【課題】皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供すること。
【解決手段】まつ毛2の長さを延長させるまつ毛エクステンションに用いられる人工まつ毛1において、中空部12は、1本のまつ毛2の一部又は全部を長手方向に沿って挿入させるための空間である。収縮部13は、中空部12に1本のまつ毛2の一部又は全部を挿入させた状態で径の方向に収縮し、1本のまつ毛2の一部又は全部を中空部12内で固定させることにより上記課題を解決する。
【背景技術】
【0002】
従来より、まつ毛エクステンションに関する技術は提案されている。まつ毛エクステンションとは、まつ毛を長く濃く見せるようにするための技術であり、基本的には、人のまつ毛1本1本に対し、化学繊維等を用いて製造された人工のまつ毛を、接着剤を用いて接着するというものである。ただし、人のまつ毛は、太さが0.1mm(ミリメートル)〜0.15mm(ミリメートル)程度であり、非常に細く、人工のまつ毛を接着するための接着面積を確保することが難しい。このため、人のまつ毛に対する接着面積を広げることを目的とした技術が既に提案されている。例えば、人のまつ毛に接着する人工のまつ毛を袋状に加工したり、人工のまつ毛の一部に切れ目を設けたりすることで、人のまつ毛をすっぽり覆い被せるようにして接着面積を広げる技術(特許文献1参照)や、人工のまつ毛をくぼみのある形状に加工することで、人のまつ毛の一部を包むようにして接着面積を広げる技術(特許文献2参照)が存在する。
しかしながら、人工まつ毛の装着に接着剤を使用すると、使用者の皮膚にトラブルが生じることがあるだけではなく、接着剤特有の臭いが、使用者や施術者に不快感を与えることもある。さらに、人のまつ毛の接着面が汚れていたり油分が付着していたりすると、接着させた人工まつ毛がすぐに外れてしまうこともある。このように、接着剤を用いることによる弊害が多いため、接着剤を使用することなく、熱収縮性の環状部材を用いて、人のまつ毛と人工まつ毛とを連結する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、人のまつ毛と人工まつ毛との連結部分が2重構造になってしまうだけではなく、その部分を環状部材が外側から束ねるように配置されるため、結果的に連結部分が3重構造になってしまう。人の上まぶたには、まつ毛が100本〜150本程度密生しているため、人のまつ毛と人工まつ毛との連結部分が3重構造になると、連結部分にのみボリュームを有する不自然な見栄えになってしまう。
このため、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションの開発が望まれている。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るまつ毛エクステンション用人工まつ毛は、
まつ毛の長さを延長させるまつ毛エクステンションに用いられる人工まつ毛であって、
1本の前記まつ毛の一部又は全部を長手方向に沿って挿入させるための空間となる中空部と、
前記中空部に前記1本のまつ毛の一部又は全部を挿入させた状態で径の方向に収縮し、前記1本のまつ毛の一部又は全部を前記中空部内で固定させる収縮部と、
を有する。
【0007】
この発明によれば、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。
【0008】
また、前記収縮部は、加熱により収縮する部材とすることができる。
この発明によれば、接着剤を使用することなく、中空部にまつ毛の一部又は全部を挿入して加熱するだけで装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。
【0009】
本発明の一態様のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法は、上述の本発明の一態様のまつ毛エクステンション用人工まつ毛に対応する装着方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るまつ毛エクステンション用人工まつ毛、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係るまつ毛エクステンション用人工まつ毛の一実施形態である人工まつ毛1の構成を示す図である。(A)は人工まつ毛1の側面図である。(B)は人工まつ毛1の斜視図である。(C)はまつ毛2の側面図である。
図2は、
図1の人工まつ毛1を装着者3のまつ毛2に装着させた状態を示す図である。なお、右側の破線で示された丸の中には、拡大図が示されている。
【0014】
[人工まつ毛]
本発明に係るまつ毛エクステンション用人工まつ毛の一実施形態である人工まつ毛1は、
図1及び
図2に示すように、本体部11と、中空部12と、収縮部13とで構成される人工まつ毛である。人工まつ毛1は、装着者3のまつ毛2の1本1本にそれぞれ装着されることにより、まつ毛2の長さを延長させることができる。
【0015】
以下、人工まつ毛1の各構成要素を詳しく説明する。
【0016】
(本体部)
本体部11は、
図1に示すように、人工まつ毛1の外形を形成する部分であり、まつ毛2に類似させた形状となっている。本体部11の一部又は全部は、後述する収縮部13そのものを構成する。このため、本体部11は、後述する中空部12にまつ毛2の一部又は全部を挿入させた状態で径の方向に収縮し、中空部12内でまつ毛2を固定する。なお、収縮により中空部12内でまつ毛2を固定するための具体的な手法については後述する。
【0017】
本体部11の材質は特に限定されないが、まつ毛に類似する外観を有するように加工できる材質のものであり、かつ、本体部11の一部又は全部は、収縮部13で構成されている。このため、本体部11のうち収縮部13に該当する部分の材質は、外部から加えられるエネルギーによって径方向に収縮するものである。例えば、外部から温度が60℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃程度の熱エネルギーを加えることにより径方向に収縮する熱収縮チューブの製造に用いられる素材であってもよい。なお、熱収縮チューブについては後述する。
【0018】
本体部11の長さや径等の寸法は特に限定されない。後述する中空部12にまつ毛2を挿入することでまつ毛2を延長させることができ、かつ、装着時の違和感や、見た目の違和感を生じさせない範囲の寸法であればよい。
ただし、装着時の美観性を考慮した場合、本体部11の外径Aと、まつ毛2の外径aの大きさとがなるべく乖離していないことが好ましい。すなわち、人工まつ毛1の肉厚Cは、なるべく小さい(薄い)方が人工まつ毛1とまつ毛2との境界部分がよりフラットに近い形状になるので、美観性を備えることができる。
具体的には、まつ毛2の平均的な長さdは、7mm(ミリメートル)〜8mm(ミリメートル)程度とされている。このため、
図1に示すように、本体部11の長さDは、装着時にまつ毛2の長さdに、1mm(ミリメートル)〜2mm(ミリメートル)程度加えた長さとなるようにすることが好ましい。
まつ毛2の平均的な外径(太さ)aは、0.1mm(ミリメートル)〜0.15mm(ミリメートル)程度とされている。このため、
図1に示すように、本体部11の内径(即ち、後述する中空部12の径)Bは、0.2mm(ミリメートル)〜0.4mm(ミリメートル)程度とすることが好ましい。
本体部11の肉厚Cは、上述したように、なるべく小さい(薄い)方が好ましいが、小さ(薄)ければその分強度が低下するおそれがあることを考慮する必要がある。このため、本体部11の肉厚Cは、0.03mm(ミリメートル)〜0.3mm(ミリメートル)程度とすることが好ましい。その結果、本体部11の外径(太さ)Aは、0.26mm(ミリメートル)〜1.0mm(ミリメートル)程度とすることが好ましい。
なお、人工まつ毛1及びまつ毛2は、いずれも毛先に行くに従って細くなる形状となっている。このため、上記の径の寸法は、
図1に示すように、それぞれの一番太い部分の径を示す寸法を示している。
【0019】
(中空部)
中空部12は、1本のまつ毛2の一部又は全部を長手方向に沿って挿入させるための空間である。具体的には、中空部12は、
図1及び
図2に示すように、本体部11の中心又は略中心に設けられた空間である。中空部12にまつ毛2の一部又は全部が挿入された状態で後述する収縮部13が径方向に収縮すると、中空部12内のまつ毛2が本体部11の内壁に押圧されて固定される。
【0020】
中空部の寸法は、特に限定されないが、まつ毛2を挿入することでまつ毛2を延長させることができるものであればよい。上述したように、まつ毛2の平均的な太さaは、0.1mm(ミリメートル)〜0.15mm(ミリメートル)程度とされている。このため、
図1に示すように、中空部12の径(即ち、本体部11の内径)Bは、0.2mm(ミリメートル)〜0.4mm(ミリメートル)程度とすることが好ましい。
【0021】
(収縮部)
収縮部13は、中空部12に1本のまつ毛2の一部又は全部を挿入させた状態で径の方向に収縮し、1本のまつ毛2の一部又は全部を中空部12内で固定させる。具体的には、収縮部13は、
図2に示すように、まつ毛2が中空部12に挿入された状態で、外部から加えられたエネルギーによって径方向に収縮する。収縮部13の素材としては、上述したように、外部から熱エネルギーを加えて加熱することにより径方向に収縮する熱収縮チューブの製造に用いられる素材であってもよい。収縮部13に用いられる材質としては、熱収縮チューブに使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体などを電子線で架橋させた、電子線架橋ポリオレフィン樹脂や、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマーなどに電子線架橋させることにより、熱収縮特性を付与した樹脂を使用することができる。さらにはゴム系の熱収縮性材質としては、シリコーンゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ラバー)などを使用することができる。
【0022】
収縮部13を収縮させる具体的な手法は限定されない。熱収縮チューブに使用される上記の素材を収縮部13に採用した場合、収縮部13を60℃〜120℃、好ましくは80℃〜100℃程度の温度で収縮させることができるので、例えば、先端部分の温度を90℃〜120℃程度に加熱することができる専用のピンセット等を用いて収縮部13を収縮させてもよい。
【0024】
図3は、装着者3の1本のまつ毛2に人工まつ毛1を装着させるまでの流れを示すフローチャートである。
【0025】
1本のまつ毛2の一部又は全部を、長手方向に沿って中空部12に挿入する(ステップS1)。
中空部12に1本のまつ毛の一部又は全部を挿入させた状態で、収縮部13を径の方向に収縮させて、1本のまつ毛の一部又は全部を中空部12内で固定させる(ステップS2)。
以上のステップを経ることにより、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを装着者3に提供することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施してもよい。
【0027】
例えば、上述の実施形態では、収縮部13は、熱エネルギーを加えることで収縮する素材で構成される例を挙げているが、これに限られない。例えば、冷熱エネルギーによって収縮する素材や、超音波による振動エネルギーによって収縮する素材等、外からの何らかのアクションによって収縮するあらゆる素材で構成させることができる。
【0028】
以上まとめると、本発明が適用されるまつ毛エクステンション用人工まつ毛は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用されるまつ毛エクステンション用人工まつ毛(例えば
図1及び
図2の人工まつ毛1)は、
まつ毛(例えば
図2のまつ毛2)の長さを延長させるまつ毛エクステンションに用いられる人工まつ毛であって、
1本の前記まつ毛の一部又は全部を長手方向に沿って挿入させるための空間となる中空部(例えば
図1の中空部12)と、
前記中空部に前記1本のまつ毛の一部又は全部を挿入させた状態で径の方向に収縮し、前記1本のまつ毛の一部又は全部を前記中空部内で固定させる収縮部(例えば
図1の収縮部13)と、
を有する。
これにより、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。
【0029】
また、前記収縮部は、加熱により収縮する部材とすることができる。
これにより、接着剤を使用することなく、中空部にまつ毛の一部又は全部を挿入して加熱するだけで装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。
【0030】
また、本発明が適用されるまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法は、
まつ毛(例えば
図2のまつ毛2)の長さを延長させるまつ毛エクステンションに用いられる人工まつ毛を装着する方法であって、
1本のまつ毛の一部又は全部を、長手方向に沿って中空部(例えば
図1の中空部12)に挿入するステップと、
前記中空部に前記1本のまつ毛の一部又は全部を挿入させた状態で、収縮部(例えば
図1の収縮部13)を径の方向に収縮させて、前記1本のまつ毛の一部又は全部を前記中空部内で固定させるステップと、
を含む。
これにより、皮膚のトラブルを生じさせたり、臭いによる不快感を与えたりすることがある接着剤を使用することなく、かつ、装着時に見栄えの良いまつ毛エクステンションを提供することができる。