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特開2019-163230中性子ビーム力学療法[Neutron Beam Dynamic Therapy:(NBDT)]
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-163230(P2019-163230A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】中性子ビーム力学療法[Neutron Beam Dynamic Therapy:(NBDT)]
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/22 20060101AFI20190830BHJP
   A61K 41/00 20060101ALI20190830BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20190830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190830BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20190830BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20190830BHJP
   A61K 101/00 20060101ALN20190830BHJP
【FI】
   A61K33/22
   A61K41/00
   A61K51/00 100
   A61P35/00
   C07F5/02 C
   C07B59/00
   A61K101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-72735(P2018-72735)
(22)【出願日】2018年3月19日
(71)【出願人】
【識別番号】317014769
【氏名又は名称】株式会社ダイナミックサイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】518117027
【氏名又は名称】徳永 彦
(71)【出願人】
【識別番号】518117016
【氏名又は名称】堀 均
(72)【発明者】
【氏名】堀 均
(72)【発明者】
【氏名】徳永 彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084AA12
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086HA30
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB28
4H006AC84
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB28
4H048VA75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中性子照射により広域分子追跡及び定位破壊力を持つ新規ホウ素同位体追跡型薬剤で、選択的な腫瘍細胞への集積性が高く、且つ水溶解性を保持する事から、中性子ビーム力学療法(NBDT)、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に利用される新規ホウ素同位体トレース薬剤の提供。
【解決手段】(1,6E)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオンの非活性部位にホウ素同位体(10B)及び(11B)を導入し、以下の式を基本構造として、ホウ素同位体を合成して、配糖体化反応をへて水溶解性、腫瘍細胞への集積選択を高めNBDT、BNCT薬剤を実現する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1,6E)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオンの非活性部位にホウ素同位体(10B)及び(11B)を導入し、NBDT、BNCTに利用される薬剤。
下式(1)
【請求項2】
請求項1を利用し、中性子ビーム力学療法[Neutron Beam Dynamic Therapy:(NBDT)]、ホウ素中性子捕捉療法[Boron Neutron Capture Therapy:(BNCT)]に利用する薬剤。
【請求項3】
請求項1の下式(1)に単糖類、オリゴ糖類を導入するホウ素同位体(10B,11B)配糖体である。
下式(2)
式中nはグルコシル基、ガラクトシル基、マンノシル基、フラクトシル基、キシロシル基などからなる群から選ばれる単糖残基及び多糖残基である。
【請求項4】
請求項1、2からなるホウ素同位体含有化合物で、NBDT、BNCTに利用される薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホウ素同位体トレース薬剤で、分子追跡機能を持たせた新規にNBDT薬剤に関する、追跡及び定位破壊力を持つホウ素同位体トレース物質、薬剤で有り本発明はホウ素中性子捕捉療法[Boron Neutron Capture Therapy:(BNCT)]にも応用適合できる。
【背景技術】
【0002】
本発明の中性子ビーム力学療法(NBDT)とは中性子照射により広域分子追跡及び定位破壊力を持つホウ素同位体トレース薬剤である。現在放射線腫瘍学分野のBNCTホウ素キャリア分子を目的として最近多くの化合物が合成されているが、それ自体薬理活性を発現する薬剤は全くみられていない。
【0003】
本発明のNBDTは中性子照射により分子追跡及び定位破壊を持つホウ素同位体化合物は低酸素細胞放射線増感剤、低酸素標的薬剤や低酸イメージング剤の分子設計にも適用される。
【0004】
本発明はホウ素同位体原子を全ての薬剤に含有させることで、薬物動態解析ができる。また本発明のホウ素同位体トレース薬剤は新規及び既存の薬物に新規及び既存の薬物にホウ素原子を導入する化学ドーピング技術で、分子追跡ができる製剤、化合物を提供することができる。
【0005】
本発明はホウ素同位体トレース薬剤を癌組織に到達させる、薬物送達(DDS)に特化されるNBDTによる癌療法であり、本発明の分子追跡及び定位破壊力を保持する製剤を提供できることを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献1】
【0006】
【非特許文献1】Hori H,Uto Y,Nakata E.Medicinal elecronomics bricolage design of Hypoxia−targeting antineoplastic drugs and invention of boron trace drugs as innovative future−architectural drugs Anticancer Res.,30.3233−324.
【非特許文献2】Masunaga S,Nagasawa H,Sakurai Y,Uto Y,Hori H,Nagata K,Suzuki M,Maruhashi A,Kinashi Y,Ono K.Int.J.Hyperthmia,22,287−299(2006).
【非特許文献3】Nakata E Nagasawa H,Gotoh K,Sakurai Y,Uto Y Hori H,Nagata K,Suzuki M,Maruhashi A,Kinashi Y,Ono K.Radiation Medicine,24,98−107(2006).
【非特許文献4】Masunaga S,Nagasawa H,Hiraoka M,Sakurai Y,Uto Y,Hori H,Nagata K,Suzuki M,Maruhashi A,Kinashi Y,AnticancerRes.,24,2975−2984(2004)
【非特許文献5】Masunaga S,Nagasawa H,Hiraoka M,Sakurai Y,Hori H,Nagata K,Suzuki M,Maruhashi A,Kinashi Y,Ono K.Appl.Radiat.Isot.,61,953−958(2004)
【非特許文献6】Nakata E,Yukimachi Y,Nazumi Y,Uto Y,Maezawa H,Hashimoto T,Okamoto Y,Hori H.Chem.Commun.,46,3526−352
【非特許文献7】Nakashima H,Ikkyu K,Nakashima K,Sano K,Nakata E,Nagasawa H,Sugimoto H,Shiro Y,Nakagawa Y,Hori H.Adv.Exp.Med.Biol.,662,315−321(2010)
【非特許文献8】Nakata E,Yakimachi Y,Kariyazono H,Im S,Abe C,Uto Y,Maezawa H,Hashimoto T,Okamoto Y,Hori H.Bioorg.Med.Chem,17,6952−6958(2009)
【非特許文献9】Nakashima H,Uto Y,Nakata E,Nagasawa H,Ikkyu K,Hiraoka N,Nakashima K,Sasaki Y,Sugimoto H,Shiro Y,Hashimoto Okamoto Y,Asakawa Y,Hori H.Bioorg.Med.Chem.16,8661−8669(2008)
【非特許文献10】Nakayama S,Uto Y,Tanimoto K,Okuno Y,Sasaki Y,Nagasawa H,Nakata E,Araki K,Momose K,Fujita T,Hashimoto T,Okamoto Y,Asakawa Y,Goto S,Hori H.Bioorg.Med.Chem.16,7705−7714(2008)
【非特許文献11】Uto Y,Nagasawa H,Jin C.−Z.,Nakayama S,Tanaka A,Kiyoi S,Nakashima H,Shimamura M,Inayama S,Fujiwara T,Takeuchi Y,Uehara Y,Kirk K.L.,Nakata E,Hori H.Bioorg.Med.Chem.16,6042−6053(2008)
【非特許文献12】Vijay Kumar G R.,Manohar B & Divakar S.Eu Food Res Technol,223(2006)725−730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はホウ素トレース薬剤、既存薬剤の骨格にホウ素同位体を埋込んだスキャホールドを合成する。この候補スキャホールドとしては、ベンゼン等価帯体のアザボリン分子群やヘテロ芳香環を中心に選択し、癌組織へ特異的な結合に特化したホウ素同位体化合物を選択性と集積性、薬物送達に優れた薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は中性子照射による広域分子追跡及び定位破壊を持つホウ素同位体トレース薬剤及び化合物を提供できる。本発明は課題を解決するに当たり誠意研究の結果、一つの様態で(1E,6E)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(クルクミン)化合物を出発原料とし、第一の様態は本発明のホウ素同位体追跡薬剤の骨格をなすリード化合物で次なる物を提供する。
一般式
【0009】
【化1】
【0010】
(化1)は抗癌、発癌予防作用を有しているが、水溶解性に乏しくこの様態では本発明の分子追跡及び定位破壊力を有するホウ素同位体トレース薬剤として生体利用能が低く、腫瘍細胞での臨床効果を担保するホウ素濃度に到達させることが出来ない。
【0011】
そこで本発明は(化1)式のフェノール水酸基を配糖体化し、水可溶性にする事でホウ素同位体トレース薬剤としてNBDT薬剤、BNCT薬剤として提供できる。配糖体化については既存の反応法でもよく、配糖体化に関しては特に限定されるものではなく、化学合成法、組織培養細法や微生物菌体を用いる法などがあるが、本発明では収率、純度、時間の点から配糖体化反応、ホウ素同位体化反応とも合成法にて製造した。
【0012】
第一の様態である(化1)のリード化合物へホウ素同位体を化学結合させ、
一般式
【0013】
【化2】
一般式(化2)が合成された、詳細は実施例1に示した。
【0014】
第二の様態は(化2)で得られたクルクミンホウ素同位体へ更に水可溶性にするために配糖体化を行って、水溶性クルクミンホウ素同位体が得られ、本発明のトレース薬剤、分子追跡及び定位破壊力機能を持ったNBDT薬剤を提供でき、且つBNCTに於いても適用できる製剤が下記、一般式[化3]
一般式
【0015】
【化3】
が得られた。詳細は実施例2に提示する。
【発明の効果】
【0016】
本発明での(1E,6E)−1,7ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオンの基本構造を基にホウ素同位体を化学結合し、更に配糖体化する事で水溶解性が増強された新規ホウ素同位体トレース薬剤は高い選択的分子追跡性を持ち、中性子照射により定位破壊力を有し、従来のBNCTに於ける生体内での低い利用能を著しく向上させる事ができ、NBDTに於ける新規ホウ素同位体トレース薬剤で有り腫瘍細胞、癌細胞の抑制、壊死させる事ができる。
【0017】
更に本発明は既知の医薬品、又は薬剤にホウ素同位体を導入し、新規ホウ素同位体トレース医薬品、薬剤としてNBDT或いはBNCTとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[化1]を基本構造として、ホウ素同位体を合成し、配糖体化反応をへて水溶解性を高めNBDT及びBNCTに使用される薬剤を実現した。
【実施例1】
【0019】
[化1]のクルクミン50mgを採りジエチルエーテル5.0mLに溶解し、0.407mmolの三フッ化ホウ素同位体エタノール50μLを滴下させながら加え、この反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応後、溶媒を減圧下溜去させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーの移動相5%MeOH/CHClに溶解し、カラムクロマトグラフィーで精製し、ホウ素同位体クルクミン27mgが得られた。
【0020】
H,NMR(400MHz,CHCl−d):7.99(d,J=15.4Hz,2H),7.53−7.61(m,1H),6.96−7.8(m,H),6.56(d.J=15.4Hz,2H),6.02−6.03(s,6H);HRMS(FAB+)calculate for C2119BF(M+)m/z416.1243,found 416.1252.
【実施例2】
【0021】
実施例1で得られた試料20mgを採り、1.0mLのジメチルスルホキシドを加えて攪拌しながら0.1Mのベンジル塩化トリエチルアンモニウム1.0mLを加えて更に攪拌し、0.01Mの酢酸ナトリウム緩衝液10mLを添加する。この反応混合物にグルコース85.5mgとβ−グルコシターゼ43.2mgを添加し、37.5−45.5±1.0℃、150rpmで35時間インキュベーションした。反応後沸騰したウオータバス水浴中で5−10分間保持し、その後室温まで冷却する。生成反応混合物は酢酸エチルを用いて抽出した後、溶媒は減圧下溜去後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、クルクミン−ビス−β−D−グルコシドの濃縮生成物、収率25%が得られた。
【0022】
NMR(400MH,DMSO−d),3.1−3.4(m,8H),3.6(m,3H),3.77(s,6H,OCH3),4.31(s,1H),4.5(t,2H,J=5.5Hz),4.93(d,2H J=7Hz),4.98(d 2H,J=5Hz),5.06(s,2H),5.25(d,2H,J=4Hz),6.04(s,1H),6.81(d,2H,7.52(d,2H,J=16Hz);ESI−MS,m/z715[M+Na]