【解決手段】入力信号を画面上の座標に表示する表示装置1は、座標のY軸Dyに対して基準位置Pbからの入力信号の変位量を設定する操作部30を備える。そして表示装置1は、設定された変位量に基づいてY軸Dyの表示範囲をY軸Dyの端に向かって縮小し、その表示範囲Rの縮小に応じてY軸Dyの表示倍率を変更する処理部50と、縮小した表示範囲R内に入力信号を変更後の表示倍率で表示する表示部40と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態における表示装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0011】
表示装置1は、一又は複数の入力信号を画面に表示するコンピュータである。表示装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース及び、これらを相互に接続するバス等により構成される。
【0012】
表示装置1は、例えば、測定対象の物理量を測定してその結果を画面に表示する測定装置に組み込まれる。あるいは、表示装置1は、タブレット端末、スマートフォン、又はパーソナルコンピュータ等の電子端末により構成される。
【0013】
表示装置1は、外部から入力される入力信号を取得し、その入力信号を画面上の座標に表示する。表示装置1は、入力部10と、記憶部20と、操作部30と、表示部40と、処理部50と、を備える。
【0014】
入力部10は、表示装置1の外部と通信を行う通信回路により構成される。入力部10は、処理部50の指示に従って外部から一又は複数の入力信号を取得する取得手段を構成する。入力信号としては、例えば、波形又はヒストグラム等を示すデータが挙げられる。入力部10は、例えば、インターネット網又は電話網等のネットワークを通じて無線又は有線により外部端末から入力信号を受信したり、USBメモリ等の外部メモリから入力信号を取得したりする。
【0015】
本実施形態の入力部10は、A/D変換回路により構成される。そして入力部10は、測定回路から時系列に出力される測定値を示すアナログ信号を受信し、そのアナログ信号をデジタル信号に変換した波形データを入力信号として取得する。測定回路は、例えば測定対象の電圧、電流、抵抗及び電力等の物理量を測定する電気回路である。
【0016】
記憶部20は、RAM及びROMにより構成され、入力部10で取得された入力信号を記憶する。記憶部20には、処理部50により何らかの処理が施された入力信号が記録されてもよい。例えば、記憶部20には、間引き処理が施された入力信号、又は、所定期間ごとに平均値を算出したトレンドデータ等が記録される。
【0017】
本実施形態では、一又は複数の波形データが入力信号として記憶部20に記憶される。さらに記憶部20には、処理部50が本実施形態の表示処理を実行するためのプログラムが記憶されている。すなわち、記憶部20は、表示装置1の各部位を制御するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0018】
操作部30は、表示部40の画面近傍に設けられる押しボタン、画面内に配置されるタッチセンサ、又は、キーボード及びマウス等により構成される。操作部30は、電源ボタンを押下する入力操作を受け付けることで表示装置1の起動指令を処理部50に出力する。
【0019】
操作部30は、利用者の入力操作を受け付け、その入力操作に基づいて画面上の表示条件を設定する設定手段である。例えば、操作部30は、利用者の入力操作に基づき、入力信号についての各軸の表示範囲を示す手動設定情報の入力を受け付ける。本実施形態の操作部30は、自動スケール機能の実行を指示する自動設定情報の入力を受け付ける。自動スケール機能とは、画面上のY軸の表示倍率を自動で調整する機能のことである。
【0020】
表示部40は、画像を表示する液晶パネル又はタッチパネル等により構成される。表示部40は、画面上の表示条件に基づいて、記憶部20に記憶された入力信号を画面上のX軸及びY軸の座標に表示する。本実施形態の表示部40は、入力信号の波形を画面上の座標に配置した画像を生成し、その画像を画面に表示する。
【0021】
処理部50は、操作部30からの自動設定情報に基づいて、画面上に表示される入力信号がY軸の表示範囲内に収まるようY軸のスケールを調整する。例えば、処理部50は、入力信号の最大値及び最小値を抽出し、予め定められた複数の倍率に対応するレンジの中から、抽出した最小値から最大値までの範囲を含み、かつ、最も倍率の高いレンジを最適レンジとして特定する。
【0022】
処理部50は、特定した最適レンジを画面上の表示条件として表示部40に出力する。以下では、最適レンジをフルスケールと称し、このフルスケールを基準としてY軸の表示倍率が定められる。
【0023】
次に、表示部40に表示される画像の構成について簡単に説明する。
【0024】
図2は、自動スケール機能を実行して二つの波形を重ねて表示した表示画面41の一例を示す図である。
【0025】
表示画面41は、一又は複数の入力信号を識別する識別領域41aと、その入力信号を一つの座標に表示する信号表示領域41bと、Y軸Dyの上限値及び下限値を表示する上限表示領域41c及び下限表示領域41dと、X軸表示領域41eとにより構成される。表示画面41には、互いに異なる5つの入力信号が表示可能である。
【0026】
識別領域41aには、識別番号ごとに入力信号の種類が対応付けられて表示される。入力信号の種類としては、例えば電圧値、電流値、電力値等が挙げられる。この例では、二つの電線の電圧をそれぞれ測定している状態を想定しており、これらの電圧信号が入力信号として選択されている。具体的には、二つの電圧信号の実効値を示す波形データVrmsに対し、識別番号「1」及び「2」がそれぞれ割り当てられている。
【0027】
信号表示領域41bには、複数の入力信号が同時に表示可能である。この例では、X軸Dxが時間を示す軸であり、Y軸Dyが電圧値を示す軸である。そして識別番号「1」の波形が実線で示され、識別番号「2」の波形が破線で示されている。また、画面上のY軸の中心位置が基準位置Pbである。
【0028】
本実施形態では、信号表示領域41bに表示される波形データVrmsごとに自動スケール機能が実行される。この自動スケール機能により、波形データVrmsの中央値が基準位置Pbに配置されるようY軸Dyのフルスケールとその中央値の表示位置とが求められ、求められたフルスケールと表示位置とで波形データVrmsが信号表示領域41bに表示されている。
【0029】
上限表示領域41c及び下限表示領域41dには、識別番号ごとにY軸Dyの上限値及び下限値が表示される。この例では、識別番号「1」及び「2」の波形データVrmsについて、Y軸Dyのフルスケールの上限値U
1及びU
2が上限表示領域41cに示され、Y軸Dyのフルスケールの下限値L
1及びL
2が下限表示領域41dに示されている。
【0030】
X軸表示領域41eには、X軸Dxの1目盛(div)の単位が表示される。この例では、1目盛につきT秒[s]であることが示されている。
【0031】
このように、表示画面41には、二つの波形が同じ基準位置Pbを中心として表示されていることから、一つ一つの波形を正確に把握することが困難となる。このため、利用者としては、信号表示領域41b内に表示される複数の波形が見やすくなるよう、各波形自信の基準となる位置をY軸Dyの基準位置Pbに対して上側又は下側に移動させることが望ましい。
【0032】
あるいは、信号表示領域41b内に一つの波形が表示される場合であっても、信号表示領域41b内に利用者が波形についてのコメントを入力したり、表示画面をプリントアウトした際にその用紙に利用者がコメントを記入したりすることも想定される。このような場合にも、信号表示領域41b内にコメント記入用のスペースを確保できるように、波形の基準(中心)となる位置を画面上の基準位置Pbから上下に移動させることが求められることもある。
【0033】
このような利用者の都合を考慮し、入力信号の基準となる位置が画面上の基準位置Pbから利用者の意図するY軸Dy上の位置に変位するよう、本実施形態の表示装置1は、その変位位置である画面上の表示位置を特定する位置情報を操作部30にて受け付ける。そして表示装置1は、操作部30にて受け付けた位置情報に基づいて、入力信号の基準となる位置を基準位置PbからY軸Dy上の表示位置にシフトさせる基準位置シフト機能を実行する。
【0034】
次に、本実施形態における基準位置シフト機能の設定手法について
図3を参照して説明する。
【0035】
図3は、基準位置シフト機能を実行するための設定画面42の一例を示す図である。設定画面42は、例えば操作部30にて基準位置シフト機能ボタンが選択されることで表示画面41から切り替えられる。利用者は、操作部30を介して設定画面42内の設定項目を選択して利用者の意図する値を入力する。
【0036】
設定画面42は、表示画面41の識別領域41aと同じ内容を表示する識別領域42aと、Y軸設定領域42bと、表示位置設定領域42cと、位置関係表示領域42dと、により構成される。
【0037】
Y軸設定領域42bは、入力信号ごとにY軸Dyの表示倍率を任意に設定可能な領域であり、自動スケール機能の要否を設定する領域b1と、Y軸Dyの上限値及び下限値を任意に設定可する領域b2と、により構成される。例えば、領域b1に「AUTO」が設定された場合は、領域b2は設定不能となる。
【0038】
表示位置設定領域42cは、Y軸Dy上に入力信号の表示位置Pdを任意に設定可能な領域である。表示位置Pdは、基準位置PbからのY軸上の変位位置であり、基準位置Pbからの変位量及び変位方向にて特定される。この表示位置Pdは、信号表示領域41bに入力信号を表示させる際に利用者の都合の良い位置に設定される。
【0039】
表示位置設定領域42cは、Y軸Dyの基準位置Pbを「0」とし上下に5段階のステップで表示位置Pdを設定する領域c1と、Y軸Dyのフルスケールの中心から上端までの距離に対する表示位置Pdまでの距離の比率を設定する領域c2とにより構成される。例えば、一方の領域c1において表示位置Pdが設定された場合は、他方の領域c2は設定不能となる。
【0040】
位置関係表示領域42dは、入力信号ごとに、表示位置Pdを特定するオフセット値と、そのオフセット値に対応するY軸Dy上の位置との関係を表示する領域である。
【0041】
この例では、識別番号「1」及び「2」の波形データVrmsの各々について、自動スケール機能が設定されるとともに、基準位置PbをY軸Dy方向にシフトさせるために表示位置Pdが設定されている。
【0042】
具体的には、識別番号「1」の波形データVrmsについては表示位置Pdのオフセット値が「+2」に設定され、識別番号「2」の波形データVrmsについては表示位置Pdのオフセット値が「−3」に設定されている。
【0043】
このため、識別番号「1」の表示位置Pdは、基準位置Pbから上端位置Puに向かって2段階上昇し、識別番号「2」の表示位置Pdは、基準位置Pbから下端位置Plに向かって3段階下降する。
【0044】
このように、表示位置Pdを特定するオフセット値の正負の符号は、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位方向を示し、オフセット値の絶対値は、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位量を示す。
【0045】
次に、設定画面42でこのように設定された表示条件に基づき表示画面に表示される二つの波形の位置関係について
図4を参照して説明する。
【0046】
図4は、二つの波形データVrmsの表示位置Pdを互いに異なる方向に設定したときの表示画面43の一例を示す図で、
図3の設定例に対応する。表示画面43は、例えば操作部30にて波形表示ボタンが選択されることで設定画面42から切り替えられる。
【0047】
まず、波形データVrmsの各々の表示位置Pdで特定される表示領域A1及びA2の設定手法について説明する。
【0048】
識別番号「1」の波形データVrmsについては、上述のとおり表示位置Pdのオフセット値が「+2」に設定されている。オフセット値の符号が正(プラス)であるため、基準位置Pbから表示位置Pdまでの変位量に応じて、かつ、上端位置Puに向かって縮小するY軸Dyの表示範囲R1により表示領域A1が特定される。
【0049】
Y軸Dyの表示範囲R1は、上端位置Puのオフセット値「+5」から表示位置Pdのオフセット値「+2」までの範囲に基づいて定められる。具体的には、表示範囲R1の幅は、上端位置Puのオフセット値「+5」と表示位置Pdのオフセット値「+2」との差分絶対値(3)を二倍した値(6)に設定され、表示範囲R1の中心位置は、表示位置Pdのオフセット値「+2」に設定される。
【0050】
一方、識別番号「2」の波形データVrmsについては、上述のとおり表示位置Pdのオフセット値が「−3」に設定されている。オフセット値の符号が負(マイナス)であるため、基準位置Pbから表示位置Pdまでの変位量に応じて、かつ、下端位置Plに向かって縮小するY軸Dyの表示範囲R2により表示領域A2が特定される。
【0051】
Y軸Dyの表示範囲R2は、下端位置Plのオフセット値「−5」から表示位置Pdのオフセット値「−3」までの範囲に基づいて定められる。具体的には、表示範囲R2の幅は、表示位置Pdのオフセット値「−3」と下端位置Plのオフセット値「−5」との差分絶対値(2)を二倍した値(4)に設定され、表示範囲R2の中心位置は、表示位置Pdのオフセット値「−3」に設定される。
【0052】
このように、表示範囲R1及びR2の各々については、その一端が、Y軸Dyの上端位置Pu及び下端位置Plのうち表示位置Pdに近い方の先端位置に固定され、その他端が、基準位置Pbから表示位置Pdまでの変位量が大きくなるほど先端位置に近づく。
【0053】
次に、波形データVrmsごとに演算される表示範囲R1及びR2の表示倍率の演算手法について説明する。
【0054】
識別番号「1」及び「2」の波形データVrmsの各々については、自動スケール機能が設定されており、波形データVrmsの最小値から最大値までが表示範囲R1又はR2に収まるようY軸Dyの表示倍率が演算される。
【0055】
具体的には、表示装置1の処理部50が、識別番号「1」の波形データVrmsの最小値及び最大値を抽出し、その最小値から最大値までが表示範囲R1に収まるようY軸Dyの表示倍率を演算する。
【0056】
または、処理部50は、Y軸Dyのフルスケールに対する表示範囲R1の縮小率を求め、予め定められた複数の倍率のうち、求めた縮小率よりも小さく、かつ、その縮小率に最も近い表示倍率を演算するようにしてもよい。これにより、表示範囲R1内に波形全体を確実に収容しつつ、表示範囲R1を目一杯利用することが可能となる。すなわち、表示範囲R1の縮小率を小さくするときには、波形データVrmsにより形成される波形を適切に小さくすることができる。同様に、識別番号「2」の波形データVrmsについてもY軸Dyの表示倍率が演算される。
【0057】
そして処理部50は、識別番号「1」の波形データVrmsのY軸Dyの表示倍率に基づいて、表示位置Pdのオフセット位置「+2」に波形データVrmsの中央値が配置されるよう、Y軸の上限値U
m1及び下限値L
m1を算出する。同様に識別番号「2」の波形データVrmsについてもY軸Dyの上限値U
m2及び下限値L
m2が算出される。
【0058】
これらの算出値が上限表示領域41c及び下限表示領域41dに設定されるとともに、信号表示領域41bのうち、識別番号「1」の波形データVrmsが表示領域A1に表示され、識別番号「2」の波形データVrmsが表示領域A2に表示される。
【0059】
このように、二つの波形データVrmsの表示位置Pdを基準位置Pbから互いに異なる方向に設定することで、一方の表示範囲R1は上端位置Puに向かって狭くなり、他方の表示範囲R2は下端位置Plに向かって狭くなる。それゆえ、二つの表示範囲R1及びR2の重複する領域を排除又は縮小することができる。
【0060】
さらに、識別番号「1」及び「2」の波形データVrmsがそれぞれ表示範囲R1及びR2に収まるよう両者の表示倍率を変更することにより、二つの波形データVrmsが重ならないよう両者を信号表示領域41b内に表示させることができる。
【0061】
本実施形態では二つの入力信号を重ならないように表示させる例について説明したが、三つ以上の入力信号を重ならないように表示させることも可能である。例えば、表示範囲R1及びR2の間に他の入力信号が表示できるよう識別番号「1」及び「2」の表示位置Pdを基準位置Pbから互いに異なる方向に設定する。その後、他の入力信号の表示倍率及び表示位置Pdを手動で設定することにより、三つ以上の入力信号を重ならないように表示させることができる。
【0062】
あるいは、二つの入力信号についてのコメントを入力するスペースを確保するために、二つの入力信号を重ねた状態で信号表示領域41bの上側又は下側にシフトさせるよう表示位置Pdを同じ位置に設定してもよい。
【0063】
次に、Y軸Dyの表示位置Pdと表示範囲R1との関係について
図5A及び
図5Bを参照して簡単に説明する。
【0064】
図5Aは、基準位置Pbから上端位置Puへの変位量に応じて変化する表示範囲R1を示す図である。
【0065】
本実施形態では、表示位置Pdのオフセット値の符号が正である場合に、表示位置Pdは上端位置Puに向かって移動するため、表示位置Pdの変位方向は、基準位置Pbから上端位置Puへの方向となる。
【0066】
このため、オフセット値の絶対値が大きくなるほど、基準位置Pbから上端位置Puへの変位量が大きくなり、表示範囲R1は上端位置Puに向かって狭くなる。例えば、表示位置Pdが基準位置Pbから上端位置Puに向かって一目盛シフトするたびに、表示範囲R1の幅は二目盛だけ減少する。このように、オフセット値の絶対値が大きくなるほど、表示範囲R1はY軸Dyの上端に向かって圧縮される。
【0067】
図5Bは、基準位置Pbから下端位置Plへの変位量に応じて変化する表示範囲R1を示す図である。
【0068】
本実施形態では、表示位置Pdのオフセット値の符号が負である場合に、表示位置Pdは下端位置Plに向かって移動するため、表示位置Pdの変位方向は、基準位置Pbから下端位置Plへの方向となる。
【0069】
このため、オフセット値の絶対値が大きくなるほど、基準位置Pbから下端位置Plへの変位量が大きくなり、表示範囲R1は下端位置Plに向かって狭くなる。すなわち、オフセット値の絶対値が大きくなるほど、表示範囲R1はY軸Dyの下端に向かって圧縮される。
【0070】
このように、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位方向に応じて、表示範囲R1を圧縮する方向を選択することができる。このため、利用者は、表示位置Pdのオフセット値の符号を選択するという簡易な操作により、表示範囲R1を上端側に圧縮するのか、下端側に圧縮するのかを選択することができる。
【0071】
次に、表示装置1の各部位の動作について
図6を参照して説明する。
【0072】
図6は、本実施形態における入力信号の表示方法に関する処理手順例を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS1において操作部30は、Y軸Dyに対する入力信号の表示位置Pdを特定する位置情報の入力を受け付ける。本実施形態の操作部30は、
図3に示した設定画面42において識別番号「1」及び「2」の表示位置Pdのオフセット値を示す位置情報の入力を受け付ける。
【0074】
ステップS2において処理部50は、位置情報に基づいて基準位置Pbから表示位置Pdへの変位量を表示条件として設定する。本実施形態では基準位置Pbからの変位量としてオフセット値の絶対値が用いられる。
【0075】
ステップS3において処理部50は、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位量に基づいて、Y軸Dyの表示範囲RをY軸Dyの端に向かって狭くする。本実施形態の処理部50は、識別番号「1」の波形データVrmsについては表示位置Pdに近い上端位置Puに向かって表示範囲R1を縮小し、識別番号「2」の波形データVrmsについては表示位置Pdに近い下端位置Plに向かって表示範囲R2を縮小する。
【0076】
ステップS4において処理部50は、Y軸Dyの表示範囲Rと入力信号の最小値及び最大値とに基づいてY軸Dyの表示倍率を演算する。本実施形態では処理部50が、識別番号「1」の波形データVrmsの最小値及び最大値が表示範囲R1に収まるようY軸Dyの最適倍率を演算し、識別番号「2」の波形データVrmsの最小値及び最大値が表示範囲R2に収まるようY軸Dyの最適倍率を演算する。
【0077】
ステップS5において表示部40は、ステップS4で演算したY軸Dyの表示倍率により、表示位置Pdを中心とし入力信号を表示範囲R内に表示する。
【0078】
本実施形態では表示部40が、識別番号「1」の波形データVrmsについてその中央値をオフセット値「+2」で特定される表示位置Pdに配置するよう表示範囲R1に最適倍率で波形データVrmsを表示する。これと共に表示部40が、識別番号「2」の波形データVrmsについてその中央値をオフセット値「−3」で特定される表示位置Pdに配置するよう表示範囲R2に最適倍率で波形データVrmsを表示する。
【0079】
ステップS5の処理が終了すると、入力信号の表示方法についての一連の処理手順が終了する。
【0080】
以下に、本実施形態の作用効果について詳しく説明する。
【0081】
本実施形態によれば、入力信号を画面上の座標に表示する表示装置1は、座標上の特定の座標軸であるY軸Dyに対し、基準位置Pbからの入力信号の変位量を設定する設定手段として操作部30を備える。さらに表示装置1は、基準位置Pbからの変位量に基づきY軸Dyの表示範囲RをY軸Dyの上端又は下端に向かって縮小する縮小手段、及び、表示範囲Rの縮小に応じてY軸Dyの表示倍率を変更する変更手段として処理部50を備える。そして表示装置1は、縮小後の表示範囲R内に入力信号を変更後の表示倍率で表示する表示手段として表示部40を備える。
【0082】
この表示装置1は、
図5A及び
図5Bに示したように、基準位置Pbからの変位量に応じて、表示範囲R1をY軸Dyの端に向かって縮小するとともに、表示範囲R1の縮小率に応じてY軸Dyの表示倍率を変更する。これにより、入力信号の一部が表示範囲Rから出てしまう事態を抑制しつつ、必要に応じてY軸Dyの上端側又は下端側で入力信号を圧縮することが可能になる。
【0083】
このため、信号表示領域41bの一端側において、入力信号に関するコメントを記載するスペースを確保しつつ、信号表示領域41bの他端側において入力信号が表示範囲R内に収まりやすくなる。したがって、入力信号の視認性が低下するのを抑制しつつ、入力信号を都合の良い位置に表示させることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、処理部50は、縮小後の表示範囲Rに入力信号の最小値から最大値までが収まるようY軸Dyの表示倍率を小さくする。これにより、表示範囲Rに入力信号の全体を目一杯表示させることが可能となるので、利用者は入力信号を細かく確認しやすくなる。
【0085】
また、本実施形態によれば、操作部30は、利用者の入力操作により、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位量に加えて、基準位置Pbから表示位置Pdへの変位方向を設定する。そして処理部50は、操作部30で設定された変位方向に向かって表示範囲Rを縮小する。
【0086】
図3に示した例では、利用者が、操作部30に対して表示位置Pdのオフセット値を入力することで、操作部30は、オフセット値の絶対値を基準位置Pbからの変位量として設定し、オフセット値の符号を基準位置Pbからの変位方向として設定する。
【0087】
これにより、利用者は、Y軸Dyの上端位置Puに向かって入力信号を圧縮させるのか、下端位置Plに向かって入力信号を圧縮させるのか、を入力値の符号を選択するだけで決定することができる。したがって、簡易な操作により、利用者の意図する方向に入力信号を圧縮することが可能となる。
【0088】
なお、本実施形態では、基準位置Pbからの変位量として表示位置Pdのオフセット値を入力する例について説明したが、Y軸Dyのフルスケールの上限値に対する基準位置Pbからの変位量の比率(%)を入力してもよい。この場合には、操作部30は、利用者により入力された比率(%)の値に対してY軸Dyのフルスケールの上限値を乗算して基準位置Pdからの変位量を設定する。
【0089】
また、本実施形態によれば、画面上の基準位置Pbが、Y軸Dyの上端位置Pu及びPl間の中間点に設定され、処理部50は、操作部30にて設定された変位方向に応じて、表示範囲Rを中間点から上端位置Pu又は下端位置Plに向かって縮小する。
【0090】
図4に示したように、二つの入力信号を画面に表示させる場合には、利用者が両者の変位方向を互いに異なる方向に設定する入力操作を行うことにより、処理部50は、二つの入力信号を互いに重ならないよう、Y軸Dyの上端及び下端に分けて表示させることができる。このように、簡易な操作により、二つの入力信号が互いに重複する領域を利用者の都合に合わせて減少又は排除することができるので、利用者は二つの波形の全体を正しく把握することが可能となる。
【0091】
さらに、基準位置Pbを中間点に設定することで、三つの入力信号を画面に表示させるような場合に、処理部50は、二つの入力信号を上下に縮小して配置し、三つ目の入力信号を画面の中心に、かつ、他の入力信号よりも大きく表示させることができる。これにより、三つの入力信号の一部が重複するような状況であっても、画面の中心付近の波形を強調しつつ、他の波形については上下に見やすく圧縮して表示される。したがって、利用者にとっては、単に三つの波形の表示範囲を三等分して表示する場合に比べて、一つ一つの入力信号の全体像を把握しやすくなる。
【0092】
また、本実施形態によれば、処理部50は、表示範囲R1の一端をY軸Dyの変位方向側の端である上端位置Puに固定した状態で、表示範囲R1を縮小する。これにより、信号表示領域41bの下端から上端までの全領域を有効に利用しつつ、利用者の都合に合わせて入力信号を圧縮することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、
図4に示したように、表示装置1は、第一の入力信号に加えて、第一の入力信号とは異なる第二の入力信号を取得する取得手段として入力部10を備える。そして操作部30は、第一の入力信号の変位量とは異なる変位量を第二の入力信号に設定可能である。
【0094】
これにより、利用者が入力信号の各々の変位量を互いに異なる変位量に設定する入力操作を行うことにより、処理部50は、基準位置PbからY軸Dyの一端に向かって段階的に縮小した複数の波形を画面に表示させることができる。これにより、入力信号同士の重なる領域を狭くすることが可能となるので、利用者は、全ての入力信号を同じ位置で表示させる場合に比べて、それぞれの入力信号を視認しやすくなる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0096】
例えば、上記実施形態では入力信号として電圧信号の実効値を示す波形データVrmsを表示する例について説明したが、電圧信号の瞬時値又は平均値を示す波形データでもよい。また入力信号は電圧信号に限らず、電流値、電力値又は抵抗値等の物理量を示す入力信号であってもよい。あるいは、入力信号は、波形データに限らず、棒グラフ、折れ線グラフ、帯グラフ、及びヒストグラムを示すデータであってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では時間軸をX軸Dxとし物理量を示す軸をY軸Dyとした座標に入力信号を表示する例について説明したが、時間軸をY軸Dyとし物理量を示す軸をX軸Dxとしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では表示画面を一つの信号表示領域41bのみで構成する例について説明したが、表示画面内に複数の信号表示領域41bを配置してもよい。この場合においても信号表示領域41bごとに本実施形態の基準位置シフト機能を実行することが可能である。
【0099】
また、上記実施形態では基準位置PbをY軸Dyの中心位置としたが、基準位置Pbは、Y軸Dyの任意の位置に設定可能であり、例えば基準位置Pbを上端位置Pu又は下端位置Plに設定してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では表示装置1の一つの画面上で設定画面から表示画面に切り替える例について説明したが、操作ボタンにより表示画面上に設定画面がポップアップしたり、表示画面の中に設定画面を表示したりする表示装置にも適用可能である。
【0101】
また、上記実施形態は二次元の座標に入力信号を表示する例について説明したが、座標軸上の基準位置Pbに対して入力信号を表示するものであればよく、例えば、三次元の座標に入力信号を表示する表示装置にも適用可能である。