【課題】簡便な構造でありながら、噴射剤の圧力による連続噴射とピストン部材により加圧することによるポンプ噴射とを自由に選択することができ、かつ、誤操作により気相部分の噴射剤が漏出した場合であっても、引き続き使用し続けることができるスプレー式製品およびスプレー式製品の製造方法を提供する。
【解決手段】原液と噴射剤とを含む内容物が充填された容器本体2と、容器本体に取り付けられた加圧機構3とを備え、噴射剤は、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05〜1.0である第1の圧縮ガスを含み、加圧機構は、内容物を貯留するハウジング5と、ハウジング内の原液を加圧するステム機構8とを備え、ハウジングは、空気を導入するための空気導入孔が形成されていない、スプレー式製品。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[スプレー式製品]
本発明の一実施形態のスプレー式製品について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態のスプレー式製品1の模式的な断面図である。
図2は、
図1に示される本実施形態のスプレー式製品1の加圧機構の断面図である。
図1および
図2に示されるスプレー式製品1は、噴射動作が行われていない状態(非噴射状態)である。本実施形態のスプレー式製品1は、原液と噴射剤とを含む内容物が充填された容器本体2と、容器本体2に取り付けられた加圧機構3と、加圧機構3に取り付けられる噴射部材4とを主に備える。噴射剤は、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05〜1.0である第1の圧縮ガスを含み、好適には25℃における水に対するオストワルド係数が0.01〜0.03である第2の圧縮ガスをさらに含む。加圧機構3は、原液を貯留するハウジング5と、ハウジング5内の原液を加圧するステム機構8とを主に備える。ハウジング5は、空気を導入するための空気導入孔が形成されていない。ステム機構8は、ステム本体81とピストン部材82とを備える。スプレー式製品1は、ステム本体81が所定距離摺動される第1作動が行われると、外部と容器本体2内とを連通させる。また、スプレー式製品1は、ステム本体81がさらに所定距離摺動される第2作動が行われると、ピストン部材82によりハウジング5内の原液を加圧する。以下、本実施形態のスプレー式製品1の内容物および装置構成について、それぞれ説明する。
【0021】
<内容物>
内容物は、容器本体2に充填され、原液と噴射剤とを含む。原液は、噴射部材4が操作されることにより、容器本体2から加圧機構3に供給され、噴射剤の圧力や加圧機構3によって加圧されることにより噴射される。具体的には、原液は、チューブ52の下端から取り込まれ、ハウジング5の空間S1を通過または空間S1に一時的に貯留された後、外部ステム85の外部ステム内通路85a、噴射ノズル41のノズル内通路41bに供給され、噴射孔43aより噴射される。
【0022】
・原液
原液は、容器本体2に充填される液体成分である。原液は、従来公知の成分を含む。一例を挙げると、原液は、水、アルコール、油分、界面活性剤、増粘剤、パウダー、その他有効成分(保湿剤、ビタミン類、紫外線吸収剤、清涼化剤、スタイリング剤、消臭成分、殺菌消毒剤、害虫忌避剤、殺虫成分、香料、色素等)等を含む。
【0023】
原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、原液は、上記した各成分(有効成分、界面活性剤、油分、パウダー等)を水やアルコールなどの溶媒に溶解または乳化・分散させることにより調製することができる。
【0024】
原液の充填量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の充填率は、容器本体に加圧機構が取り付けられている状態での満注量を100容量%とした場合において、70〜90容量%であることが好ましく、さらには75〜85容量%であることが好ましい。この場合、噴射剤は、容器本体2の残りの10〜30容量%を占める空間に充填され、好ましくは15〜25容量%を占める空間に充填される。
【0025】
・噴射剤
噴射剤は、原液を加圧して連続噴射するために配合される。また、後述するように、スプレー式製品は、ポンプ噴射が行われると、次に噴射される原液が、その都度容器本体内からハウジング内に供給(補充)される。噴射剤は、このように容器本体内からハウジング内に原液が供給される場合であっても、容器本体内の圧力低下を少なくし、これにより容器本体の変形を防止するために配合される。すなわち、スプレー式製品1は、噴射剤を含んでいることにより、原液を連続噴射したり、ポンプ噴射することができる。
【0026】
噴射剤は、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05〜1.0である第1の圧縮ガスを含む。第1の圧縮ガスは、炭酸ガス(オストワルド係数:0.759)、亜酸化窒素(オストワルド係数:0.059)等である。これらの中でも、第1の圧縮ガスは、倒立噴射等の誤操作がされることにより気相部分の噴射剤が漏出された場合であっても、容器本体内において気化して気相部分を構成しやすい点や、使用し続けた場合におけるスプレー式製品1の圧力の低下が抑制されやすい点から、炭酸ガスであることが好ましい。
【0027】
噴射剤は、25℃における水に対するオストワルド係数が0.01〜0.03である第2の圧縮ガスをさらに含むことが好ましい。第2の圧縮ガスは、窒素ガス(オストワルド係数:0.014)、空気(オストワルド係数:0.017)、酸素ガス(オストワルド係数:0.028)等である。これらの中でも、第2の圧縮ガスは、水への溶解量が少なく、容器本体の気相部分に多く存在しやすく、誤使用により噴射剤が外部に漏出される際には第1の圧縮ガスよりも漏出して第1の圧縮ガスを原液中に多く残留させやすい点から、窒素ガス、空気であることが好ましく、窒素ガスであることがより好ましい。
【0028】
第2の圧縮ガスが併用される場合において、第1の圧縮ガスと第2の圧縮ガスとの配合割合は特に限定されない。一例を挙げると、第1の圧縮ガスと第2の圧縮ガスとの配合割合は、質量比で95:5〜20:80であることが好ましく、90:10〜30:70であることがより好ましい。配合割合が上記範囲内であることにより、得られるスプレー式製品1は、誤使用により噴射剤が漏出してもガスの補充効果が高く、引き続き使用することができる。
【0029】
本実施形態のスプレー式製品1の、原液と噴射剤が充填された状態における容器本体2の25℃における内圧は特に限定されない。一例を挙げると、内圧は、0.05MPa(ゲージ圧)以上であることが好ましく、0.1MPa(ゲージ圧)以上であることがより好ましい。また、内圧は、0.6MPa(ゲージ圧)以下であることが好ましく、0.5MPa(ゲージ圧)以下であることがより好ましい。容器本体2の内圧が0.05MPa(ゲージ圧)未満である場合、スプレー式製品1は、使用し続けることにより、内圧が低下し過ぎて、連続噴射できる原液量が少なくなりやすく、また、原液量が少なくなったときのポンプ噴射した後で容器本体2が変形しやすくなりやすい。一方、容器本体2の内圧が0.6MPa(ゲージ圧)を超える場合、スプレー式製品1は、ステム機構8が押し下げられにくくなり、操作性が悪くなる。また、強固な容器本体が必要になる。
【0030】
<装置構成>
次に、上記内容物を噴射するためのスプレー式製品1の装置構成について説明する。なお、以下に示されるスプレー式製品1の装置構成は一例である。すなわち、本実施形態のスプレー式製品1の装置構成は、容器本体2と加圧機構3とを備え、加圧機構3が空気導入孔の形成されていないハウジング5とステム機構8とを備え、これにより上記原液を加圧して噴射できる構成であればよい。
【0031】
(容器本体2)
容器本体2は、内容物を充填するための容器であり、有底筒状の本体部21と、本体部21よりも小径であり本体部21の上部に一体的に設けられた筒状の首部22とを含む。本体部21は、中央部分が容器本体21の内側に向かって膨出した底部21aと、本体部21の側周を構成する円筒状の胴部21bと、胴部21bの上端から縮径し首部22の下端と連続する肩部21cを含む。首部22の上部には開口が形成されており、外周面にはネジキャップ9を取り付けるためのネジ部が形成されている。開口は、原液を充填する際の充填口であり、原液の充填後に加圧機構3により封止される。
【0032】
容器本体2は、内容物が充填された状態において、噴射剤がいくらか溶解した原液からなる液相部分と、噴射剤および外気とから構成される気相部分とからなる。原液は、噴射剤のうち、第1の圧縮ガスが、第2の圧縮ガスと比べていくらか多く溶解している。このような溶解している液相部分の第1の圧縮ガスは、たとえば倒立噴射等の誤操作がされることにより気相部分の噴射剤が漏出された場合であっても、第1の圧縮ガスは原液に溶解しているため漏出されにくく、容器本体内において気化して気相部分を再び構成する。そのため、スプレー式製品1は、誤操作により気相部分のガスが漏出した場合であっても、引き続き使用することができる。
【0033】
容器本体2を構成する材料は、特に限定されない。容器本体2を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂、ガラス、アルミニウムやブリキなどの金属が例示される。合成樹脂を用いる場合は、たとえば、日光による原液の劣化を防止するために紫外線吸収剤が含有されてもよく、噴射剤の透過を防止するために容器本体の外表面または内面に炭素やシリカなどが蒸着されてもよい。本実施形態の容器本体は、これらの材料のうち、容器本体内が陰圧になった場合に変形するような材料および厚みであってもよい。すなわち、一般的に、容器本体が金属や合成樹脂製であり、かつ、胴部の厚みが薄い場合には、スプレー式(ポンプ式)製品は、使用し続けることにより容器本体内の圧力が低下し、凹み等を生じて変形することがある。この場合、スプレー式製品は、内容物を噴射できなくなったり、均一な組成で噴射することが困難になり得る。しかしながら、本実施形態のスプレー式製品は、このような胴部の厚みの薄い容器本体が使用される場合であっても、ポンプ噴射が行われた後に、容器本体2からハウジング5内に原液が供給されても、容器本体2内に残っている原液に溶けていた第1の圧縮ガスが気化して容器本体2内の気相部分を再構成する。そのため、容器本体内の圧力が陰圧となりにくく、容器本体が変形しにくい。具体的には、本実施形態の容器本体は、合成樹脂製である場合、胴部の肉厚が0.1〜0.7mmであってもよく、0.2〜0.6mmであってもよい。また、金属製である場合、胴部の肉厚は、0.1〜0.3mmであってもよく、0.1〜0.2mmであってもよい。
【0034】
(加圧機構3)
加圧機構3は、容器本体2に取り付けられることで容器本体2内を封止して噴射剤を閉じ込めるとともに、容器本体2から原液を取り込んで噴射するための部材である。加圧機構3は、筒状のハウジング5と、ハウジング5内に収容されるバルブ本体6と、後述するピストン部材の上方向への変位を制御する当接部材7と、ネジキャップ9とを主に備える。バルブ本体6は、ハウジング5内を上下方向に摺動自在に収容されるステム機構8を含む。ステム機構8は、ステム本体81と、ステム本体81と協働してハウジング5内を上下方向に摺動するピストン部材82と、ステム本体81を上方に付勢するバネ部材83とを備える。ステム本体81の内部ステム84とピストン部材82とは、非噴射状態において当接しており、シール部を形成している。このシール部は、後述するように、ステム本体81が所定距離だけ下方に摺動される第1作動が行われると、開放される。これにより、外部とハウジング5内とが連通し、原液は、容器本体内の圧力により連続噴射される(連続噴射状態)。一方、ピストン部材は、ステム本体81がさらに所定距離だけ下方に摺動される第2作動が行われると、ハウジング5内の原液を加圧して噴射する(ポンプ噴射状態)。このように、加圧機構3は、非噴射状態から、ステム本体81の第1作動により原液を連続噴射する連続噴射状態に変位することができ、さらにステム本体81の第2作動によりハウジング5内の原液を加圧して噴射するポンプ噴射状態に変位することが可能である。
【0035】
・ハウジング5
ハウジング5は、筒状のハウジング本体51を備える。
【0036】
ハウジング本体51は、容器本体2から取り込まれる原液が通過または一時的に貯留される空間S1が内部に形成された円筒状の部材である。ハウジング本体51は、後述する外部ステム85が出没する開口が形成された上端と、容器本体2に貯留される原液を取り込むためのチューブ52が接続される下端とを有する。
【0037】
ハウジング本体51の上端には、径方向の外側へ突出するフランジ部51aが周設されている。フランジ部51aは、容器本体2の開口の上面に載置され、ハウジング本体51を位置決めするための部位であり、フランジ部51aの大きさ(外径)は、容器本体2の首部22の外径と略一致する。フランジ部51aの下面にはガスケット53が取り付けられており、ガスケット53がフランジ部51aの下面と首部22の開口の上面との間で挟持されることで容器内を気密に封止することができる。ハウジング本体51は、フランジ部51aにより位置決めされた状態において、ハウジング本体51の外周壁と容器本体2の首部22の内周壁とが離間しており、噴射剤を充填するための空間になる。
【0038】
ハウジング本体51の下端近傍には、ハウジング本体51よりも径の小さな小径部51bが形成されている。小径部51bには、チューブ52が差し込まれる。チューブ52は、容器本体2の内底近傍まで延びる比較的長尺の円筒状部材であり、小径部51bに差し込まれる一端と、容器本体2に貯留された原液中に浸漬され、原液を取り込むための開口が形成された他端とを有する。
【0039】
小径部51bの中央には、容器本体2からチューブ52を介して取り込まれる原液をハウジング本体51の空間S1に導入するための原液取込孔51cが形成されている。原液取込孔51cと空間S1との接続箇所には、逆止弁機構54が設けられている。
【0040】
逆止弁機構54は、容器本体2から空間S1への一方向に原液を取り込むための弁機構であり、原液取込孔51cを適宜開閉する。逆止弁機構54は、ハウジング本体51の下端近傍において、ハウジング本体51の内周壁が径方向の内側へ膨出することにより形成されたすり鉢状の凹部54aと、凹部54aに落とし込まれたボール54bとを含む。ボール54bは、噴射部材4を操作しないときは自重により原液取込孔51cと空間S1との連通箇所を閉止する。また、ポンプ噴射をする際にも原液取込孔51cを閉止し、ピストン部材により空間S1内の原液が加圧され、外部に噴射される。一方、ボール54bは、噴射剤の圧力により原液が連続噴射されている際や、ポンプ噴射が行われた後に容器本体2内の原液が空間S1に取り込まれる際に発生する液流によって持ち上げられ、原液取込孔51cと空間S1との連通箇所を開放する。
【0041】
ネジキャップ9は、当接部材7の上面を押さえ、容器本体2内の気密性を高めるための部材である。ネジキャップ9は、中央に開口が形成された円盤状の天板9aと、天板9aの外周縁から下方へ設けられた側周部9bと、天板9aの内周縁から上方へ設けられた円筒状の装着部9cとを有する。側周部9bの内面にはネジ部が形成されており、容器本体2の首部のネジ部に螺着される。装着部9cは、内周壁において径方向内側へ周設されたカバー部9dと、外周壁において径方向の外側へ突出するよう周設された係合部9eとを備える。カバー部9dは、ハウジング本体51に対して後述する当接部材7を位置決めするため部位である。係合部9eは、噴射部材4をネジキャップ9に取り付けるための部位である。
【0042】
・バルブ本体6
バルブ本体6は、容器本体2から取り込まれた原液を噴射部材4に送るための部材であり、ハウジング本体51内に上下方向に摺動自在に収容されるステム機構8を含む。ステム機構8は、ステム本体81と、ステム本体81と協働してハウジング5内を上下方向に摺動するピストン部材82と、ステム本体81を上方に付勢するバネ部材83とを備える。
【0043】
ステム本体81は、非噴射状態においてピストン部材82と当接することにより、原液が空間S1から外部に噴射されることを防ぐためのシール部を形成する内部ステム84と、内部ステム84の上部に装着され、ハウジング本体51の上端に形成された開口から出没する外部ステム85とからなる。内部ステム84と外部ステム85とは、同軸上に設けられており、ハウジング本体51内を一体的に上下方向に摺動する。
【0044】
内部ステム84は、下向きの略椀状であり、下面にバネ部材83の上端が接続される比較的大径の椀状部84aと、椀状部84aよりも小径であり、椀状部84aの上面中央から上方に延びる円筒状の円筒部84bとを含む。
【0045】
椀状部84aの上面と円筒部84bとの接続箇所には、ピストン部材82の内側摺動部86の下端が当接する環状の当接溝84cが形成されている。椀状部84aの下面には、バネ部材83の上端が挿入される。椀状部84aの外周縁には、椀状部84aの上下方向に延びる切欠き溝84dが形成されている。また、椀状部84aの下面のうち、外周縁近傍は、後述するポンプ噴射状態において、ハウジング本体51の内周面から径方向の内側に膨出した当接段部51dと当接する。ステム本体81は、ポンプ噴射状態において、当接段部51dと当接することにより、下方への摺動が制止される。
【0046】
外部ステム85は、ハウジング5内に取り込まれた原液がさらに通過する外部ステム内通路85aが形成されており、円錐台状のスカート部85bと、スカート部85bの上端から上方にかけて縮径された筒状部85cとを含む。筒状部85cの上端は、容器本体2から突出しており、噴射部材4が取り付けられる。
【0047】
スカート部85bの内周面には、加圧機構3が後述する非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際に、ピストン部材82に押し当てられる当接段部85dが形成されている。スカート部85bの内径は、円筒部84bの外径よりも大きい。そのため、スカート部85bの内周壁と円筒部84bの外周壁とは離間される。このように離間されて形成された空間には、後述するピストン部材82の上部内側摺動部86aが挿入される。
【0048】
筒状部85cの内径は、円筒部84bの外径と同程度である。そのため、外部ステム85は、円筒部84bの上部を筒状部85cの下端側から挿入することにより内部ステム84に装着される。
【0049】
ピストン部材82は、ハウジング本体51の内部において空間S1を区画するための部材であり、内部ステム84および外部ステム85と適宜協働してハウジング本体51内を上下方向に摺動する。ピストン部材82は、内部ステム84の外周壁に沿って摺動する内側摺動部86と、ハウジング本体51の内周壁に沿って摺動する外側摺動部87と、内側摺動部86と外側摺動部87とを連結する連結環88とを含む。連結環88は、内側摺動部86と外側摺動部87との中心近傍をつなぐ。
【0050】
内側摺動部86は、連結環88との接続箇所の上部に相当する上部内側摺動部86aと、連結環88との接続箇所の下部に相当する下部内側摺動部86bとを含む。
【0051】
上部内側摺動部86aの上端は、内部ステム84の外周壁と外部ステム85のスカート部85bの内周壁との間に形成される空間に挿入され、加圧機構3が非噴射状態から連続噴射状態やポンプ噴射状態に変位する際に外部ステム85および内部ステム84が下方向へ摺動されると、内部ステム84の外周壁と外部ステム85の内周壁とにより形成される空間に、深く挿入される。なお、非噴射状態からポンプ噴射状態へ変位する際には、ピストン部材82は、上部内側摺動部86aが当接段部85dと当接し、その後、ステム本体81と一体的に下方に摺動する。
【0052】
下部内側摺動部86bは、バネ部材83により内部ステム84が上方向に付勢されると、椀状部84aの当接溝84c近傍と下端とが当接してシール部を形成し、上方向に付勢される。
【0053】
外側摺動部87は、筒状の部材であり、ハウジング本体51の内周壁に沿って摺動する。また、外側摺動部87は、連結環88との接続箇所の上部に相当する上部外側摺動部87aと、連結環88との接続箇所の下部に相当する下部外側摺動部87bとを含む。
【0054】
上部外側摺動部87aの上端は、非噴射状態では、バネ部材83により内部ステム84を介して上方向に付勢されて、後述する当接部材7の下端と当接する。
【0055】
ピストン部材82を構成する材料としては、合成樹脂、シリコーンゴム、合成ゴム等の弾性力のある材料が例示される。
【0056】
バネ部材83は、ステム本体81を上方に付勢するための部材であり、椀状部84aの下面と接続される上端と、凹部54aの周囲に取り付けられる下端とを有する。バネ部材83は、ハウジング本体51内において圧縮した状態で配置されており、内部ステム84を上方に付勢する。また、バネ部材83の下端は、ボール54bの径よりも小さくなるよう、径方向の内側に向かって縮径されている。これにより、後述する連続噴射状態やポンプ噴射状態において容器本体2から原液が取り込まれる際の液流によりボール54bが上方向に押し上げられた場合であっても、ボール54bは、バネ部材83の下端によって制止される。
【0057】
このように構成されたバルブ本体6は、ネジキャップ9を容器本体2に螺合させることにより、容器本体2に固定される。
【0058】
・当接部材7
当接部材7は、ハウジング本体51の開口部に嵌入されて外部ステム85のスカート部85bと筒状部85cとの間に形成された段部と当接してステム本体81を位置決めし、さらにピストン部材82の上部外側摺動部87aの上端と当接してピストン部材82を位置決めする部材である。
【0059】
当接部材7は、ネジキャップ9のカバー部9dの裏面と接触する天面部71と、ハウジング本体51の開口部に嵌入される筒状の当接脚部72とを含む。天面部71は、ネジキャップ9の裏面と、ハウジング本体51のフランジ部51aとによって挟持される。これにより、当接部材7は、位置決めされる。当接脚部72の下端は、上部外側摺動部87aの上端と当接し、非噴射状態でのピストン部材82の位置を規定する。
【0060】
(噴射部材4)
噴射部材4は、外部ステム85に装着される噴射ノズル41と、ネジキャップ9に装着される操作部42とを含む。
【0061】
噴射ノズル41は、L字型の筒状体であり、筒状部85cの上端と接続される一端と、先端ノズル43が接続される他端とを備える。噴射ノズル41の外周壁には、後述するレバー42bの側壁に形成された軸受に軸支される回動軸41aが設けられている。
【0062】
先端ノズル43は、原液の噴射方向や噴射形状等を調整するための治具であり、噴射ノズル41に接続される一端と、原液が噴射される噴射孔43aが形成された他端とを備える。本実施形態のスプレー式製品1は、先端ノズル43にメカニカルブレークアップ機構を備えたノズルチップ43bが装着されている。メカニカルブレークアップ機構は、原液を広範囲に均一に噴霧するための機構であり、原液に旋回力を与えて適度な大きさに微細化するための溝(チャンネル)を有する。
【0063】
操作部42は、空間S1に貯留される原液を噴射するためにステム本体81を摺動させるための部位であり、装着部9cに装着されるレバー支持部42aと、レバー支持部42aに軸支されたレバー42bとを含む。
【0064】
レバー支持部42aは、円筒状の本体部42cと、本体部42cの側壁から突出する支持アーム42dとを備える。本体部42cは、装着部9cが挿入される環状溝42eが形成されている。レバー支持部42aは、環状溝42eに装着部9cが挿入されることにより、ネジキャップ9に装着される。支持アーム42dの上端近傍には、後述するレバー42bに設けられる軸受(図示せず)に軸支される回動軸42fが形成されている。
【0065】
レバー42bは、使用者が噴射時に操作する部位であり、噴射時に使用者によって操作されるトリガー部42gを含む。噴射部材4は、使用者がトリガー部42gを引くことにより、噴射ノズル41を下方に押し下げる。
【0066】
<加圧機構3の変位の一例>
次に、上記構成のスプレー式製品1を用いて原液を噴射する場合における加圧機構3の変位が、
図1および
図2に加えて
図3〜
図6を参照して説明される。
図3は、連続噴射を行う連続噴射状態に変位している加圧機構3の模式的な断面図である。
図4は、加圧機構3がポンプ噴射を行うポンプ噴射状態に変位しているスプレー式製品1の模式的な断面図である。
図5は、ポンプ噴射を行うポンプ噴射状態に変位している加圧機構3の模式的な断面図である。
図6は、ポンプ噴射後に原液がハウジング内に導入される状態を説明するためのスプレー式製品1の模式的な断面図である。なお、加圧機構3は、非噴射状態から連続噴射状態に変位させてもよく、非噴射状態からポンプ噴射状態に変位されてもよい。なお、本実施形態の加圧機構3は、たとえば使用者によって噴射部材4が短時間でトリガー部42gを大きく操作されることにより、実質的に連続噴射状態に変位されることなく(または短時間の連続噴射状態への変位を経て)、非噴射状態からポンプ噴射状態に変位される。
【0067】
(非噴射状態)
まず、原液を噴射しない非噴射状態(噴射前の状態)では、
図1に示されるように、バネ部材83により内部ステム84、外部ステム85およびピストン部材82が上方へ付勢された状態で維持される。この場合、ピストン部材82は、下部内側摺動部86bを当接溝84cと当接させシール部を形成している。そのため、原液は噴射部材4への通路が遮断されており噴射されない。
【0068】
(連続噴射状態)
一方、加圧機構3は、非噴射状態から連続噴射を行う連続噴射状態に容易に変位することができる。具体的には、使用者がトリガー部42gを操作することにより噴射ノズル41が下方向にいくらか押し下げられると、内部ステム84と外部ステム85とは、一体となって下方へいくらか(たとえば1〜2mm)摺動する(第1作動)。このときピストン部材82は外部ステム85と当接しないため移動しない。その結果、
図3に示されるように、この変位により、下部内側摺動部86bの下端は、当接溝84cから離れる。これにより、空間S1から噴射部材4への通路が開放され、すなわち、第1作動によりピストン部材82の下部内側摺動部86bと内部ステム84の当接溝84cとによるシール部が開放されて容器本体2内と外部とが連通される。この際、本実施形態のスプレー式製品1は、外部との圧力差に従って、原液がボール54bを上方向に持ち上げて、空間S1に供給される。さらに、この原液は、下部内側摺動部86bと当接溝84cとの隙間、外部ステム内通路85aを通過して、噴射孔43a(
図1参照)より連続噴射される。
図3において、矢印A1は、容器本体2から取り込まれる原液の流れを示している。
【0069】
連続噴射状態では、スプレー式製品1は、トリガー部42gを繰り返し操作しなくても、操作した状態に維持すれば必要量を連続噴射することができる。連続噴射後にトリガー操作が止められると、バネ部材により内部ステムと外部ステムは元の位置に戻され、上記シール部がシールされる。噴射により容器本体2内の原液が少なくなると容器本体2内の圧力は低下するが、原液に溶解していた第1の圧縮ガスが気化して気相部分のガスが補充される。
【0070】
(ポンプ噴射状態)
加圧機構3は、非噴射状態または連続噴射状態からポンプ噴射状態に容易に変位することができる。具体的には、
図4に示されるように、使用者はトリガー部42gをさらに操作することにより、噴射ノズル41がさらに下方向に押し下げられる。この際、
図5に示されるように、内部ステム84と外部ステム85とは、スカート部85bの当接段部85dがピストン部材82の上部内側摺動部86aの上端に当接するまで一体となって下方へ摺動し、その後、内部ステム84、外部ステム85およびピストン部材82が一体となってさらに下方へ(たとえば3〜10mm)摺動する(第2作動)。その結果、スプレー式製品1は、空間S1の容積が減少する。この際、ボール54bは、空間S1の容積の減少による下方向への付勢によって沈み、原液取込孔51cを閉止する。また、空間S1に貯留された原液(図示せず)は、加圧され、下部内側摺動部86bと当接溝84cとの隙間、外部ステム内通路85aを通過して、噴射孔43a(
図1参照)より噴射される。
【0071】
その後、使用者によるトリガー部42gの操作が止められると、復帰動作および空間S1への原液の取り込み動作が開始される。すなわち、バネ部材83の付勢力により、内部ステム84、外部ステム85およびピストン部材82は、上方へ押し上げられて元の位置に戻り、空間S1と外部が再び遮断される。なお、内部ステム84、ピストン部材82および外部ステム85の上方への摺動は、上部外側摺動部87aの上端が当接部材7の当接脚部72の下端と当接することにより制止される。
【0072】
このように、バネ部材83により、内部ステム84、外部ステム85およびピストン部材82が一体となって押し上げられる際、空間S1と外部との連通は遮断される。また、噴射剤の圧力やステム機構が押し上げられる際の吸引力が付加された原液の流れによりボール54bは上方へ移動し、原液取込孔51cと空間S1とを連通箇所を開放し、空間S1には、容器本体2から新たに一定量の原液が取り込まれる。このときも、容器本体2内の原液は少なくなり、容器本体2内の圧力は低下するため、原液に溶解していた第1の圧縮ガスが気化して気相部分のガスを補充され、容器本体2の変形を防止することができる。
【0073】
ところで、本実施形態のスプレー式製品1は、
図4に示されるように、正立状態である使用状態において、チューブ52(
図1参照)の下端が原液の液相部分に浸漬されている。これにより、噴射時において、原液は、チューブ52から適切に空間S1に取り込まれる。しかしながら、たとえば使用者が、正立状態で使用すべきところを誤って倒立状態で噴射操作を行うことが考えられる。この場合、チューブ52の下端は、内容物の気相部分に位置し、気相部分のガス(噴射剤および外気の混合物)を外部へ漏出することとなる。
【0074】
しかしながら、本実施形態のスプレー式製品1は、このような誤操作により気相部分のガスが漏出した場合であっても、容器本体2が加圧機構3によって封止されており、かつ、噴射剤が25℃における水に対するオストワルド係数が0.05〜1.0である第1の圧縮ガスを含んでいることにより、原液に溶解していた第1の圧縮ガスが気化して気相部分を再構成する。そのため、スプレー式製品1は、誤操作により気相部分のガスが漏出した場合であっても、第1の圧縮ガスによって気相部分の噴射剤が補充され、引き続き使用することができる。特に、ポンプ噴射が行われる場合、スプレー式製品1は、ポンプ噴射後に、次に噴射されるべき原液が容器本体2からハウジング5内に取り込まれる。ここで、従来のポンプ製品は、空気導入孔が設けられているため、容器本体内から原液を取り込むと同時に、外気を導入することにより、容器本体内の圧力低下を防いでいる。しかしながら、本実施形態のスプレー式製品1は、空気導入孔が形成されていない。そこで、本実施形態のスプレー式製品1は、上記のとおり、原液に溶解していた第1の圧縮ガスを適宜気化させて容器本体2内の気相部を再構成している。これにより、スプレー式製品1は、空気導入孔が形成されていないにもかかわらず、容器本体2内から原液をハウジング5に供給する場合に、容器本体2内の圧力低下を防ぎ、これにより容器本体2の変形を防いでいる。その結果、スプレー式製品1は、最後まで安定に吐出することができる。
【0075】
以上、本実施形態のスプレー式製品1は、ハウジング5に空気導入孔を設けられていない。そのため、容器本体2内の原液がハウジング5に取り込まれる際、容器本体2内は気密状態になっている。その結果、ポンプ噴射が行われた場合であっても、噴射剤は、外部に排出されない。これにより、使用者は、トリガー部42g(ステム本体81)の作動量を調整するという簡便な操作により、連続噴射とポンプ噴射とを自由に選択することができる。また、スプレー式製品1は、連続噴射とポンプ噴射とを切り替える際に、別途の部材を要しない。そのため、スプレー式製品1は、構成が簡便である。さらに、本実施形態のスプレー式製品1は、たとえば、本来は正立状態で使用されるべきところ、誤操作により倒立状態で噴射操作が行われた場合に気相部分のガスが外部に漏出したとしても、原液に溶解していた第1の圧縮ガスを気化させて気相部分を再構成することができる。そのため、スプレー式製品1は、第1の圧縮ガスによって気相部分のガスが補充され、引き続き使用することができる。また、スプレー式製品1は、ポンプ噴射が行われる際に、容器本体2内が陰圧になりにくく、変形することがない。そのため、スプレー式製品1は、最後まで安定に吐出することができる。
【0076】
本実施形態のスプレー式製品1は、ハウジングに、ステムから容器本体内への流れを阻止する逆止弁が設けられており、一方で空気導入孔が形成されていないため、噴射剤をステムから充填することができない。スプレー式製品1の製造方法としては、一例を挙げると、スプレー式製品1は、原液を容器本体2内に充填し、容器本体2に加圧機構3を仮装着して容器本体2と加圧機構3との隙間から噴射剤を充填し、加圧機構3を容器本体2に取り付けて密封し、噴射部材4と取り付けることにより製造し得る。なお、スプレー式製品1は、上記方法に代えて、たとえば、別の耐圧容器において低温(たとえば5℃)の原液に第1の圧縮ガスまたは第1の圧縮ガスと第2の圧縮ガスとを混合した混合ガスを飽和溶解させ、この圧縮ガスが飽和溶解している原液を容器本体2に充填し、加圧機構3を容器本体2に取り付けて密封し、その後、常温(たとえば25℃)に戻して溶解していた圧縮ガスの一部を気化させて容器本体内の圧力を調整する方法が採用されてもよい。この場合、密封後の容器本体内で原液に圧縮ガスを飽和溶解させなくてもよいため、原液に溶解する圧縮ガスを見越して高圧に充填する必要がなく、高い耐圧強度を有する容器本体を使用しなくてもよい。なお、容器本体に圧縮ガスが飽和溶解している原液を充填した後で、第2の圧縮ガスを充填し、その後、加圧機構を容器本体に取り付けて密封し、常温に戻してもよい。
【0077】
[スプレー式製品の製造方法]
本発明の一実施形態のスプレー式製品の製造方法は、上記したスプレー式製品を製造するための方法であり、耐圧容器内に原液を入れ、5℃以下に冷却する工程と、原液に、噴射剤を飽和溶解させる工程と、噴射剤が飽和溶解している原液を、容器本体に充填し、加圧機構を取り付けて密封する工程と、常温に戻すことにより、噴射剤が飽和溶解している原液から、噴射剤の一部を気化させて、容器本体内の圧力を0.05MPa(25℃、ゲージ圧)以上に調整する工程と、を含む。噴射剤は、25℃における水に対するオストワルド係数が0.05〜1.0である第1の圧縮ガスを含む。加圧機構は、原液を貯留するハウジングと、ハウジング内の原液を加圧するステム機構とを備える。ハウジングは、空気を導入するための空気導入孔が形成されていない。
【0078】
このように、本実施形態のスプレー式製品の製造方法によれば、容器本体とは別の耐圧容器を準備して、原液を5℃以下に冷却する工程を有する。その後、第1の圧縮ガスが5℃以下に冷却された原液に対して飽和溶解される。そのため、このような原液が別の容器(容器本体)に移された後に常温に戻されると、飽和溶解していた第1の圧縮ガスの一部だけが気化し、容器本体内を、所定の圧力となるよう加圧する。この状態において、第1の圧縮ガスは、一部が原液に溶解したままである。
【0079】
その結果、従来のスプレー式製品は、たとえば、本来は正立状態で使用されるべきところ、誤操作により倒立状態で噴射操作が行われた場合、気相部分の噴射剤が外部に漏出する恐れがある。しかしながら、本実施形態の製造方法によって作製されたスプレー式製品は、誤操作により噴射剤(第1の圧縮ガス)が漏出され、容器本体内の圧力が低下した場合であっても、原液に溶けていた第1の圧縮ガスが気化して気相部分を再構成する。そのため、スプレー式製品は、容器本体内の圧力が低下した場合であっても、第1の圧縮ガスによって気相部分にガスが補充され、引き続き使用することができる。また、スプレー式製品1は、ポンプ噴射が行われる際に、容器本体2内が陰圧になりにくく、変形することがない。そのため、スプレー式製品1は、最後まで安定に吐出することができる。
【0080】
また、スプレー式製品の実施形態において上記したとおり、スプレー式製品は、ステムを所定距離摺動させると、噴射剤の圧力により原液を連続的に噴射することができる。また、スプレー式製品は、さらにステムを摺動させることにより、ハウジング内の原液をピストン部材により加圧し、ポンプ噴射することができる。また、スプレー式製品は、ハウジングに空気導入孔が形成されていない。そのため、スプレー式製品は、ポンプ噴射した後、容器本体内の内容物をハウジングに導入する際に、外部と連通しない。その結果、噴射剤は、ポンプ噴射が行われた場合に、外部に排出されない。したがって、スプレー式製品は、ステムの作動量を調整するという簡便な操作により、連続噴射とポンプ噴射とを自由に選択することができる。また、スプレー式製品は、連続噴射とポンプ噴射とを切り替える際に、別の部材を要しない。そのため、スプレー式製品は、構成が簡便である。
【0081】
さらに、本実施形態の製造方法によって得られるスプレー式製品は、ハウジングに空気導入孔が形成されておらず、加圧機構を取り付けることにより容器本体内を密封することができる。そのため、スプレー式製品は、空気導入孔から噴射剤が漏洩することがなく、噴射剤が飽和溶解している原液から噴射剤の一部を気化させて、容器本体内の圧力を0.05MPa以上に調整することができる。その結果、本発明の製造方法によれば、スプレー式製品は、容器本体に飽和溶解後の圧力を想定した量の噴射剤を充填し、容器本体内で噴射剤を原液に飽和溶解させなくてもよいため、容器本体内が高圧にならず、たとえば、胴部の厚みを薄くして容器本体の材料を減量することができる。
【0082】
また、本実施形態のスプレー式製品の製造方法において、噴射剤は、第1の圧縮ガスだけではなく、25℃における水に対するオストワルド係数が0.01〜0.03である第2の圧縮ガスをさらに含んでもよい。このような場合、スプレー式製品の実施形態において上記したとおり、第2の圧縮ガスは、第1の圧縮ガスよりも原液への溶解量が少ない。そのため、容器本体の気相部分には第2の圧縮ガスが第1の圧縮ガスよりも多く存在する。その結果、誤使用により噴射剤が外部に漏出する際には第2の圧縮ガスが多く漏出され、第1の圧縮ガスの漏出が抑制される。したがって、スプレー式製品は、誤使用されても第1の圧縮ガスによって気相部分にガスが補充され、引き続き使用することができる。また、スプレー式製品1は、ポンプ噴射が行われる際に、容器本体2内が陰圧になりにくく、変形することがない。そのため、スプレー式製品1は、最後まで安定に吐出することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明した。本発明のスプレー式製品およびスプレー式製品の製造方法は、たとえば次のような変形実施形態が採用されてもよい。
【0084】
(1)上記実施形態では、ピストン部材を備えるステム機構によって、ハウジング内の内容物を加圧して噴射する、いわゆる直圧式のスプレー式製品について例示した。本発明は、これに代えて、いわゆる蓄圧式のスプレー式製品であってもよい。
図7は、本発明の他の一実施形態のスプレー式製品1aの模式的な断面図である。
【0085】
スプレー式製品1aは、筒状のハウジング10aと、ハウジング10a内を昇降する外部ステム10bと、外部ステム10b内に駆動自在に収容された内部ステム10cと、内部ステム10cを常時上方に付勢するバネ部材10dとを主に備える。
【0086】
ハウジング10aは、筒状のハウジング本体10eと、ハウジング本体10eの上端に設けられたフランジ部10fと、ハウジング本体10eの下端に設けられた小径部10gとを備えている。ハウジング本体10eの内部は、外部ステム10bを上下に摺動自在に収容する第1筒状部10hと、第1筒状部10hよりも小径でありバネ部材10dを収容する第2筒状部10iとに区画されている。フランジ部10fの下面には容器本体2aの上端との間でシール作用を奏するリング状のガスケット10jが設けられている。さらにフランジ部10fと蓋10kとの間には、両者の間をシールするシールリング10lが設けられている。小径部10gにはチューブ10mが連結されている。このハウジング10aも空気を導入するための空気導入孔が形成されていない。
【0087】
外部ステム10bは、上端に噴射部材4aが取り付けられる筒状部10nと、筒状部10nの下部にハウジング本体10eの第1筒状部10h内を摺動する第1ピストン部10oが形成されている。
【0088】
内部ステム10cは、上端にテーパー面10pが形成された棒状部10qと、棒状部10qの下部に設けられた筒状部10rとからなり、筒状部10rの上部に原液取込孔10sが形成され、下部に第2筒状部10i内を摺動する第2ピストン部10tが形成されている。原液取込孔10sはその外面が円筒シール10uにより塞がれており、ハウジング10a内の原液が加圧される際にはシールされ、ハウジング10a内に原液を導入される際には連通する逆止弁として作用する。
【0089】
外部ステム10bの内面と内部ステム10cとの間はシールされておらず、原液の通路となる。噴射部材4aを操作していないときはバネ部材10dにより内部ステム10cが外部ステム10bに押し付けられ、内部ステム10cのテーパー面10pが外部ステム10bの段部10vと係合しシール作用を奏する。なお、噴射部材4aはメカニカルブレークアップ機構を備えている。
【0090】
本変形例のスプレー式製品1aは、噴射部材4aが押し下げられると、外部ステム10bおよび内部ステム10cが下降する。このとき、ハウジング本体10e内と第1ピストン部10oと第2ピストン部10tとの間の筒状の空間の容積が小さくなり、また、原液取込孔10sは円筒シール10uによりシールされているため、空間の内圧が上昇する。空間の内圧による内部ステム10cを下降させる力がバネ部材10dの付勢力を上回ったとき、内部ステム10cが外部ステム10bに対して相対的に下降する。これによりテーパー面10pのシール部が開き、上記空間内の原液は外部ステム10bと内部ステム10cとの隙間および開かれたシール部を通って、噴射部材4aの噴射孔43aから噴霧される。次いで、噴射部材4aの押し下げが止められると、バネ部材10dにより内部ステム10cおよび外部ステム10bが上昇する。このとき上記空間が元の容積に戻ろうとする吸引力と噴射剤の圧力が付加された原液により円筒シール10uと原液取込孔10sの間で隙間ができ、チューブ10mを通してハウジング10a内に原液が取り込まれる。
【0091】
この蓄圧式の加圧機構においては、内部ステム10cが外部ステム10bから離間して空間と外部とが連通するときの圧力(開放圧力)が容器本体2a内の圧力よりも低い場合は、外部ステム10bの第1作動の加圧力で内部ステム10cが容易に離間して噴射剤の圧力で逆止弁(円筒シール10u)が開いて連続噴射することができ、開放圧力が容器本体2a内の圧力よりも高い場合は、外部ステム10bの第2作動により第1ピストン部10oで加圧されて開放圧力を超えると空間内の原液がポンプ噴射される。
【0092】
なお、本変形例においても、チューブ10mの下端は、原液に浸漬されている。そのため、正立状態で使用すべきところを誤って倒立状態で噴射操作がされた場合、チューブ10mの下端から、気相部分のガス(噴射剤および外気の混合物)が外部に漏出され得る。しかしながら、本変形例のスプレー式製品1aは、このような誤操作により気相部分のガスが漏出した場合であっても、原液に溶解していた第1の圧縮ガスが気化して気相部分を再構成する。そのため、スプレー式製品1aは、誤操作により気相部分のガスが漏出した場合であっても、第1の圧縮ガスによって気相部分の噴射剤が補充され、引き続き使用することができる。また、スプレー式製品は、ポンプ噴射が行われる際に、容器本体内が陰圧になりにくく、変形することがない。そのため、スプレー式製品は、最後まで安定に吐出することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0094】
(実施例1)
気密にできる耐圧容器に、5℃に冷却した精製水を充填し、次いで炭酸ガスを充填し、耐圧容器内を気密状態にして、炭酸ガスを飽和溶解させた。炭酸ガスが飽和溶解している精製水150mLを、容器本体(PETボトル、満注量200mL、胴部の厚み0.5mm)に充填し、容器本体のネジ部に加圧機構のネジ部を螺合させ、密封した。これを25℃の恒温室内で1日静置し、容器本体内の圧力(平衡圧力)を測定したところ、0.26MPa(ゲージ圧)であった。
【0095】
(比較例1)
容器本体(PETボトル、満注量200mL、胴部の厚み0.5mm)に精製水150mLを充填し、容器本体のネジ部に加圧機構のネジ部を螺合させ、隙間から窒素ガスを充填し、完全にネジ締めして密封した。これを25℃の恒温室内で1日静置し、容器本体内の圧力(平衡圧力)を測定したところ、0.45MPa(ゲージ圧)であった。
【0096】
(実施例2)
気密にできる耐圧容器に、5℃に冷却した精製水を充填し、次いで炭酸ガスを充填し、耐圧容器内を気密状態にして、炭酸ガスを飽和溶解させた。炭酸ガスが飽和溶解している精製水150mLを、容器本体(PETボトル、満注量200mL、胴部の厚み0.5mm)に充填し、容器本体のネジ部に加圧機構のネジ部を螺合させ、隙間から窒素ガスを充填し、完全にネジ締めして密封した。これを25℃の恒温室内で1日静置し、容器本体内の圧力(平衡圧力)を測定したところ、0.45MPa(ゲージ圧)であった。
【0097】
(実施例3)
気密にできる耐圧容器に、5℃に冷却した精製水を充填し、次いで炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガス(質量比:42:58)を充填し、耐圧容器内を気密状態にして、上記混合ガスを飽和溶解させた。混合ガスが飽和溶解している精製水150mLを、容器本体(PETボトル、満注量200mL、胴部の厚み0.5mm)に充填し、容器本体のネジ部に加圧機構のネジ部を螺合させ密封した。これを25℃の恒温室内で1日静置し、容器本体内の圧力(平衡圧力)を測定したところ、0.33MPa(ゲージ圧)であった。
【0098】
実施例1〜3および比較例1において作製したスプレー式製品を用いて、以下の方法により、ポンプ噴射を繰り返したときの容器本体の状態を評価した。
【0099】
(容器本体の状態の評価方法)
スプレー式製品を正立させ、噴射部材を押し下げて5秒間連続噴射して、正常にエアゾール噴射できることを確認した。ハウジング内を精製水(原液)で満たし、使用途中の状態にした。次いで、容器本体を倒立させ、噴射部材を1回押し下げてポンプ噴射し、気相部分のガスを排出した。その後、容器本体を正立に戻し、噴射部材を繰り返し操作して、ポンプ噴射を繰り返したときの容器本体の状態を評価した。
【0100】
図8は、実施例1のスプレー式製品の外観写真である。
図9は、ポンプ噴射を繰り返した後の、実施例1のスプレー式製品の外観写真である。
図10は、ポンプ噴射を繰り返した後の、実施例1のスプレー式製品の外観写真(容器本体の下部の拡大図)である。
図8〜
図10に示されるように、実施例1のスプレー式製品は、気相部分のガスを排出させた後でポンプ噴射を繰り返した場合であっても、容器本体の外観に差は見られず、変形を生じなかった。
図10に示されるように、ポンプ噴射を繰り返すと、原液(精製水)に溶解していた炭酸ガスが溶け出して、気泡が放出された。これにより、実施例1のスプレー式製品は、倒立状態でポンプ噴射を行ったことにより気相部分のガスが漏出した場合であっても、液相部分に溶けていた炭酸ガスが溶け出して、再び気相部分を構成したことにより、容器本体の内圧が低下し過ぎず、厚みの薄い容器本体を使用したにもかかわらず、変形を生じなかった。なお、実施例2および実施例3のスプレー式製品についても同様に、倒立状態でポンプ噴射を行ったことにより気相部分のガスが漏出した場合であっても、液相部分に溶けていた炭酸ガスが溶け出して、再び気相部分を構成したことにより、容器本体の内圧が低下し過ぎず、容器本体の変形が生じなかった。また、これらの実施例2および実施例3のスプレー式製品は、第2の圧縮ガスとして窒素ガスが併用されている。窒素ガスは、第1の圧縮ガスである炭酸ガスと比較して、気相を構成しやすく、原液中に溶解しにくい。そのため、実施例2や実施例3のスプレー式製品は、気相部分を構成する炭酸ガスの量が、実施例1のスプレー式製品において気相部分を構成する炭酸ガスの量よりも少ない(気相部分は、炭酸ガスだけでなく、窒素ガスによっても構成されているため)。これにより、実施例2および実施例3のスプレー式製品では、液相部分に、より多くの炭酸ガスが溶解している。その結果、上記誤操作が行われた場合であっても、実施例2および実施例3のスプレー式製品は、液相部分に多く溶解している炭酸ガスによって、気相部分が再構成されやすく、厚みの薄い容器本体を使用したにもかかわらず、変形をより生じにくいことが分かった。
【0101】
一方、
図11は、気相部分のガスを排出させた後でポンプ噴射を繰り返した後の、比較例1のスプレー式製品の外観写真である。
図11に示されるように、噴射剤として窒素ガスを充填した比較例1のスプレー式製品は、ポンプ噴射を繰り返した場合に、容器本体の内圧が低下して陰圧になり、変形を生じた。