【解決手段】カードリーダ1は、カード2に磁気データが記録されていることを検知するプリヘッドとして磁気ヘッド10を搭載している。磁気ヘッド10は、ケース20の底部21に設けられたセンサ面11に開口部23が形成され、開口部23には、保護部材40によって覆われた磁気抵抗効果素子30が配置されている。保護部材40はセンサ面11と同一面上に配置され、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップは、保護部材40の厚さによって規定される。保護部材40および磁気抵抗効果素子30は、硬質接着剤70によりケース20に固定される。磁気抵抗効果素子30に接続されるフレキシブルプリント基板50は、ケース20に軟質接着剤60を入れて封止されている。
前記保護部材に対して前記磁気抵抗効果素子を固定する第1接着剤は、硬質接着剤であって、前記保護部材と前記ケースとの隙間、および、前記磁気抵抗効果素子と前記ケースとの隙間に拡がって前記保護部材および前記磁気抵抗効果素子を前記ケースに対して固定することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の磁気センサは、磁気抵抗効果素子による検出精度を上げるため、ケースの内部にヨークを配置して磁路を形成し、磁気抵抗効果素子の位置で磁束を集束させるように構成している。しかしながら、ヨークを用いると部品が増加してコストが増大する上、組立作業が複雑化するという問題があった。
【0006】
また、特許文献1の磁気センサは、ヨークを備えていないが、磁石を用いてバイアス磁界を発生させている。しかしながら、磁石によってバイアス磁界を発生させる磁気ヘッドは、単なる金属カードに対しても検出出力が発生する。従って、磁気データが記録されているカードと、単なる金属カードとを区別できないため、プリヘッドとして用いた場合には、磁気データが記録されていない金属カードを磁気データが記録されているカードとして誤検出してしまう。
【0007】
ヨークや磁石を用いずに、磁気抵抗効果素子によってカードに記録されている磁気データを検出するためには、磁気抵抗効果素子をセンサ面に配置してカードとのギャップを数十μm以内にする必要がある。しかしながら、センサ面に磁気抵抗効果素子を配置した場合には、カードとセンサ面との接触によって磁気抵抗効果素子の摩耗や損傷が発生するおそれがあるため、耐久性が問題となる。特許文献1では、ケースの表面に耐摩耗性のあるセラミック層を設けているが、磁気抵抗効果素子は、ケースに覆われた上からセラミック層で覆われている。従って、このような構成では、磁気抵抗効果素子とカードとのギャップを十分に小さくすることはできないため、必要な検出精度を確保することができない。
【0008】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、磁気ヘッドの検出精度を確保し、且つ、媒体との接触による磁気ヘッドの耐久性の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、媒体に磁気データが記録されているか否かを検知するための磁気ヘッドであって、前記媒体が通過する側を向くセンサ面に開口部が形成されたケースと、前記開口部に前記センサ面を基準として位置決めされて配置された保護部材と、前記保護部材によって少なくとも一部が覆われた状態で前記開口部に配置された磁気抵抗効果素子と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明では、磁気ヘッドのケースのセンサ面に開口部が形成され、開口部には、保護部材によって覆われた磁気抵抗効果素子が配置されている。このような構成では、磁気抵抗効果素子をケースの開口部に配置して媒体とのギャップを小さくした構成でありながら、保護部材によって磁気抵抗効果素子を保護できる。従って、媒体とセンサ面との接触による磁気抵抗効果素子の損傷を抑制でき、耐久性の低下を抑制できる。また、保護部材はセンサ面を基準として開口部に位置決めされるので、保護部材の厚さによって磁気抵抗効果素子とセンサ面との距離を制御できる。よって、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを小さくすることができる。よって、磁気抵抗効果素子に磁束を誘導するためのヨークを用いることなく検出精度を確保できる。また、ヨークの部品コストを削減でき、且つ、組立作業も容易となる。
【0011】
本発明において、前記保護部材は、セラミックであることが好ましい。セラミックは耐摩耗性が高いので、磁気抵抗効果素子の損傷を抑制でき、磁気センサの耐久性を高めることができる。例えば、ジルコニアなどの硬質セラミックは耐摩耗性が高いので、保護部材として好適である。
【0012】
本発明において、前記保護部材に対して前記磁気抵抗効果素子を固定する第1接着剤は、硬質接着剤であって、前記保護部材と前記ケースとの隙間、および、前記磁気抵抗効果素子と前記ケースとの隙間に拡がって前記保護部材および前記磁気抵抗効果素子を前記ケースに対して固定することが好ましい。このような構成により、保護部材および磁気抵抗効果素子のそれぞれをケースに対して確実に固定できる。また、第1接着剤として硬質接着剤を用いることにより、第1接着剤による固定を確実に行うことができ、磁気抵抗効果素子をセンサ面に対して精度良く位置決めできる。従って、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを小さくすることができる。よって、検出精度を確保できる。
【0013】
本発明において、前記ケース内は、軟質接着剤である第2接着剤により封止されていることが好ましい。ケース内を封止することにより、磁気抵抗効果素子に接続される配線部材を保護できる。従って、配線部材の断線や損傷を抑制できる。また、温度衝撃が加わった場合、各部材との線膨張の差により磁気抵抗効果素子に応力が加わるが、その応力を緩和することができる。
【0014】
本発明において、前記ケースは、導電性樹脂により形成されていることが好ましい。ケースを導電性にすることにより、ケースを接地できるため、静電気から磁気抵抗効果素子を保護できる。また、ケースを金属製でなく樹脂製とすることにより、ケースの部品コストを低減させることができる。
【0015】
本発明において、前記ケースは、筒状部と、前記筒状部の一端を塞ぐ底部とを備え、前記底部は、前記センサ面を構成しており、前記筒状部の内面に、アース線が固定される固
定部が設けられていることが好ましい。このようにすると、ケースを接地できるため、静電気から磁気抵抗効果素子を保護できる。
【0016】
本発明において、前記磁気抵抗効果素子に接続されるフレキシブルプリント基板を備え、前記アース線は、前記フレキシブルプリント基板に設けられていることが好ましい。このようにすると、磁気抵抗効果素子に接続される信号線とアース線とを一緒に引き回すことができるので、組立時に配線の取り扱いが容易となる。
【0017】
次に、本発明は、カード挿入口が形成されたカード挿入部と、前記カード挿入口に接続されるカード搬送路を備え、前記カード搬送路内の前記カードに対して磁気データの読取りまたは書き込みの少なくとも一方の処理を行うカードリーダ本体と、を有し、前記カード挿入部には、上記の磁気ヘッドが前記カード挿入口へ挿入される前記カードに磁気データが記録されているか否かを検知するためのプリヘッドとして搭載されていることを特徴とする。このようなカードリーダは、プリヘッドとして搭載される磁気ヘッドにヨークを用いることなくその検出精度を確保でき、且つ、耐久性の低下を抑制できる。また、ヨークの部品コストを削減でき、且つ、組立作業も容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁気ヘッドのケースのセンサ面に開口部が形成され、開口部には、保護部材によって覆われた磁気抵抗効果素子が配置されているので、磁気抵抗効果素子をケースの開口部に配置して媒体とのギャップを小さくした構成でありながら、保護部材によって磁気抵抗効果素子を保護できる。従って、媒体とセンサ面との接触による磁気抵抗効果素子の損傷を抑制でき、耐久性の低下を抑制できる。また、保護部材はセンサ面を基準として開口部に位置決めされるので、保護部材の厚さによって磁気抵抗効果素子とセンサ面との距離を制御できる。よって、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子と媒体とのギャップを小さくすることができる。よって、磁気抵抗効果素子に磁束を誘導するためのヨークを用いることなく検出精度を確保できる。また、ヨークの部品コストを削減でき、且つ、組立作業も容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した磁気ヘッド10およびカードリーダ1の実施形態を説明する。
【0021】
(カードリーダ)
図1(a)は本発明を適用した磁気ヘッド10を備えたカードリーダ1の内部構成を模式的に示す説明図であり、
図1(b)はカード2の説明図である。
図1(a)に示すように、カードリーダ1は、カード2が挿入されるカード挿入口3が形成されたカード挿入部4と、カード挿入口3と繋がるカード搬送路5が形成されたカードリーダ本体6を備える
。カード挿入部4は、カードリーダ本体6の前端に固定されている。カードリーダ本体6は、カード搬送路5を通過するカード2に対して磁気データの読取りおよび書込みの少なくとも一方の処理を行う磁気ヘッド7を備える。また、カードリーダ本体6は、カード搬送路5に沿ってカード2を搬送する搬送機構8を備える。搬送機構8は、カード2を間に挟んで搬送する駆動ローラー81およびパッドローラー82と、駆動ローラー81を回転させる搬送モータ83を備える。
【0022】
本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。X方向はカードリーダ1の前後方向である。カード2はカードリーダ1に対してX1方向に挿入され、カードリーダ1からX2方向に取り出される。すなわち、X方向はカード2の搬送方向である。Y方向はカードリーダ1の幅方向であり、Y方向の一方側をY1、他方側をY2とする。Z方向はカードリーダ1の高さ方向であり、カード挿入口3へ挿入されるカード2の厚さ方向である。Z方向の一方側をZ1、他方側をZ2とする。後述する磁気ヘッド10の説明においては、
図2〜
図9に示すXYZの3方向は、カードリーダ1に磁気ヘッド10が搭載された状態での方向を示すものとする。
【0023】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードである。
図1(b)に示すように、カード2には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。磁気ストライプ2aは、カード2の長手方向に延在する。
【0024】
図1(a)に示すように、カード挿入部4は、カード挿入口3にカード2が挿入されたことを検出する挿入検知センサ9を備えている。また、カード挿入部4は、カード2に磁気データが記録されていることを検知するプリヘッドである磁気ヘッド10を備えている。カードリーダ1の制御部は、挿入検知センサ9の出力に基づき、カード挿入口3にカード2が挿入されたことを検知する。また、磁気ヘッド10の出力に基づき、カード2に磁気データが記録されていることを検知する。
【0025】
カードリーダ1の制御部は、カード挿入口3にカード2が挿入されたことを検知し、且つ、カード2に磁気データが記録されていることを検知すると、処理対象のカード2が挿入されたと判断して、このカード2をカード搬送路5へ取り込む。すなわち、カード挿入口3の奥側に設けられた図示しないシャッタ機構を開放して搬送機構8を駆動し、磁気ヘッド7の位置へカード2を搬送する。カード2が磁気ヘッド7の位置を通過する際、磁気ヘッド7のセンサ面がカード2の磁気ストライプ2aに摺接して磁気データの読取りおよび書込みなどの処理が行われる。
【0026】
(磁気ヘッド)
図2は本発明を適用した磁気ヘッド10の側面図、平面図および底面図である。
図2(a)は側面図であり、
図2(b)は底面図であり、
図2(c)は平面図である。磁気ヘッド10は、ケース20と、ケースの内部に収容される磁気抵抗効果素子30(
図3、
図5〜
図9参照)と、磁気抵抗効果素子30を保護する保護部材40と、フレキシブルプリント基板50を備える。フレキシブルプリント基板50は、その一部がケース20の内部に収容され、磁気抵抗効果素子30に接続されている。
【0027】
図2(c)に示すように、フレキシブルプリント基板50において、ケース20の内部に収容される部分は、軟質接着剤60により封止されている。フレキシブルプリント基板50の他の部分は、ケース20の外部へ引き出されて、カードリーダ本体6に設けられた基板(図示省略)に接続される。
図1(a)に示すように、カード挿入部4に搭載されてプリヘッドとして用いられる磁気ヘッド10に対して、カードリーダ本体6はX1方向に配置されている。そのため、フレキシブルプリント基板50は、ケース20からX1方向へ引き出されている。フレキシブルプリント基板50が接続される基板には、磁気抵抗効
果素子30の信号を処理する信号処理回路が設けられている。
【0028】
磁気ヘッド10は、カード2が摺動する摺動面であるセンサ面11を備える。センサ面11は、カード挿入口3から挿入されるカード2が通過する側(
図1(a)の配置では、Z1方向)を向いている。
図2(a)に示すように、センサ面11は、ケース20の底部21に設けられている。ケース20は、Z2方向に開口しており、内部は中空に形成されている。ケース20は、Z方向に延在する筒状部22と、筒状部22のZ1方向の端部を塞ぐ底部21を備える。
図2(c)に示すように、筒状部22は、X方向に略平行に延在する第1壁221および第2壁222と、Y方向に略平行に延在する第3壁223および第4壁224を備えており、X方向の寸法がY方向の寸法より長い角筒状である。Y1方向に位置する第1壁221のX方向の中央には、一定幅の切欠き24(
図4、
図5参照)が形成されている。
【0029】
図2(a)に示すように、底部21は、カード2が通過する方向であるX方向の中央部分がZ1方向に膨らんだ形状をしており、センサ面11は、底部21のX方向の中央に設けられている。センサ面11は、Z方向に対して垂直な平面である。
図2(b)に示すように、ケース20の底部21には、矩形の開口部23が形成されている。センサ面11は、開口部23を囲むように底部21に形成された平面部211と、平面部211と同一面上に位置決めされて開口部23に配置された保護部材40によって構成されている。すなわち、保護部材40は、センサ面11と同一面上に配置されている。保護部材40は、硬質接着剤70(
図8、
図9参照)によりケース20に固定されている。
【0030】
図3は、フレキシブルプリント基板50および磁気抵抗効果素子30の平面図である。フレキシブルプリント基板50は、磁気抵抗効果素子30が固定されてケース20内に組み込まれる前の状態では、
図3に示すような平面形状をしている。フレキシブルプリント基板50は、先端に磁気抵抗効果素子30が固定される直線状の第1部分51と、第1部分51の磁気抵抗効果素子30が固定される側とは反対側の端部に接続された第2部分52と、第2部分52から第1部分51とは反対側へ延びる第3部分53を備える。
【0031】
第1部分51の先端には、磁気抵抗効果素子30と接続される第1端子部511が形成されている。磁気抵抗効果素子30は長方形であり、長手方向の一方側の端部は第1端子部511が設けられた第1部分51の先端に固定されている。第2部分52は、全体として第1部分51と直交する方向へ直線状に延びている。第2部分52は、第1部分51の幅方向の一方側へ突出する突出部521と、第1部分51の幅方向の他方側へ突出する突出部522を備えており、突出部522の先端には、第2端子部523が形成されている。第3部分53は突出部522の途中部分に接続されている。第3部分53は、全体として第2部分52と直交する方向へ延びており、第2部分52の突出部522と接続される側の端部の幅が細く、突出部522とは反対側の部分の幅が太くなっている。第3部分53の第2部分52とは反対側の端部には、第3端子部531が形成されている。
【0032】
フレキシブルプリント基板50は、可撓性基板と、可撓性基板に形成された配線パターンを備える。
図3に示すように、フレキシブルプリント基板50には、磁気抵抗効果素子30に接続される信号線54を構成する配線パターンと、アース線55を構成する配線パターンが設けられている。信号線54を構成する配線パターンは、第3部分53から第2部分52の突出部522を経由して第1部分51へ延びており、第1部分51の先端に設けられた第1端子部511と接続されている。一方、アース線55を構成する配線パターンは、第3部分53から第2部分52の突出部522の先端側へ延びており、突出部522の先端に設けられた第2端子部523と接続される。アース線55が設けられた突出部522は、信号線54が設けられた第1部分51から分岐した分岐部を構成しているので、磁気抵抗効果素子30が配置されるケース20の底部21とは別の位置へアース線55
を引き回すことができるようになっている。信号線54およびアース線55を構成するパターンは、第3部分53の第2部分52とは反対側の端部まで延びて第3端子部531と接続されている。アース線55は、第3端子部531を介して、カードリーダ本体6に設けられたフレームグランド電位の部材と電気的に接続される。従って、第2端子部523は、フレームグランド端子となっている。
【0033】
図4は磁気ヘッド10の斜視図であり、
図5は磁気ヘッド10の分解斜視図である。また、
図6は磁気ヘッド10の斜視図であり、
図7は磁気ヘッド10の分解斜視図である。
図6、
図7は、
図4、
図5とは異なる方向から見た図である。
図6に示すように、フレキシブルプリント基板50の第1部分51に固定された磁気抵抗効果素子30は、ケース20の開口部23に配置される。上記のように、開口部23にはセンサ面11を構成する保護部材40が配置され、磁気抵抗効果素子30は、保護部材40の内側面に固定される。従って、磁気抵抗効果素子30は、センサ面11との間に保護部材40の厚さと同一寸法のギャップを持つ位置に位置決めされ、且つ、保護部材40によって表面が覆われて保護された状態で、ケース20の開口部23に固定される。
【0034】
図4、
図6に示すように、フレキシブルプリント基板50は、第1部分51および第2部分52が折り曲げられてケース20の内部に組み込まれる。第1部分51および第2部分52は、ケース20の内部へ注入され硬化した軟質接着剤60により封止される。なお、
図4、
図6では軟質接着剤60の図示を省略している。
【0035】
図5に示すフレキシブルプリント基板50の形状は、実線がケース20の内部へ組み込まれる際の形状に折り曲げられた状態を示し、破線は磁気ヘッド10を組み立てる途中の状態を示す。すなわち、破線の形状は、磁気抵抗効果素子30をケース20の開口部23に配置した状態で、フレキシブルプリント基板50の第1部分51がケース20の切欠き24からケース20の外部へ引き出された状態を示す。フレキシブルプリント基板50は、ケース20の内部へ組み込まれる際、磁気抵抗効果素子30が接続された第1端子部511は第1部分51の先端でY2方向へ屈曲している。磁気抵抗効果素子30は、長手方向をY方向に向けた状態でケース20の開口部23に配置される。すなわち、磁気抵抗効果素子30は、センサ面11をカード2が通過する方向であるX方向と直交する方向(Y方向)を長手方向とするように、位置決めされている。
【0036】
磁気抵抗効果素子30をケース20の開口部23に配置すると、フレキシブルプリント基板50の第1部分51は、ケース20の切欠き24の内側に配置される。第1部分51の幅W2(
図7参照)は、切欠き24の幅W1(
図7参照)より小さい。従って、第1部分51を切欠き24に通すことができ、フレキシブルプリント基板50を
図5の破線で示すようにケース20の外部へ引き出すことができる。本形態では、この状態で、硬質接着剤70によって保護部材40および磁気抵抗効果素子30をケース20に固定する作業を行う。しかる後に、
図4、
図6に示すように第1部分51を切欠き24の内側でZ2方向へ立ち上げて、第2部分52をケース20の内面に引っ掛ける。これにより、第2部分52がケース20の外部へ飛び出さないように保持することができる。
【0037】
図6、
図7に示すように、ケース20の第1壁221の内面には、第2部分52を保持する保持部25が形成されている。保持部25は、第1壁221の内面のZ2方向の端部に形成されたY1方向へ凹む凹部であり、切欠き24の幅方向の両側に形成されている。
図6に示すように、第2部分52は、X方向の幅が第1部分51の幅W2および切欠き24の幅W1より太くなっている。従って、第2部分52は、切欠き24の両側でケース20に引っ掛けられて保持される。すなわち、第2部分52は、突出部521が切欠き24のX2方向で保持部25に引っ掛けられて保持されると共に、突出部522の一部が切欠き24のX1方向で保持部25に引っ掛けられて保持されている。
図4に示すように、突
出部522の先端側は、Y2方向へ屈曲してケース20の第3壁223の内面に沿って延在する。第3部分53は、第3壁223のZ2方向側でX1方向へ屈曲して、ケース20の外部へ引き出され、X1方向へ延びている。
【0038】
図4、
図5に示すように、ケース20の第3壁223と第2壁222が繋がる角部には、第2壁222の内面をY2方向へ凹ませた固定部26が形成されている。突出部522の先端に形成された第2端子部523は、固定部26のX1方向の内面に当接し、導電性接着剤(図示省略)により固定部26のX1方向の内面に固定される。本形態では、ケース20は導電性樹脂からなる。導電性樹脂としては、例えば、導電性のフィラーや粒子などを樹脂材料に混入して導電性を持たせた樹脂材料を成形したものが用いられる。アース線55に接続されるフレームグランド端子である第2端子部523を導電性接着剤によって固定部26に固定することにより、ケース20が接地される。
【0039】
(磁気ヘッドの組立)
図8(a)は磁気ヘッド10の断面図であり、
図4のA−A位置で切断した断面図である。また、
図8(b)は、
図8(a)の領域Cの拡大図であり、磁気ヘッド10の組立方法を示す説明図である。
図8(b)は、磁気抵抗効果素子30および保護部材40をケース20の開口部23に固定する工程を示している。
図9(a)は磁気ヘッド10の断面図であり、
図4のB−B位置で切断した断面図である。また、
図9(b)は磁気ヘッド10の組立方法を示す説明図であり、
図8(b)と同様に、磁気抵抗効果素子30および保護部材40をケース20の開口部23に固定する工程を示している。
図8(a)、
図9(a)に示すように、ケース20の底部21には、センサ面11で開口する開口部23が形成され、開口部23には、保護部材40および磁気抵抗効果素子30が配置されている。保護部材40および磁気抵抗効果素子30は、第1接着剤である硬質接着剤70によってケース20に固定されている。また、磁気抵抗効果素子30は、保護部材40によってセンサ面11の側から覆われている。
【0040】
保護部材40は、セラミック板であり、好ましくは、ジルコニアなどの硬質セラミック板である。保護部材40の厚さは磁気抵抗効果素子30とセンサ面11とのギャップを規定する寸法となるため、磁気抵抗効果素子30の検出精度を確保できる厚さに設定される。本形態では、保護部材40の厚さは、30〜50μmの範囲内とされている。なお、保護部材40は、耐摩耗性が確保できれば、ジルコニア以外の素材であってもよい。例えば、アルミナ、SUSなどの非磁性金属板であってもよい。
【0041】
磁気ヘッド10を組み立てる際、まず、保護部材40および磁気抵抗効果素子30をケース20の開口部23に固定するために、センサ面11を基準として開口部23に保護部材40を位置決めする第1ステップを行う。
図8(b)、
図9(b)に示すように、第1ステップでは、基準面12の上にケース20を置き、センサ面11を基準面12に当接させる。この状態で、中空のケース20内に保護部材40を入れて、開口部23に保護部材40を嵌め込み、基準面12に保護部材40を当接させる。
【0042】
次に、開口部23に配置した保護部材40のZ2方向の面(センサ面11とは反対側の面)に硬質接着剤70を塗布する第2ステップを行う。続いて、第3ステップでは、ケース20内に磁気抵抗効果素子30を入れて、開口部23に磁気抵抗効果素子30を嵌め込み、保護部材40における硬質接着剤70が塗布された面に磁気抵抗効果素子30を載せると共に、
図9(b)に示すように、磁気抵抗効果素子30に接続されたフレキシブルプリント基板50をケース20の切欠き24から外部へ引き出した状態を形成する。そして、この状態で、第4ステップを行う。第4ステップでは、押圧ピン13をケース20内に入れて、押圧ピン13の先端で磁気抵抗効果素子30をZ1方向へ押圧して、磁気抵抗効果素子30とセンサ面11とのギャップが保護部材40の厚さと同一になるようにする。
そして、加熱して硬質接着剤70が硬化するまで、押圧ピン13による押圧を継続する。
【0043】
本形態では、硬質接着剤70は低粘性の接着剤である。従って、
図8(b)に示すように、第4ステップでは、硬質接着剤70が保護部材40とケース20の開口部23との隙間へ拡がって隙間を埋めた状態で硬化する。従って、磁気抵抗効果素子30が硬質接着剤70によって保護部材40と固定されるだけでなく、保護部材40とケース20、および、磁気抵抗効果素子30とケース20は、それぞれ、硬質接着剤70により固定される。
【0044】
また、第4ステップは、フレキシブルプリント基板50をケース20の切欠き24から引き出した状態で行うので、ケース20の切欠き24からケース20の内部を視認することができる。従って、第4ステップでは、切欠き24から押圧ピン13による磁気抵抗効果素子30の押圧状況の確認および磁気抵抗効果素子30の位置確認を行うことができる。また、その際、フレキシブルプリント基板50がケース20の内部で押圧ピン13と干渉することが回避される。
【0045】
硬質接着剤70が硬化した後、押圧ピン13をケース20から取り出して、開口部23に軟質接着剤60を入れて磁気抵抗効果素子30を覆う第1接着剤層61を形成する第5ステップを行う。第1接着剤層61は、ケース20と磁気抵抗効果素子30とを固定する。続いて、フレキシブルプリント基板50をケース20の内部へ戻してケース20に保持させる第6ステップを行う。第6ステップでは、
図4〜
図7を参照して説明したように、フレキシブルプリント基板50の第2部分52を構成する突出部521、522をケース20の保持部25に引っ掛けて保持させる。続いて、フレキシブルプリント基板50のアース線55の第2端子部523をケース20の固定部26に導電性接着剤によって固定する第7ステップを行う。そして、切欠き24を覆うように第1壁221の外面にテープなどを貼り付けた後、ケース20の上端まで軟質接着剤60を更に入れて、第2接着剤層62を形成してケース20内を封止する第8ステップを行う。
【0046】
軟質接着剤60は熱硬化性樹脂であるため、第8ステップでは、組み立てた磁気ヘッド10を加熱して軟質接着剤60を硬化させる。ここで、
図9(a)では図示を省略しているが、軟質接着剤60はケース20の切欠き24においてフレキシブルプリント基板50の第1部分51と切欠き24との隙間から第1部分51の外側へ拡がって、第1部分51の外側を覆うように拡がる。従って、切欠き24には、第1部分51の外側を覆う軟質接着剤60の層が形成されることになる。また、センサ面11の開口部23において開口部23の内周面と保護部材40との隙間に拡がった硬質接着剤70は、保護部材40と開口部23の内周面との隙間からセンサ面11にはみ出すことがある。その場合には、センサ面11にはみ出した硬質接着剤70を除去する第9ステップを行う。これにより、センサ面11が平坦になって摺動性が向上すると共に、センサ面11を摺動するカード2と磁気抵抗効果素子30とのギャップの目標値からのばらつきが低減される。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気ヘッド10は、磁気ヘッド10のケース20の底部21に設けられたセンサ面11に開口部23が形成され、開口部23には、保護部材40によって覆われた磁気抵抗効果素子30が配置されている。このような構成では、磁気抵抗効果素子30をケース20の開口部23に配置して磁気データが記録された媒体であるカード2とのギャップを小さくした構成でありながら、保護部材40によって磁気抵抗効果素子30を保護できる。従って、カード2とセンサ面11との接触による磁気抵抗効果素子30の損傷を抑制でき、耐久性の低下を抑制できる。また、保護部材40はセンサ面11を基準として開口部23に位置決めされるので、保護部材40の厚さによって磁気抵抗効果素子30とセンサ面11との距離を制御できる。よって、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップ
を小さくすることができる。よって、従来の磁気ヘッドのように磁気抵抗効果素子に磁束を誘導するためのヨークを用いることなく、磁気ヘッド10の検出精度を確保でき、耐久性を確保できる。また、ヨークの部品コストを削減でき、且つ、磁気ヘッド10の組立作業も容易となる。
【0048】
また、本形態のカードリーダ1は、プリヘッドとして本形態の磁気ヘッド10を搭載している。従って、プリヘッドにヨークを用いることなく検出精度を確保でき、且つ、耐久性を確保できる。よって、プリヘッドのコストを削減でき、耐久性を確保できる。また、組立作業も容易である。
【0049】
本形態では、保護部材40としてセラミック板を用いており、保護部材40は、硬質セラミックであるジルコニアによって形成されている。セラミックは耐摩耗性が高いので、磁気抵抗効果素子の損傷を抑制でき、磁気センサの耐久性を高めることができる。
【0050】
本形態では、保護部材40に対して磁気抵抗効果素子30を固定する第1接着剤である硬質接着剤70は低粘性の接着剤であるため、保護部材40とケース20との隙間、および、磁気抵抗効果素子30とケース20との隙間に拡がって保護部材40および磁気抵抗効果素子30をケース20に対して固定する。従って、保護部材40および磁気抵抗効果素子30のそれぞれをケース20に対して確実に固定できる。また、硬質接着剤70を用いて固定することにより、保護部材40、磁気抵抗効果素子30、およびケース20の相互の固定を確実に行うことができる。よって、磁気抵抗効果素子30をセンサ面11に対して精度良く位置決めできる。これにより、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップを小さくすることができる。よって、検出精度を確保できる。
【0051】
本形態では、磁気ヘッド10のケース20内は、第2接着剤である軟質接着剤60によって封止されている。このように、ケース20内を封止することにより、磁気抵抗効果素子30に接続される配線部材であるフレキシブルプリント基板50を保護できる。従って、フレキシブルプリント基板50の断線や損傷を抑制できる。また、軟質接着剤60である第2接着剤でケース20内を封止することにより、磁気ヘッド10に温度衝撃などが加わった場合においても、各部材の熱膨張係数の違いにより発生して磁気抵抗素子に作用する応力を緩和することができる。
【0052】
本形態では、磁気ヘッド10のケース20が導電性樹脂により形成されている。また、ケース20は、筒状部22と、筒状部22の一端を塞ぐ底部21とを備えており、底部21がセンサ面11を構成しており、筒状部22の内面にアース線55の端子である第2端子部523が固定される固定部26が設けられている。このように、ケース20を導電性にすると共に、アース線55が導電性接着剤によりケース20に固定されることにより、ケース20を接地できる。従って、静電気から磁気抵抗効果素子30を保護できるため、静電気による故障を抑制できる。また、ケース20を金属製でなく樹脂製とすることにより、ケース20の部品コストを低減させることができる。
【0053】
本形態では、磁気抵抗効果素子30に接続される信号線54が設けられたフレキシブルプリント基板50にアース線55が設けられている。従って、信号線54とアース線55とを一緒に引き回すことができるので、組立時に配線部材の取り扱いを容易にすることができる。また、フレキシブルプリント基板50は、信号線54が設けられる第1部分51から第2部分52の突出部522が分岐した形状になっており、第1部分51に対する分岐部である突出部522にアース線55が設けられている。従って、アース線55の端子である第2端子部523の固定部26への位置決めおよび固定部26に対する固定作業を容易に行うことができる。
【0054】
また、本形態の磁気ヘッド10の製造方法では、磁気抵抗効果素子30をケース20の開口部23に配置された保護部材40に対して第1接着剤である硬質接着剤70により固定する際、磁気抵抗効果素子30に接続されたフレキシブルプリント基板50をケース20に形成された切欠き24からケース20の外部へ引き出しておく。このようにすると、不定型のフレキシブルプリント基板50が磁気抵抗効果素子30の位置確認や押圧作業の邪魔にならないようにすることができる。また、磁気抵抗効果素子30をケース20に固定する作業などの際に、配線部材が断線や損傷するのを抑制できる。さらに、切欠き24からケース20内の磁気抵抗効果素子30の位置確認を行うことができる。そして、磁気抵抗効果素子30の固定後に、ケース20の切欠き24からフレキシブルプリント基板50をケース20の内部へ入れて封止することができる。従って、不定型のフレキシブルプリント基板50と共に磁気抵抗効果素子30をケース20内に組み込む際の作業性を向上させることができる。また、磁気抵抗効果素子30を精度良く位置決めして固定することができる。
【0055】
本形態では、フレキシブルプリント基板50は、ケース20の切欠き24の幅より細い第1部分51と、第1部分51の幅と同じ方向の幅が切欠き24の幅より太い第2部分52を備え、第1部分51を切欠き24に通すことによってフレキシブルプリント基板50をケース20の外部へ引き出した状態で、磁気抵抗効果素子30を押圧して硬質接着剤70を硬化させて固定する作業を行う。そして、固定後にフレキシブルプリント基板50の第2部分52をケース20内へ戻して、第2部分52をケース20に設けられた保持部25に引っ掛けて保持させる。本形態では、第2部分52は第1部分51の幅方向の一方側へ突出する突出部521、および第1部分51の幅方向の他方側へ突出する突出部522を備えており、保持部25はケース20の内面に形成された凹部であるため、突出部521、522を凹部に配置するだけでケースに保持させることができる。このようにすると、フレキシブルプリント基板50をケース20に安定した状態で保持させることができ、フレキシブルプリント基板50がケース20から飛び出さないようにすることができる。また、第2部分52をケース20の保持部25に引っ掛けるだけでよいため、フレキシブルプリント基板50を容易にケース20に保持させることができる。
【0056】
本形態では、フレキシブルプリント基板50の第2部分52をケース20内へ戻してケース20に保持させた後に、第2接着剤である軟質接着剤60をケース20内へ入れてケース20内を封止する。このように、ケース20内を封止することにより、フレキシブルプリント基板50を保護できるため、フレキシブルプリント基板50の断線や損傷を抑制できる。
【0057】
本形態では、ケース20の開口部23と保護部材40との隙間からセンサ面11の側へはみ出した硬質接着剤70を除去する。これにより、センサ面11に摺接するカード2と磁気抵抗効果素子30とのギャップを保護部材40の厚さによって制御できる。従って、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップを細かく制御でき、磁気抵抗効果素子30とカード2とのギャップを小さくすることができる。よって、ヨークを用いることなく検出精度を確保できる。
【0058】
(変形例)
(1)上記形態は、信号線54およびアース線55をフレキシブルプリント基板50に設けているが、信号線54およびアース線55をリード線などの他の配線部材によって構成することもできる。
【0059】
(2)上記形態は、磁気抵抗効果素子30をケース20に固定するために、開口部23に磁気抵抗効果素子30の上から軟質接着剤60を入れて第1接着剤層61を形成し、更に
、フレキシブルプリント基板50をケース20に封止するためにケース20に軟質接着剤60を入れて第2接着剤層62を形成しているが、第1接着剤層61と第2接着剤層62は異なる種類の接着剤であってもよいし、同一の接着剤であってもよい。
【0060】
(3)上記形態は、フレキシブルプリント基板50の第2部分52をケース20に保持させる保持部25は、ケース20の内面に形成された凹部であったが、単なる凹部でなく、ケース20の内面との間に第2部分52を保持するフック状の凸部をケース20の内面に設けることもできる。あるいは、ケース20の肉厚を大きくして、第2部分52を挿入可能な溝を設けることもできる。
【0061】
(4)上記形態は、磁気データが記録される媒体はカード2であったが、磁気データが記録されている媒体はカード以外の媒体であってもよい。