【課題】搬送面上において所望の方向に搬送される搬送対象物を、振動搬送路と空間的に分離した無振動搬送路を用いることなく、所定の供給先に等ピッチで供給する供給処理能力の低下を防止・抑制可能な振動搬送装置を提供する。
【解決手段】リニア搬送面11に臨むガイド面21のうち搬送方向F下流端部分を多孔質材22によって構成した多孔質面23に設定した搬送路1と、多孔質面23(吸引対象面)の所定方向から多孔質材22を通じてエアを吸引し且つ振動によりリニア搬送面11上を搬送中の搬送対象物Wを多孔質面23側に引き付ける吸引部4とを備え、吸引部4による吸引力を、多孔質面23側に引き付けた搬送対象物Wが当該多孔質面23よりも上流のリニア搬送面11を搬送中の搬送対象物Wよりも遅い搬送速度で搬送される吸引力に設定した。
相対的に搬送方向下流側の前記吸引対象面に対する前記吸引部の吸引力を、相対的に搬送方向上流側の前記吸引対象面に対する前記吸引部の吸引力よりも大きく設定している請求項2に記載の振動搬送装置。
前記搬送路が、前記搬送面を有する搬送路本体と、前記搬送面に臨むガイド面を有し且つ前記搬送面上の搬送対象物を前記ガイド面に沿って搬送方向に案内するガイド部とを備えたものであり、
前記ガイド面のうち少なくとも搬送方向下流端部分を前記多孔質面に設定している請求項1乃至3の何れかに記載の振動搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の構成であれば、振動搬送路の振動が無振動搬送路に伝達しないように、無振動搬送路を振動搬送路から空間的に独立させる必要がある。そのため、振動搬送路から無振動搬送路へ移動する(乗り継ぐ)搬送対象物が、振動搬送路と無振動搬送路の間の隙間に引っ掛かって不安定な姿勢になったり、振動搬送路と無振動搬送路の間の隙間に落下するおそれがある。特に、搬送処理能力を向上するために振動搬送路の振動を大きく設定すればするほど、振動搬送路の振れ幅が大きくなることから振動搬送路と無振動搬送路の間の隙間も大きく設定しなければならず、上述の不具合が生じ易くなり、スムーズな搬送処理に支障を来す。このような不具合は、搬送対象物のサイズが小さいほど顕著になる。
【0008】
加えて、無振動搬送路の搬送面上における搬送対象物の移動が、後続の搬送対象物による押圧力のみに依存する上述の構成であれば、無振動搬送路の搬送面上において搬送対象物は無振動搬送路の搬送面と接触し続けることになり、無振動搬送路の搬送面の摩耗が激しく、摩耗した搬送面に搬送対象物が引っ掛ったり、無振動搬送路の搬送面の定期的な点検や交換が必要になる。また、搬送面との接触による搬送対象物の損耗やそれによる歩留りの低下といった問題が生じることも考えられる。
【0009】
さらに、振動搬送路とは別に無振動搬送路を要する上述の装置は、部品点数の増加、ひいては製造コストの増加を招来するのみならず、振動搬送路を加振する加振源による影響を受けない状況下に無振動搬送路を安定した姿勢で支持するという条件もクリアする必要があり、これらが装置を導入する際の障害となり得る。
【0010】
また、上述の構成であれば、最後尾の搬送対象物が振動搬送路から無振動搬送路の搬送面上に移動した時点以降に、最後尾の搬送対象物が後続の搬送対象物によって押圧されることがないため、最後尾の搬送対象物が振動搬送路から無振動搬送路の搬送面上に移動し終えた時点で無振動搬送路の搬送面上に存在する搬送対象物は、搬送方向下流側へ移動することなく無振動搬送路の搬送面上に停止した状態になり、所定の供給先に搬送されず、搬送処理効率が低下するという問題も生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、搬送面上において所望の方向に搬送される搬送対象物を、振動搬送路と空間的に分離した無振動搬送路を用いることなく、所定の供給先に等ピッチで供給する供給処理能力の低下を防止・抑制可能な振動搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、搬送面上の搬送対象物を振動により所望の搬送方向に搬送して所定の供給先に供給する振動搬送装置に関するものである。ここで、本発明における「搬送面」は、搬送対象物を搬送させることが可能な面であればよく、水平又は略水平な面(水平面)、又は水平に対して所定角度傾斜した面(傾斜面、鉛直面)の何れをも包含する概念である。また搬送対象物としては、例えば電子部品などの微小部品を挙げることができるが、電子部品以外の物品であってもよい。
【0013】
そして、本発明に係る振動搬送装置は、搬送面のうち少なくとも搬送方向下流端部分または搬送面に臨む面のうち少なくとも搬送方向下流端部分を多孔質材によって構成した多孔質面に設定した搬送路と、多孔質面のうち予め設定された吸引対象面の所定方向から多孔質材を通じてエアを吸引し且つ振動により吸引対象面上を搬送中の搬送対象物を吸引対象面側に引き付ける吸引部とを備え、吸引部による吸引力を、吸引対象面側に引き付けた搬送対象物が(当該吸引対象面上で停止せず且つ)吸引対象面よりも上流の搬送面を搬送中の搬送対象物よりも遅い搬送速度で搬送される吸引力に設定していることを特徴としている。
【0014】
本発明における「多孔質面」は、搬送面のうち少なくとも搬送方向下流端部分の全部または一部に設定された面であってもよいし、搬送面に臨む面のうち少なくとも搬送方向下流端部分の全部または一部に設定された面であってもよい。また、本発明は、「吸引対象面」を多孔質面の全部に設定した構成、多孔質面の一部に設定した構成の両方を包含する。後者(多孔質面の一部に吸引対象面を設定した構成)の一例として、多孔質面を搬送方向に複数の領域に区切り、そのうちの一または複数の領域(搬送方向に連続する領域であってもよいし、搬送方向に間欠的に設定した不連続の領域であってもよい)を吸引対象面に設定する構成を挙げることができる。本発明において、「多孔質面のうち予め設定された吸引対象面の所定方向」の具体例としては、多孔質面が搬送面に設定された構成であれば、「吸引対象面の下方」を挙げることができ、多孔質面が搬送面に臨む面に設定された構成であれば、「吸引対象面が搬送面に臨む方向」を挙げることができる。
【0015】
このような振動搬送装置であれば、吸引部によって、吸引対象面上の搬送対象物、または吸引対象面が臨む搬送面上の搬送対象物に対して多孔質材を通じて吸引することができ(以下の説明では、「吸引対象面上の搬送対象物、または吸引対象面が臨む搬送面上の搬送対象物」を「被吸引搬送対象物」と称する)、吸引対象面側に強制的に引き付けた被吸引搬送対象物の移動速度を、吸引対象面よりも上流の搬送面を移動中の搬送対象物の搬送速度と比較して減速させることができる。その結果、搬送面の搬送方向下流端部分において減速した複数の被吸引搬送対象物を搬送方向に隙間無く並べた状態で搬送することが可能になり、これら被吸引搬送対象物を搬送面の搬送方向下流端から所定の供給先に等ピッチで排出することができる。
【0016】
このように、本発明に係る振動搬送装置であれば、複数の搬送対象物を搬送方向に隙間無く並べた状態となるように搬送面の振動力を微調整する複雑な制御が不要であり、しかも、振動する搬送面自体を搬送方向上流端から搬送方向下流端まで連続する面に設定することができるため、振動搬送路とは空間的に分離させた無振動搬送路の搬送面を搬送させる構成であれば生じる不具合、すなわち、搬送面同士の隙間に搬送対象物が引っ掛かって不安定な姿勢になったり、隙間に落下する不具合を解消することができ、微小サイズの搬送対象物であっても所定の供給先に等ピッチで供給することが可能な安定した処理能力を発揮する。
【0017】
さらに、本発明に係る振動搬送装置では、被吸引搬送対象物を搬送面上において減速させつつ停止させずに移動させる構成を採用しているため、搬送面の振動により、移動中の搬送対象物が搬送面から一時的に浮上して非接触状態になるタイミングと接触状態になるタイミングとが交互に訪れる。したがって、搬送対象物が振動しない搬送面に接触し続けて後続の搬送対象物による押圧力のみに依存して移動する構成と比較して、搬送対象物が接触し続けることに起因する搬送面の摩耗の発生を防止・抑制することができ、滑らかな搬送面上における搬送対象物のスムーズな移動を実現することができる。
【0018】
加えて、本発明に係る振動搬送装置によれば、振動搬送路とは別に無振動搬送路を設ける必要がなく、振動搬送路を加振する加振源による影響を受けない状況下に無振動搬送路を安定した姿勢で支持するという条件も考慮する必要がないため、振動搬送路とは別に無振動搬送路を設ける構成と比較して、装置全体の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0019】
搬送対象物が後続の搬送対象物による押圧力のみで移動する構成であれば、後続の搬送対象物による押圧力が作用しない搬送対象物は、それ以上搬送方向下流側へ移動することなく無振動搬送路の搬送面上に停止して、所定の供給先に搬送できないという問題が生じるが、本発明に係る振動搬送装置によれば、このような問題も悉く解消することができる。
【0020】
本発明では、搬送路として、搬送方向に沿って複数の吸引対象面を有するものを適用することができる。この場合、各吸引対象面に対する吸引部の吸引力を全て同一に設定することも可能であるが、相対的に搬送方向下流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力を、相対的に搬送方向上流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力よりも大きく設定することもできる。
【0021】
相対的に搬送方向下流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力を、相対的に搬送方向上流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力よりも大きく設定した場合には、搬送方向下流端に近付くにつれて被吸引搬送対象物に作用する制動力が大きくなり、被吸引搬送対象物の移動速度を徐々に下げることが可能であり、急ブレーキが作用することに起因する被吸引搬送対象物同士の大きな衝撃を伴う衝突を回避することができる。
【0022】
特に、搬送路が、搬送面を有する搬送路本体と、搬送路本体と別体のガイド部を備えたものである場合には、ガイド部の一部を多孔質面に設定することができる。一例として、ガイド部が、搬送面に臨むガイド面を有し、且つ搬送面上の搬送対象物をガイド面に沿って搬送方向に案内するものであれば、ガイド面のうち少なくとも搬送方向下流端部分の全部または一部を多孔質面に設定した構成を挙げることができる。多孔質面を搬送面自体ではなく、搬送面に臨むガイド面に設定することにより、搬送路本体に対する大掛かりな加工は不要になる上に、搬送路本体とは別対のガイド部に多孔質面を設ける加工を施すことで搬送対象物の種類や必要な吸引力に応じた種々の振動搬送装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、搬送面のうち搬送方向下流端に近い部分を移動中の搬送対象物に向かって、多孔質材で構成した多孔質面を通じてエア吸引することにより、搬送対象物に制動力を作用させて減速させることができ、搬送面上において所望の方向に搬送される搬送対象物を、空間的に分離している搬送面を搬送させることなく、所定の供給先に等ピッチで供給することが可能になり、振動搬送装置の搬送処理能力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
本実施形態に係る振動搬送装置Xは、
図1に示すように、供給先である円板テーブルT(例えばガラス製円板テーブル)に電子部品等の搬送対象物W(ワーク)を供給する装置である。
図1には、図示しないホッパ装置から供給された搬送対象物Wを螺旋状の搬送路(ボウル搬送路B1)上において振動により搬送するボウルフィーダBと、ボウル搬送路B1の終端に連続する直線状の搬送路(リニア搬送路L1)を有するリニアフィーダLとを組み付けたパーツフィーダを示している。そして、リニアフィーダLが、本実施形態に係る振動搬送装置Xに相当するものである。
【0027】
ボウルフィーダBは、底面に形成された平面視略円形の貯留部B2と、貯留部B2の周縁部における所定部分を始端として内周壁に沿って登り傾斜の螺旋状に形成したボウル搬送路B1(螺旋トラックとも称される)とを備えている。
【0028】
貯留部B2は、中心側を径方向外側よりも高くなるように設定された上向き面である載置面を有し、載置面上の搬送対象物Wを径方向外側へ移動させるものである。載置面上において径方向外側へ移動した搬送対象物Wは、ボウル搬送路B1の始端に到達し、そのままボウル搬送路B1の始端を通過してボウル搬送路B1に沿って移動する。
【0029】
ボウル搬送路B1は、始端が貯留部B2に連続しており、上向き面であるボウル搬送面を例えば径方向外側に向けて下方に傾斜させた平坦な面に設定したものである。そして、振動によって搬送対象物Wが受ける搬送力のうち径方向外側へ向かう力とボウル搬送面の傾斜によって、搬送対象物Wは内周壁に接しながら搬送方向下流側(ボウル搬送路B1の終端側)に向けて搬送される。このようなボウル搬送路B1の所定箇所に整列手段(図示省略)を設け、整列手段によって所定姿勢である搬送対象物Wのみを搬送方向下流側に搬送し、所定姿勢ではない搬送対象物Wを貯留部B2へ戻す(落下させる)ように構成している。ボウルフィーダBによってボウル搬送路B1の終端まで搬送された整列状態にある搬送対象物Wは、ボウル搬送路B1の終端に連続するリニア搬送路L1(直線トラックとも称される)の始端に移動し、リニアフィーダLによってリニア搬送路L1の終端(先端)まで搬送される。
【0030】
本実施形態に係るリニアフィーダLは、
図1〜
図5(
図2は要部拡大図であり、
図3は
図2に示すリニアフィーダLの要部分解図であり、
図4は
図2に示すリニアフィーダLの要部平面図であり、
図5は
図2のさらに要部を示す拡大図であり、
図6は
図4のa−a線端面図である)に示すように、振動するリニア搬送路L1上で搬送対象物Wを搬送方向Fに移動させてリニア搬送路L1の先端(搬送方向F下流端)から順次排出し、所定の供給先(円板テーブルT)に供給する装置である。
【0031】
リニア搬送路L1は、
図2及び
図3等に示すように、一直線状に延伸するリニア搬送面11(本発明の「搬送面」に相当)を有する搬送路本体1(シュート基台)と、リニア搬送面11に臨むガイド面21を有するガイド部2と、リニア搬送面11を上方から被覆するカバー部3とを備えたものである。
【0032】
搬送路本体1は、適宜の加振手段により往復振動するリニア搬送面11上の搬送対象物Wを、搬送方向F上流側(ボウル搬送路B1の終端が連結される側)から搬送方向F下流側(リニア搬送路L1の先端側)に向かって搬送するものである。搬送路本体1には、搬送姿勢が正規の姿勢ではない搬送対象物WをボウルフィーダBに戻すリターン搬送路12を設けている(
図1参照)。そして、本実施形態では、長尺な搬送路本体1の全長に亘ってリニア搬送面11を形成し、搬送路本体1の搬送方向F中間あたりから下流端に亘る領域に、ガイド部2及びカバー部3を装着している。
【0033】
本実施形態におけるリニア搬送路L1は、
図6に示すように、フラットな水平面であるリニア搬送面11と、リニア搬送面11の一方のサイド側からリニア搬送面11を臨む起立面13とを備えている。これにより、リニア搬送面11上の搬送対象物Wは、一方のサイド面を起立面13に近接した状態で搬送方向F下流側へ搬送される。
【0034】
ガイド部2は、
図6に示すように、リニア搬送面11に臨み且つ起立面13と対峙するガイド面21を有する。ガイド面21の終端(先端)は、平面視においてリニア搬送面11の終端(先端)と同じ位置にある。そして、本実施形態のリニアフィーダLは、
図4及び
図5に示すように、ガイド面21のうち搬送方向F下流端部分(搬送方向F下流端及びその近傍領域の部分)を多孔質材22によって構成した多孔質面23に設定している。
【0035】
本実施形態における多孔質材22は、例えば無機質材料の粉粒体からなる骨材と、骨材相互を連結する結合材(バインダ)との混合物を焼結して形成されたものである。無機質材料の粉粒体からなる骨材の好適な例としては、アルミナや炭化ケイ素を挙げることができ、結合材の好適な例としては、ビトリファイド、ジレノイド、セメント、ゴム及びガラス等を挙げることができる。このようなセラミックス製の多孔質材22は、骨材と結合材の混合材料を成型金型に投入して焼結することで金型に応じた成形品とすることが可能である。多孔質材22は、焼結工程により内部に無数の微細気孔が形成され、多孔質材22の表面に開口する微細気孔と内部の微細気孔が連なって空気流路が形成される。微細気孔は、機械加工する場合に比べてその内径が著しく小さく、多孔質材22の表面全体に亘って無数に形成される。なお、本発明における骨材や結合材の種類は上述のものに特に限定されず、適宜選択したものを適用することが可能である。本実施形態では、適宜の金型等を用いて、ガイド部2の一部を構成するブロック状の多孔質材22を形成している。以下では、多孔質材22からなるブロック体を「多孔質ブロック体2A」と称す。
【0036】
多孔質ブロック体2Aは、上述したように内部に無数の微細気孔が形成され、表面に開口する微細気孔と内部の微細気孔が連なって形成される空気流路を有するものであり。すなわち、多孔質ブロック体2Aは、流体が流通(透過)可能な内部を有し、表面全体に多数の孔が満遍なく露出しているものである。なお、各孔(微細気孔)は、搬送対象物Wが当該孔に落下しない微小サイズ、例えば、搬送対象物Wの大きさが0603サイズ(0.6mm×0.3mmのサイズ)に対して各孔(微細気孔)の孔径が60μm程度の大きさである。
【0037】
本実施形態では、ガイド部2の所定部分、具体的には先端部分に、多孔質ブロック体2Aをセット可能な凹部24を形成し、この凹部24に多孔質ブロック体2Aをセットした状態において、ガイド部2のうちリニア搬送面11に臨むガイド面21が、多孔質ブロック体2Aのうちリニア搬送面11に臨む多孔質面23と搬送方向Fに隙間無く連続し、多孔質面23とともに凹凸の無いフラットな面を形成するように設定している(
図5参照)。本実施形態では、多孔質面23の全体または略全体を吸引対象面に設定している。したがって、本実施形態に関する以下の説明における「多孔質面23」は「吸引対象面」と同じ領域を意味する。なお、本実施形態では、ガイド部2の凹部24のうち多孔質ブロック体2Aに優先して接触する面(
図5において所定のパターンを付した面)に接着剤を塗布して多孔質ブロック2Aを凹部24に固定しているが、ガイド部2に多孔質ブロック体2Aを固定する手段はこれに限定されず、ボルト等の適宜の固定具を用いて固定することも可能である。
【0038】
また、以下の説明において、リニア搬送面11上における搬送対象物Wの搬送方向F下流端側を「前側」とし、搬送方向F上流端側を「後側」として、平面視において搬送対象物Wの搬送方向Fに直交する方向を幅方向(左右方向)とし、幅方向において比較する2つの面のうち相対的にリニア搬送面11の幅方向中心に近い面を「内側面」とし、相対的にリニア搬送面11の幅方向中心から遠い面を「外側面」とする。
【0039】
図4に示すように、多孔質ブロック体2Aは、ガイド部2の凹部24にセットした状態において、ガイド面21に連続する内側面2Aaと、内側面2Aaの反対側の面である外側面2Abのみを通気性のある通気面に設定し、それ以外の面、つまり上向き面2Ac、底面2Ad、前面2Ae及び後面2Afを封止面に設定している。封止面に設定する具体的な処理としては、対象とする面に接着剤を塗布するマスキング処理や、対象とする面に通気性の無いプレートを密着させた状態で固定する処理等を挙げることができる。本実施形態ではマスキング処理を適用している。
【0040】
本実施形態に係るリニアフィーダLは、ガイド部2の凹部24に多孔質ブロック体2Aをセットした状態において、多孔質ブロック体2Aの外側面2Abとの間に所定サイズの隙間が形成され、この隙間がエア室2Sとして機能するように設定している。また、本実施形態のリニアフィーダLは、エア室2Sのエアを吸引することにより、多孔質材22を通じて多孔質面23が臨むリニア搬送面11上の空間を負圧にする吸引部4を備えている。
【0041】
ここで、ガイド部2は、通気性の無い素材(例えばステンレス鋼、金属製、或いはプラスチック製等)から形成されたものであり、
図3及び
図5に示すように、凹部24に開口するエア室2S(換言すれば内側方に開口するエア室2S)と、エア室2Sに臨む空洞部25と、空洞部25に連通し且つ吸引部4を構成するエア継手41の一端が差込可能な差込口26とを有する。本実施形態では、幅方向に延伸する空洞部25と、高さ方向に延伸する差込口26とによって、エア吸引口27を形成している。
【0042】
吸引部4は、エア吸引口27に一端を装着したエア継手41と、吸引源(図示省略)と、エア継手41と吸引源の間に適宜配置した配管42(
図4参照)とを備えたものである。なお、ON/OFF制御弁等をさらに備えた吸引部4を適用することも可能である。
本実施形態では、多孔質ブロック体2Aを装着したガイド部2を、搬送路本体1にボルトNで固定している。なお、吸引部4をエア吸引口27に接続するタイミングは、ガイド部2を搬送路本体1に固定する処理の前のタイミングまたは後のタイミングの何れであってもよい。
【0043】
カバー部3は、搬送路本体1にボルトNで固定した状態で、リニア搬送面11を上方から被覆するカバー面31を有するものである(
図6参照)。本実施形態では、リニア搬送面11からカバー面31までの高さ寸法(離間寸法)を、リニア搬送面11上の搬送対象物Wがカバー面31に接触しない寸法に設定している。なお、本実施形態で用いるカバー部3は、搬送対象物Wのサイズに応じてリニア搬送面11からカバー面31までの高さ寸法を変更可能に構成したものである。カバー部3のカバー面31は、リニア搬送面11上の搬送対象物Wが上方へ飛び跳ねてリニア搬送面11から外れることを規制する押さえ面として機能する。カバー面31の終端(先端)は、平面視においてリニア搬送面11の終端(先端)と同じ位置にある。なお、
図4では、搬送対象物Wの搬送状態が把握できるように、カバー部3のうちカバー面31を含む所定部分を省略している。本実施形態では、搬送路本体1の左右幅方向の一方側にガイド部2を配置し、他方側にカバー部3を配置している。
【0044】
以上のような構成のリニアフィーダLの使用方法及び作用について説明する。
【0045】
本実施形態に係るリニアフィーダLを使用する場合、適宜の操作によって搬送路本体1を搬送方向Fに往復振動させ、さらに吸引部4によるエア吸引状態をONにすると、本実施形態のリニアフィーダLは、エア吸引源からエア継手41を経由してガイド部2のエア室2Sの内部を吸引する。その結果、リニア搬送面11のうち搬送方向F下流端近傍であって且つ多孔質面23が臨む領域には、ガイド面21に連続する多孔質面23(通気面)である多孔質ブロック体2Aの内側面2Aa側に吸引されるエアの気流が発生する。これは、多孔質ブロック体2Aのうちエア室2Sに臨む外側面2Ab、及び搬送面に臨む内側面2Aaが何れも通気面(多孔質面23のまま)であること、及び多孔質ブロック体2Aの内部をエアが透過可能であることに基づくものである。
【0046】
なお、多孔質ブロック体2Aのうち、エア室2Sに臨む外側面2Ab、及び搬送面に臨む内側面2Aaのみを通気性のある通気面に設定し、それ以外の面、つまり上向き面2Ac、底面2Ad、前面2Ae及び後面2Afを封止面に設定しているため、上向き面2Ac、底面2Ad、前面2Ae及び後面2Afも含む全て面を通気面に設定した態様と比較して、リニア搬送面11のうち搬送方向F下流端近傍であって且つ多孔質面23が臨む領域を搬送中の搬送対象物Wに対する吸引効率が増大する。
【0047】
以上のような構成により、本実施形態に係るリニアフィーダLでは、リニア搬送面11のうち搬送方向F下流端近傍であって且つ多孔質面23が臨む領域LAに、多孔質面23側に吸引する気流を発生させて、リニア搬送面11上において搬送方向F下流端に向かって移動する搬送対象物Wのうち、この吸引気流発生領域LAに到達した搬送対象物Wの搬送速度を、リニア搬送面11のうち吸引気流発生領域LAよりも上流側を移動する搬送対象物Wの搬送速度よりも減速させることができる。
【0048】
ここで、搬送対象物Wに対する吸引力は、図示しない制御部によって吸引部4の作動を制御することができ、本実施形態では、搬送対象物Wが多孔質面23に吸着しない、つまり、搬送対象物Wがリニア搬送面11上で停止しないという条件と、搬送対象物Wに制動力を作用させるという条件を満たす範囲の中で適宜調整・設定した吸引力を吸引部4が発生するように制御部で制御する。
【0049】
本実施形態に係るリニアフィーダLは、このような条件を満たす吸引力を吸引部4によって発生することにより、リニア搬送面11のうち搬送方向F下流端近傍であって且つ多孔質面23が臨む領域(吸引気流発生領域LA)に到達した被吸引搬送対象物Wの搬送スピードを減速させつつ、リニア搬送面11の振動によって被吸引搬送対象物Wを搬送方向F下流端に向かって搬送することができる。その結果、本実施形態に係るリニアフィーダLによれば、
図4に示すように、リニア搬送面11のうち吸引気流発生領域LAを通過する被吸引搬送対象物Wを減速させながら搬送方向Fに隙間無く密に並んだ状態で搬送することが可能になり、これら被吸引搬送対象物Wをリニア搬送面11の搬送方向F下流端から所定の供給先である円板テーブルTに等ピッチで排出することができる。なお、搬送方向Fに沿った吸引気流発生領域LAの長さは適宜調整・選択することができ、本実施形態では、
図4に示すように、18乃至20個程度の被吸引搬送対象物Wが搬送方向Fに隙間無く並ぶ長さに設定している。
【0050】
したがって、本実施形態に係るリニアフィーダLを用いることによって、リニア搬送面11の先端(搬送方向F下流端)から等ピッチで排出した搬送対象物Wを定速回転する円板テーブルT上に等間隔で並べることができ、円板テーブルT上における搬送対象物Wの外観検査等の検査・処理を適切に行うことが可能である。円板テーブルT上に等ピッチで並ぶ搬送対象物W同士の間隔は、円板テーブルTの回転速度によって調整できる。
【0051】
このように、本実施形態に係るリニアフィーダLであれば、複数の搬送対象物Wが搬送方向Fに隙間無く並ぶ状態となるようにリニア搬送面11の振動力を微調整する複雑な制御が不要であり、しかも、振動するリニア搬送面11自体を搬送方向F上流端から搬送方向F下流端まで連続する面に設定することができるため、
図7に示すような従来の構成、つまり、振動する搬送路Yの振動搬送面と振動しない搬送路Zの無振動搬送面Z1とを空間的に分離し、振動搬送面上の搬送対象物Wを無振動搬送面Z1に移動させて無振動搬送面Z1の下流端から排出する構成であれば生じる不具合、すなわち、振動搬送面と無振動搬送面Z1の隙間に搬送対象物が引っ掛かって不安定な姿勢になったり、隙間に落下する不具合を解消することができ、微小サイズの搬送対象物であっても所定の供給先に等ピッチで供給することが可能な安定した処理能力を発揮する。
【0052】
さらに、本実施形態のリニアフィーダLによれば、被吸引搬送対象物Wを減速させつつ停止させずに、リニア搬送面11の振動で搬送方向F下流端に向かって移動させるため、減速中の搬送対象物Wは、リニア搬送面11から一時的に浮上して非接触する状態と、接触する状態が交互に繰り返しながら移動することになる。したがって、
図7に示すような、搬送対象物Wが無振動搬送面Z1に接触し続けて後続の搬送対象物Wによる押圧力のみで移動する構成と比較して、搬送対象物Wが接触し続けることに起因するリニア搬送面11の摩耗の発生を防止・抑制することができ、リニア搬送面11上における被吸引搬送対象物Wのスムーズな移動を実現することができる。
【0053】
加えて、本実施形態に係るリニアフィーダLによれば、
図7に示すような振動搬送面を有する振動搬送路Yとは別に、無振動搬送面Z1を有する無振動搬送路Zを設ける必要がなく、振動搬送路Yを加振する加振源による影響を受けない状況下に無振動搬送路Zを安定した姿勢で支持するという条件も考慮する必要がないため、
図7に示す構成と比較して装置全体の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0054】
また、
図7に示すような無振動搬送面Z1上において搬送対象物Wが後続の搬送対象物Wによる押圧力のみで移動する構成であれば、後続の搬送対象物Wによる押圧力が作用しない搬送対象物Wは、それ以上搬送方向F下流側へ移動することなく無振動搬送面Z1上に停止して、所定の供給先に搬送できないという問題が生じるが、本実施形態に係るリニアフィーダLによれば、このような問題も解消できる。
【0055】
また、本実施形態のリニアフィーダLでは、搬送路L1として、リニア搬送面11を有する搬送路本体1と、リニア搬送面11に臨むガイド面21を有し且つリニア搬送面11上の搬送対象物Wをガイド面21に沿って搬送方向Fに案内するガイド部2とを備えたものを適用し、ガイド面21の搬送方向F下流端部分を多孔質面23に設定しているため、リニア搬送面11に多孔質面23を設ける加工が不要であり、既存のリニア搬送路L1を使用することができるとともに、ガイド面21に沿って搬送方向F下流側に搬送する搬送対象物Wのうち搬送方向F下流端部分に到達した搬送対象物Wに対して確実に制動力を作用させることが可能であり、搬送対象物W同士の隙間を無くし、次工程である円板テーブルTへ等間隔で搬送対象物Wを供給することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の本実施形態では、搬送面に臨む面であるガイド面のうち搬送方向下流端部分を多孔質材によって構成した多孔質面に設定した態様を例示したが、本発明は、ガイド面以外の面であって且つ搬送面に臨む面のうち搬送方向下流端部分を多孔質材によって構成した多孔質面に設定した構成も包含する。
【0057】
さらに、本発明では、搬送面のうち搬送方向下流端部分を多孔質面に設定した構成を採用することもできる。一例として、ガイド部やカバー部を設けるか否かに関わらず、搬送路面の少なくとも搬送方向下流端部分に多孔質材を直接配置して、搬送面の一部を多孔質材からなる多孔質面(吸引対象面)で形成することができる。この場合、吸引部は、多孔質面のうち予め設定された吸引対象面の下方から多孔質材を通じてエアを吸引し且つ振動により吸引対象面上を搬送中の搬送対象を吸引対象面である搬送面側に引き付ける機能を発揮し、吸引部による吸引力を、吸引対象面である搬送面側に引き付けた搬送対象物が搬送面のうち吸引対象面よりも上流の領域を搬送中の搬送対象物よりも遅い搬送速度で搬送される吸引力に設定すればよい。これにより、吸引対象面に到達した搬送対象物には制動力が作用し、このような搬送対象物は、吸引対象面上で減速しながら停止することなく搬送方向下流端に向かって搬送される。したがって、このような構成であっても、一部に多孔質面を設けた振動する搬送面自体は、多孔質面も含めて搬送方向上流端から搬送方向下流端まで連続する面であるため、
図7に示す従来の構成であれば生じる不具合を解消することができる。
【0058】
なお、搬送面のうち搬送方向下流端部分を多孔質材によって多孔質面に設定した構成を採用する場合、多孔質材の下方に、多孔質材との間にエア室を形成するベース部を設け、エア室のエアを吸引することにより、多孔質面上の搬送対象物を多孔質面側に引き付ける気流を形成することができる。
【0059】
また、本発明では、上述の実施形態で示したような多孔質面の全体または略全体を吸引対象面に設定した構成に代えて、多孔質面の一部のみを吸引対象面に設定した構成、或いは多孔質面に、搬送方向に沿って相互に区切られた複数の吸引対象面を設定した構成を適用することができる。
【0060】
特に、本発明において、搬送方向に沿って相互に区切られた複数の吸引対象面を設定した構成を適用した場合、各吸引対象面に対する吸引部の吸引力を全て同一に設定することも可能であるが、相対的に搬送方向下流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力を、相対的に搬送方向上流側の吸引対象面に対する吸引部の吸引力よりも大きく設定することもできる。後者の構成であれば、搬送方向下流端に近付くにつれて被吸引搬送対象物に作用する制動力が大きくなり、被吸引搬送対象物の移動速度を徐々に下げることが可能であり、急ブレーキが作用することに起因する被吸引搬送対象物同士の大きな衝撃を伴う衝突を回避することができる。なお、搬送方向に沿って相互に区切られる吸引対象面の数は2に限定されず、3以上であっても構わない。
【0061】
搬送方向に沿って相互に区切られた複数の吸引対象面を設定した構成を採用する場合、単一の多孔質材から構成した多孔質面を通気面のエリアと封止面のエリアに分けて設定することで、全ての吸引対象面を、共通の多孔質材から構成することができる。一方で、搬送面または搬送面に臨む面の搬送方向下流端部分を含む所定領域に、搬送方向に沿ってそれぞれ別々の多孔質材を所定間隔で設け、各多孔質材の多孔質面を吸引対象面に設定することによって、搬送方向に沿って相互に区切られた複数の吸引対象面を設定した構成を実現することも可能である。
【0062】
本発明において、搬送方向に沿って相互に区切られた複数の吸引対象面を設定した構成を適用した場合、吸引対象面の数と吸引部の数を同一に設定した態様(吸引対象面ごとに個別の吸引部を対応付けて作動させる態様)、または吸引面の数と吸引部の数を異ならせた態様(例えば全ての吸引対象面に対して共通(単一)の吸引部を対応付けて作動させる態様)の何れかの態様を適宜選択することができる。
【0063】
搬送面のうち少なくとも搬送方向下流端部と、搬送面に臨む面のうち少なくとも搬送方向下流端部の両方を、多孔質材によって構成した多孔質面に設定しても構わない。
【0064】
本発明では、搬送面の断面形状が湾曲状または屈曲状(例えばU字状、V字状またはW字状等)をなす溝状の搬送路を適用することもできる。この場合であっても、搬送面のうち少なくとも搬送方向下流端部分、または搬送面に臨む面のうち少なくとも搬送方向下流端部分を多孔質材によって構成した多孔質面に設定すればよい。
【0065】
全ての面を通気面に設定した多孔質材を適用することも可能である。この場合、封止面にするためのマスキング処理等が不要になる。
【0066】
本発明における吸引部は、搬送路の所定領域に設定したエア室のエアを吸引することで、エア室が臨む多孔質材の多孔質面上の搬送対象物を多孔質面側に引き付ける気流を形成するものや、搬送路の所定領域にエア室を設定していない構成であっても多孔質材をダイレクトに吸引することで、搬送対象物を多孔質材側に引き付ける気流を形成するものでもよい。
【0067】
吸引部の吸引力は、搬送対象物を搬送する処理を実行している間、常に一定であってもよいし、吸引力調整手段によって適宜のタイミングで変更してもよい。
【0068】
本発明に係る振動搬送装置は、リニア搬送路を有するリニアフィーダに限定されず、ボウル搬送路を有するボウルフィーダや、その他の振動搬送装置、例えば互いに異なる3方向に独立して三次元的に振動させる振動搬送装置、超音波振動による超音波搬送装置等にも適用できる。
【0069】
また、本発明では、ブロック状やプレート状に形成された多孔質材に代えて、または加えて、例えばシート状に形成された多孔質材によって多孔質面を構成するようにしてもよい。
【0070】
本発明では、水平又は略水平な「搬送面」に代えて、例えば
図8に示すような傾斜面に設定された搬送面11,13を適用することも可能である。なお、
図8は、傾斜面に設定された搬送面11,13を有する振動搬送装置の要部断面を
図6に対応して示す模式図である。
【0071】
また、搬送対象物は、電子部品、あるいは食品など電子部品以外のものであってもよい。
【0072】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。