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブチラール、ポリパラキシリレンなどを含むものとすることができる。この場合、ポリパラキシリレンを主成分として含む保護層5とすれば、ポリパラキシリレンを主成分として含む防湿層7との密着性をさらに向上させることができる。保護層5は、例えば、無機材料である炭素結晶を主成分として含むこともできる。
【0021】
一般的に、保護層5の保護対象となる配線などは、アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側に設けられる。そのため、保護層5は、少なくともアレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側に設けられていればよい。例えば、保護層5は、少なくとも絶縁層2fの上に設けられていればよい。
ただし、保護層5は、アレイ基板2の全体を覆うように設けることができる。この様にすれば、保護層5の形成が容易となる。例えば、保護層5の材料を蒸発させたチャンバの内部にアレイ基板2を載置すれば、アレイ基板2の全体を覆う保護層5を容易に形成することができる。
【0022】
また、シンチレータ3において生じた蛍光は、保護層5を透過して光電変換素子2b1に到達する。そのため、保護層5の厚みは薄くすることが好ましい。保護層5の厚みは、例えば、15μm以下とすることができる。
【0023】
ここで、保護層5をアレイ基板2の表面に直接設けると、保護層5がアレイ基板2の表面から剥がれる場合がある。例えば、無機材料を含む絶縁層2fの上に、有機材料を含む保護層5を直接形成すると、保護層5と絶縁層2fとの間の接合力が弱くなる場合がある。この様な場合において、シンチレータ3の形成時やX線検出器1の稼働時などに熱応力などが発生すると、保護層5が絶縁層2fから剥がれて、保護層5と絶縁層2fとの間に隙間が生じる場合がある。すなわち、シンチレータ3と光電変換素子2b1との間に隙間が生じるおそれがある。この様な隙間が生じると、シンチレータ3から光電変換素子2b1に向かう光がこの隙間において反射したり拡散したりして光電変換素子2b1への光の伝達効率が低下するおそれがある。光電変換素子2b1への光の伝達効率が低下すると、X線画像の画素の明るさや、X線画像の鮮明さが低下して、X線画像の画質が悪くなるおそれがある。
【0024】
そこで、本実施の形態に係るX線検出パネル10においては、アレイ基板2(絶縁層2f)と、保護層5との間に接合層6を設けている。
接合層6は、保護層5とアレイ基板2とを接合する。接合層6は、例えば、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料から形成することができる。
【0025】
この場合、接合層6は、例えば、シランカップリング剤などから形成することができる。ただし、接合層6の材料はシランカップリング剤に限定されるわけではない。
例えば、絶縁層2fが無機材料(例えば、窒化ケイ素など)を含み、保護層5が有機材料(例えば、ポリパラキシリレンなど)を含む場合がある。この様な場合には、接合層6の材料は、絶縁層2fの無機材料と化学結合する反応基と、保護層5の有機材料と化学結合する反応基とを有するものとすることができる。
また、例えば、絶縁層2fが有機材料(例えば、アクリル系樹脂など)を含み、保護層5が有機材料を含む場合がある。この様な場合には、接合層6の材料は、絶縁層2fの有機材料と化学結合する反応基と、保護層5の有機材料と化学結合する反応基とを有するものとすることができる。
例えば、絶縁層2fが無機材料を含み、保護層5が無機材料(例えば、炭素結晶など)を含む場合がある。この様な場合には、接合層6の材料は、絶縁層2fの無機材料と化学結合する反応基と、保護層5の無機材料と化学結合する反応基とを有するものとすることができる。
また、例えば、絶縁層2fが有機材料を含み、保護層5が無機材料を含む場合がある。この様な場合には、接合層6の材料は、絶縁層2fの有機材料と化学結合する反応基と、保護層5の無機材料と化学結合する反応基とを有するものとすることができる。
【0026】
この様にすれば、反応基を有する接合層6を介して、保護層5とアレイ基板2(絶縁層2f)とが強固に接合される。
接合層6は、少なくともシンチレータ3とアレイ基板2の間に設けられていればよい。例えば、平面視において(X線の入射側から見た場合に)、接合層6は、有効画素領域Aに設けることができる。また、接合層6は、シンチレータ3が形成される領域に設けることもできる。これらの領域に隙間が生じなければ、光電変換素子2b1への光の伝達効率が低下するのを抑制することができる。
【0027】
また、接合層6は、アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側の表面を覆うように設けることができる。アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側において、保護層5の上には防湿層7が設けられる。そのため、アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側の表面を覆うように接合層6が設けられていれば、防湿層7とアレイ基板2との間の接合強度を高めることができる。そのため、防湿性の向上を図ることができる。
【0028】
また、接合層6は、アレイ基板2の全体を覆うように設けることができる。この様にすれば、接合層6の形成が容易となる。例えば、接合層6の材料を蒸発させたチャンバの内部にアレイ基板2を載置すれば、アレイ基板2の全体を覆う接合層6を容易に形成することができる。
【0029】
また、シンチレータ3において生じた蛍光は、接合層6を透過して光電変換素子2b1に到達する。そのため、接合層6の厚みは薄くすることが好ましい。接合層6の厚みは、例えば、15μm以下とすることができる。
【0030】
接合層6が設けられていれば、シンチレータ3の形成時やX線検出器1の稼働時などに熱応力などが発生しても、保護層5が剥離するのを抑制することができる。そのため、シンチレータ3と光電変換素子2b1との間に隙間が生じるのを抑制することができるので、光電変換素子2b1への光の伝達効率が低下するのを抑制することができる。その結果、X線画像の画素の明るさや、X線画像の鮮明さが低下して、X線画像の画質が悪くなるのを抑制することができる。
【0031】
防湿層7は、空気中に含まれる水蒸気により、反射層4の特性やシンチレータ3の特性が劣化するのを抑制するために設けられている。この場合、シンチレータ3が、CsI:TlやCsI:Naなどを含む場合には、湿度などによる解像度特性の劣化が大きくなるおそれがある。
そのため、防湿層7は、少なくともシンチレータ3を覆ってる。反射層4が設けられている場合には、防湿層7は、シンチレータ3および反射層4を覆っている。
なお、防湿層7は、接合層6、保護層5、およびシンチレータ3が設けられたアレイ基板2の全体を覆うように設けることもできる。この様にすれば、防湿層7の形成が容易となる。例えば、防湿層7の材料を蒸発させたチャンバの内部に、接合層6、保護層5、およびシンチレータ3が設けられたアレイ基板2を載置すれば、これらの全体を覆う防湿層7を容易に形成することができる。
【0032】
防湿層7は、例えば、絶縁性、水蒸気遮断性、透光性、シンチレータ3に含まれる物質に対する耐腐食性を有する材料から形成することができる。防湿層7は、例えば、有機材料であるポリパラキシリレンを主成分として含むことができる。防湿層7は、例えば、無機材料である炭素結晶を主成分として含むことができる。この場合、防湿層7の材料が、保護層5の材料と同じであれば、防湿層7と保護層5との間の密着性を向上させることができる。そのため、防湿性の向上を図ることができる。
【0033】
回路基板20は、アレイ基板2の、シンチレータ3側とは反対側に設けられている。
回路基板20には、読み出し回路と、信号検出回路とが設けられている。
読み出し回路は、薄膜トランジスタ2b2のオン状態とオフ状態を切り替える。読み出し回路には、画像処理回路などから制御信号S1が入力される。読み出し回路は、X線画像の走査方向に従って、制御ライン2c1に制御信号S1を入力する。例えば、読み出し回路は、フレキシブルプリント基板2e1を介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次入力する。制御ライン2c1に入力された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、蓄積キャパシタの役割をはたす光電変換素子2b1からの電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0034】
信号検出回路は、複数の積分アンプ、選択回路、およびADコンバータなどを有する。1つの積分アンプは、1つのデータライン2c2と電気的に接続されている。積分アンプは、光電変換部2bからの画像データ信号S2を順次受信する。そして、積分アンプは、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を選択回路へ出力する。この様にすれば、所定の時間内にデータライン2c2を流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することが可能となる。すなわち、積分アンプは、シンチレータ3において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換する。
【0035】
選択回路は、読み出しを行う積分アンプを選択し、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順次読み出す。
ADコンバータは、読み出された画像データ信号S2をデジタル信号に順次変換する。デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、画像処理回路に入力される。
【0036】
画像処理回路は、デジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいてX線画像を構成する。画像処理回路は、回路基板3に設けることもできるし、X線検出器1の外部に設けることもできる。画像処理回路がX線検出器1の外部に設けられる場合には、無線により通信を行うようにすることもできるし、配線を介して通信を行うようにすることもできる。
【0037】
その他、X線検出パネル10を収納する筐体を設けることもできる。筐体は箱状を呈したものとすることができる。筐体の、シンチレータ3と対峙する面は、X線を透過する材料から形成することができる。また、筐体の内部に支持板を設けることができる。支持板の、X線が入射する側の面には、X線検出パネル10を設けることができる。支持板の、X線が入射する側とは反対側の面には、回路基板20を設けることができる。
【0038】
図3(a)は、他の実施形態に係るX線検出器11を例示するための模式断面図である。 図3(b)は、図3(a)におけるB部の模式拡大図である。
図3(a)、(b)に示すように、X線検出器11には、X線検出パネル10、通信回路基板21、および筐体22が設けられている。
本実施の形態においては、回路基板20および画像処理回路は、X線検出器11の外部に設けられている。
通信回路基板21は、配線21aを介して、X線検出パネル10と電気的に接続されている。通信回路基板21は、X線検出パネル10と、回路基板20および画像処理回路との間の通信を行う。例えば、通信回路基板21は、回路基板20からの制御信号S1を受信し、受信した制御信号S1を所定の制御ライン2c1に入力する。例えば、通信回路基板21は、X線検出パネル10からの画像データ信号S2を受信し、回路基板20に送信する。通信回路基板21は、無線により通信を行うものとすることもできるし、配線を介して通信を行うものとすることもできる。
なお、通信回路基板21、回路基板20、および画像処理回路をX線検出パネル10と電気的に接続し、これらを筐体22の内部に収納してもよい。
すなわち、X線検出器は、X線検出パネル10と電気的に接続された回路基板20、および、通信回路基板21の少なくともいずれかを備えることができる。
【0039】
接合層6は、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aの全体を覆っている。例えば、接合層6の材料を蒸発させたチャンバの内部に、配線21aを介して電気的に接続されたX線検出パネル10と通信回路基板21を載置すれば、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aの全体を覆う接合層6を容易に形成することができる。
【0040】
また、保護層5は、接合層6の全体を覆っている。例えば、保護層5の材料を蒸発させたチャンバの内部に、接合層6により覆われたアレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aを載置すれば、接合層6の全体を覆う保護層5を容易に形成することができる。
【0041】
また、防湿層7は、保護層5の全体を覆っている。例えば、防湿層7の材料を蒸発させたチャンバの内部に、保護層5により覆われたアレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aを載置すれば、保護層5の全体を覆う防湿層7を容易に形成することができる。
本実施の形態によれば、接合層6、保護層5、および防湿層7により、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aを一体化することができる。
【0042】
筐体22は、一方の端部が開口した箱状を呈している。筐体22の内部には、接合層6、保護層5、および防湿層7により覆われた、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aが収納される。接合層6、保護層5、および防湿層7により、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aが一体化されていれば、筐体22の内部への収納が容易となる。
筐体22は、例えば、アルミニウム合金、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)などを用いて形成することもできる。
入射板22aは、筐体22の開口を塞いでいる。入射板22aは、X線を透過させる。入射板22aは、X線吸収率の低い材料を用いて形成されている。入射板22aは、例えば、炭素繊維強化プラスチックなどを用いて形成することができる。
【0043】
(X線検出パネルおよびX線検出器の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るX線検出パネル10およびX線検出器1の製造方法について例示をする。
まず、基板2a上に光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、配線パッド2d1、2d2、および絶縁層2fなどを順次形成してアレイ基板2を作成する。アレイ基板2は、例えば、半導体製造プロセスを用いて作成することができる。
【0044】
次に、少なくとも有効画素領域Aの上に接合層6を形成する。接合層6は、シンチレータ3が形成される領域の上に形成することもできる。接合層6は、アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側の表面の上に形成することもできる。接合層6は、アレイ基板2の全体を覆うように形成することもできる。
接合層6は、例えば、溶解させた材料をアレイ基板2の所定の領域や表面全体に供給し、これを乾燥させることで形成することができる。
【0045】
次に、接合層6の上に保護層5を形成する。保護層5は、少なくともアレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側に形成することができる。保護層5は、アレイ基板2の全体を覆うように形成することもできる。
保護層5は、例えば、材料を蒸発させたチャンバの内部に接合層6が形成されたアレイ基板2を載置することで形成することができる。この場合、マスクなどを用いて、保護層5が形成される領域を限定することもできる。
【0046】
次に、少なくとも有効画素領域Aの上にシンチレータ3を形成する。シンチレータ3は、例えば、真空蒸着法などを用いて、ヨウ化セシウム:タリウムからなる膜を成膜することで形成することができる。この場合、シンチレータ3の厚みは、600μm程度とすることができる。
シンチレータ3を形成する際には、蒸着材料がアレイ基板2の周縁近傍に到達しないようにマスクが用いられる。そのため、シンチレータ3の周縁領域は、外側になるに従い厚みが薄くなる。
【0047】
次に、シンチレータ3の上に反射層4を形成する。反射層4は、例えば、酸化チタン(TiO)などからなる光散乱性粒子を含む樹脂をシンチレータ3上に塗布することで形成することができる。
次に、少なくともシンチレータ3の上に防湿層7を形成する。反射層4が設けられている場合には、防湿層7は、シンチレータ3および反射層4の上に形成する。防湿層7は、接合層6、保護層5、およびシンチレータ3が形成されたアレイ基板2の全体を覆うように形成することもできる。防湿層7は、例えば、材料を蒸発させたチャンバの内部に、接合層6、保護層5、シンチレータ3、および反射層4が設けられたアレイ基板2を載置することで形成することができる。
以上の様にしてX線検出パネル10を製造することができる。
【0048】
なお、図3(a)に例示をしたように、接合層6、保護層5、および防湿層7により、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aを一体化することもできる。
【0049】
次に、フレキシブルプリント基板2e1、2e2を介して、X線検出パネル10と回路基板20を電気的に接続する。
次に、X線検出パネル10と回路基板20を筐体の内部に収納する。
接合層6、保護層5、および防湿層7により、アレイ基板2、通信回路基板21、および配線21aが一体化されている場合には、これらを筐体の内部に収納する。
そして、必要に応じて、光電変換部2bの異常の有無や電気的な接続の異常の有無を確認する電気試験、X線画像試験などを行う。
以上のようにして、X線検出器1、11を製造することができる。
【0050】
以上に説明したように、本実施の形態に係るX線検出パネル10の製造方法は以下の工程を備えることができる。
複数の光電変換素子2b1の上に、透光性を有する絶縁層2fを形成する工程。
絶縁層2fの上に、透光性を有し、無機材料と化学結合する反応基、および、有機材料と化学結合する反応基の少なくともいずれかを有する材料を含む接合層6を形成する工程。
接合層6の上に保護層5を形成する工程。
保護層5の上に、複数の光電変換素子2b1を覆うシンチレータ3を形成する工程。
少なくともシンチレータ3を覆う防湿層7を形成する工程。
なお、各工程の内容は前述したものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 X線検出器、2 アレイ基板、2a 基板、2b 光電変換部、2b1 光電変換素子、2f 絶縁層、3 シンチレータ、4 反射層、5 保護層、6 接合層、7 防湿層、10 X線検出パネル、11 X線検出器、20 回路基板、21 通信回路基板、21a 配線、22 筐体
図1
図2
図3