本発明は、転動するタイヤ100を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部20を備え、複数のタイヤ保持部20は、転動する第1タイヤ101を着脱可能に保持する第1タイヤ保持部21と、転動する第2タイヤ102を着脱可能に保持する1又は複数の第2タイヤ保持部23と、を備え、1又は複数の第2タイヤ保持部23は、第1タイヤ101の転舵により生じる横向きの力と反対方向の力を生じさせるために第2タイヤ102を保持することを特徴とする。
前記右タイヤ保持部と前記左タイヤ保持部とは、前記移動体又は前記被牽引体の左右方向の中心線を基準として左右対称に配置されていることを特徴とする請求項13に記載のタイヤ試験機。
前記右タイヤ保持部と右タイヤとの間及び前記左タイヤ保持部と左タイヤとの間のうち少なくとも一方に介在し、前記タイヤに作用する荷重を計測する荷重計測部を備えていることを特徴とする請求項13から請求項16のいずれか1項に記載のタイヤ試験機。
前記右タイヤ保持部と前記左タイヤ保持部のうち少なくとも一方に設けられ、前記タイヤのトー角を計測するトー角計測器を備えていることを特徴とする請求項13から請求項17のいずれか1項に記載のタイヤ試験機。
前記移動体又は前記被牽引体の左右両側のうち少なくとも一方に設けられ、前記タイヤの表面温度を測定する温度計測器を備えていることを特徴とする請求項13から請求項18のいずれか1項に記載のタイヤ試験機。
前記右側リンク部と前記左側リンク部は、前記アクチュエータの駆動により、互いに左右方向の反対側へ移動することを特徴とする請求項13から請求項19のいずれか1項に記載のタイヤ試験機。
前記複数のタイヤ保持部に保持される各タイヤは、前記ベルトの外周面に当接し、前記ベルトの駆動により転動することを特徴とする請求項22項に記載のタイヤ試験機。
前記複数のタイヤ保持部に保持される各タイヤのうち少なくとも1つは、前記ベルトの内周面に当接し、前記ベルトの駆動により転動することを特徴とする請求項22項に記載のタイヤ試験機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の基本的構成を説明する。
本発明のタイヤ試験機1は、
図1に示すように、転動するタイヤ100を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部20を備える。
複数のタイヤ保持部20は、転動する第1タイヤ101を着脱可能に保持する第1タイヤ保持部21と、転動する第2タイヤ102を着脱可能に保持する(1又は複数の)第2タイヤ保持部23と、を備える。
そして、(1又は複数の)第2タイヤ保持部23は、第1タイヤ101の転舵により生じる横向きの力(
図5の矢印F3参照)と反対方向の力(
図5の矢印F4参照)を生じさせるために第2タイヤ102を保持する構成となっている。
これによれば、タイヤ試験1が搭載された移動体又は被牽引体に作用する横向きの力を相殺でき、移動体又は被牽引体の蛇行が抑制される。
次に本発明を具体的に適用した第1実施形態から第4実施形態を説明する。各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1,
図2に示すように、第1実施形態のタイヤ試験機1は、移動体(不図示)に牽引される被牽引体10に取り付けられ、移動体の移動により転動するタイヤ100を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部20と、駆動力を生成するアクチュエータ40と、アクチュエータ40の駆動力をタイヤ保持部20に伝達する伝達部50と、を備える。
なお、移動体とは、例えば自走可能な二輪車両、三輪車両、四輪車両が挙げられる。
【0012】
また、タイヤ試験機1は、タイヤ100に作用する力(荷重)を計測する荷重計測部2(
図4参照)と、タイヤ100の転舵角(トー角)を計測可能な図示しない転舵角計測器(トー角計測器)と、タイヤ100の表面温度を測定する温度計測器4(
図1、
図4参照)と、図示しないピッチセンサと、図示しない旋回横加速度計測器と、を備える。
【0013】
図1,
図2に示すように、被牽引体10は、移動体の連結部に着脱自在に連結する被連結部11と、被連結部11から後方へ二股に分かれて延在する平面視で略V字状の前本体12と、前本体12の後方に配置された平面視で矩形枠状の本体部13と、を備える。
被連結部11と前本体12と本体部13のそれぞれは、左右方向の中心を通る中心線M1を基準として左右対称に形成されている(
図2参照)。
前本体12と本体部13のそれぞれは、中空の金属製フレームの端部同士を溶接により接合することで形成されている。
また、本体部13の後部の下側には、互いに前後に離間し左右方向に延在する一対の長板材14,15と、一対の長板材14,15から後方に延出してアクチュエータ40を支持する支持板16とが設けられている。
【0014】
図1に示すように、複数のタイヤ保持部20は、被牽引体10の左右方向の中心線M1よりも右側に取り付けられて右タイヤ101を保持する右タイヤ保持部21と、中心線M1よりも左側に取り付けられて左タイヤ102を保持する左タイヤ保持部23と、を備える。よって、本実施形態において、タイヤ保持部20は、取り付けられる移動体又は被牽引体10の左右方向の中心線M1を基準として左右に1つずつ配置されている。
また、右タイヤ保持部21は、右タイヤ101の転舵角の調整可能な右側転舵角調整部22を有し、左タイヤ保持部23は、左タイヤ102の転舵角の調整可能な左側転舵角調整部24(
図3参照)を有している。
【0015】
図2に示すように、複数のタイヤ保持部20(右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23)は、取り付けられた被牽引体10の左右方向の中心線M1を基準として左右対称に配置されている。
また、右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23は、中心線M1を基準として左右対称に形成され同一構造となっている。よって、右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23の説明に関し、左タイヤ保持部23を代表として説明し、右タイヤ保持部21の説明を省略する。
【0016】
図3、
図4に示すように、左タイヤ保持部23は、被牽引体10の本体部13の左側部に固定された固定部26と、固定部26の上部から左方へ延出する上アーム27と、固定部26の下部から左方へ延出する下アーム28と、上アーム27及び下アーム28との間に配置された左側転舵角調整部24と、を備える。
【0017】
図4に示すように、左側転舵角調整部24の中央部には、左右方向に貫通する孔部24aが形成されている。また、その孔部24a内には、軸受24bを介して車軸25が嵌め込まれている。
【0018】
車軸25は、左右方向に延在する円柱状の軸部材である。車軸25の左端部には、径方向外側に張り出すフランジ25aが形成されている。
フランジ25aには、ホイール103のハブ104が取り付けられている。よって、左タイヤ102は、車軸25の回転軸O1回りに回転可能(転動可能)に左側転舵角調整部24に支持されている。
なお、ハブ104は、図示しないボルトにより車軸25に締結されており、左タイヤ102が着脱可能となっている。
【0019】
図3に示すように、左側転舵角調整部24の下部には、下方に突出し互いに前後に離間する一対の下方突出部24cが形成されている。左側転舵角調整部24の前部には、前方に突出する前方突出部24dが形成されている。
また、左側転舵角調整部24の上方には、上側ボールジョイント29が設けられている。一対の下方突出部24c間には、下側ボールジョイント30が設けられている。前方突出部24dには、前側ボールジョイント31が設けられている。
【0020】
図4に示すように、上側ボールジョイント29は、左側転舵角調整部24の上部から上方に延出し上端に球体29bが形成されたボールスタット29aと、転動自在に球体29bを内嵌する環状のソケット29cとを備える。
下側ボールジョイント30は、一対の下方突出部24c間を前後方向に延在し前後方向中央部に球体30bが形成されたボールスタット30aと、転動自在に球体30bを内嵌する環状のソケット30cとを備える。
図3に示すように、前側ボールジョイント31は、後述する左側リンク部53の左端部に支持され上下に延在し上端に球体31bが形成されたボールスタット31aと、球体31bを転動自在に内嵌する環状のソケット31cとを備えており、ソケット31cが前方突出部24dに支持されている。
【0021】
上側ボールジョイント29のソケット29cは上アーム27に固定され、下側ボールジョイント30のソケット30cは下アーム28に固定されている。つまり、左側転舵角調整部24の上下両側は、上側ボールジョイント29及び下側ボールジョイント30を介して、上アーム27及び下アーム28に支持されている。
このため、左側転舵角調整部24は、上側ボールジョイント29の球体29bの中心C1と、下側ボールジョイント30の球体30bの中心C2とを通る回転軸O2回りに回動可能になっている。よって、左側転舵角調整部24を回転させることで、左タイヤ102の転舵角を調整することができる。なお、下記において回転軸O2を転舵軸O2と称する。
【0022】
図3に示すように、下アーム28は、固定部26側に向って延出しつつ途中で二股に分かれ、平面視で略Y字状に形成されている。また、下アーム28の左端部には、下側ボールジョイント30のソケット30cが固定されている。よって、下側ボールジョイント30の球体30bの中心C2と固定部26との距離L1は一定となっている。
そのほか、下アーム28の下支持部には、右斜め上方に延びて固定部26と連結する補強部28aが設けられている。
【0023】
上アーム27は、左右方向に延在しソケット29cを支持する角柱状の上側支持片27aと、上側支持片27aの下方から固定部26側に向って延出しつつ途中で二股に分かれる平面視で略Y字状の上側脚部27bと、上側支持片27aと上側脚部27bとを連結する連結部27cとを備える。
【0024】
図4に示すように、上側脚部27bの左端部の上面には、穴部27dが形成されている。連結部27cの下部には、穴部27dに挿入される棒状のピン27eが設けられている。上側支持片27aの右部には、上下方向に貫通し、連結部27cが挿入される貫通孔27fが形成されている。そして、上側支持片27aは、貫通孔27f内に挿入された連結部27cに係合し、左右方向及び前後方向に位置ずれしないように上側脚部27bに支持されている。
【0025】
また、上側脚部27bの穴部27dは、全部で3つ形成され、左右方向に並んで配置している。このため、ピン27eを挿入する穴部27dの位置を変えることで、上側ボールジョイント29の球体29bの中心C1と固定部26との距離L2を変更することができる。以上から、距離L2を変更して左タイヤ102の転舵軸O2を左右方向に傾けて、タイヤ100のキャンバー角を変えることができる。言い換えると、左タイヤ保持部23(タイヤ保持部20)は、キャンバー角を変更可能なキャンバー角変更部として、長さが一定の下アーム28と、伸縮自在な上アーム27と、左側転舵角調整部24を傾倒自在に支持するための上側ボールジョイント29及び下側ボールジョイント30と、を有している。
【0026】
図3に示すように、固定部26は、溶接により被牽引体10の本体部13に固定されて前後方向及び上下方向に延在する板状の第1板部32と、第1板部32の左面に沿って前後方向及び上下方向に延在し、上アーム27及び下アーム28が接合された第2板部33と、を備える。
【0027】
図4に示すように、第1板部32の中央部には、左方に突出する突起32aが形成されている。第2板部33の中央部には、突起32aに対応して左右方向に貫通する貫通孔33aが形成され、この貫通孔33a内に突起32aが挿入している。そして、第2板部33は、第2板部33を貫通して第1板部32の雌ねじ孔33bに螺合する2つのボルト34(
図3参照)により締め付けられ、第1板部32に固定されている。
【0028】
突起32aの外周面と貫通孔33aの内周面とが円形に形成されている。つまり、第1板部32に対する第2板部33の取り付け角度を突起32aの中心線O3回りに変更することができる。以上から、第1板部32に対する第2板部33の取り付け角度を変更することで、左タイヤ102の転舵軸O2を前後方向に傾けること、つまり、キャスター角を変えることができる。
なお、第1板部32の雌ねじ孔33bは、中心線O3を中心に周方向に複数形成されている。よって、キャスター角を変えた後であっても、ボルト34を雌ねじ孔33bに螺合させて第2板部33を固定することができる。
【0029】
図4に示すように、荷重計測部2は、ハブ104とホイール103との間に介在し、左タイヤ102に入力した力(荷重)を計測する六分力計である。
また、特に図示しないが、荷重計測部2内にはエンコーダ(不図示)が配置され、タイヤ100の回転数を計測することができる。
また、ハブ104とホイール103との間において、荷重計測部2の入力部(荷重を計測するための入力部)がホイール103側と連結するように介在している。
なお、本発明において、荷重計測部2の位置はハブ104とホイール103との間に限定されない。荷重計測部2は、左タイヤ保持部23と左タイヤ102との間に介在していればよい。よって、荷重計測部2は、車軸25とハブ104の間に介在してもよく、又は、車軸25と軸受24bとの間に介在してもよい。若しくは、ホイール103と左タイヤ102との間に介在するようにホイール103の外周側に取り付けてもよい。
【0030】
特に図示しないが、転舵角計測器(トー角計測器)は、上アーム27に取り付けれ、左側転舵角調整部24に向かってレーザを照射し、左側転舵角調整部24の回転角、つまり左タイヤ102の転舵角を計測する。
【0031】
温度計測器4は、被牽引体10の本体部13に固定されたL字状の器具4aに取り付けられ、左タイヤ102の上方に配置され、タイヤ100の表面温度を測定する。
【0032】
特に図示しないが、ピッチセンサは、被牽引体10を左右方向に貫通する軸回りに作用する回転モーメント、つまりピッチを計測する機器である。このピッチセンサによれば、荷重計測部2が計測した値が適正であるか否かを判断することができる。
【0033】
特に図示しないが、旋回横加速度計測器は、被牽引体10が旋回する場合に内周側を転動するタイヤ100と外周側を転動するタイヤ100に作用する荷重が異なるところ、この内周側のタイヤ100と外周側のタイヤ100とに作用するそれぞれの荷重を計測するためのものである。
【0034】
なお、上記した荷重計測部2、転舵角計測器(トー角計測器)及び温度計測器4は、左タイヤ保持部23側のみならず、右タイヤ保持部21側にも設置されており、右タイヤ101に作用した荷重、右タイヤ101の転舵角(トー角)及び右タイヤ101の温度を計測できるようになっている。
【0035】
図2に示すように、アクチュエータ40は、サーボモータであり右タイヤ101及び左タイヤ102の転舵角を変更するためのものである。
アクチュエータ40は、平面視で出力軸41が中心線M1と重なっており、被牽引体10の左右方向の中心線M1上に配置されている。
また、本実施形態において、アクチュエータ40は、被牽引体10に下側に設けられている。これによれば、アクチュエータ40が設けられる移動体又は被牽引体10のレイアウト性が向上する。なお、本発明において、アクチュエータ40の位置は移動体又は被牽引体10の下側に限定されない。
【0036】
伝達部50は、一対の長板材14,15の間に固定され出力軸41に連結する動力変換部51と、右側転舵角調整部22に連結する右側リンク部52と、左側転舵角調整部24に連結する左側リンク部53と、を備える。
【0037】
動力変換部51は、一対の長板材14,15の間に配置された筐体51aと、前側の長板材14を貫通する第1スライド軸51b及び第2スライド軸51cと、を備える。
第1スライド軸51bは、中心線M1よりも右側に配置され、右側リンク部52の左端部と連結している。第2スライド軸51cは、中心線M1よりも左側に配置され、左側リンク部53の右端部と連結している。
また、第1スライド軸51bは、左右方向にスライド自在となっている(
図2の矢印A1,A2参照)。同様に、第2スライド軸51cは、左右方向にスライド自在となっている(
図2の矢印B1,B2参照)。
【0038】
特に図示しないが、筐体51a内には、出力軸41に連結し回転運動を前後運動に変換する台形ねじと、台形ねじの前後運動を第1スライド軸51bの左右運動に変換する第1リンク機構と、台形ねじの前後運動を第2スライド軸51cの左右運動に変換する第2リンク機構と、を備える。
【0039】
右側リンク部52及び左側リンク部53は、左右方向に延在する棒状の部品である。
左側リンク部53の左端部は、前側ボールジョイント31(
図3参照)を介して、左側転舵角調整部24の前方突出部24dと連結している。
また、右側リンク部52の右端部は、前側ボールジョイント31を介して、右側転舵角調整部22の前方突出部と連結している。
よって、アクチュエータ40が駆動し第1スライド軸51b及び第2スライド軸51cが左右方向へ移動すると、右側転舵角調整部22と左側転舵角調整部24とが転舵軸O2回りに回動し、右タイヤ101と左タイヤ102の転舵角が変更される。
【0040】
また、動力変換部51の第1リンク機構と第2リンク機構とは、第1スライド軸51bと第2スライド軸51cとが互いに左右方向反対側にスライドするように変換している。このため、右側リンク部52と左側リンク部53は、アクチュエータ40の駆動により、互いに左右方向反対側へ移動する。
【0041】
よって、アクチュエータ40の出力軸41が一方向に回動すると、第1スライド軸51bが左方(
図2の矢印A1の方向)に移動し、第2スライド軸51cが右方(
図2の矢印B1の方向)に移動する。この結果、
図5に示すように、右タイヤ101と左タイヤ102とが互いに内側に転舵し、トーイン状態となる。
また、アクチュエータ40の出力軸41が他方向に回動すると、第1スライド軸51bが右方(
図2の矢印A2の方向)に移動し、第2スライド軸51cが左方(
図2の矢印B2の方向)に移動する。この結果、特に図示しないが、右タイヤ101と左タイヤ102とが互いに外側に転舵し、トーアウト状態となる。
以上から、右側リンク部52と左側リンク部53との移動により右タイヤ101と左タイヤ102のトー角が変更する。
よって、第1実施形態において、右側転舵角調整部22は右タイヤ101のトー角を調整可能な右側トー角調整部に相当し、左側転舵角調整部24は左タイヤ102のトー角を調整可能な左側トー角調整部に相当し、転舵角計測機はタイヤ100トー角を計測可能なトー角計測器に相当する。
【0042】
以上、第1実施形態のタイヤ試験機1によれば、移動体が移動すると被牽引体10が牽引され、右タイヤ101及び左タイヤ102が転動する。そして、アクチュエータ40が駆動すると、右タイヤ101及び左タイヤ102が転舵し、右タイヤ101と左タイヤ102に横力(
図5の矢印F1,F2参照)などの荷重が作用する。そして、右タイヤ101に作用する横力F1は、右タイヤ保持部21に保持された荷重計測部2により計測される。また、左タイヤ102に作用する横力F2は左タイヤ保持部23に保持された荷重計測部2により計測される。以上から、本実施形態のタイヤ試験機1によれば、右タイヤ101及び左タイヤ102のタイヤ特性を測定することができる。
【0043】
なお、右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23が取り付けられた被牽引体10には横力F1,F2が伝達するところ、その横力F1,F2には、横向き(左右方向)の力F3、F4が含まれている。つまり、被牽引体10には横向きの力F3、F4が作用している。
ここで、横力を計測している場合の右タイヤ101と左タイヤ102とは、トーイン状態又はトーアウト状態となるため、右タイヤ101に作用する横力F1と左タイヤ102に作用する横力F2は互いに左右方向反対側を向く。よって、被牽引体10に伝達した横向きの力F3、F4も互いに左右方向反対側を向くようになる。
【0044】
また、前記したように右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23とが被牽引体10の中心線M1を基準とし左右対称に配置されているため、右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23を介して被牽引体10に伝達する横向きの力F3、F4が同一作用線上に存在する。このため、被牽引体10に作用する横向きの力F3、F4が相殺され、タイヤ試験機1の蛇行が抑制される。
【0045】
また、1つのアクチュエータ40で左右のリンク(右側リンク部52及び左側リンク部53)を駆動させて右タイヤ101及び左タイヤ102を転舵させているため、右タイヤ101及び左タイヤ102の転舵が同時に実行されるとともに、その転舵角を同一角度とすることができる。よって、被牽引体10は蛇行するおそれが極めて低く、荷重計測部2の計測精度が格段に向上する。
【0046】
また、本実施形態によれば、上アーム27を伸縮させて(ピン27eを挿入する穴部27dの位置を変えて)、左側転舵角調整部24を車幅方向内側又は外側に傾倒させることで、ポジティブキャンバー(L1>L2の場合)にしたり、又はネガティブキャンバー(L2>L1の場合)にしたりすることができる。
なお、左側転舵角調整部24は、前側ボールジョイント31を介して左側リンク部53と連結し、左側リンク部53に対しても傾倒自在になっている。よって、左側転舵角調整部24の傾倒は、左側リンク部53により妨げられないようになっている。
また、キャンバー角の変更後であっても、左側リンク部53がスライドすると、左側転舵角調整部24の前方突出部24dが車幅方向に押圧され、左側転舵角調整部24が回動する。よって、キャンバー角の変更後であっても左タイヤ102を転舵させることが可能となっている。
さらに、転舵角計測器(トー角計測器)を備えているため、キャンバー角の変更後であっても、タイヤ100(右タイヤ101及び左タイヤ102)の転舵角(トー角)を正確に計測できる。
【0047】
以上、第1実施形態では、複数のタイヤ100の転舵角を変更するための1つのアクチュエータ40を備え、この1つのアクチュエータにより複数のタイヤ100のトー角を変更する例を挙げて説明した。次は、複数のタイヤ100の転舵角を変更する複数のアクチュエータを備え、複数のアクチュエータによりタイヤのトー角を変更するタイヤ試験機について説明する。
【0048】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態のタイヤ試験機1Aは、移動体に牽引される被牽引体10に取り付けられてタイヤ100を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)と、被牽引体10に取り付けられた複数のアクチュエータ40Aと、アクチュエータ40Aの駆動力をタイヤ保持部20に伝達する複数の伝達部50Aと、を備える。
また、第2実施形態のタイヤ試験機1Aは、タイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)とタイヤ100(右タイヤ101及び左タイヤ102)の間に介在する荷重計測部2を備える。
さらに、第2実施形態のタイヤ試験機1Aは、特に図示しないが、転舵角計測機(トー角計測機)と、温度計測器と、ピッチセンサと、旋回横加速度計測器とを備える。
よって、第2実施形態のタイヤ試験機1Aは、1つのアクチュエータ40に代えて複数のアクチュエータ40Aを備える点と、1つの伝達部50に代えて複数の伝達部50Aを備える点とにおいて、第1実施形態のタイヤ試験機1と相違する。
以下、相違点に絞って第2実施形態のタイヤ試験機1Aを説明する。
【0049】
複数のアクチュエータ40A及び複数の伝達部50Aは、タイヤ100(右タイヤ101及び左タイヤ102)の数に対応しており、2つずつ設けられている。
詳細に説明すると、複数のアクチュエータ40Aは、被牽引体10の中心線M1よりも右側に配置された右アクチュエータ42と、被牽引体10の中心線M1よりも左側に配置された左アクチュエータ43と、を備える。
伝達部50Aは、被牽引体10の中心線M1よりも右側に配置された右伝達部54と、被牽引体10の中心線M1よりも左側に配置された左伝達部55と、を備える。
【0050】
右伝達部54は、右アクチュエータ42の出力軸42aに連結する右動力変換部54aと、右動力変換部54aの出力軸(右スライド軸54b)と右タイヤ保持部21の右側転舵角調整部とに連結する右側リンク部54cと、を備える。
右動力変換部54aは、特に図示しないが、出力軸42aと連結し回転運動を前後運動に変換する台形ねじと、台形ねじの前後運動を出力軸(右スライド軸54b)の左右運動に変換するリンク機構とを備える。
よって、右アクチュエータ42を駆動することで、右スライド軸54b及び右側リンク部54cがスライドし、右タイヤ保持部21に保持される右タイヤ101の転舵角を調整することができる。
【0051】
左伝達部55は、左アクチュエータ43の出力軸43aに連結する左動力変換部55aと、左動力変換部55aの出力軸(左スライド軸55b)と左タイヤ保持部23の左側転舵角調整部とに連結する左側リンク部55cと、を備える。
左動力変換部55aは、特に図示しないが、出力軸43aと連結し回転運動を前後運動に変換する台形ねじと、台形ねじの前後運動を出力軸(左スライド軸55b)の左右運動に変換するリンク機構とを備える。
よって、左アクチュエータ43を駆動することで、左スライド軸55b及び左側リンク部55cがスライドし、左タイヤ保持部23に保持される左タイヤ102の転舵角を調整することができる。
【0052】
以上、第2実施形態のタイヤ試験機1Aによれば、右タイヤ101の転舵角と左タイヤ102の転舵角を別個独立に調整することができる。このため、タイヤ試験の実施中に左タイヤ102を転舵させることなく、右タイヤ101のみを内側に転舵させること、つまり、右タイヤ101のみに横力F5(
図7参照)を作用させることができる。
【0053】
また、横力F5の発生により被牽引体10に横向きの力F6(
図7参照)が伝達し、タイヤ試験機1Aが蛇行するおそれがある場合、
図7に示すように、左タイヤ102を内側に転舵させてトーイン状態にし、左タイヤ102に横力F7を作用させる。なお、右タイヤ101の転舵角θ3と左タイヤ102の転舵角θ4とは同一角度に設定する。
これによれば、被牽引体10には、左向きの力F6と右向きの力F8が伝達し、横向きの力F6、F8が相殺され、被牽引体10の蛇行が抑制される。
【0054】
ここで、被牽引体10に対する右タイヤ保持部21又は左タイヤ保持部23の組み付けに誤差が生じる場合がある。
このような誤差は、例えば、右アクチュエータ42及び左アクチュエータ43が駆動していない初期状態において、右タイヤ101の転舵角は0°であり正常であるものの、左タイヤ102のみが転舵している、という状態を招くおそれがある。
本実施形態では、このような状態において、右アクチュエータ42及び左アクチュエータ43のうち左アクチュエータ43のみを独立して駆動させ、転舵角計測機で計測される左タイヤ102の転舵角が0°となるように調整することができる。つまり、被牽引体10に対する右タイヤ保持部21又は左タイヤ保持部23の組み付けに誤差が生じてもその誤差を補正することができる。
【0055】
また、第2実施形態によれば、タイヤ試験機1Aの搬送中に例えば右タイヤ101と左タイヤ102とを互いに左側に転舵させ、タイヤ試験機1Aの進路を左側に変更させることができる。よって、タイヤ試験機1Aの移動を容易に行うことができる。
【0056】
以上、第1実施形態及び第2実施形態では、被牽引体10に搭載されるタイヤ試験機について説明したが、つぎに四輪車両に搭載されるタイヤ試験機について説明する。
【0057】
(第3実施形態)
図8に示すように、第3実施形態のタイヤ試験機1Bは、自走可能な移動体である四輪車両200に取り付けられた複数のタイヤ保持部20と、アクチュエータ40と、アクチュエータ40の駆動力をタイヤ保持部20に伝達する伝達部50と、を備える。
複数のタイヤ保持部20は、取り付けられる四輪車両(移動体)200の中心線M2よりも右側に取り付けられ右タイヤ101を保持する右タイヤ保持部21と、取り付けられる四輪車両(移動体)200の中心線M2よりも左側に取り付けられ左タイヤ102を保持する左タイヤ保持部23とを備える。
右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23とは、四輪車両(移動体)200の中心線M2を基準として左右対称に配置されている。
アクチュエータ40は、取り付けられる四輪車両(移動体)200の左右方向の中心線M2に配置されている。
また、第2実施形態のタイヤ試験機1Bは、タイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)とタイヤ100(右タイヤ101及び左タイヤ102)の間に介在する荷重計測部2を備える。
さらに、第3実施形態のタイヤ試験機1Bは、特に図示しないが、転舵角計測機(トー角計測器)と、温度計測器と、ピッチセンサと、旋回横加速度計測器とを備える。
なお、上記した第3実施形態のタイヤ試験機1Bの各構成は、取付対象が異なるものの第1実施形態のタイヤ試験機1の各構成と同一構造である。
【0058】
第3実施形態のタイヤ試験機1Bは、四輪車両200の後部に搭載され、右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23とアクチュエータ40と伝達部50のそれぞれが四輪車両200のボディに固定されている。
四輪車両200は、前輪201,202の駆動により推進する前輪駆動式の車両である。そして、右タイヤ保持部21が保持する右タイヤ101が四輪車両200の右後輪を構成し、左タイヤ保持部23が保持する左タイヤ102が左後輪を構成している。
よって、前輪201,202の駆動により四輪車両200が走行すると、右タイヤ101及び左タイヤ102が転動する。
【0059】
以上、第3実施形態のタイヤ試験機1Bによれば、四輪車両200の走行中にアクチュエータ40が駆動すると、右タイヤ101及び左タイヤ102が転舵し(
図8の矢印参照)、右タイヤ101と左タイヤ102に横力などの荷重が作用する。
また、右タイヤ101と左タイヤ102とはトーイン状態又はトーアウト状態となるため、右タイヤ101と左タイヤ102に作用する横力が互いに反対方向を向く。これにより、四輪車両200に作用する横向きの力は相殺され、四輪車両200の蛇行が抑制される。
【0060】
なお、第3実施形態では、1つのアクチュエータ40により2つのタイヤ100(右タイヤ101、左タイヤ102)を作動させるタイヤ試験機1Bを四輪車両200に搭載した例を説明したが、第2実施形態のように、作動させるタイヤの数と同数のアクチュエータを備えたタイヤ試験機を四輪車両に搭載してもよい。以下、その変形例について説明する。
【0061】
図9に示すように、変形例に係るタイヤ試験機1Cは、自走可能な移動体である四輪車両に取り付けられた複数のタイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)と、複数のアクチュエータ40A(右アクチュエータ42及び左アクチュエータ43)と、アクチュエータ40Aの駆動力をタイヤ保持部20に伝達する複数の伝達部50A(右伝達部54及び左伝達部55)と、を備える。
複数のタイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)は、取り付けられる四輪車両(移動体)200の中心線M2を基準として左右対称に配置されている。
変形例のタイヤ試験機1Cは、タイヤ保持部20(右タイヤ保持部21及び左タイヤ保持部23)とタイヤ100(右タイヤ101及び左タイヤ102)の間に介在する荷重計測部2を備える。
タイヤ試験機1Cは、特に図示しないが、転舵角計測機(トー角計測機)と、温度計測器と、ピッチセンサと、旋回横加速度計測器とを備える。
【0062】
タイヤ試験機1Cは、前輪201,202の駆動により推進する前輪駆動式の四輪車両200の後部に搭載され、右タイヤ保持部21が保持する右タイヤ101が四輪車両200の右後輪を構成し、左タイヤ保持部23が保持する左タイヤ102が左後輪を構成している。よって、前輪201,202の駆動により四輪車両200が走行すると、右タイヤ101及び左タイヤ102が転動する。
【0063】
このような変形例に係るタイヤ試験機1Cによれば、四輪車両200の走行中に右アクチュエータ42及び左アクチュエータ43の一方が駆動すると、右タイヤ101及び左タイヤ102の一方が転舵し、右タイヤ101及び左タイヤ102の一方に横力などの荷重が作用する。
また、横力の発生により四輪車両200が蛇行するおそれがある場合には、右アクチュエータ42及び左アクチュエータ43の他方を駆動し、右タイヤ101と左タイヤ102とがトーイン状態又はトーアウト状態となるように転舵させる。これにより、四輪車両200に作用する横向きの力は相殺され、四輪車両200の蛇行が抑制される。
【0064】
以上、第1実施形態−第3実施形態について説明した。
ここで、第1実施形態−第3実施形態では、右タイヤ101と左タイヤ102に作用する荷重を計測するため、右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23との両側に荷重計測部2を設けているが、本発明は、タイヤ特性を測定する対象となっているタイヤを保持するタイヤ保持部の方にのみ荷重計測部2を設けてもよい。つまり、本発明の荷重計測部2は、右タイヤ保持部21と右タイヤ101との間及び左タイヤ保持部23と左タイヤ102との間のうち少なくとも一方に介在していればよい。よって、本発明において、1又は複数の荷重計測部2を備えていればよい。
同様に、転舵角計測器(トー角計測器)についても、右タイヤ保持部21と左タイヤ保持部23のうち少なくとも一方に設けられていてもよい。
さらに、温度計測器4についても、移動体(四輪車両200)又は被牽引体10の左右両側のうち少なくとも一方に設けられていればよい。
【0065】
また、第1実施形態,第2実施形態のタイヤ試験機1、1Aにおいて、被牽引体10の重量が小さく、タイヤ100を路面に押し付ける力が小さい場合には、被牽引体10に対し、重りを積載できる荷台を設け、タイヤ100に作用する負荷を調整してもよい。
【0066】
また、タイヤ保持部20は、
図10に示すように、タイヤ100を駆動させるための駆動機構60を有していたり、タイヤ100に制動力を付与するための制動機構70を有していたりしてもよい。
詳細に説明すると、駆動機構60は、左タイヤ保持部23(タイヤ保持部20)に固定された筐体内61に格納された図示しない電動モータと、電動モータの駆動力を減速させて車軸25に伝達する減速部62と、を備える。
また、制動機構70は、車軸25の外周面から突出するブレーキディスク71と、左タイヤ保持部23(タイヤ保持部20)に固定されたブレーキキャリパ72と、を備える。
なお、上記構成によれば、電動モータの出力軸と車軸25は連動するため、電動モータを回生ブレーキとして利用してもよい。
【0067】
また、本発明においては、タイヤ保持部が転舵角調整部を有しておらず、タイヤの転舵角を変更できないタイヤ試験機であってもよい。よって、転舵角調整部を回転させるアクチュエータや伝達部も有していないタイヤ試験機であってもよい。
言い換えると、本発明は、自走可能な四輪車両(移動体)200又は四輪車両200に牽引される被牽引体10に取り付けられ、四輪車両(移動体)200の移動により転動するタイヤを着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部20と、複数のタイヤ保持部20のうち少なくとも1つのタイヤ保持部20とタイヤ100との間に介在しタイヤ100に作用する荷重を計測する荷重計測部2と、のみを備えていてもよい。
このような構成であっても、被牽引体10や四輪車両200に対し、予めトーイン状態又はトーアウト状態となるようにタイヤ保持部20を取り付けることで、被牽引体10等に生じる横向きの力を相殺できるからである。
つぎに、据え付け型のタイヤ試験機に適用した例を説明する。
【0068】
(第4実施形態)
最初にタイヤ転動装置300について説明する。
図11に示すように、タイヤ転動装置300は、互いに離間して配置された左ドラム301及び右ドラム302と、左ドラム301及び右ドラム302に懸架されたスチール製の無端状のベルト303と、左ドラム301及び右ドラム302を回転させるための図示しないモータとを備える。そして、図示しないモータの駆動により左ドラム301及び右ドラム302が回転するとベルト303が駆動し、ベルト303の上面に当接するタイヤ100が転動する。
【0069】
図12に示すように、第4実施形態のタイヤ試験機1Dは、タイヤ転動装置300のベルト303上を転動するタイヤ100(第1タイヤ111−第3タイヤ113)を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部320(第1タイヤ保持部321−第3タイヤ保持部323)と、複数のタイヤ保持部320のうち少なくとも1つのタイヤ保持部320(第1タイヤ保持部321)とタイヤ100(第1タイヤ111)との間に介在しタイヤ100(第1タイヤ111)に作用する力を計測する荷重計測部2と、を備える。
【0070】
複数のタイヤ保持部320は、第1タイヤ111を保持する第1タイヤ保持部321と、第2タイヤ112を保持する第2タイヤ保持部322と、第3タイヤ113を保持する第3タイヤ保持部323と、を備える。
第1タイヤ保持部321と第2タイヤ保持部322と第3タイヤ保持部323は、タイヤ転動装置300の傍ら(前側)に設置された台310上に固定された固定部26と、固定部26からベルト側へ延出する上アーム27及び下アーム(不図示)と、上アーム27及び下アームに回動自在に支持された転舵角調整部(不図示)と、を備え、第1実施形態で説明した右タイヤ保持部21や左タイヤ保持部23と同一構造となっている。
【0071】
第1タイヤ保持部321は、左右方向中央部に配置されており、第1タイヤ111がベルト303の上側表面303aの左右方向中央部に当接している。
第2タイヤ保持部322は、第1タイヤ保持部321の右側に離間して配置されており、第2タイヤ112がベルト303の上側表面303aの右側に当接している。
第3タイヤ保持部323は、第1タイヤ保持部321の左側に離間して配置されており、第3タイヤ113がベルト303の上側表面303aの左側に当接している。
以上から、複数のタイヤ保持部320に保持される各タイヤ100は、ベルト3の外周面に当接し、ベルト303の駆動により転動するようになっている。
【0072】
本実施形態において荷重計測部2は、第1タイヤ保持部321のみ設置され、第1タイヤ111に作用する荷重を計測できる。そのほか、タイヤ試験機1Dは、第1タイヤの転舵角を計測する図示しない転舵角計測器と、第1タイヤ111の表面温度を測定する温度計測器4とを備える。
【0073】
また、タイヤ試験機1Dは、複数のタイヤ100(第1タイヤ111と第2タイヤ112と第3タイヤ113)の転舵角を変更するための複数のアクチュエータ(不図示)と、アクチュエータの駆動力を第1タイヤ保持部321と第2タイヤ保持部322と第3タイヤ保持部323とに伝達するための3つの伝達部350と、を備える。
【0074】
以上、第4実施形態のタイヤ試験機1Dによれば、タイヤ転動装置300のモータが駆動しベルト303が駆動すると、第1タイヤ111と第2タイヤ112と第3タイヤ113が転動する。そして、アクチュエータを駆動させて第1タイヤ111のみを転舵させると、第1タイヤ111には、横力F9(
図13参照)などの荷重が作用する。
また、ベルト303は、第1タイヤ111と摩擦するため、第1タイヤ111が転動すると、反作用の力として横向きの力(ドラムの回転軸方向の力)F10(
図13参照)が生じる。
【0075】
ここで、ベルト303に生じた横向きの力(ドラムの回転軸方向の力)F10が大きく、ベルト303がドラム(左ドラム301、右ドラム302)に沿って移動して位置ずれしたり、ベルト303がドラムから外れたりするおそれがある場合、
図13に示すように、第2タイヤ112及び第3タイヤ113を転舵させる。
これにより、第2タイヤ112及び第3タイヤ113に横力F11、F12が生じるため、ベルト303には、反作用の力としてドラムの回転軸方向の力F13、F14が生じる。
【0076】
また、第2タイヤ112及び第3タイヤ113は、第1タイヤ111と反対方向に転舵させる。これにより、ベルト303に生じるF10と、F13及びF14とが前後方向反対側を向く。
さらに、第2タイヤ112の転舵角θ6及び第3タイヤ113の転舵角θ7は、第1タイヤ111の転舵角θ5の半分となるように設定する。これにより、F13とF14とを合成した力の大きさと、F10の大きさとが均等となる。
以上によれば、ベルト303に生じたドラムの回転軸方向の力F10,F13,F14が相殺され、ベルト303の位置ずれ等が抑制される。
【0077】
以上、第4実施形態のタイヤ試験機1Dについて説明したが、本発明において、ベルトに当接させるタイヤの位置やタイヤの数に関し、上記した実施形態の例に限定されない。
以下、タイヤの位置を変更した第1変形例と、タイヤの数を変更した第2変形例について説明する。
【0078】
図14に示すように、第1変形例のタイヤ試験機1Eは、第4実施形態のタイヤ試験機1Dと同じように、3つのタイヤ保持部320(第1タイヤ保持部321、第2タイヤ保持部322、第3タイヤ保持部323)を備える。
第1タイヤ保持部321は、左右方向中央部に配置され、第1タイヤ111がベルト303の上側表面303aの左右方向中央部に当接している。
第2タイヤ保持部322は、左ドラム301の左側に配置され、第2タイヤ112がベルト303の左側表面303bに当接している。
第3タイヤ保持部323は、右ドラム302の右側に配置され、第3タイヤ113がベルト303の右側表面303cに当接している。
このようなタイヤ試験機1Eによっても、第2タイヤ112及び第3タイヤ113を第1タイヤ111の転舵方向と反対方向に転動させることで、ベルト303に生じるドラムの回転軸方向の力を相殺することができる。また、ベルト303の左側が第2タイヤ112と左ドラム301とに挟持されるとともに、ベルト303の右側が第3タイヤ113と右ドラム302とに挟持されるため、ベルト303の位置ずれ等がさらに生じ難い。
【0079】
図15に示すように、第2変形例のタイヤ試験機1Fは、2つのタイヤ保持部320(外周側タイヤ保持部324、内周側タイヤ保持部325)を備える。
外周側タイヤ保持部324は、左右方向中央部に配置されており、第1タイヤ111がベルト303の上側表面303aの左右方向中央部に当接している。
内周側タイヤ保持部325は、左右方向中央部に配置されており、第2タイヤ112がベルト303の上側裏面303dの左右方向中央部に当接している。
つまり、複数のタイヤ保持部320に保持される複数のタイヤ100のうち少なくとも1つ(第2タイヤ112)は、ベルト303の内周面に当接し、ベルト303の駆動により転動するようになっている。
このタイヤ試験機1Fによっても、第1タイヤ111と第2タイヤ112とを互いに反対方向に転動させることで、ベルト303に生じる横向きの力(ドラムの回転軸方向の力)を相殺することができる。また、ベルト303の上側が第1タイヤ111と第2タイヤ112とに挟持されるため、ベルト303の位置ずれ等がさらに生じ難い。
前記右タイヤ保持部と右タイヤとの間及び前記左タイヤ保持部と左タイヤとの間のうち少なくとも一方に介在し、前記タイヤに作用する荷重を計測する荷重計測部を備えていることを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載のタイヤ試験機。
本発明によれば、タイヤ試験機が取り付けられた移動体又は被牽引体に作用する横向きの力を相殺でき、移動体又は被牽引体の蛇行を抑制できる。よって、大型化・重量化した移動体を用意する必要がなく、タイヤ試験が簡易となる
複数のタイヤ保持部20は、転動する第1タイヤ101を着脱可能に保持する第1タイヤ保持部21と、転動する第2タイヤ102を着脱可能に保持する(1又は複数の)第2タイヤ保持部23と、を備える。
に示すように、タイヤ転動装置300は、互いに離間して配置された左ドラム301及び右ドラム302と、左ドラム301及び右ドラム302に懸架されたスチール製の無端状のベルト303と、左ドラム301及び右ドラム302を回転させるための図示しないモータとを備える。そして、図示しないモータの駆動により左ドラム301及び右ドラム302が回転するとベルト303が駆動し、ベルト303の上面に当接するタイヤ100が転動する。
のタイヤ試験機1Dは、タイヤ転動装置300のベルト303上を転動するタイヤ100(第1タイヤ111−第3タイヤ113)を着脱可能に保持する複数のタイヤ保持部320(第1タイヤ保持部321−第3タイヤ保持部323)と、複数のタイヤ保持部320のうち少なくとも1つのタイヤ保持部320(第1タイヤ保持部321)とタイヤ100(第1タイヤ111)との間に介在しタイヤ100(第1タイヤ111)に作用する力を計測する荷重計測部2と、を備える。
のタイヤ試験機1Dによれば、タイヤ転動装置300のモータが駆動しベルト303が駆動すると、第1タイヤ111と第2タイヤ112と第3タイヤ113が転動する。そして、アクチュエータを駆動させて第1タイヤ111のみを転舵させると、第1タイヤ111には、横力F9(
このようなタイヤ試験機1Eによっても、第2タイヤ112及び第3タイヤ113を第1タイヤ111の転舵方向と反対方向に転動させることで、ベルト303に生じるドラムの回転軸方向の力を相殺することができる。また、ベルト303の左側が第2タイヤ112と左ドラム301とに挟持されるとともに、ベルト303の右側が第3タイヤ113と右ドラム302とに挟持されるため、ベルト303の位置ずれ等がさらに生じ難い。