(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-163249(P2019-163249A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】メロキシカム水性溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5415 20060101AFI20190830BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20190830BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20190830BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20190830BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20190830BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20190830BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20190830BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20190830BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61P29/00
A61P11/00
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-49160(P2019-49160)
(22)【出願日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2018-50190(P2018-50190)
(32)【優先日】2018年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000112680
【氏名又は名称】フジタ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 克規
(72)【発明者】
【氏名】土屋 和也
(72)【発明者】
【氏名】高力 宙
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC04
4C076DD22Z
4C076DD38E
4C076DD50E
4C076DD50M
4C076DD50Z
4C076DD60E
4C076DD60Q
4C076FF15
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC89
4C086GA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA07
4C086ZA08
4C086ZA59
4C086ZB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療が可能であって、かつ、水性溶液中のメロキシカム濃度を向上させ、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性を有する、メロキシカム水性溶液の提供。
【解決手段】哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎剤治療用のメロキシカム水性溶液であって、メロキシカムと、トロメタモールと、N−メチル−2−ピロリドンとを含有することを特徴とするメロキシカム水性溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎剤治療用のメロキシカム水性溶液であって、
メロキシカムと、トロメタモールと、N−メチル−2−ピロリドンとを含有することを特徴とするメロキシカム水性溶液。
【請求項2】
メロキシカムを5〜100mg/mlの量で含有する請求項1に記載のメロキシカム水性溶液。
【請求項3】
トロメタモールを13〜30mg/mlの量で含有する請求項1または2に記載のメロキシカム水性溶液。
【請求項4】
N−メチル−2−ピロリドンを75〜290mg/mlの量で含有する請求項1乃至3いずれか一つに記載のメロキシカム水性溶液。
【請求項5】
さらにプロピレングリコールを含有する請求項1乃至4いずれか一つに記載のメロキシカム水性溶液。
【請求項6】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは塩酸、あるいはこれらを含有する請求項1乃至5いずれか一つに記載のメロキシカム水性溶液。
【請求項7】
pHが8.5〜9.0である請求項1乃至6いずれか一つに記載のメロキシカム水性溶液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るメロキシカムであって、特に哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療用のメロキシカム水性溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
メロキシカム(4-ヒドロキシ−2−メチル―N−(5―メチル−2−チアゾリル)−2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキサミド−1,1−ジオキシド)は、NSAID(非ステロイド系抗炎症剤)の種類に属する活性物質として知られている。既に、このメロキシカムを用いた製剤が幾つか知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、優れた抗炎症作用を有し、刺激が少なく、安全性が高い眼科用水性製剤を提供することが記載されている。特許文献1は、メロキシカム及びトロメタモールからなる眼科用が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、哺乳動物において呼吸器系疾患や炎症を治療する皮内又は皮下無針注射用の安定な高濃度メロキシカム溶液について提案されており、「メロキシカム塩とある種の賦形剤に加えて、クエン酸、レシチン、グルコン酸、酒石酸、リン酸及びEDTA又はその塩より選ばれる他の賦形剤を含む、活性物質の含量が35〜100 mg/mlの範囲にある高濃度メロキシカム溶液が長期にわたって粒子を含まず安定であるように製造することができることが見出され」ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO01/37838号公報
【特許文献2】特許第5348818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人らは、従来より哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療についての鋭意研究していたところ、特許文献1、2についても検討していたが、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させる点と、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性の点について課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療が可能であって、かつ、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させ、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性を有するメロキシカム水性溶液の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために出願人らが、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させる点と、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性の点を解消すべく研究した結果、メロキシカムと、トロメタモールと、N−メチル−2−ピロリドンを共に含んでいる場合に、哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療が可能であって、かつ、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させ、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性を有することが判明した。
【0009】
すなわち、本発明に係るメロキシカム水性溶液は、哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎剤治療用のメロキシカム水性溶液であって、メロキシカムと、トロメタモールと、N−メチル−2−ピロリドンとを含有することを特徴とする。
【0010】
また、メロキシカムを5〜100mg/mlの量で含有してもよく、トロメタモールを13〜30mg/mlの量で含有することもでき、N−メチル−2−ピロリドンを75〜290mg/mlの量で含有してもよく、さらにプロピレングリコールを含有することもでき、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは塩酸、あるいはこれらを含有してもよい。
さらに、pHが8.5〜9.0であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るメロキシカム水性溶液を用いることで、哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎治療が可能であって、かつ、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させ、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性を有することとなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るメロキシカム水性溶液は、メロキシカムと、トロメタモールと、N−メチル−2−ピロリドンからなる。
【0013】
メロキシカムは、人に対しては鎮痛剤、解熱剤、眼科用抗炎症作用を発揮する非ステロイド性抗炎症薬であるが、家畜等に対しても変形性膝関節症での痛みや炎症の制御に用いられる。
【0014】
溶媒が中性におけるメロキシカムの水に対する溶解度は飽和濃度で約0.2mg/100mLであり、極めて低い溶解度であり、水性製剤とするには不十分な濃度である。このため、メロキシカムを単に水に添加しても高濃度の水性溶液にすることができない。
【0015】
本発明に係るメロキシカム水性溶液において、メロキシカムの濃度は、目的とする薬効が得られ、かつ、水性溶液として5〜100(mg/mL)(0.5〜10(w/v%))であるのが好ましい。
【0016】
本発明のトロメタモール(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)は、溶解補助剤として使われ、注射薬への添加物やアシドーシス治療剤として用いられる。
【0017】
トロメタモールは、特許文献1においてもメロキシカムとともに用いられ、トロメタモールの濃度が0.48〜6w/v%である際に、メロキシカムの濃度が0.7〜3w/v%となっていた。
【0018】
本願発明では、よりメロキシカム水性溶液中の濃度を向上させるために、トロメタモールを13〜30(mg/ml)(1.3〜3.0(w/v%))とした際に、メロキシカムを5.0〜100(mg/ml)(0.5〜10(w/v%))となるように構成される。
【0019】
この濃度をメロキシカムとトロメタモールのみで達成すると、メロキシカムの結晶が析出しやすくなるという課題があった。この課題を解消するために用いられるのが、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0020】
N−メチル−2−ピロリドンは、ラクタム構造を含む5員環の構造を持つ有機化合物で、極性溶媒の一つである。メロキシカムとトロメタモールとN−メチル−2−ピロリドンを同時に含む哺乳動物における疼痛、炎症、熱病、又は呼吸器系疾患の際の解熱鎮痛消炎剤治療用のメロキシカム水性溶液はこれまでの引用文献では提案されていない。
【0021】
本発明では、よりメロキシカム水性溶液中の濃度を向上させるために、トロメタモール13〜30(mg/mL)(1.3〜3.0w/v%)、N−メチル−2−ピロリドンを75〜290(mg/mL)(7.5〜2.9w/v%)とした際に、メロキシカムはその濃度が5〜100(mg/mL)(0.5〜10w/v%)の濃度に向上させることができる。
可溶化剤は、他に例えば、プロピレングリコールなどが用いることができる。
【0022】
本発明では、プロピレングリコール180〜250(mg/mL)(18〜25w/v%)とすることが好ましい。
【0023】
この他、pHが8.5〜9.0を得るためにpH調整剤として、本発明では、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、塩酸が用いられる。また、溶剤としては一般的な注射用水が用いられる。
【0024】
本発明のメロキシカム水性溶液は、動物における疼痛、炎症、熱病、急性乳腺炎、下痢、跛行、腫瘍学的徴候、運動器官による障害、呼吸器系疾患等における消炎・鎮痛およびそれによる症状の改善、特に好ましくは疼痛、炎症、熱病、下痢、呼吸器系疾患、腫瘍学的徴候を治療するのに適する。治療は、抗生物質治療とともに施すことができる。
【0025】
本発明のメロキシカム水性溶液は、動物、好ましくは哺乳動物、更に特に家庭用ペット、作業用動物又は家畜動物を治療するのに適する。
【0026】
本発明のメロキシカム水性溶液は、動物、特に1kgより大きい、更に好ましくは2〜70kg、最も好ましくは5〜60kgの家庭用ペット、又は好ましくは20kg〜500kgの産業用動物又は家畜動物、最も好ましくは500kgを超える大型動物を治療するのに適する。
【0027】
本発明のメロキシカム水性溶液の用量は、体重1kg当たり0.1〜1.0mgの活性物質、好ましくは0.4〜0.8mg/kg体重、特に好ましくは0.5mg/kg体重に対応しなければならない。
【0028】
本発明のメロキシカム水性溶液は、文献から既知の水性液製剤を調製する方法を用いて調製することができる。
【0029】
ここで、下記実施例によって本発明のメロキシカム溶液を具体的に説明する。当業者は実施例が例示としてのみ示され且つ限定するものとしてみなされるべきでないことを承知している。
【0030】
(実施例)
実施例1:0.5%メロキシカム水性溶液
実施例1の成分分量:g/L
メロキシカム 5.0
トロメタモール 13.0
N−メチル−2−ピロリドン 75.0
プロピレングリコール 200.0
ジエタノールアミン pH9.0にするのに十分な量
塩酸 pH9.0にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例1の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム5.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを9.0に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0031】
実施例2:5%メロキシカム水性溶液
実施例2の成分分量:g/L
メロキシカム 50.0
トロメタモール 20.0
N−メチル−2−ピロリドン 130.0
プロピレングリコール 180.0
ジエタノールアミン pH9.0にするのに十分な量
塩酸 pH9.0にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例2の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム50.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを9.0に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0032】
実施例3:10%メロキシカム水性溶液
実施例3の成分分量:g/L
メロキシカム 100.0
トロメタモール 27.0
N−メチル−2−ピロリドン 290.0
プロピレングリコール 220.0
ジエタノールアミン pH9.0にするのに十分な量
塩酸 pH9.0にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例3の成分分量に従い,トロメタモールN−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム100.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを9.0に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0033】
実施例4:5%メロキシカム水性溶液
実施例4の成分分量:g/L
メロキシカム 50.0
トロメタモール 15.0
N−メチル−2−ピロリドン 170.0
プロピレングリコール 220.0
ジエタノールアミン pH8.9にするのに十分な量
塩酸 pH8.9にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例4の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム50.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを8.9に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを8.9に調整した。
【0034】
実施例5:5%メロキシカム水性溶液
実施例5の成分分量:g/L
メロキシカム 50.0
トロメタモール 25.0
N−メチル−2−ピロリドン 180.0
プロピレングリコール 220.0
ジエタノールアミン pH8.5にするのに十分な量
塩酸 pH8.5にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例5の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム50.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを8.5に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを8.5に調整した。
【0035】
実施例6:10%メロキシカム水性溶液
実施例6の成分分量:g/L
メロキシカム 100.0
トロメタモール 30.0
N−メチル−2−ピロリドン 260.0
プロピレングリコール 250.0
ジエタノールアミン pH8.7にするのに十分な量
塩酸 pH8.7にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例6の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のジエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム100.0gを加えて溶解・撹拌した後,ジエタノールアミンを用いてpHを8.7に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてジエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを8.7に調整した。
【0036】
実施例7:5%メロキシカム水性溶液
実施例2の成分分量:g/L
メロキシカム 50.0
トロメタモール 13.0
N−メチル−2−ピロリドン 130.0
プロピレングリコール 180.0
モノエタノールアミン pH9.0にするのに十分な量
塩酸 pH9.0にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例2の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のモノエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム50.0gを加えて溶解・撹拌した後,モノエタノールアミンを用いてpHを9.0に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてモノエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0037】
実施例8:5%メロキシカム水性溶液
実施例2の成分分量:g/L
メロキシカム 50.0
トロメタモール 30.0
N−メチル−2−ピロリドン 130.0
プロピレングリコール 180.0
トリエタノールアミン pH9.0にするのに十分な量
塩酸 pH9.0にするのに十分な量
注射用水 合計1000mLとなる量
方法:注射用水400mLに,実施例2の成分分量に従い,トロメタモール,N−メチル−2−ピロリドン及びプロピレングリコールを加えて撹拌・溶解した。この液に適量のトリエタノールアミンを加えて撹拌した。さらにメロキシカム50.0gを加えて溶解・撹拌した後,トリエタノールアミンを用いてpHを9.0に調整した。これに注射用水を加えて合計1000mLとし,必要に応じてトリエタノールアミン及び/または塩酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0038】
(貯蔵条件及び試験方法・結果)
室温保存:25℃
実施例1〜8について36カ月間室温保存したところ,結晶の析出やその他の外観の変化はなかった。
冷蔵保存:4℃
実施例1〜3,7及び8について6カ月間冷蔵保存したところ,結晶の析出やその他の外観の変化はなかった。
冷凍保存:−18℃
実施例1〜,7及び8について6カ月間冷凍保存したところ,結晶の析出やその他の外観の変化はなかった。
温度サイクル保存:
実施例1〜8について,−18℃,12時間→20℃,12時間の温度サイクルを10回繰り返したところ,結晶の析出やその他の外観の変化はなかった。
40℃,75%RH保存:
実施例2について,40℃,75%RHの条件下で6カ月間保存したところ,結晶の析出やその他の外観の変化及びメロキシカム含有量の変化はなかった。
以上の結果について表1に示す。
【0040】
(比較例1)
メロキシカム及びトロメタモールからなる眼科用水性製剤について下記の条件で調整して、その保存結果について確認した。
・成分分量(1L中)
上記引用文献の実施例を参照して,以下の組成物を調製した。
メロキシカム 50g
トロメタモール 30g
塩酸及び水酸化ナトリウム 適量(pH8.4)
精製水 適量
・貯蔵条件及び試験結果
室温保存(25℃)を試みたところ,即日結晶析出が確認された。
冷蔵保存(4℃),冷凍保存(−18℃)も同様に析出/凍結が確認された。この比較例1の条件は特許文献1と同等の条件である。
【0041】
(比較例2)
無針注射用の安定な高濃度メロキシカム溶液について下記の条件で調整して、その保存結果について確認した。
・成分分量(1L中)
上記引用文献の各成分の範囲及び実施例を参照して,以下の組成物を調製した。
メロキシカム 55g
メグルミン 40g
マクロゴール300 150g
ポロキサマー188 50g
エタノール 156g
グリシン 5g
EDTA-Na 1g
塩酸及び水酸化ナトリウム 適量(pH8.8)
注射用水 適量
・貯蔵条件及び試験結果
室温保存(25℃)及び冷蔵保存(4℃)では6カ月間外観の変化は見られていない。
冷凍保存(−18℃)に析出/凍結が確認された。その後,室温に戻すと再溶解する。
凍結融解試験においても析出/凍結は確認された。その後,室温に戻すと再溶解する。
【0042】
この比較例2の条件は特許文献2と同等の条件である。
【0043】
比較例1では加温調製により調製はできたものの,室温保存(25℃)ですぐに再溶解が困難な結晶の析出が確認された。実施例1から8によればメロキシカム0.5%〜10%の範囲で,室温冷蔵冷凍のいずれの保存に堪える処方を示しており,比較例1とは明らかな優位性が確認された。
比較例2は室温保存(25℃)及び冷蔵保存(4℃)では変化はなかったが,さらなる低温下の冷凍保存(−18℃)においては結晶の析出かつ凍結する変化が見受けられた。凍結融解試験においても同様であった。これに対して,実施例1から8では冷凍保存(−18℃)での変化もなく,優位である。
従って、メロキシカム水性溶液中の濃度を向上させる点と、長期にわたって析出物が発生しない保存安定性の点が解消される。
牛のような大型動物の診療場面においては、メロキシカムの高濃度注射液が投与量が少なくなる点で投与される牛への負担や、投与する際に獣医師にとって利便性が良いことで非常に有用性があるため、獣医療現場では高濃度溶液が求められている。
また、牛の飼育環境は寒冷地が適しているため、日本国内でも特に寒冷地で多く飼育されているが、冬期の寒冷地の気温は−20℃程度になることあり、診療現場では注射液が保管中に凍結してしまうことがしばしば発生し、そこで結晶の析出が発生することで獣医師の診療にとって大きな妨げになっている。
従って、寒冷地でも結晶の凍結することなく、メロキシカムの析出もない高濃度溶液は、これらの問題を解決できる技術として非常に有用である。