【課題】移動電極ユニットの各々を横方向に移動可能な状態とすることによって、構造が簡素で、製作が容易で、低コストでありながら、大電力の安定給電が可能であり、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】固定電極装置と、固定電極装置に対して移動可能な移動電極装置とを備え、電界結合方式によって、固定電極装置と移動電極装置との間での電力の伝達が可能な無接点給電装置であって、固定電極装置は、前後方向に延在する少なくとも1つの固定電極板を含み、移動電極装置は、固定電極板に沿って前後方向に移動可能であるとともに、固定電極板の板厚方向に移動可能な少なくとも1つの移動電極ユニットを含み、移動電極ユニットは、固定電極板の両側面にそれぞれ対向する一対の移動電極板と、一対の移動電極板同士の間隔を一定に保持するとともに、一対の移動電極板同士を導通させるスペーサ部材とを含む。
(a)固定電極装置と、該固定電極装置に対して移動可能な移動電極装置とを備え、電界結合方式によって、前記固定電極装置と移動電極装置との間での電力の伝達が可能な無接点給電装置であって、
(b)前記固定電極装置は、前後方向に延在する少なくとも1つの固定電極板を含み、
(c)前記移動電極装置は、前記固定電極板に沿って前後方向に移動可能であるとともに、前記固定電極板の板厚方向に移動可能な少なくとも1つの移動電極ユニットを含み、
(d)該移動電極ユニットは、前記固定電極板の両側面にそれぞれ対向する一対の移動電極板と、該一対の移動電極板同士の間隔を一定に保持するとともに、該一対の移動電極板同士を導通させるスペーサ部材とを含むことを特徴とする無接点給電装置。
隣接する前記移動電極ユニット同士の間には、前記固定電極板の板厚方向に伸縮可能であって、隣接する前記移動電極ユニット同士を導通させる弾性導電部材が配設されている請求項4に記載の無接点給電装置。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機器、輸送機器、家庭用機器等の各種の機器において、相互に移動する機器同士を電気的に接続して電力を伝達するために、物理的に接触する接点を使用することなく、互いに接触しない状態で電力の伝達が可能な無接点給電装置又は非接触給電装置と称される給電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図10は従来の無接点給電装置を示す図である。なお、図において、(a)は斜視図、(b)は模式断面図である。
【0004】
図において、951は、直線状に延在する一対の固定電極であり、互いに平行となるように配設されている。そして、921は、直線状に延在するガイドビームであり、一対の固定電極951の中間に、該固定電極951と平行となるように配設されている。前記固定電極951及びガイドビーム921は、図示されない作業機器の本体部に固定されている。
【0005】
また、851は、各固定電極951に沿ってスライド可能な一対の移動電極である。そして、811は、ガイドビーム921に沿ってスライド可能な移動ヘッドであり、前記移動電極851同士を連結している。前記移動ヘッド811には、図示されない作業機器の作業ヘッドが取付けられている。そして、該作業ヘッドには、前記本体部から、前記固定電極951及び移動電極851を介して、電界結合方式による給電が行われる。
【0006】
図10(b)に示されるように、前記固定電極951は、櫛歯状に配設された複数の固定電極板954を備える。各固定電極板954は、直線状に延在する細長い帯状の平板であり、互いに平行となるように所定の間隔を開けて配設されている。また、前記移動電極851は、櫛歯状に配設された複数の移動電極板854を備える。各移動電極板854は、矩形の平板であり、互いに平行となるように所定の間隔を開けて配設されている。そして、前記固定電極951と移動電極851は、固定電極板954と移動電極板854とが相互に入れ子状となるように、すなわち、隣接する固定電極板954同士の間隔の各々の中に各移動電極板854が入込むように、組合されている。
【0007】
なお、このように組合された状態において、固定電極板954と移動電極板854との間には、微少な間隙が存在し、固定電極板954と移動電極板854とは、互いに接触していない。また、前記移動ヘッド811が、図示されないリニアガイド装置を介して、ガイドビーム921に沿ってスライドするので、移動電極851が固定電極951に沿ってスライドしても、固定電極板954と移動電極板854との間の微少な間隙が維持され、固定電極板954と移動電極板854との非接触状態が維持される。さらに、固定電極板954と移動電極板854とが対向する面の面積が広いので、電界結合方式で機能する電極面積が広くなり、大電力の給電が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は第1の実施の形態における無接点給電装置の斜視図、
図2は第1の実施の形態における無接点給電装置の正面図、
図3は第1の実施の形態における無接点給電装置のトロリーとレールとを分離した状態を示す斜視図、
図4は第1の実施の形態における無接点給電装置のトロリーの部分分解図、
図5は第1の実施の形態における無接点給電装置のトロリーの組立工程を示す図、
図6は第1の実施の形態における無接点給電装置の静電容量と電極間隔との関係を示す図である。
【0022】
図において、1は本実施の形態における移動電極装置としてのトロリー(Trolley )であって、本実施の形態における固定電極装置としてのレール(Rail)101と非接触の状態を維持しながら、
図1及び2に示されるように、該レール101とスライド可能に組合されて、該レール101との間で電力の伝達を行う。前記トロリー1とレール101とは、本実施の形態における無接点給電装置を構成する。該無接点給電装置は、産業機器、輸送機器、家庭用機器等の各種の機器において、電源と電力消費機器とを接続する電力ラインを接続するために使用することができ、具体的には、電界結合方式によって、交流電流(交番電流)の給電を非接触で行う。
【0023】
なお、前記トロリー1及びレール101のいずれが電源に接続されてもよく、いずれが電力消費機器に接続されてもよいが、本実施の形態においては、便宜上、トロリー1が電力消費機器に接続され、レール101が電源に接続されている、すなわち、トロリー1が電力消費側であってレール101が電源側であるものとして説明する。
【0024】
また、本実施の形態において、トロリー1及びレール101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記トロリー1及びレール101の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0025】
本実施の形態において、レール101は、前後方向(X軸方向)に直線的に延在する細長い部材であって、産業機器、輸送機器、家庭用機器等の各種の機器の本体に固定されているものとする。また、図示されない導電ラインによって電源に電気的に接続されているものとする。なお、前記レール101は、特に限定されるものではなく、長尺の部材であるが、描画の都合上、
図1及び2に示される例においては、前後方向の寸法が比較的短くなっている。
【0026】
そして、前記レール101は、前後方向(X軸方向)に直線的に延在する細長い帯板状の基板152と、該基板152の上面152aから上方(Z軸正方向)に垂直に延在するとともに前後方向に直線的に延在する細長い帯板状の固定電極板としてガイド板154とを含んでいる。前記基板152及びガイド板154は、例えば、アルミニウム合金等の導電性の金属から成る部材であるが、導電性であれば、いかなる種類の材料から成るものであってもよい。なお、前記ガイド板154の数は、いくつであってもよく、例えば、1枚であってもよく、2枚であってもよく、4枚以上であってもよいが、ここでは、便宜上、
図1及び2に示されるように、3枚である場合について説明する。また、すべてのガイド板154は互いに導通しているものとする。さらに、基板152とガイド板154とは別個に作製された部材であって、ボルト等の接続部材によって相互に物理的かつ電気的に接続されたものであってもよいが、ここでは、
図1及び2に示されるように、一体的に作製された部材であるものとして説明する。
【0027】
正面又は背面から観て(X軸の前後方向から観て)、ガイド板154は、櫛歯状に配設され、基板152の上面152aから上方に直線的に、かつ、互いに平行に延在する。また、上面又は下面から観て(Z軸の前後方向から観て)、ガイド板154は、前後方向(X軸方向)に直線的に、かつ、互いに平行に延在する。したがって、各ガイド板154の上面154aは、基板152の上面152aと平行であり、かつ、互いに面一である。また、各ガイド板154の側面154bは、基板152の上面152aに対して垂直な平面であって、かつ、互いに平行である。さらに、各ガイド板154の外形及び寸法(高さ、幅及び長さ)は、同一である。また、隣接するガイド板154同士の間に形成される各ガイド溝153の外形及び寸法(高さ、幅及び長さ)も、同一である。
【0028】
なお、前記レール101の各部におけるトロリー1の各部と対向する面、すなわち、前記レール101の表面における少なくとも基板152の上面152a、並びに、ガイド板154の上面154a及び側面154bには、絶縁性材料(誘電体)から成る被膜が形成されている。例えば、基板152及びガイド板154がアルミニウム合金から成る場合、前記被膜は、アルマイトの被膜であることが望ましい。これにより、仮にトロリー1の一部がレール101の表面に接触した場合であっても、トロリー1とレール101との導通を回避することができる。
【0029】
本実施の形態において、トロリー1は、
図1及び2に示されるように、レール101と組合された状態において、該レール101に沿ってスライドし得る部材である。そして、前記トロリー1は、産業機器、輸送機器、家庭用機器等の各種の機器において、本体に対してスライド可能な図示されないスライド部材に固定されているものとする。これにより、トロリー1は、
図1及び2に示されるように、前記本体に固定されたレール101と組合された状態で、該レール101の前後方向(X軸方向)にスライドすることができる。また、図示されない導電ラインによって、モータ、照明等の電力消費機器に電気的に接続されているものとする。
【0030】
そして、前記トロリー1は、複数の移動電極ユニット51を含んでいる。該移動電極ユニット51の各々は、前記レール101の各ガイド板154に対応し、対応するガイド板154との間で、電界結合方式によって、電力の伝達を行う。前記トロリー1が含む移動電極ユニット51の数は、いくつであってもよく、例えば、1つであってもよく、2つであってもよく、4つ以上であってもよいが、ここでは、便宜上、
図1及び2に示されるガイド板154の数に合わせて、3つである場合について説明する。前記移動電極ユニット51は、ユニット接続部材としての導電性の金属から成る長尺リベット62によって相互に物理的かつ電気的に接続されているが、隣接する移動電極ユニット51同士の間には僅かな間隙57が存在し、それぞれが、ガイド板154の板厚方向、すなわち、横方向(Y軸方向)に移動可能にフローティングされた状態で、接続されている。
【0031】
各移動電極ユニット51は、スペーサ部材52と、該スペーサ部材52の横方向両側に配設された一対の移動電極板として板状のスライド板54とを含んでいる。前記スペーサ部材52及びスライド板54は、例えば、アルミニウム合金等の導電性の金属から成る部材であるが、導電性であれば、いかなる種類の材料から成るものであってもよい。一対のスライド板54は、スペーサ部材52によって互いに導通する。また、スペーサ部材52と一対のスライド板54とは、スライド板接続部材としての導電性の金属から成る短尺リベット61によって相互に物理的かつ電気的に接続されている。なお、スペーサ部材52と一対のスライド板54とは、相互に移動不能となるにように、物理的に強固に接続されている。
【0032】
具体的には、前記スペーサ部材52には、該スペーサ部材52を厚さ方向、すなわち、横方向に貫通する1つの長尺リベット通過孔52eと2つの短尺リベット通過孔52dとが形成されている。また、各スライド板54には、該スライド板54を厚さ方向、すなわち、横方向に貫通する1つの長尺リベット通過孔54eと2つの短尺リベット通過孔54dとが形成されている。なお、スペーサ部材52の長尺リベット通過孔52e及び短尺リベット通過孔52dと、スライド板54の長尺リベット通過孔54e及び短尺リベット通過孔54dとは、互いに対応する位置に形成されている。
【0033】
図5に示されるように、スペーサ部材52の横方向両側の側面54bに各スライド板54の内側面54b1を当接させ、かつ、スペーサ部材52の短尺リベット通過孔52dと、スライド板54の短尺リベット通過孔54dとを一致させて、短尺リベット61の軸部材61aをスペーサ部材52の短尺リベット通過孔52dとスライド板54の短尺リベット通過孔54dとに挿入する。その後、短尺リベット61の軸部材61aの端部を塑性変形させて軸部材61aより大径の頭部61bを形成し、スペーサ部材52と一対のスライド板54とを締結する。なお、前記頭部61bをナットに置換えることもできる。また、ナット以外であっても、軸部材61aが抜けない手段であれば、いかなるものであってもよい。これにより、スペーサ部材52と一対のスライド板54とが物理的、かつ、電気的に確実に接続された移動電極ユニット51を得ることができる。
【0034】
正面又は背面から観て(X軸の前後方向から観て)、各移動電極ユニット51は、門型又はU字型の形状を有し、一対のスライド板54は、スペーサ部材52の下面52aの横方向両端から下方(Z軸負方向)に直線的に、かつ、互いに平行に延在する。また、上面又は下面から観て(Z軸の前後方向から観て)、スライド板54は、前後方向(X軸方向)に直線的に、かつ、互いに平行に延在する。したがって、各スライド板54の下面54aは、スペーサ部材52の下面52aと平行である。なお、スライド板54の上面54cとスペーサ部材52の上面52cとは、互いに面一であるが、必ずしも面一でなくてもよい。また、各スライド板54の内側面54b1は、スペーサ部材52の下面52aに対して垂直な平面であって、かつ、互いに平行である。さらに、各スライド板54の外側面54b2は、内側面54b1と平行であることが望ましい。なお、スライド板54の内側面54b1と外側面54b2とを統合的に説明する場合には、スライド板54の側面54bとして説明する。さらに、各スライド板54の外形及び寸法(高さ、幅及び長さ)は、ほぼ同一である。また、対向するスライド板54同士の間には、スライド溝53が形成される。なお、各移動電極ユニット51の各部の外形及び寸法(高さ、幅及び長さ)は、すべてほぼ同一である。
【0035】
さらに、
図5に示されるように、複数(図に示される例においては、3つ)の移動電極ユニット51を並列に配設し、各移動電極ユニット51の長尺リベット通過孔52eを一致させて、長尺リベット62の軸部材62aをすべての移動電極ユニット51の長尺リベット通過孔54eに挿入する。この際、前記軸部材62aは、長尺リベット通過孔54eにルーズフィット(隙間嵌め)された状態となる。その後、長尺リベット62の軸部材62aの端部を塑性変形させて軸部材62aより大径の頭部62bを形成し、すべての移動電極ユニット51を連結する。なお、前記頭部62bをナットに置換えることもできる。また、ナット以外であっても、移動電極ユニット51が抜けない手段であれば、いかなるものであってもよい。したがって、すべての移動電極ユニット51は、ともに、レール101の前後方向にスライドすることができる。この際、隣接する移動電極ユニット51同士の間にはわずかな間隙57が存在し、各移動電極ユニット51が相互に独立して横方向に移動可能となるように、各移動電極ユニット51は長尺リベット62にルーズフィットされた状態で緩やかに連結される。これにより、トロリー1を得ることができる。
【0036】
なお、すべての移動電極ユニット51が確実に電気的に接続されている場合には、電力消費機器に一端が接続されている3本の導電ラインのそれぞれの他端を各移動電極ユニット51に接続してもよいし、電力消費機器に一端が接続されている1本の導電ラインの他端をいずれか1つの移動電極ユニット51に接続してもよいが、移動電極ユニット51の電気的接続が必ずしも確実でない場合には、電力消費機器に一端が接続されている3本の導電ラインのそれぞれの他端を各移動電極ユニット51に接続することが望ましい。
【0037】
前記トロリー1及びレール101を組合せた状態において、トロリー1の各部とレール101の各部とは、非接触となっている。具体的には、
図1及び2に示されるように、トロリー1の各移動電極ユニット51が、レール101における対応するガイド板154に跨がる状態となり、各移動電極ユニット51のスライド溝53内に対応するガイド板154が非接触の状態で進入する。また、レール101における各ガイド溝153内に対応する移動電極ユニット51のスライド板54が非接触の状態で進入する。すなわち、互いに対向するスライド板54の内側面54b1とガイド板154の側面154bとの間に間隙が存在し、互いに対向するスペーサ部材52の下面52aとガイド板154の上面154aとの間に間隙が存在し、かつ、互いに対向するスライド板54の下面54aと基板152の上面152aとの間に間隙が存在する。なお、各移動電極ユニット51の各部におけるレール101の各部と対向する面には、前記レール101の表面と同様に、絶縁性材料(誘電体)から成る被膜が形成されていてもよい。
【0038】
このように、トロリー1及びレール101を組合せた状態においてレール101に交流電流が供給されると、電界結合方式によって、トロリー1に給電が行われる。具体的には、対向する面の面積が広い、ガイド板154の側面154bとスライド板54の内側面54b1とが主たる電極面として機能する。より詳細には、ガイド板154の側面154b及び前記ガイド板154の両側のスライド板54の内側面54b1において、横方向から観て(Y軸の前後方向から観て)互いに重なり合う部分が、主に、電界結合方式での電極面として機能する。なお、レール101の各部及びトロリー1の各部において、互いに対向する面も、電界結合方式での電極面として機能し得るが、ガイド板154の側面154b及びスライド板54の内側面54b1における互いに対向する面と比較すると、面積が小さく、電極面として機能も小さいので、ここでは、ガイド板154の側面154b及びスライド板54の内側面54b1における互いに対向する面について説明し、他の部分の面についての電極面としての機能に関する説明は省略する。
【0039】
ここで、
図2に示されるように、ガイド板154の側面154bと該側面154bに対向するスライド板54の内側面54b1との間隙、すなわち、電極間隙をdとすると、電極面として機能する前記側面154bと内側面54b1との間の静電容量Cは、一般的に、次の式(1)で表される。
C=ε(S/d) ・・・式(1)
なお、εは電極間隙の誘電率、Sは電極面積である。
【0040】
前記式(1)から、静電容量Cと電極間隙dとの関係は、
図6における線Aで示されるように変化する。このように、電極間隙dが増大するほど静電容量Cが低下するので、ガイド板154の側面154bと該側面154bに対向するスライド板54の内側面54b1とを電極面として効率的に機能させるためには、電極間隙dを小さい値に維持することが要求される。なお、ガイド板154の横方向両側における側面154bと対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが互いに等しい状態において、該電極間隙dの値は、10〔μm〕以下であることが望ましく、5〔μm〕以下であることが更に望ましい。
【0041】
本実施の形態においては、各移動電極ユニット51がガイド板154に跨がる状態となっていて、ガイド板154の横方向両側の側面154bに各スライド板54の内側面54b1が、それぞれ、対向している。したがって、ガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dがガイド板154の板厚方向に変化すると、ガイド板154の他方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが反対方向に変化する。すなわち、ガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが増大すると、ガイド板154の他方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが減少し、逆に、ガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが減少すると、ガイド板154の他方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが増大する。これにより、ガイド板154の両方の側面154bとそれらに対向する一対のスライド板54の内側面54b1との間の静電容量Cは、ガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dの変化に対して、
図6における線Bで示されるように変化する。つまり、ガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが変化しても、ガイド板154の両方の側面154bとそれらに対向する一対のスライド板54の内側面54b1との間の静電容量Cは、大きく低下することがなく、常に、実用上十分に大きな値を維持する。なお、各移動電極ユニット51が横方向に自由に移動することができるように、隣接する移動電極ユニット51同士の間隙57の値は、電極間隙d以上に設定されることが望ましい。
【0042】
このように、本実施の形態においては、各移動電極ユニット51がガイド板154に跨がる状態となっていて、ガイド板154の横方向両側の側面154bに一対のスライド板54の各々の内側面54b1が、それぞれ、対向しているので、各移動電極ユニット51がガイド板154の板厚方向、すなわち、横方向に移動してガイド板154の一方の側面154bとそれに対向するスライド板54の内側面54b1との電極間隙dが変化しても、一対の移動電極ユニット51とガイド板154との間の静電容量Cは、大きく低下することがない。しかも、電極面積Sは、スライド板54がガイド板154の一方の側面154bにのみ配設された場合の2倍になるので、十分に大きな静電容量Cを常に維持することができる。したがって、移動電極ユニット51の各々が横方向に移動可能にフローティングされた状態となっていても、十分に大きな静電容量Cを常に維持することができる。
【0043】
なお、少なくとも、レール101の表面において移動電極ユニット51の各部と対向する面には、絶縁性材料(誘電体)から成る被膜が形成されているので、仮に移動電極ユニット51が横方向に大きく移動してスライド板54の内側面54b1がガイド板154の側面154bに接触しても、スライド板54とガイド板154とが導通してしまうことはなく、スライド板54の内側面54b1とガイド板154の側面154bとは、間に誘電体が介在した電界結合方式での電極面としての機能を維持する。
【0044】
さらに、移動電極ユニット51の各々が横方向に移動可能にフローティングされた状態となっているので、レール101に対する各移動電極ユニット51の横方向の位置決めを厳密に行う必要がない。したがって、「背景技術」の項で説明した従来の無接点給電装置のように、高価なリニアガイド装置が不要であり、コストを低減することができる。また、特にレール101が極めて長尺であると、その全長に亘ってガイド板154の側面154bを厳密な平面とすることが実際上困難であるから、ガイド板154の側面154bは、僅かではあっても、横方向への変位を含むものとなる。このような場合であっても、移動電極ユニット51の各々は、横方向に移動可能にフローティングされた状態となっているので、ガイド板154の側面154bの横方向への変位に対応することができる。
【0045】
また、トロリー1がレール101に沿ってスライドしている際に移動電極ユニット51が横方向に移動してスライド板54の内側面54b1がガイド板154の側面154bに接触しても、それにより、スライド板54がガイド板154から反力を受けて反対方向に移動するから、スライド板54の内側面54b1がガイド板154の側面154bに接触したままの状態で、スライドが継続することがない。つまり、スライド板54の内側面54b1は、長い距離に亘って、ガイド板154の側面154bに摺接することがない。したがって、スライド板54の内側面54b1とガイド板154の側面154bとの摺接によって、前記絶縁性材料から成る被膜が摩滅してしまうことがない。
【0046】
このように、本実施の形態において、無接点給電装置は、レール101と、レール101に対して移動可能なトロリー1とを備え、電界結合方式によって、レール101とトロリー1との間での電力の伝達が可能である。そして、レール101は、前後方向に延在する少なくとも1つのガイド板154を含み、トロリー1は、ガイド板154に沿って前後方向に移動可能であるとともに、ガイド板154の板厚方向に移動可能な少なくとも1つの移動電極ユニット51を含み、移動電極ユニット51は、ガイド板154の両側面にそれぞれ対向する一対のスライド板54と、一対のスライド板54同士の間隔を一定に保持するとともに、一対のスライド板54同士を導通させるスペーサ部材52とを含んでいる。
【0047】
これにより、一方のスライド板54がガイド板154の板厚方向に移動してガイド板154との間隙が変化しても、他方のスライド板54が反対方向に移動してガイド板154との間隙が反対に変化するので、一対の移動電極ユニット51とガイド板154との間の静電容量Cは大きく低下することがない。しかも、電極面積Sが、スライド板54がガイド板154の一方にのみ配設された場合の2倍になるので、十分に大きな静電容量Cを常に維持することができる。したがって、構造が簡素で、製作が容易で、低コストでありながら、大電力の安定給電が可能な、信頼性の高い無接点給電装置を得ることができる。
【0048】
また、少なくともガイド板154の両側面には誘電体から成る被膜が形成されている。したがって、仮に移動電極ユニット51が横方向に大きく移動してスライド板54がガイド板154に接触しても、スライド板54とガイド板154とが導通してしまうことはなく、スライド板54とガイド板154とは、間に誘電体が介在した電界結合方式での電極としての機能を維持することができる。
【0049】
さらに、レール101は、互いに平行に、かつ、その板厚方向に並列に配置された複数のガイド板154を含み、トロリー1は、ガイド板154の板厚方向に並列に配置された複数の移動電極ユニット51を含み、移動電極ユニット51の各々は、相互に独立してガイド板154の板厚方向に移動可能である。これにより、電極としての機能する面積を大きくすることができ、より大きな電力の給電が可能となる。
【0050】
さらに、複数の移動電極ユニット51の各々は、ガイド板154の板厚方向に延在する長尺リベット62に隙間嵌めされている。したがって、各移動電極ユニット51は、相互に独立して自由にガイド板154の板厚方向に移動することができる。
【0051】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0052】
図7は第2の実施の形態における無接点給電装置の斜視図である。
【0053】
本実施の形態において、レール101は、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
また、本実施の形態において、トロリー1が含む移動電極ユニット51の各々は、スペーサ部材52とスライド板54とが一体的に作製された単一の部材となっている。具体的には、スペーサ部材52とその両側のスライド板54の上側部分とが一体化してスライド板結合体55を構成している。そして、該スライド板結合体55には、長尺リベット通過孔55eが形成されている。そして、短尺リベット61と、スペーサ部材52の短尺リベット通過孔52d及び長尺リベット通過孔52eと、スライド板54の短尺リベット通過孔54d及び長尺リベット通過孔54eとが省略されている。
【0055】
そして、複数(図に示される例においては、3つ)の移動電極ユニット51は並列に配設され、各移動電極ユニット51の長尺リベット通過孔52eが一致させられて、長尺リベット62の軸部材62aがすべての移動電極ユニット51の長尺リベット通過孔55eに挿入される。その後、長尺リベット62の軸部材62aの端部を塑性変形させて軸部材62aより大径の頭部62bが形成され、すべての移動電極ユニット51が連結される。したがって、すべての移動電極ユニット51は、ともに、レール101の前後方向にスライドすることができる。この際、隣接する移動電極ユニット51同士の間には間隙57が存在し、各移動電極ユニット51が相互に横方向に移動可能となるように、すべての移動電極ユニット51を緩やかに連結する。これにより、トロリー1を得ることができる。
【0056】
なお、その他の点の構成、動作及び効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
このように、本実施の形態において、スペーサ部材52及び一対のスライド板54は一体的に作製された単一の部材である。したがって、移動電極ユニット51を高精度で、容易に製造することができる。
【0058】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0059】
図8は第3の実施の形態における無接点給電装置の斜視図である。
【0060】
本実施の形態において、レール101は、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
また、本実施の形態において、トロリー1が含む移動電極ユニット51の各々は、前記第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
そして、本実施の形態において、移動電極ユニット51を接続するユニット接続部材としての長尺リベット62には、隣接する移動電極ユニット51同士を導通させるための電気的ユニット接続部材として、弾性導電部材63が取付けられている。具体的には、長尺リベット62の軸部材62aにおける隣接する移動電極ユニット51同士の間に露出した部分の周囲に弾性導電部材63が取付けられ、かつ、該弾性導電部材63の横方向(Y軸方向)両端が両側に位置する移動電極ユニット51のスライド板結合体55の側面に接触している。
【0063】
前記弾性導電部材63は、横方向(Y軸方向)に伸縮可能な弾性材であって、かつ、導電性を有する材料であれば、いかなる種類の材料から成るものであってもよく、例えば、発泡金属、金属製コイルスプリング、金属製網、導電性ゴム等から成る。また、前記弾性導電部材63は、あらかじめ筒状の形状に製作された部材の貫通孔に軸部材62aを挿入したものであってもよいし、長尺の柔軟な板状の部材を軸部材62aの周囲に巻付けたものであってもよい。このように、横方向に伸縮可能な弾性導電部材63を長尺リベット62の軸部材62aにおける隣接する移動電極ユニット51同士の間に露出した部分に取付けることによって、各移動電極ユニット51が横方向に移動して隣接する移動電極ユニット51同士の間隙57の大きさが変化しても、隣接する移動電極ユニット51同士の導通状態を確実に維持することができる。
【0064】
なお、その他の点の構成、動作及び効果については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0065】
このように、本実施の形態において、隣接する移動電極ユニット51同士の間には、ガイド板154の板厚方向に伸縮可能であって、隣接する移動電極ユニット51同士を導通させる弾性導電部材63が配設されている。したがって、各移動電極ユニット51が横方向に移動しても、隣接する移動電極ユニット51同士の導通状態を確実に維持することができる。
【0066】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0067】
図9は第4の実施の形態における無接点給電装置の斜視図である。
【0068】
本実施の形態において、レール101は、前記第1〜第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0069】
また、本実施の形態において、トロリー1が含む移動電極ユニット51の各々は、前記第2及び第3の実施の形態と同様に、スペーサ部材52とその両側のスライド板54の上側部分とが一体化してスライド板結合体55を構成しているが、前記第2及び第3の実施の形態とは異なり、移動電極ユニット51は、長尺リベット62でなく、接続ブロック11によって接続されている。すなわち、本実施の形態においては、ユニット接続部材として、長尺リベット62でなく、接続ブロック11が使用される。
【0070】
該接続ブロック11は、前後方向(X軸方向)及び横方向(Y軸方向)に延在する矩形の平板状の天板14と、該天板14の下面から下方(Z軸負方向)に垂直に延在するとともに前後方向に直線的に延在する帯板状の複数のユニット保持板13とを含んでいる。該ユニット保持板13は、各移動電極ユニット51のスライド板結合体55を両側から保持する部材であり、移動電極ユニット51の数(図に示される例において、3つ)より1つ多い数(図に示される例において、4つ)が配設されている。そして、ユニット保持板13の下端からは横方向に突出する保持突部13aが形成されている。なお、該保持突部13aは、隣接する移動電極ユニット51同士の間に位置するユニット保持板13の下端からは横方向両側に突出し、天板14の横方向両端から延在するユニット保持板13の下端からは横方向片側にのみ突出する。また、隣接するユニット保持板13同士の間には、前後方向に延在する保持溝12が形成されている。そして、該保持溝12内の横方向両側における保持突部13aの上方部分は、保持凹部12aとなっている。なお、前記接続ブロック11は、金属等の導電性の材料から成る一体的に作製された単一の部材であることが望ましい。
【0071】
一方、本実施の形態において、移動電極ユニット51のスライド板結合体55における横方向両側の側面には、前後方向に延在する溝状の被保持凹部58が形成されている。そして、前記スライド板結合体55における横方向両側の側面における被保持凹部58の上方部分は、被保持突部59となっている。
【0072】
そして、各移動電極ユニット51は、スライド板結合体55が対応する保持溝12内に挿入されることによって、接続ブロック11により保持される。具体的には、スライド板結合体55の被保持突部59が保持溝12の保持凹部12a内に進入し、ユニット保持板13の保持突部13aがスライド板結合体55の被保持凹部58内に進入した状態となる。なお、保持溝12の各部における横方向の寸法は、スライド板結合体55の対応部分の横方向の寸法よりも大きく、望ましくは、電極間隙dよりも大きく、設定されているので、各移動電極ユニット51は、保持溝12にルーズフィットされた状態となり、横方向に自由に移動することができる。そして、スライド板結合体55が対応する保持溝12内に収容された後、天板14の前後両端面において各保持溝12に対応する位置には、下方に延在するストッパ15が取付けられる。該ストッパ15の下端近傍がスライド板結合体55の前後両端面に係合することによって、スライド板結合体55が保持溝12から抜出ることが防止される。これにより、トロリー1を得ることができる。
【0073】
なお、その他の点の構成、動作及び効果については、前記第1〜第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0074】
このように、本実施の形態において、トロリー1は、ガイド板154の板厚方向に並列に配置された複数の保持溝12が形成された接続ブロック11を含み、複数の移動電極ユニット51の各々は、各保持溝12内に隙間嵌めされて保持される。したがって、トロリー1を高精度で、容易に製造することができる。
【0075】
なお、本開示は一例にすぎず、本開示の趣旨を保った適宜変更であって当業者が用意に想到し得るものは本開示の範囲に含まれる。図面で示す各部の幅、厚さ及び形状等は模式的に表されており、本開示の解釈を限定するものではない。
【0076】
また、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。