【解決手段】回転体の製造方法は、高さ方向に貫通して延びるように鉄心本体に設けられた磁石挿入孔内の永久磁石を樹脂封止することと、高さ方向における鉄心本体の第1及び第2の端面に第1及び第2の端面板をそれぞれ配置することと、各端面板と鉄心本体とを溶接して回転体を構成することとを含む。回転体を構成することは、鉄心本体及び各端面板の温度が回転体の回転時温度域にある状態で、各端面板と鉄心本体とを溶接することを含む。
前記回転体を構成することは、加熱源を用いて前記鉄心本体及び前記各端面板の温度を前記回転時温度域に維持した状態で、前記各端面板と前記鉄心本体とを溶接することを含む、請求項1に記載の方法。
前記回転体を構成することは、前記磁石挿入孔内の前記永久磁石を樹脂封止した後において前記鉄心本体及び前記各端面板の温度が前記回転時温度域を下回る前に、前記各端面板と前記鉄心本体とを溶接することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
前記各端面に前記各端面板をそれぞれ配置することは、前記鉄心本体の温度が前記回転時温度域に至る前に又は前記回転時温度域となった後に、前記各端面に前記各端面板をそれぞれ配置することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記永久磁石の樹脂封止後で且つ前記各端面板と前記鉄心本体との溶接の前に、前記鉄心本体の温度が前記回転時温度域に達するまで前記鉄心本体を冷却機により冷却することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記回転体を構成することは、前記鉄心本体及び前記各端面板の温度が前記回転時温度域にある状態で、前記各端面板を前記高さ方向に貫通する第1の軸孔の内周縁の一部が、前記鉄心本体を前記高さ方向に貫通する第2の軸孔の内周縁の一部と略一致すると共に、前記第1の軸孔の内周縁の残部が前記第2の軸孔の内周縁の残部よりも径方向外方に位置するように前記鉄心本体に重ねられている前記各端面板と、前記鉄心本体とを溶接することを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記回転体を構成することは、前記各端面板を前記高さ方向に貫通する第1の軸孔及び前記鉄心本体を前記高さ方向に貫通する第2の軸孔に挿入された位置決め部材によって前記各端面板が前記鉄心本体に対して位置決めされ、且つ、前記鉄心本体及び前記各端面板の温度が前記回転時温度域にある状態で、前記各端面板と前記鉄心本体とを溶接することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記回転体を構成することは、溶接によって形成される溶接ビードが、前記磁石挿入孔を囲むように設定されるバッファ領域に到達しないように、前記各端面板と前記鉄心本体とを溶接することを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[回転子の構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、回転子1(ロータ)の構成について説明する。回転子1は、固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)を構成する。本実施形態において、回転子1は埋込磁石型(IPM)モータを構成する。モータに電力が供給されると、回転子1の回転に伴い、回転子1が昇温する。このときの回転子1の温度範囲(回転時温度域)は、モータの用途によって種々の範囲を取りうるが、例えば、70℃〜90℃程度である。
【0011】
回転子1は、回転子積層鉄心2(回転子鉄心)と、一対の端面板3,4と、シャフト5とを含む。
【0012】
回転子積層鉄心2は、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0013】
積層体10は、
図1に示されるように、円筒状を呈している。すなわち、積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10a(第2の軸孔)が設けられている。すなわち、軸孔10aは、積層体10の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)に延びている。積層方向は、積層体10の高さ方向でもあり、中心軸Axの延在方向でもある。本実施形態において積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。
【0014】
軸孔10aの内周面には、一対の突条10bと、複数の凹溝10cとが形成されている。突条10b及び凹溝10cは共に、積層体10の上端面S1(第1の端面)から下端面S2(第2の端面)に至るまで積層方向に延びている。一対の突条10bは、中心軸Axを間において対向しており、軸孔10aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。一つの突条10bの両側には、凹溝10cが一つずつ位置している。凹溝10cの一つの側面(突条10bから離れて位置する側面)は、積層体10の径方向に対して斜めに交差する傾斜面S3(第2の傾斜面)となっている。すなわち、軸孔10aの内周面は傾斜面S3を含んでいる。
【0015】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は、
図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、
図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は積層方向に延びている。
【0016】
磁石挿入孔16の形状は、本実施形態では、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔である。磁石挿入孔16の数は、本実施形態では6個である。磁石挿入孔16は、上方から見て時計回りにこの順に並んでいる。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0017】
積層体10の外周面には、複数の凹溝18が形成されている。凹溝18は、積層体10の上端面S1から下端面S2にかけて積層方向に延びている。本実施形態では、8つの凹溝18が、中心軸Ax周りに略45°間隔で積層体10の外周面に形成されている。
【0018】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0019】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、
図1及び
図2に示されるように、カシメ部20によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部20に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ回転子積層鉄心2を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0020】
永久磁石12は、
図1及び
図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0021】
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入された後の磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定する機能と、積層方向(上下方向)で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂14を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0022】
端面板3,4は、
図1に示されるように、円環状を呈している。すなわち、端面板3,4の中央部にはそれぞれ、端面板3,4を貫通する軸孔3a,4a(第1の軸孔)が設けられている。
【0023】
軸孔3aの内周面には、一対の突起3bと、複数の切欠3cとが形成されている。一対の突起3bは、中心軸Axを間において対向しており、軸孔3aの内周面から中心軸Axに向けて突出している。一つの突起3bの両側には、切欠3cが一つずつ位置している。切欠3cの一つの側面(突起3bから離れて位置する側面)は、端面板3の径方向に対して斜めに交差する傾斜面S4(第2の傾斜面)となっている。すなわち、軸孔3aの内周面は傾斜面S4を含んでいる。
【0024】
軸孔4aの内周面にも、軸孔3aと同様に、一対の突起4bと、複数の切欠4cとが形成されている。突起4b及び切欠4cの構成は突起3b及び切欠3cと同様であるので、説明を省略する。すなわち、軸孔4aの内周面も、端面板4の径方向に対して斜めに交差する傾斜面S5(第2の傾斜面)を含んでいる。
【0025】
端面板3の外周面には、複数の切欠22が形成されている。本実施形態では、8つの切欠22が、中心軸Ax周りに略45°間隔で端面板3の外周面に形成されている。端面板4の外周面にも、端面板3と同様に、複数の切欠24が形成されている。本実施形態では、8つの切欠24が、中心軸Ax周りに略45°間隔で端面板4の外周面に形成されている。
【0026】
端面板3,4はそれぞれ、積層体10の上端面S1及び下端面S2に配置されており、積層体10と溶接により接合されている。具体的には、端面板3は、
図2に示されるように、凹溝18及び切欠22を跨がるように設けられた溶接ビードB1を介して、積層体10の上端近傍に位置する打抜部材Wと接合されている。同様に、端面板4は、凹溝18及び切欠24を跨がるように設けられた溶接ビードB2によって、積層体10の下端近傍に位置する打抜部材Wと接合されている。このように、回転子積層鉄心2と端面板3,4とは、溶接によって一体化されているので、一つの回転体6として機能する。
【0027】
端面板3,4は、ステンレス鋼によって構成されていてもよい。当該ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304等)が挙げられる。端面板3,4は、非磁性材料によって構成されていてもよい。端面板3,4の熱膨張係数は、通常、電磁鋼板の熱膨張係数よりも高いが、電磁鋼板の熱膨張係数と同程度であってもよいし、電磁鋼板の熱膨張係数よりも小さくてもよい。
【0028】
シャフト5は、全体として円柱状を呈している。シャフト5には、一対の凹溝5aが形成されている。凹溝5aは、シャフト5の一端から他端にかけてシャフト5の延在方向に延びている。シャフト5は、軸孔3a,4a,10a内に挿通されている。このとき、凹溝5aには、突起3b,4b及び突条10bが係合する。これにより、シャフト5と回転子積層鉄心2との間で回転力が伝達する。
【0029】
[回転子の製造装置]
続いて、
図3〜
図6を参照して、回転子1の製造装置100について説明する。
【0030】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、樹脂注入装置140と、溶接装置150と、シャフト取付装置160と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0031】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0032】
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体10を製造する機能とを有する。
【0033】
積層体10は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と樹脂注入装置140との間を延びるように設けられたコンベアCv1に載置される。コンベアCv1は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体10を樹脂注入装置140に送り出す。
【0034】
樹脂注入装置140は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。樹脂注入装置140は、各磁石挿入孔16に永久磁石12を挿通する機能と、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填する機能とを有する。樹脂注入装置140は、
図4に詳しく示されるように、下型141と、上型142と、複数のプランジャ143とを含む。
【0035】
下型141は、ベース部材141aと、ベース部材141aに設けられた挿通ポスト141bとを含む。ベース部材141aは、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材141aは、積層体10を載置可能に構成されている。挿通ポスト141bは、ベース部材141aの略中央部に位置しており、ベース部材141aの上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト141bは、円柱形状を呈しており、積層体10の軸孔10aに対応する外形を有する。
【0036】
上型142は、下型141と共に積層体10を積層方向(積層体10の高さ方向)において挟持可能に構成されている。上型142は、ベース部材142aと、内蔵熱源142bとを含む。
【0037】
ベース部材142aは、矩形状を呈する板状部材である。ベース部材142aには、一つの貫通孔142cと、複数の収容孔142dとが設けられている。貫通孔142cは、ベース部材142aの略中央部に位置している。貫通孔142cは、挿通ポスト141bに対応する形状(略円形状)を呈しており、挿通ポスト141bが挿通可能である。
【0038】
複数の収容孔142dは、ベース部材142aを貫通しており、貫通孔142cの周囲に沿って所定間隔で並んでいる。各収容孔142dは、下型141及び上型142が積層体10を挟持した際に、積層体10の磁石挿入孔16にそれぞれ対応する箇所に位置している。各収容孔142dは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容する機能を有する。
【0039】
内蔵熱源142bは、例えば、ベース部材142aに内蔵されたヒータである。内蔵熱源142bが動作すると、ベース部材142aが加熱され、ベース部材142aに接触している積層体10が加熱されると共に、各収容孔142dに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
【0040】
複数のプランジャ143は、上型142の上方に位置している。各プランジャ143は、図示しない駆動源によって、対応する収容孔142dに対して挿抜可能となるように構成されている。
【0041】
積層体10は、樹脂注入装置140から排出されると、樹脂注入装置140と溶接装置150との間を延びるように設けられたコンベアCv2に載置される。コンベアCv2は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体10を溶接装置150に送り出す。
【0042】
溶接装置150は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。溶接装置150は、回転子積層鉄心2と端面板3,4とを溶接する機能を有する。溶接装置150は、
図5に詳しく示されるように、一対の溶接機M10,M20を含む。溶接機M10は、回転子積層鉄心2及び端面板3,4の下方に位置しており、溶接機M20は、回転子積層鉄心2及び端面板3,4の上方に位置している。
【0043】
溶接機M10は、フレームM11(第2の挟持部材)と、回転台M12と、一対の位置決め部材M13と、押子部材M14と、複数の溶接トーチM15(第2の溶接トーチ)とを含む。フレームM11は、回転台M12、位置決め部材M13及び押子部材M14を支持する。回転台M12は、フレームM11に対して回転可能に取り付けられている。回転台M12の内部には、内蔵熱源M16(加熱源)が設けられている。内蔵熱源M16は、例えばヒータであってもよい。
【0044】
位置決め部材M13は、回転子積層鉄心2の中心軸Axの径方向(
図5の左右方向)に移動可能となるように回転台M12に取り付けられている。位置決め部材M13は、載置された回転子積層鉄心2及び端面板3,4を支持可能である。
【0045】
位置決め部材M13の内側面は、下方に向かうにつれて外側に拡がる傾斜面を呈している。
図6に示されるように、位置決め部材M13の先端は二叉に分岐しており、各先端が切欠3c,4c及び凹溝10cの内周面に対応する形状を呈している。すなわち、位置決め部材M13の各先端は、位置決め部材M13の移動方向に対して斜めに交差すると共に傾斜面S3〜S5に対応する形状の傾斜面S6(第1の傾斜面)を含んでいる。
【0046】
押子部材M14は、一対の位置決め部材M13の間に位置している。押子部材M14は、先端(上端)に向かうにつれて縮径する台形状を呈している。押子部材M14の側面は、位置決め部材M13の内側面と対応する傾斜面を呈している。そのため、押子部材M14が上方に押されると(
図5の矢印Ar1参照)、一対の位置決め部材M13は互いに離れるように外方(
図5の左右方向;
図6の矢印Ar2参照)に押し出される。一方、押子部材M14が下方に引かれると、一対の位置決め部材M13は互いに近づくように内方(
図5の左右方向)に移動する。
【0047】
溶接トーチM15は、端面板4と積層体10とを溶接するように構成されている。溶接トーチM15は、例えばレーザ溶接用のトーチである。複数の溶接トーチM15は、回転台M12の周囲に沿って並んでいる。
【0048】
溶接機M20も、溶接機M10と同様に、フレームM21(第1の挟持部材)と、内蔵熱源M26(加熱源)を含む回転台M22と、一対の位置決め部材M23と、押子部材M24と、端面板3と積層体10とを溶接するように構成された複数の溶接トーチM25(第1の溶接トーチ)とを含む。溶接機M20の構成は溶接機M10と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
積層体10は、溶接装置150から排出されると、溶接装置150とシャフト取付装置160との間を延びるように設けられたコンベアCv3に載置される。コンベアCv3は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体10をシャフト取付装置160に送り出す。
【0050】
シャフト取付装置160は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。シャフト取付装置160は、回転子積層鉄心2と端面板3,4とが溶接により一体化された回転体6に対してシャフト5を取り付ける機能を有する。具体的には、シャフト取付装置160は、回転子積層鉄心2、端面板3,4及びシャフト5を加熱しながら、軸孔3a,4a,10aに対してシャフト5を焼き嵌めする。このときの加熱温度は、例えば、150℃〜300℃程度であってもよい。
【0051】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、樹脂注入装置140、溶接装置150及びシャフト取付装置160をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0052】
[回転子の製造方法]
続いて、
図3〜
図8を参照して、回転子1の製造方法について説明する。まず、
図3に示されるように、打抜装置130により電磁鋼板ESを順次打ち抜きつつ打抜部材Wを積層して、積層体10を形成する(
図7のステップS11参照)。
【0053】
次に、積層体10を樹脂注入装置140に搬送して、
図4に示されるように、樹脂注入装置140の下型141に積層体10を載置する。次に、各磁石挿入孔16内に永久磁石12を挿入する(
図7のステップS12を参照)。各磁石挿入孔16内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、樹脂注入装置140が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。
【0054】
次に、上型142を積層体10上に載置する。そのため、積層体10は、下型141及び上型142で積層方向から挟持された状態となる。次に、各収容孔142dに樹脂ペレットPを投入する。上型142の内蔵熱源142bにより樹脂ペレットPが溶融状態となると、溶融樹脂をプランジャ143によって各磁石挿入孔16内に注入する(
図7のステップS13を参照)。このとき、積層体10は、内蔵熱源142bにより、例えば150℃〜180℃程度に加熱される。その後、溶融樹脂が固化すると、磁石挿入孔16内に固化樹脂14が形成される。下型141及び上型142が積層体10から取り外されると、回転子積層鉄心2が完成する。
【0055】
次に、回転子積層鉄心2を溶接装置150に搬送して、
図5に示されるように、積層体10の上端面S1に端面板3を配置すると共に、積層体10の下端面S2に端面板4を配置する。具体的には、溶接機M10の位置決め部材M13上に端面板4を載置し、端面板4上に回転子積層鉄心2を載置し、回転子積層鉄心2上に端面板3を載置し、位置決め部材M23が端面板3に対面するように端面板3上に溶接機M20を載置する。これにより、回転子積層鉄心2及び端面板3,4は、一対の溶接機M10,M20によって挟持され、所定の圧力で加圧される。このとき、コントローラCtrが内蔵熱源M16,M26に指示して、回転子積層鉄心2及び端面板3,4を加熱し、これらの温度を回転時温度域に維持する。
【0056】
回転子積層鉄心2及び端面板3,4の温度が回転時温度域にあるとき、
図6に示されるように、中心軸Ax方向(上方向)から見て、端面板3,4の傾斜面S4,S5と積層体10の傾斜面S6とが略一致している(重なり合っている)。一方、軸孔3a,4aの内周面のうち傾斜面S4,S5以外の部分は、軸孔10aの内周面のうち傾斜面S3よりも径方向外方に位置している(重なり合っていない)。
【0057】
次に、押子部材M14を上方に移動させて一対の位置決め部材M13を左右に拡げると共に、押子部材M24を下方に移動させて一対の位置決め部材M23を左右に拡げる(
図6の矢印Ar2参照)。これにより、位置決め部材M13の傾斜面S6が端面板4の傾斜面S5及び積層体10の傾斜面S3と当接してこれらを径方向外方に押圧し、端面板4が積層体10に位置決めされる。同様に、位置決め部材M23の傾斜面S6が端面板3の傾斜面S4及び積層体10の傾斜面S3と当接してこれらを径方向外方に押圧し、端面板3が積層体10に位置決めされる。
【0058】
次に、コントローラCtrが溶接トーチM15に指示して、端面板4及び積層体10に跨がるように切欠24及び凹溝18内に向けて溶接トーチM15がレーザを照射する。同様に、コントローラCtrが溶接トーチM25に指示して、端面板3及び積層体10に跨がるように切欠22及び凹溝18内に向けて溶接トーチM25がレーザを照射する。これにより、
図2及び
図8に示されるように、回転子積層鉄心2及び端面板3,4の温度が回転時温度域に保持された状態で、溶接ビードB1を介して端面板3と積層体10とが溶接されると共に、溶接ビードB2を介して端面板4と積層体10とが溶接される(
図7のステップS14参照)。その結果、端面板3,4が回転子積層鉄心2に接合された回転体6が構成される。
【0059】
ところで、磁石挿入孔16に永久磁石12を樹脂封止する際、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がることがある。この有機成分が拡がる領域に溶接ビードB1,B2が重なると、有機成分が発泡して溶接ビードB1,B2内に空孔が生じてしまう懸念がある。各切欠22,24及び凹溝18を磁石挿入孔16から離れた箇所に設けることで、溶接ビードB1,B2と有機成分との接触を抑制することも考えられる。しかしながら、各切欠22,24及び凹溝18は磁石挿入孔16の近傍に設けられることが多い。なぜならば、磁石挿入孔16は端面板3,4及び積層体10の外周面近傍に位置しており、磁石挿入孔16の近傍の強度が小さくなる傾向にあるので、磁石挿入孔16の近傍を溶接して端面板3,4及び積層体10の接合強度を高める場合があるためである。
【0060】
そこで、
図8に示されるように、溶接ビードB1,B2が磁石挿入孔16を囲むように設定されるバッファ領域R1と重ならないように、溶接トーチM15,M25から照射されるレーザの方向、当該レーザが照射される位置、当該レーザの強度等を設定してもよい。この場合、溶接ビードB1,B2がバッファ領域R1に到達しないので、溶接ビードB1,B2内に空孔が生じ難い。そのため、端面板3,4の積層体10に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。バッファ領域R1は、少なくとも0.5mm以上、磁石挿入孔16から離間していてもよい。
【0061】
次に、コントローラCtrが回転台M22に指示して、回転台M22を駆動する。上記のとおり、回転子積層鉄心2及び端面板3,4は一対の溶接機M10,M20によって挟持されているので、回転台M22の回転力が回転子積層鉄心2、端面板3,4及び回転台M12に伝達され、これらも回転する。このように、回転台M22により回転子積層鉄心2及び端面板3,4を間欠的に回転させつつ、各切欠3c,4c及び凹溝10c内に対して順次溶接トーチM15,M25からレーザを照射する。各切欠3c,4c及び凹溝10c内に対するレーザの照射順は、特に限定されないが、中心軸Axの周方向において隣り合わない切欠3c,4c及び凹溝10c内に順次レーザを照射してもよく、中心軸Axに関して向かい合う切欠3c,4c及び凹溝10c内に順次レーザを照射してもよい。この場合、溶接部位同士の間での熱の影響が低減されるので、回転子積層鉄心2及び端面板3,4の熱による変形を抑制することが可能となる。
【0062】
次に、回転体6をシャフト取付装置160に搬送して、シャフト5を回転体6に対して焼き嵌めする(
図7のステップS15参照)。こうして、回転子1が完成する。
【0063】
[作用]
以上のような本実施形態では、回転体6が実際に回転動作する際の回転時温度域にある積層体10及び各端面板3,4が溶接される。そのため、積層体10と端面板3,4とで熱膨張係数が異なっている場合でも、実際の回転体6の回転時において積層体10と端面板3,4との間の溶接ビードB1,B2に応力が作用し難い。従って、端面板3,4の積層体10に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。
【0064】
本実施形態では、内蔵熱源M16,M26により積層体10及び各端面板3,4の温度が回転時温度域に維持された状態で、各端面板3,4と積層体10とが溶接される。そのため、積層体10と各端面板3,4とを複数箇所において溶接する際に時間を要したとしても、溶接処理の間、積層体10及び各端面板3,4の温度が回転時温度域に維持される。そのため、積層体10と各端面板3,4との間の全ての溶接ビードB1,B2において、端面板3,4の積層体10に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。
【0065】
本実施形態では、回転子積層鉄心2及び各端面板3,4の温度が回転時温度域にある状態で、端面板3,4の傾斜面S4,S5と積層体10の傾斜面S6とが略一致している。そのため、傾斜面S3〜S5を基準にして、各端面板3,4と積層体10とを位置決めすることが可能となる。一方、傾斜面S3〜S5以外の部分において、軸孔3a,4aの内周面が軸孔10aの内周面よりも径方向外方に位置している。回転体6にシャフト5を挿通する際にシャフト5の挿通が端面板3,4によって阻害されない。そのため、回転体6へのシャフト5の取り付けを容易に行うことが可能となる。
【0066】
本実施形態では、位置決め部材M13,M23によって各端面板3,4が積層体10に対して位置決めされた状態で、各端面板3,4と積層体10とが溶接される。そのため、溶接時の熱による各端面板3,4の積層体10に対する位置ずれを抑制することが可能となる。
【0067】
本実施形態では、位置決め部材M13,M23の傾斜面S6が軸孔3a,4a,10aの傾斜面S3〜S5に当接することにより、各端面板3,4が、積層体10に対して、位置決め部材M13,M23の移動方向(
図6の矢印Ar2参照)のみならず当該移動方向に交差する方向においても位置決めされる。そのため、位置決め部材M13,M23を一方向(
図6の矢印Ar2参照)に移動させるだけで、各端面板3,4を積層体10に対してより正確に位置決めすることが可能となる。
【0068】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0069】
(1)上記の実施形態では、磁石挿入孔16の周囲にバッファ領域R1を設定していたが、
図9に示されるように、溶接ビードB1,B2の周囲にバッファ領域R2を設定してもよい。この場合、バッファ領域R2は、少なくとも0.5mm以上、溶接ビードB1,B2から離間していてもよい。
【0070】
(2)回転子積層鉄心2の温度は溶接時に回転時温度域にあればよい。そのため、樹脂封止処理の後に、回転子積層鉄心2の温度がいったん回転時温度域を下回る程度まで回転子積層鉄心2が冷却され、再び回転時温度域となるまで回転子積層鉄心2が加熱されてもよい。あるいは、樹脂封止処理の後に回転子積層鉄心2が冷却され(
図10のステップS16参照)、回転子積層鉄心2の温度が回転時温度域に至ったときに、溶接処理が行われてもよい。この場合、樹脂封止処理の際に回転子積層鉄心2及び端面板3,4が回転時温度域を上回る程度まで十分加熱されているので、溶接処理時における回転子積層鉄心2及び各端面板3,4の温度を回転時温度域とするために、樹脂封止処理時の熱が利用される。そのため、回転子積層鉄心2及び各端面板3,4の温度を回転時温度域とするために、加熱源等を用いて回転子積層鉄心2及び各端面板3,4を再加熱する必要がなくなる。従って、設備コストを削減することが可能となると共に、熱エネルギーの有効利用を図ることが可能となる。なお、樹脂封止処理と溶接処理との間における回転子積層鉄心2の冷却は、自然冷却であってもよいし、図示しない冷却機を用いた冷却であってもよい。冷却機を用いる場合には、自然冷却と比較して、冷却に要する時間が短縮される。そのため、溶接処理を開始するまでの時間が短縮されるので、回転体6の製造効率を高めることが可能となる。
【0071】
(3)回転子積層鉄心2の製造後に、内部が回転時温度域に保たれた保温庫等に回転子積層鉄心2を入れておいてもよい。この場合、回転子1の製造ラインが停止した場合でも、回転子積層鉄心2の温度低下が避けられる。そのため、当該製造ラインが再稼働した際に、回転子積層鉄心2の再加熱を要しない。
【0072】
(4)回転子積層鉄心2に端面板3,4を配置する際の回転子積層鉄心2の温度は特に限定されない。すなわち、回転時温度域を下回る温度の回転子積層鉄心2に対して、端面板3,4を配置してもよい。あるいは、樹脂封止処理の後であって、回転子積層鉄心2の温度が回転時温度域に至る前に又は回転時温度域となった後に、回転子積層鉄心2に端面板3,4を配置してもよい。後者の場合、各端面S1,S2に各端面板3,4がそれぞれ配置されると、回転子積層鉄心2の熱により各端面板3,4が加熱されて、各端面板3,4の温度が回転時温度域に到達する。そのため、加熱源等を用いて各端面板3,4を別途加熱する必要がない。従って、設備コストを削減することが可能となると共に、熱エネルギーの有効利用を図ることが可能となる。
【0073】
(5)シャフト5を回転体6に取り付けることができれば、端面板3,4の軸孔3a,4aの内周縁全体が、積層体10の軸孔10aの内周縁と一致していなくてもよい。例えば、端面板3,4の軸孔3a,4aの内周縁全体が積層体10の軸孔10aの内周縁よりも径方向外方に位置していてもよい。
【0074】
(6)シャフト5を積層体10に取り付けた後に、磁石挿入孔16内に永久磁石12を樹脂封止してもよい。あるいは、シャフト5を回転子積層鉄心2に取り付けた後に、回転子積層鉄心2に端面板3,4を溶接してもよい。これらの場合、シャフト5の焼き嵌めの際の熱を、樹脂封止処理又は溶接処理に利用できる。
【0075】
(7)上記の実施形態では、位置決め部材M13,M23の傾斜面S6を端面板3,4及び積層体10の傾斜面S3〜S5に当接させることにより、端面板3,4を積層体10に対して位置決めしていたが、これらの位置決めのために傾斜面S3〜S6を利用しなくてもよい。例えば、交差する方向に移動する二対の位置決め部材を用いてもよい。
【0076】
(8)溶接処理の際に、溶接トーチM15,M25を上下方向に移動させながら、積層体10の外周面を積層方向に複数箇所溶接してもよい。
【0077】
(9)上記の実施形態では、溶接装置150が二つの溶接機M10,M20を含んでいたが、溶接装置150が一つの溶接機を含んでいてもよい。この場合、例えば、当該溶接機の溶接トーチは、端面板3と積層体10とをまず溶接した後、高さ方向に移動して(降下して)、端面板4と積層体10とを溶接してもよい。あるいはこの場合、例えば、端面板3と積層体10とをまず溶接した後、接合された端面板3と共に回転子積層鉄心2を反転させて溶接装置150にセットし、端面板4と積層体10とを溶接してもよい。
【0078】
(10)上記の実施形態では、凹溝18及び切欠22,24内に向けて溶接トーチからレーザを照射することで端面板4及び積層体10を接合していたが、凹溝18及び切欠22,24以外の箇所に向けて溶接トーチからレーザを照射することで端面板4及び積層体10を接合してもよい。
【0079】
(11)積層体10、回転子積層鉄心2又は回転体6の搬送に際して、コンベアCv1〜Cv3を用いなくてもよい。例えば、これらがコンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
【0080】
(12)複数の永久磁石12が一つの磁石挿入孔16内に挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔16内において積層方向に沿って隣り合うように並んでいてもよいし、磁石挿入孔16の長手方向に並んでいてもよい。
【0081】
(13)上記の実施形態では、複数の打抜部材Wが積層されてなる積層体10が、永久磁石12が取り付けられる鉄心本体として機能していたが、鉄心本体が積層体10以外で構成されていてもよい。具体的には、鉄心本体は、例えば、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0082】
[摘記]
例1.本開示の一つの例に係る回転体(6)の製造方法は、高さ方向に貫通して延びるように鉄心本体(10)に設けられた磁石挿入孔(16)内の永久磁石(12)を樹脂封止することと、高さ方向における鉄心本体(10)の第1及び第2の端面(S1,S2)に第1及び第2の端面板(3,4)をそれぞれ配置することと、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接して回転体(6)を構成することとを含む。回転体(6)を構成することは、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度が回転体(6)の回転時温度域にある状態で、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接することを含む。この場合、回転体(6)が実際に回転動作する際の回転時温度域にある鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)が溶接される。そのため、鉄心本体(10)と端面板(3,4)とで熱膨張係数が異なっていても、実際の回転体(6)の回転時において鉄心本体(10)と端面板(3,4)との間の溶接部(B1,B2)に応力が作用し難い。従って、端面板(3,4)の鉄心本体(10)に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。
【0083】
例2.例1の方法において、回転体(6)を構成することは、加熱源(M16,M26)を用いて鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度を回転時温度域に維持した状態で、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接することを含んでもよい。この場合、鉄心本体(10)と各端面板(3,4)とを複数箇所において溶接する際に時間を要したとしても、溶接処理の間、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度が回転時温度域に維持される。そのため、鉄心本体(10)と各端面板(3,4)との間の全ての溶接部において、端面板(3,4)の鉄心本体(10)に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。
【0084】
例3.例1又は例2の方法において、回転体(6)を構成することは、磁石挿入孔(16)内の永久磁石(12)を樹脂封止した後において鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度が回転時温度域を下回る前に、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接することを含んでもよい。樹脂封止処理の際に各端面板(3,4)及び鉄心本体(10)が加熱されるので、後続の溶接処理に際してこの熱を利用して、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度を回転時温度域とすることができる。そのため、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度を回転時温度域とするために、加熱源等を用いて鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)を再加熱する必要がなくなる。従って、設備コストを削減することが可能となると共に、熱エネルギーの有効利用を図ることが可能となる。
【0085】
例4.例1〜例3のいずれかの方法において、各端面(S1,S2)に各端面板(3,4)をそれぞれ配置することは、鉄心本体(10)の温度が回転時温度域に至る前に又は回転時温度域となった後に、各端面(S1,S2)に各端面板(3,4)をそれぞれ配置することを含んでもよい。この場合、各端面(S1,S2)に各端面板(3,4)がそれぞれ配置されると、鉄心本体(10)の熱により各端面板(3,4)が加熱されて、各端面板(3,4)の温度が回転時温度域に到達する。そのため、加熱源等を用いて各端面板(3,4)を別途加熱する必要がない。従って、設備コストを削減することが可能となると共に、熱エネルギーの有効利用を図ることが可能となる。
【0086】
例5.例1〜例4のいずれかの方法は、永久磁石(12)の樹脂封止後で且つ各端面板(3,4)と鉄心本体(10)との溶接の前に、鉄心本体(10)の温度が回転時温度域に達するまで鉄心本体(10)を冷却機により冷却することをさらに含んでもよい。この場合、樹脂封止処理が行われた後の鉄心本体(10)を自然冷却する場合と比較して、冷却に要する時間が短縮される。そのため、溶接処理を開始するまでの時間が短縮されるので、回転体(6)の製造効率を高めることが可能となる。
【0087】
例6.例1〜例5のいずれかの方法において、回転体(6)を構成することは、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度が回転時温度域にある状態で、各端面板(3,4)を高さ方向に貫通する第1の軸孔(3a,4a)の内周縁の一部(S4,S5)が、鉄心本体(10)を高さ方向に貫通する第2の軸孔(10a)の内周縁の一部(S3)と略一致すると共に、第1の軸孔(3a,4a)の内周縁の残部が第2の軸孔(10a)の内周縁の残部よりも径方向外方に位置するように鉄心本体(10)に重ねられている各端面板(3,4)と、鉄心本体(10)とを溶接することを含んでもよい。この場合、第1の軸孔(3a,4a)の内周縁の一部(S4,S5)が第2の軸孔(10a)の内周縁の一部(S3)と略一致しているので、これらの部分を基準にして、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを位置決めすることが可能となる。またこの場合、第1の軸孔(3a,4a)の内周縁の残部が第2の軸孔(10a)の内周縁の残部よりも径方向外方に位置しているので、回転体(6)にシャフト(5)を挿通する際にシャフト(5)の挿通が端面板(3,4)によって阻害されない。そのため、回転体(6)へのシャフト(5)の取り付けを容易に行うことが可能となる。
【0088】
例7.例1〜例6のいずれかの方法において、回転体(6)を構成することは、各端面板(3,4)を高さ方向に貫通する第1の軸孔(3a,4a)及び鉄心本体(10)を高さ方向に貫通する第2の軸孔(10a)に挿入された位置決め部材(M13,M23)によって各端面板(3,4)が鉄心本体(10)に対して位置決めされ、且つ、鉄心本体(10)及び各端面板(3,4)の温度が回転時温度域にある状態で、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接することを含んでもよい。この場合、位置決め部材(M13,M23)によって各端面板(3,4)が鉄心本体(10)に対して位置決めされた状態で溶接処理が行われる。そのため、溶接時の熱による各端面板(3,4)の鉄心本体(10)に対する位置ずれを抑制することが可能となる。
【0089】
例8.例7の方法において、位置決め部材(M13,M23)は、径方向に移動可能に構成されており、位置決め部材の移動方向と斜めに交差するように拡がる第1の傾斜面(S6)を含み、第1及び第2の軸孔(3a,4a,10a)の内周面は、移動方向と斜めに交差するように拡がり且つ第1の傾斜面(S6)と対応する形状を呈する第2の傾斜面(S4,S5)を含み、回転体(6)を構成することは、第1の傾斜面(S6)が第2の傾斜面(S4,S5)に当接するように位置決め部材が径方向外方に移動することにより、各端面板(3,4)が鉄心本体(10)に対して位置決めされることを含んでもよい。この場合、位置決め部材(M13,M23)の第1の傾斜面(S6)が第1及び第2の軸孔(3a,4a,10a)の第2の傾斜面(S4,S5)に当接することにより、各端面板(3,4)は、鉄心本体(10)に対して、位置決め部材(M13,M23)の移動方向のみならず当該移動方向に交差する方向においても位置決めされる。そのため、位置決め部材(M13,M23)を一方向に移動させるだけで、各端面板(3,4)を鉄心本体(10)に対してより正確に位置決めすることが可能となる。
【0090】
例9.例1〜例8のいずれかの方法において、回転体(6)を構成することは、溶接によって形成される溶接ビード(B1,B2)が、磁石挿入孔(16)を囲むように設定されるバッファ領域(R1)に到達しないように、各端面板(3,4)と鉄心本体(10)とを溶接することを含んでもよい。ところで、磁石挿入孔(16)に永久磁石(12)を樹脂封止する際、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔(16)の周囲に拡がることがある。この有機成分が拡がる領域に溶接ビード(B1,B2)が重なると、有機成分が発泡して溶接ビード(B1,B2)内に空孔が生じてしまう懸念がある。しかしながら、例9によれば、溶接ビード(B1,B2)が所定のバッファ領域(R1)に到達しないので、溶接ビード(B1,B2)内に空孔が生じ難い。そのため、端面板(3,4)の鉄心本体(10)に対する接合状態を良好に維持することが可能となる。
【0091】
例10.例1〜例9のいずれかの方法において、端面板(3,4)の熱膨張係数は鉄心本体(10)の熱膨張係数と異なっていてもよい。