【解決手段】本発明の被覆材接着方法は、薄膜状の金属で形成された被覆材3を、接着剤4によって、曲面状の表面を有し、断熱材2の表面に張り付ける張り付け工程と、張り付け工程を実行した後であって、接着剤4が硬化する前に、網目状に形成されたシート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを押圧して接着する押圧工程と、を含む。
前記押圧工程は、前記シート材を前記被覆材上に重ねた状態で、前記被着材と前記被覆材とを、第一押圧部および前記第一押圧部と対面して配置された第二押圧部で挟んでプレスして接着する、請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆材接着方法。
前記押圧工程は、前記シート材を前記被覆材上に重ねた状態で、前記被着材と前記被覆材とを、ローラで押し付けて接着する、請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆材接着方法。
弾性変形可能な筒状部材に巻き付けられた薄膜状の金属で形成された被覆材を、接着剤によって、曲面状の表面を有し、断熱材である被着材の表面に張り付ける張り付け工程と、
前記張り付け工程を実行した後であって、前記接着剤が硬化する前に、前記被着材と前記被覆材とを押圧して接着する押圧工程と、
を含み、
前記張り付け工程は、前記筒状部材を前記被着材の表面に押し付けながら回転させて、前記被覆材を前記被着材の表面に張り付ける、ことを特徴とする被覆材接着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡時の作用によらず、接着剤を介在させて、発泡後の被着材を断熱材の表面に接着する場合、断熱材の表面が曲面状であるため、シワまたは気泡が表れやすい。シワまたは気泡が生じることにより、被着材が断熱材の表面から剥離しやすくなるおそれがある。被着材が断熱材の表面から剥離すると、断熱性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、断熱性能を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被覆材接着方法は、薄膜状の金属で形成された被覆材を、接着剤によって、曲面状の表面を有し、断熱材である被着材の表面に張り付ける張り付け工程と、前記張り付け工程を実行した後であって、前記接着剤が硬化する前に、網目状に形成されたシート材を前記被覆材上に重ねた状態で、前記被着材と前記被覆材とを押圧して接着する押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、断熱性能を維持することができる。
【0009】
本発明の被覆材接着方法においては、前記シート材は、多角形と円形との少なくともどちらかの形状を繰り返して形成された網目模様を有することが好ましい。この方法によれば、接着剤を介在させて、断熱材の表面に被着材を接着する際に、網目模様に紛れて、シワまたは気泡が目立つ状態で現れることを抑制できる。
【0010】
本発明の被覆材接着方法においては、前記張り付け工程を実行する前に、前記被着材の表面に接着剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程を実行した後であって、前記張り付け工程を実行する前に、前記接着剤の表面に溝を形成する溝形成工程と、を含むことが好ましい。この方法によれば、断熱材の表面に被着材を接着する際に、シワまたは気泡が生じることを抑制することができる。
【0011】
本発明の被覆材接着方法においては、前記被覆材は、弾性変形可能な筒状部材に巻き付けられており、前記張り付け工程は、前記筒状部材を前記被着材の表面に押し付けながら回転させて、前記被覆材を前記被着材の表面に張り付けることが好ましい。この方法によれば、断熱材の表面に被着材を接着する際に、シワまたは気泡が生じることを抑制することができる。
【0012】
本発明の被覆材接着方法においては、前記押圧工程は、前記シート材を前記被覆材上に重ねた状態で、前記被着材と前記被覆材とを、第一押圧部および前記第一押圧部と対面して配置された第二押圧部で挟んでプレスして接着することが好ましい。この方法によれば、断熱材の表面に被着材を接着する際に、シワまたは気泡が表れることを抑制することができる。
【0013】
本発明の被覆材接着方法においては、前記第二押圧部は、前記被着材と前記被覆材とが載置され、前記第一押圧部は、前記被着材の曲率半径より小さい曲率半径の曲面状の表面を有することが好ましい。この方法によれば、断熱材の表面に被着材を接着する際に、シワまたは気泡が表れることを抑制することができる。
【0014】
本発明の被覆材接着方法においては、前記押圧工程は、前記シート材を前記被覆材上に重ねた状態で、前記被着材と前記被覆材とを、ローラで押し付けて接着することが好ましい。この方法によれば、断熱材の表面に被着材を接着する際に、シワまたは気泡が表れることを抑制することができる。
【0015】
本発明の被覆材接着方法は、薄膜状の金属で形成された被覆材の表面に接着剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程を実行した後に、前記接着剤の表面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝形成工程を実行した後に、前記被覆材を、接着剤によって、曲面状の表面を有し、断熱材である被着材の表面に張り付ける張り付け工程と、前記張り付け工程を実行した後であって、前記接着剤が硬化する前に、前記被着材と前記被覆材とを押圧して接着する押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、断熱性能を維持することができる。
【0017】
本発明の被覆材接着方法は、弾性変形可能な筒状部材に巻き付けられた薄膜状の金属で形成された被覆材を、接着剤によって、曲面状の表面を有し、断熱材である被着材の表面に張り付ける張り付け工程と、前記張り付け工程を実行した後であって、前記接着剤が硬化する前に、前記被着材と前記被覆材とを押圧して接着する押圧工程と、を含み、前記張り付け工程は、前記筒状部材を前記被着材の表面に押し付けながら回転させて、前記被覆材を前記被着材の表面に張り付ける、ことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、断熱性能を維持することができる。
【0019】
本発明の被覆材接着方法は、薄膜状の金属で形成された被覆材を、接着剤によって、曲面状の表面を有し、断熱材である被着材の表面に張り付ける張り付け工程と、前記張り付け工程を実行した後であって、前記接着剤が硬化する前に、前記被着材と前記被覆材とを、第一押圧部および前記第一押圧部と対面して配置された第二押圧部で挟んでプレスして接着する押圧工程と、を含み、前記第二押圧部は、前記被着材と前記被覆材とが載置され、前記第一押圧部は、前記被着材の曲率半径より小さい曲率半径の曲面状の表面を有する、ことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、断熱性能を維持することができる。
【0021】
本発明の断熱タンクは、内部の空間に極低温物質を貯留可能な本体部と、上記の被覆材接着方法によって被覆材を被着材の表面に張り付けて形成され、表面に網目模様を有する複数の第一断熱パネルと、上記の被覆材接着方法によって被覆材を被着材の表面に張り付けて形成され、表面に前記第一断熱パネルと異なる網目模様を有する複数の第二断熱パネルと、を備え、複数の前記第一断熱パネルは、前記本体部の第一範囲を覆って配置され、複数の前記第一断熱パネルは、前記本体部の前記第一範囲と異なる第二範囲を覆って配置されている、ことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、断熱性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、断熱性能を維持することができる被覆材接着方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法を用いた断熱パネル部材を説明する模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法の概略を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に塗布された接着剤を示す概略図である。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に塗布された接着剤を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に接着剤を塗布する塗布部材の形状の一例を示す概略図である。
【
図14】
図14は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に接着剤を塗布する塗布部材の形状の他の例を示す概略図である。
【
図15】
図15は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法の概略を示すフロー図である。
【
図16】
図16は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の一例を示す概略図である。
【
図17】
図17は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の一例を示す概略図である。
【
図18】
図18は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の他の例を示す概略図である。
【
図19】
図19は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の他の例を示す概略図である。
【
図20】
図20は、本発明の第四実施形態に係る被覆材接着方法を説明する模式図である。
【
図21】
図21は、断熱パネルの表面に表れたシワと気泡とを説明する概略図である。
【
図22】
図22は、断熱パネルの表面に表れたシワを説明する断面図である。
【
図23】
図23は、断熱パネルの表面に表れた気泡を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0026】
[第一実施形態]
図1を参照してLNG運搬船200の概要について説明する。
図1は、LNG運搬船の模式図である。LNG運搬船200は、球体状に形成された4つのタンク201を1つのタンクカバー202で覆っている。タンク201は、直径が、例えば、数十m程度である。タンク201は、中空の球体状に形成された金属製の本体部と、本体部の外側を覆う断熱部とを有する。断熱部は、複数枚の断熱パネル部材1を接合して、本体部の外周全体を覆う球体状に形成される。1枚の断熱パネル部材1は、曲面状の表面を有する。1枚の断熱パネル部材1は、1辺の長さが、例えば、数百mm程度以上、数m程度以下である。1枚の断熱パネル部材1は、厚さが、例えば、数百mm程度である。
【0027】
図2、
図3を参照して断熱パネル部材1について説明する。
図2は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法を用いた断熱パネル部材を説明する模式図である。
図3は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法を説明する模式図である。断熱パネル部材1は、断熱材(被着材)2と、被覆材3と、断熱材2と被覆材3との間に介在して断熱材2と被覆材3とを接着する接着剤4とを有する。
【0028】
断熱材2は、断熱性を有する多孔質材で形成されている。断熱材2は、例えば、発泡したウレタンフォーム材で形成されている。断熱材2は、曲面状の表面を有する。断熱材2は、1辺の長さが、例えば、数百mm程度以上、数m程度以下である。断熱材2は、厚さが、例えば、数百mm程度である。
【0029】
被覆材3は、断熱材2を保護するために、断熱材2の表面に張り付けられる。より詳しくは、被覆材3は、断熱材2の表面に張り付けられることにより、断熱材2内に空気が入り込んで、断熱材2の発泡剤であるフロンが空気で置換されることを規制する。被覆材3は、薄膜状の金属材料で形成されている。被覆材3は、平面状の表面を有する。本実施形態では、被覆材3は、アルミニウム箔である。被覆材3は、厚さが、例えば、数十μm程度以上、数百μm程度以下である。被覆材3は、薄膜状であるため、断熱材2の表面形状に合わせて変形する。断熱材2の表面に張り付けられた被覆材3は、1辺の長さが、例えば、数百mm程度以上、数m程度以下である。被覆材3は、エンボス加工が可能な強度を有する。
【0030】
接着剤4は、断熱材2と被覆材3との間に介在して断熱材2と被覆材3とを接着する。本実施形態では、接着剤4は、断熱材2の表面に均一な厚さで平坦に塗布されることが好ましい。接着剤4は、例えば、熱硬化性を有する樹脂である。接着剤4は、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、エステル系などの、一液性または二液性の接着剤が使用可能である。また、接着剤4は、高粘度のものが望ましく、例えば、1000mPa・s程度以上10000mPa・s程度以下(25℃)が好ましい。
【0031】
図4ないし
図9を参照してシート材5について説明する。
図4は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の一例を示す平面図である。
図5は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
図6は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
図7は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
図8は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。
図9は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法で使用されるシート材の他の例を示す平面図である。シート材5は、可撓性を有する。シート材5は、例えば、ガラス繊維、金属、セラミックス、有機繊維、炭素繊維で形成されている。シート材5は、網目状に形成されている。このような性質を有するシート材5は、プレス機100によって被覆材3の表面に押し付けられた後、被覆材3から剥離可能である。
【0032】
図4に示すシート材5は、六角形状を繰り返して網目が形成されている。六角形状の網目は、1辺の長さが数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0033】
図5に示すシート材5は、円形状が繰り返して網目が形成されている。円形状の網目は、半径が数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0034】
図6に示すシート材5は、正方形状が繰り返して網目が形成されている。正方形状の網目は、1辺の長さが数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0035】
図7に示すシート材5は、ひし形形状が繰り返して網目が形成されている。ひし形形状の網目は、1辺の長さが数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0036】
図8に示すシート材5は、長方形状が繰り返して網目が形成されている。長方形状の網目は、1辺の長さが数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0037】
図9に示すシート材5は、複数のたて糸と複数のよこ糸とを交互に交差させて平織で編み込んで格子状の網目が形成されている。格子状の網目は、1辺の長さが数mm程度以上、数十mm程度以下である。
【0038】
プレス機100は、断熱材2と被覆材3とを接着剤4を介在させた状態でプレスして接着する。プレス機100は、第一金型101と第一押圧部102と第二金型103と第二押圧部104とを有する。
【0039】
第一金型101は、図示しない基台上に載置されている。第一金型101は、第二金型103と対面して下側に配置されている。第一金型101は、プレス加工する際、第二金型103に向かって下降する。第一金型101の上を向いた表面には、第一押圧部102が配置されている。第一押圧部102は、断熱材2の表面に対応した曲面状の表面を有する。より詳しくは、第一押圧部102は、中央部が周縁部より上側に窪んだ凹状に形成されている。第一押圧部102は、プレス機100でプレスされる被加工物に押し付けられる部材である。第一押圧部102は、被加工物の表面積と同程度以上の面積を有する。
【0040】
第二金型103は、第一金型101と対面して上側に配置されている。第二金型103の下を向いた表面には、第二押圧部104が配置されている。第二押圧部104は、断熱材2の表面と反対側の裏面に対応した曲面状の表面を有する。より詳しくは、第二押圧部104は、中央部が周縁部より上側に膨出した凸状に形成されている。第二押圧部104は、第一押圧部102と対面して配置されている。第二押圧部104は、プレス加工する際、加工した第一金型101との間に被加工物を挟持する。第二押圧部104は、プレス機100でプレスされる被加工物に押し付けられる部材である。第二押圧部104は、被加工物の表面積と同程度以上の面積を有する。
【0041】
このように構成されたプレス機100は、シート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを、第一金型101と第二金型103とで挟んでプレスして接着する。
【0042】
次に、
図10を参照して、プレス機100を使用した被覆材接着方法について説明する。
図10は、本発明の第一実施形態に係る被覆材接着方法の概略を示すフロー図である。本実施形態に係る被覆材接着方法は、接着剤4を塗布する塗布工程P11と、シート材5を被覆材3に張り付ける張り付け工程P12と、プレス機100によってプレスするプレス工程(押圧工程)P13と、接着剤4を硬化させる硬化工程P14とを含む。
【0043】
<塗布工程P11>
塗布工程P11では、張り付け工程P12を実行する前に、接着剤4を、断熱材2の表面に塗布する。本実施形態では、接着剤4は、断熱材2の表面に均一に塗布される。塗布工程P11では、接着剤4は、変形可能な程度の粘度を有する。
【0044】
<張り付け工程P12>
張り付け工程P12では、接着剤4を塗布した断熱材2の表面に被覆材3を張り付ける。言い換えると、断熱材2と被覆材3との間に接着剤4を介在させて、被覆材3を断熱材2の表面に張り付ける。張り付け工程P12では、接着剤4は、変形可能な程度の粘度を有する。
【0045】
<プレス工程P13>
プレス工程P13では、張り付け工程P12において被覆材3を断熱材2に張り付けた後であって、接着剤4が硬化する前に、シート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを、第一金型101と第二金型103とで挟んでプレスして接着する。プレス工程P13では、接着剤4は、変形可能な程度の粘度を有する。より詳しくは、例えば、断熱材2と被覆材3とシート材5とを第一金型101と第二金型103とで挟んだ後、所定時間が経過するまでは、第一金型101と第二金型103とを加熱しないようにしてもよい。被覆材3上にシート材5が重ねられていることにより、被覆材3の表面には、シート材5の網目模様によってエンボス加工が施される。言い換えると、被覆材3の表面には、シート材5の網目模様に応じた網目状の凹凸が形成される。被覆材3の表面にエンボス加工が施されることにより、プレス工程P13の実行前に被覆材3の表面に生じたシワ、または、断熱材2および接着剤4と被覆材3との間に生じた気泡が、網目模様に紛れて目立つ状態で表れることが抑制される。
【0046】
<硬化工程P14>
硬化工程P14では、プレス工程P13の実行後に、接着剤4を硬化させる。より詳しくは、例えば、断熱材2と被覆材3とシート材5とを第一金型101と第二金型103とで挟んだ後、所定時間を空けて、第一金型101と第二金型103とを加熱して、接着剤4を硬化させてもよい。
【0047】
このようにして、断熱材2の表面に張り付けられた被覆材3の表面にエンボス加工が施される。エンボス加工が施された被覆材3が張り付けられた断熱材2が形成されて、断熱パネル部材1となる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態において、断熱パネル部材1は、断熱材2の表面に張り付けられた被覆材3の表面にエンボス加工が施されている。本実施形態によれば、エンボス加工によって、被覆材3の剛性が低下するので、被覆材3が、断熱材2の表面に追従して変形しやすくなる。このように、本実施形態によれば、被覆材3が断熱材2の表面から剥離しにくくなるので、断熱パネル部材1の断熱性能を維持することができる。
【0049】
本実施形態において、断熱パネル部材1は、断熱材2の表面に張り付けられた被覆材3の表面にエンボス加工が施されている。本実施形態によれば、プレス工程P13の実行前に被覆材3の表面に生じたシワ、または、断熱材2および接着剤4と被覆材3との間に生じた気泡を目立ちにくくすることができる。言い換えると、本実施形態は、プレス工程P13の実行前に生じたシワまたは気泡が、断熱パネル部材1の表面に目立って表れることを抑制することができる。本実施形態は、断熱パネル部材1の外観を向上することができる。
【0050】
これに対して、
図21ないし
図23を参照して、エンボス加工を施さない断熱パネル部材301について説明する。
図21は、断熱パネルの表面に表れたシワと気泡とを説明する概略図である。
図22は、断熱パネルの表面に表れたシワを説明する断面図である。
図23は、断熱パネルの表面に表れた気泡を説明する断面図である。被覆材303が平坦であるので、被覆材303の表面に生じたシワ310、または、断熱材302および接着剤304と被覆材303との間に生じた気泡320が目立ちやすい。
【0051】
本実施形態は、プレス工程P13において、シート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを、第一金型101と第二金型103とで挟んでプレスして接着する。本実施形態は、プレス工程P13において、断熱材2と被覆材3とを接着するとともに、被覆材3の表面にエンボス加工を施すことができる。本実施形態は、エンボス加工を施す工程を別に設ける必要がなく、既存の工程数と同じ工程数に抑えることができる。
【0052】
本実施形態は、プレス工程P13において、断熱材2と被覆材3とを接着するとともに、被覆材3の表面にエンボス加工を施す。本実施形態によれば、エンボス加工を施すことによって、被覆材3が断熱材2の表面から剥離することを抑制することができる。これに対して、断熱材2と被覆材3とを接着した後、言い換えると、接着剤4が硬化した後に、エンボス加工を施すと、被覆材3が断熱材2の表面から剥離するおそれがある。
【0053】
本実施形態は、被覆材3を断熱材2の表面に張り付ける際は、被覆材3は、平坦な薄膜状である。このため、本実施形態によれば、被覆材3を断熱材2の表面に張り付ける際に、被覆材3と断熱材2の表面との間の接着層におけるの気泡の発生を抑制することができる。これに対して、エンボス加工した被覆材3を断熱材2の表面に張り付ける場合は、接着層において気泡が生じやすい。
【0054】
本実施形態は、網目状に形成されたシート材5を使用してエンボス加工を施すので、コストの増加を抑制することができる。これに対して、例えば、第一金型101または第一押圧部102にエンボス形状の加工を行う場合、新たな金型が必要になるので、コストが増加する。
【0055】
本実施形態は、シート材5の網目模様を変えることで、エンボス加工される形状を容易に変更することができる。本実施形態によれば、断熱パネル部材1の表面の意匠を容易に変更することができる。
【0056】
[第二実施形態]
図11ないし
図15を参照しながら、本実施形態に係る被覆材接着方法について説明する。
図11は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に塗布された接着剤を示す概略図である。
図12は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に塗布された接着剤を示す断面図である。
図13は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に接着剤を塗布する塗布部材の形状の一例を示す概略図である。
図14は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に接着剤を塗布する塗布部材の形状の他の例を示す概略図である。
図15は、本発明の第二実施形態に係る被覆材接着方法の概略を示すフロー図である。本実施形態では、断熱材2の表面に塗布した接着剤4Aの表面に、多数の溝部41Aを形成する。断熱パネル部材1とシート材5とプレス機100とは、基本的な構成は第一実施形態と同様である。以下の説明においては、第一実施形態と同様の構成要素には、同一の符号または対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図11、
図12を参照して、接着剤4Aについて説明する。接着剤4Aは、断熱材2の表面に塗布された後、硬化する前に、表面に多数の溝部41Aが形成される。本実施形態では、溝部41Aは、所定間隔を空けて、平行に配置されている。溝部41Aは、断熱材2の中央部から外側に放射状に配置されていてもよい。
【0058】
図13、
図14を参照して、接着剤4Aに溝部41Aを形成する塗布具6について説明する。塗布具6は、平板状の板材で形成されている。塗布具6は、ヘラ状に形成されている。塗布具6は、接着剤4Aに形成される溝部41Aに対応する凹凸62が本体部61の周縁部の一部に形成されている。
図13に示す塗布具6は、本体部61の周縁部を三角形状に連続して切り欠いて形成されている。
図14に示す塗布具6は、本体部61の周縁部を矩形状に繰り返し切り欠いて形成されている。
【0059】
次に、
図15を参照して、プレス機100を使用した被覆材接着方法について説明する。本実施形態に係る被覆材接着方法は、塗布工程P21と、溝部41Aを形成する溝形成工程P22と、張り付け工程P23と、ローラによる押し付け工程(押圧工程)P24と、硬化工程P25とを含む。塗布工程P21および硬化工程P25は、第一実施形態の塗布工程P11および硬化工程P14と同様である。
【0060】
<溝形成工程P22>
溝形成工程P22では、塗布工程P21を実行した後であって、張り付け工程P23を実行する前に、断熱材2の表面に塗布した接着剤4Aの表面に溝部41Aを形成する。溝形成工程P22は、接着剤4Aの硬化前に実行する。溝部41Aの形状が維持されない程度に接着剤4Aの粘度が低い場合、接着剤4Aを加熱したり、所定時間乾燥さたりして、接着剤4Aの粘度を高めることが好ましい。
【0061】
<張り付け工程P23>
張り付け工程P23では、断熱材2の表面に塗布され、表面に溝部41Aを有する接着剤4Aを介在させて、断熱材2の表面に被覆材3を張り付ける。断熱材2の表面と、張り付けられた被覆材3との間には、接着剤4Aの表面に形成された溝部41Aによって空間を生じている。
【0062】
<押し付け工程P24>
押し付け工程P24では、張り付け工程P23において被覆材3を断熱材2に張り付けた後であって、接着剤4Aが硬化する前に、シート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを、図示しないローラで押し付けて接着する。ローラは、断熱材2および接着剤4Aと被覆材3との間に生じた気泡は、ローラで押し付けられた際に、溝部41Aを介して外側に排出される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、断熱材2および接着剤4Aと被覆材3との間に生じた気泡を溝部41Aを介して外側に排出することができる。このようにして、本実施形態は、被覆材3が断熱材2の表面から剥離しにくくなるので、断熱パネル部材1の断熱性能を維持することができる。
【0064】
[第三実施形態]
図16ないし
図19を参照しながら、本実施形態に係る被覆材接着方法について説明する。
図16は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の一例を示す概略図である。
図17は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の一例を示す概略図である。
図18は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の他の例を示す概略図である。
図19は、本発明の第三実施形態に係る被覆材接着方法において、断熱材の表面に張り付ける被覆材の他の例を示す概略図である。本実施形態では、筒状部材である円筒部材7または円柱部材8に巻き付けた被覆材3を、断熱材2の表面に張り付ける。断熱材2と接着剤4とシート材5とプレス機100とは、基本的な構成は第一実施形態と同様である。
【0065】
被覆材3は、円筒部材7または円柱部材8に巻き付けられている。
【0066】
図16、
図17に示す円筒部材7は、第一円筒部71と第二円筒部72とを有する。第一円筒部71は、円筒状に形成されている。第一円筒部71は、第二円筒部72の材料よりも硬い材料で構成されている。第二円筒部72は、円筒状に形成されている。第二円筒部72は、第一円筒部71の外周を覆って配置されている。言い換えると、第二円筒部72の内周は、第一円筒部71の外周に嵌合している。第二円筒部72は、例えば、スポンジゴムを含む弾性部材で形成されている。円筒部材7の外周、言い換えると、第二円筒部72の外周に、被覆材3が巻き付けられている。
【0067】
図18、
図19に示す円柱部材8は、円柱部81を有する。円柱部81は、円柱状に形成されている。円柱部81は、例えば、スポンジゴムを含む弾性部材で形成されている。円柱部材8の外周、言い換えると、円柱部81の外周に、被覆材3が巻き付けられている。
【0068】
次に、プレス機100を使用した被覆材接着方法について説明する。本実施形態では、張り付け工程P12が第一実施形態と異なる。本実施形態では、被覆材3は、円筒部材7に巻き付けられているものとする。
【0069】
<張り付け工程P12>
張り付け工程P12では、接着剤4を塗布した断熱材2の表面に、被覆材3を張り付ける。より詳しくは、円筒部材7を断熱材2の表面に押し付けながら回転させて、円筒部材7に巻き付けられた被覆材3を断熱材2の表面に張り付ける。張り付ける際に、円筒部材7を断熱材2の表面に押し付けると、第二円筒部72が弾性変形する。これにより、被覆材3の表面にシワが生じたり、断熱材2および接着剤4と被覆材3との間に気泡が生じたりすることが抑制される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態は、円筒部材7または円柱部材8に被覆材3を巻き付けておくことにより、断熱材2の表面に被覆材3を張り付ける際に、被覆材3の表面にシワが生じたり、断熱材2および接着剤4と被覆材3との間に気泡が生じたりすることを抑制することができる。このようにして、本実施形態は、被覆材3が断熱材2の表面から剥離しにくくなるので、断熱パネル部材1の断熱性能を維持することができる。
【0071】
本実施形態によれば、作業者の技量によらず、被覆材3の表面にシワが生じたり、断熱材2および接着剤4と被覆材3との間に気泡が生じたりすることを抑制することができる。これに対して、1枚のシート状の被覆材3を断熱材2の表面に手作業で張り付ける場合、作業者の技量によってバラツキが生じるおそれがある。
【0072】
[第四実施形態]
図20を参照しながら、本実施形態に係る被覆材接着方法について説明する。
図20は、本発明の第四実施形態に係る被覆材接着方法を説明する模式図である。本実施形態では、プレス機100Bが、第一実施形態のプレス機100と異なる。
【0073】
第一押圧部102Bは、断熱材2の曲率半径R1より小さい曲率半径R2を有する。第一押圧部102Bは、例えば、デュロメータ硬さが10以上90以下(JIS K 6253 TypeAによる)程度であることが好ましい。
【0074】
次に、プレス機100を使用した被覆材接着方法について説明する。本実施形態では、プレス工程P13における作用が第一実施形態と異なる。
【0075】
<プレス工程P13>
プレス工程P13では、シート材5を被覆材3上に重ねた状態で、断熱材2と被覆材3とを、第一金型101と第二金型103とで挟んでプレスして接着する。第一押圧部102Bの曲率半径R2が断熱材2の曲率半径R1より小さいので、まず、断熱材2の中央部に第一押圧部102Bが押し付けられる。そして、第一金型101の下降にともなって、断熱材2の中央部から外側に向かって第一押圧部102Bが押し付けられる範囲が広がる。断熱材2および接着剤4Aと被覆材3との間に生じた気泡は、第一押圧部102Bが押し付けられるとともに、外側に排出される。
【0076】
以上説明したように、本実施形態は、断熱材2および接着剤4Aと被覆材3との間に生じた気泡を第一押圧部102Bによって外側に排出することができる。このようにして、本実施形態は、被覆材3が断熱材2の表面から剥離しにくくなるので、断熱パネル部材1の断熱性能を維持することができる。
【0077】
上記の実施形態において、プレス工程P13と押し付け工程P24とはどちらを適用してもよい。例えば、第二実施形態の押し付け工程P24は、第一実施形態のプレス工程P13でもよい。
【0078】
第二実施形態、第三実施形態、第四実施形態においては、プレス工程P13で、シート材5を使用しなくてもよい。より詳しくは、プレス工程P13では、張り付け工程P12において被覆材3を断熱材2に張り付けた後であって、接着剤4が硬化する前に、断熱材2と被覆材3とを、第一金型101と第二金型103とで挟んで押圧して接着してもよい。
【0079】
第一押圧部は、第一金型に配置されていなくてもよい。第一押圧部は、シート材5の上に載置された状態でプレス工程P13が実行されてもよい。
【0080】
第一押圧部は、第一金型と一体に形成された金属材料でもよい。一体に形成された第一押圧部と第一金型とは、第一押圧部および第一金型として作用する。第二押圧部は、第二金型と一体に形成された金属材料でもよい。一体に形成された第二押圧部と第二金型とは、第二押圧部および第二金型として作用する。
【0081】
さらに、複数の断熱パネル部材1を接合してタンク201の本体部の表面全体を覆う際に、断熱パネル部材1が配置される位置に応じて網目模様を変えることで、作業性を向上させることができる。本体部の第一範囲を覆って配置される断熱パネル部材(第一断熱パネル)1には、
図4に示す網目模様を形成する。本体部の第二範囲を覆って配置される断熱パネル部材(第二断熱パネル)1には、
図6に示す網目模様を形成する。例えば、本体部の緯度ごとに範囲を設定して、範囲ごとに、断熱パネル部材1に同じ網目模様を形成するようにしてもよい。または、例えば、本体部の南半球と北半球とを第一範囲と第二範囲として、断熱パネル部材1の網目模様を変えるようにしてもよい。このようにすることで、断熱パネル部材1を適切に接合することができるので、タンク201の断熱性能を維持することができる。