(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-163570(P2019-163570A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】ズボン
(51)【国際特許分類】
A41D 1/06 20060101AFI20190830BHJP
【FI】
A41D1/06 M
A41D1/06 501Z
A41D1/06 501D
A41D1/06 502E
A41D1/06 502G
A41D1/06 502K
A41D1/06 503A
A41D1/06 503Z
A41D1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-53561(P2018-53561)
(22)【出願日】2018年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】508077492
【氏名又は名称】丸繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195143
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 幸男
(72)【発明者】
【氏名】福田 好明
(57)【要約】 (修正有)
【課題】留め具を携帯したり裾部に固定したりすることなく、より確実にかつ簡便に裾のずり落ちを防止することのできるズボンを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも裾部5がズボン自体の素材であって伸縮性素材からなり、前記裾部に一対の係止具を設け、該一対の係止具は、該一対の係止具を互いに係合した時に、前記裾部の伸縮性素材によって形成される環状締め付け部7が足の脛又は足首9に密着して締め付け保持する位置に設けたことを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも裾部がズボン自体の素材であって伸縮性素材からなり、前記裾部に一対の係止具を設け、該一対の係止具は、該一対の係止具を互いに結合した時に、前記裾部の伸縮性素材によって形成される環状締め付け部が足の脛又は足首に密着して締め付け保持する位置に設けたことを特徴とするズボン。
【請求項2】
前記一対の係止具を前記裾部の内側に設けた請求項1に記載のズボン。
【請求項3】
前記ズボンの裾を含む股下から股上までが同一の伸縮性素材からなる請求項1又は2のいずれかに記載のズボン。
【請求項4】
前記係止具を、前記環状締付部において複数対設けてなる請求項1乃至3のいずれかに記載のズボン。
【請求項5】
前記係止具はホック、ボタン又は面ファスナーとしてなる請求項1乃至4
のいずれかに記載のズボン。
【請求項6】
前記伸縮性素材は、ポリウレタン系弾性繊維を利用したストレッチ織物であ
る請求項1乃至5のいずれかに記載のズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はズボンの裾のずれ下がりの防止に係り、特に、トイレで用を足すときにズボンの裾が床に触れて汚れることがないズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレで用を足すときにズボンの裾がずれ落ちて床で汚れるのを防止するため、種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1、2に記載のズボンは、いずれもズボンの各裾の内側に一対の留め具を装着し、これらを使用して裾を絞ることによって裾が足の甲からずり下がることがないものである。
しかし、これらのズボンは、裾の前側が足の甲に当たることによりずり下がりは防止できるものの、裾の後ろ側が床に接する虞がある。また、裾幅の広いズボンの場合や床に接触しやすい裾長のズボンの場合にはズボンの裾部の周囲が垂れて床に触れてしまいやすい。
【0004】
これに対し、特許文献3、4に記載のものは、いずれもズボンの裾をゴムバンド(紐)で締めるものである。この場合は、裾を確実に足に密着保持することができるが、トイレを使用するたびにゴムバンドを携帯する必要があり、また、裾の裏側に前記ゴムバンドを固定する場合は、ズボンをはくときや脱ぐときに前記ゴムバンドが足に引っ掛かって煩わしいという問題があった。又、ゴムバンドで常時足を締め付けておかなければならないという不便さもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−188904号公報
【特許文献2】実開昭54−116408号公報
【特許文献3】特開平8−100315号公報
【特許文献4】実用新案登録第3205953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、たとえ裾幅の広いズボンや裾が床に接触しやすい裾長のズボンであっても、特に、トイレにおいてズボンの上部を脱いで裾が床に接触しやすくなる場合でも、前記ゴムバンド等の留め具を携帯したり裾部に固定したりすることなく、より確実に、かつ、簡便に裾のずり落ちを防止することにより、床等で裾を汚すことのないズボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のズボンは、
少なくとも裾部がズボン自体の素材であって伸縮性の素材からなり、前記裾部に一対の係止具を設け、該一対の係止具は、該一対の係止具を互いに係合した時に、前記裾部の伸縮性素材によって形成される環状締め付け部が足の脛又は足首に密着して締め付け保持する位置に設けたことを特徴とする。
【0008】
前記一対の係止具は前記裾部の内側に設けることが好ましい。
【0009】
前記伸縮性の素材は、ズボンの裾を含む股下から股上までを同一の伸縮性素材とすることができる。
【0010】
また、前記係止具は、前記環状締付部において複数対設けるとよい。
【0011】
そして、前記係止具はホック、ボタン又は面ファスナーとすることができる。
【0012】
さらに、前記伸縮性素材は、ポリウレタン系弾性繊維を利用したストレッチ織物とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ズボンの裾部に設けた一対の係止具を互いに係合した時に前記裾部の伸縮性素材によって形成される環状締め付け部が足に密着して締め付け保持する位置に該一対の係止具を設けたので、トイレで用を足すような場合にはズボンの上部を脱ぐので裾が床に接触して汚れやすくなるが、前記一対の係止具を係合することにより、前記裾部は足の脛又は足首の任意の位置に密着して締め付け保持することができ、ズボンの裾がずり落ちることがない。
すなわち、従来の係止具のみの場合に比べて前記一対の係止具を係合するだけで伸縮性素材の作用を利用した環状締め付け部が形成され、前記裾部が足の脛又は足首に確実に、かつ簡便に保持され、裾の後ろ側等が床に接することを防止できる。
また、たとえ裾幅が大きいズボンや裾長のズボンであっても裾部のたるみの程度に応じて前記環状締め付け部をずり上げて足首より高い脛の位置で足を密着保持するようにすれば裾が床に接することなく汚れを防止できる。
そのうえ、裾部自体の素材で環状締付け部を形成するので、かさばることがなく、ズボンの脱着の際も邪魔にならず、外観的にも違和感がない。
加えて、自転車に乗るとき等の日常生活においても、たとえ裾幅が大きいズボンであっても、また裾長のズボンであっても裾部が足の脛又は足首の必要な位置に確実に保持されれば、自転車のチェーン等に巻き込まれず、安全であるとともに裾部が汚れることもない。
さらに、雨の日にも同様にズボンの裾部が地面やコンクリートに触れて濡れないようにすることもできる。
【0014】
前記一対の係止具を前記裾部の内側に設ければ、普段は前記一対の係止具は外観には現れず、外観デザインが良い。
【0015】
ズボンの裾を含む股下から股上までを同一の伸縮性素材で構成すればズボンの外観デザインもよく、また、制作も容易である。
【0016】
前記係止具を環状締め付け部において複数対設けるようにしたので、係合する係止具の選択により、締め付け具合を調整でき、また、足の太さの個人差も対応できる。
【0017】
前記係止具をホック、ボタン又は面ファスナーとすることにより係合がしやすく、確実な係合ができる。
【0018】
前記伸縮性素材をポリウレタン系弾性繊維を利用したストレッチ織物とすることにより、足の締め付けもソフトとなり、外観的にもより高級感を漂わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すズボンの全体図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態を示すズボンの全体図である。
【
図3】第1の実施の形態におけるズボンの裾部の断面図である。
【
図4】第1の実施の形態におけるズボンの使用状態を示す全体図である。
【
図5】第1の実施態様におけるズボンの裾部の斜視図である。
【
図6】第1の実施態様におけるズボンの裾部の斜視図である。
【
図7】第1の実施態様におけるズボンの裾部の斜視図である。
【
図8】第1の実施態様におけるズボンの裾部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態を示すズボンの全体図である。
ズボン1は、股2の上部の股上3と、股2の下部の一対の股下4とからなり、前記股下4の各下端部の裾5には、それぞれ、裾5自体の素材である、例えば、ポリウレタン系弾性繊維を利用したストレッチ織物からなる伸縮性素材8を用いた、一対のホック6を係合した時に足の脛又は足首に密着して締め付け保持する環状締め付け部7が形成される。。
前記伸縮性素材は、ポリウレタン等を混紡したもの以外にも織り方で伸縮性を出したもの等もあり、伸縮性のあるものであれば使用し得る。
また、ストレッチ織物のように縦横両方向に伸縮性があるものでなくて、一方向に伸縮性のあるものも使用し得る。
【0021】
前記環状締め付け部7について、
図3を参照して説明する。
各股下4の下端部の、例えば、約10cmは前記伸縮性素材8によって構成されており、前記伸縮性素材8を内側へ折曲して裾5を形成するとともに、前記伸縮性素材8で構成された股下4の各下端部を環状締め付け部7となす。
そして、
図5に示すように、前記裾5の内側には対向する一対のホック6からなる係止具が設けられる。前記一対のホック6は、該一対のホック6を互いに係合することによって、該ズボン1を装着した人の脛15に密着して包み込み、前記伸縮性素材8が伸びてその結果生じる、該伸縮性素材8の縮む力により環状締め付け部7を形成するように前記裾5の内側の折曲部を利用して縫着する。
なお、前記環状締付部7が密着して包み込むのは、足首9である場合もある。
ここで、前記一対のホック6を係合した時には脛15に密着する環状締め付け部7が形成される一方、ホック6に対して反対側には環状締め付け非形成部分14も生じるが、裾5の前後のどちらに足を位置させるかで、
図5における前記環状締め付け非形成部分14が環状締め付け部7に形成されることもある。
【0022】
これにより、例えば、トイレで用を足す際に、便座に腰かけた状態ではズボンの上部を脱ぐので裾部が垂れ下がって床に接触しやすくなるが、前記各裾5内側の一対のホック6を、前記環状締め付け部7の伸縮性素材8の緊張力に抗してそれぞれ互いに係合し、前記各裾5により足首又は脛部の任意の位置を包み込むと、それによって形成される伸縮性素材8からなる環状締め付け部7によって前記足首又は脛が密着して締め付けられる。そうすると、
図4に示すように、ズボン1のたるみ11が生じるものの、用足し中に裾がずり下がることがなく、裾の後ろ等がトイレの床に接して汚れることがない。
なお、
図4には環状締め付け部7が形成されているとともに、図には表現されていないが、裾5の後ろ側には環状締め付け非形成部分14が存在する。
【0023】
図6は、前記締め付け部7に設けた一対のホックとは別に一対のホック12を設けた場合を示す。これにより、係合するホックを選択することにより足の脛や足首の太さの個人差に対応できるし、締め付け具合を調整することができる。
【0024】
図7は、前記ホック6に替えて裾5内側に一対の面ファスナー13からなる係止具を設けた場合を示す。この場合も前記フック6の場合と同様であるが、係合することがより容易となる。
なお、前記係止具は、ボタンとボタン穴とからなる一対のボタンでもよい。
【0025】
図2は、ズボン1の股上3及び股下4のすべてを同一の伸縮性素材8によって構成した場合を示す。この場合も、前記した、股下4の下部のみを伸縮性素材とした場合と同様の作用効果を奏するが、特に、ズボンの外観デザインもよく、また、ズボンの制作が容易である。
【0026】
図8は、裾部に設けられた一対のホック6を係合することにより、伸縮性素材8からなる環状締め付け部7が足首9を締め付け保持する状態を表している。
一対のホックを係合することにより、伸縮性素材8が伸びてその結果生じる該伸縮性素材の8の縮む力で環状締め付け部7が形成され、足首9に密着するとともに締め付け保持し、裾がずり下がることを防いでいる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のズボンは、従来の実施品に比べて裾部が足の脛や足首に確実に、かつ、簡便に保持され、裾の後ろ側や裾の周囲が床に接することがなく、裾部自体の素材で環状締付け部を形成するので、かさばることがなく、ズボンの脱着の際も邪魔にならず、外観的にも違和感がないので、極めて実用的価値が高い。
【符号の説明】
【0029】
1 ズボン
2 股
3 股上
4 股下
5 裾
6 ホック
7 環状締め付け部
8 伸縮性素材
9 足首
10 脛
11 ズボンのたるみ
12 ホック
13 面ファスナー
14 環状締め付け非形成部分
15 脛