【解決手段】本実施形態に係る半導体装置は、第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の上に形成された第2導電形のベース領域と、前記ベース領域の上に形成された第1導電形のソース領域と、前記ベース領域を第1方向に貫通して前記第1半導体領域に達し、第2方向に延伸するゲート電極と、前記ゲート電極と前記第1半導体領域の間、前記ゲート電極と前記ベース領域の間、及び、前記ゲート電極と前記ソース領域の間に形成された、ゲート絶縁膜と、を備えるセルを有しており、前記セルは、第1しきい値を有する領域と、前記第1しきい値より高い第2しきい値を有する領域を有する。
前記ベース領域は、前記第1しきい値を有する、第1不純物濃度の第1ベース領域と、前記第2しきい値を有する、前記第1不純物濃度よりも高い第2不純物濃度の第2ベース領域とを、備える請求項1に記載の半導体装置。
前記ボディーコンタクトの底部に位置する前記ベース領域には、前記ベース領域よりも高い不純物濃度で、第2導電形のコンタクト領域が形成されている、請求項4に記載の半導体装置。
前記ベース領域は、第3方向において、前記コンタクト領域が第1の幅を有する、前記第1しきい値の第1ベース領域と、前記コンタクト領域が前記第1の幅よりも広い第2の幅を有する、前記第2しきい値の第2ベース領域とを備える、請求項5に記載の半導体装置。
前記ベース領域は、第3方向において、前記コンタクト領域が前記ゲート電極から第1の距離だけ離れている、前記第1しきい値の第1ベース領域と、前記コンタクト領域が前記ゲート電極から第2の距離だけ離れている、前記第2しきい値の第2ベース領域とを備え、前記第1の距離は前記第2の距離よりも大きい、請求項5に記載の半導体装置。
前記ベース領域は、前記第1方向において、第1の深さで前記ベース領域が形成された、前記第1しきい値の第1ベース領域と、前記第1の深さより深い第2の深さで前記ベース領域が形成された、前記第2しきい値の第2ベース領域とを備える、請求項1に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る半導体装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0009】
なお、以下の各実施形態の説明において、n形が第1導電形に相当しており、p形が第2導電形に相当している。また、n
+やp
+の表記は、+の付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高いことを示しており、n
−やp
−の表記は、−の付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示している。さらに、例えばp
++の表記は、p
+よりもさらに不純物濃度が相対的に高いことを示している。
【0010】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る半導体装置は、複数のセルを有するMOSFETにおいて、1つのセルに、しきい値の低い領域としきい値の高い領域とを分散して配置し、低いゲート電圧では、しきい値の低い領域がオンするようにして、トランスコンダクタンス(Gm)を抑えて安全動作領域が狭まるのを回避し、高いゲート電圧では、さらに、しきい値の高い領域もオンさせるようにして、オン抵抗を低減するようにしたものである。以下に、詳細を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の
図2におけるI−I線断面図であり、
図2は、本実施形態に係る半導体装置1の
図1におけるII−II線断面図であり、
図3は、本実施形態に係る半導体装置1の
図1におけるIII−III線断面図である。換言すれば、
図1は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図2は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図であり、
図3は、半導体装置1における平面方向の断面図である。
【0012】
これら
図1乃至
図3から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1は、複数のセルCを備えて構成されている。
図1においては、2つのセルCを、例示的に図示しており、
図3においては、5つのセルCを例示的に示しているが、半導体装置1が備えるセルCの数は任意である。
【0013】
本実施形態に係る半導体装置1は、ドレイン電極10と、n
+形のドレイン領域12と、n
−形のドリフト領域14と、p形のベース領域16と、ゲート電極18と、ゲート絶縁膜20と、n
+形のソース領域22と、絶縁領域24と、ソース電極26と、p
++形のコンタクト領域28と、を備えて構成されている。すなわち、本実施形態においては、半導体装置1は、トレンチゲート形のMOSFETを備えて構成されている。
【0014】
より具体的には、ドレイン電極10上には、ドレイン領域12が形成されている。ドレイン領域12上には、ドリフト領域14が形成されている。ドリフト領域14上には、ベース領域16が形成されている。これらドレイン電極10とドレイン領域12とドリフト領域14とベース領域16は、複数のセルCに対して共通に形成されている。
【0015】
ベース領域16上には、セルC毎に、ソース領域22が形成されている。また、セルC毎に、ソース領域22とベース領域16を貫通して、ドリフト領域14に達するゲート電極18が形成されている。このゲート電極18は、トレンチ長手方向に延伸している。各ゲート電極18の周囲には、ゲート絶縁膜20が形成されており、ゲート電極18と、その周囲との絶縁性を担保している。すなわち、ゲート電極18とドリフト領域14との間、及び、ゲート電極18とベース領域16との間に、ゲート絶縁膜20が形成されている。
【0016】
ソース領域22上及びゲート絶縁膜20上には、絶縁領域24が形成されている。絶縁領域24上には、ソース電極26が形成されている。本実施形態においては、絶縁領域24とソース電極26とを貫通して、ベース領域16に達するトレンチ30が各ゲート電極18の間に形成されており、このトレンチ30を埋めるように、ソース電極26が形成されている。このように、トレンチコンタクト構造となるようにソース電極26を形成することにより、ゲート構造を微細化してオン抵抗を低減しつつ、アバランシェ耐圧を高く維持できるようにしている。
【0017】
トレンチ30の底部に位置するベース領域16には、コンタクト領域28が形成されている。このコンタクト領域28の不純物濃度は、ベース領域16の不純物濃度より高くなるように形成されており、ソース電極26とベース領域16との間の接続抵抗の低減を図っている。このため、コンタクト領域28は、省略することも理論上可能である。
【0018】
特に
図2及び
図3から分かるように、ベース領域16をトレンチ長手方向の断面で見た場合、不純物濃度が低い第1ベース領域16aと、この第1ベース領域16aよりも不純物濃度が高い第2ベース領域16bとが形成されている。このため、第1ベース領域16aのしきい値をVth1とし、第2ベース領域16bのしきい値をVth2とすると、しきい値Vth1よりも、しきい値Vth2の方が高いしきい値となり、Vth1<Vth2の関係が成立する。換言すれば、1つのセルCにおいて、異なるしきい値を持つ領域が形成されていることとなる。このため、ドレイン領域12に、ソース電極26に対して正の電圧が印加された状態で、ゲート電極18に電圧が印加された場合、第1ベース領域16aの部分のMOSFETは低い電圧であるVth1でオン状態となるが、第2ベース領域16bの部分のMOSFETはオフ状態のままとなる。そして、ゲート電極18に印加される電圧がVth2よりも高くなった場合に、第2ベース領域16bの部分のMOSFETもオン状態となる。このように、本実施形態においては、1つのセルに、しきい値Vth1を有する領域と、このしきい値Vth1よりも高いしきい値Vth2を有する領域とが形成される。
【0019】
本実施形態においては、この第1ベース領域16aと第2ベース領域16bとは、ベース領域16のトレンチ長手方向に周期的に配置されている。また、セルC毎に、これら第1ベース領域16aと第2ベース領域16bが形成されているので、半導体装置1の全体的に、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bとが分散して形成されていることとなる。例えば、本実施形態においては、
図3における第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの面積比が、1:10〜1:30となるように、第1ベース領域16aが分散して形成されている。
【0020】
また、本実施形態においては、例えば、しきい値Vth1の範囲を1V〜3Vとし、しきい値Vth2の範囲を4V〜6Vとなることを想定している。このためには、第1ベース領域16aのイオン注入のドーズ量は、1×10
13cm
−2〜3×10
13cm
−2程度であり、第2ベース領域16bのイオン注入のドーズ量は、4×10
13cm
−2〜7×10
13cm
−2程度である。この前提として、ゲート絶縁膜20の膜厚を50nmとしているが、ベース拡散条件によっても、必要なドーズ量は上下する。
【0021】
次に、本実施形態に係る半導体装置1の動作原理について説明する。
図4は、ドレイン領域12に、ソース電極26に対して所定の正の電圧が印加された状態で、ゲート電圧V
Gを変化させた場合における、ゲート電圧V
Gとドレイン電流I
Dの関係を表すグラフを示す図である。また、実線のグラフは室温におけるドレイン電流I
Dの変化を表しており、点線のグラフは室温よりも高い温度におけるドレイン電流I
Dの変化を表している。
【0022】
この
図4の2つのグラフから分かるように、室温におけるドレイン電流I
Dの変化と、高温におけるドレイン電流I
Dの変化は異なっており、両者は、あるゲート電圧である零温度係数電圧V
ZTC(Zero-Temperature Coefficient)で交差する。この零温度係数電圧V
ZTCよりも低いゲート電圧では、ドレイン電流I
Dは温度変化に対して正の温度係数を持ち、零温度係数電圧V
ZTCよりも高いゲート電圧では、ドレイン電流I
Dは温度変化に対して負の温度係数を持つ。このため、温度変化に対して正の温度係数を持つ、ゲート電圧V
Gが零温度係数電圧V
ZTCよりも低い領域では、温度が上がるとドレイン電流I
Dが増加し、さらに温度が上がるというポジティブフィードバックがかかり、熱暴走の生じる可能性がある。このため、安全動作領域が制限される。
【0023】
図5は、
図4の特性を示した半導体装置の微細化を図った場合における、ゲート電圧V
Gとドレイン電流I
Dの関係を表すグラフを示す図である。この
図5から分かるように、半導体装置の微細化が進むと、
図4と比べて、零温度係数電圧V
ZTCが高くなる。零温度係数電圧V
ZTCが高くなると、温度変化に対して負の温度係数を持つ、ゲート電圧V
Gが零温度係数電圧V
ZTCよりも高い領域が減少するので、熱暴走が起こりやすくなる。すなわち、ドレイン電流I
Dの動作電流の大きさが零温度係数電圧V
ZTCの交差する点よりも低くなり、温度変化に対して正の温度係数を持つ、ゲート電圧V
Gが零温度係数電圧V
ZTCよりも低い領域で動作することとなる。このため、熱暴走が起こりやすく、安全動作領域が狭くなってしまう。
【0024】
図6は、ドレイン電圧V
Dとドレイン電流I
Dとの関係を表すグラフを示す図であり、実線が従来の半導体装置のグラフであり、点線が微細化された半導体装置のグラフを示している。これらのグラフの内側が、それぞれの安全動作領域を表している。この
図6に示すように、半導体装置の微細化により、ドレイン電圧V
Dの高い領域で、流すことのできるドレイン電流I
Dが減少し、安全動作領域が狭くなることがわかる。
【0025】
図7は、本実施形態に係る半導体装置1における、上述した
図4に対応するグラフを示している。すなわち、
図7は、ドレイン領域12に、ソース電極26に対して正の所定の電圧が印加された状態で、ゲート電圧V
Gを変化させた場合における、ゲート電圧V
Gとドレイン電流I
Dの関係を表すグラフを示す図である。この
図7のグラフにおいて、ゲート電圧V
Gが、しきい値Vth1よりも低い場合は、第1ベース領域16a及び第2ベース領域16bの双方の領域のMOSFETがオフ状態にある。
【0026】
ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1より大きくなると、第1ベース領域16aの領域のMOSFETがオン状態となる。しかし、第2ベース領域16bの領域のMOSFETはオフ状態のままである。第1ベース領域16aの領域のMOSFETがオン状態になるだけなので、ゲート電圧V
Gを高くしても、ドレイン電流I
Dの増加はさほど大きくはならない。換言すれば、MOSFETの一部しかオン状態とならないことから、ドレイン電流I
Dの立ち上がりを緩やかにすることができる。
【0027】
ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2よりも大きくなると、第1ベース領域16aの領域だけでなく、第2ベース領域16bの領域のMOSFETもオン状態となる。このため、ドレイン電流I
Dは急激に増加する。ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きい場合の半導体装置1の特性は、これまでの半導体装置と同じであるといえる。
【0028】
図8は、
図7のグラフに、室温より高い状態において、ゲート電圧V
Gを変化させた場合における、ゲート電圧V
Gとドレイン電流I
Dの関係を表すグラフを重ねたものである。零温度係数電圧V
ZTCの交差する点は、ドレイン電流I
Dが少ない領域に位置しており、このため、正の温度係数を持つ領域が小さく抑えられている。一方で、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった領域では、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの両方の領域のMOSFETがオン状態となるため、この半導体装置1のオン抵抗を低く抑えることができる。
【0029】
これらのことから分かるように、しきい値Vth1と、しきい値Vth2と、零温度係数電圧V
ZTCの関係は、Vth1<V
ZTC<Vth2となる必要がある。換言すれば、零温度係数電圧V
ZTCの電圧を、より低い電圧に下げることにより、正の温度係数を持つ領域を小さくし、安全動作領域を広く確保しているのである。
【0030】
次に、
図9(a)及び
図9(b)乃至
図20(a)乃至
図20(b)に基づいて、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程の一例を説明する。
図9(a)乃至
図20(a)は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図1に対応する図である。
図9(b)乃至
図20(b)は、半導体装置1におけるトレンチに平行な長手方向の断面図であり、上述した
図2に対応する図である。
【0031】
まず、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、n
+形の半導体基板12X上に、n
−形の半導体層14Xを形成する。半導体基板12Xが、上述したドレイン領域12となり、半導体層14Xが、上述したドリフト領域14となる。
【0032】
次に、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、ドリフト領域14に、複数のトレンチ50を形成する。続いて、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、トレンチ50を含むドリフト領域14の表面に、例えば熱酸化により、ゲート絶縁膜20を形成する。
【0033】
次に、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、ゲート絶縁膜20上に、例えばポリシリコン52を堆積する。これにより、トレンチ50にポリシリコン52が充填され埋設される。続いて、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、例えばCDE(Chemical Dry Etching)又はRIE(Reactive Ion Etching)により、ポリシリコン52を選択的にエッチングすることにより、トレンチ50内にポリシリコン52を残存させて、他の領域のポリシリコン52を除去する。トレンチ50内に残存させたポリシリコン52により、ゲート電極18が形成される。
【0034】
次に、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、例えばボロン(B)をドリフト領域14にイオン注入することにより、ドリフト領域14に、ベース領域54を形成する。このボロンのイオン注入は、このドリフト領域14の全面に行い、その濃度は、しきい値Vth1を形成するのに必要な濃度である。
【0035】
次に、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、第1ベース領域16aに相当する部分に、フォトレジスト56を形成し、再び、例えばボロン(B)のイオン注入することにより、ベース領域54から、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bとを形成する。この追加のイオン注入の濃度は、ベース領域54がしきい値Vth2となるような濃度で行われる。すなわち、
図14(a)及び図(b)で行ったイオン注入の濃度と、
図15(a)及び
図15(b)で行ったイオン注入の濃度の合計により、しきい値Vth2の第2ベース領域16bが形成される。そして、ベース領域54のうち、追加のイオン注入がされなかった領域に、しきい値Vth1の第1ベース領域16aが形成される。
【0036】
次に、
図16(a)及び
図16(b)に示すように、フォトレジスト56を除去する。続いて、例えばリン(P)又はヒ素(As)のイオン注入を、第1ベース領域16a及び第2ベース領域16bの上部に行い、n
+形の半導体領域22Xを形成する。
【0037】
次に、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)により、半導体領域22X上に、絶縁膜24Xを形成する。続いて、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、絶縁膜24Xを例えばRIEによりパターニングして、絶縁領域24を形成する。
【0038】
次に、
図19(a)及び
図19(b)に示すように、絶縁領域24をマスクとして用いて、例えばRIEにより、半導体領域22Xとベース領域54とをエッチングすることにより、トレンチ30を形成する。エッチングされた半導体領域22Xにより、ソース領域22が形成される。続いて、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、例えばボロン(B)のイオン注入をすることにより、トレンチ30の底部で露出している第1ベース領域16a及び第2ベース領域16bにコンタクト領域28を形成する。このコンタクト領域28を形成するにあたっては、イオン注入の後に、熱拡散を行い、第1ベース領域16a及び第2ベース領域16bの結晶を回復させ、不純物イオンも活性化させる。
【0039】
次に、
図1及び
図2に示すように、トレンチ30を埋めるように絶縁領域24上にソース電極26を形成し、ドレイン領域12下側にドレイン電極10を形成する。具体的には、例えば、表面メタルを形成して加工し、パッシベーション膜を形成した後に、ウェハーの薄膜化を行う。これにより、ソース電極26が形成される。さらに、裏面メタルを生成することにより、ドレイン電極10が形成され、
図1乃至
図3に示した、半導体装置1が得られる。
【0040】
なお、本実施形態に係るドレイン領域12及び/又はドリフト領域14が、第1半導体領域に相当しており、
図1の本実施形態に係る半導体装置1における垂直方向が、第1方向に相当しており、
図2の本実施形態に係る半導体装置1における奥行き方向が、第2方向に相当しており、
図1の本実施形態に係る半導体装置1における幅方向が、第3方向に相当している。また、本実施形態におけるトレンチ30に埋め込まれたソース電極26の部分が、ソース電極26をソース領域22及びベース領域16に電気的に接続するボディーコンタクトを構成している。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1によれば、セルCのベース領域16に、不純物濃度の低い第1ベース領域16aと不純物濃度の高い第2ベース領域16bとを形成し、第2ベース領域16bの部分で形成されるMOSFETのしきい値Vth2よりも低いしきい値Vth1でオン状態となるMOSFETを構成した。このため、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1としきい値Vth2の間にある場合には、ドレイン電流I
Dを低く抑えることができ、この結果、正の温度係数を有する領域を小さくすることができる。このため、半導体装置1に熱暴走が起きるのを抑制し、安全動作領域を拡大させることができる。
【0042】
一方、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった場合には、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの双方の部分のMOSFETがオン状態となることから、ベース領域16全体にチャネルが形成され、オン抵抗を低減することができる。また、より低いしきい値Vth1を形成する第1ベース領域16aを、半導体装置1内に分散して配置したので、発熱を半導体装置1の全体に分散させることができる。これにより、安全動作領域を、より広げることができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態においては、製造過程におけるベース領域16へのイオン注入のドーズ量を上げることにより、第2ベース領域16bの不純物濃度を第1ベース領域16aの不純物濃度より高くなるようにしたが、第2実施形態においては、第2ベース領域16bに位置するコンタクト領域28の幅を広げることにより、コンタクト領域28を形成する不純物の拡散を利用して、第2ベース領域16bの不純物濃度の方が第1ベース領域16aの不純物濃度よりも高くなるようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0044】
図21は、本実施形態に係る半導体装置1の
図23におけるXXI−XXI線断面図であり、
図22は、本実施形態に係る半導体装置1の
図23におけるXXII−XXII線断面図であり、
図23は、本実施形態に係る半導体装置1の
図21及び
図22におけるXXIII−XXIII線断面図であり、
図24は、本実施形態に係る半導体装置1における
図21及び
図22のXXIV−XXIV線断面図である。換言すれば、
図21及び
図22は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図23は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図であり、
図24は、半導体装置1における平面方向の断面図である。
【0045】
これら
図21乃至
図24から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1においても、ベース領域16に不純物濃度の低い第1ベース領域16aが分散して形成されているが、第2ベース領域16bに対応する領域についてはコンタクト領域28の幅を広げることにより、コンタクト領域28からの不純物の拡散で不純物濃度を高めている。
【0046】
すなわち、第1ベース領域16aに形成されたコンタクト領域28の幅W1よりも、第2ベース領域16bに形成されたコンタクト領域28の幅W2の方が広くなっている。このため、コンタクト領域28を形成する際の熱拡散工程により、第2ベース領域16bには、コンタクト領域28の不純物が拡散し、その不純物濃度を高められる。つまり、上述した第1実施形態と同様に、ベース領域16に、不純物濃度の低い第1ベース領域16aと、不純物濃度の高い第2ベース領域16bとを形成することができる。このため、第1ベース領域16aの領域で、しきい値Vth1のMOSFETを構成することができ、第2ベース領域16bの領域で、しきい値Vth1よりも高いしきい値Vth2のMOSFETを構成することができる。
【0047】
これに伴い、ソース電極26のボディーコンタクトが埋め込まれるトレンチ30の幅も、第1ベース領域16aに対応する位置と、第2ベース領域16bに対応する位置とで、異なっている。すなわち、第1ベース領域16aに対応するトレンチ30の幅W1よりも、第2ベース領域16bに対応するトレンチ30の幅W2の方が、広くなっている。
【0048】
次に、
図25(a)〜
図25(c)乃至
図27(a)〜
図27(c)に基づいて、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程の一例を説明する。
図25(a)乃至
図27(a)は、半導体装置1の第1ベース領域16aにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図21に対応する図である。
図25(b)乃至
図27(b)は、半導体装置1の第2ベース領域16bにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図22に対応する図である。
図25(c)乃至
図27(c)は、半導体装置1におけるトレンチに平行な長手方向の断面図であり、上述した
図23に対応する図である。
【0049】
本実施形態に係る半導体装置1の製造工程は、上述した
図9(a)及び
図9(b)乃至
図14(a)及び
図14(b)に至るまでは、上述した第1実施形態と同様である。但し、
図15のイオン注入工程は不要となる。そして、
図16乃至
図17の工程も同一である。
【0050】
この
図17の製造工程の後、
図25(a)乃至
図25(c)に示すように、絶縁膜24XをRIEによりパターニングして、絶縁領域24を形成するが、このパターニングの際に、第1ベース領域16aに位置する絶縁領域24同士の間を幅W1となるように形成し、第2ベース領域16bに位置する絶縁領域24同士の間を幅W1よりも広い幅W2となるように形成する。
【0051】
次に、
図26(a)乃至
図26(c)に示すように、絶縁領域24をマスクとして用いて、例えばRIEにより、半導体領域22Xとベース領域54とをエッチングすることにより、トレンチ30を形成する。エッチングされた半導体領域22Xにより、ソース領域22が形成される。
【0052】
次に、
図27(a)乃至
図27(c)に示すように、例えばボロン(B)のイオン注入をすることにより、トレンチ30の底部で露出しているベース領域54にコンタクト領域28を形成する。このコンタクト領域28を形成する際には、イオン注入の後に熱拡散工程を実行する。このため、第2ベース領域16bを形成する領域においては、トレンチ30がより広い幅W2で形成されていることから、ボロン等の不純物が熱拡散により、ベース領域54の不純物濃度を高くする。このため、より狭い幅W1でコンタクト領域28が形成された第1ベース領域16aよりも、高い不純物濃度で、第2ベース領域16bを形成することができる。そして、
図21乃至
図23に示すように、上述した第1実施形態と同様の工程で、ソース電極26とドレイン電極10とを形成する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1によっても、1つのセルCのベース領域16に、不純物濃度の低い第1ベース領域16aと不純物濃度の高い第2ベース領域16bとを形成し、第2ベース領域16bの部分で形成されるMOSFETのしきい値Vth2よりも低いしきい値Vth1でオン状態となるMOSFETを構成した。このため、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1としきい値Vth2の間にある場合には、ドレイン電流I
Dを低く抑えることができ、この結果、正の温度係数を有する領域を小さくすることができる。このため、半導体装置1に熱暴走が起きるのを抑制し、安全動作領域を拡大させることができる。
【0054】
また、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった場合には、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの双方の部分のMOSFETがオン状態となることから、ベース領域16全体にチャネルが形成され、オン抵抗を低減することができる。また、より低いしきい値Vth1を形成する第1ベース領域16aを、半導体装置1内に分散して配置したので、発熱を半導体装置1の全体に分散させることができる。これにより、安全動作領域をより広げることができる。
【0055】
さらに、半導体装置1の製造工程において、フォトリソグラフィーとイオン注入により、ドーズ量を打ち分ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。すなわち、
図25乃至
図27に示すように、フォトレジストにトレンチ30のパターンを露光して、絶縁膜24Xのパターニングを行い、トレンチ30を形成し、このトレンチ30の底部にコンタクト領域28をイオン注入により形成することで、不純物濃度の高い第2ベース領域16bを形成することができる。このため、異なるドーズ量のイオン注入を行う必要がなくなる。すなわち、第1実施形態における
図15のイオン注入工程は不要となる。このため、フォトマスクのパターン数が削減され、半導体装置1の製造工程におけるイオン注入のステップ数も削減することができる。
【0056】
〔第3実施形態〕
上述した第2実施形態においては、第2ベース領域16bに対応するコンタクト領域28の幅W2を第1ベース領域16aに対応するコンタクト領域28の幅W1よりも広くすることにより、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのしきい値Vth1よりも、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのしきい値Vth2を高くしたが、第3実施形態においては、第1ベース領域16aにおいては、コンタクト領域28の位置をゲート電極18から離れる方向にずらすことにより、第1ベース領域16aの不純物濃度を下げるようにしている。以下、上述した第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分を説明する。
【0057】
図28は、本実施形態に係る半導体装置1の
図30におけるXXVIII−XXVIII線断面図であり、
図29は、本実施形態に係る半導体装置1の
図30におけるXXIX−XXIX線断面図であり、
図30は、本実施形態に係る半導体装置1の
図28及び
図29におけるXXX−XXX線断面図であり、
図31は、本実施形態に係る半導体装置1における
図28及び
図29のXXXI−XXXI線断面図である。換言すれば、
図28及び
図29は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図30は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図であり、
図31は、半導体装置1における平面方向の断面図である。
【0058】
これら
図28乃至
図31から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1においても、ベース領域16に不純物濃度の低い第1ベース領域16aが分散して形成されているが、第1ベース領域16aに対応する領域についてはコンタクト領域28の位置を、第2ベース領域16bに対応する領域よりも、ゲート電極18から離れる方向にシフトすることにより、第1ベース領域16aの不純物濃度を下げるようにしている。
【0059】
すなわち、
図29及び
図31に示すように、第2ベース領域16bに対応するコンタクト領域28は、2つのゲート電極18の中間に形成されているが、
図28及び
図31に示すように、第1ベース領域16aに対応するコンタクト領域28は、一方のゲート電極18に偏った位置に形成されている。具体的には、第1ベース領域16aにおけるゲート電極18とコンタクト領域28との間の距離D1は、第2ベース領域16bにおけるゲート電極18とコンタクト領域28との間の距離D2よりも、大きくなっている。換言すれば、
図31から分かるように、第1ベース領域16aに対応する位置では、ゲート電極18から距離D1だけ離れてトレンチ30が形成されて、コンタクト領域28が形成される。一方、第2ベース領域16bに対応する位置では、ゲート電極18から、距離D1よりも近い距離D2だけ離れてトレンチ30が形成されて、コンタクト領域28が形成される。このため、第1ベース領域16aの不純物濃度は、第2ベース領域16bの不純物濃度より低くなり、結果として、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのしきい値Vth1は、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのしきい値Vth2より、低くなる。
【0060】
なお、
図28に示すように、第1ベース領域16aにおけるゲート電極18とコンタクト領域28との間の距離は、距離D1の反対側においては、距離D3となり、第2ベース領域16bよりもゲート電極18までの距離が近くなってしまう。すなわち、距離の大小関係は、距離D1>距離D2>距離D3という関係になる。このため、ゲート電極18までの距離が距離D3のMOSFETは、しきい値が最も高くなる。しかし、第1ベース領域16aのMOSFETのしきい値というのは、不純物濃度が低い距離D1によって定まる。すなわち、ゲート電極18までの距離が距離D1のMOSFETは、しきい値Vth1によりオン状態となるので、この半導体装置1の全体で見た場合には、第1ベース領域16aに、しきい値Vth1のMOSFETが形成されているとらえることができる。
【0061】
次に、
図32(a)乃至
図32(c)〜
図34(a)乃至
図34(c)を用いて、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程の一例を説明する。
図32(a)乃至
図34(a)は、半導体装置1の第1ベース領域16aにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図28に対応する図である。
図32(b)乃至
図34(b)は、半導体装置1の第2ベース領域16bにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図29に対応する図である。
図32(c)乃至
図34(c)は、半導体装置1におけるトレンチに平行な長手方向の断面図であり、上述した
図30に対応する図である。
【0062】
本実施形態に係る半導体装置1の製造工程は、上述した
図17(a)及び
図17(b)に至るまでは、上述した第2実施形態と同様である。この
図17(a)及び
図17(b)の製造工程の後、
図32(a)乃至
図32(c)に示すように、例えば絶縁膜24XをRIEによりパターニングして、絶縁領域24を形成するが、第1ベース領域16aに相当する領域では、一方のゲート電極18から、絶縁領域24と絶縁領域24との間の間隙30Xまでの距離がD1となるように、絶縁領域24を形成する。一方、第2ベース領域16bに相当する領域では、2つのゲート電極18から、絶縁領域24と絶縁領域24との間の間隙30Xまでの距離がそれぞれD2となるように、絶縁領域24を形成する。
【0063】
次に、
図33(a)乃至
図33(c)に示すように、絶縁領域24をマスクとして用いて、例えばRIEにより、半導体領域22Xとベース領域54とをエッチングすることにより、トレンチ30を形成する。エッチングされた半導体領域22Xにより、ソース領域22が形成される。
【0064】
次に、
図34(a)乃至
図34(c)に示すように、例えばボロン(B)のイオン注入をすることにより、トレンチ30の底部で露出しているベース領域54にコンタクト領域28を形成する。このコンタクト領域28を形成する際には、イオン注入の後に熱拡散工程を実行する。このとき、第2ベース領域16bにおいては、距離D1より近い距離D2でコンタクト領域28が形成されていることから、熱拡散により、ベース領域54の不純物濃度が高くなる。一方、第1ベース領域16aを形成する領域においては、距離D2より大きい距離D1でコンタクト領域28が形成されていることから、熱拡散による不純物濃度は、第2ベース領域16bのようには高くならない。このため、第1ベース領域16aの不純物濃度の方が、第2ベース領域16bの不純物濃度より低くなる。
【0065】
この熱拡散工程により、第1ベース領域16aに対応する領域のMOSFETのしきい値がVth1となり、第2ベース領域16bに対応する領域のMOSFETのしきい値がVth2となるように、第1ベース領域16aの不純物濃度と第2ベース領域16bの不純物濃度とを調整しておく。そして、
図21乃至
図23に示すように、上述した第1実施形態と同様の工程で、ソース電極26とドレイン電極10とを形成することにより、半導体装置1が得られる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1によっても、1つのセルCのベース領域16に、不純物濃度の低い第1ベース領域16aと不純物濃度の高い第2ベース領域16bとを形成したので、第2ベース領域16bの部分で形成されるMOSFETのしきい値Vth2よりも低いしきい値Vth1でオン状態となるMOSFETを構成することができる。このため、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1としきい値Vth2の間にある場合には、ドレイン電流I
Dを低く抑えることができ、この結果、正の温度係数を有する領域を小さくすることができる。このため、半導体装置1に熱暴走が起きるのを抑制し、安全動作領域を拡大させることができる。
【0067】
また、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった場合には、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの双方の部分のMOSFETがオン状態となることから、ベース領域16全体にチャネルが形成され、オン抵抗を低減することができる。また、より低いしきい値Vth1を形成する第1ベース領域16aを、半導体装置1内に分散して配置したので、発熱を半導体装置1の全体に分散させることができる。これにより、安全動作領域をより広げることができる。
【0068】
さらに、半導体装置1の製造プロセスにおいて、フォトリソグラフィーとイオン注入により、ドーズ量を打ち分ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。すなわち、フォトレジストに形成位置のシフトされたトレンチ30のパターンを露光して、エッチングを行い、このトレンチ30の底部にコンタクト領域28をイオン注入して熱拡散することにより形成することで、不純物濃度の低い第1ベース領域16aを形成することができ、異なるドーズ量のイオン注入を行う必要がなくなる。すなわち、第1実施形態における
図15のイオン注入工程は不要となる。このため、フォトマスクのパターン数が削減され、製造工程中におけるイオン注入のステップ数も削減することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、第2ベース領域16bに対応する領域において、コンタクト領域28を2つのゲート電極18の中間に形成することとしたが、この中間というのは、必ずしも中央を意味しない。すなわち、第2ベース領域16bにおいても、コンタクト領域28は、一方のゲート電極18の方にずれた位置に形成されていてもよい。結果として、第1ベース領域16aの領域におけるゲート電極18からコンタクト領域28までの距離D1が、第2ベース領域16bの領域におけるゲート電極18からコンタクト領域28までの距離D2よりも、大きくなっていれば足りる。
【0070】
〔第4実施形態〕
上述した第1実施形態乃至第3実施形態においては、第1ベース領域16aの不純物濃度を第2ベース領域16bの不純物濃度より低くすることにより、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのしきい値Vth1を、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのしきい値Vth2より低くしたが、第4実施形態においては、第1ベース領域16aの深さを、第2ベース領域16bの深さより浅くすることにより、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのしきい値Vth1を、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのしきい値Vth2より低くしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
図35は、本実施形態に係る半導体装置1の
図37におけるXXXV−XXXV線断面図であり、
図36は、本実施形態に係る半導体装置1の
図37におけるXXXVI−XXXVI線断面図であり、
図37は、本実施形態に係る半導体装置1の
図35及び
図36におけるXXXVII−XXXVII線断面図であり、
図38は、本実施形態に係る半導体装置1における
図35及び
図36のXXXVIII−XXXVIII線断面図であり、
図39は、本実施形態に係る半導体装置1における
図35及び
図36のXXXIX−XXXIX線断面図である。換言すれば、
図35及び
図36は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図37は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図であり、
図38及び
図39は、半導体装置1における平面方向の断面図である。
【0072】
これら
図35乃至
図39から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1においては、第1ベース領域16aが形成されている深さDP1よりも、第2ベース領域16bが形成されている深さDP2の方が、深くなっている。このため、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのチャネル長の方が、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのチャネル長よりも短くなり、この結果、第1ベース領域16aに対応するMOSFETのしきい値Vth1の方が、第2ベース領域16bに対応するMOSFETのしきい値Vth2よりも低くなる。
【0073】
次に、
図40(a)乃至
図40(c)及び
図41(a)乃至
図41(c)を用いて、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程の一例を説明する。
図40(a)及び
図41(a)は、半導体装置1の第1ベース領域16aにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図35に対応する図である。
図40(b)及び
図41(b)は、半導体装置1の第2ベース領域16bにおけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図36に対応する図である。
図40(c)及び
図40(c)は、半導体装置1におけるトレンチに平行な長手方向の断面図であり、上述した
図37に対応する図である。
【0074】
本実施形態に係る半導体装置1の製造工程は、上述した
図13(a)及び
図13(b)に至るまでは、上述した第1実施形態と同様である。この
図13(a)及び
図13(b)の製造工程の後、
図40(a)乃至
図40(c)に示すように、この半導体装置におけるドリフト領域14の全面に、例えばボロン(B)をイオン注入することにより、ドリフト領域14に、ベース領域16xを形成する。このボロンのイオン注入は、イオンを深さDP1となるように、イオンを打ち込む。
【0075】
次に、
図41(a)乃至
図41(c)に示すように、第1ベース領域16aに相当する領域にフォトレジスト60を形成し、例えばボロン(B)をドリフト領域14にイオン注入することにより、ドリフト領域14に、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bを形成する。このボロンのイオン注入は、イオンを深さDP2となるように、イオンを打ち込む。例えば、ベース領域16xを形成するためにイオンを打ち込んだ加速電圧より高い加速電圧で、イオンを打ち込む。この結果、ベース領域16xにより、第1ベース領域16aが形成され、ベース領域16xと今回のイオン注入により、第2ベース領域16bが形成される。
【0076】
この
図41(a)乃至
図41(c)の製造工程の後は、上述した第1実施形態における
図16(a)及び
図16(b)乃至
図20(a)及び
図20(b)と同様である。そして、
図20(a)及び
図20(b)の後、ソース電極26とドレイン電極10とを形成して、
図35乃至
図39に示す半導体装置1が得られる。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1によれば、1つのセルCのベース領域16に、深さDP1の第1ベース領域16aと、この深さDP1よりも深い深さDP2の第2ベース領域16bを形成し、第2ベース領域16bの部分で形成されるMOSFETのしきい値Vth2よりも低いしきい値Vth1でオン状態となるMOSFETを、第1ベース領域16aに構成することができる。このため、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1としきい値Vth2の間にある場合には、ドレイン電流I
Dを低く抑えることができ、この結果、正の温度係数を有する領域を小さくすることができる。このため、半導体装置1に熱暴走が起きるのを抑制し、安全動作領域を拡大させることができる。
【0078】
また、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった場合には、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bの双方の部分のMOSFETがオン状態となることから、ベース領域16全体にチャネルが形成され、オン抵抗を低減することができる。また、より低いしきい値Vth1を形成する第1ベース領域16aを、半導体装置1内に分散して配置したので、発熱を半導体装置1の全体に分散させることができる。これにより、安全動作領域をより広げることができる。
【0079】
さらに、半導体装置1の製造工程において、イオン注入により、ドーズ量を打ち分ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。すなわち、
図40(a)乃至
図40(c)及び
図41(a)乃至
図41(c)に示したように、深さDP1の第1ベース領域16aと深さDP2の第2ベース領域16bを作り分けることにより、しきい値Vth1のMOSFETとしきい値Vth2のMOSFETとを形成することができるので、異なるドーズ量のイオン注入を行う必要がなくなる。
【0080】
〔第5実施形態〕
上述した第1実施形態乃至第4実施形態においては、1つのセルCに、低いしきい値Vth1のMOSFETの領域と、高いしきい値Vth2のMOSFETの領域との双方を形成するようにしたが、第5実施形態においては、低いしきい値Vth1のMOSFETを形成するセルCと、高いしきい値Vth2のMOSFETを形成するセルCとを作り分けるようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0081】
図42は、本実施形態に係る半導体装置1の
図43及び
図44におけるXLII−XLII線断面図であり、
図43は、本実施形態に係る半導体装置1の
図42におけるXLIII−XLIII線断面図であり、
図44は、本実施形態に係る半導体装置1の
図42におけるXLIV−XLIV線断面図であり、
図45は、本実施形態に係る半導体装置1の
図42におけるXLV−XLV線断面図である。換言すれば、
図42は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図43及び
図44は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図であり、
図45は、半導体装置1における平面方向の断面図である。
【0082】
これら
図42乃至
図45から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1は、不純物濃度の低い第1ベース領域16aにより構成されているセルC1と、不純物濃度の高い第2ベース領域16bにより構成されているセルC2とを備えている。このため、セルC1のMOSFETのしきい値はVth1となり、セルC2のMOSFETのしきい値は、Vth1よりも高いVth2となる。
【0083】
次に、
図46を用いて、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程の一例を説明する。
図46は、半導体装置1のトレンチ直交方向の断面図であり、上述した
図42に対応する図である。
【0084】
本実施形態に係る半導体装置1の製造工程は、上述した
図14に至るまでは、上述した第1実施形態と同様である。この
図14の製造工程の後、
図46に示すように、第1ベース領域16aを形成する部分にフォトレジスト64を形成する。より正確には、第1ベース領域16aを形成する領域と、その両側に隣接するゲート電極18の一部の領域とを覆うように、フォトレジスト64を形成する。続いて、再び、例えばボロン(B)のイオン注入することにより、ベース領域54から、第1ベース領域16aと第2ベース領域16bとを形成する。この追加のイオン注入の濃度は、ベース領域54がしきい値Vth2となるような濃度で行われる。すなわち、
図14(a)及び図(b)で行ったイオン注入の濃度と、
図46で行ったイオン注入の濃度の合計により、しきい値Vth2を有するセルC2の第2ベース領域16bが形成される。そして、ベース領域54のうち、追加のイオン注入がされなかった領域に、しきい値Vth1を有するセルC1の第1ベース領域16aが形成される。
【0085】
この
図46の製造工程の後は、上述した第1実施形態における
図16(a)及び
図16(b)乃至
図20(a)及び
図20(b)と同様である。そして、
図20(a)及び
図20(b)の後、ソース電極26とドレイン電極10とを形成して、
図42乃至
図45に示す半導体装置1が得られる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1によれば、しきい値Vth1を有するMOSFETのセルC1と、しきい値Vth2を有するMOSFETのセルC2とを形成したので、しきい値Vth2よりも低いしきい値Vth1でオン状態となるMOSFETを半導体装置1内に形成することができる。このため、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth1としきい値Vth2の間にある場合には、ドレイン電流I
Dを低く抑えることができ、この結果、正の温度係数を有する領域を小さくすることができる。このため、半導体装置1に熱暴走が起きるのを抑制し、安全動作領域を拡大させることができる。
【0087】
また、ゲート電圧V
Gがしきい値Vth2より大きくなった場合には、セルC1とセルC2のMOSFETがオン状態となることから、ベース領域16全体にチャネルが形成され、オン抵抗を低減することができる。また、より低いしきい値Vth1を形成するセルC1を、半導体装置1内に分散して配置したので、発熱を半導体装置1の全体に分散させることができる。これにより、安全動作領域をより広げることができる。
【0088】
〔第6実施形態〕
第6実施形態に係る半導体装置1は、上述した第1実施形態を変形して、ゲート電極18の下方に埋め込みソース電極を形成したトレンチフィールドプレート構造にしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0089】
図47は、本実施形態に係る半導体装置1の
図48におけるXLVII−XLVII線断面図であり、
図48は、本実施形態に係る半導体装置1の
図47におけるXLVIII−XLVIII線断面図である。換言すれば、
図47は、半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、
図48は、半導体装置1におけるトレンチに平行なトレンチ長手方向の断面図である。
【0090】
これら
図47及び
図48から分かるように、本実施形態に係る半導体装置1は、ゲート電極18の下方に、埋め込みソース電極70が設けられている。すなわち、ドリフト領域14の中に絶縁膜72を介して、埋め込みソース電極70が埋め込まれている。絶縁膜72は、埋め込みソース電極70の周囲を囲うように形成されているが、埋め込みソース電極70電気的にはゲート電極18又はソース電極26に接続されている。
【0091】
この埋め込みソース電極70が存在することにより、ドリフト領域14の空乏化が促進されて、半導体装置1の耐圧を向上させることができる。また、半導体装置1の耐圧が向上した分、ドリフト領域14の不純物濃度を高めることができるので、ドリフト領域14の抵抗を低減でき、半導体装置1のオン抵抗を低減することができる。なお、このトレンチフィールドプレート構造は、第1実施形態だけでなく、上述した第2実施形態乃至第5実施形態のいずれに対しても適用することができる。
【0092】
〔第7実施形態〕
第7実施形態に係る半導体装置1は、上述した第1実施形態を変形して、ソース電極26のトレンチコンタクトの代わりに、ピラーインプランテーションにより、ソース電極26とコンタクト領域28との間の電気的接続を確保したものである。以下、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0093】
図49は、本実施形態に係る半導体装置1におけるトレンチ直交方向の断面図であり、上述した第1実施形態の
図1に対応する図である。この
図49に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、トレンチ30が形成されておらず、その代わりに、ソース電極26とコンタクト領域28との間に、p形のピラー80が形成されている。このピラー80により、ソース電極26がコンタクト領域28と電気的に接続される。
【0094】
本実施形態においては、ピラー80は、イオン注入により形成される。例えば、ボロン(B)を打ち込んで、熱拡散させることにより、p形のピラー80を形成する。イオン注入は、打ち込む深さを変えて、複数回行って、ピラー80を形成するようにしてもよい。このように、トレンチ30によるトレンチコンタクトを形成するのではなく、ピラー80を形成することによっても、第1実施形態と同様の半導体装置1を実現することができる。なお、このピラーインプランテーションによる構造は、第1実施形態だけでなく、上述した第2実施形態乃至第6実施形態のいずれに対しても適用することができる。
【0095】
なお、本実施形態におけるピラー80が、ソース電極26をソース領域22及びベース領域16に電気的に接続するボディーコンタクトを形成している。このため、この本実施形態に係るピラー80が、第2半導体領域に相当する。
【0096】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。