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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-161294(P2019-161294A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】可変減衰器
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/10 20060101AFI20190823BHJP
【FI】
   H03G3/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-41658(P2018-41658)
(22)【出願日】2018年3月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠
【テーマコード(参考)】
5J100
【Fターム(参考)】
5J100AA03
5J100BA10
5J100BB02
5J100BC06
5J100EA02
5J100FA01
5J100FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トランジスタをオフ状態としているときの減衰量をより低下させることができる可変減衰器を提供する。
【解決手段】可変減衰器1は、下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、入力端4aと出力端5aとを相互に接続する一対の第1の伝送線路7、8と、一方の電流端子が第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続されたトランジスタ11〜14、21〜24と、トランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間に電気的に接続され、所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路19a、19b、29a、29bと、を備える。トランジスタにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量と、第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数は、所定の周波数帯域内に存在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、
入力端と出力端とを相互に接続する第1の伝送線路と、
一方の電流端子が前記第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続されたトランジスタと、
前記トランジスタの前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に電気的に接続され、前記所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、
を備え、
前記トランジスタにおいて前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に生じる容量と、前記第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数が前記所定の周波数帯域内に存在する、可変減衰器。
【請求項2】
前記第1の伝送線路と前記基準電位線との間に直列に接続された複数のトランジスタからなるトランジスタ群を備え、
前記第2の伝送線路が設けられた前記トランジスタは、前記複数のトランジスタのうち前記第1の伝送線路に最も近いトランジスタである、請求項1に記載の可変減衰器。
【請求項3】
下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、
入力端と出力端とを相互に接続する第1の伝送線路と、
各一方の電流端子が前記第1の伝送線路と電気的に接続され、各他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続され、前記第1の伝送線路と前記基準電位線との間において互いに並列に接続された複数のトランジスタと、
前記入力端に最も近い前記トランジスタ及び前記出力端に最も近い前記トランジスタのうち少なくとも一方のトランジスタの前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に電気的に接続され、前記所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、
を備え、
前記少なくとも一方のトランジスタにおいて前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に生じる容量と、当該トランジスタに対応する前記第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数が前記所定の周波数帯域内に存在する、可変減衰器。
【請求項4】
前記第2の伝送線路が、前記入力端に最も近い前記トランジスタ及び前記出力端に最も近い前記トランジスタの双方に設けられている、請求項3に記載の可変減衰器。
【請求項5】
前記第1の伝送線路は、互いに直列に接続された複数の伝送線路要素を含み、
各伝送線路要素は、前記複数のトランジスタの各一方の電流端子間に接続されている、請求項3または4に記載の可変減衰器。
【請求項6】
下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、
入力端と出力端とを相互に接続する一対の第1の伝送線路と、
一方の電流端子が一方の前記第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続された第1のトランジスタと、
一方の電流端子が他方の前記第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が前記基準電位線と電気的に接続された第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタの前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に電気的に接続され、前記所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、
前記第2のトランジスタの前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に電気的に接続され、前記所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第3の伝送線路と、
前記入力端と前記一対の第1の伝送線路との間に接続された第1のハイブリッドカプラと、
前記一対の第1の伝送線路と前記出力端との間に接続された第2のハイブリッドカプラと、
を備え、
前記第1のトランジスタにおいて前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に生じる容量と、前記第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数、及び、前記第2のトランジスタにおいて前記一方の電流端子と前記他方の電流端子との間に生じる容量と、前記第3の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数が、前記所定の周波数帯域内に存在する、可変減衰器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リニアライザに関する技術が記載されている。この文献に記載されたリニアライザは、いわゆるT型アッテネータを構成する。具体的には、このリニアライザは、互いに直列に接続される第1及び第2の抵抗と、第1及び第2の抵抗の接続点に一端が接続される第3の抵抗と、第3の抵抗の他端に接続される可変抵抗素子としてのFETと、このFETとグランドとの間に接続されるリアクタンス素子としてのインダクタと、を備える。
【0003】
特許文献2には、高周波増幅回路に関する技術が記載されている。この文献に記載された高周波増幅回路は、高周波入力信号がゲートに供給されドレイン側に増幅された信号を生成する増幅トランジスタを備える。更に、この高周波増幅回路は、入力端子とゲートとの間の信号伝搬経路と電源との間に設けられた可変減衰器を備える。可変減衰器は、信号伝搬経路と電源との間において互いに直列に接続された減衰用キャパシタ及びスイッチトランジスタを含む。スイッチトランジスタの導通が制御されることにより、減衰量が可変に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−357927号公報
【特許文献2】特開2005−159803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伝送線路と基準電位線との間にトランジスタを接続し、伝送線路を伝搬する高周波信号を、トランジスタをオン状態とすることによって減衰する可変減衰器が知られている(例えば特許文献1,2を参照)。この可変減衰器では、トランジスタのオン状態及びオフ状態を切り替えることにより、高周波信号の減衰量を制御することができる。このような構成を備える可変減衰器において、トランジスタをオフ状態としているときには、伝送効率を高めるため、減衰量が0に近いことが望ましい。しかしながら、トランジスタをオフ状態としてもそのソース−ドレイン間容量を介して高周波信号が漏洩するので、信号の損失が発生し、減衰量が十分に低下し難いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、トランジスタをオフ状態としているときの減衰量をより低下させることができる可変減衰器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る第1の可変減衰器は、下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、入力端と出力端とを相互に接続する第1の伝送線路と、一方の電流端子が第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続されたトランジスタと、トランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間に電気的に接続され、所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、を備える。トランジスタにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量と、第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数は、所定の周波数帯域内に存在する。
【0008】
一実施形態に係る第2の可変減衰器は、下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、入力端と出力端とを相互に接続する第1の伝送線路と、各一方の電流端子が第1の伝送線路と電気的に接続され、各他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続され、第1の伝送線路と基準電位線との間において互いに並列に接続された複数のトランジスタと、入力端に最も近いトランジスタ及び出力端に最も近いトランジスタのうち少なくとも一方のトランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間に電気的に接続され、所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、を備える。少なくとも一方のトランジスタにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量と、当該トランジスタに対応する第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数は、所定の周波数帯域内に存在する。
【0009】
一実施形態に係る第3の可変減衰器は、下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域内の信号を対象とする可変減衰器であって、入力端と出力端とを相互に接続する一対の第1の伝送線路と、一方の電流端子が一方の第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続された第1のトランジスタと、一方の電流端子が他方の第1の伝送線路と電気的に接続され、他方の電流端子が基準電位線と電気的に接続された第2のトランジスタと、第1のトランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間に電気的に接続され、所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第2の伝送線路と、第2のトランジスタの一方の電流端子と他方の電流端子との間に電気的に接続され、所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する第3の伝送線路と、入力端と一対の第1の伝送線路との間に接続された第1のハイブリッドカプラと、一対の第1の伝送線路と出力端との間に接続された第2のハイブリッドカプラと、を備える。第1のトランジスタにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量と、第2の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数、及び、第2のトランジスタにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量と、第3の伝送線路とによって形成される共振回路の共振周波数は、所定の周波数帯域内に存在する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による可変減衰器によれば、トランジスタをオフ状態としているときの減衰量をより低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る可変減衰器1の構成を示す回路図である。
図2図2は、トランジスタの動作特性を示すグラフである。
図3図3は、伝送線路19a,19b,29a及び29bが設けられない場合の信号周波数と減衰量との関係の一例を示すグラフである。
図4図4は、伝送線路19a,19b,29a及び29bが設けられた本実施形態の信号周波数と減衰量との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る可変減衰器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る可変減衰器1の構成を示す回路図である。同図に示されるように、可変減衰器1は、ハイブリッドカプラ2,3と、入力端4aと、出力端5aと、伝送線路7,8と、それぞれ2以上のトランジスタ(例えばFET)からなるトランジスタ群11〜14及び21〜24と、伝送線路19a,19bと、伝送線路29a,29bとを備える。
【0014】
入力端4aには、減衰対象である高周波(Radio Frequency:RF)信号が入力される。入力端4aに入力される高周波信号の周波数は、下限周波数が10GHzを超える所定の周波数帯域に含まれる。すなわち、この可変減衰器1は、そのような高い周波数帯域内の信号を対象とする。例えば、所定の周波数帯域の下限は10GHz〜44GHzの範囲内であり、所定の周波数帯域の上限は11GHz〜45GHzの範囲内である。一実施例では、所定の周波数帯域は通信衛星に用いられるKバンドに含まれ、その下限は18GHzであり、上限は23GHzである。また、入力端4aに入力される高周波信号の最大電力は、例えば0.01W〜10Wの範囲内である。
【0015】
伝送線路7,8は、高周波信号を伝送する一対の第1の伝送線路である。伝送線路7,8は、入力端4aと出力端5aとを相互に接続する。伝送線路7,8の入力側の一端は、ハイブリッドカプラ2を介して入力端4aと電気的に接続されており、伝送線路7,8の出力側の他端は、ハイブリッドカプラ3を介して出力端5aと電気的に接続されている。これらの伝送線路7,8は、高周波の電磁波を伝送することができる、例えばマイクロストリップラインといった伝送線路である。伝送線路7は、複数(本実施形態では3つ)の伝送線路要素7a,7b及び7cを含む。これらの伝送線路要素7a,7b及び7cは、或る適切な長さを有し、互いに直列に接続されている。同様に、伝送線路8は、複数(本実施形態では3つ)の伝送線路要素8a,8b及び8cを含む。これらの伝送線路要素8a,8b及び8cは、或る適切な長さを有し、互いに直列に接続されている。
【0016】
ハイブリッドカプラ2は、入力端4aと一対の伝送線路7,8との間に接続された第1のハイブリッドカプラである。本実施形態のハイブリッドカプラ2は例えば90°カプラである。ハイブリッドカプラ2は、入力端子2aと、端子2bと、出力端子2c,2dとを有する。入力端子2aは、伝送線路を介して可変減衰器1の入力端4aに接続されており、入力端4aから高周波信号を受ける。端子2bは、伝送線路を介して端子4bに接続されている。端子4bは、例えば50Ωといった適切な抵抗値を有する抵抗素子を介して基準電位に接続される。出力端子2cは、伝送線路7の入力側の一端に接続されている。出力端子2dは、伝送線路8の入力側の一端に接続されている。ハイブリッドカプラ2は、入力端子2aに入力された高周波信号を、出力端子2c,2dに分岐する。このときの分岐比は1:1であり、出力端子2c,2dからはそれぞれ電力が1/2に減じられた高周波信号が出力される。また、出力端子2c,2dから出力される高周波信号は、互いに90°の位相差を有する。端子2bからは、伝送線路7,8において反射し出力端子2c,2dに戻った電力が合成されて出力される。これにより、入力端子2aから入力端4aへ戻る反射電力を低減できる。
【0017】
ハイブリッドカプラ3は、一対の伝送線路7,8と出力端5aとの間に接続された第2のハイブリッドカプラである。本実施形態のハイブリッドカプラ3は、ハイブリッドカプラ2と同様に例えば90°カプラである。ハイブリッドカプラ3は、入力端子3a,3bと、出力端子3cと、端子3dとを有する。入力端子3aは、伝送線路7の出力側の他端に接続されている。入力端子3bは、伝送線路8の出力側の他端に接続されている。出力端子3cは、伝送線路を介して可変減衰器1の出力端5aに接続されており、出力端5aに向けて減衰後の高周波信号を出力する。端子3dは、伝送線路を介して端子5bに接続されている。端子5bは、例えば50Ωといった適切な抵抗値を有する抵抗素子を介して基準電位に接続される。ハイブリッドカプラ3は、入力端子3a,3bから入力された高周波信号を合成して出力端子3cから出力する。このとき、入力端子3a,3bから入力される互いに90°の位相差を有する高周波信号は、その位相差が解消された状態で合成される。
【0018】
トランジスタ群11〜14は、伝送線路7と基準電位線31との間において互いに並列に接続されている。トランジスタ群11は、複数(本実施形態では3つ)のトランジスタ11a,11b及び11cからなる。トランジスタ11a,11b及び11cは、伝送線路7と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。具体的には、トランジスタ11aの一方の電流端子(例えばドレイン)は伝送線路7と電気的に接続されており、トランジスタ11aの他方の電流端子(例えばソース)はトランジスタ11b,11cを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ11bの一方の電流端子はトランジスタ11aを介して伝送線路7と電気的に接続されており、トランジスタ11bの他方の電流端子はトランジスタ11cを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ11cの一方の電流端子はトランジスタ11a,11bを介して伝送線路7と電気的に接続されており、トランジスタ11cの他方の電流端子は基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ11a〜11cの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路15a〜15cを介して共通の端子6と電気的に接続されている。端子6と各制御端子とを接続する信号線には高周波信号が漏洩しないため、伝送線路に代えて或いは伝送線路とともに、抵抗を採用することもできる。トランジスタ群11と伝送線路7との接続点(ノード)は、ハイブリッドカプラ2の出力端子2cと伝送線路要素7aとの間に位置する。
【0019】
トランジスタ群12は、複数のトランジスタ12a,12bからなる。トランジスタ群13は、複数のトランジスタ13a,13bからなる。トランジスタ群14は、複数のトランジスタ14a,14bからなる。本実施形態では、トランジスタ群12〜14を構成するトランジスタの個数はそれぞれ2つである。このように、トランジスタ群12〜14を構成するトランジスタの個数は、トランジスタ群11を構成するトランジスタの個数よりも少ない。これは、初段に位置するトランジスタ群11にはその後段に位置するトランジスタ群12〜14よりも大きな電力が印加されるからである。
【0020】
トランジスタ群14のトランジスタ14a及び14bは、伝送線路7と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。具体的には、トランジスタ14aの一方の電流端子(例えばドレイン)は伝送線路7と電気的に接続されており、トランジスタ14aの他方の電流端子(例えばソース)はトランジスタ14bを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ14bの一方の電流端子はトランジスタ14aを介して伝送線路7と電気的に接続されており、トランジスタ14bの他方の電流端子は基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ14a,14bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路18a,18bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群14と伝送線路7との接続点(ノード)は、伝送線路要素7cとハイブリッドカプラ3の入力端子3aとの間に位置する。
【0021】
トランジスタ群12,13は、トランジスタ群14と同様の構成を有する。すなわち、トランジスタ群12のトランジスタ12a及び12bは、伝送線路7と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。トランジスタ12a,12bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路16a,16bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群12と伝送線路7との接続点(ノード)は、伝送線路要素7aと伝送線路要素7bとの間に位置する。また、トランジスタ群13のトランジスタ13a及び13bは、伝送線路7と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。トランジスタ13a,13bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路17a,17bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群13と伝送線路7との接続点(ノード)は、伝送線路要素7bと伝送線路要素7cとの間に位置する。
【0022】
上記の構成を換言すると、伝送線路要素7aは、トランジスタ11aの一方の電流端子とトランジスタ12aの一方の電流端子との間に接続されている。伝送線路要素7bは、トランジスタ12aの一方の電流端子とトランジスタ13aの一方の電流端子との間に接続されている。伝送線路要素7cは、トランジスタ13aの一方の電流端子とトランジスタ14aの一方の電流端子との間に接続されている。
【0023】
トランジスタ11a〜11cのゲート幅は、トランジスタ12a,12bのゲート幅と同じかそれよりも大きい。トランジスタ12a,12bのゲート幅は、トランジスタ13a,13bのゲート幅と同じかそれよりも大きい。トランジスタ13a,13bのゲート幅は、トランジスタ14a,14bのゲート幅と同じかそれよりも大きい。そして、トランジスタ11a〜11cのゲート幅は、トランジスタ14a,14bのゲート幅よりも大きい。一例では、トランジスタ11a〜11c,12a及び12bのゲート幅はそれぞれ200μmであり、トランジスタ13a,13b,14a及び14bのゲート幅はそれぞれ800μmである。
【0024】
このようにトランジスタ群13,14のゲート幅がトランジスタ群11,12のゲート幅よりも大きいのは、下記の理由による。本実施形態では、トランジスタ群11〜14の各トランジスタの制御端子(ゲート)に対して端子6から共通のゲートバイアスが付与される。一実施例では、オン状態のゲート電圧とオフ状態のゲート電圧との中間値に相当する電圧がゲートバイアスとして設定される。オン状態のドレイン電流の1/2程度のドレイン電流が流れる条件下においてトランジスタの歪みが最も改善されるからである。すると、トランジスタがオン状態になったときにドレイン−ソース間抵抗Rdsが比較的大きな値で残ってしまう。トランジスタ群13,14のゲート幅を大きくすることにより、等価的にオン状態におけるドレイン−ソース間抵抗Rdsを低減することができる。
【0025】
伝送線路19a,19bは、本実施形態における第2の伝送線路である。伝送線路19a,19bは、例えばマイクロストリップラインといった伝送線路からなり、前述した所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する。伝送線路19a,19bのインダクタンスは、伝送線路19a,19bの幅および長さに依存する。
【0026】
本実施形態の伝送線路19aは、トランジスタ群11〜14のうち入力端4aに最も近い(換言すると、出力端5aから最も離れた)トランジスタ群11に設けられている。更に、伝送線路19aは、トランジスタ群11を構成する複数のトランジスタ11a〜11cのうち伝送線路7に最も近いトランジスタ11a(第1のトランジスタ)に設けられている。具体的には、伝送線路19aは、トランジスタ11aに対して並列に、トランジスタ11aの一方の電流端子(ドレイン)と他方の電流端子(ソース)との間に電気的に接続されている。伝送線路19aのインダクタンスは、トランジスタ11aにおいて一方の電流端子と他方の電流端子との間に生じる容量(ドレイン−ソース間容量Cds)と、伝送線路19aとによって形成される共振回路の共振周波数ωr1が、前述した所定の周波数帯域内に存在するように決定される。なお、共振周波数ωr1、ドレイン−ソース間容量Cds及び伝送線路19aのインダクタンスLは、ωr1・Cds・L=1の関係を満たす。
【0027】
また、本実施形態の伝送線路19bは、トランジスタ群11〜14のうち出力端5aに最も近い(換言すると、入力端4aから最も離れた)トランジスタ群14に設けられている。更に、伝送線路19bは、トランジスタ群14を構成する複数のトランジスタ14a,14bのうち伝送線路7に最も近いトランジスタ14a(第1のトランジスタ)に設けられている。具体的には、伝送線路19bは、トランジスタ14aに対して並列に、トランジスタ14aの一方の電流端子(ドレイン)と他方の電流端子(ソース)との間に電気的に接続されている。伝送線路19bのインダクタンスは、トランジスタ14aのドレイン−ソース間容量Cdsと、伝送線路19bとによって形成される共振回路の共振周波数ωr2が、前述した所定の周波数帯域内に存在するように決定される。
【0028】
なお、上記の共振周波数ωr1,ωr2は、前述した所定の周波数帯域内において上限周波数若しくはその近傍に設定されてもよい。例えば、所定の周波数帯域が18GHz〜23GHzである場合、共振周波数ωr1,ωr2は22.9GHz付近に設定されてもよい。
【0029】
トランジスタ群21〜24は、伝送線路8と基準電位線31との間において互いに並列に接続されている。トランジスタ群21は、複数(本実施形態では3つ)のトランジスタ21a,21b及び21cからなる。トランジスタ21a,21b及び21cは、伝送線路8と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。具体的には、トランジスタ21aの一方の電流端子(例えばドレイン)は伝送線路8と電気的に接続されており、トランジスタ21aの他方の電流端子(例えばソース)はトランジスタ21b,21cを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ21bの一方の電流端子はトランジスタ21aを介して伝送線路8と電気的に接続されており、トランジスタ21bの他方の電流端子はトランジスタ21cを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ21cの一方の電流端子はトランジスタ21a,21bを介して伝送線路8と電気的に接続されており、トランジスタ21cの他方の電流端子は基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ21a〜21cの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路25a〜25cを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群21と伝送線路8との接続点(ノード)は、ハイブリッドカプラ2の出力端子2dと伝送線路要素8aとの間に位置する。
【0030】
トランジスタ群22は、複数のトランジスタ22a,22bからなる。トランジスタ群23は、複数のトランジスタ23a,23bからなる。トランジスタ群24は、複数のトランジスタ24a,24bからなる。本実施形態では、トランジスタ群22〜24を構成するトランジスタの個数はそれぞれ2つである。このように、トランジスタ群22〜24を構成するトランジスタの個数は、トランジスタ群21を構成するトランジスタの個数よりも少ない。これは、前述したトランジスタ群11〜14と同様の理由による。
【0031】
トランジスタ群24のトランジスタ24a及び24bは、伝送線路8と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。具体的には、トランジスタ24aの一方の電流端子(例えばドレイン)は伝送線路8と電気的に接続されており、トランジスタ24aの他方の電流端子(例えばソース)はトランジスタ24bを介して基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ24bの一方の電流端子はトランジスタ24aを介して伝送線路8と電気的に接続されており、トランジスタ24bの他方の電流端子は基準電位線31と電気的に接続されている。トランジスタ24a,24bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路28a,28bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群24と伝送線路8との接続点(ノード)は、伝送線路要素8cとハイブリッドカプラ3の入力端子3bとの間に位置する。
【0032】
トランジスタ群22,23は、トランジスタ群24と同様の構成を有する。すなわち、トランジスタ群22のトランジスタ22a及び22bは、伝送線路8と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。トランジスタ22a,22bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路26a,26bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群22と伝送線路8との接続点(ノード)は、伝送線路要素8aと伝送線路要素8bとの間に位置する。また、トランジスタ群23のトランジスタ23a及び23bは、伝送線路8と基準電位線31との間において互いに直列に接続されている。トランジスタ23a,23bの各制御端子(ゲート)は、それぞれ伝送線路27a,27bを介して共通の端子6と電気的に接続されている。トランジスタ群23と伝送線路8との接続点(ノード)は、伝送線路要素8bと伝送線路要素8cとの間に位置する。
【0033】
上記の構成を換言すると、伝送線路要素8aは、トランジスタ21aの一方の電流端子とトランジスタ22aの一方の電流端子との間に接続されている。伝送線路要素8bは、トランジスタ22aの一方の電流端子とトランジスタ23aの一方の電流端子との間に接続されている。伝送線路要素8cは、トランジスタ23aの一方の電流端子とトランジスタ24aの一方の電流端子との間に接続されている。
【0034】
トランジスタ21a〜21cのゲート幅は、前述したトランジスタ11a〜11cのゲート幅と同じである。トランジスタ22a,22bのゲート幅は、トランジスタ12a,12bのゲート幅と同じである。トランジスタ23a,23bのゲート幅は、トランジスタ13a,13bのゲート幅と同じである。トランジスタ24a,24bのゲート幅は、トランジスタ14a,14bのゲート幅と同じである。
【0035】
伝送線路29a,29bは、本実施形態における第3の伝送線路である。伝送線路29a,29bは、例えばマイクロストリップラインといった伝送線路からなり、前述した所定の周波数帯域においてインダクタとして機能する。伝送線路29a,29bのインダクタンスは、伝送線路29a,29bの幅および長さに依存する。
【0036】
本実施形態の伝送線路29aは、トランジスタ群21〜24のうち入力端4aに最も近い(換言すると、出力端5aから最も離れた)トランジスタ群21に設けられている。更に、伝送線路29aは、トランジスタ群21を構成する複数のトランジスタ21a〜21cのうち伝送線路8に最も近いトランジスタ21a(第2のトランジスタ)に設けられている。具体的には、伝送線路29aは、トランジスタ21aに対して並列に、トランジスタ21aの一方の電流端子(ドレイン)と他方の電流端子(ソース)との間に電気的に接続されている。伝送線路29aのインダクタンスは、トランジスタ21aのドレイン−ソース間容量Cdsと、伝送線路29aとによって形成される共振回路の共振周波数ωr3が、前述した所定の周波数帯域内に存在するように決定される。
【0037】
また、本実施形態の伝送線路29bは、トランジスタ群21〜24のうち出力端5aに最も近い(換言すると、入力端4aから最も離れた)トランジスタ群24に設けられている。更に、伝送線路29bは、トランジスタ群24を構成する複数のトランジスタ24a,24bのうち伝送線路8に最も近いトランジスタ24a(第2のトランジスタ)に設けられている。具体的には、伝送線路29bは、トランジスタ24aに対して並列に、トランジスタ24aの一方の電流端子(ドレイン)と他方の電流端子(ソース)との間に電気的に接続されている。伝送線路29bのインダクタンスは、トランジスタ24aのドレイン−ソース間容量Cdsと、伝送線路29bとによって形成される共振回路の共振周波数ωr4が、前述した所定の周波数帯域内に存在するように決定される。
【0038】
なお、上記の共振周波数ωr3,ωr4は、前述した共振周波数ωr1,ωr2と同様に、所定の周波数帯域内において上限周波数若しくはその近傍に設定されてもよい。例えば、所定の周波数帯域が28GHz〜23GHzである場合、共振周波数ωr3,ωr4は22.9GHz付近に設定されてもよい。一実施例では、共振周波数ωr1〜ωr4は互いに等しい。
【0039】
以上の構成を備える可変減衰器1においては、端子6に入力される制御電圧が或るレベルに設定されると、トランジスタ群11〜14,21〜24の全てのトランジスタがオフ状態となる。従って、入力端4aから入力された高周波信号は比較的低い減衰量でもって出力端5aに到達する。また、端子6に入力される制御電圧が別のレベルに設定されると、トランジスタ群11〜14,21〜24の全てのトランジスタがオン状態となる。従って、入力端4aから入力された高周波信号の殆どはトランジスタ群11〜14,21〜24を介して基準電位線31に流れ込み、出力端5aに到達する高周波信号は僅かとなる。可変減衰器1においては、このようにして減衰量を可変とすることができる。
【0040】
図2は、トランジスタの動作特性を示すグラフである。横軸はドレイン電圧を示し、縦軸はドレイン電流を示す。グラフG11は、トランジスタ群11〜14,21〜24の各トランジスタをオン状態(すなわち減衰動作、ゲート−ソース間電圧Vgs=0V)としたときの動作特性を示す。グラフG12は、トランジスタ群11〜14,21〜24の各トランジスタをオフ状態(すなわち非減衰動作、ゲート−ソース間電圧Vgs=−5V)としたときの動作特性を示す。図1の回路図から明らかなように、各トランジスタのドレインバイアスVdは0Vであり、各トランジスタはゲート電圧のみによって駆動される。従って、可変減衰器1の実際の減衰量は、オフ状態(グラフG12)での∂Id/∂Vd|(Vd=0)と、オン状態(グラフG11)での∂Id/∂Vd|(Vd=0)との差となる。なお、図中には、ドレインバイアスVdが0であるときのオン状態の動作特性の傾き(∂Id/∂Vd)を表す直線G13が示されている。
【0041】
以上に説明した本実施形態の可変減衰器1によって得られる効果について説明する。図3は、伝送線路19a,19b,29a及び29bが設けられない場合の信号周波数と減衰量との関係の一例を示すグラフである。同図において、横軸は信号周波数(単位:GHz)を示し、縦軸は減衰量(単位:dB)を示す。また、グラフG21は、トランジスタ群11〜14,21〜24の各トランジスタをオフ状態(すなわち非減衰動作、ゲート−ソース間電圧Vgs=−5V)としたときの減衰量を表し、グラフG22は、トランジスタ群11〜14,21〜24の各トランジスタをオン状態(すなわち減衰動作、ゲート−ソース間電圧Vgs=0V)としたときの減衰量を表す。図中の帯域Aは、減衰対象である高周波信号の周波数帯域が18GHz〜23GHzである場合の、設計周波数帯域(17.5GHz〜23.5GHz)を示す。
【0042】
グラフG22に示されるように、減衰動作時には、設計周波数帯域Aにおける減衰量は−32dB〜−36dBとなり、−30dBを超える十分な減衰量が得られている。しかしながら、グラフG21に示されるように、非減衰動作時においても、設計周波数帯域Aにおける減衰量が−1.6dB〜−2.8dBとなっており、理想である0dBから大きく離れている。これは、トランジスタをオフ状態としてもそのドレイン−ソース間容量Cdsを介して高周波信号が漏洩し、信号の損失が発生することが原因であると考えられる。この現象は、非減衰動作時における伝送効率の低下に繋がる。
【0043】
これに対し、本実施形態においては、トランジスタ群11〜14,21〜24を構成する複数のトランジスタのうち一部のトランジスタ11a,14a,21a及び24aそれぞれに、対象の周波数帯域においてインダクタとして機能する伝送線路19a,19b,29a及び29bそれぞれが設けられている。そして、トランジスタ11a,14a,21a及び24aのドレイン−ソース間容量Cdsと伝送線路19a,19b,29a及び29bとによって形成される共振回路の共振周波数ωr1〜ωr4が、当該周波数帯域内に存在する。共振周波数ωr1〜ωr4において当該共振回路は理論上無限大のインピーダンスを示す(但し、伝送線路19a,19b,29a及び29bとトランジスタ11a,14a,21a及び24aのドレイン−ソース間とに抵抗値が存在するので、インピーダンスは有限値となる)。また、共振周波数ωr1〜ωr4付近においてもインピーダンスが増大する。従って、対象の周波数帯域において、ドレイン−ソース間容量Cdsを介した高周波信号の漏洩を低減することができる。
【0044】
図4は、伝送線路19a,19b,29a及び29bが設けられた本実施形態の信号周波数と減衰量との関係の一例を示すグラフである。横軸は信号周波数(単位:GHz)を示し、縦軸は減衰量(単位:dB)を示す。グラフG31は非減衰動作時の減衰量を表し、グラフG32は減衰動作時の減衰量を表す。なお、この例では、共振周波数ωr1〜ωr4が29GHzとなるように伝送線路19a,19b,29a及び29bの幅及び長さを設定した。すなわち、伝送線路19a,29aの幅を10μmとし、長さを220μmとした。また、伝送線路19b,29bの幅を10μmとし、長さを320μmとした。この場合、伝送線路19a,29aのインダクタンスは等価的に0.18nHとなり、伝送線路19b,29bのインダクタンスは等価的に0.26nHとなる。本実施形態では、トランジスタ14a,24aのゲート幅がトランジスタ11a,21aのゲート幅よりも大きいことから、トランジスタ14a,24aのドレイン−ソース間容量Cdsはトランジスタ11a,21aのドレイン−ソース間容量Cdsよりも大きくなる。故に、共振周波数ωr1〜ωr4を等しくする場合には、伝送線路19b,29bのインダクタンスは伝送線路19a,29aのインダクタンスよりも大きくなる。
【0045】
グラフG32に示されるように、本実施形態においても、減衰動作時には設計周波数帯域Aにおける減衰量が−32dB〜−36dBとなり、−30dBを超える十分な減衰量が得られる。加えて、グラフG31に示されるように、非減衰動作時においては、設計周波数帯域Aにおける減衰量が−1.6dB〜−2.1dBとなっており、図3と比較して理想である0dBに近づいている。このように、本実施形態によれば、伝送線路19a,19b,29a及び29bを設けることによって、非減衰動作時における減衰量(信号損失)を低減し、伝送効率を向上することができる。
【0046】
また、本実施形態のように、トランジスタ群11〜14,21〜24が、伝送線路7,8と基準電位線31との間において互いに直列に接続された二以上のトランジスタをそれぞれ有してもよい。これにより、各トランジスタのドレイン−ソース間電圧Vds、ゲート−ソース間電圧Vgs、及びゲート−ドレイン間電圧Vgdを小さく抑えて、大電力の高周波信号の減衰を可能にできる。
【0047】
また、インダクタとして機能する伝送線路は全てのトランジスタに設けられることで最大の効果を発揮できるが、回路の小型化を妨げるという問題もある。そこで、本実施形態のように、トランジスタ群11,14,21及び24において伝送線路7,8に最も近いトランジスタ11a,14a,21a及び24aに伝送線路19a,19b,29a及び29bを設けてもよい。伝送線路7,8に最も近いトランジスタは最も大きな電力を受けるので、高周波信号がより漏洩し易い。インダクタとして機能する伝送線路を該トランジスタに選択的に配置することによって、小さな回路構成でもって高周波信号の漏洩を効果的に低減することができる。
【0048】
また、本実施形態のように、伝送線路19a,29aは、入力端4aに最も近い(初段の)トランジスタ群11,21に設けられてもよい。可変減衰器1を構成する配線基板において、入力端4aに最も近いトランジスタ群11,21のドレインは、ハイブリッドカプラ2の出力端子2c,2dに最も近く配置されることが多く、その場合、当該ドレインは出力端子2c,2dに晒される(露出する)。これに対し、トランジスタ群12,13,22及び23のドレインとハイブリッドカプラ2との間には伝送線路が介在することが多く、これらのドレインは、伝送線路によって出力端子2c,2d及び入力端子3a,3bから或る程度マスクされる。従って、上記のように入力端4aに最も近いトランジスタ群11,21に伝送線路19a,29aを選択的に配置することによって、小さな回路構成でもって高周波信号の漏洩を効果的に低減することができる。
【0049】
また、本実施形態のように、伝送線路19b,29bは、出力端5aに最も近い(終段の)トランジスタ群14,24に設けられてもよい。出力端5aに最も近いトランジスタ群14,24のドレインとハイブリッドカプラ3の入力端子3a,3bとの間には、伝送線路が介在することが多い。しかしながら、終段のトランジスタ群14,24にはゲート幅が比較的大きいトランジスタが用いられるので、ドレイン−ソース間容量Cdsも大きくなり、高周波信号がより漏洩し易い。従って、伝送線路19b,29bを終段のトランジスタ群14,24に選択的に配置することにより、小さな回路構成でもって高周波信号の漏洩を効果的に低減することができる。
【0050】
なお、本実施形態では初段のトランジスタ群11,21と終段のトランジスタ群14,24との双方に伝送線路19a,29a,19b及び29bが設けられているが、インダクタとして機能する伝送線路は、初段のトランジスタ群11,21と終段のトランジスタ群14,24とのいずれか一方にのみ設けられてもよい。また、各トランジスタ11a〜14b、21a〜24bの制御端子と共通の端子6との間に接続されている伝送線路15a〜18b、25a〜28bは、伝送線路7、8を流れる高周波信号が各トランジスタ11a〜14b、21a〜24bのドレインから制御端子を経て共通の端子6に漏洩することを防ぐ。この伝送線路15a〜18b、25a〜28bには大きな電流が流れないので、伝送線路15a〜18b、25a〜28bに代えて抵抗が設けられてもよい。
【0051】
本発明による可変減衰器は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、トランジスタ群11〜14,21〜24が伝送線路7,8と基準電位線31との間において互いに直列に接続された二以上のトランジスタをそれぞれ有しているが、各トランジスタ群11〜14,21〜24は単一のトランジスタによって構成されてもよい。また、上記実施形態では、トランジスタ群11,14,21及び24において伝送線路7,8に最も近いトランジスタ11a,14a,21a及び24aに伝送線路19a,19b,29a及び29bが設けられているが、本発明における第2及び第3の伝送線路は、第1の伝送線路から離れたトランジスタに設けられてもよく、各トランジスタ群を構成する全てのトランジスタに設けられてもよい。また、上記実施形態では、伝送線路19a,19b,29a及び29bが、入力端4aに最も近いトランジスタ群11,21、及び出力端5aに最も近いトランジスタ群14,24にのみ設けられているが、本発明における第2及び第3の伝送線路は、他のトランジスタ群12,13,22及び23のうち少なくとも1つに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…可変減衰器、2,3…ハイブリッドカプラ、2a…入力端子、2b…端子、2c,2d…出力端子、3a,3b…入力端子、3c…出力端子、3d…端子、4a…入力端、4b…端子、5a…出力端、5b…端子、6…端子、7,8…伝送線路、7a〜7c…伝送線路要素、8a〜8c…伝送線路要素、11〜14,21〜24…トランジスタ群、11a〜11c,12a,12b,13a,13b,14a,14b,21a〜21c,22a,22b,23a,23b,24a,24b…トランジスタ、15a〜15c,16a,16b,17a,17b,18a,18b,19a,19b,25a〜25c,26a,26b,27a,27b,28a,28b,29a,29b…伝送線路、31…基準電位線、A…設計周波数帯域。
図1
図2
図3
図4