【解決手段】安全運転支援アプリAP1は、道路構造情報、運転操作情報、及び試験データに基づいて、車載機11を備える試験車両10と疑似車載機22を有する仮想車両50とが交錯するか否かを判定し、肯定判定の場合に試験車両10に対する安全運転支援の支援内容を決定し、試験装置20は、車載機11の模擬位置情報を基準として、疑似路側機21及び疑似車載機22の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる試験データを生成する試験データ生成部31と、支援内容が道路構造情報、運転操作情報、及び試験データの内容に整合しているか否かを判定する合否判定部33を備える。
前記運転操作情報は、前記試験車両のブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の試験システム。
前記試験データは、各前記仮想車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、車両サイズ種別情報、及び車両用途種別情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の試験システム。
前記車両状態情報は、前記模擬車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、ブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の試験システム。
前記複数の制御対象モデルは、エンジン(61a)、アクセル(61b)、ブレーキ(61c)、及びステアリング(61d)を含む制御対象の挙動を模擬するシミュレーションソフトウェアにより構成されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の試験システム。
前記動的情報は、各前記仮想車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、車両サイズ種別情報、及び車両用途種別情報のうちの少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の試験システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたような従来のシミュレーション装置は、運転車両の位置情報を基準として周辺車両の位置情報を相対的に変化させるものではないため、道路上の車両間の交錯状況を模擬することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、車載アプリケーションの動作試験を効率的に実施することができる試験システム及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る試験システムは、車載機が搭載され、安全運転支援に関する処理を実行する車載アプリケーションが実装された試験車両と、少なくとも1つの疑似路側機及び複数の疑似車載機からなるフレーム送信部を備え、道路の交通流を模擬するための試験データを用いて前記車載アプリケーションに対する試験を行う試験装置と、道路上における前記車載機の位置を模擬した模擬位置情報を生成するための疑似GNSS信号を出力するGNSS信号源と、を備える試験システムであって、前記試験装置は、前記疑似GNSS信号に基づいた前記車載機の前記模擬位置情報を基準として、前記疑似路側機及び前記複数の疑似車載機の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる前記試験データを生成する試験データ生成部と、前記試験車両に対する運転操作を模擬するための運転操作情報を生成する運転操作情報生成部と、を備え、前記フレーム送信部は、前記試験車両の前記車載機に前記試験データを周期的に送信し、前記試験車両は、前記運転操作情報を前記車載アプリケーションに伝達する運転制御部と、前記車載機の前記模擬位置情報に対応する道路の道路構造情報を含む地図情報を、前記車載アプリケーションに提供する地図情報提供部と、を備え、前記車載機は、前記試験データを前記車載アプリケーションに伝達し、前記車載アプリケーションは、前記道路構造情報、前記運転操作情報、及び前記試験データに基づいて、前記試験車両と各前記疑似車載機を有する仮想車両とが交錯するか否かを判定し、肯定判定の場合に前記試験車両に対する安全運転支援の支援内容を決定し、前記試験装置は、前記車載アプリケーションによる前記支援内容が前記道路構造情報、前記運転操作情報、及び前記試験データの内容に整合しているか否かを判定する合否判定部を更に備える構成である。
【0012】
この構成により、本発明に係る試験システムは、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、試験車両と他の車両間の道路上の交錯状況を模擬して安全運転支援用アプリケーションの動作試験を効率的に実施することができる。
【0013】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記道路構造情報は、立体構造の道路の高さ情報を含む構成であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明に係る試験システムは、道路構造情報が立体構造の道路の高さ情報を含んでいるため、例えば、立体交差などの立体構造の道路において上段側と下段側を走行する車両同士が衝突するというような誤判定を安全運転支援用アプリケーションが行うか否かを試験することができる。
【0015】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記運転操作情報は、前記試験車両のブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含む構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る試験システムは、安全運転支援の支援内容が試験車両の挙動に整合しているか否かを判定することができる。
【0017】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記試験データは、各前記仮想車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、車両サイズ種別情報、及び車両用途種別情報のうちの少なくとも1つの情報を含む構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る試験システムは、路側機と他車両の車載機が試験車両にメッセージを送信する状況を模擬することができる。
【0019】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記試験車両は、前記車載アプリケーションによる前記支援内容に応じた画像警報の表示と音声情報の鳴動を行う表示鳴動部を更に備え、前記試験装置は、前記表示鳴動部により表示された前記画像警報を画像データとして取得する画像取得部と、前記表示鳴動部により鳴動された前記音声情報を音声データとして取得する音声取得部と、を更に備え、前記合否判定部は、前記画像データ及び前記音声データに基づいて前記支援内容を認識する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る試験システムは、安全運転支援用アプリケーションが、表示鳴動部に支援内容を適切に伝達しているか否かを試験することができる。
【0021】
また、本発明に係る試験システムは、車載アプリケーションにより制御される複数の制御対象モデルを有する模擬車両と、前記車載アプリケーションに対する試験を行う試験装置と、を備える試験システムであって、前記試験装置は、前記模擬車両の模擬位置情報を含む車両状態情報の初期値を生成する車両状態情報生成部と、前記車両状態情報の時間変化値の許容範囲の情報を生成する許容範囲情報生成部と、前記模擬車両の前記模擬位置情報に対応する地点を含む高精度地図情報を含む静的情報を生成する静的情報生成部と、仮想路側機から周期的に送信される路車間通信メッセージ、及び、前記模擬車両の周辺に存在する仮想車両から周期的に送信される車車間通信メッセージを含む動的情報を生成する動的情報生成部と、事故情報及び渋滞情報を含む準動的情報を生成する準動的情報生成部と、交通規制情報及び道路工事情報を含む準静的情報を生成する準静的情報生成部と、前記許容範囲の情報に基づいて合否判定を行う合否判定部と、を備え、前記車載アプリケーションは、前記動的情報、前記静的情報、前記準動的情報、前記準静的情報、及び、車両状態情報の初期値に基づいて、前記複数の制御対象モデルを操作することにより前記模擬車両の模擬走行を実施し、前記合否判定部が、前記車載アプリケーションによる前記模擬走行で得られる前記模擬車両の前記車両状態情報の時間変化値が前記許容範囲に含まれているか否かを判定する構成である。
【0022】
この構成により、本発明に係る試験システムは、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、自動運転アプリの動作試験を効率的に実施することができる。
【0023】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記車両状態情報は、前記模擬車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、ブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含む構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明に係る試験システムは、模擬走行時の模擬車両の車両状態情報が所望の許容範囲に収まっているか否かを判定することができる。
【0025】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記複数の制御対象モデルは、エンジン、アクセル、ブレーキ、及びステアリングを含む制御対象の挙動を模擬するシミュレーションソフトウェアにより構成されていてもよい。
【0026】
この構成により、本発明に係る試験システムは、高精度地図情報における模擬車両の模擬走行を実施することができる。
【0027】
また、本発明に係る試験システムにおいては、前記動的情報は、各前記仮想車両の前記模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、車両サイズ種別情報、及び車両用途種別情報のうちの少なくとも1つの情報を含む構成であってもよい。
【0028】
この構成により、本発明に係る試験システムは、路側機と周辺車両の車載機が模擬車両にメッセージを送信する状況を模擬することができる。
【0029】
また、本発明に係る試験方法は、車載機が搭載され、安全運転支援に関する処理を実行する車載アプリケーションが実装された試験車両と、少なくとも1つの疑似路側機及び複数の疑似車載機からなるフレーム送信部を備え、道路の交通流を模擬するための試験データを用いて前記車載アプリケーションに対する試験を行う試験装置と、道路上における前記車載機の位置を模擬した模擬位置情報を生成するための疑似GNSS信号を出力するGNSS信号源と、を用いる試験方法であって、前記疑似GNSS信号に基づいた前記車載機の前記模擬位置情報に対応する道路の道路構造情報を含む地図情報を、前記車載アプリケーションに提供するステップと、前記疑似GNSS信号に基づいた前記車載機の前記模擬位置情報を基準として、前記疑似路側機及び前記複数の疑似車載機の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる前記試験データを生成するステップと、前記試験車両に対する運転操作を模擬するための運転操作情報を生成するステップと、前記試験車両の前記車載機に前記試験データを周期的に送信するステップと、前記試験データを前記車載アプリケーションに伝達するステップと、前記運転操作情報を前記車載アプリケーションに伝達するステップと、前記道路構造情報、前記運転操作情報、及び前記試験データに基づいて、前記試験車両と各前記疑似車載機を有する仮想車両とが交錯するか否かを判定し、肯定判定の場合に前記試験車両に対する安全運転支援の支援内容を決定するステップと、前記支援内容が前記道路構造情報、前記運転操作情報、及び前記試験データの内容に整合しているか否かを判定するステップと、を含む構成である。
【0030】
この構成により、本発明に係る試験方法は、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、試験車両と他の車両間の道路上の交錯状況を模擬して安全運転支援用アプリケーションの動作試験を効率的に実施することができる。
【0031】
また、本発明に係る試験方法は、車載アプリケーションにより制御される複数の制御対象モデルを有する模擬車両と、前記車載アプリケーションに対する試験を行う試験装置と、を用いる試験方法であって、前記模擬車両の模擬位置情報を含む車両状態情報の初期値を生成するステップと、前記車両状態情報の時間変化値の許容範囲の情報を生成するステップと、前記模擬車両の前記模擬位置情報に対応する地点を含む高精度地図情報を含む静的情報を生成するステップと、仮想路側機から周期的に送信される路車間通信メッセージ、及び、前記模擬車両の周辺に存在する仮想車両から周期的に送信される車車間通信メッセージを含む動的情報を生成するステップと、事故情報及び渋滞情報を含む準動的情報を生成するステップと、交通規制情報及び道路工事情報を含む準静的情報を生成するステップと、前記車載アプリケーションが、前記動的情報、前記静的情報、前記準動的情報、前記準静的情報、及び、車両状態情報の初期値に基づいて、前記複数の制御対象モデルを操作することにより前記模擬車両の模擬走行を実施するステップと、前記許容範囲の情報に基づいて合否判定を行う合否判定ステップと、を含み、前記合否判定ステップが、前記車載アプリケーションによる前記模擬走行で得られる前記模擬車両の前記車両状態情報の時間変化値が前記許容範囲に含まれているか否かを判定する構成である。
【0032】
この構成により、本発明に係る試験方法は、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、自動運転アプリの動作試験を効率的に実施することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、車載アプリケーションの動作試験を効率的に実施することができる試験システム及び試験方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る試験システム及び試験方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る試験システム100は、車載機11が搭載され、安全運転支援に関する処理を実行する車載アプリケーションとしての安全運転支援アプリAP1が実装された試験車両10と、安全運転支援アプリAP1に対する試験を行う試験装置20と、道路上における車載機11の位置を模擬した模擬位置情報を生成するための疑似GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)信号を出力するGNSS信号源40と、を備える。
【0037】
GNSS信号源40は、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou等のGNSS衛星からの測位信号を模擬した疑似GNSS信号を出力するようになっている。
【0038】
試験装置20は、道路の交通流を模擬するための試験データを用いて安全運転支援アプリAP1に対する試験を行うものである。なお、本実施形態における試験データは、例えば「700MHz帯高度道路交通システム標準規格(ARIB STD-T109)」で規定された車載機に適用されるものである。なお、本発明は、「700MHz帯高度道路交通システム標準規格(ARIB STD-T109)」に限定されず、欧米の規格に対しても同じ考え方をとることができる。
【0039】
試験装置20は、フレーム送信部23と、GNSS受信機24と、画像取得部25と、音声取得部26と、表示部27と、操作部28と、制御部29と、を備える。さらに、制御部29は、GNSS信号出力制御部30と、試験データ生成部31と、運転操作情報生成部32と、合否判定部33と、を含む。
【0040】
フレーム送信部23は、少なくとも1つの疑似路側機21及び複数の疑似車載機22からなる。
【0041】
GNSS受信機24は、GNSS信号源40から出力される疑似GNSS信号を受信するようになっている。なお、GNSS受信機24とGNSS信号源40とは同軸ケーブルで接続されていてもよく、あるいは、無線通信で接続されていてもよい。
【0042】
GNSS信号出力制御部30は、試験車両10の車載機11の位置を模擬した模擬位置情報を生成するための疑似GNSS信号をGNSS信号源40から出力させるようになっている。このGNSS信号出力制御部30により、立体交差の高架車線などの検証地点に試験車両10が到着したことを模擬することが可能になる。
【0043】
試験データ生成部31は、後述する地図情報提供部14から提供される地図情報上において、GNSS受信機24により受信された疑似GNSS信号に基づいた車載機11の模擬位置情報を基準として、疑似路側機21及び複数の疑似車載機22の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる試験データを生成するようになっている。さらに、試験データ生成部31は、生成した試験データをフレーム送信部23に出力するように構成されている。
【0044】
フレーム送信部23は、試験データ生成部31から入力された試験データを専用鍵で暗号化した後、この試験データを含んだフレームを試験車両10の車載機11に一定周期(例えば100ms)で周期的に送信するようになっている。また、車載機11は、フレーム送信部23から受信した試験データを専用鍵で復号した後、安全運転支援アプリAP1に伝達するようになっている。
【0045】
なお、上記のフレームの周波数帯としては、例えばUHF帯(特に700MHz帯)を利用することができる。また、フレーム送信部23と車載機11とは同軸ケーブルで接続されていてもよく、あるいは、無線通信で接続されていてもよい。
【0046】
試験データは、実際の路車間通信や車車間通信で送受信される、各時刻における各車両の車両状態を示すメッセージに相当する。例えば、試験データは、安全運転支援アプリAP1の支援エリア内に存在する各疑似車載機22を備える仮想車両の車両ID情報、模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、前後加速度情報、シフトポジション情報、ステアリング角度情報、車両サイズ種別情報、車両用途種別情報、車幅情報、車長情報、時刻情報、及び、疑似路側機21の信号情報などの情報を含んでいる。
【0047】
ここで、支援エリアとは、所定の条件が成立した場合に、安全運転支援アプリAP1が試験車両10に対する安全運転支援を実施可能な地図情報上の所定範囲を指している。なお、安全運転支援アプリAP1は、支援エリア外の仮想車両に関する試験データを棄却するように構成されていてもよい。
【0048】
なお、「車両ID情報」とは、仮想車両ごとにテンポラリーに設定されるID情報である。また、「車速情報」とは、仮想車両の速度情報である。また、「車両方位角情報」とは、仮想車両の進行方位角情報であり、北を0度とした時計回りの角度値である。また、「前後加速度情報」とは、仮想車両の前後方向の加速度情報である。
【0049】
また、「ステアリング角度情報」とは、仮想車両のステアリングの操舵角度情報である。また、「車幅情報」とは、仮想車両の全幅情報である。また、「車長情報」とは、仮想車両の全長情報である。また、「車両サイズ種別情報」とは、仮想車両のサイズ種別情報である。また、「車両用途種別情報」とは、仮想車両の用途種別情報である。
【0050】
また、「時刻情報」とは、疑似路側機21又は各疑似車載機22からフレームが送信された時点の時刻情報である。また、「信号情報」とは、交差点などに設置されている信号機の灯色情報である。
【0051】
以下に、試験データに含まれる情報の一例をまとめる。
・フレーム送信部23によるフレーム送信の時刻情報(時、分、秒)
・仮想車両の模擬位置情報(経度、緯度、高度、それぞれの信頼度)
・仮想車両の状態情報(車速、車両方位角、前後加速度、それぞれの信頼度)
・シフトポジション(ニュートラル、パーキング、ドライブ、リバース)
・ステアリング角度
・車両サイズ種別(大型自動車、中型自動車、普通自動車、自動二輪車、自転車、歩行者、路面電車など)
・車両用途種別(自家用自動車、緊急自動車、道路維持作業用自動車、旅客運送事業用自動車、貨物運送事業用自動車など)
・車幅
・車長
【0052】
なお、試験データが含む情報は上記に限定されず、気象情報や、アクセルペダル開度、ウィンカーやハザードの点灯状態などの情報を含んでいてもよい。ここで、「アクセルペダル開度」とは、アクセルペダルの操作量である。
【0053】
試験データは、安全運転支援アプリAP1の動作レンジに入るものと入らないものとに分類される。動作レンジに入る試験データとは、模擬的に検証地点に到着した試験車両10と仮想車両とが交錯するように、試験データに含まれる上記の情報が設定されたものである。また、動作レンジに入らない試験データとは、模擬的に検証地点に到着した試験車両10と仮想車両とが交錯しないように、試験データに含まれる上記の情報が設定されたものである。
【0054】
以下に、動作レンジに入る試験データの例を挙げる。
・走行中の試験車両10の高架車線前方に仮想車両が停止中
・走行中の試験車両10の高架車線後方から、車両用途種別が緊急自動車である仮想車両が接近
【0055】
以下に、動作レンジに入らない試験データの例を挙げる。動作レンジに入らない試験データは、高負荷状態における安全運転支援アプリAP1の交錯車両と非交錯車両の識別性能を検証するため、可能な限り多く準備するのが好ましい。
【0056】
・試験車両10の対向車線を仮想車両が走行中である
・試験車両10が高架上を走行中であり、仮想車両が高架下を走行中である
・仮想車両が脇道を走行しながら試験車両10から遠ざかる
・自動車専用道路を走行する緊急自動車である仮想車両が同一平面上の側道を走行中の試験車両10へ接近する
・立体駐車場を走行する仮想車両が隣接道路を走行する試験車両10へ接近する
・同一平面上で外柵により区切られている自動車教習所を走行する仮想車両が隣接道路を走行する試験車両10へ接近する
【0057】
運転操作情報生成部32は、試験車両10に対する運転操作を模擬するための運転操作情報を生成するようになっている。運転操作情報は、例えば、試験車両10の車速情報、車両方位角情報、前後加速度情報、ブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報を含む。
【0058】
表示部27は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、後述する地図情報提供部14から提供される地図情報や、後述する合否判定部33による判定結果などを表示するようになっている。
【0059】
操作部28は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部27の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部28は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。操作部28への操作入力は、制御部29により検知されるようになっている。
【0060】
例えば、操作部28により、
図2に示すような安全運転支援アプリAP1の支援エリアの地図情報を模したテンプレート上に、車載機11を有する試験車両10、疑似路側機21、及び、疑似車載機22を有する複数の仮想車両50のアイコンを配置することができる。操作部28によるこれらのアイコンの配置位置が車載機11、疑似路側機21、及び各疑似車載機22の模擬位置情報の初期値となる。
【0061】
さらに、操作部28により、車載機11、疑似路側機21、及び各疑似車載機22のアイコンに対して、試験データを構成する各種情報や運転操作情報の初期値及び時間変化値を設定することができる。時間変化値は、例えば一定周期(例えば100ms)間隔で設定可能である。操作部28により設定された初期値及び時間変化値に基づいて、試験データ生成部31は試験データを生成するようになっている。
【0062】
例えば、操作部28により、疑似路側機21の信号情報、車載機11の模擬位置情報、疑似路側機21の模擬位置情報、各疑似車載機22の模擬位置情報、試験車両10及び仮想車両50の車速情報、車両方位角情報、車両サイズ種別情報、及び車両用途種別情報などについて、初期値と時間変化値を設定可能である。
【0063】
なお、試験データは、車載機11の模擬位置情報を基準としたものであればよく、車載機11の模擬位置情報を初期値で固定し、疑似路側機21及び各疑似車載機22の設定値のみを時間変化させるものであってもよい。この場合、車載機11を有する試験車両10のアイコンを所望の検証地点に配置して、効率的に試験を実施することが可能になる。
【0064】
図1に示すように、試験車両10は、車載機11に加えて、GNSS受信機12と、運転制御部13と、地図情報提供部14と、表示鳴動部15と、を更に備える。
【0065】
車載機11は、試験装置20のフレーム送信部23から送信された試験データを安全運転支援アプリAP1に伝達するようになっている。
【0066】
GNSS受信機12は、GNSS信号源40から出力される疑似GNSS信号を受信するとともに、受信した疑似GNSS信号を安全運転支援アプリAP1に出力するようになっている。なお、GNSS受信機12とGNSS信号源40とは同軸ケーブルで接続されていてもよく、あるいは、無線通信で接続されていてもよい。
【0067】
運転制御部13は、運転操作情報生成部32により生成された運転操作情報を安全運転支援アプリAP1に伝達するようになっている。
【0068】
地図情報提供部14は、GNSS受信機12により受信された疑似GNSS信号に応じて、車載機11の模擬位置情報に対応する道路の道路構造情報を含む地図情報を、安全運転支援アプリAP1及び試験データ生成部31に提供するようになっている。地図情報は、公道以外の国有地、公有地、又は私有地や、自動車教習所や、駐車場などの敷地の境界線の情報を含んでいることが望ましい。上記の道路構造情報は、例えば道路形状、道路幅、車線数、信号機の位置などの情報や、高架や立体交差などの立体構造の道路の高さ情報などを含んでいる。
【0069】
安全運転支援アプリAP1は、地図情報提供部14から提供される道路構造情報、運転制御部13により伝達される運転操作情報、及び、フレーム送信部23から送信された試験データに基づいて、試験車両10に対する安全運転支援の要否判定を行うようになっている。例えば、安全運転支援アプリAP1は、上記の道路構造情報、運転操作情報、及び試験データに基づいて、試験車両10と各仮想車両50とが交錯するか否かを判定する。
【0070】
さらに、安全運転支援アプリAP1は、試験車両10に対して安全運転支援が必要であると判定した場合(肯定判定)、例えば試験車両10と各仮想車両50とが交錯すると判定した場合には、その支援内容を決定するようになっている。また、安全運転支援アプリAP1は、決定した支援内容を表示鳴動部15に伝達するように構成されている。
【0071】
下記及び
図3に、安全運転支援アプリAP1が「安全運転支援が必要」であると判定すべき条件、すなわち安全運転支援が成立する条件の一例を示す。
[例1]
・道路構造情報:立体交差の高架上
・運転操作情報:北へ走行中
・試験データ:同一車線前方に仮想車両50が停止中(交錯あり)
【0072】
下記及び
図3に、安全運転支援アプリAP1が「安全運転支援が不要」であると判定すべき条件、すなわち安全運転支援が成立しない条件の一例を示す。
[例2]
・道路構造情報:立体交差の高架上
・運転操作情報:北へ走行中
・試験データ:対向車線を走行中の仮想車両50あり(交錯なし)
・試験データ:高架下を東西方向へ走行中の仮想車両50あり(交錯なし)
【0073】
下記及び
図4に、安全運転支援アプリAP1が「安全運転支援が必要」であると判定すべき条件、すなわち安全運転支援が成立する条件の他の一例として、試験車両10が右折待ちの状態にある例を示す。
[例3]
・道路構造情報:平面交差
・運転操作情報:ステアリング角度が右折方向に傾いており、ブレーキがオフであり、アクセルペダル開度が0%ではない
・試験データ:対向車線を仮想車両50(対向直進車両)が走行中(交錯あり)
【0074】
その他の「安全運転支援が必要」な条件の例を以下に列挙する。
・試験車両10の左折時に左後方から試験車両10に接近する仮想車両50がある場合
・車両用途種別が緊急自動車である仮想車両50が、同一車線の後方から試験車両10に接近してくる場合
・試験車両10と仮想車両50が出会い頭の衝突を起こす可能性がある場合
・試験車両10が接近する交差点の信号情報が赤信号であるにも関わらず、アクセルペダル開度が0%ではない場合
【0075】
表示鳴動部15は、安全運転支援アプリAP1による安全運転支援の支援内容に応じた画像警報の表示と音声情報の鳴動を行うようになっている。例えば、上記の例1の場合であれば、表示鳴動部15は、前方に停止車両が存在する旨の画像警報と音声情報を発生させて、運転者に対して注意喚起するという支援内容を実行する。また、上記の例2の場合であれば、表示鳴動部15は、画像警報の表示と音声情報の鳴動を行わず、運転者に対して注意喚起しないという支援内容を実行する。また、上記の例3の場合であれば、表示鳴動部15は、右折するための運転操作を禁じる旨の画像警報と音声情報を発生させて、運転者に対して注意喚起するという支援内容を実行する。
【0076】
試験装置20の画像取得部25は、表示鳴動部15により表示された画像警報を撮像して画像データとして取得し、取得した画像データを合否判定部33に出力するようになっている。また、試験装置20の音声取得部26は、表示鳴動部15により鳴動された音声情報を録音して音声データとして取得し、取得した音声データを合否判定部33に出力するようになっている。
【0077】
試験装置20の合否判定部33は、安全運転支援アプリAP1による支援内容が、道路構造情報、運転操作情報、及び、フレーム送信部23から送信された試験データの内容に整合しているか否かを判定するようになっている。
【0078】
合否判定部33は、画像取得部25により取得された画像データ及び音声取得部26により取得された音声データに基づいて、安全運転支援アプリAP1による支援内容を認識できるようになっている。例えば、合否判定部33は、上記の画像データ及び音声データに対して、あらかじめ記憶しているテンプレートの画像データ及び音声データとのマッチング処理を実行することにより、安全運転支援アプリAP1による支援内容を認識することが可能である。あるいは、合否判定部33は、安全運転支援アプリAP1から支援内容に関する情報を直接取得するものであってもよい。
【0079】
試験装置20の制御部29は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、試験装置20を構成する上記各部の動作を制御する。
【0080】
なお、GNSS信号出力制御部30、試験データ生成部31、運転操作情報生成部32、及び合否判定部33は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、制御部29による所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、GNSS信号出力制御部30、試験データ生成部31、運転操作情報生成部32、及び合否判定部33は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0081】
以下、本実施形態の試験システム100を用いる試験方法について、
図5のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0082】
まず、地図情報提供部14は、GNSS受信機12により受信された疑似GNSS信号に応じて、車載機11の模擬位置情報に対応する道路の道路構造情報を含む地図情報を、安全運転支援アプリAP1及び試験データ生成部31に提供する(ステップS1)。
【0083】
次に、試験データ生成部31は、GNSS受信機24により受信された疑似GNSS信号に基づいた車載機11の模擬位置情報を基準として、疑似路側機21及び複数の疑似車載機22の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる試験データを生成する(ステップS2)。
【0084】
次に、運転操作情報生成部32は、試験車両10に対する運転操作を模擬するための運転操作情報を生成する(ステップS3)。
【0085】
次に、フレーム送信部23は、疑似路側機21及び複数の疑似車載機22から試験車両10の車載機11に、試験データを含んだフレームを周期的に送信する。さらに、車載機11は、受信した試験データを安全運転支援アプリAP1に伝達する(ステップS4)。
【0086】
次に、運転制御部13は、運転操作情報生成部32により生成された運転操作情報を安全運転支援アプリAP1に伝達する(ステップS5)。
【0087】
次に、試験システム100は、後述する安全運転支援内容判定処理を実行する(ステップS6)。この処理の詳細については、後述する
図6のフローチャートに沿って説明する。
【0088】
次に、制御部29は、全ての試験データ及び運転操作情報が安全運転支援アプリAP1に伝達されたか否かを判定する(ステップS7)。否定判定の場合にはステップS4に戻り、肯定判定の場合には処理を終了する。なお、ステップS4〜S7の処理は周期的に(例えば100msごとに)実行されるようになっている。
【0089】
以下、
図6のフローチャートを参照しながら、ステップS6の安全運転支援内容判定処理について説明する。
【0090】
まず、安全運転支援アプリAP1は、地図情報提供部14から提供される道路構造情報、運転制御部13により伝達される運転操作情報、及び、フレーム送信部23から送信された試験データに基づいて、試験車両10に対する安全運転支援の要否判定を行う(ステップS11)。肯定判定の場合にはステップS12に進み、否定判定の場合にはステップS15に進む。
【0091】
次に、安全運転支援アプリAP1は、試験車両10に対する安全運転支援の支援内容を決定する(ステップS12)。
【0092】
次に、表示鳴動部15は、安全運転支援アプリAP1による安全運転支援の支援内容に応じた画像警報の表示と音声情報の鳴動を行う(ステップS13)。
【0093】
次に、合否判定部33は、安全運転支援アプリAP1による支援内容を認識する(ステップS14)。
【0094】
次に、合否判定部33は、安全運転支援アプリAP1による支援内容が、道路構造情報、運転操作情報、及び試験データの内容に整合しているか否かを判定する(ステップS15)。
【0095】
次に、表示部27は、合否判定部33による判定結果を表示する(ステップS16)。
【0096】
以上説明したように、本実施形態に係る試験システム100は、試験車両10の車載機11の模擬位置情報を基準として、疑似路側機21及び複数の疑似車載機22の位置を模擬した模擬位置情報を相対的に変化させる試験データと、試験車両10に対する運転操作を模擬するための運転操作情報と、車載機11の模擬位置情報に対応する道路の道路構造情報を含む地図情報と、を用いて安全運転支援アプリAP1の動作試験を実施する。これにより、本実施形態に係る試験システム100は、試験車両10を実際に道路で走行させることなく、試験車両10と他の車両間の道路上の交錯状況を模擬して安全運転支援アプリAP1の動作試験を効率的に実施することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る試験システム100においては、道路構造情報が立体構造の道路の高さ情報を含んでいるため、例えば、立体交差などの立体構造の道路において上段側と下段側を走行する車両同士が衝突するというような誤判定を安全運転支援アプリAP1が行うか否かを試験することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る試験システム100においては、運転操作情報が、試験車両10のブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含んでいるため、安全運転支援の支援内容が試験車両10の挙動に整合しているか否かを判定することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る試験システム100においては、試験データが、実際の路車間通信や車車間通信で送受信されるメッセージに相当するものであるため、路側機と他車両の車載機が試験車両10にメッセージを送信する状況を模擬することができる。
【0100】
また、本実施形態に係る試験システム100においては、安全運転支援アプリAP1による支援内容に応じた表示鳴動部15からの画像警報及び音声情報をデータとして取得するため、安全運転支援アプリAP1が、表示鳴動部15に支援内容を適切に伝達しているか否かを試験することができる。
【0101】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る試験システム110について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、第1の実施形態と同様の動作についても適宜説明を省略する。
【0102】
図7に示すように、本実施形態の試験システム110は、自動運転に関する処理を実行する車載アプリケーションとしての自動運転アプリAP2により制御される複数の制御対象モデル61を有する模擬車両60と、自動運転アプリAP2に対する試験を行う試験装置70と、を備え、高精度地図上の任意地点で局所的なユースケースを発生させるものである。なお、局所的なユースケースとは、道路上の一定範囲で、5秒〜10秒程度の短時間に発生する、発進、停止、右折、左折、車線変更、衝突回避などの場面を意味し、長距離走行時の自動運転アプリAP2の挙動確認に関するものではない。
【0103】
試験装置70は、車両状態情報生成部71と、動的情報生成部72と、静的情報生成部73と、準動的情報生成部74と、準静的情報生成部75と、許容範囲情報生成部76と、合否判定部77と、表示部78と、操作部79と、試験制御部80と、を含む。
【0104】
車両状態情報生成部71は、模擬車両60の模擬位置情報を含む車両状態情報の初期値を生成し、生成した車両状態情報の初期値を情報インタフェース62経由で自動運転アプリAP2に出力するようになっている。車両状態情報は、模擬車両60の模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、前後加速度情報、ブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報を含む。ここで、模擬車両60の模擬位置情報の初期値は、模擬車両60の出発地点の位置を示している。また、車両状態情報の初期値は、模擬車両60の目的地点の位置情報も含んでいる。
【0105】
許容範囲情報生成部76は、上記の車両状態情報の時間変化値の許容範囲の情報を生成し、生成した許容範囲の情報を記憶する許容範囲情報テーブルを有する。
図8は、許容範囲情報テーブルの一例であり、模擬車両60の模擬位置情報(緯度、経度)、車速情報、及び車両方位角情報について、それらの初期値と経過時間に応じて変化する時間変化値の許容範囲を示している。
【0106】
静的情報生成部73は、模擬車両60の模擬位置情報に対応する地点を含む高精度地図情報を含む静的情報を生成し、生成した静的情報を情報インタフェース62経由で自動運転アプリAP2に出力するようになっている。
【0107】
高精度地図情報は、例えば、道路の位置(緯度、経度、方位角、高度、斜度)、道路形状、道路幅、車線数、車線の中央位置及び境界位置、信号停止位置、一時停止位置、縁石の高さ、建造物、電柱、信号機、植え込み、歩道、ガードレールなどのあらゆる地物の位置や形状などの3次元的な情報を含む。また、高精度地図情報は、高架や立体交差などの立体構造の道路の高さ情報などを含んでいる。さらに、高精度地図情報は、公道以外の国有地、公有地、又は私有地や、自動車教習所や、駐車場などの敷地の境界線の情報を含んでいることが望ましい。
【0108】
動的情報生成部72は、仮想路側機から周期的に送信される路車間通信メッセージ、及び、模擬車両60の周辺に存在する仮想車両から周期的に送信される車車間通信メッセージを含む動的情報を生成し、生成した動的情報を情報インタフェース62経由で周期的(例えば100ms単位)に自動運転アプリAP2に出力するようになっている。
【0109】
動的情報生成部72により生成される仮想の路車間通信メッセージ及び車車間通信メッセージは、実際の路車間通信及び車車間通信で送受信されるメッセージを模擬したものであり、第1の実施形態の試験データに相当する。
【0110】
例えば、各仮想路側機から送信される路車間通信メッセージは、送信元である各仮想路側機を識別するための仮想路側機IDの情報や、信号情報などの情報を含んでいる。
【0111】
また、各仮想車両から送信される車車間通信メッセージは、送信元である各仮想車両を識別するための仮想車両の車両ID情報、各仮想車両の模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、前後加速度情報、シフトポジション情報、ステアリング角度情報、車両サイズ種別情報、車両用途種別情報、車幅情報、車長情報、及び時刻情報などの情報を含んでいる。
【0112】
さらに、動的情報生成部72は、路車間通信メッセージ及び車車間通信メッセージで表現できない道路交通状況(例えば、360度全方位の人・車両・障害物)を表現するカメラやレーダからの情報を動的情報として、周期的(例えば100ms単位)に自動運転アプリAP2へ送信するようになっていてもよい。
【0113】
準動的情報生成部74は、事故情報及び渋滞情報を含む準動的情報を生成し、生成した準動的情報を情報インタフェース62経由で自動運転アプリAP2に出力するようになっている。なお、準動的情報は、模擬車両60の模擬位置情報に対応する地点周辺の狭域気象情報を含んでいてもよい。
【0114】
準静的情報生成部75は、交通規制情報及び道路工事情報を含む準静的情報を生成し、生成した準静的情報を情報インタフェース62経由で自動運転アプリAP2に出力するようになっている。
【0115】
合否判定部77は、許容範囲情報生成部76により生成された許容範囲の情報に基づいて合否判定を行うようになっている。例えば、合否判定部77は、後述する自動運転アプリAP2による模擬走行で得られる模擬車両60の車両状態情報の時間変化値(動作値)が、
図8の許容範囲情報テーブルに示された許容範囲に含まれているか否かを判定するようになっている。
【0116】
表示部78は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、車両状態情報生成部71、動的情報生成部72、静的情報生成部73、準動的情報生成部74、準静的情報生成部75、及び許容範囲情報生成部76により生成された各種情報や、合否判定部77による判定結果などを表示するようになっている。また、表示部78は、自動運転アプリAP2の挙動を高精度地図上の軌跡として可視化するようになっている。
【0117】
操作部79は、ユーザによる試験に必要な情報の操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部78の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部79は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。操作部79への操作入力は、試験制御部80により検知されるようになっている。操作部79により、車両状態情報生成部71、動的情報生成部72、静的情報生成部73、準動的情報生成部74、準静的情報生成部75、及び許容範囲情報生成部76により生成される各種情報の値を設定することが可能である。
【0118】
例えば、操作部79により、
図9に示すような高精度地図情報上の任意地点に、模擬車両60及び複数の仮想車両90のアイコンを配置することができる。操作部79によるこれらのアイコンの配置位置が、模擬車両60及び複数の仮想車両90の模擬位置情報の初期値となる。
【0119】
また、操作部79により、模擬車両60の車両状態情報の初期値を車両状態情報生成部71に設定することができる。さらに、操作部79により、複数の仮想車両90や仮想路側機に関する動的情報を構成する各種情報の初期値及び時間変化値を動的情報生成部72に設定することができる。時間変化値は、例えば一定周期(例えば100ms)間隔で設定可能である。操作部79により設定された初期値及び時間変化値に基づいて、動的情報生成部72は動的情報を生成するようになっている。また、操作部79により、許容範囲の値を許容範囲情報生成部76に設定することも可能である。
【0120】
試験装置70の試験制御部80は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、試験装置70を構成する上記各部の動作を制御する。
【0121】
なお、車両状態情報生成部71、動的情報生成部72、静的情報生成部73、準動的情報生成部74、準静的情報生成部75、許容範囲情報生成部76、及び合否判定部77は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、試験制御部80による所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、車両状態情報生成部71、動的情報生成部72、静的情報生成部73、準動的情報生成部74、準静的情報生成部75、許容範囲情報生成部76、及び合否判定部77は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0122】
模擬車両60は、複数の制御対象モデル61と、自動運転アプリAP2と、情報インタフェース62と、備える。
【0123】
複数の制御対象モデル61は、エンジン61a、アクセル61b、ブレーキ61c、ステアリング61d、ウィンカー61e、ヘッドランプ61f、及びテールランプ61gなどの制御対象の挙動を模擬するためのシミュレーションソフトウェアにより構成される。
【0124】
自動運転アプリAP2は、試験装置70から情報インタフェース62経由で入力される、動的情報、静的情報、準動的情報、準静的情報、及び、車両状態情報の初期値に基づいて、認知、判断、模擬車両60の複数の制御対象モデル61の操作を実行することにより、模擬車両60の模擬走行を実施するようになっている。また、自動運転アプリAP2は、模擬走行時の模擬車両60の挙動に伴って周期的(例えば100ms単位)に得られる車両状態情報の時間変化値(動作値)を出力するようになっている。
【0125】
例えば、自動運転アプリAP2は、出発地点の緯度及び経度と、出発地点の模擬車両60の車速及び車両方位角を基準とし、高精度地図情報を参照しながら模擬走行を実施する。自動運転アプリAP2による模擬走行は、シミュレーションであることから、カメラやレーダの情報と高精度地図情報の重ね合わせによる走行位置の推定は行わない自律走行であるとする。
【0126】
自動運転アプリAP2は、高精度地図情報に含まれる3次元的な情報を数センチ単位の誤差で認知するように構成されている。また、自動運転アプリAP2は、動的情報生成部72から出力された路車間通信メッセージ及び車車間通信メッセージにより、仮想車両90と交差点に関する情報を認知するように構成されている。また、自動運転アプリAP2は、準動的情報生成部74から出力された事故情報及び渋滞情報や、準静的情報生成部75から出力された交通規制情報及び道路工事情報に応じて、出発地点から目的地点に至る走行ルートを変更することがある。
【0127】
以下、本実施形態の試験システム110を用いる試験方法について、
図9と
図10のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0128】
図9は、模擬車両60が出発地点からT字路を右折して目的地点の駐車場に向かう予定であり、模擬車両60が右折する先に複数台の仮想車両90が停止している状況で、複数台の仮想車両90の最後尾に模擬車両60が安全に停止するか否かを判断するためのテストケース(試験時間10秒)を示している。
【0129】
まず、試験制御部80は、車両状態情報の初期値を車両状態情報生成部71に生成させる制御を行う(ステップS21)。また、試験制御部80は、車両状態情報の初期値を情報インタフェース62を経由して自動運転アプリAP2に出力する。
【0130】
次に、試験制御部80は、模擬車両60の模擬位置情報に対応する地点を含む高精度地図情報を有する静的情報を静的情報生成部73に生成させる制御を行う(ステップS22)。このとき、表示部78は、生成された高精度地図情報を
図9に示すように表示する。例えば、模擬車両60の出発地点と目的地点は、
図9中に記載した位置に設定される。また、試験制御部80は、静的情報を情報インタフェース62を経由して自動運転アプリAP2に出力する。
【0131】
次に、試験制御部80は、準動的情報を準動的情報生成部74に生成させるとともに、準静的情報を準静的情報生成部75に生成させる制御を行う(ステップS23)。また、試験制御部80は、準動的情報及び準静的情報を情報インタフェース62を経由して自動運転アプリAP2に出力する。
【0132】
次に、試験制御部80は、車両状態情報の時間変化値の許容範囲の情報を許容範囲情報生成部76に生成させる制御を行う(ステップS24)。例えば、上記の許容範囲は、
図9中の丸で囲んで示した範囲に設定される。
【0133】
次に、試験制御部80は、動的情報を動的情報生成部72に生成させる制御を行う(ステップS25)。例えば、複数の仮想車両90の模擬位置情報の初期値は、
図9中に示す各位置に設定される。
【0134】
次に、試験制御部80は、ステップS25で生成された動的情報を情報インタフェース62経由で周期的(例えば100ms単位)に自動運転アプリAP2に出力する処理を開始する(ステップS26)。
【0135】
次に、自動運転アプリAP2は、情報インタフェース62を経由して入力された、動的情報、静的情報、準動的情報、準静的情報、及び、車両状態情報の初期値に基づいて、模擬車両60の複数の制御対象モデル61を操作することにより、高精度地図情報における模擬車両60の模擬走行の実施を開始する(ステップS27)。
【0136】
次に、試験制御部80は、自動運転アプリAP2による模擬走行で得られた模擬車両60の車両状態情報の時間変化値(動作値)を、情報インタフェース62を経由して合否判定部77に入力させる制御を行う(ステップS28)。
【0137】
例えば、動作値のうち、模擬車両60の模擬位置情報の時間変化値は、
図9中の黒丸で示す位置の緯度及び経度の値になる。なお、模擬位置情報の時間変化値(動作値)は例えば100msごとに発生するが、
図9においては模擬位置情報の時間変化値(動作値)とそれらに対応する許容範囲を1秒ごとに間引いて図示している。
図9の例では、模擬車両60は、1秒〜5秒の間は走行し、6秒〜10秒の間は停止する。
【0138】
次に、試験制御部80は、許容範囲情報テーブルに記憶された許容範囲の情報に基づいて合否判定部77に合否判定を行わせる制御を行う(ステップS29)。ここでは、合否判定部77は、自動運転アプリAP2による模擬走行で得られる模擬車両60の車両状態情報の時間変化値(動作値)が許容範囲に含まれているか否かを判定する。
【0139】
次に、試験制御部80は、合否判定部77による判定結果を表示部78に表示させる制御を行う(ステップS30)。
【0140】
次に、試験制御部80は、全ての動的情報が自動運転アプリAP2に伝達されたか否かを判定する(ステップS31)。否定判定の場合にはステップS28に戻り、肯定判定の場合には処理を終了する。なお、ステップS28〜S31の処理は周期的に(例えば100msごとに)実行されるようになっている。
【0141】
従来より、自動運転アプリの挙動確認は、主に試験車両を道路上で走行させることにより行われている。しかしながら、前出の動的情報、静的情報、準動的情報、準静的情報、及び、車両状態情報の初期値からなる模擬情報を統合的に自動運転アプリへ入力し、試験車両を実際に道路で走行させることなく、自動運転アプリの挙動確認を行う試験装置は存在していなかった。
【0142】
これに対して、本実施形態に係る試験システム110は、動的情報、静的情報、準動的情報、準静的情報、及び、車両状態情報の初期値からなる模擬情報を統合的に自動運転アプリAP2へ入力する構成である。これにより、本実施形態に係る試験システム110は、試験車両を実際に道路上で走行させることなく、自動運転アプリの動作試験を効率的に実施することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る試験システム110は、模擬市街地の構築や、道路上の様々な情報の段取りを必要とせず、繰り返し自動運転アプリの挙動に対する評価を行うことができるというメリットがある。このため、自動運転アプリの開発者が、本実施形態に係る試験システム110を用いれば、自動運転アプリの挙動に対する評価と調整を容易に行うことが可能となる。
【0144】
また、本実施形態に係る試験システム110は、車両状態情報が、模擬車両60の模擬位置情報、車速情報、車両方位角情報、ブレーキ状態情報、アクセルペダル開度情報、及びステアリング角度情報のうちの少なくとも1つの情報を含んでいるため、模擬走行時の模擬車両60の車両状態情報が所望の許容範囲に収まっているか否かを判定することができる。
【0145】
また、本実施形態に係る試験システム110は、複数の制御対象モデル61が、エンジン61a、アクセル61b、ブレーキ61c、及びステアリング61dを含む制御対象の挙動を模擬するシミュレーションソフトウェアにより構成されているため、高精度地図情報における模擬車両60の模擬走行を実施することができる。
【0146】
また、本実施形態に係る試験システム110は、動的情報が実際の路車間通信や車車間通信で送受信されるメッセージに相当するものであるため、路側機と周辺車両の車載機が模擬車両60にメッセージを送信する状況を模擬することができる。