【解決手段】このワーク搬送装置WTは、周回させて設けた振動部1と、この振動部1に空間的および時間的位相差の下に2つの定在波を励起し、振動部1のたわみによる楕円振動を連ねて進行波を発生させる進行波発生手段2と、前記振動部1の表面の一部に設定したワーク搬送路Tとを具備するものであって、前記進行波発生手段2を、前記振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面Nが水平面に略垂直な方向(z方向)を向くように構成するとともに、この進行波発生手段2が発生する
周回させて設けた振動部と、この振動部に空間的および時間的位相差の下に2つの定在波を励起し、振動部のたわみによる楕円振動を連ねて進行波を発生させる進行波発生手段と、前記振動部の表面の一部に設定した略水平方向のワーク搬送路とを具備するものであって、
前記進行波発生手段を、前記振動部を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面が水平面に略垂直な方向を向くように構成するとともに、この進行波発生手段が発生する楕円振動を前記ワークの推力に必要な振動に変換する振動変換手段を設けたことを特徴とするワーク搬送装置。
前記振動変換手段は、前記進行波の進行方向に沿って延びかつ前記定在波の略水平方向の振動を垂直抗力としてワークに与える傾斜面を含む請求項1に記載のワーク搬送装置。
前記振動部の表面に搬送路と直交する断面が上方に開く一対の斜面を有する凹状の溝を設けて、この溝の斜面にワークが接するように構成し、斜面からの抗力に当該斜面とワークの間の摩擦係数を乗じた値が各斜面で異なるように設定して、そのうち値が大きくなる方の斜面を前記振動変換により推力発生に寄与する傾斜面として機能させている請求項2に記載のワーク搬送装置。
前記進行波発生手段は、前記振動部がたわみ変形したときに山又は谷となる側面に設けられて空間的および時間的位相差をもった2つの定在波を生成する第1、第2の加振部を含む請求項1〜3の何れかに記載のワーク搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる従来構成では、次の二つの問題があった。
図18に従来構成のワーク搬送装置WT´の概略図とリニアフィーダLF´およびボウルフィーダBF´の接続部を示す。
【0007】
まず第1に、リターントラックRT´は第1直線部11からカーブ部13を経て第2直線部12に回り込むように構成されているが、カーブ部13でワークの滞留が起きやすく、この場合ワークをボウルフィーダBF´へ戻すことができないという問題点がある。これは、カーブ部13と直線部11とで搬送路を構成する振動部の剛性、したがって進行波比が異なることに起因している。
【0008】
また第2に、リニアフィーダLF´とボウルフィーダBF´の搬送路を接続するために、メイントラックMT´の始端とリターントラックRT´の終端での離間幅ΔW相当の切り欠きをボウルフィーダBF´のボウルに入れる必要がある。そのためボウルは、軸対称性が崩れて、進行波比が小さくなり、ボウル上でワークを安定して搬送することも困難になるという問題がある。
【0009】
こうした問題が起きるのは、リターントラックRT´が直線部11からカーブ部13を経て次の直線部12に回り込む構成となっているためである。
【0010】
そこで、
図19に示すように、メイントラックMTの存する直線部11にのみメイントラックMTとリターントラックRTを併設して、メイントラックMTとリターントラックRTでワークを逆搬送することが考えられる。このように構成できれば、ワークを
図18のカーブ部13に通過させずに済み、
図19に示すメイントラックMTの始端とリターントラックRTの終端における離間幅ΔWも小さくできて、リニアフィーダLFとボウルフィーダBFを接続するためにボウルフィーダBFのボウルに入れる切り欠きも最小限にすることができる。
【0011】
しかしながら、搬送方向は根本的な搬送原理に由来するものであり、従来のワーク搬送装置の構造を採用する限り、振動部の表面にどのように搬送路を設けても、直線部におけるワークの搬送方向はメイントラックとリターントラックで同じ方向とならざるを得ない。その理由については以下で詳述する。
【0012】
本発明は、かかる原因の考察を経て搬送原理の抜本的見直しを図り、ワークの搬送方向を多様化することのできる全く異なる搬送原理を採用する。そして、上記の問題点を解決することはもとより、搬送方向の自由度の高い搬送を可能にする、新たなワーク搬送装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち本発明のワーク搬送装置は、
図1に示すように、周回させて設けた振動部1と、この振動部1に空間的および時間的位相差の下に2つの定在波を励起し、振動部1のたわみによる楕円振動を連ねて進行波を発生させる進行波発生手段2と、前記振動部1の表面の一部に設定した略水平方向のワーク搬送路Tとを具備するものであって、前記進行波発生手段2を、前記振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面Nが水平面に略垂直な方向を向く(z方向)を向くように構成するとともに、この進行波発生手段2が発生する
図2に示す楕円振動を前記ワークの推力に必要な振動に変換する振動変換手段3を設けたことを特徴とする。
【0015】
通常は
図17に示したように、中立面Nがxz平面に垂直な方向を向き、上下(z方向)に振動する定在波が合成されて進行波が発生する。このとき、上向き面のある1点は非振動時に位置していた座標の回りを楕円振動し、z方向に最大に持ち上がったときの抗力に基づく摩擦力で楕円振動からワークWに推力が伝わる。
【0016】
したがって、従来構成においては、前記進行波の進行方向と直交する略鉛直方向の一方を正方向(z方向)、他方を負方向(−z方向)とした場合に、
図17に示すようにワークはW楕円振動の抗力を正方向の振れで受けることはできても負方向の振れで受けることはできない。また、中立面Nから正方向に変位した位置にある上向面で抗力を受けることはできても負方向に変位した位置にある下向面で抗力を受けることはできない。なぜなら、振動部の振動面のうち上向き面にはワークを載置することができても下向き面に重力に抗してワークを載置することはできないからである。このため、振動部の上面に搬送路をどのように構成しても、ワークは持ち上がったときに上向面から受ける抗力に応じて推力が発生し、推力の方向は変わらない。
【0017】
これに対して、
図2に示すように中立面Nがxy平面に垂直であると、略水平方向(xy平面に平行な面内)に振動する定在波が合成されて進行波ができ、振動部1の外側面または内側面のある1点が楕円振動する。そして、このままでは振動部1の表面(上向き面)に置かれたワークには垂直抗力が及ばないため推力にはならないが、振動変換手段3によって定在波の振動をワークの推力に必要な鉛直方向成分を含む斜め振動に変換する。これによれば、
図2およびこの
図2をx方向から見た
図3(a)において、定在波の振動の一方を正方向(y方向)、他方を負方向(−y方向)とした場合に、振動部1が正に振れるときに振動変換手段3(3a)が振動を変換するか、振動部1が負に振れるときに振動変換手段3(3b)が振動を変換するかによって、
図2において同じ楕円振動K1を利用しても楕円の頂点でワークに生じる推力の方向すなわちワークの搬送方向Drは前者でx方向、後者で−x方向と逆向きになる。
【0018】
あるいは、
図2において中立面Nよりも正方向へ変位した位置にある質点が楕円軌跡K1に沿って左回りの楕円運動をするとき、中立面Nよりも負方向へ変位した位置にある質点は楕円軌跡K2に沿って右回りの楕円運動をする。すなわち、
図2をx方向から見た
図3(b)において、振動部1の中立面Nに対して正側へ変位した位置で振動変換手段3(3a)が振動を変換するか、負側へ変位した位置で振動変換手段3(3c)が振動を変換するかによって、例えば振動部1が同じ正方向に振れているときでも、
図2の楕円振動K1を利用した推力の方向すなわちワークの搬送方向Drは
図3(b)左図のようにx方向を向き、楕円振動K2を利用した推力の方向すなわちワークの搬送方向Drは
図3(b)右図のように−x方向を向くことになる。このように本発明は、中立面Nを水平面に略垂直な方向とするという従来とは全く異なる搬送原理により、推力の方向に多様性が生まれることになる。
【0019】
この場合、前記振動変換手段3は、
図4に示すように進行波の進行方向(x方向)に沿って延びかつ定在波の略水平方向(y方向)の振動を垂直抗力としてワークに与える傾斜面G1、G2を含むことが望ましい。
【0020】
図4に示すように、傾斜面G1、G2を設ければ略水平方向の振動の一部は垂直抗力としてワークに作用する。その際、傾斜面G1、G2が振動を受けるタイミングに応じ、楕円振動が
図2に示すx方向を向いているか−x方向を向いているかによって、振動変換手段3aとして機能するか、振動変換手段3bとして機能するかが決定される。
【0021】
特に、
図4に示すように、振動部1の表面に搬送路と直交する断面が上方に開く一対の斜面G1、G2を有する凹状の溝Gを設けて、溝Gの各斜面G1、G2にワークWが接するように構成し、斜面G1、G2からの抗力に当該斜面G1、G2とワークWの間の摩擦係数を乗じた値が各斜面G1、G2で異なるように設定して、そのうち値が大きくなる方の斜面(
図4(a)ではG1、
図4(b)ではG2)を前記振動変換手段の傾斜面として機能させていることが望ましい。
【0022】
すなわち、
図4において、斜面G1、G2からの抗力に当該斜面G1、G2とワークWの間の摩擦係数を乗じた値が大きい方にハッチングを施すと、
図4(a)の構成は
図2の振動変換手段3aとして機能し、
図4(b)の構成は
図2の振動変換手段3bとして機能することになる。ワークWは2面で斜面に面接触する場合のほか、一方が斜面に面接触し他方が斜面に線接触する場合などを含む。
【0023】
進行波発生手段2の構成としては、
図2に示すように振動部1がたわみ変形したときに山又は谷となる側面に設けられて空間的および時間的位相差をもった2つの定在波を生成する第1加振部21、第2加振部22を含むことが望ましい。
【0024】
本発明の具体的な実施の態様としては、
図1に示すように、前記振動部1が一対の直線部11、12と、これらの直線部11、12の一端部間および他端部間をつなぐカーブ部13とによって構成され、前記一方の直線部11の表面に、
図5(a)に示すように搬送路と直交する断面が上方に開く一対の斜面を有する凹状の溝Ga、Gbを少なくとも2つ併設する。そしてこの図の場合、前記進行波の進行方向と直交する略水平方向の一方を正方向(y方向)、他方を負方向(−y方向)とした場合に、前記2つの溝Ga、Gbは中立面Nから互いに正逆異なる側へ変位した位置に設けられ、図示のように互いに同じ方向に傾斜する斜面または図示以外の態様として互いにハの字若しくは逆ハの字に傾斜する斜面を振動変換による推力発生に寄与する傾斜面としているものが挙げられる。
【0025】
図5(a)に示すように、中立面Nを挟んで両側に溝Ga、Gbを設けると、中立面Nの両側で
図2に示したように楕円軌道K1、K2の向きは逆向きになる。そして、さらに
図5(a)のように互いに同じ方向に傾斜する斜面を振動変換により推力に寄与する傾斜面とするか、図示しないが互いにハの字若しくは逆ハの字に傾斜する斜面を振動変換により推力に寄与する傾斜面とするかによって、y方向に変位したときに抗力を受けるか−y方向に変位したときに抗力を受けるかが定まり、これによって、どちら向きに回る楕円のどの部分でワークWが推力を受けるかに応じて、2つの溝Ga、Gbに置かれたワークWが互いに順走するか逆走するかが決まる。
【0026】
或いは、本発明の具体的な他の実施の態様としては、前記振動部1が一対の直線部11、12と、これらの直線部11、12の一端部間および他端部間をつなぐカーブ部13とによって構成され、前記一方の直線部11の表面に、
図5(b)に示すように搬送路と直交する断面が上方に開く一対の斜面を有する凹状の溝Ga、Gcを少なくとも2つ併設する。そしてこの図の場合、前記進行波の進行方向と直交する略水平方向の一方を正方向(y方向)、他方を負方向(−y方向)とした場合に、前記2つの溝Ga、Gbは中立面Nに対してともに正逆同じ側(図ではy側)へ変位した位置に設けられ、図示のように互いにハの字をなす斜面または図示以外の態様として互いに逆ハの字に傾斜する斜面若しくは同じ方向に傾斜する斜面を振動変換により推力に寄与する傾斜面としているものが挙げられる。
【0027】
図2に示したように、中立面Nに対して同じ方向に溝Ga、Gbを設けると、楕円軌道の向きは何れも同じ(例えば何れもK1)になる。このとき、さらに
図5(b)のように互いにハの字若しくは逆ハの字に傾斜する斜面を動変換により推力に寄与する傾斜面とするか、あるいは互いに同じ方向に傾斜する斜面を振動変換により推力に寄与する傾斜面とするかによって、y方向に変位したときに抗力を受けるか−y方向に変位したときに抗力を受けるかが定まり、これによって、どちら向きに回る楕円のどの部分でワークWが推力を受けるかに応じて、2つの溝Ga、Gbに置かれたワークWが互いに順走するか逆走するかが決まる。
【発明の効果】
【0028】
以上、説明した本発明によれば、従来とは根本的に異なる搬送原理により、同一直線部で複数のトラックの逆走、順走を自在に設定することが可能となり、ワークをリターントラックのカーブ部に通過させることを不要にするほか、搬送に関する種々の設計自由度を大幅に向上させた、新規有用なワーク搬送装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
まず、本実施形態のワーク搬送装置の概略構成を、
図1〜
図5を踏まえつつ、
図6〜
図14を参照して説明する。
【0032】
図6のワーク搬送装置WTは、リニアフィーダLFとボウルフィーダBFを接続した状態を示している。このワーク搬送装置WTは、振動部1と、この振動部1に進行波を発生させるべく第1の加振21および第2の加振部22を備えた進行波発生手段2とを備えている。
【0033】
振動部1は、第1直線部11および第2直線部12と、これらの直線部11、12の一端側と他端側を接続するカーブ部13とを有し、第1直線部11にワーク搬送路であるメイントラックMT及びリターントラックRTを形成している。そして、メイントラックMTとリターントラックRTでワークの推力を逆にするために、第1、第2の加振部21、22の加振方向を略水平方向(図中yの正逆方向)に設定するとともに、これらの加振部21、22の水平振動がトラックMT、RT上のワークに互いに逆方向の推力として伝わるように、
図2に示した振動変換手段3(3a〜3c)として傾斜面を有する溝Ga〜Gc(
図5参照)を設けている。そして、姿勢等の所定の条件を満たさない不適合なワークを図示しないワーク排除手段によってメイントラックMTからリターントラックRTに移行させ、カーブ部13を経ずにボウルフィーダBFに戻すことができるようにしている。
【0034】
図7は比較例として、従来のワーク搬送装置WT´としてのリニアフィーダLF´およびボウルフィーダBF´を示している。このワーク搬送装置WT´も、振動部1と、この振動部1に進行波を発生させるべく第1の加振21および第2の加振部22を備えた進行波発生手段2を備えている。
【0035】
振動部1は、第1直線部11および第2直線部12と、これらの直線部の一端側と他端側を接続するカーブ部13とを有し、振動部1のうちの第1直線部11にワーク搬送路であるメイントラックMT´を形成している。一方、第1直線部11からカーブ部13を経て第2直線部12に至る部位にリターントラックRT´を形成している。そして、姿勢等の所定の条件を満たさない不適合なワークをリターントラックRTの第1直線部11からカーブ部13を経て第2直線部12に移行させ、ボウルフィーダBF´に戻すように構成されている。
【0036】
進行波の発生原理自体は
図6と
図7で基本的に共通している一方で、加振が
図6では水平方向(y方向)に行われるのに対して
図7では鉛直方向(z方向)に行われる点、進行波が
図6では振動部1の外側面および内側面に形成されるのに対して
図7では振動部1の上面に形成される点が異なる。以下、先ず共通原理について説明する。
【0037】
振動部1は、たわみ進行波が生成される部材であり、例えば断面略矩形状をなす金属製部材によって構成されている。この振動部1は、上述したように、平面視でトラック形状を有する。
【0038】
図8は、進行波生成手段2の構成を示す模式図である。進行波生成手段2は、第1加振部21および第2加振部22と、信号発信部23と、アンプ24、25等を有する。
【0039】
第1加振部21および第2加振部22は、伸縮することによって
図6や
図7に示す振動部1を加振し、
図6では振動部1の外側面と内側面が向き合う方向に、
図7では振動部1の上面と下面が向き合う方向に定在波を発生させる。第1加振部21は、第1定在波(詳細は後述)を振動部1に発生させ、第2加振部22は第1定在波とは腹及び節の位置が異なる第2定在波(詳細は後述)を振動部1に発生させる。第1加振部21及び第2加振部22の詳細については、後述する。
【0040】
第1加振部21は、所定の波長(以下、λとする)を有する第1定在波を発生させるためのものである。第1加振部21は、複数の第1圧電素子を有する。複数の第1圧電素子は、第1定在波を励起するためのものである。複数の第1圧電素子は、矩形の薄板状の圧電素子本体の一方に個別電極を貼り付けし、他方に共通電極を貼り付けたものである。複数の電極は、長手方向に沿ってλ/2のピッチで交互に極性が「+」「−」…と反転させて設けられている。
【0041】
第2加振22部は、第1定在波と略等しい波長を有し、且つ、振動の腹及び節の進行方向における位置が第1定在波と(n+1/4)λずれた第2定在波を発生させるためのものである。第2加振部22は、複数の第2圧電素子を有する。複数の第2圧電素子は、第2定在波を励起するためのものである。複数の第2圧電素子は、矩形の薄板状の圧電素子本体の一方に個別電極を貼り付けし、他方に共通電極を貼り付けたものである。複数の電極は、長手方向に沿ってλ/2のピッチで交互に極性が「+」「−」…と反転させて設けられている。
【0042】
信号発信器23は、超音波領域の周波数の信号を生成して加振部21、22へ出力することで、振動部1を加振するためのものである。信号発生器23は、所定の振幅及び周波数を有する第1信号を第1アンプ24を経て第1加振部21へ出力可能な構成になっている。また、信号発信器23は、第1の信号と位相が異なる第2の信号を第2アンプ25を経て第2加振部22へ出力可能な構成になっている。
【0043】
信号発信器23は、生成する信号の波形を選択する波形選択部23aと、信号の周波数(すなわち、振動部1を加振する加振周波数)を調整する加振周波数調整部23bと、信号の位相を調整する電気的位相調整部23cと、を有する。
【0044】
第1の信号は、波形選択部23aによって選択された波形と、加振周波数調整部23bによって調整された加振周波数とを有し、第1アンプ24で振幅を調整して第1加振部21へ出力される。第2の信号は、波形選択部23aによって調整された波形と、加振周波数調整部23bによって調整された加振周波数と、電気的位相調整部23cによって調整された位相とを有し、第2アンプ25で振幅を調整して第2加振部22へ出力される。第2の信号の位相は、電気的位相調整部23cによって変更された分だけ、第1の信号の位相と異なる。なお、第1の信号及び第2の信号は、例えば正弦波信号である。第1の信号の周波数と第2の信号の周波数は、略等しい。
【0045】
以上の構成において、第1加振部21が振動部1を加振することで第1定在波が、第2加振部22が振動部1を加振することで第2定在波が、それぞれ振動部1に発生する。これらの定在波の重ね合わせによって、トラック状の振動部1の周回方向に進行する進行波が振動部1に発生する。
【0046】
次に、進行波の発生原理、及び、進行波によるワークの搬送原理について説明する。上述した信号発生器23によって生成される第1の信号が、第1アンプ24を介して第1加振部21に印加されると、複数の圧電素子の伸縮によって、第1定在波が励起される。これにより、圧電素子の厚み方向に振動する第1定在波が発生する。第1定在波の波長をλとし、周期をTとする。同様に、第2の信号が、第2アンプ25を介して第2加振部22に印加されると、複数の圧電素子の伸縮によって、第2定在波が励起される。以下、説明の簡単化のために、第1定在波と同様、第2定在波の波長をλとし、周期をTとする。
【0047】
第1圧電素子と第2圧電素子は、上述したように、長手方向における配置位置が互いにλ/4だけずれていることから、第1定在波と第2定在波は、進行方向における腹及び節の位置が互いにλ/4だけずれている。換言すると、第1定在波の腹の位置と第2定在波の腹の位置が略同じであり、第1定在波の節の位置と第2定在波の腹の位置が略同じである。なお、第1定在波と第2定在波の位相は、互いに略90°異なっている。本実施形態では第1定在波は0°モードで振動し、第2定在波は90°モードで振動するように設定される。この場合、第1定在波と第2定在波との位相差は、必ずしも第1の信号と第2の信号との位相差そのものではない。信号間の位相差と定在波間の位相差との関係は、例えば、振動部1の剛性や形状(対称性等)によって変わりうる。このため、上述した電気的位相調整部23cによって、第1定在波の位相と第2定在波の位相が略90°異なるように、第2の信号の位相が調整されている。このような第1定在波及び第2定在波が、振動部1全体に伝播することで、以下に示す進行波が、振動部1全体に発生する。
【0048】
搬送路における進行波の発生について、
図9を用いて概略的に説明する。
図9は、第1定在波及び第2定在波による進行波の発生を示す説明図である。
図9において、横軸は、進行波の進行方向における座標(x)を示す。縦軸は振動部1の変位を示し、
図6に示す本実施形態の構造の場合は縦軸は正の水平方向(y方向)となり、紙面垂直方向の手前側が鉛直方向(z方向)となる。また、
図7に示す比較例(従来)の構造の場合は縦軸は正の鉛直方向(z方向)となり、紙面奥行き方向が正の水平方向(y方向)となる。第1定在波の腹の位置を原点(x=0)とする。
【0049】
図9(a)に示すように、時刻t=0において、第1定在波の腹の位置(x=0、λ/2、λ等)において振動部が上下方向に変位している(ブロック矢印参照)。一方、節の位置(x=λ/4、3λ/4等)においては、振動部が変位していない。すなわち、時刻t=0においては、第1定在波のみが振動部1に発生しており、第1定在波と位相が略90°ずれた第2定在波は発生していない。
【0050】
時間経過に伴い、第1定在波による振動部1の変位が小さくなり、第2定在波による振動部1の変位が大きくなる。第1定在波の節の位置(x=λ/4、3λ/4等)と第2定在波の腹の位置が同じであるため、
図9(b)に示すように、時刻t=T/4においては、それらの位置において振動部1が変位している。このとき、時刻t=0のときと比べて、振動部1に発生している波全体がλ/4だけ紙面右方に進行した状態になっている(実践矢印参照)。時刻t=2T/4(
図9(c)参照)においては、再び第1定在波が発生している。なお、振動の向きは時刻t=0のときと逆向きである。同様に、時刻t=3T/4(
図9(d)参照)においては、再び第2定在波が励起されている。このように、時間が経過するにつれて、波が実線矢印で示す方向に進行することで、振動部1に進行波が発生する。なお、実際には、振動部には、以下のようなたわみ進行波が発生している。
【0051】
たわみ進行波によるワークWの搬送原理について、
図10を用いて概略的に説明する。
図10は、振動部1に発生するたわみ進行波を進行方向と直交し且つ定在波が観測できる方向から見た図である。
図6に示す本実施形態の構造の場合は、
図10の紙面はxy平面、紙面に垂直な手前方向はz方向となり、
図7に示す比較例(従来例)の構造の場合は、
図10の紙面はxz平面、紙面に垂直な奥行き方向がy方向となる。
図10に示すように、たわみ進行波は、進行方向(
図10(a)の実線矢印参照)へ周期Tで進行する。なお、
図10において、振動部1の振動の中立面Nの位置を境に、図中上方向を振動の正方向、下方向を振動の負方向とする。すなわち、
図6の構造では正方向はy方向、
図7の構造では正方向はz方向である。中立面Nは、振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面をいう。
【0052】
時刻t=0において、振動部1上のある位置(例えば、上述したx=0)の質点Zが、最も正方向に振れた状態にあるとする(
図10(a)参照)。その後、質点Zは負方向に移動するとともに前方に移動し、時刻t=T/4において最も前方に位置する(
図10(b)参照)。また、質点Zは、時刻t=2T/4においては最も負方向に振れ(
図10(c)参照)、時刻t=3T/4においては最も後方にある(
図10(d)参照)。このように、質点Zは、楕円軌道100を描くように運動する。図においてZ0は振動部1が振動していないときの質点Zの位置である。
【0053】
そこで、これを具体的な構造で見てみると、
図7に示した従来のワーク搬送装置は、加振部21、22を振動部1の底面に貼り付け、定在波が略垂直方向(z方向)に励起されて、楕円振動がxz平面と平行な面内で生じるように構成されている。このため、
図10の楕円軌道おいて、質点Zが最も定在波の振動の上方にあるとき、振動部1とワークWとの間の摩擦力による水平方向の推進力が発生し、たわみ進行波の進行方向とは逆方向へワークWが搬送される。このように、振動部1上の各部分が、水平方向(ワークWの搬送方向)の速度成分と上下方向の速度成分とを有するように楕円運動することでワークWが搬送される。
図7の従来装置では、ワークWは、メイントラックMTよびリターントラックRTの第1直線部11を前方へ搬送され、リターントラックRTにおいてはカーブ部13を経て第2直線部12に反時計回りに回り込む。
【0054】
このとき、第1直線部11とカーブ部13とで振動部1の剛性の違いに起因して定在波比が異なり、カーブ部13でワークの滞留を招く等といった問題が生じる原因となっている。
【0055】
そこで、
図6の構造では同じ第1直線部11にメイントラックMTとリターントラックRTを設けて、ワークを逆走させることを考えている。
【0056】
従来構成では、中立面Nが非振動時にxy平面に平行な略水平方向を向き、上下に振動する定在波が合成されて進行波が発生する。このとき、上向面のある1点は楕円振動し、最大に持ち上がったときの抗力で楕円振動からワークに推力が伝わる。
【0057】
したがって、従来構成においては、
図17において進行波の進行方向と直交する略鉛直方向すなわち上方を正方向、下方を負方向とした場合に、楕円振動の抗力を正方向の振れで受けることはできても負方向の振れで受けることはできず、また、中立面Nから正方向に変位した位置で抗力を受けることはできても負方向に変位した位置で抗力を受けることはできない。このため、振動部1の上面に搬送路をどのように構成しても、ワークWの推力の方向は常に変わらないものであった。
【0058】
そこで本実施形態は、進行波発生手段2を、振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面Nが
図2で示したようにxy平面と垂直な方向を向き、
図11に示すように平面視においてたわみ進行波が振動部1の外側側面と内側側面で観測されるように構成する。
【0059】
そのために本実施形態は、
図1および
図6に示すように、加振部21を構成する第1圧電素子を第1直線部11の内側面11aに貼り付け、加振部22を構成する第2圧電素子を第2直線部12の内側面12aに貼り付けている。そして、各々の位置で振動部1に搬送方向と略直交する水平方向の定在波を励起し、これにより
図11の平面図で示したように、従来の進行波と直交する進行波を振動部1の周回方向に発生させている。この場合、振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面Nは、
図1および
図2に示したようにxy平面に垂直な方向を向いた状態となる。ただ、中立面Nが略鉛直方向を向いているだけでは、略水平方向に振動する定在波が合成されて振動部1の外側面および内側面に
図2に示す進行波ができ、外側面または内側面のある質点が略水平面内で楕円振動をするだけで、振動部1の上面に置かれるワークWの推力とはならない。
【0060】
そこで、本実施形態はさらに、この進行波発生手段2が生成する定在波の振動をワークの推力に必要な振動に変換する振動変換手段3を設けている。
【0061】
振動変換手段3の第1の態様として、
図12(a)に示すように、進行波の進行方向に沿って延びかつ定在波の略水平方向の振動から法線方向の抗力をワークに与えるべく、第1直線部11の搬送路と直交する断面内に、上方に開く一対の斜面C、C´を有する凹状をなす溝Gaと、上方に開く一対の斜面E、E´を有する凹状をなす溝Gbとを併設し、一方の溝GaをメイントラックMT、他方の溝GbをリターントラックRTとして用いる。
【0062】
或いは、第2の態様として、
図13(a)に示すように、進行波の進行方向に沿って延びかつ定在波の略水平方向の振動から法線方向の抗力をワークに与えるべく、第1直線部11の搬送路と直交する断面内に、上方に開く一対の斜面C、C´を有する凹状をなす溝Gaと、上方に開く一対の斜面D、D´を有する凹状をなす溝Gbとを併設し、一方の溝GaをメイントラックMT、他方の溝GbをリターントラックRTとして用いる。
【0063】
この場合、ワークは各斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´に同時に接する関係とされる。
【0064】
このとき、各溝Ga、Gbが斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´によって構成されるトラックにおいて、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´からの抗力に当該斜面とワークの間の摩擦係数を乗じた値が斜面C、C´同士、斜面D、D´同士、斜面E、E´同士で異なるように設定して、そのうち値が大きくなる方の斜面(図示例ではC、D、E)を振動変換手段3により推力発生に寄与する傾斜面として機能させている。
【0065】
ここで
図12と
図13を見ると、2つの溝Ga、Gbと中立面Nとの位置関係が異なっている。
【0066】
まず
図12(a)に示すものは、進行波の進行方向と直交する略水平方向の一方(+y方向)を正方向、他方(−y方向)を負方向とした場合に、各溝Ga、Gbによって構成されるメイントラックMTおよびリターントラックRTは中立面Nから互いに異なる方向すなわち正方向(+y方向)と負方向(−y方向)へ変位した位置に設けられ、互いに同じ方向に傾斜して平行な斜面C、Eを推力を生じさせる搬送面としている。
【0067】
また、
図13(a)に示すものは、進行波の進行方向と直交する略水平方向の一方(+y方向)を正方向、他方(−y方向)を負方向とした場合に、各溝Ga、Gbによって構成されるメイントラックMTおよびリターントラックRTは中立面Nに対してともに同じ正方向(y方向)へ変位した位置に設けられ、互いにハの字をなす斜面C、Dを振動変換手段3により推力発生に寄与する傾斜面としている。
【0068】
なお、各搬送路MT、RTの傾斜面とy軸のなす角をθ1、θ2、θ3とする。0<θ1、θ2、θ3<45°とする。
【0069】
図10において、振動部1の外面側で反時計回りに楕円振動する質点Zに対して、中立面Nを境にこれと対称な振動部1の内周面側の質点を符合Z´を付してプロットしていくと、この質点Z´は同図(a)から(d)に向かって変遷するにつれて時計回りの楕円軌道を描く。したがって、
図14(a)に示すように、振動部1の外側面側の質点Zと内側面側の質点Z´とでは、楕円軌道を質点が回る方向は逆回りとなる。
図13においてZ´0は振動部1が振動していないときの質点Z´の位置である。ちなみに、中立面N上の質点は楕円振動せず、振動部1の厚み方向に往復直線運動するだけである。
【0070】
すなわち、
図12(a)、13(a)の溝Ga、Gbにおいて、傾斜面C、D、E面に垂直な軸をZ´c、Z´
D、Z´
Eとすると、
図12(a)、
図13(a)の傾斜面Cは中立面Nよりも正方向(y方向)に変位した位置にあるため、傾斜面C上の質点は
図14(b)に示すように同じ方向に楕円振動する。そして、
図12に示すC面は振動部1が正方向(y方向)に振れたときにワークにZc´方向に抗力を及ぼし、これにより発生する推力は正方向(x方向)となる。これに対して、
図12(a)の傾斜面Eは中立面Nよりも負方向(−y方向)に変位した位置にあるため、傾斜面E上の質点Z´は
図14(d)に示すように逆方向に楕円振動する。よって、
図12に示すE面は振動部1が正方向(y方向)に振れてワークにZ
E´方向に抗力を及ぼすとき、これにより発生する推力は負方向(−x方向)となる。よって、
図12のメイントラックMTとリターントラックRTではワークは逆走する関係になる。
【0071】
また、
図13(a)の傾斜面C、Dはともに中立面Nよりも正方向(y方向)に変位した位置にあるため、傾斜面C、D上の質点Zは
図14(b)、(c)に示すように同じ方向に楕円振動する。ただし、C面は振動部1が正方向(y方向)に振れたときにワークにZc´方向に抗力を及ぼすのに対して、傾斜面Dは振動部1が負方向(−y方向)に振れたときにワークにZD´方向に抗力を及ぼす。したがって、傾斜面Cでは
図14(b)に示すように楕円の長軸のy方向端部でx方向の推力をワークに与えるのに対して、傾斜面Dでは
図14(c)に示すように楕円の長軸の−y方向端部で−x方向の推力をワークに与えることになる。よって、
図12のメイントラックMTとリターントラックRTでもワークは逆走する関係になる。
【0072】
このように、ワークの進む方向はメイントラックMTとリターントラックRTでは逆方向となるため、
図19に示したように、振動部1を構成する第1直線部11だけで、メイントラックMTとリターントラックRTを設計することが可能である。
【0073】
このように、リターントラックRTはカーブ部なしで設計することができるため、カーブ部でのワーク滞留を防止でき、リターントラックRT上でワークを安定して搬送することができる。
【0074】
またメイントラックMTとリターントラックRTの終端での離間幅ΔWは、
図18で示した従来技術の場合より小さくすることができる。そのため、ボウルフィーダBFを構成するボウルの切欠きを従来構成よりも小さくでき、ボウルでの進行波を生成しやすくなり、ボウル上でワークを安定して搬送することができる。
【0075】
なお、以上の原理からすると、
図12(b)のように中立面Nに対して水平方向の一方向(図ではy方向)と他方向(図では−y方向)に溝Ga、Gbを設けて互いにハの字をなす斜面C、E´面を振動変換する傾斜面として利用すれば、ワークを順走させる一対のトラックを形成することができる。
【0076】
また、
図13(b)のように中立面Nに対してともに水平方向の一方向(図ではy方向)に変位した位置に溝Ga、Gbを設けて互いに平行な斜面C、D´を振動変換する傾斜面として利用しても、ともにワークを順走させるトラックを形成することができる。
【0077】
さらに、
図12(a)の溝のうち逆ハの字となる斜面C´、Eを角度を調整して振動変換する傾斜面として利用したり、
図13(b)の溝のうち逆ハの字となる斜面C´、D´を角度を調整して振動変換する傾斜面として利用することもできる。
【0078】
さらまた、トラックを1本のみ、あるいは3本以上設けた場合には、1本ごとに搬送方向を設定することも可能である。
【0079】
以上のように、本実施形態のワーク搬送装置は、周回させて設けた振動部1と、この振動部1に空間的および時間的位相差の下に2つの定在波を励起し、振動部1のたわみによる楕円振動を連ねて進行波を発生させる進行波発生手段2と、前記振動部1の表面の一部に設定した略水平方向のワーク搬送路Tとを具備し、前記進行波発生手段2を、前記振動部1を梁と見立てた場合に当該梁をたわみ変形させた際に伸び縮みが生じない面である中立面Nが略鉛直方向(z方向)を向くように構成するとともに、この進行波発生手段2が発生する楕円振動を前記ワークの推力に必要な振動に変換する振動変換手段3を設けたものである。
【0080】
このため、振動部1のどこに生じる楕円振動のどの部位をワークの推力に変換するかによって、同じ直線部11上に設けたトラックの順走、順送を自在に実現することができ、設計自由度を大幅に向上させることが可能となる。
【0081】
特に、前記振動変換手段3は、
図4に示すように進行波の進行方向(x方向)に沿って延びかつ定在波の略水平方向(y方向)の振動を垂直抗力としてワークに与える傾斜面C、D、Eを設けるだけであるため、構成が簡素で自在な振動変換を行うことができる。
【0082】
具体的には、各溝Ga、Gbが斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´によって構成されるトラックにおいて、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´からの抗力に当該斜面とワークの間の摩擦係数を乗じた値が斜面C、C´同士、斜面D、D´同士、斜面E、E´同士で異なるように設定して、そのうち値が大きくなる方の斜面(図示例ではC、D、E)を振動変換手段3により推力発生に寄与する傾斜面として機能させている。このため、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´の角度を変更したり、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´とワークとの間が面接触か線接触かを設定したり、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´がワークと接する面にコーティングや表面加工を施したり、ワークとの接触面積を調整したり、斜面C、C´あるいはD、D´あるいはE、E´とワークとの間にエアフロート層を構成するなど、種々の設定を行うことによって、様々な態様で本発明を実施することが可能となる。
【0083】
また、進行波発生手段2は、
図2に示すように振動部1がたわみ変形したときに山又は谷となる側面に設けられて空間的および時間的位相差をもった2つの定在波を生成する第1加振部21、第2加振部22を含んで構成すればよいため、加振部21、22は振動部の内周側ではなくて外外周側でもよく、また進行波の周回方向のどの位置に設けてもよく、周回方向に沿って第1加振部21の圧電素子と第2加振部22の圧電素子を交互に設けてもよい。このように、進行波発生手段も設計の自由度が向上したものになる。
【0084】
具体的には、トラック状の振動部1に対して、
図12(a)、(b)の態様や
図13(a)、(b)の態様、さらにはこれらを変形させた態様などを通じて、2つの溝Ga、Gbの何れをメイントラックとして使いリターントラックとして使うか、あるいは何れもメイントラックまたはリターントラックとして使うかなどを、種々に設定することができる。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0086】
例えば、略水平方向、略鉛直方向には、水平成分や鉛直成分が支配的であれば搬送路が搬送方向に沿って下り勾配、登り勾配となっているような構成や、搬送路が搬送方向と直交する幅方向に傾斜しているような構成となる場合も含む。また、適用対象もリニアフィーダに限定されず、例えばボウルフィーダにおいてワークの搬送路の接線方向を略水平方向としてらせん軌道を登る搬送路とらせん軌道を下る搬送路に対して本発明を適用することもできる。
【0087】
さらに、
図13に示すようにメイントラックMTより外側にリターントラックRTを形成して、整列されていないワークをボウルフィーダに戻し、ワークを循環することもできる。
【0088】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。