【解決手段】ベース部116と、回転部118と、回転部118の回転角度を検出する回転角度検出部130Cと、回転角度検出部130Cの検出結果に基づいて身体各部の旋回角度を測定する旋回角度測定部130Dと、ベース部116の円周部に延在して形成され設置面に接地する複数の脚部120と、脚部120に設置され回転部118に測定者の身体が載った状態で荷重を測定する荷重測定部122と、荷重測定部122の測定結果に基づいて身体の重心位置を測定する重心位置測定部130Eと、を有し、回転部118に身体を載置した状態で回転部118を回転させることにより旋回角度測定部130Dによって身体各部の旋回角度を測定し、かつ回転部118に身体を載置した状態で回転部118を回転させているときの身体の重心位置の変化を測定する。
前記ベース部を前記設置面から浮かせた状態で前記脚部が前記設置面に接地したときに、前記荷重測定部は前記脚部から作用する荷重を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の身体特性測定装置。
【背景技術】
【0002】
スポーツ競技では、身体の筋肉量の他に、関節や腱、筋膜、皮膚など身体の各部位に高い柔軟性が要求されている。例えば、厳しいトレーニングによって筋肉量を大幅に増加させることができても、他の身体組成の柔軟性弾性がなければ、アスリート自身が想定しているように身体が動かないばかりか、大怪我をしてしまう可能性がある。このため、スポーツ競技を行うアスリートは、筋肉量を増大させるとともに、いかにして身体の柔軟性を高めるかが大きな課題になる。
【0003】
従来では、身体に負荷をかけて筋肉量を増大する装置は存在するが、身体を柔軟にする、あるいは身体の柔軟性を知ることができる、という装置は、ほとんど存在していなかった。
【0004】
このような現状では、身体の柔軟性を高めるために、スポーツトレーナーがアスリートの柔軟体操等をサポートしたり、大掛かりなストレッチトレーニングマシン等を使用したりすることで対応している。
【0005】
しかしながら、スポーツトレーナーの手を借りた柔軟体操やトレーニングマシン等の利用には限度がある。常に、スポーツトレーナーの手助けが必要になるため、スポーツトレーナーに大きな負担がかかったり、トレーニングマシンのあると所に赴く必要があり、柔軟体操を行う時期・場所が制限されたりすることがある。このため、身体の柔軟性を高める効果はそれほど期待できなかった。
【0006】
また、アスリートが自身の身体的な特徴を事前に把握することにより、スポーツの安全性を高めることができるとともに、身体的な課題を見つけることもできる。例えば、股関節は、二足歩行で移動するヒトにとり最も重要な関節であり、この関節が動かなくなると、ヒトは歩行ができなくなる。歩幅が縮小してくる高齢者の問題も股関節の動きの悪さが招いている。それ故にリハビリテーションの臨床現場では股関節の柔軟性確保のリハビリテーションは必ず行われている。アスリートの股関節及びその他関節の柔軟性に関しても、スノーボードやゴルフなどにとどまらず、あらゆるスポーツをする場合に、重要な要素になる。このような自身の身体的な特徴は、スポーツで怪我することを未然に防止するための一つの基準として利用でき、さらにはそれらの柔軟性を一層高めて身体能力を向上させることにより、スポーツで好成績をおさめることも可能になる。
【0007】
しかしながら、股関節などの各関節の柔軟性を測定するための手頃な測定装置(購入・維持費用が安く、簡易的な測定装置という意味)がなく、さらには、それらの柔軟性を一層高めるための手頃なトレーニング装置(購入・維持費用が安く、簡易的なトレーニング装置という意味)が存在しなかった。
【0008】
さらに、アスリートにとって、もう一つ重要な要素がある。それは、自身の身体のバランスである。具体的には、アスリートの身体の重心位置がどの位置にあるのか、あるいは身体の状態や姿勢によって重心位置がどのように移動(変化)するのかを事前に把握することは、自己の適正に合致したスポーツを選択するための一つの基準になるとともに、重心位置の移動(変化)を伴うスポーツのトレーニングを行う際に極めて重要になる。
【0009】
ここで、先行技術として、特許第5357361号公報(特許文献1)に記載の身体特性測定システム及び身体特性測定方法がある。
【0010】
特許文献1に記載の発明は、身体の重心位置又は/及び身体各部の旋回角度を測定するための身体特性測定システムであって、身体が接触した状態で中心軸の軸回りに回転する回転部と、回転部の回転角度を検出する回転角度検出部と、を有し、回転角度検出部の検出結果に基づいて身体各部の旋回角度を測定する旋回角度測定部と、身体の少なくとも一部の箇所において荷重を測定する荷重測定部を複数有し、複数の荷重測定部の測定結果に基づいて身体の重心位置を測定する重心位置測定部と、を有し、旋回角度測定部が重心位置測定部の上面部に載置可能に構成され、旋回角度測定部が重心位置測定部の上面部に載置された状態で、旋回角度測定部による身体の旋回角度の測定と同時に重心位置測定部による身体の旋回時における重心位置の変化が測定可能に構成され、旋回角度測定部の下面部又は重心位置測定部の上面部には、旋回角度測定部が重心位置測定部の上面部に重ねられたときにそれぞれの相手側に対して接触する凸部が設けられたことを特徴とする身体特性測定システムである。
【0011】
特に、旋回角度測定部が重心位置測定部の上面部に重ねることにより、身体の旋回角度の測定と同時に身体の旋回時における重心位置の変化が測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上側に位置する旋回角度測定部が下側に位置する重心位置測定部の上面に積み重ねられ、測定者が旋回角度測定部の上面に載るため、測定者の荷重は旋回角度測定部に直接的に作用する。また、測定者の足を回転させると、旋回角度測定部を介して下側に位置する重心位置測定部に圧力が作用するため、旋回角度測定部と重心位置測定部との間に相対的なズレ等が発生すれば、重心位置測定部において正確な重心挙動を検知することができなくなる。
【0014】
また、旋回角度測定部と重心位置測定部を重ね合わせる構造であるため、高さ方向に厚みが出てしまい、測定者の恐怖心ないし測定時のふらつき等により、重心変動の軌跡にズレが出る。この結果、重心位置の測定結果に悪影響が生じる問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、簡易な構成で、身体の重心位置及び身体各部の旋回角度を正確に測定することができる身体特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ベース部と、前記ベース部に設けられ、測定者の身体が載った状態で中心軸の軸回りに回転する回転部と、前記回転部の回転角度を検出する回転角度検出部と、前記回転角度検出部の検出結果に基づいて身体各部の旋回角度を測定する旋回角度測定部と、前記ベース部の円周部に延在して形成され、設置面に接地する複数の脚部と、前記脚部に設置され、前記回転部に測定者の身体が載った状態で荷重を測定する荷重測定部と、前記荷重測定部の測定結果に基づいて身体の重心位置を測定する重心位置測定部と、を有し、前記回転部に身体の少なくとも一部を載置した状態で前記回転部を回転させることにより前記旋回角度測定部によって身体各部の旋回角度を測定し、かつ前記回転部に身体の少なくとも一部を載置した状態で前記回転部を回転させているときの身体の重心位置の変化を測定することを特徴とする。
【0017】
この場合、前記ベース部と前記脚部は、同質の部材で一体形成されていることが好ましい。
【0018】
この場合、前記ベース部を前記設置面から浮かせた状態で前記脚部が前記設置面に接地したときに、前記荷重測定部は前記脚部から作用する荷重を検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成で、身体の重心位置及び身体各部の旋回角度を容易に測定することができる。
【0020】
単一のベース部に対して回転可能に設けられた単一の回転部に測定者が載り、回転部を回転させることにより、身体各部の旋回角度を測定し、かつ身体の重心位置の変化を測定することができる。これにより、身体特性測定装置を小型化かつ簡易な構造で構成することができ、測定者に対する心理的不安を排除し、安定した測定結果が得られる。また、身体特性測定装置の部品点数の削減により低コスト化を実現できる。
【0021】
また、ベース部と脚部が同質の部材で一体形成されていることにより、ベース部と脚部との間で材質及び構造が連続的になる。これにより、材質の差異又は異なる種類が組み合わされた構造と比較して部分的な変形による荷重の吸収が生じないため、測定者の荷重の変動が途中で干渉を受けずに荷重測定部に伝達される。この結果、測定者の身体の重心位置の変化を正確に測定することができる。
【0022】
さらに、ベース部を設置面から浮かせた状態で脚部が設置面に接地するため、荷重測定部は脚部(設置面)から作用する荷重を検知する。このとき、回転部から伝達される荷重を計測せず、強度が無限大となる設置面を介して圧力を検知する。このように、荷重測定部の圧力検知部(各ロードセルのロードボタン)を下向きに配置することにより、回転部の変形や吸収などの影響を受けることなく、複数の脚部から設置面に作用した荷重を設置面からの反力として検知することで、正確な荷重を測定することができる。
【0023】
他方、先行技術のように、荷重測定部の圧力検知部(各ロードセルのロードボタン)を上向きに配置して、回転部に作用した荷重を検知する構造では、回転部の弾性変形等により吸収する等の材質の非均質性により荷重の変化を正確に検知することができなくなるが、本発明はこの問題を解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る身体特性測定装置について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、身体特性測定システム100は、旋回角度計と重心動揺計の機能を兼ね備えた一対の身体特性測定装置104L、104Rを有している。
【0027】
身体測定システム100は、信号線106によって、アンプ108及びAD変換ボード110を介して端末装置(PC)112に対して電気的に接続されている。
【0028】
アンプ108は、例えば、後述のロータリーエンコーダ及びロードセル122A(
図5及び
図6参照)からのアナログ値のデータ信号を増幅させる。
【0029】
AD変換ボード110は、アナログ信号をデジタルデータに変換する。端末装置112には、プリンター114が電気的に接続されている。
【0030】
一対の身体特性測定装置104L、104Rは、左足測定用の身体特性測定装置104Lと、右足測定用の身体特性測定装置104Rと、で構成される。両者は構成が同じであるため、以下、左足測定用の身体特性測定装置104Lを説明し、右足測定用の身体特性測定装置104Rの説明は省略する。
【0031】
図2、
図3、
図5に示すように、左足測定用の身体特性測定装置104Lは、ベース部116と、ベース部116に設けられ測定者の身体が載った状態で中心軸の軸回りに回転する回転部118と、で構成された筐体を有している。
【0032】
図9に示すように、ベース部116は、例えば、回転部118の回転角度を検出する回転角度検出部130Cと、回転角度検出部130Cの検出結果に基づいて身体各部の旋回角度を測定する旋回角度測定部130Dと、荷重測定部122の測定結果に基づいて身体の重心位置を測定する重心位置測定部130Eと、を有している。
【0033】
なお、旋回角度測定部130Dは、端末装置(PC)112に内蔵されたCPU等で代替してもよい。
【0034】
重心位置測定部130Eは、端末装置(PC)112に内蔵されたCPU等で代替してもよい。
【0035】
ベース部116は、その円周部に延在して形成された複数の脚部120を有している。本実施形態では、3個の脚部120が採用されているが、3個に限定されるものではない。各脚部120は、回転部118の円周方向に沿って等間隔に離間して形成されている。
【0036】
脚部120は、例えば、回転部118の上面に測定者の身体が載った状態で荷重を測定することが可能な荷重測定部122を有している。
【0037】
回転部118がベース部116に対して回転する機構及び原理については、特許第5357361号公報の内容と同様であり、説明を省略する。
【0038】
また、回転角度検出部130C及び旋回角度測定部130Dの原理については、特許第5357361号公報の内容と同様であり、ロータリーエンコーダ(ポテンションメータ)が用いられている。これにより、回転部118の回転角度(旋回角度)を検出することが可能になる。
【0039】
ロータリーエンコーダの動作原理は、従来と同様である。図示は省略するが、例えば、ロータリーエンコーダの回転軸としても機能する歯車軸に、等間隔の格子目盛が刻まれたスリット円板が取り付けられ、これに相対して同じ間隔の目盛が刻まれた固定スリットがロータリーエンコーダの本体に固定されている。この2つのスリットを挟んで発光素子(発光ダイオード)と受光素子(フォトトランジスタ)とが設置されている。発光素子から出た光は、歯車軸が回転することによりスリット1ピッチ毎に光路を遮られ、回転量に比例した回数の明暗を繰り返す。この明暗を受光素子で電気信号として取り出し、波形整形をして矩形波としたものがロータリーエンコーダの出力信号になる。この出力信号は、互いに1/4ピッチとずれるように位相が調整された2相信号であり、回転方向が反転することでこの位相も反転し、方向弁別回路を持った可逆カウンタと組み合わせることにより回転量の加算減算を行う。これにより、回転部118の回転角度(旋回角度)を検出することができる。
【0040】
なお、ロータリーエンコーダに限定されるものではない。ロータリーエンコーダに替えて、例えば、3軸角度センサ、光で角度を検出するセンサ全て(いずれも図示省略)を適用することができる。
【0041】
歯車軸は、カップリング(図示省略)が取り付けられている。カップリングは、従来の構成のものを用い、第2かさ歯車に作用した外力あるいは衝撃を吸収して、ロータリーエンコーダの破損を防止する機能を有している。
【0042】
ベース部116は、ロータリーエンコーダを取り付けるための固定プレート(図示省略)を備えている。
【0043】
ベース部116には、ロータリーエンコーダなどの電子部品を正常に機能させるとともに、例えば、回転部118の回転角度(旋回角度)のデータを端末装置112に対して出力させる制御部(CPUなど)130A(
図9参照)が設けられている。
【0044】
ここで、
図2乃至
図6に示すように、ベース部116と脚部120は、同質の部材(例えば、鋼板)で形成されている。脚部120の上面には、荷重測定部122が下向きに配置されており、ベース部116を設置面Hから浮かせた状態で脚部120が設置面Hに接地しているため、荷重測定部122が設置面Hから作用する圧力を測定者の荷重として検知する。
【0045】
脚部120の上面には、荷重測定部122が取付位置調整機構124を介して取り付けられている。これにより、取付位置調整機構124で荷重測定部122の位置を適宜調整することができる。
【0046】
荷重測定部122は、例えば、ロードセル122Aが用いられている。各ロードセル122Aのロードボタン(図示省略)が下向きとなるように配置されている。
【0047】
なお、ロードセル122Aに替えて歪ゲージなどを用い、ベース部116又は脚部120の弾性変形に伴う歪を検知して歪量が荷重を算出してもよい。以下、荷重測定部として、ロードセル122Aを用いた場合について説明する。
【0048】
図2に示すように、各ロードセル122Aが略三角形(例えば、二等辺三角形あるいは正三角形)の頂点に位置するように設定されている。
【0049】
ロードセル122Aの個数は3個に限られるものではなく、4個以上とすることもできる。
【0050】
図9及び
図10に示すように、重心位置測定部130Eは、例えば、各ロードセル122Aからの測定結果に基づいて重心位置を算出する重心位置算出部130E1と、左右の足の重心位置を合成する重心位置合成部130E2と、を有している。
【0051】
重心位置算出部130E1及び重心位置合成部130E2は、端末装置112側に備えられていてもよい。
【0052】
重心位置算出部130E1は、3つのロードセル122Aでの垂直応力の測定結果に基づいて重心位置を算出する。
【0053】
ここで、測定者の足が回転部118に載せられている状態における重心位置を算出することが可能である。重心位置は、X座標及びY座標の各値(X1、Y1)で特定される。なお、重心位置の特定方法の説明については後述する。
【0054】
重心位置合成部130E2は、一方の身体特性測定装置104Lによる重心測定結果と、他方の身体特性測定装置104Rによる重心測定結果と、に基づいて、重心位置を合成する。これにより、単一の重心位置が特定され、これが測定者の身体の重心位置になる。合成後の重心位置は、X座標及びY座標の各値(X3、Y3)で特定される。なお、重心位置の合成方法の説明については後述する。
【0055】
記憶部130Bには、重心位置算出部130E1及び重心位置合成部130E2における算出過程で実行する座標算出プログラムが予め格納されている。この座標算出プログラムが作動することにより、重心位置算出部130E1による算出結果がX座標及びY座標上の重心位置(X1、Y1)として算出され、重心位置合成部130E2による算出結果がX座標及びY座標上の重心位置(X3、Y3)として算出される。
【0056】
そして、重心位置(X1、Y1)及び重心位置(X3、Y3)は、端末装置112の表示部に表示される。なお、最終結果である重心位置(X3、Y3)のみが端末装置112の表示部に表示されるように制御してもよい。
【0057】
次に、各ロードセル122Aを用いた重心位置測定方法について説明する。
【0058】
各身体特性測定装置104L、104Rは、てこの原理を応用して、水平面上の二等辺三角形の各頂点に位置する3個のロードセル122Aの測定値から、垂直荷重の作用中心点を算出し、これを水平面での重心位置とするものである。
【0059】
例えば、
図7に示すように、支持棒を支持点A及び支持点Bで支持し、点Pに荷重Wを加えた場合に、支持点A及び支持点Bに、WA及びWBの荷重がそれぞれ加わったとすると、点Pを中心とするモーメントのつりあい式は、
X・WA=(L−X)・WB
(L:支持点Aと支持点Bとの間の距離)
となる。
【0060】
これを位置Xについて整理すると、
X=L・WB/(WA+WB)
となる。
【0061】
このため、支持点A及び支持点Bでの垂直荷重をそれぞれ検出することにより、支持点Aと支持点Bとの間の距離Lを既知として、位置Xを算出することができる。
【0062】
ここで、身体特性測定装置104Lの平面上で重心位置を考えると、
図8に示すように、任意の点P(X、Y)に荷重Wが作用した場合、各ロードセル(P1、P2、P3)が、W1、W2、W3の荷重を検出したとすると、
原点OにおけるX軸回りのモーメントのつりあい式は、
W・Y+W1・L0+W2・L0=W3・L
となる。
【0063】
これを位置Yについて整理すると、
Y=(W3・L−W1・L0−W2・L0)/W……(1式)
となる。
【0064】
原点OにおけるY軸回りのモーメントのつりあい式は、
W・X+W2・m=W1・m
となる。
【0065】
これを位置Xについて整理すると、
X=(W1−W2)・m/W……(2式)
となる。
【0066】
また、力のつりあい式は、
W=W1+W2+W3……(3式)
となる。
【0067】
また、W1、W2、W3は、各ロードセルにおける測定値である。既知である各ロードセル間の位置関係からL、L0、mは、算出可能である。これにより、(1式)〜(3式)から、任意の点Pの座標(X、Y)を特定することができる。
【0068】
次に、重心位置合成部130E2による重心位置の合成方法について説明する。
【0069】
身体特性測定装置104L、104Rを一対用い、一方の身体特性測定装置104Lの回転部118に測定者の左足を載せ、他方の身体特性測定装置104Rの回転部118に測定者の右足を載せる。そして、一方の身体特性測定装置104Lの検出結果から測定者の左半身の重心位置を算出し、他方の身体特性測定装置104Rの検出結果から測定者の右半身の重心位置を算出する。このような測定方法によれば、測定者の身体の重心位置を算出する場合、測定者の左半身の重心位置と測定者の右半身の重心位置とを合成する必要がある。
【0070】
そこで、一方の身体特性測定装置104Lで測定された値に基づく左半身の重心位置PL(XL、YL)と、他方の身体特性測定装置104Rで測定された値に基づく右半身の重心位置PR(XR、YR)と、の合成重心を算出する。
【0071】
具体的には、点PL(XL、YL)には左半身からの荷重ML(一方の身体特性測定装置104Lに配置された3個のロードセルで測定された垂直荷重の合計値)が作用しており、点PR(XR、YR)には荷重MR(他方の身体特性測定装置104Rに配置された3個のロードセルで測定された垂直荷重の合計値)が作用している力学モデルである。
【0072】
合成後の重心である合成重心(X3、Y3)は、
X3=(ML・XL+MR・XR)/(ML+MR)
Y3=(ML・YL+MR・YR)/(ML+MR)
により算出することができる。
【0073】
以上のような方法で、重心位置合成部130E2により合成後の重心位置(X3、Y3)を算出する。
【0074】
ここで、重心位置合成部130E2による重心位置を合成処理は、一方の身体特性測定装置104Lと他方の身体特性測定装置104Rとに跨って測定者が載った場合において、両方の重心位置を合成して測定者の身体全体の重心位置を決定するために必要となる。
【0075】
身体特性測定装置104Lのロータリーエンコーダによる計測結果やロードセル122Aによる計測結果が外部の端末装置112にデータとして出力することができる。
【0076】
身体特性測定装置104L側に重心位置算出部130E1及び重心位置合成部130E2が内蔵されている構成では、旋回角度の測定結果と重心位置の結果とがデータとして端末装置112に出力される。
【0077】
端末装置112の表示部には、旋回角度と、重心位置と、及び両者の関係が表示される。また、旋回角度と重心位置は時間的に連続して計測することができ、旋回角度の変化と重心位置の変化とが時系列的に端末装置112の表示部に表示される。
【0078】
本実施形態によれば、単一のベース部116に対して回転可能に設けられた単一の回転部118の上面に測定者が載り、回転部118を回転させることにより、身体各部の旋回角度を測定し、かつ身体の重心位置の変化を測定することができる。これにより、身体特性測定装置104Lを小型化かつ簡易な構造で構成することができ、測定者に対する心理的不安を排除し、安定した測定結果が得られる。また、身体特性測定装置104Lの部品点数の削減により低コスト化を実現できる。
【0079】
ベース部116と脚部120が同質の部材で一体形成されていることにより、材質及び構造が連続的になる。これにより、材質の差異又は異なる種類が組み合わされた構造と比較して局所的な変形による荷重の吸収が生じないため、測定者の荷重の変動が干渉を受けずに荷重測定部122に伝達される。この結果、測定者の身体の重心位置の変化を正確に測定することができる。
【0080】
ベース部116を設置面Hから浮かせた状態で脚部120が設置面Hに接地しているため、荷重測定部122が設置面H(脚部120)から作用する圧力を検知する。すなわち、回転部118を介して荷重を計測せず、強度が無限大となる設置面Hからの圧力として検知することになる。このように、荷重測定部120の圧力検知部(各ロードセル122Aのロードボタン)を下向きに配置することにより、回転部118の変形や吸収などの影響を受けることなく、複数の脚部120から設置面Hに作用した荷重を設置面Hからの反力として検知することで、正確な荷重を測定することができる。
【0081】
他方、先行技術のように、荷重測定部122の圧力検知部(各ロードセル122Aのロードボタン)を上向きに配置して、回転部118に作用した荷重を検知する構造では、回転部118の弾性変形等により吸収する等の材質の非均質性により荷重の変化を正確に検知することができなくなるが、本発明はこの問題を解決できる。
【0082】
また、特許第5357361号公報の
図15に示す構成では、ガイド部材の先端にロードセルが設置されている。この場合、荷重の一部がガイド部材の弾性変形により吸収されるため、正確な重心位置を計測することができなかった。これに対して、本実施形態では、脚部120に荷重測定部122が設置されており、かつ脚部120とベース部116が同一の材質で一体形成されているため、荷重の伝達過程において損失がほとんど生じない。これにより、荷重測定部122により正確な荷重が計測され、重心位置の精度を高めることができる。
【0083】
また、特許第5357361号公報の技術では、旋回角度計と重心動揺計である2つの回転部を上下方向に積み重ねているため、旋回角度計の重量の分だけ、重心位置を補正する必要が生じるが、本実施形態では単一の回転部118とベース部116で回転角度と重心位置を計測できるため、重心位置を補正する補正処理が不要になる。
【0084】
なお、本発明は、スポーツのトレーニング装置の用途として使用される場合に限られず、例えば、身障者や怪我から復帰するためのリハビリ対象者及び高齢者など関節の旋回可動域を広げる効果があるトレーニング機器としても使用することができる。また、子供たちを経時的に測定することで、運動能力の発育発達状態を客観的に評価することが可能である。また、本発明は、履物・インソール・ソックスなど身に着けるものの形状・寸法・材質などを決定するための貴重な個人データを取得する機器としても使用することができる。