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特開2019-159186金属及び樹脂複合分散液、遮熱塗料、それらを用いた金属含有樹脂膜又は赤外線反射膜の製造方法、及び金属及び樹脂複合分散液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-159186(P2019-159186A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】金属及び樹脂複合分散液、遮熱塗料、それらを用いた金属含有樹脂膜又は赤外線反射膜の製造方法、及び金属及び樹脂複合分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20190823BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20190823BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20190823BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20190823BHJP
【FI】
   G02B5/26
   C09D133/04
   C09D5/33
   C09D7/41
   C09D5/02
   C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-47815(P2018-47815)
(22)【出願日】2018年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】亀山 敦
【テーマコード(参考)】
2H148
4J038
【Fターム(参考)】
2H148FA04
2H148FA05
2H148FA07
2H148FA12
4J038BA012
4J038CG031
4J038HA066
4J038MA10
4J038NA19
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】より簡便な方法により赤外線反射膜を形成させることのできる新規な材料、及びそれを用いた赤外線反射膜の製造方法等を提供すること。
【解決手段】樹脂微粒子が集合してなる微少な球体の内部に水相を含み、上記球体が有機相中に分散されてw/o型ピッカリングエマルションを形成する分散液であって、上記水相中に金属微粒子を含むことを特徴とした金属及び樹脂複合分散液を用い、当該分散液を遮熱塗料として用いる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子が集合してなる微少な球体の内部に水相を含み、前記球体が有機相中に分散されてw/o型ピッカリングエマルションを形成する分散液であって、前記水相中に金属微粒子を含むことを特徴とした金属及び樹脂複合分散液。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子を形成する金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、銅からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載の金属及び樹脂複合分散液。
【請求項3】
前記樹脂微粒子が、アクリル酸エステルの重合物及びメタクリル酸エステルの重合物からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1又は2記載の金属及び樹脂複合分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の金属及び樹脂複合分散液を含むことを特徴とする遮熱塗料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の金属及び樹脂複合分散液を塗布する工程を含むことを特徴とする金属含有樹脂膜の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法により金属含有樹脂膜を形成させる工程を含むことを特徴とする赤外線反射膜の製造方法。
【請求項7】
金属イオン含有水溶液及び樹脂微粒子を油相中へ添加して混合物を得る添加工程と、
前記添加工程で得た混合物を高せん断下で乳化状態とすることでw/oピッカリングエマルションを形成させる乳化工程と、を備え、
さらに、前記金属イオンを還元して金属粒子とする還元工程を備える金属及び樹脂複合分散液の製造方法。
【請求項8】
前記還元工程が、前記乳化工程の前又はそれと同時に行われることを特徴とする請求項7記載の金属及び樹脂複合分散液の製造方法。
【請求項9】
前記還元工程における還元が、アスコルビン酸又はアルドースを還元剤として行われることを特徴とする請求項7又は8記載の金属及び樹脂複合分散液の製造方法。
【請求項10】
前記アルドースが、グルコースである請求項9記載の金属及び樹脂複合分散液の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項記載の製造方法により得た金属及び樹脂複合分散液を塗布し、それにより得た塗膜を乾燥させる工程を備えることを特徴とする赤外線反射膜の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及び樹脂複合分散液、遮熱塗料、それらを用いた金属含有樹脂膜又は赤外線反射膜の製造方法、及び金属及び樹脂複合分散液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動、ヒートアイランド現象、冷房負荷の低減等への対策が必要とされているが、そのいずれにも有効な対策として、太陽光赤外線(熱)を反射する材料の開発が注目されている。赤外線は、太陽光全体の約50%を占めており、物質に吸収されると熱エネルギーに変換される特性がある。赤外線には、波長の短い順(可視光から近い順)に近赤外線、赤外線、及び遠赤外線がある。
【0003】
赤外線を反射させる材料の一つとして、高反射率塗料が挙げられる。これは、対象物に塗布をして塗膜を形成させることにより、太陽光に含まれる近赤外線をその塗膜で反射し、対象物の温度上昇を抑制する機能を備える。このような機能を備えた塗料は、道路や歩道等に塗布され、ヒートアイランド現象の緩和等を目的に利用されている(そのような塗料の一例として特許文献1を参照)。
【0004】
その他の赤外線反射材料として、遮熱フィルムが挙げられる。このようなフィルムの一形態として、反射率が異なる複数のフィルムを何層も複合させることにより、可視光は通過させる一方で、赤外線を反射させるものが挙げられる(例えば、特許文献2を参照)。また、このようなフィルムの別の形態として、ナノサイズの金属平板粒子をフィルム中に特定の条件をもって分散させることにより、可視光は通過させる一方で、赤外線を反射させるものが挙げられる(例えば、特許文献3を参照)。これらのフィルムは、太陽光線のうち可視光は通過させる一方で赤外線を遮断するので、例えば窓ガラス等に貼付することにより、室内へ外光を取り入れつつ室温の上昇を抑制させることを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−251108号公報
【特許文献2】特表平11−508380号公報
【特許文献3】特開2012−215811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの遮熱フィルムは、窓等に貼付することで手軽に赤外線の遮断を実現することができる。その一方で、こうしたフィルムを製造するには、何層ものフィルムを複合させるための膨大な手間や内部粒子の精緻な配向調節を必要とするので、相応のコストが必要になる。また、このように赤外線を反射する一方で可視光領域の透明性を示す赤外線反射フィルムの例はそもそも少ない。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、より簡便な方法により赤外線反射膜を形成させることのできる新規な材料、及びそれを用いた赤外線反射膜の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、樹脂微粒子が集合してなる微少な球体の内部に金属微粒子が分散された水相を含み、その球体が有機相中に分散されてw/o型ピッカリングエマルションを形成する分散液を調製し、さらにその分散液を対象表面に塗布し乾燥させることにより、金属微粒子を含む樹脂膜が形成されることを見出した。そして、本発明者らは、この金属微粒子がナノサイズの貴金属粒子であれば、その貴金属粒子の表面プラズモン共鳴により、その樹脂膜が可視光を透過させる一方で赤外光を反射させる特性を備えることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)本発明は、樹脂微粒子が集合してなる微少な球体の内部に水相を含み、上記球体が有機相中に分散されてw/o型ピッカリングエマルションを形成する分散液であって、上記水相中に金属微粒子を含むことを特徴とした金属及び樹脂複合分散液である。
【0010】
上記金属ナノ粒子を形成する金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、銅からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
上記樹脂微粒子は、アクリル酸エステルの重合物及びメタクリル酸エステルの重合物からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
(2)本発明は、上記金属及び樹脂複合分散液を含むことを特徴とする遮熱塗料でもある。
【0013】
(3)本発明は、上記金属及び樹脂複合分散液を塗布する工程を含むことを特徴とする金属含有樹脂膜の製造方法でもある。
【0014】
(4)本発明は、上記(3)項記載の方法により金属含有樹脂膜を形成させる工程を含むことを特徴とする赤外線反射膜の製造方法でもある。
【0015】
(5)本発明は、金属イオン含有水溶液及び樹脂微粒子を油相中へ添加して混合物を得る添加工程と、上記添加工程で得た混合物を高せん断下で乳化状態とすることでw/oピッカリングエマルションを形成させる乳化工程と、を備え、さらに、上記金属イオンを還元して金属粒子とする還元工程を備える金属及び樹脂複合分散液の製造方法でもある。
【0016】
上記還元工程は、上記乳化工程の前又はそれと同時に行われることが好ましい。
【0017】
上記還元工程における還元は、アスコルビン酸又はアルドースを還元剤として行われることが好ましい。
【0018】
上記アルドースは、グルコースであることが好ましい。
【0019】
(6)本発明は、上記製造方法により得た金属及び樹脂複合分散液を塗布し、それにより得た塗膜を乾燥させる工程を備えることを特徴とする赤外線反射膜の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より簡便な方法により赤外線反射膜を形成させることのできる新規な材料、及びそれを用いた赤外線反射膜の製造方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の金属及び樹脂複合分散液に含まれるw/o型ピッカリングエマルションを説明する模式図である。
図2図2(a)は、調製された樹脂微粒子についての動的光散乱法による粒度分布を示すチャートであり、図2(b)は、調製された樹脂微粒子についてのSEM画像である。
図3図3は、金属及び樹脂複合分散液(A)についての光学顕微鏡による観察画像である。
図4図4は、金属及び樹脂複合分散液(C)についての光学顕微鏡による観察画像である。
図5図5は、金属及び樹脂複合分散液(A)〜(C)のそれぞれから作製した金属含有樹脂膜の拡散反射率を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態又は一実施態様について、金属及び樹脂複合分散液、金属及び樹脂複合分散液の製造方法、遮熱塗料、金属含有樹脂膜の製造方法、赤外線反射膜の製造方法の順に説明する。
【0023】
<金属及び樹脂複合分散液>
まずは、本発明の金属及び樹脂複合分散液の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の金属及び樹脂複合分散液に含まれるw/o型ピッカリングエマルションを説明する模式図である。
【0024】
本発明の金属及び樹脂複合分散液は、樹脂微粒子が集合してなる微少な球体の内部に水相を含み、この球体が有機相中に分散されてw/o型ピッカリングエマルションを形成する分散液であって、上記水相中に金属微粒子を含むことを特徴とする。ピッカリングエマルションとは、液−液界面に吸着した固体微粒子によって安定化したエマルションである。通常のw/o型エマルション(油中水滴エマルション)は微細な水滴が油相中に分散して形成されるが、w/o型ピッカリングエマルションは固体微粒子により球状に被覆された水滴が油相中に分散して形成される。この固体微粒子は、水滴を殻のように被覆して水相を内部に含む球体を形成させ、この球体を油相中で安定化させる働きを担う。
【0025】
本発明におけるw/o型ピッカリングエマルションについて、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明において上記「殻」の役割を担う固体微粒子は、樹脂微粒子である。この樹脂微粒子は、油相と水相とで分離した状態の液中に添加され、次いでこの液がホモジナイザー等で処理を受ける等の手段で高せん断を加えられることにより、微粒子化して水滴となった水相の表面を覆い、油相中に水滴が安定化されたw/o型のピッカリングエマルションを形成させる。
【0026】
このとき、水相中に金属イオンが存在すると、樹脂微粒子の殻に覆われた水相中にはこれら金属イオンが取り込まれることになる。そして、この取り込まれた金属イオンを還元剤により金属単体へと還元することにより、樹脂微粒子の殻に覆われた水相中に金属微粒子が含まれるようになる。なお、図1では、樹脂微粒子の殻の中に取り込まれた金属イオンを銀イオンとして示したが、金属イオンは任意のものを選択することができる。また、図1では、金属イオンが樹脂微粒子の殻の中に取り込まれてから還元操作を行うことが示されているが、樹脂微粒子の殻の中に取り込まれる前にこの還元操作を行ってもよい。いずれにしても、樹脂微粒子からなる殻の中の水相中に金属微粒子が含まれることになる点に違いはない。樹脂微粒子の殻に覆われた水相は、w/o型ピッカリングエマルションとなって油相中に分散されており、本発明の金属及び樹脂複合分散液を形成させる。
【0027】
本発明におけるw/o型ピッカリングエマルションは、上記のように、樹脂微粒子からなる殻の中に金属微粒子を保有することをポイントの一つとする。すなわち、これを含む分散液を基材の表面に塗布すると、分散液に含まれる油相が基材上で蒸発し、殻を構成する樹脂微粒子同士が互いに結合して樹脂によるフィルムを形成させる。そして、この殻の内部には金属微粒子が含まれるので、形成された樹脂膜は金属微粒子を内部に含むものとなる。この金属微粒子がナノサイズの貴金属であれば、得られた樹脂膜は、金属微粒子による表面プラズモン共鳴により赤外光は反射する一方で、可視光は透過するものになる。また、金属微粒子がこのような条件を満たさなかったとしても、樹脂膜内の金属微粒子の存在により光(可視光及び赤外線)が反射され、遮熱効果が得られる。すなわち、本発明の金属及び樹脂複合分散液を用いることにより、遮熱効果を有する樹脂膜が容易に得られることになる。
【0028】
上記の殻を形成する樹脂微粒子は、特に限定されないが、アクリル酸エステルの重合物及びメタクリル酸エステルの重合物から選択されることが好ましい。これらの重合物は、油相と水相の液−液界面に存在するのに適した極性を備えるためである。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル等が挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。なお、以降の説明において、アクリル酸とメタクリル酸とを併せて(メタ)アクリル酸とも表記する。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステルという意味である。樹脂微粒子の粒径としては、0.5〜9μm程度を好ましく挙げることができる。
【0029】
金属微粒子は、特に限定されないが、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、銅からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。これらの金属微粒子は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の金属及び樹脂複合分散液の用途が遮熱樹脂膜の調製であれば、金属微粒子は銀を用いることが好ましい。なお、その他の金属を用いた場合、本発明の金属及び樹脂複合分散液は、当該金属に応じた触媒作用を有する樹脂膜の調製に用いることができる。金属微粒子の大きさとしては、1nm〜50μm程度を挙げることができるが、用途に応じて適宜調節すればよい。
【0030】
殻である樹脂微粒子に覆われた水相からなる球体(すなわちw/oピッカリングエマルションの分散質)の大きさとしては、1μm〜100μm程度を挙げることができる。また、その粒子内に含まれる水相における金属微粒子の含有量としては、2質量%〜15質量%程度を挙げることができるが特に限定されない。
【0031】
油相は、水相と混合したときに分離するものであれば特に限定されないが、本発明の金属及び樹脂複合分散液を塗膜形成用途で用いるのであれば、揮発性の有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、炭素数5以上の炭化水素系有機溶媒を挙げることができる。このような炭化水素系有機溶媒の一例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの中でも、ヘプタンが好ましく挙げられる。
【0032】
水相としては、油相と混合したときに相分離するものであれば特に限定されないが、水を挙げることができる。この場合の水には、各種塩、水溶性有機溶媒、水溶性樹脂等が含まれてもよい。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン等を挙げることができる。殻の内部に含まれる水相において金属微粒子を凝集せずに安定して存在させるとの観点からは、水相には水溶性高分子が含まれることが好ましい。この場合の水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0033】
<金属及び樹脂複合分散液の製造方法>
次に、上記金属及び樹脂複合分散液の製造方法の一実施態様について説明する。本発明の金属及び樹脂複合分散液の製造方法は、金属イオン含有水溶液及び樹脂微粒子を油相中へ添加して混合物を得る添加工程と、上記添加工程で得た混合物を高せん断下で乳化状態とすることでw/oピッカリングエマルションを形成させる乳化工程と、を備え、さらに、上記金属イオンを還元して金属粒子とする還元工程を備える。以下、各工程について説明する。
【0034】
[添加工程]
添加工程は、金属イオン含有水溶液及び樹脂微粒子を油相中へ添加して混合物を得る工程である。
【0035】
金属イオン含有水溶液は、所望する金属の塩を水に溶解させたものである。水は、上記金属及び樹脂複合微粒子分散液の説明において水相として説明したものと同じである。所望する金属とは、上記金属及び樹脂複合微粒子分散液において、樹脂微粒子からなる殻の内部に存在する水相に含有させたい金属微粒子の種類に応じて決定すればよい。金属は、上記金属及び樹脂複合微粒子にて説明したものと同じである。例えば、金属微粒子として銀微粒子を含ませたいのであれば、金属イオンは銀イオンが選択される。金属イオンの対イオンは、金属イオンの水溶性に影響を与えないものであれば特に限定されない。このような対イオンとしては、硝酸イオン、塩化物イオン、水酸化物、フッ化物イオン等が挙げられる。例えば金属イオンとして銀イオンを選択するならば、硝酸銀が好ましく用いられる。水溶液中の金属イオン濃度としては、0.1mol/L〜10mol/L程度を挙げることができる。この金属イオン含有水溶液は水相となる。
【0036】
樹脂微粒子を構成する樹脂は、上記金属及び樹脂複合分散液にて説明したものと同じである。これら樹脂の微粒子が本実施態様で用いられる。既に説明したように、樹脂微粒子の粒径としては、0.5μm〜9μm程度のものが好ましく用いられる。このような樹脂微粒子としては、市販のものを用いてもよいし、(メタ)アクリル酸エステルを懸濁重合させて得たものを用いてもよい。なお、こうした懸濁重合で用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、既に説明した通りである。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルを懸濁重合させて樹脂微粒子を調製する場合、有機溶媒中に(メタ)アクリル酸エステル及びラジカル重合開始剤の混合溶液を撹拌しながら室温で滴下し、その後撹拌しながら加熱してラジカル重合すればよい。このとき、有機溶媒には、比較的高めの分子量を備えたポリオレフィンを溶解しておくことにより、粒径の揃った樹脂微粒子が得られる。このようなポリオレフィンとしては、重量平均分子量10万〜100万程度のポリイソブチレンが好ましく挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルに対するポリオレフィンの使用量は、モル比(ポリオレフィン/(メタ)アクリル酸エステル)で0.1〜0.5程度を挙げることができる。また、有機溶媒としては、炭素数5以上の炭化水素系有機溶媒を挙げることができる。このような炭化水素系有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらの中でもヘプタンが好ましく挙げられる。ラジカル重合開始剤としては公知のものを特に制限無く用いることができ、そのようなものの例として、アゾイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルの懸濁重合の手法は公知であり、その手法に則って樹脂微粒子を調製すればよい。上記炭化水素系有機溶媒は油相となる。
【0038】
上記のような懸濁重合法を用いることにより、有機溶媒中に分散した(メタ)アクリル酸エステルの重合微粒子の分散物が得られるので、その分散物をそのまま油相として用いることができる。
【0039】
水相には、上記金属イオンに加えて、水溶性ポリマーを添加することが好ましい。水溶性ポリマーは、後述する還元工程で得た金属粒子を安定化させ、その凝集を抑制するのに寄与する。このような水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンが好ましく挙げられる。
【0040】
上記水相、樹脂微粒子、及び油相は、混合されて混合物となる。得られた混合物は、乳化工程に付される。
【0041】
[乳化工程]
乳化工程は、上記添加工程で得た混合物を高せん断下で乳化状態とすることでw/oピッカリングエマルションを形成させる工程である。
【0042】
上記混合物を乳化させる際に高せん断力を加える手段としては、ホモジナイザーやハイシェアミキサー等の器械により上記混合物を撹拌することを挙げることができる。上記混合物は、このような高せん断下で処理されることにより、混合物中の水相と油相との境界に上記樹脂微粒子が集まり、水相がこの樹脂微粒子により覆われて球体となる。この樹脂微粒子は、水相の表面を覆う殻となってw/oピッカリングエマルションを安定化させる。
【0043】
水相及び殻からなる球体の大きさとしては1μm〜100μmを挙げることができる。上記混合物を高せん断下で処理しながら適宜サンプリングを行い、顕微鏡観察で粒径の揃った球体の形成が確認されるまで高せん断下での処理を継続すればよい。
【0044】
[還元工程]
還元工程は、水相に含まれる金属イオンを還元して金属微粒子とする工程である。この工程は、上記乳化工程の前に行ってもよいし、上記乳化工程と同時に行ってもよいし、上記乳化工程の終了後に行ってもよい。しかしながら、上記乳化工程の終了後に還元工程を行うと、乳化工程で形成されたw/o型ピッカリングエマルションが破壊される可能性もあるので、本工程は、上記乳化工程の前、又は乳化工程と同時に行うのが好ましい。
【0045】
還元工程を経ることにより、水相に含まれる金属イオンが還元され、金属微粒子が形成される。形成された金属微粒子は、樹脂微粒子の殻で覆われた、w/oピッカリングエマルションの水滴(分散質)中に取り込まれる。
【0046】
金属イオンの還元に用いる還元剤としては、特に限定されないが、作用が強すぎる還元剤を用いると金属イオンの還元が一気に進んで粒径範囲のバラツキの大きな金属微粒子が形成されたり、w/oピッカリングエマルションが破壊されたりする場合もあるので、アスコルビン酸やアルドースのような還元剤を用いることが好ましい。還元剤の添加量としては、金属イオンの当量数の1〜2倍当量程度を挙げることができる。還元剤は、少量の水(5〜10mL程度)に溶解され、混合物へ添加される。
【0047】
還元剤としてアルドースを用いると、水相中に生じる金属微粒子の大きさがナノサイズとなり、この金属微粒子の作用により、金属及び樹脂複合分散液から調製された樹脂膜が可視光を通過させる一方で赤外線を反射させるようになるので、好ましい。還元剤としてはアルドースの中でもグルコースが特に好ましい。還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合、アルドースを用いた場合よりも金属微粒子の大きさが大きくなる傾向があり、赤外線のみならず波長400nm〜800nmの可視光も50%〜75%程度反射するようになる。しかし、これらいずれの還元剤を用いた場合であっても、得られた樹脂膜が可視光領域の透明性と遮熱特性を併せ持ち、材料として優位な性質を備えることに変わりはない。
【0048】
<遮熱塗料>
次に、本発明の遮熱塗料の一実施形態について説明する。本発明の遮熱塗料は、上記本発明の金属及び樹脂複合分散液を含むことを特徴とする。既に説明したように、本発明の金属及び樹脂複合分散液に含まれるw/o型ピッカリングエマルションは、上記のように、樹脂微粒子からなる殻の中に金属微粒子を含有することをポイントの一つとする。したがって、これを含む分散液をある基材の表面に塗布すると、分散液に含まれる油相が基材上で蒸発し、殻を構成する樹脂微粒子同士が互いに結合して樹脂による膜を形成させる。そして、この殻の内部には金属微粒子が含まれるので、形成された樹脂膜は金属微粒子を内部に含むものとなる。
【0049】
この金属微粒子は、表面プラズモン共鳴により赤外光は反射する一方で、可視光は透過するので、形成された樹脂膜もまた同じ特性を備えることになる。また、金属微粒子がこのような条件を満たさなかったとしても、樹脂膜内の金属微粒子の存在による遮熱効果が得られる。すなわち、本発明の金属及び樹脂複合分散液は、塗布した際の造膜性と、得られた樹脂膜の赤外線反射特性を併せ持ち、それ自体が遮熱塗料として利用できるものである。
【0050】
本発明の遮熱塗料は、このような点に注目して完成されたものであり、ある基材に塗布されることでその基材の表面に遮熱(赤外線反射)効果を有する樹脂膜を形成させる。本発明の遮熱塗料は、上記本発明の金属及び樹脂複合分散液に加えて、着色剤や安定剤等の各種成分を含んでもよい。
【0051】
基材としては、窓ガラスや道路面等、遮熱効果を付与したいもの全般を挙げることができる。本発明の遮熱塗料は、塗布という簡便な手段により、基材に対して遮熱特性を付与する。
【0052】
<金属含有樹脂膜の製造方法>
次に、本発明の金属含有樹脂膜の製造方法の一実施態様について説明する。本発明の金属含有樹脂膜の製造方法は、上記本発明の金属及び樹脂複合分散液を塗布する工程を含むことを特徴とする。既に説明したように、本発明の金属及び樹脂複合分散液は、塗布することにより金属微粒子を含む樹脂膜を形成させる。本実施態様はそのような特性に着目するものである。
【0053】
得られた金属含有樹脂膜は、既に説明したように、赤外線の反射作用や、金属微粒子の存在に基づく触媒作用を発揮する。
【0054】
<赤外線反射膜の製造方法>
次に、本発明の赤外線反射膜の製造方法の一実施態様について説明する。本発明の赤外線反射膜の製造方法は、上記金属含有樹脂膜の製造方法により金属含有樹脂膜を形成させる工程を含む。すなわち、本発明の赤外線反射膜の製造方法は、上記金属及び樹脂複合分散液を塗布し、それにより得た塗膜を乾燥させる工程を備えることを特徴とする。これらについては、既に説明した通りなので、ここでの説明を省略する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げることにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
[樹脂微粒子の調製]
200mL四つ口丸底フラスコに撹拌装置、アリーン冷却管、セプタムラバー、窒素導入管及び温度計を取り付け、ヘプタン110.5mL及びポリイソブチレン(重量平均分子量500000)2.56gを加え、70℃の恒温水層中で加熱しながら窒素雰囲気下でポリイソブチレンが溶解するまで回転速度100rpmで撹拌した。その後、アゾイソブチロニトリル0.105g(6.39×10−4mol)をメチルメタクリレート6.40g(6.39×10−2mol)に溶解した溶液をシリンジポンプで0.109mL/分の速度で添加した後、7時間撹拌しながら反応させた。その後、恒温水層の温度を80℃に上げて残存モノマーを重合させ、内容物を室温まで冷却させた。このとき、内容物の一部について動的光散乱法(DLS)で平均粒子径を測定したところ、1.72μmだった。次に、遠心分離機により重合開始剤及び残存モノマーを除去し、精製を行った。遠心分離の条件は25℃にて回転数15000rpmで20分間とし、上澄み液をデカンテーションにより除去した後、固形物をヘプタン(約100mL)により再分散させた。この精製操作を3回繰り返して樹脂微粒子分散液を得た。その後、サンプルの一部を採取して凍結乾燥を行って得られた樹脂微粒子を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。DLSの測定結果及びSEMの観察結果を図2に示す。図2(a)はDLSの測定結果であり、図2(b)はSEMの観察結果である。なお、SEMで観察された樹脂微粒子の平均粒径は1.65μmだった。
【0057】
[金属及び樹脂複合分散液の調製(A)]
250mLサンプル管に樹脂微粒子分散液36.0mL及びヘプタン37.7mLを加え、さらに、硝酸銀0.394g(2.31×10−3mol)、ポリビニルピロリドン0.800g及び還元剤としてグルコース0.450g(2.50×10−3mol)を水10mLに溶解した溶液を加え、内容物をホモジナイザーで撹拌(25℃、24000rpm、35分間)することで、w/o型ピッカリングエマルションからなる金属及び樹脂複合分散液(A)を得た。撹拌の最中に、液色は白色から茶色に変化した。得られたw/o型ピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察したところ、w/o型ピッカリングエマルションの球状構造が観察され、その平均粒径は49.1μmだった。しかし、銀の微粒子は観察されなかった。撹拌中に液色が変化していることから銀の還元は生じていると考えられ、銀粒子の粒子径が光学顕微鏡で観察できないナノ領域の大きさであると考えられる。光学顕微鏡で観察した画像を図3に示す。なお、得られたw/o型ピッカリングエマルションは3週間安定だった。
【0058】
[金属及び樹脂複合分散液の調製(B)]
硝酸銀の量を半分(0.197g、1.16×10−3mol)に変更したこと以外は、上記金属及び樹脂複合分散液の調製(A)と同様の手順でw/o型ピッカリングエマルションからなる金属及び樹脂複合分散液(B)を得た。撹拌の最中に、液色は白色から茶色に変化した。得られたw/o型ピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察したところ、w/o型ピッカリングエマルションの球状構造が観察され、その平均粒径は45.1μmだった。しかし、銀の微粒子は観察されなかった。上記金属及び樹脂複合分散液の調製(A)と同様に、撹拌中に液色が変化していることから銀の還元は生じていると考えられ、銀粒子の粒子径が光学顕微鏡で観察できないナノ領域の大きさであると考えられる。なお、得られたw/o型ピッカリングエマルションは3週間安定だった。
【0059】
[金属及び樹脂複合分散液の調製(C)]
グルコースに代えてアスコルビン酸(0.612g、3.48×10−3mol)を還元剤として用いたこと以外は、上記金属及び樹脂複合分散液の調製(A)と同様の手順でw/o型ピッカリングエマルションからなる樹脂複合分散液(C)を得た。撹拌の最中に、液色は白色から濃い灰色に変化した。得られたw/o型ピッカリングエマルションを光学顕微鏡で観察したところ、w/o型ピッカリングエマルションの球状構造が観察され、その平均粒径は49.7μmだった。また、銀粒子は、w/oピッカリングエマルションの水相部分にのみ観察され、その粒子径は16.0μmだった。光学顕微鏡で観察した画像を図4に示す。なお、得られたw/o型ピッカリングエマルションは2週間安定だった。
【0060】
[金属含有樹脂膜の拡散反射率測定]
金属及び樹脂複合分散液(A)〜(C)のそれぞれについて、スライドガラスに塗布して自然乾燥させたサンプルスライドガラスを作製した。このサンプルスライドガラスの表面には、金属微粒子含有w/oピッカリングエマルションを由来とする金属含有樹脂膜が形成されている。作製したサンプルスライドガラスのそれぞれについて、後方に黒色フェルトを装着し、室温15〜20℃にて拡散反射率を測定した。その結果を図5に示す。図5における「(A)」は、金属及び樹脂複合分散液(A)から作製した金属含有樹脂膜の拡散反射率であり、「(B)」は、金属及び樹脂複合分散液(B)から作製した金属含有樹脂膜の拡散反射率であり、「(C)」は、金属及び樹脂複合分散液(C)から作製した金属含有樹脂膜の拡散反射率であり、「Black Felt」は、黒色フェルトのみの拡散反射率である。
【0061】
図5に示すように、グルコースを還元剤として調製した金属及び樹脂複合分散液から作製した金属含有樹脂膜は、可視光を透過する一方で赤外線を反射することが確認された。また、アスコルビン酸を還元剤として調製した金属及び樹脂複合分散液から作製した金属含有樹脂膜は、可視光も赤外線も反射した。以上の結果から、本発明の金属及び樹脂複合分散液は、簡便な赤外線反射膜の調製に有用であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5