(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-163746(P2019-163746A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20190830BHJP
【FI】
F04C29/02 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-53069(P2018-53069)
(22)【出願日】2018年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池辺 浩樹
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB06
3H129BB47
3H129CC08
3H129CC16
3H129CC34
(57)【要約】
【課題】潤滑油の不足の回避。
【解決手段】圧縮機10は、ケーシング20と、圧縮機構40と、クランク軸35と、ポンプ60と、ワンウェイクラッチ70と、を備える。圧縮機構40は、ケーシング20に収容される。クランク軸35は、圧縮機構40に回転力を伝える。ポンプ60は、回転力を受け取ることによって、ケーシング20の内部に貯留された油Lを移動させる。ワンウェイクラッチ70は、クランク軸35が正回転する時に回転力をポンプ60に伝達し、クランク軸35が逆回転する時に回転力をポンプ60に伝達しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(20)と、
前記ケーシングに収容された圧縮機構(40)と、
前記圧縮機構に回転力を伝えるクランク軸(35)と、
前記回転力を受け取ることによって、前記ケーシングの内部に貯留された油(L)を移動させるポンプ(60)と、
前記クランク軸が正回転する時に前記回転力を前記ポンプに伝達し、前記クランク軸が逆回転する時に前記回転力を前記ポンプに伝達しない、ワンウェイクラッチ(70)と、
を備える圧縮機(10)。
【請求項2】
前記ワンウェイクラッチは、前記クランク軸を中心として径方向外側に配置される第1回転部材(71’)と、径方向内側に配置される第2回転部材(72’)とを有し、前記第1回転部材と前記第2回転部材との間で前記回転力を伝達できる、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチは、前記クランク軸が延びる方向に配列する第1回転部材(71)と第2回転部材(72)とを有し、前記第1回転部材と前記第2回転部材との間で前記回転力を伝達できる、
請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍機械等に用いられる圧縮機。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015−166553号公報)の圧縮機は、給油ポンプを有する。給油ポンプは、ケーシング内の下部に貯留された潤滑油を吸い上げて、上部の各種機構の摺動箇所へ供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような給油ポンプは、クランク軸の回転力によって駆動される。したがって、クランク軸が何らかの原因により逆回転する場合、摺動箇所に供給された潤滑油が油貯留部へ戻される。各種機構において潤滑油が不足すると、圧縮機が損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の圧縮機は、ケーシングと、圧縮機構と、クランク軸と、ポンプと、ワンウェイクラッチと、を備える。圧縮機構は、ケーシングに収容される。クランク軸は、圧縮機構に回転力を伝える。ポンプは、回転力を受け取ることによって、ケーシングの内部に貯留された油を移動させる。ワンウェイクラッチは、クランク軸が正回転する時に回転力をポンプに伝達し、クランク軸が逆回転する時に回転力をポンプに伝達しない。
【0005】
この構成によれば、クランク軸の正回転はポンプに伝達されるのに対し、クランク軸の逆回転はポンプに伝達されない。したがって、摺動箇所における潤滑油の不足を抑制できる。
【0006】
第2観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、ワンウェイクラッチが、クランク軸を中心として径方向外側に配置される第1回転部材と、径方向内側に配置される第2回転部材とを有する。第1回転部材と第2回転部材との間で回転力を伝達できる。
【0007】
この構成によれば、第1回転部材と第2回転部材は径方向に配列する。したがって、圧縮機の高さをコンパクトにできる。
【0008】
第3観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、ワンウェイクラッチが、クランク軸が延びる方向に配列する第1回転部材と第2回転部材とを有する。第1回転部材と第2回転部材との間で回転力を伝達できる。
【0009】
この構成によれば、第1回転部材と第2回転部材はクランク軸が延びる方向に配列する。したがって、ワンウェイクラッチの構造を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る圧縮機10の断面図である。
【
図2】ポンプ60及びワンウェイクラッチ70の構造を示す模式図である。
【
図3】ワンウェイクラッチ70の部品を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態に係る圧縮機10’のワンウェイクラッチ70’の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、第1実施形態に係る圧縮機10の断面図である。圧縮機10は、スクロール圧縮機である。圧縮機10は、ケーシング20、モータ30、クランク軸35、圧縮機構40、第1支持部材27、第2支持部材28、吸入管51、吐出管52、ポンプ60、ワンウェイクラッチ70、を有する。
【0012】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング20
ケーシング20は、圧縮機10の構成部品及び冷媒を収容し、冷媒の高圧に耐えうる強度を有する。ケーシング20は、互いに接合された円筒部21、上部22、下部23を有する。ケーシング20の内部の下方には、冷凍機油Lを貯留する油貯留部20sが設けられている。冷凍機油Lは、圧縮機10の構成部品の摺動箇所を潤滑するのに用いられる。
【0013】
(2−2)モータ30
モータ30は、電力の供給を受けて、圧縮機構40のための動力を発生させるものである。モータ30は、ステータ31とロータ32を有する。ステータ31は、ケーシング20に直接的又は間接的に固定されている。ロータ32は、ステータ31と磁気的な相互作用を行うことによって、回転することができる。
【0014】
(2−3)クランク軸35
クランク軸35は、モータ30が発生させた動力を圧縮機構40に伝達するものである。クランク軸35はロータ32と共に回転する。クランク軸35は主軸部36と偏心部37を有している。主軸部36はロータ32に固定されており、ロータ32と同心である。偏心部37は主軸部36から偏心しており、圧縮機構40に連結している。クランク軸35が回転することによって、偏心部37が公転する。
【0015】
(2−4)圧縮機構40
圧縮機構40は、流体であるガス冷媒を圧縮する。圧縮機構40は、固定スクロール41及び可動スクロール42を有する。固定スクロール41はケーシング20に直接的又は間接的に固定されている。可動スクロール42は固定スクロール41に対して公転可能である。固定スクロール41と可動スクロール42によって圧縮室43が規定されている。偏心部37の公転に追従して、可動スクロール42が公転運動をする。これによって圧縮室43の容積が変動し、ガス冷媒が圧縮される。圧縮工程を経た高圧ガス冷媒は、固定スクロール41に設けられた吐出口44から圧縮機構40の外へ出て、ケーシング20の内部空間に充満する。
【0016】
(2−5)第1支持部材27、第2支持部材28
第1支持部材27はクランク軸35の主軸部36を回転可能に支持する。第1支持部材27は、ケーシング20に直接的又は間接的に固定されている。第1支持部材27は、固定スクロール41を直接的又は間接的に支持してもよい。
【0017】
第2支持部材28はクランク軸35の主軸部36を回転可能に支持する。第2支持部材28は、ケーシング20に直接的又は間接的に固定されている。
【0018】
(2−6)吸入管51、吐出管52
吸入管51及び吐出管52は、ケーシング20の内部と外部との間で冷媒を移動させるために、ケーシング20に設けられている。
【0019】
吸入管51は、低圧ガス冷媒を吸入して圧縮室43へ導入するためのものである。吸入管51は、上部22に設けられている。
【0020】
吐出管52は、吐出口44から吐出されてケーシング20の内部空間に充満している高圧ガス冷媒を、ケーシング20の外部へ吐出するためのものである。吐出管52は、円筒部21に設けられている。
【0021】
(2−7)ポンプ60
ポンプ60は、第2支持部材28に設けられている。ポンプ60は、クランク軸35の回転力を受け取ることによって、油貯留部20sに貯留された冷凍機油Lを汲み上げ、上方へ移動させる。
【0022】
(2−8)ワンウェイクラッチ70
ワンウェイクラッチ70は、クランク軸35とポンプ60の間に配置される。クランク軸35が正回転する時に、ワンウェイクラッチ70は回転力をポンプ60に伝達する。クランク軸35が逆回転する時に、ワンウェイクラッチ70は回転力をポンプ60に伝達しない。
【0023】
(3)ポンプ60及びワンウェイクラッチ70の詳細構造
図2に示すように、ポンプ60は、ベース61、スペーサ62、ボルト63、インナロータ65、アウタロータ66、ポンプ駆動軸67、チューブ68、第1スラストプレート81、第2スラストプレート82を有する。ポンプ60には、ワンウェイクラッチ70が接続されている。
【0024】
ベース61は、スペーサ62を介してボルト63によって第2支持部材28に固定される。ベース61の空洞内には、トロコイドポンプを形成するインナロータ65及びアウタロータ66が配置されている。ポンプ駆動軸67はインナロータ65に接続している。クランク軸35の回転力がワンウェイクラッチ70を介してポンプ駆動軸67に伝達される時、冷凍機油Lは吸込口64から取り込まれ、チューブ68を通過し、クランク軸35の内部の給油路35aへ吸い上げられる。
【0025】
第1スラストプレート81は、スペーサ62の上に位置し、クランク軸35の下端を支持する。第2スラストプレート82は、インナロータ65及びアウタロータ66の上に位置し、ポンプ駆動軸67を支持する。
【0026】
ワンウェイクラッチ70は、第1回転部材71、第2回転部材72、給油軸73を有する。第1回転部材71及び第2回転部材72は、クランク軸35が延びる方向に配列している。第1回転部材71、第2回転部材72、給油軸73はいずれも円筒形である。給油軸73は、第1回転部材71及び第2回転部材72を貫通している。第1回転部材71はクランク軸35に接続しており、クランク軸35から回転力を受け取る。第2回転部材72は給油軸73に沿って上下にスライドできる。チューブ68は給油軸73に挿入されている。
【0027】
図3は第1回転部材71及び第2回転部材72の模式図である。第1回転部材71は、正傾斜面71a、逆傾斜面71bを有する。第2回転部材72は、正傾斜面72a、逆傾斜面72bを有する。正傾斜面71a及び正傾斜面72aは平行である。逆傾斜面71b及び逆傾斜面72bは平行である。
【0028】
(4)ポンプ60の動作
第1回転部材71が、クランク軸35と共に正回転方向Fに回転する時、第1回転部材71の回転力は正傾斜面72aを介して第2回転部材72に伝達される。この時、第2回転部材72は下方へスライドし、ポンプ駆動軸67に接触する。第2回転部材72の正回転方向Fの回転力は、第2回転部材72とポンプ駆動軸67との摩擦によって、ポンプ駆動軸67に伝達される。その結果、インナロータ65は回転し、給油動作が行われる。
【0029】
一方、第1回転部材71が、クランク軸35と共に逆回転方向Rに回転する時、第1回転部材71の回転力は逆傾斜面72bを介して第2回転部材72に伝達される。この時、第2回転部材72は上方へスライドし、ポンプ駆動軸67から離間する。したがって、第2回転部材72の逆回転方向Rの回転力は、ポンプ駆動軸67に伝達されない。その結果、給油動作は行われない。
【0030】
(5)特徴
(5−1)
クランク軸35の正回転はポンプ60に伝達されるのに対し、クランク軸35の逆回転はポンプ60に伝達されない。したがって、摺動箇所における冷凍機油Lの不足を抑制できる。
【0031】
(5−2)
第1回転部材71と第2回転部材72はクランク軸35が延びる方向に配列する。したがって、ワンウェイクラッチ70の構造が簡単である。
【0032】
(6)変形例
上述の実施形態では圧縮機10はスクロール型圧縮機である。これに代えて、圧縮機10はロータリ式圧縮機でもよい。
【0033】
<第2実施形態>
(1)構成
図4は、第2実施形態に係る圧縮機10’のワンウェイクラッチ70’の模式図である。第2実施形態は、ワンウェイクラッチ70’の構造において第1実施形態と異なっている。
【0034】
ワンウェイクラッチ70’は、第1回転部材71’と第2回転部材72’を有する。第1回転部材71’は、クランク軸35を中心として径方向外側に配置される。第2回転部材72’は、クランク軸35を中心として径方向内側に配置される。第2回転部材72’は、本体72c、カム部材72d、スプリング72eを有する。本体72cは回転可能である。スプリング72eはカム部材72dを第1回転部材71’に向かって斜め方向に押しつける。第1回転部材71’はクランク軸35と接続している。第2回転部材72’はポンプ駆動軸67と接続している。
【0035】
(2)動作
クランク軸35と共に第1回転部材71’が正回転方向Fに回転する時、第1回転部材71’はカム部材72dを介して第2回転部材72’へ回転力を伝達する。これによりポンプ60による給油動作が行われる。
【0036】
一方、クランク軸35と共に第1回転部材71’が逆回転方向Rに回転する時、第1回転部材71’はカム部材72dを動かし、スプリング72eが伸びる。この時、第1回転部材71’とカム部材72dの接触面圧が低下するので、回転力は第2回転部材72’に伝達されない。したがって、給油動作は行われない。
【0037】
(3)特徴
第1回転部材71’は第2回転部材72’の径方向外側に配置される。したがって、クランク軸35の延びる方向におけるワンウェイクラッチ70’の寸法が短い。したがって、圧縮機10’の高さがコンパクトである。
【0038】
(4)変形例
(4−1)
上述の実施形態では、第1回転部材71’がクランク軸35と接続しており、第2回転部材72’がポンプ駆動軸67と接続している。これに代えて、第1回転部材71’がポンプ駆動軸67と接続しており、第2回転部材72’がクランク軸35と接続していてもよい。この場合、第1回転部材71’の構造は、
図4に示した構造とは対称のものになる。
【0039】
(4−2)
上述の実施形態では圧縮機10’はスクロール型圧縮機である。これに代えて、圧縮機10’はロータリ式圧縮機でもよい。
【0040】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0041】
10、10’ :圧縮機
20 :ケーシング
27 :第1支持部材
28 :第2支持部材
30 :モータ
35 :クランク軸
40 :圧縮機構
60 :ポンプ
61 :ベース
62 :スペーサ
63 :ボルト
64 :吸込口
65 :インナロータ
66 :アウタロータ
67 :ポンプ駆動軸
68 :チューブ
70、70’ :ワンウェイクラッチ
71、71’ :第1回転部材
71a :正傾斜面
71b :逆傾斜面
72、72’ :第2回転部材
72a :正傾斜面
72b :逆傾斜面
72c :本体
72d :カム部材
72e :スプリング
73 :給油軸
81 :第1スラストプレート
82 :第2スラストプレート
F :正回転方向
R :逆回転方向
L :冷凍機油
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2015−166553号公報