特開2019-163744(P2019-163744A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鷺宮製作所の特許一覧

<>
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000003
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000004
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000005
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000006
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000007
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000008
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000009
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000010
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000011
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000012
  • 特開2019163744-増振器、および振動発電装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-163744(P2019-163744A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】増振器、および振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/00 20060101AFI20190830BHJP
   H02N 1/00 20060101ALI20190830BHJP
   F03G 7/08 20060101ALI20190830BHJP
【FI】
   F03G7/00 A
   H02N1/00
   F03G7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-53036(P2018-53036)
(22)【出願日】2018年3月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/インフラ状態モニタリング用センサシステム開発/道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169029
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英明
(72)【発明者】
【氏名】森田 將裕
(57)【要約】
【課題】振動発電素子を使用して環境振動から発電を行う場合、環境振動の振幅が小さいと、十分な発電を行うことができないという課題があった。
【解決手段】第1方向の振動を増幅する増振器は、作用部2および支持部3を有し、支持部3を介して被設置物50,50aに支持されている振動部材1と、振動部材1に設けられた錘部6と、一端が錘部6に連結され錘部6を被設置物50,50aに対して弾性支持する弾性部材8とを備え、錘部6を通り第1方向に延びる直線RLと支持部3を通り第1方向に垂直な平面RSとの交点CPと作用部2との間の距離L1が、交点CPと支持部3との間の距離L2よりも長い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向の振動を増幅する増振器であって、
作用部および支持部を有し、前記支持部を介して被設置物に支持されている振動部材と、
前記振動部材に設けられた錘部と、
一端が前記錘部に連結され、前記錘部を前記被設置物に対して弾性支持する弾性部材と、
を備え、
前記錘部を通り前記第1方向に延びる直線と前記支持部を通り前記第1方向に垂直な平面との交点と前記作用部との間の距離が、前記交点と前記支持部との間の距離よりも長い、
増振器。
【請求項2】
請求項1に記載の増振器において、
前記支持部と前記被設置物の間に振動部材固定部を有し、前記振動部材固定部は前記被設置物に支持されるとともに前記支持部を支持する、増振器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の増振器において、
前記弾性部材と前記被設置物の間に弾性部材固定部を有し、前記弾性部材固定部は前記被設置物に支持されるとともに、前記弾性部材の前記一端とは反対側の他端に連結されている、増振器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記支持部は、前記振動部材に沿って前記振動部材の前記錘部が設けられた部分と前記作用部との間にあるとともに、
前記支持部と前記作用部との距離は、前記交点と前記支持部との間の距離よりも長い、
増振器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記錘部を構成する錘は、回動機構を介して前記振動部材に設けられている、増振器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記振動部材は水平方向に延びる梁状部材であり、前記第1方向は鉛直方向である、増振器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記弾性部材はバネであり、前記バネのバネ定数および前記錘部の質量から定まる前記バネの共振周波数が30[Hz]以下である増振器。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記弾性部材は、エラストマーまたは空気ダンパーを含み、前記被設置物から前記錘部に伝達される振動を1/10に減衰するカットオフ周波数が100[Hz]以下である増振器。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の増振器において、
前記交点と前記支持部との間の距離をL1、
前記交点と前記作用部との間の距離をL2とし、
前記作用部に設置する作用部材の質量がMaであるとき、
前記錘部の質量Mcは、Ma×(1+L2/L1)×(L2/L1)の2倍以上である、増振器。
【請求項10】
第1方向の振動を電力に変換する振動発電装置であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の増振器を備えるとともに、
前記増振器の前記作用部に振動発電素子が設けられている、振動発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の振動発電装置において、
前記振動発電素子は、一方がエレクトレット化されている可動電極と固定電極とを有し、前記可動電極と前記固定電極との相対的な振動により発電する発電素子である、振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増振器、および振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境振動からエネルギーを収穫するエナジーハーベースティング技術の一つとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動素子である振動発電素子を用いて環境振動から発電を行う手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−172523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動発電素子では、十分な振幅を有する環境振動の下でないと十分な発電が行えないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の増振器は、第1方向の振動を増幅する増振器であって、作用部および支持部を有し、前記支持部を介して被設置物に支持されている振動部材と、前記振動部材に設けられた錘部と、一端が前記錘部に連結され、前記錘部を前記被設置物に対して弾性支持する弾性部材と、を備え、前記錘部を通り前記第1方向に延びる直線と前記支持部を通り前記第1方向に垂直な平面との交点と前記作用部との間の距離が、前記交点と前記支持部との間の距離よりも長い。
本発明の振動発電装置は、本発明の増振器の前記作用部に振動発電素子が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、入力される振動を増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】増振器の一実施形態を横から見た図。
図2図2(a)は、ばねと錘からなる系の振動の伝達率と周波数との関係を表す図。図2(b)は、エラストマーと錘からなる系の振動の伝達率と周波数との関係を表す図。
図3】てことしての振動部材の概念を説明する図。
図4】増振器の第1変形例を横から見た図。
図5】増振器の第2変形例を横から見た図。
図6】増振器の第3変形例を横から見た図。
図7】増振器の第4変形例を横から見た図。
図8】増振器の第5変形例を横から見た図。
図9】増振器の第6変形例を横から見た図。
図10図10(a)は、増振器の第7変形例の一部を表す図、図10(b)は、増振器の第8変形例の一部を表す図。
図11】増振器の第9変形例を上から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(増振器の一実施形態)
以下、図を参照して本発明の増振器の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態の増振器100aを横から見たである。
一実施形態の増振器100aは、橋、トンネル、その他の建造物等の一部からなる被設置物50に設置され、被設置物50の図1に矢印で示した鉛直方向の振動を増幅する。被設置物50には金属製の支柱等の振動部材固定部7が固設され、振動部材固定部7が水平方向である紙面内の左右方向に延びる梁状の部材である振動部材1を支持している。
【0009】
振動部材1の図1中の右端近くには支持部3が設けられており、振動部材固定部7は、
振動部材1が、支持部3を中心として紙面内方向に所定の角度の範囲内で回転が可能なように支持している。振動部材固定部7と支持部3の間には、例えば転がり軸受等の低摩擦での回転を実現する部材を設けることもできる。
【0010】
振動部材1の図1中の左右方向中央より右寄り部分は錘取り付け部4となっており、ここに錘5が設置されている。錘取り付け部4への錘5の設置は、溶接、ネジによる固定、接着、嵌合、機械的な凹凸加工による固定等の、任意の設置方法を用いることができる。また、錘取り付け部4において振動部材1の構造部材自体を肉付けする等により、錘5を形成することもできる。
【0011】
振動部材1は、単位質量に対して剛性の大きな金属材料等で形成することが好ましい。また、断面がH字型やL字型の形状として、剛性を高めることもできる。
あるいは、振動部材1を炭素繊維等の曲げ弾性を有する材料で形成しても良い。
【0012】
錘5の下端には、バネまたはエラストマーからなる弾性部材8が連結され、弾性部材8の下端は、例えばコンクリート製であって金属製フックが形成されている弾性部材固定部9が連結され、弾性部材固定部9は被設置物50に固設されている。この結果、弾性部材8は錘5に働く重力により圧縮され、その反発力(弾性力)が緩やかに錘5を下から支え、弾性部材8と錘5による一種の共振機構が形成されている。
【0013】
図2(a)は、被設置物50の鉛直方向の振動の錘5への伝達率と、振動の周波数の関係Tsを示したグラフである。ここでは、弾性部材8がバネ定数k[N/m]のバネであり、錘5の質量がM[kg]であるとしている。
このとき、弾性部材8と錘5による共振機構の共振周波数(固有振動数)f0は、
f0=√(k/M)/(2π)[Hz] …(1)
となる。
【0014】
そして、この共振周波数f0よりも高周波(例えば図2(a)中の周波数f1)の振動に対する伝達率t1は、1よりも小さくなる。すなわち、被設置物50が鉛直方向に、周波数f1で振動しても、その振動は、錘5には弾性部材8を介してほとんど伝達されない。
すなわち、被設置物50、およびそれに固設された弾性部材固定部9がこの共振周波数よりも高周波の周波数f1で鉛直方向に振動しても、その振動は錘5にほとんど伝達されることはなく、錘5は静止状態を保つこととなる。
【0015】
ここで、被設置物50が、上記の共振周波数f0よりも高い周波数(例えば上記の周波数f1)で、鉛直方向に振動する場合を考える。
被設置物50の振動は、振動部材固定部7から支持部3を介して振動部材1に伝達され、支持部3の位置において振動部材1を鉛直方向に振動させる。
しかし、振動部材1の中央付近にある錘取り付け部4には錘5が取付けられており、上述のように錘5には、鉛直方向の高周波の振動は伝達されず、かつ錘5が大きな慣性力を発揮するため、錘取り付け部4および錘5は鉛直方向に静止した状態を保とうとする。
【0016】
その結果、振動部材1は、錘取り付け部4が鉛直方向に概ね静止された状態で、錘取り付け部4を中心に、紙面内の回転方向に沿って回転振動を行うことになる。そして、振動部材1の図1中の左端付近の作用部2は、鉛直方向に、被設置物50および支持部3とは逆向きに振動することとなる。
【0017】
このとき、錘取り付け部4から作用部2までの距離(L1)を、錘取り付け部4から支持部3までの距離(L2)よりも長くすることで、てこの原理により作用部2における鉛直方向の振動の振幅を、支持部3での鉛直方向の振動の振幅よりも大きくすることができる。ここで、このてこの支点(固定されている点)は、錘取り付け部4と考えることができる。そして、支持部3での振幅は、被設置物50での振幅と同じであるから、一実施形態の増振器によって、作用部2における振動の振幅を、被設置物50での鉛直方向の振動の振幅よりも増幅できることになる。
そこで、作用部2に作用部材20を設置することにより、増幅された振動を作用部材20により有効利用することができる。
【0018】
上記においては、理解を容易にするために、錘取り付け部4から作用部2までの距離をL1、錘取り付け部4から支持部3までの距離をL2とした。距離L1,L2を厳密に定義すると以下の通りである。
錘5による慣性力は、増幅すべき振動の方向(ここでは鉛直方向)に振動部材1を固定しようとする力であるので、厳密には、増幅すべき振動の方向を基準として、距離L1および距離L2を規定することが好ましい。
すなわち、本実施形態においては、振動部材1を固定する力は、錘5を通り鉛直方向に延びる直線RLに沿った鉛直方向の力である。そして、この力は、支持部3を通り鉛直方向に垂直な平面(水平面)RSと直線RLとの交点CPで、振動部材1に作用している。
【0019】
よって、厳密には、上記の交点CPから作用部2までの距離L1を、上記の交点CPからから支持部3までの距離L2よりも長くすることが好ましい。
なお、錘5を通り鉛直方向に延びる直線RLを、一例として、錘5の重心CGを通り鉛直方向に延びる直線と定義することもできる。
【0020】
また、錘取り付け部4の質量も、錘5の質量と相俟って、振動部材1を鉛直方向に固定使用するとする慣性力の源となっている。従って、錘5および錘取り付け部4を、併せて錘部6と見ることもできる。このとき、錘取り付け部4とは、振動部材1のうちの錘5が設置されている部分およびその近傍の部分である。
また、上記の錘5の重心の位置を求める際には、錘5と錘取り付け部4の共通の重心を求めても良い。
【0021】
ここで、振動の増幅を行うためには、増幅すべき被設置物50の振動が、図2(a)および式(1)に示した共振周波数f0よりも高周波である必要がある。これは逆に見れば、共振周波数f0をより低周波に設定することで、被設置物50の広い周波数域の振動を増幅できることを意味する。
本実施形態の増振器100aにおいては、橋やトンネル内の構造物等の比較的低周波で振動する被設置物50に設置した際にも効率良く振動を増幅できることが好ましい。
【0022】
従って、共振周波数f0は、一例として30[Hz]以下に設定することが望ましい。これにより、例えば100[Hz]程度以上の振動を増幅することができる。
あるいは、共振周波数f0を、10[Hz]以下に設定することがさらに望ましい。これにより、30[Hz]程度以上の振動を増幅することができる。
本実施形態の増振器100aを設置する被設置物50の環境振動が、30[Hz]よりもさらに低い場合には、共振周波数f0を、例えば3[Hz]以下に設定することで、10[Hz]程度以上の振動を増幅することもできる。
【0023】
なお、弾性部材8としてのバネは、その復元力が変位に比例するバネであれば、コイル状のバネ、板バネ等の、任意の形状のバネであってよい。また、弾性部材8は、バネに限らず、ゴムやゲルブッシュ等のエラストマーであってもよく、または空気バネ(空気ダンパー)を使用することもできる。
【0024】
図2(b)は、弾性部材8として、エラストマーや空気バネを用いた場合に、被設置物50の鉛直方向の振動の錘5への伝達率と、振動の周波数の関係Teを示したグラフである。弾性部材8として、エラストマーや空気バネを用いた場合には、上述のバネの場合のような共振周波数は明確ではなくなるが、図2(a)に示したバネを使用する場合と同様に、高周波の振動に対して伝達率が低下することに変わりはない。
【0025】
そこで、弾性部材8としてエラストマーや空気バネを用いる場合には、被設置物50の鉛直方向振動の錘5への伝達率が1/10(振動の振幅として1/10)のt2となるカットオフ周波数f2が、例えば100[Hz]以下となるよう設定するとよい。これにより、被設置物50のこのカットオフ周波数f2以上の高周波の振動は錘5にほとんど伝達されなくなり、錘5を静止させ、カットオフ周波数f2以上の振動を増振器100aによって効率的に増幅(増振)することができる。
【0026】
エラストマーの材質や厚み、または空気バネの大きさ等を適切に設定することで、カットオフ周波数f2を所望の周波数に設定できる。
また、さらに望ましくは、カットオフ周波数f2を、例えば30[Hz]以下となるよう設定することで、30[Hz]程度以上の環境振動を増幅することができる。本実施形態の増振器100aを設置する被設置物50の環境振動が30[Hz]よりもさらに低い場合には、カットオフ周波数f2を、例えば10[Hz]以下に設定することで、10[Hz]程度以上の振動を効果的に増幅することもできる。
【0027】
なお、本第1の実施形態においては、錘5が十分に重く、従って十分な慣性力を発揮することで振動部材1が錘取り付け部4を支点とするてことして作用することを前提として、振動の増幅を行う。従って、作用部2に設置する作用部材20の質量が錘部6(錘5および錘取り付け部4)の質量に比べて大きい場合には、増振器としての機能が低下する恐れがある。
【0028】
図3は、てことしての振動部材の概念を説明する図である。図3に示したとおり、てこである振動部材1のうち、錘部6は支点Cと、作用部材20は作用点Aと、支持部3は力点Bと見ることができる。すなわち、支点Cが錘部6の慣性力により静止され、被設置物50の振動が力点Bである支持部3に加わると、その振動が増幅されて作用点Aである作用部材20に伝わることを意味している。
【0029】
力点Bである支持部3の鉛直方向(ここではX方向とする)の位置の時間tに伴う変位量Xb(t)は、被設置物50のX方向の位置の変位量と等しい。支点Cとしての錘部6が静止しているなら、作用点Aである作用部2の方向位置の変位量Xaは、てこの原理により、
Xa(t)=−(L1/L2)Xb(t) …(2)
となる。
【0030】
そして、質量Maの作用部2および作用部材20が、このXaだけ位置変動するには、振動部材1から力Faを受ける必要があり、力Faは、
Fa=Ma×d/dt(Xa(t)) …(3)
と表せる。
【0031】
式(2)と式(3)より、
Fa=−Ma(L1/L2)×d/dt(Xb(t)) …(4)
となる。
このとき、力点Bである支持部3に働いてる鉛直方向の力Fbは、てこの原理により、
Fb=−(L1/L2)×Fa …(5)
であり、式(4)と式(5)から、
Fb=Ma(L1/L2)×d/dt(Xb(t)) …(6)
と表せる。
【0032】
振動部材1には、さらに、作用部2および作用部材20を移動させる力Faの反作用として作用部が受ける力Fa’、および支点Cに作用し支点Cを支える力Fcが加わる。
錘部6および振動部材1の重心が静止するためには、振動部材1に加わるこれらの力が吊り合っていること、言い換えると、合力が0であることが重要である。
すなわち、
Fa’+Fb+Fc=0 …(7)
が重要である。
【0033】
このためには、式(7)より、
Fc=−(Fa’+Fb) …(8)
が要求されるが、Fa=−Fa’であることから、
Fc=Fa−Fb …(9)
が要求される。
【0034】
式(9)と、式(5)および式(6)より、
Fc=−Ma(1+L1/L2)(L1/L2)d/dt(Xb(t))
…(10)
となる。
Xb(t)は、力点Bである支持部3のX方向の振動であるので、任意の角周波数ωBを用いて、
Xb(t)=(Xb0)sin(ωBt) …(11)
と表すことができる。
ここで、Xb0は、力点Bである支持部3のX方向の振動の振幅である。
【0035】
また、
/dt(Xb(t))=−ωB(Xb0)sin(ωBt) …(12)
である。
式(11)および式(12)を用いると、式(10)のFcは、
Fc=−Ma×ωB(1+L1/L2)(L1/L2)
×(Xb0)sin(ωBt) …(13)
と表すことができる。
すなわち、支点Cを支える力Fcは、被設置物50の鉛直方向の振動の振幅と、作用部2および作用部材20の質量Maに比例したものとなる。
【0036】
ところで、支点Cには、被設置物50の振動によりバネ等の弾性部材8に生じた変位に伴う弾性部材8の復元力Fdも加わる。弾性部材8の弾性定数をkとし、支点C(錘部6)が上下方向に静止しているとき、復元力Fdは、
Fd=k・Xb(t) …(14)
となる。
支点Cが上下方向に静止しているとき、弾性部材8の変位量は、弾性部材8の一端が連結されている弾性部材固定部9の変位量と一致し、これは、被設置物50の変位量に等しく、従って、支持部3の変位量Xb(t)に等しいためである。
【0037】
ここで、上記の角周波数ωBが、バネ定数kの弾性部材8と錘部6の質量Mcに対して式(1)で求まる固有振動数(共振周波数)であるとすると、
ωB=√(k/Mc) …(15)
k=McωB …(16)
であり、式(11)、式(14)、および式(16)より、
Fd=McωB(Xb0)sin(ωBt) …(17)
となる。
【0038】
支点Cは、この復元力Fdを受けてもほとんど静止している。従って、式(13)で表される支点Cを支える力Fcの絶対値が、復元力Fdの絶対値よりも十分小さければ、支点Cは、同じく静止していることになる。すなわち、
|Fd|>>|Fc| …(18)
(Mc/Ma)>>(1+L1/L2)(L1/L2) …(19)
を満たせば、支点Cは動かずに静止する。
【0039】
式(19)は、
Mc>>Ma(1+L1/L2)(L1/L2) …(20)
とも変形できる。
一例として、作用部に設置する作用部材の質量Ma、錘部6と(正確には上述の交点CPと)支持部3との間の距離L1、錘部6と(正確には上述の交点CPと)作用部2との間の距離L2に対し、錘部6の質量Mcが、Ma×(1+L2/L1)×(L2/L1)の2倍以上であれば、支点Cは動かずに静止することができる。
【0040】
式(19)の条件を満たす条件として、一例として、L1を80[mm]、L2を200[mm]、錘部6の質量Mcを6.7[kg]とし、作用部2に設置する作用部材20の質量Maを0.1[kg]と設定することができる。これにより、支点C(錘部6)がほぼ静止し、支持部3の鉛直方向の振動を、作用部2において効率良く増幅する増振器が実現できる。
【0041】
なお、以上の式(11)から式(13)、および式(15)から式(17)は、いずれも正弦波で表される振動を想定して記載したが、例えばインパルス振動等であっても、式(19)および式(20)は成立する。
なお、錘5は、比重の大きな材料、例えば金属材料で形成することが望ましいが、金属粉や砂等の粒状物を詰めた袋状の物を使用することもできる。また、錘5は、錘取り付け部4に直接取り付けず、鎖等を介して錘取り付け部4から懸架しても良い。
錘5を錘取り付け部4から懸架する場合や、錘5として上述の袋状の物を使用する場合などには、バネ等の弾性部材8の端部を錘5ではなく錘取り付け部4に取り付けることが好ましい。
【0042】
(増振器の第1変形例)
図4は第1変形例の増振器100bを横から見た図である。第1変形例は、その大部分の構成が上述の一実施形態と共通するため、一実施形態との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0043】
第1変形例の増振器100bでは、支持部3は図4中の振動部材1の水平方向中央やや右寄りに設けられ、錘取り付け部4は図4中の振動部材1の右端近傍に設けられている。従って、第1変形例の増振器100bでは、振動部材1の右端近傍の錘取り付け部4が、てことしての振動部材1の支点として機能する。そして、振動部材1の図1中の左端付近の作用部2は、被設置物50および支持部3と同向きに、鉛直方向に振動することとなる。それ以外の構成は、上述の一実施形態と共通である。
【0044】
第1変形例の増振器100bにおいても、支持部3から振動部材1に伝えられる被設置物50の鉛直方向の振動は、てことしての振動部材1により増幅され、作用部2において増幅される。
なお、第1変形例の増振器100bにおいては、支持部3は、振動部材1に沿って振動部材1の錘5が設けられた部分(錘取り付け部4)と作用部2との間にある。この場合には、てこの原理から、支持部3と作用部2との距離L3を、上述の交点CPと支持部3との間の距離L2よりも長くすることで、被設置物50の鉛直方向の振動が、作用部2においてより増幅される。
【0045】
(増振器の第2変形例)
図5は第2変形例の増振器100cを横から見た図である。第2変形例も、その大部分の構成は上述の一実施形態と共通するため、一実施形態との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0046】
第2変形例の増振器100cでは、錘5は弾性部材8により上方から支持されている。そして、弾性部材8の上端は、被設置物50に固設され振動部材1の上方にまで延びて設けられている金属等で形成されている弾性部材固定部9aにより支持されている。また、振動部材固定部7も弾性部材固定部9aに固設され、弾性部材固定部9aを介して被設置物50に固設されている。それ以外の構成は、上述の一実施形態と共通である。
【0047】
第2変形例の増振器100cにおいても、支持部3から振動部材1に伝えられる被設置物50の鉛直方向の振動は、てことしての振動部材1により増幅され、作用部2において増幅される。
【0048】
(増振器の第3変形例)
図6は第3変形例の増振器100dを横から見た図である。第3変形例は、その大部分の構成は上述の第2変形例と共通するため、第2変形例との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0049】
第3変形例の増振器100dは、立体形状を有する被設置物50aへの設置を前提としており、振動部材1の支持部3は、被設置物50aの壁部50bに直接設置されている。そして、弾性部材8の上端部も、被設置物50aの天井部50cに直接固設されている。
それ以外の構成は、上述の第2変形例と共通である。
【0050】
この場合の被設置物50aは、図6に示したような直方体の箱形状に限られるものではなく、鉄骨やコンクリート柱により立体的に形成された複雑な立体構造物であってもかまわない。また、壁部50bと天井部50cは、橋等の建造物を構成するそれぞれ別の部材の一部であっても良い。さらに、壁部50bも壁状の部分に限らず、例えば水平方向や斜め方向に延びる鉄骨やコンクリート部材であっても良い。天井部50cも、構造物としての天井に限らず、例えば水平方向や斜め方向に延びる梁状の部材の一部であっても良い。
【0051】
第3変形例の増振器100dにおいても、支持部3から振動部材1に伝えられる被設置物50の鉛直方向の振動は、てことしての振動部材1により増幅され、作用部2において増幅される。
【0052】
(増振器の第4変形例)
図7は第4変形例の増振器100eを横から見た図である。第4変形例は、その大部分の構成は上述の第1変形例と共通するため、第1変形例との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0053】
第4変形例の増振器100eでは、振動部材1は、支持部3を境に約90度折れ曲がって接続されている第1振動部材1aおよび第2振動部材1bとから構成されている。このうち第1振動部材1aには、第1変形例と同様にその右端近傍に錘取り付け部4が設けられ、ここに錘5が設置されている。従って、第1変形例と同様に、被設置物50の鉛直方向の振動は、支持部3を介して第1振動部材1aに伝わり、錘取り付け部4を支点とするてこである第1振動部材1aを微小回転させる。
【0054】
しかし、てこの作用点としての作用部2は、第1振動部材1aとは90度折れ曲がって接続されている第2振動部材1bの端部の近傍にあるため、第1振動部材1aの微小回転により、作用部2は図7中の左右方向である水平方向に増幅して振動されることになる。
それ以外の構成は、上述の一実施形態と共通である。
【0055】
第4変形例においても、距離L1および距離L2については、上述の一実施形態と同様に、錘5を通り鉛直方向に延びる直線RLと支持部3を通り鉛直方向に垂直な平面RSとの交点CPを基準として、上記の交点CPから作用部2までの距離をL1、上記の交点CPからから支持部3までの距離をL2と考えればよい。
【0056】
第4変形例の増振器100eにおいても、支持部3から振動部材1に伝えられる被設置物50の鉛直方向の振動は、てことしての振動部材1により増幅され、作用部2において水平方向の振動として増幅される。
なお、第4変形例の増振器100eにおいても、上述の第1変形例の増振器100bと同様に、支持部3は、途中で90℃折れ曲がっている振動部材1(1a、1b)に沿って第1振動部材1aの錘5が設けられた部分(錘取り付け部4)と作用部2との間にある。従って、上述の第1変形例の増振器100bと同様に、支持部3と作用部2との距離L3を、上述の交点CPと支持部3との間の距離L2よりも長くすることで、被設置物50の鉛直方向の振動が、作用部2において水平方向に、より増幅される。
【0057】
(増振器の第5変形例)
図8は第5変形例の増振器100fを横から見た図である。第5変形例も、その大部分の構成は上述の一実施形態と共通するため、一実施形態との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0058】
第5変形例の増振器100fでは、錘5は、低摩擦での回転を実現する転がり軸受11等の回動機構11を介して、振動部材1に接続されている。一例として、転がり軸受の外輪側が錘5に固定され、内輪側が振動部材1に固定されている。
錘5が振動部材1に対して回転関係が固定されて設けられている場合には、振動部材1が、支持部3にから伝わる被設置物50の振動により微小回転振動をすると、錘5も微小回転運動をすることになる。従って、被設置物50の振動エネルギーの一部が、錘5の回転運動のエネルギーとして浪費されてしまう。
【0059】
第5変形例の増振器100fでは、錘5は回動機構11を介して振動部材1に設けられているので、振動部材1が回転しても錘5は回転運動しない。よって、被設置物50の振動エネルギーの一部が、錘5の回転運動のエネルギーとして浪費されることがなく、被設置物50の振動を、作用部2においてより効率的に増幅することができる。
【0060】
(増振器の第6変形例)
図9は第6変形例の増振器100gを横から見た図である。第6変形例も、その大部分の構成は上述の第2変形例と共通するため、第2変形例との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0061】
第6変形例の増振器100gにおいても、第5変形例と同様に、錘5は、転がり軸受等の低摩擦での回転を実現する回動機構11を介して、振動部材1に接続されている。ただし、第6変形例の増振器100gでは、錘5は、第2変形例と同様に、被設置物50に固設され振動部材1の上方にまで延びて設けられている弾性部材固定部9aに支持された弾性部材8によって上方から支持される構成である。そこで、弾性部材8と錘5の間に、中継部材12を設け、弾性部材8は中継部材12を介して錘5を支持する構成としている。
中継部材12は、例えば、上部に正方形の天板12aを有し、天板12aの四隅から下方に脚部12bが形成されている部材である。そして、天板12aが弾性部材8により支持され、4本の脚部12bの下端が錘5に固定される。天板12aおよび4本の脚部12bのいずれもが、振動部材1には接触しない。
【0062】
第6変形例の増振器100gにおいても、錘5は回動機構11を介して振動部材1に設けられているので、振動部材1が回転しても錘5は回転運動しない。よって、被設置物50の振動エネルギーの一部が、錘5の回転運動のエネルギーとして浪費されることがなく、被設置物50の振動を、作用部2においてより効率的に増幅することができる。
【0063】
(増振器の第7変形例)
図8および図10(a)を参照して、第7変形例の増振器について説明する。第7変形例の増振器は、その構成の大部分は図8に示した第5変形例と同様である。ただし、錘5を振動部材1に接続する回転機構として、図8に示した転がり軸受け11に代えて、図10(a)に示したとおり、振動部材1の下面側の溝部1cと、錘5の上部の稜線部5aとを備えている。
【0064】
振動部材1の溝部1cと錘5の稜線部5aとの接触部は、図10(a)の紙面奥行き方向に延在する線(以降、接触線1dと呼ぶ)となる。そして錘5は、この接触線1dを回転中心として振動部材1に対して相対回転することができる。
なお、溝部1cと稜線部5aだけでは、振動部材1と錘5の固定は不十分なので、固定用カバー13を用いて、振動部材1の錘5の位置関係を、接触線1dを中心とする回転を除いて、固定する。
【0065】
固定用カバー13は、第6変形例の中継部材12とほぼ同様の構成であり、例えば、上部に正方形の天板13aを有し、天板13aの四隅から下方に脚部13bが形成されている部材である。そして、4本の脚部13bの下端が錘5の上部に固定されている。天板13aおよび4本の脚部13bのいずれもが、振動部材1には接触しない。また、天板13aと振動部材1との間には付勢バネ14が設けられ、付勢バネ14が振動部材1に対して天板13a(固定用カバー13)を図中上方に押す。これにより、固定用カバー13に固定されている錘5も振動部材1に押し付けられて、接触線1dを中心とする回転を除いて、振動部材1に固定される。付勢バネ14には、コイルバネや板バネ等を使用する。
【0066】
第7変形例の増振器においても、錘5は回動機構(錘5の稜線部5aと振動部材1の溝部1c)を介して振動部材1に設けられているので、振動部材1が回転しても錘5は回転運動しない。よって、被設置物50の振動エネルギーの一部が、錘5の回転運動のエネルギーとして浪費されることがなく、被設置物50の振動を、作用部2においてより効率的に増幅することができる。
【0067】
(増振器の第8変形例)
図9および図10(b)を参照して、第8変形例の増振器について説明する。第8変形例の増振器は、その構成の大部分は図9に示した第6変形例と同様である。ただし、錘5を振動部材1に接続する回転機構として、図9に示した転がり軸受け11に代えて、図10(b)に示したとおり、上述の第7変形例と同様に、振動部材1の下面側の溝部1cと、錘5の上部の稜線部5aとを備えている。
【0068】
第8変形例においては、第7変形例における固定用カバー13に代えて、第6変形例における中継部材12を用いて、錘5を振動部材1に固定すればよい。このとき、第7変形例と同様に、中継部材12の天板12aと振動部材1との間に付勢バネ14を設けることで、錘5が振動部材1に押し付けられる。これにより錘5が、接触線1dを中心とする回転を除いて、振動部材1に固定される。
【0069】
第8変形例の増振器においても、錘5は回動機構(錘5の稜線部5aと振動部材1の溝部1c)を介して振動部材1に設けられているので、振動部材1が回転しても錘5は回転運動しない。よって、被設置物50の振動エネルギーの一部が、錘5の回転運動のエネルギーとして浪費されることがなく、被設置物50の振動を、作用部2においてより効率的に増幅することができる。
【0070】
(増振器の第9変形例)
図11は第9変形例の増振器100fを上から見た図である。第9変形例は、部分的に上述の一実施形態と共通するため、一実施形態との相違箇所のみを説明し、共通箇所については説明を省略する。
【0071】
第9変形例の増振器100hは、振動部材1は水平方向であって振動部材1の延在方向(図中の第2水平方向)と直交する方向(図中の第1水平方向)の振動を増幅する。振動部材1は一実施形態と同様に、鉛直下方に延びる振動部材固定部7により支持部3で保持されている。そして、振動部材固定部7の下端は被設置物(不図示)に固設されている。
【0072】
振動部材1の図8中の第2水平方向中央やや右寄りには、錘取り付け部4が設けられており、ここに錘5が設置されている。第5変形例では、錘5の側面の一部に弾性部材8aが設置され、弾性部材8aは、錘5に対して第1水平方向にある被設置物の一部である壁部50eに、弾性部材固定部9bを介して接続されている。
【0073】
第9変形例の増振器100hでは、錘部6が水平方向への振動に対する慣性力を発揮し、水平方向に振動するてことしての振動部材1の支点として機能する。これにより、支持部3から伝達される被設置物(不図示)からの第1水平方向の振動を、作用部2において増幅する。
【0074】
なお、不図示ではあるが、錘5の下方(図8中の紙面奥方向)には、錘5を支えるバネ等の支持部材が設置され、この支持部材の下端は被設置物に接続されている。この支持部材は、これが無ければ錘5の重さによって傾いてしまう振動部材1を支えるための部材である。
【0075】
第9変形例においては、距離L1および距離L2については、上述の一実施形態と同様に、錘5を通り第1水平方向に延びる直線RL2と支持部3を通り第1水平方向に垂直な平面RS2との交点CPを基準として、上記の交点CPから作用部2までの距離をL1、上記の交点CPからから支持部3までの距離をL2と考えればよい。
それ以外の構成は、上述の一実施形態と共通である。
【0076】
第9変形例の増振器100hにおいても、支持部3から振動部材1に伝えられる被設置物50の第1水平方向の振動は、てことしての振動部材1により増幅され、作用部2において増幅される。
以上の一実施形態および各変形例に示された構成は、本発明の主旨に反しない範囲でそれぞれ組み合わせて実施をすることができる。
【0077】
また、上述の一実施形態中に例示した上記の交点CPから作用部2までの距離L1、上記の交点CPからから支持部3までの距離L2、錘部6の質量Mc、作用部2に設置する作用部材20の質量Maは、一例であってこれらに限定されるものではない。
例えば、振動部材1の全長(一実施形態の場合にはほぼ距離L1+距離L2、第1変形例の場合にはほぼ距離L1)は、本例の増振器の用途に応じて0.5[cm]から3[m]の長さとすることができる。振動部材1の全長が短い、すなわち小型の増振器は、家庭用電気製品用や車載用に適している。一方、振動部材1の全長が長い、すなわち大型の増振器は、橋や道路への設置に適している。ただし、橋や道路の中の小さなスペースへの設置には小型の増振器が適している。
【0078】
振動部材1の全長が0.5[cm]から2[cm]程度の場合には、作用部2に設置する作用部材20の質量Maは0.2[g]程度、錘部6の質量Mcは1〜20[g]程度が適している。
振動部材1の全長が2[cm]から10[cm]程度の場合には、作用部2に設置する作用部材20の質量Maは2[g]程度、錘部6の質量Mcは20〜200[g]程度が適している。
【0079】
振動部材1の全長が10[cm]から1[m]程度の場合には、作用部2に設置する作用部材20の質量Maは0.1[kg]程度、錘部6の質量Mcは0.2〜10[kg]程度が適している。
振動部材1の全長が1[m]から3[m]程度の場合には、作用部2に設置する作用部材20の質量Maは0.5[kg]程度、錘部6の質量Mcは10[kg]以上程度が適している。
【0080】
なお、以上の一実施形態および各変形例では、鉛直方向または第1水平方向の振動を増幅する例を示しているが、増幅されるべき振動の方向は、これらの方向に限られるものではなく、一実施形態および各変形例の振動部材1が延在する方向は、水平方向に限られるものではない。
また、第1方向の振動を増幅するとは、任意の方向の第1方向の振動成分を増幅することをいうのであり、純粋に第1方向内で振動する振動のみを増幅することを示すものではない。
【0081】
(増振装置の一実施形態および各変形例の効果)
(1)以上の一実施形態および各変形例の増振器は、第1方向の振動を増幅する増振器であって、作用部2および支持部3を有し、支持部3を介して被設置物50,50aに支持されている振動部材1と、振動部材1に設けられた錘部6と、一端が錘部6に連結され錘部6を被設置物50,50aに対して弾性支持する弾性部材8とを備え、錘部6を通り第1方向に延びる直線RLと支持部3を通り第1方向に垂直な平面RSとの交点CPと作用部2との間の距離L1が、交点CPと支持部3との間の距離L2よりも長いという構成を有している。
この構成により、被設置物50,50aの第1方向の振動を作用部2において増幅することができるという効果を有している。
(2)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、支持部3と被設置物50の間に振動部材固定部7を有し、振動部材固定部7は被設置物50に支持されるとともに支持部3を支持している。
これにより、(1)に記載の効果に加えて、増振器を各種の被設置物50に簡単に設置できるという効果を有している。
【0082】
(3)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、弾性部材8と被設置物50の間に弾性部材固定部9を有し、弾性部材固定部9は被設置物50に支持されるとともに、弾性部材8の他端に連結されている。
これにより、(1)または(2)に記載の効果に加えて、増振器を各種の被設置物50にさらに簡単に設置できるという効果を有している。
【0083】
(4)以上のいくつかの変形例の増振器は、支持部3は、振動部材1に沿って振動部材1の錘5が設けられた部分と作用部2との間にあるとともに、支持部3と作用部2との距離は、前記交点と前記支持部との間の距離よりも長い。
この構成により、被設置物50,50aの第1方向の振動を作用部2においてさらに増幅することができるという効果を有している。
(5)以上のいくつかの変形例の増振器は、錘部6を構成する錘5は、回動機構11を介して前記振動部材に設けられている。この構成により、作用部2において、被設置物50,50aの振動をより効率的に増幅することができるという効果を有している。
【0084】
(6)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、振動部材1は水平方向に延びる梁状部材であり、第1方向は鉛直方向である。この構成により、橋等の建造物に多く含まれる鉛直方向の振動成分を、シンプルな形状の振動部材1を用いて増幅できるという効果を有している。
【0085】
(7)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、弾性部材8としてバネを備え、バネのバネ定数および錘部6の質量から定まるバネの共振周波数を30[Hz]以下としている。これにより、被設置物50のより低周波の振動についても増幅することが可能になるという効果を有している。
(8)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、弾性部材8はエラストマーまたは空気ダンパーを含み、被設置物50,50aから錘部6に伝達される振動を1/10に減衰するカットオフ周波数が100[Hz]以下であるとしている。
これにより、これにより、被設置物50のより低周波の振動についても増幅することが可能になるという効果を有している。
(9)以上の一実施形態およびいくつかの変形例の増振器は、上記の交点CPと支持部3との間の距離をL1、上記の交点CPと作用部2との間の距離をL2とし、作用部2に設置する作用部材の質量がMaであるとき、錘部6の質量Mcは、Ma×(1+L2/L1)×(L2/L1)の2倍以上としている。
これにより、錘部6をてことしての振動部材1の支点として有効に機能させ、作用部2における振動の増幅を一層効果的に行うことができるという効果を有している。
【0086】
本発明の振動発電装置の実施形態は、上述の増振器の一実施形態および各変形例のいずれかにおいて、その作用部2に、作用部材20として例えば静電容量型や圧電素子型等の振動発電素子を設置したものである。
従来においては、振動発電素子は、振動の振幅が十分でない環境振動から効率良く発電を行うことは難しかったが、実施形態の振動発電装置では、振動発電素子が環境振動(被設置物50の振動)が増幅された作用部2に設置されているため、環境振動から効率良く発電を行うことができる。
【0087】
前記振動発電素子は、一方がエレクトレット化されている可動電極と固定電極とを有し、前記可動電極と前記固定電極との相対的な振動により発電する発電素子である、
振動発電素子としては、少なくとも一方がエレクトレット(帯電素子)化されている可動電極と固定電極とを有し、可動電極と固定電極との相対的な振動により発電を行うエレクトレット型振動発電素子や、振動部材に圧電部材を設け振動に伴う圧電素子の変形により発電を行う圧電素子型発電素子を用いることができる。エレクトレット型振動発電素子の構成は、例えば特開2013−172523号公報に開示されている。
また、永久磁石とコイルによる発電素子を用いることもできる。
【0088】
(振動発電装置の実施形態の効果)
(10)以上の実施形態の振動発電装置は、被設置物50の振動が増幅された作用部2に振動発電素子を設けている。これにより、被設置物50の振動が僅かであっても高出力で発電を行う振動発電装置を実現することができる。
【0089】
(11)さらに、振動発電素子として、一方がエレクトレット化されている可動電極と固定電極とを有し、可動電極と固定電極との相対的な振動により発電する発電素子を備えることで、より効率的に発電を行う振動発電装置を実現することができる。
【0090】
上記では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、実施形態および各変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100a,100b,100c,100d,100e,100f:増振器:1:振動部材、2:作用部、3:支持部、4:錘取り付け部、5:錘、6:弾性部材、7:振動部材固定部、8:弾性部材固定部、20:作用部材、50,50a,50e:被設置物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11