【解決手段】燃料電池回路を通る空気流を制御するためのシステムは、燃料電池スタックを含む。システムは同様に、気体の圧力に影響を及ぼすバルブ位置および、気体が中を流れ得るバルブの断面積に対応するバルブ面積を有するバルブも含んでいる。システムは同様に、バルブ面積をバルブ位置と相関させるマップまたは関数を記憶するように設計されたメモリも含む。システムは同様に、バルブを通る気体の所望の質量流量率を決定するかまたは受信し、所望の質量流量率を達成するための所望のバルブ面積を計算するためのECUをも含む。ECUは同様に、所望のバルブ面積をマップまたは関数と比較して、所望のバルブ面積を提供する所望のバルブ位置を決定し、所望のバルブ位置を有するようにバルブを制御するようにも設計されている。
前記気体の少なくとも一部分に前記燃料電池スタックを迂回させるように構成されたバイパス分岐をさらに含み、前記バルブが、前記バイパス分岐に沿って位置付けされたバイパスバルブであり、前記所望の質量流量率が前記バイパス分岐を通る前記気体の所望の質量流量に対応する、請求項1に記載のシステム。
前記バルブが、前記燃料電池スタックから下流側に位置設定された制限バルブであり、前記所望の質量流量率が前記燃料電池スタックを通る前記気体の所望の質量流量に対応する、請求項1に記載のシステム。
前記ECUがさらに、前記差分信号に対して比例−積分−微分(PID)制御装置を適用して、前記バルブ位置に対する所望の調整を決定し、前記バルブ位置に対する前記所望の調整により前記バルブ位置を変更することによって前記バルブ位置をさらに調整するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
前記ECUがさらに、前記バルブ位置に対する前記所望の調整の行き過ぎを減少させるために既定の閾値量だけ前記差分信号の値が減少するまでPID制御装置の積分項の組込みを遅延させるように構成されているか、または、
前記メモリはさらに、前記現在の圧力値が第1の所望の圧力値に収束した時点で前記PID制御装置の最終積分項を記憶するように構成され、前記ECUがさらに、開始積分項として前記記憶された最終積分項を用いて前記第1の所望の圧力値に向う後続する収束をPID制御装置に開始させるように構成されているか、
のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のシステム。
前記ECUがさらに、前記差分信号に対して比例−積分−微分(PID)制御装置を適用して、前記圧縮機速度に対する所望の調整を決定し、前記圧縮機速度に対する前記所望の調整により前記圧縮機速度を変更することによって前記圧縮機速度をさらに調整するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
前記ECUがさらに、前記圧縮機速度に対する前記所望の調整の行き過ぎを減少させるために既定の閾値量だけ前記差分信号の値が減少するまでPID制御装置の積分項の組込みを遅延させるように構成されているか、または、
前記メモリはさらに、前記現在の圧縮機流量率が第1の所望の圧縮機流量率に収束した時点で前記PID制御装置の最終積分項を記憶するように構成され、前記ECUがさらに、開始積分項として前記記憶された最終積分項を用いて前記第1の所望の圧縮機流量率に向う後続する収束をPID制御装置に開始させるように構成されているか、
のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のシステム。
前記ECUがさらに、前記トルク差分信号に対して比例−積分−微分(PID)制御装置を適用して、前記圧縮機トルク値に対する所望の調整を決定し、前記圧縮機トルク値に対する前記所望の調整により前記圧縮機トルク値を変更することによって前記圧縮機トルク値をさらに調整するように構成されており、
前記ECUがさらに、前記圧縮機トルク値に対する前記所望の調整の行き過ぎを減少させるために既定の閾値量だけ前記トルク差分信号の値が減少するまでPID制御装置の積分項の組込みを遅延させるように構成されているか、または、
前記メモリはさらに、前記現在の圧縮機トルク値が第1の所望の圧縮機トルク値に収束した時点で前記PID制御装置の最終積分項を記憶するように構成され、前記ECUがさらに、開始積分項として前記記憶された最終積分項を用いて前記第1の所望の圧縮機トルク値に向う後続する収束をPID制御装置に開始させるように構成されているか、
のうちの少なくとも1つである、請求項19に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、燃料電池スタックに対し気体を提供するのに使用される圧縮機およびバルブのフィードフォワードおよびフィードバック制御のためのシステムおよび方法について説明している。該システムは、フィードフォワードアクチュエータ制御を行なうための回路の等式ベースのモデルの使用などの現在の技術に比べ、さまざまな利点を提供する。フィードフォワード制御における等式ベースのモデルの使用は、有利にもより高い応答速度を提供し、流量および圧力値が現在の技術に比べ短時間でその目標に達することができるようにする。等式ベースのモデルの使用はさらに、アクチュエータの制御精度の増大というメリットを提供する。等式ベースのモデルの使用は同様に、有利にも、多数のメモリ集約的なルックアップテーブルを使用する可能性のある現在の技術に比べて、システムのメモリ所要量を削減する。
【0013】
システムは同様に、アクチュエータのフィードフォワード制御とアクチュエータのフィードバック制御を組合せるという利点も提供する。フィードバック制御は、燃料電池回路の異なる測定または推定パラメータに基づいて、各アクチュエータを制御する。これにより、有利にも、各アクチュエータを独立して制御することが可能になり、このことは、フィードバック制御の精度の増大というメリットを提供する。詳細には、フィードバック制御は、現在値と目標値を比較し、現在値と目標値の間の隔たりを狭めるために比例−積分−微分(PID)制御装置を使用する。システムは、有利にも、積分飽和現象保護と呼ばれることのあるものにおけるPID制御装置の積分項の組込みを遅延させることができ、または、「学習値」と呼ばれることのあるものにおける新たなフィードバック制御インスタンスにおいて先に記憶した積分項を使用することができる。積分飽和現象保護または学習値の使用は、有利にも、フィードバック制御の行き過ぎの尤度を削減し、その結果制御精度は高くなる。
【0014】
一例示的システムは、燃料電池スタックおよび、システムを通して空気を吹き込む圧縮機とシステム全体を通して空気流および圧力に影響を及ぼす少なくとも1つのバルブとを含むアクチュエータを含む。該システムは同様に、電子制御ユニット(ECU)も含んでいる。ECUは、さまざまな構成要素を通る所望の質量流量率、圧縮機の所望の加速度および1つ以上の構成要素に対応する所望の圧力値などの、システムの目標パラメータまたは所望のパラメータを決定または受信することができる。さまざまな等式を用いて、ECUは、パラメータが目標または所望の値に達するようにするべくアクチュエータを制御することができる。
【0015】
ECUは、同様にして、システムの検出された、または推定された現在のパラメータを受信することができる。ECUは、現在のパラメータを目標パラメータと比較し、現在のパラメータと目標のパラメータの間の差を決定することができる。このとき、ECUは、この差をPID制御装置に提供することができ、このPID制御装置は、現在のパラメータと目標パラメータの間の隔たりを狭めるためにECUが次に使用し得る信号を出力する。
【0016】
図1に目を向けると、車両100には、燃料電池に対し空気などの気体を提供するためのシステム101の構成要素が含まれている。詳細には、車両100およびシステム101は、ECU102とメモリ104を含む。車両100はさらに、動力源110を含み、この動力源は、エンジン112、モータ発電機114、バッテリ116または燃料電池回路118のうちの少なくとも1つを含むことができる。燃料電池118は、システム101の一部であってよい。
【0017】
ECU102は、車両100の構成要素の各々に結合されてよく、自動車システム用に特別に設計され得る1つ以上のプロセッサまたは制御装置を含んでいてよい。ECU102の機能は、単一のECU中または多数のECU中で実装可能である。ECU102は、車両100の構成要素からデータを受信することができ、受信したデータに基づいて決定を行なうことができ、これらの決定に基づいて構成要素の動作を制御することができる。
【0018】
一部の実施形態においては、車両100は、完全に自律式であるかまたは半自律式であり得る。この点に関して、ECU102は、出発場所から目的地まで車両100を操作するための車両100のさまざまな側面(例えばステアリング、制動、加速など)を制御することができる。
【0019】
メモリ104は、当該技術分野において公知の任意の非一時的メモリを含むことができる。この点に関して、メモリ104は、ECU102が使用できる機械可読命令を記憶することができ、ECU102が要求する、または車両メーカーまたは運転者がプログラミングする他のデータを記憶することができる。メモリ104は、燃料電池回路118のモデルを記憶することができる。このモデルは、燃料電池回路118のさまざまなパラメータを推定するのに使用可能な等式または他の情報を含むことができる。
【0020】
エンジン112は、燃料を機械的動力に変換することができる。この点に関して、エンジン112は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどであってよい。
【0021】
バッテリ116は、電気エネルギを貯蔵することができる。一部の実施形態において、バッテリ116は、バッテリ、フライホイール、スーパーキャパシタ、熱貯蔵デバイスなどを含む任意の1つ以上のエネルギ貯蔵デバイスを含むことができる。
【0022】
燃料電池回路118は、電気エネルギを生成するための化学反応を促進する複数の燃料電池を含むことができる。例えば、燃料電池は水素および酸素を受取り、水素と酸素間の反応を促進し、この反応に応答して電気を出力することができる。この点に関して、燃料電池回路118により生成される電気エネルギは、バッテリ116内に貯蔵されてよい。一部の実施形態では、車両100は、燃料電池回路118を含めた多数の燃料電池回路を含んでいてよい。
【0023】
モータ発電機114は、バッテリ内に貯蔵された電気エネルギ(または燃料電池回路118から直接受取った電気エネルギ)を、車両100の推進に使用可能な機械的動力に変換することができる。モータ発電機114はさらに、エンジン112または車両100の車輪から受取った機械的動力を電気に変換することができ、この電気は、エネルギとしてバッテリ116内に貯蔵されかつ/または車両100の他の構成要素により使用されてよい。一部の実施形態において、モータ発電機114は同様に、または代替的に、推力を生成する能力を有するタービンまたは他のデバイスを含むことができる。
【0024】
ここで
図2を参照すると、燃料電池回路118の追加の詳細が例示されている。詳細には、燃料電池回路118は、空気取入口200、空気清浄器202、圧縮機204、中間冷却器206、燃料電池スタック208、バイパス分岐210、このバイパス分岐210に沿って位置付けされたバイパスバルブ212および、制限バルブ214を含む。
【0025】
空気取入口200は、
図1の車両100の外側などの周囲環境から空気を受取ることができる。一部の実施形態において、空気取入口200は、受取った空気から塵埃をフィルタリングするフィルタを有することができる。空気清浄器202は、空気取入口200から受け取った空気から塵埃または不純物を除去する能力を有するフィルタまたは他のデバイスを含むことができる。
【0026】
圧縮機204は、空気を加圧する能力を有するターボ圧縮機または他の圧縮機であってよい。この点に関して、圧縮機204は、清浄器202から空気を吸引し、加圧空気を出力することができる。
【0027】
図3を簡単に参照すると、
図2の圧縮機204として例示的圧縮機300を使用することができる。詳細には、圧縮機300は、本体302を含み、この本体を通って空気が吸引され得る。複数の翼を含み得るインペラ304が、本体302の内側に位置設定されてよい。モータ306(または他のトルク源)は、一定の回転速度で一定のトルクを有する機械的動力を生成でき、ギヤボックス308が、シャフト310を介してこのパワーを受取ることができる。ギヤボックス308は、モータ306から受取ったパワーを、異なるトルクおよび回転速度を有するパワーに変換することができる。ギヤボックス308からの機械的動力は、シャフト312を介してインペラ304に適用され得る。圧縮機300により出力される気体の圧力は、インペラ304に加えられる機械的動力のトルクおよび速度に左右され得る。
【0028】
図2に戻って参照すると、燃料電池回路118はさらに、中間冷却器206を含んでいてよい。中間冷却器206は、圧縮機204から空気を受取ることができ、同様に冷却液などの流体を受取ることもできる。中間冷却器206は空気から冷却液に熱を伝達できるか、または、冷却液から空気に熱を伝達することができる。この点において、中間冷却器206は、燃料電池回路118を通って流れる空気の温度を調整することができる。
【0029】
燃料電池スタック208は複数の燃料電池を含み得る。燃料電池は、中間冷却器206からの空気と共に水素を受取ることができる。燃料電池は、空気中の酸素と水素の間の化学反応を促進することができ、これにより電気が生成され得る。
【0030】
中間冷却器206からの空気を分割して、空気の一部が燃料電池スタック208を通って流れ、一部がバイパス分岐210を通って流れるようにすることができる。この点において、バイパス分岐210を通って流れる空気は、燃料電池スタック208を通って流れることができない。バイパスバルブ212は、調整可能なバルブ位置を有し得る。バイパスバルブ212の調整可能なバルブ位置は、バイパス分岐210を通る空気流の量を調整するように、かつ同様に燃料電池スタック208を通る空気流の量を調整するように制御可能である。例えば、バイパスバルブ212が100パーセント(100%)閉じている場合には、燃料電池回路118を通る空気流の全てが燃料電池スタック208を通って流れる。
【0031】
論述中では燃料電池回路118を通る空気流について言及されているが、当業者であれば、他の任意の気体流で空気流を置換することも可能であり、それによって本開示の範囲から逸脱することはない、ということを認識するものである。
【0032】
制限バルブ214も同様に、調整可能なバルブ位置を有することができる。制限バルブ214の調整可能なバルブ位置は、燃料電池スタック208内部の空気の圧力を調整するように制御され得る。例えば、燃料電池スタック208内部の圧力は、制限バルブ214を閉じることによって増大させることができ、制限バルブ214を開くことによって低減させることができる。
【0033】
図1および2を参照すると、圧縮機204、バイパスバルブ212および制限バルブ214の各々を、アクチュエータとみなすことができ、ECU102により制御することができる。例えば、ECU102は、車両のドライバから動力要求を受信し得る(または、自律または半自律車両においては動力要求を生成し得る)。ECU102は、動力要求を、燃料電池回路118内部の特定の場所における望ましい圧力または空気流に対応する望ましい圧力または流量値に変換することができる。ECU102は次に望ましい圧力または流量値を達成するために、圧縮機204、バイパスバルブ212および制限バルブ214の各々を制限することができる。
【0034】
燃料電池回路118はさらに、流量センサ216および圧力センサ218を含むことができる。流量センサ216は、圧縮機204を通して気体の流量(質量流量)を検出することができる。圧力センサ218は、中間冷却器206の出口における気体の圧力を検出することができる。
【0035】
燃料電池回路118はさらに、複数のパイプ220を含み得る。例えば、複数のパイプは、取入口200から空気清浄器202まで気体を移送する第1のパイプ222、および空気清浄器202から流量センサ216まで気体を移送する第2のパイプ224を含み得る。一部の実施形態において、取入口200、空気清浄器202または流量センサ216のうちの2つ以上は、パイプを一切使用せずに直接連結可能である。
【0036】
ここで
図2および4を参照すると、ECU102は、燃料電池回路118を制御するためのさまざまなプロセスまたは機能を含んでいてよい。ECU102の内部のプロセスまたは機能は、各々ハードウェア内で実装され得る(すなわち専用ハードウェアにより行なわれる)か、ソフトウェア内で実装され得る(すなわちメモリ内に記憶されたソフトウェアを実行する汎用ECU)か、またはハードウェアおよびソフトウェアの組合せを介して実装され得る。
【0037】
詳細には、ECU102は状態メディエータ400を含むことができる。状態メディエータ400は、望ましい圧力および/または流量値(すなわち少なくとも1つの目標圧力値または少なくとも1つの目標流量値)に対応する制御信号402を受信することができる。制御信号402は同様に、動力要求に対応し得る。状態メディエータ400は、目標圧力および流量値を分析し、燃料電池回路118の力学に基づいて目標値が実現可能であるか否か、および目標値を満たそうとする中で燃料電池回路118の1つ以上の構成要素が損傷を受けた状態になる可能性があるか否かを決定する。次に、状態メディエータ400は、メディエートされた目標値404を出力することができる。
【0038】
ECU102は、さらに状態エスティメータ406を含んでいてよい。状態エスティメータ406は、流量センサ216および圧力センサ218により検出されたセンサデータ408と共にメディエートされた目標値404を受信することができる。状態エスティメータ406は、燃料電池回路118(複数のパイプ220を含む)の各構成要素に対応する現在の圧力値および流量値を計算または推定することができる。状態エスティメータ406は、現在の推定値410を出力することができる。一部の実施形態において、状態エスティメータ406は同様に、メディエートされた目標値404を決定または調整することもできる。
【0039】
ECU102は同様に、経路制御装置412も含み得る。経路制御装置412は、メディエートされた目標値404と共に、現在の推定値410を受信することができる。経路制御装置412は、現在の推定値410からメディエートされた目標値404までの望ましい経路を識別することができる。経路制御装置412は、現在の推定値410からメディエートされた目標値404までの望ましい経路に沿って存在する望ましい中間目標414を決定し出力することができる。
【0040】
ECU102は同様に、フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416を含むこともできる。フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416は、現在の推定値410と共に望ましい中間目標414を受信することができる。フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416は、燃料電池回路118のアクチュエータの動作を制御し得る制御信号418を決定し出力することができる。
【0041】
ここで
図2、4、5Aおよび5Bを参照すると、現在の推定値410を推定する方法500は、システム101の構成要素、例えば状態エスティメータ406によって行なわれてよい。ブロック502において、ECU102は、アクチュエータの望ましい動作に対応する制御信号、例えばメディエートされた目標値404を決定または受信することができる。例えば、制御信号は、燃料電池回路118を全体を通したさまざまな場所における目標圧力および流量値を含むかまたはこれらに対応していてよい。上述のように、燃料電池回路118全体を通した圧力および流量値を調整するために、圧縮機204、バイパスバルブ212および制限バルブ214を制御することができる。
【0042】
ブロック504において、流量センサ216および圧力センサ218は、圧縮機204を通って流れる気体の現在の質量流量値および中間冷却器206の出口における気体の圧力に対応する現在の圧力値を検出し得る。
【0043】
ブロック506において、ECU102は、構成要素の特性、アクチュエータの設定値および流量センサ216により検出された質量流量に基づいて、燃料電池回路の構成要素を通る気体の質量流量値を計算することができる。質量流量は直列に連結された構成要素を通して比較的恒常にとどまることから、フロースプリット226から上流側の全てのパイプと共に取入口200、清浄器202、圧縮機204および中間冷却器206の各々を通る質量流量は流量センサ216によって検出される質量流量に等しいと仮定することができる。
【0044】
ブロック506のサブブロックであり得るブロック508において、ECU102は、先行するバイパス圧力値に基づいてバイパス分岐210における気体の質量流量値または他の流量値を計算することができる。ECU102は、各時間ステップ中の燃料電池回路118の構成要素の各々における流量および圧力値を計算することができる。例えば、各時間ステップは、0.04秒、0.08秒、0.16秒などであってよい。
【0045】
ECU102は先にバイパス分岐210を通る流体の圧力を計算していることから、ECUは、バイパス分岐を通る現在の流量を計算する目的で先行する時間ステップ中に計算された先に計算されたバイパス圧力値を使用することができる。例えば、ECUは、圧力値として先に計算されたバイパス圧力値を使用してバイパス分岐を通る現在の流量を計算するために、以下で論述する等式1、2、3または4の1つ以上を使用することができる。方法500の最初の反復中に、ECU102は、先に割当てられた初期圧力値に基づいて現在の流量値を計算することができる。一部の実施形態においては、ECU102は同様に、または代りに、先に決定された燃料電池圧力値に基づいて燃料電池スタック208を通る現在の流量値を計算することができる。
【0046】
いくつかの状況下では、バイパスバルブ212は閉鎖され、こうしてバイパス分岐210を通る空気流を制限することができる。このような状況下では、ECU102は、燃料電池スタック208を通る質量流量が流量センサ216により検出された質量流量に等しいと仮定することができる。
【0047】
ECU102は、バイパス分岐210および燃料電池スタック208を通る流量の和が流量センサ216によって検出される質量流量に等しいと仮定することができる。この点に関して、ECU102は、流量センサ216によって検出された質量流量からバイパス分岐210を通る流量を減算することによって燃料電池スタック208を通る現在の流量値を計算することができる。
【0048】
ブロック510において、ECU102は、燃料電池スタック208により出力される電流の量を計算または受信することができる。例えば、1つ以上のセンサ(図示せず)が燃料電池スタック208に結合されてよく、電流出力レベルを検出し得る。別の例として、ECU102は、燃料電池スタック208を通る空気流、燃料電池スタック208の動力要求などのさまざまな入力に基づいて、燃料電池スタック208により出力される電流の量を計算するための論理を含んでいてよい。
【0049】
ブロック512において、ECU102は、燃料電池スタック208により出力された電流に基づいて、燃料電池スタック208における気体のモル分率を決定または計算することができる。このモル分率は、気体中に各成分がどれ程存在するかを表わす比または分率に対応する。例えば、気体が空気である場合、モル分率は空気中の酸素の百分率、空気中の窒素の百分率などを含み得る。一部の実施形態において、ECU102は、燃料電池スタック208内に流入する気体が標準空気であり、約21%の酸素と79%の窒素を含むと仮定し得る。ECU102は、次に、1つ以上の等式またはルックアップテーブルを用いて、燃料電池スタック208が消費する酸素の量を計算し、燃料電池スタック208の膜を横断する水素の量を計算し、燃料電池スタック208の陰極中に創出される液体水および/または水蒸気の量を計算することができる。例えば、陰極内で創出される液体水および/または水蒸気の量は、燃料電池スタック208からの電流要求の一関数であり得る。ルックアップテーブル/等式の結果に基づいて、ECU102は、燃料電池スタック208によって出力される気体のモル分率を計算することができる。
【0050】
燃料電池スタック208は、残留気体に加えて水を出力することから、ECU102は、燃料電池スタック208内に流入する質量流量が、燃料電池スタック208による酸素消費の如何にかかわらず燃料電池スタック208から流出する気体の質量流量と同じであると仮定することができる。
【0051】
しかしながら、燃料電池スタック208による酸素消費は、燃料電池スタック208により出力される気体が燃料電池スタック208により受取られる気体とは異なる粘度を有するという結果をもたらす可能性がある。この点に関して、ブロック514において、ECU102は、計算されたモル分率に基づいて、燃料電池スタックにより出力される気体の粘度を決定するために、等式またはルックアップテーブルを使用することができる。以下で論述するように、気体の粘度は、燃料電池回路118全体にわたる複数の場所における気体の圧力を決定するために使用されるレイノルズ数に影響を及ぼす。
【0052】
ブロック516において、ECUは、燃料電池回路118の各構成要素を通って流れる気体のレイノルズ数を決定することができる。例えば、ECU102は、以下の等式1:
等式1:
【数1】
に類似する等式を用いてレイノルズ数を決定することができる。
【0053】
等式1において、Reはレイノルズ数を表わし、mはブロック506および508において決定された質量流量を表わし、Dは気体が中を流れることのできる構成要素(アクチュエータおよびパイプ220を含む)の直径を表わし、Aは気体が中を流れることのできる構成要素の断面積を表わし、μはブロック514において計算された動的粘度を表わす。DおよびAは両方共、各構成要素について公知の値であり、メモリ内に記憶され得る。
【0054】
ブロック518において、ECU102は、レイノルズ数に基づいて各構成要素を通る気体の層流、乱流または混合流量値を計算することができる。例えば、流量値は、ダーシーの摩擦係数値として提供され得る。ECU102は、レイノルズ数に基づいて、各構成要素を通る流れが層流、乱流または混合流(すなわち層流と乱流の組合せ)のいずれであるかを決定することができる。例えば、レイノルズ数が上位流量閾値より大きい場合には、流れは乱流であり、これはすなわち、流れが圧力および流速のカオス的変化により特徴付けされ得るということを意味している。レイノルズ数が下位流量閾値より低い場合には、流れは層流であり、これはすなわち、気体が平行層の形で流れ、層間にほとんどまたは全く途絶が無いことを意味している。レイノルズ数が下位流量閾値と上位流量閾値の間である場合には、流れは、層流と乱流の両方の特徴を示し、混合流であるとみなされる。上位流量閾値は、流れが純粋に乱流であるか否かを示す閾値である(流れは、対応するレイノルズ数が上位流量閾値より大きい場合に純粋に乱流である)。下位流量閾値は、流れが純粋に層流であるか否かを示す閾値である(流れは、対応するレイノルズ数が下位流量値より低い場合に純粋に層流である)。
【0055】
流れが層流、乱流または混合流のいずれであるかを決定した後、ECU102は、以下の等式2および3を用いて流量値を計算することができる。等式2は、流れが乱流である場合に使用すべきものであり、等式3は、流れが層流である場合に使用すべきものであり、流れが混合流である場合には等式2および3を使用すべきである:
等式2:
【数2】
【0056】
等式2中、fは対応する流れのタイプ(すなわち乱流)についてのダーシー摩擦係数を表わす。Reはブロック516で計算されたレイノルズ数を表わす。Roughnessは、気体が中を流れている材料の粗度であり、材料の公知の特性である。Dは気体が中を流れ得る構成要素(アクチュエータおよびパイプ220を含む)の直径を表わす:
等式3:
【数3】
【0057】
等式3中、fは対応する流れのタイプ(すなわち層流)についてのダーシー摩擦係数を表わし、Reはブロック516中で計算されたレイノルズ数を表わす。
【0058】
流れが混合流であることをレイノルズ数が示している場合には、ECU102は、層流についてのダーシー摩擦係数と乱流についてのダーシー摩擦係数(すなわち等式2および3の結果)の間の線形補間を用いて、流れの値を計算することができる。補間は、上位流量閾値と下位流量閾値の間のレイノルズ数の場所に基づくものであり得る。例えば、乱流についてのダーシー摩擦係数には、レイノルズ数が下位流量閾値よりも上位流量閾値に近い場合、補間中により多くの重みが提供され得る。別の例として、レイノルズ数が直接上位流量閾値と下位流量閾値の間にある場合には、流れ全体についてのダーシー摩擦係数は、層流についてのダーシー摩擦係数と乱流についてのダーシー摩擦係数の平均に等しくなる。
【0059】
ブロック520において、ECU102は、層流、乱流または混合流量値に基づいて、パイプ220を含めた各構成要素の入口および出口における圧力値を計算することができる。詳細には、流れが純粋に層流または純粋に乱流である場合には、ECU102は、以下の等式4を用いて圧力値を計算することができる。
等式4:
【数4】
【0060】
等式4において、△Pは、構成要素全体にわたる圧力降下を表わし、これは構成要素の入口と構成要素の出口における圧力間の差に対応している。Lは、気体が中を流れる構成要素の長さを表わす。Leは、気体が中を流れる構成要素の等価長を表わす。Rは、気体の比気体定数を表わし、ジュール/(モル×ケルビン)の値を有する。T
upは、構成要素の高圧側(すなわちもう一方の側に比べて高い圧力を受けるまたは現在受けている構成要素の側)における気体の温度を表わす。fは、ブロック518で計算された流れのダーシー摩擦係数を表わす。Dは、気体が中を流れ得る構成要素の直径を表わし、Aは、気体が中を流れ得る構成要素の部分の断面積を表わし、P
upは、構成要素の高圧側における気体の圧力を表わす。
【0061】
流れが混合流である場合には、ECU102は、以下の等式5を用いて圧力値を計算することができる。
等式5:
【数5】
【0062】
等式5において、△Pは構成要素全体にわたる圧力降下を表わし、これは構成要素の入口と構成要素の出口における圧力間の差に対応している。Re
turbは上位流量閾値を表わし、Re
lamは下位流量閾値を表わし、これらは共に以上でブロック518を参照して論述されたものである。Reはブロック516で計算されたレイノルズ数を表わす。mはブロック506および508で決定された質量流量を表わす。Lは、気体が中を流れる構成要素の長さを表わす。Leは、気体が中を流れる構成要素の等価長を表わす。Rは、気体の比気体定数を表わし、ジュール/(モル×ケルビン)の値を有する。T
upは構成要素の高圧側における気体の温度を表わす。fはブロック518で計算された流量値を表わす。Dは気体が中を流れ得る構成要素の直径を表わし、Aは気体が中を流れ得る構成要素の部分の断面積を表わし、P
upは構成要素の高圧側における気体の圧力を表わす。
【0063】
上述の等式4および5は、圧力降下を提供するものの、構成要素の出口および入口における特定の圧力値を提供しない。しかしながら、ECU102は、計算された圧力降下、圧力センサ218により検出された圧力に基づき、かつ取入口200の入口232およびバルブ212、214の出口234における圧力が周囲圧力に等しいと仮定することによって、特定の圧力値を計算または決定することができる。
【0064】
例えば、圧縮機204の入口228および圧縮機204の出口230における気体の圧力を見出すために、ECU102は、取入口200、第1のパイプ222、清浄器202および第2のパイプ224全体にわたる圧力降下をまず決定することができる。ECU102は、次に、周囲圧力からの取入口200全体にわたる圧力降下を加算または減算して、取入口200の出口236における圧力を決定することができる。ECUはこのようにして、圧縮機204の入口228における圧力が分かるまで、第1のパイプ222、清浄器202および第2のパイプ224の入口および出口圧力を決定し続けることができる。
【0065】
ECU102は次に、第3のパイプ238、中間冷却器206および第4のパイプ240全体にわたる圧力降下を決定することができる。ECU102は次に、圧力センサ218により検出された圧力からの第4のパイプ240全体にわたる圧力降下を減算または加算して、中間冷却器206の入口242における圧力を決定することができる。ECU102は、圧縮機204の出口230における圧力が見出されるまで、このようにして続行することができる。
【0066】
ECU102は、燃料電池スタック208の入口および出口、バルブ212、214およびその間のパイプにおける絶対圧力値を決定するために、類似の戦略を用いることができる。
【0067】
ブロック522において、ECUは、計算値の変化率を制限するためにレートリミッタを実装することができる。燃料電池回路118内部の気体は動的圧縮性を示す可能性があり、したがって、構成要素間で遅延が発生し得る。等式は、動的圧縮性が流量および圧力値に影響を及ぼすことができないという仮定に基づいて値を計算するために使用されることから、計算値が測定値と異なる場合があり得る。この点に関して、レートリミッタはこのような遅延を考慮し得る。例えば、レートリミッタは、構成要素204による空気の圧縮開始と出口230における圧力の規定値到達の間には幾分か遅延が発生するという事実に起因して、圧縮機204の出口230における圧力の変化率を特定の変化率に制限することができる。
【0068】
ここで
図2、4、6Aおよび6Bを参照すると、ECU102の経路制御装置412の機能を果たすために、方法600を使用することができる。この方法600は、例えば
図1のECU102、メモリ104などのシステムのさまざまな構成要素により行なわれ得る。
【0069】
ブロック602では、メモリ内に多数のマップが記憶され得る。マップは、速度マップ、圧縮機流量マップ、圧縮機圧力比マップ、燃料電池流量率マップおよび圧縮機トルクマップを含み得る。
【0070】
図7を簡単に参照すると、速度マップ700が示されている。速度マップ700は、燃料電池回路の圧縮機に対応し、圧縮機を通る質量流量に対応するX軸、圧縮機を横断した圧力比に対応するY軸、および圧縮機の異なる速度(例えば角速度)に対応する多重速度ライン702を有する。圧縮機の望ましい状態変化を、速度マップ700上でプロットすることができる。図示されているように、初期状態が、初期状態704において示され、最終目標状態が最終目標状態706で示されている。圧縮機が初期状態704から最終目標状態706まで移動するにつれて、圧力比、質量流量および圧縮機速度の3つの値全てが低減した。
【0071】
速度マップ700はさらに、急上昇領域710および失速領域712を含む。圧縮機の現在の状態が急上昇領域710または失速領域712内に入るのは望ましくない。この点に関して、あらゆる現在の状態が許容可能領域714内にとどまるように圧縮機の状態変化を制御することが望ましいと考えられる。
【0072】
速度マップ700は、急上昇経路716、失速経路および中間経路720を含めた2つ以上の経路を含むことができる。各々の経路716、718、720は、0速度状態722から最大速度ライン724まで延在し、各々、圧縮機の望ましい状態進捗を表わし得る。
【0073】
図6Aに戻って簡単に参照すると、圧縮機流量、圧縮機圧力比、燃料電池流量率または圧縮機トルクのうちの1つを先導または基準状態と呼ぶことができる。基準状態は、システムにとっての状態の重要性またはハードウェアの保護にとっての状態の重要性に基づいて選択され得る。一部の実施形態において、基準状態は圧縮機空気流であり得る。残りの状態は各々後続状態であり得、これはすなわち、それらの進捗が先導状態に基づいて定義されることを意味している。
【0074】
図7および8を参照すると、例示的な1組の圧縮機流量マップ800が示されている。この圧縮機流量マップ800のセットには、急上昇経路716に対応する急上昇圧縮機流量マップ802、中間経路720に対応する中間圧縮機流量マップ804、および、失速経路718に対応する失速圧縮機流量マップ806が含まれ得る。
図8に示された圧縮機流量マップ800の各々は、圧力比、質量流量率および圧縮機速度が減少するよう意図されている状況に対応し得る。メモリは、圧力比、質量流量率および圧縮機速度が増大するよう意図されている状態に対応する追加の1組の圧縮機流量マップを記憶し得る。この点において、ECUは、圧縮機速度が減少するように意図されている場合、圧縮機流量マップ800のセットを選択することができ、圧縮機速度が増大するよう意図されている場合、圧縮機流量マップの代替的セットを選択することができる。
【0075】
初期状態が急上昇経路716、中間経路720または失速経路718のいずれかの上にある場合には、ECUは、対応する圧縮機流量マップを選択することができる。例えば、初期状態が中間経路720上にある場合には、ECUは、圧縮機流量率を制御するために中間圧縮機流量マップ804を選択できる。
【0076】
メモリは、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクの各々について、類似のマップセットを記憶することができる。
【0077】
図示されているように、圧縮機流量マップ800の各々は正規化されており、正規化された基準進捗(NRP、または正規化基準状態値)に対応する0から1までの正規化されたY軸値を有する。この点に関して、マップ800は、任意の初期状態(0に対応)から任意の最終目標状態(1に対応)までの圧縮機空気流状態の望まれる経路を提供することができる。圧縮機空気流状態は先導状態であることから、圧縮機流量マップ800のX軸は時間に対応する。
【0078】
簡単に
図9を参照すると、例示的燃料電池流量率マップ902が示されている。燃料電池流量率状態は、後続状態であり、これはすなわち、その進捗が圧縮機空気流の完了百分率に基づくものであることを意味している。図示されているように、燃料電池流量率マップ902のY軸は、正規化されたフォロワ進捗(NFP、または正規化フォロワ状態値)に対応する0から1までの正規化された値を有する。しかしながら、燃料電池流量率は、後続状態であることから、燃料電池流量率マップ902のX軸は、圧縮機空気流の正規化された基準進捗(NRP)に対応する。この点において、燃料電池流量率の進捗は、正規化基準進捗に基づいて制御される。
【0079】
図4、6Aおよび6Bに戻って参照すると、ブロック604において、ECU102は、圧縮機流量率、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクの各々について最終目標値を決定または受信することができる。例えば、最終目標値は、状態メディエータ400から受信され得る。最終目標値は、アクセルペダルの踏込みなどのドライバ入力に対応するかまたは自律または半自律車両におけるECU102による制御に対応し得る燃料電池スタックの動力要求に基づいて設定され得る。
【0080】
ブロック606において、ECU102は、圧縮機流量率、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクの各々についての初期値または現在値を決定することができる。例えば、ECU102は、状態エスティメータ406からかまたは、フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416からのアクチュエータ制御信号418からの推定値410の1つ以上に基づいて、現在値を決定ことができる。
【0081】
ブロック608において、ECU102は、最終目標値が初期値または現在値よりも大きい場合、圧縮機流量率、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクの各々について第1のマップセットを選択することができ、最終目標値が初期値または現在値より小さい場合には、第2のマップセットを選択することができる。例えば、
図7および8を参照すると、ECUは、最終目標状態706が初期状態704より小さいことから、マップセット800を選択することができる。最終目標状態が初期状態より大きい状況においては、ECUは、圧縮機流量マップの代替的セットを選択することができる。
【0082】
図4、6Aおよび6Bに戻って参照すると、ECU102は、速度マップ上の第1の経路と第2の経路の間で現在の圧縮機流量率を補間することによって、正規化された圧縮機流量値を補間することができる。例えば、
図7を参照すると、ECUは、初期状態704に最も近い2つの経路であることを理由として失速経路718および中間経路720の間で初期状態704の現在の圧縮機流量率を補間することによって、正規化された圧縮機流量値を決定することができる。
【0083】
図4、6Aおよび6Bに戻って参照すると、ECU102は、正規化された圧縮機流量値に基づいて、圧縮機流量率、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクについての補間されたマップを作成することができる。例えば、
図7および8を参照すると、正規化された圧縮機流量値は、制御(または補間済み)経路の75%が失速経路718に基づいているはずであり、制御経路の25%が中央経路720に基づいているはずであることを標示し得る。
【0084】
この決定に基づき、ECU102は、正規化された圧縮機流量値に基づいて中間圧縮機流量マップ804と失速圧縮機流量マップ806の間を補間することによって、補間済み圧縮機流量マップ810を作成することができる。この点に関して、補間済み圧縮機流量マップ810は、失速圧縮機流量マップ806と中間圧縮機流量マップ804とを組合せ、失速圧縮機流量806に75%でそして中間圧縮機流量マップ804に25%で重み付けを行なうことによって、作成され得る。補間済み圧縮機流量マップ810は、特定の初期状態704に基づいて圧縮機流量率の望ましい進捗を標示することができる。ECU102は、同様にして、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクの各々について補間済みマップを作成することができる。
【0085】
図4、6Aおよび6Bに戻って参照すると、ECU102は、以下の等式6と共に補間済み圧縮機流量マップを用いて、中間目標圧縮機流量率を決定することができる。ECUは、さらに、ブロック604内の最終目標圧縮機流量率の決定または受信以降に経過した時間量に基づいて、中間目標圧縮機流量率を決定することができる。
【0086】
例えば、
図4、6A、6Bおよび8を参照すると、ECU102は、最初に、最終目標圧縮機流量率の決定以降に経過した時間量を識別することができ、次に、補間済み圧縮機流量マップ810上で対応する場所を位置設定することができる。例えば、ECU102は、0.2秒が経過したことを識別することができ、したがって、0.2秒に対応する正規化済み基準進捗値が0.2であることを決定することができる。
【0087】
ECU102は、このとき、以下の等式6中0.2の正規化基準進捗値を使用して、中間目標圧縮機流量率を決定することができる。
等式6:
【数6】
【0088】
等式6中、Int_tgt_comp_flowは、中間目標圧縮機流量率を表わす。startは、ブロック606中で決定された初期圧縮機流量率に対応し、targetは、ブロック604において決定された最終目標圧縮機流量率に対応する。NRPは正規化基準進捗値を表わす。
【0089】
図4、6Aおよび6Bに戻って参照すると、ブロック616において、ECU102は、初期圧縮機流量率から最終目標圧縮機流量率までの圧縮機流量率の完了百分率を決定することができる。一部の実施形態において、完了百分率は、正規化基準進捗値に対応するかまたはこれと等しいものであり得る。この点において、完了百分率は、ブロック616の代りにかまたこのブロック616に追加してブロック614内で識別または決定されてよい。
【0090】
ブロック618において、ECU102は、対応する補間済みマップ、初期値、目標値および完了百分率に基づいて、フォロワ状態について中間目標値を決定することができる。
【0091】
再び
図9を参照すると、基準または先導状態マップとして、補間済み圧縮機流量マップ810が示されている。燃料電池流量率マップ902は、同様に、補間済み燃料電池流量率マップ902であり得、フォロワ状態マップであり得る。さらに、補間済み圧縮機圧力比マップ904もフォロワ状態マップとして示される。圧縮機の加速は示されていないが、それもまたフォロワ状態とみなされてよく、1つ以上の対応する圧縮機加速マップを含み得る。
【0092】
図示されているように、燃料電池流量率マップ902および圧縮機圧力比マップ904は両方共、圧縮機流量(X軸)の正規化された基準進捗に基づいて、正規化フォロワ進捗値(Y軸)を示した。例えば、0.2秒後、圧縮機流量率に対応する正規化された基準進捗(すなわち完了百分率)は、0.2という値を有し得る(すなわち20%の完了を標示)。中間目標燃料電池流量率を決定する目的で、ECU102は、燃料電池流量率マップ902に対し0.2の正規化基準進捗値をまず適用することができ、これにより、約0.75の正規化フォロワ進捗(NFP)値が得られる。
【0093】
ECU102はこのとき、燃料電池流量率マップ902からの初期燃料電池流量率値、最終目標燃料電池流量率値および正規化フォロワ進捗を、以下の等式7に適用することができる。
等式7:
【数7】
【0094】
図6Aおよび6Bに戻って参照すると、等式7中、Int_tgt_fc_flowは、中間目標燃料電池流量率を表わす。startは、ブロック606中で決定された初期燃料電池流量率に対応し、targetは、ブロック604において決定された最終目標燃料電池流量率に対応する。NRPは燃料電池流量率の正規化フォロワ進捗値を表わす。
【0095】
ブロック620において、ECU102は、中間目標値に基づいて、燃料電池回路のアクチュエータ(圧縮機およびバルブを含む)を制御することができる。例えば、ECU102は、圧縮機流量率、圧縮機圧力比、燃料電池流量率および圧縮機トルクについての中間目標値に基づいて、圧縮機、バイパスバルブまたは制限バルブの少なくとも1つを制御することができる。
【0096】
ブロック622において、ECU102は、中間目標値を決定し、中間目標値が最終目標値と同じになるかまたは新しい最終目標値が決定または受信されるまで、中間目標値を達成するようにアクチュエータを制御し続けることができる。
【0097】
一部の実施形態においては、圧縮機の加速が付加的なフォロワ状態にあり得、このため、ECU102は、補間済みマップ、初期値、目標値および完了百分率に基づいて、圧縮機の加速についての中間目標値を決定することができる。加速率は、圧縮機の所望の加速率として、または圧縮機の所望の加速トルクとして、またはその両方として提供され得る。一部の実施形態において、
図2の経路制御装置412は、フォロワ状態としての所望の加速の設定以外の方法を用いて、所望の加速を決定することができる。
【0098】
ここで
図10を参照すると、
図6Aおよび6Bの方法600の例示的使用法が示されている。
図10は、3つの異なる時点における補間済み圧縮機流量マップ810、補間済み圧力比マップ904および中間目標圧力比値をプロットしたグラフ1006を例示している。第1の横列1000は、0秒での状態、第2の横列1002は0.3秒での状態、第3の横列1004は0.6秒での状態を例示する。
【0099】
第1の横列1000に示されているように、補間済み圧縮機流量率マップ810上の正規化基準進捗は、時間が0に等しいため0である。したがって、正規化基準進捗が0であることに起因して、補間済み圧力比マップ904の正規化フォロワ進捗も同様に0である。したがって、等式7にこれらの値を代入すると、約2.8という中間目標値が得られ、これは、初期値に対応する(正規化フォロワ進捗値は0であることから、項(target−start)*NFPも同様に0であり、こうして等式7の結果はstartとして残される)。
【0100】
第2の横列1002において示されているように、補間済み圧縮機流量マップ810上の正規化基準進捗は、約0.4であり、これは、補間済み圧縮機流量率マップ810に対して0.3秒を適用することによって決定される。したがって、補間済み圧力比マップ904の正規化フォロワ進捗は、約0.65に等しく、これは0.4の正規化基準進捗値に対応する。したがって、これらの値を等式7に代入すると、約1.3という中間圧力比目標値が得られる。
【0101】
第3の横列1004に示されているように、補間済み圧縮機流量率マップ810上の正規化基準進捗は1であり、これは、補間済み圧縮機流量率マップ810に0.6秒を適用することによって決定される。したがって、補間済み圧力比マップ904の正規化フォロワ進捗は1に等しく、これは、1という正規化基準進捗値に対応する。したがって、等式7にこれらの値を代入すると、1という中間圧力比目標値が得られる。したがって、
図6Aおよび6Bの方法600は、中間圧力比目標値が最終目標圧力比値に等しいことに起因して、終結または再開することができる。
【0102】
ここで
図2、4および11を参照すると、方法1100は、制限バルブ214またはバイパスバルブ212のいずれかのフィードフォワード制御を行なうため、フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416などのECU102により行なわれ得る。この点において、方法1100の第1のインスタンスを用いて制限バルブ214のフィードフォワード制御を行なうことができ、方法1100の第2のインスタンスを用いてバイパスバルブ212のフィードフォワード制御を行なうことができる。
【0103】
ブロック1102において、ECU102は、燃料電池回路内部の気体の所望の圧力を決定または受信することができる。例えば、所望の圧力は、燃料電池スタック208の入口244または出口246、圧縮機204の入口228または出口230における所望の圧力に対応し得る。例えば、所望の圧力は、状態メディエータ400により決定されてよく、制御信号402に基づくものであり得る。
【0104】
ブロック1104において、ECU102は、ブロック1102において決定または受信された気体の所望の圧力に基づいて、対応するバルブ(制限バルブ214またはバイパスバルブ212のいずれか)を通る気体の所望の質量流量率を決定することができる。例えば、所望の圧力は、燃料電池スタック208の出口246における所望の圧力に対応し得る。この点において、ECU102は、燃料電池スタック208の出口246における圧力が所望の圧力に達するようにする制限バルブ214を通る気体の所望の質量流量を計算することができる。例えばECU102は、以上の等式4に類似する等式を用いて所望の質量流量率を決定することができる。
【0105】
一部の実施形態において、経路制御装置412は、バルブを通る気体の所望の質量流量率を決定することができる。所望の質量流量率は、経路制御装置412により決定されるような中間目標質量流量率に対応し得る。例えば、経路制御装置412は、燃料電池回路118の構成要素(例えばバイパスバルブ212および制限バルブ214)を通る気体の所望の質量流量率および所望の圧力値を指示または提供することができる。
【0106】
一部の実施形態において、状態エスティメータ406は次に、現在未知である燃料電池回路118の各構成要素における圧力および流量値を計算または決定し、システムが目標状態を達成する場合には各構成要素における圧力および流量値を計算または決定することができる。例えば、状態エスティメータ406は、対応するバルブが所望の質量流量率に設定されている場合、各構成要素における圧力および流量値を計算または決定することができる。
【0107】
ブロック1106において、ECU102は、バルブを通って流れる気体に対応する現在のレイノルズ数を決定することができる。例えば、ECU102は、上述の等式1に類似した等式を用いて現在のレイノルズ数を決定することができる。
【0108】
ブロック1108において、ECU102は、現在の層流、亜音速流またはチョーク流を決定することができる。例えばECU102は、レイノルズ数に基づいて現在の層流、亜音速流またはチョーク流を決定することができる。最初に、ECU102は、バルブを通る流れが層流、亜音速流またはチョーク流のいずれであるかを決定することができる。レイノルズ数が第1の値範囲内にある場合には、ECUは、流れが層流であると決定することができる。レイノルズ数が第2の値範囲内にある場合には、ECU102は、流れが亜音速流であると決定することができる。レイノルズ数が第3の値範囲内にある場合には、ECU102は、流れがチョーク流であると決定することができる。
【0109】
流れが層流、亜音速流またはチョーク流のいずれであるかを決定した後、ECU102は、以下の等式8〜10の1つ以上を用いて、比流量値を決定することができる。
等式8:
【数8】
【0110】
流れが層流である場合には、等式8を使用する。等式8中、Ψは層流量値を表わす。γは、バルブを通って流れる気体の比熱比を表わし、一定圧力における気体の比熱に対する一定体積での気体の比熱の比に対応する。B
lamは、それを超えると流れが層流であると仮定される圧力比を表わす。P
dは、対応するバルブの低圧側における気体の圧力を表わし、P
uは対応するバルブの高圧側における気体の圧力を表わす。
等式9:
【数9】
【0111】
流れが亜音速流である場合には、等式9を使用する。等式9で使用されている変数は、Ψが亜音速流量値を表わしているという点を除いて、等式8における対応する変数と同じ意味を有する。
等式10:
【数10】
【0112】
流れがチョーク流である場合には、等式10が使用される。等式10で使用されている変数は、Ψがチョーク流量値であるという点を除いて、等式8中の対応する変数と同じ意味を有する。新たに導入された変数B
crは、臨界圧力比を表わし、以下の等式11を用いて計算することができる。
等式11:
【数11】
【0113】
等式11中、γは、等式8を参照して以上で説明したものと同じ意味を有する。
【0114】
現在の層流、亜音速流またはチョーク流量を決定した後、ECU102は、ブロック1110において所望の質量流量率を達成するための所望のバルブ面積を計算することができる。所望のバルブ面積は、気体が中を流れることのできるバルブの断面積に対応する。断面積は、バルブ位置を調整することによって変更できる。ECU102は、所望のバルブ面積について以下の等式12を解くことができる。
等式12:
【数12】
【0115】
等式12中、mは所望の質量流量率である。Cdは流出係数である。AはECU102が解くことのできる所望のバルブ面積である。R
sは比気体定数である。T
uはバルブの高圧側における温度であり、P
uはバルブの高圧側における圧力である。Ψはブロック1108で計算された現在の層流、亜音速流またはチョーク流量である。
【0116】
図1のメモリ104は、所望のバルブ面積を対応するバルブ位置と結び付けるマップまたは関数を記憶することができる。この点において、ブロック112では、ECU102は、ブロック1110で計算された所望のバルブ面積をマップまたは関数と比較して、この所望のバルブ面積に対応する所望のバルブ位置を決定することができる。換言すると、所望のバルブ位置にバルブを置くことにより、今度は、バルブが所望の質量流量率面積を有しこうしてバルブを通る所望の質量流量が達成されることになる。
【0117】
一部の実施形態において、関数には、ECU102が所望のバルブ面積を用いて等式を解き所望のバルブ位置を決定できるようにする等式が含まれ得る。例えば、ECU102は、以下の等式13に類似する等式を用いて、所望のバルブ位置について解くか、または所望のバルブ面積を所望のバルブ位置と結び付けるマップを投入することができる。
等式13:
【数13】
【0118】
等式13中、Aは所望のバルブ面積である。簡単に
図12を参照すると、バイパスバルブ212または制限バルブ214と同様のものであり得る例示的バルブ1200が、等式のさまざまなパラメータを例示するために示されている。等式13中、Dはバルブ1200の直径1202である。A
0はスロットル漏洩面積であり、cは独立変数であって以下の等式14に示されている。
等式14:
【数14】
【0119】
等式14中、aは以下の等式15で提供され、bは以下の等式16で提供される。
等式15:
【数15】
【0120】
等式15中、tはバルブ1200のスロットルシャフト直径1204として例示されるスロットルシャフト直径である。Dはここでも直径1202を表わす。
等式16:
【数16】
【0121】
等式16中、αはバルブプレート1210と長手方向軸1212の間の角度1208であり、バルブ1200のスロットル角度に対応する。α
0はバルブプレート1210と軸1212に直交するライン1214の間の角度1206であり、閉じたスロットル角度に対応する。αおよびα
0は両方共、ラジアン単位で測定されてよい。
【0122】
図2、4および11に戻って参照すると、ECU102は、等式13〜16を解いて所望のバルブ位置を決定することができる。例えば、ECU102は、所望のバルブ面積であるAについて等式13をまず解くことができる。Aの値に基づいて、ECU102は次に等式14を解いてbの値を識別することができ、その後αについて等式16を解くことができる。
【0123】
ECU102は、所望のバルブ位置を決定した後、ブロック1114において、所望のバルブ位置に置かれるようにバルブを制御することができる。この点において、所望のバルブ位置に置かれるようにECUがバルブを制御した後、バルブを通る質量流量は、ブロック1104で決定された所望の質量流量値に近いものとなり得る。ECU102は、バイパスバルブ212のために一回、方法1100を行なうことができ、制限バルブ214のために再び方法1100を行なうことができる。一部の実施形態において、ECU102は、方法1100の2つのインスタンスを同時に行なうことができる(すなわち、バイパスバルブ212のために方法1100の第1のインスタンスを行ない、同時に制限バルブ214のために方法1100の第2のインスタンスを行なうことができる)。
【0124】
ここで
図2、4、13Aおよび13Bを参照すると、圧縮機204のフィードフォワード制御を行なうため、例えばフィードフォワードおよびフィードバック制御機構416などの中で、ECU102によって方法1300が使用され得る。圧縮機204の制御には、速度制御およびトルク制御の両方が含まれ得る。方法1300は、互いに前後して発生する速度制御およびトルク制御を例示しているが、当業者であれば、速度制御およびトルク制御を同時に行なうこともできあるいは互いに前後して行なうこともできるということを認識するものである。
【0125】
ブロック1302においては、
図7の速度マップなどの速度マップをメモリ内に記憶することができる。速度マップは、所望の圧縮機流量率および所望の圧縮機圧力比を対応する所望の圧縮機速度または目標圧縮機速度と結び付けることができる。
【0126】
ブロック1304において、ECU102は、所望の圧縮機流量率および圧縮機を横断する圧力比に対応する所望の圧縮機圧力比を決定または受信することができる。例えば、所望の圧縮機流量率および所望の圧縮機圧力比は、経路制御装置412から受信され得る。
【0127】
ブロック1306において、ECU102は、所望の流量率および所望の圧力比を速度マップに比較して、所望の圧縮機速度を決定することができる。一部の実施形態において、ECU102は、所望の流量率および所望の圧力比に基づいて、所望の圧縮機速度を計算することができる。
【0128】
所望の圧縮機速度を計算した後、ECU102は、ブロック1308において所望の圧縮機速度を達成するために圧縮機204を制御することができる。
【0129】
ブロック1310において、ECU102は、現在の時間ステップで所望の圧縮機速度に対応する現在の所望の圧縮機速度を決定または受信することができる。例えば、現在の所望の圧縮機速度は、経路制御装置412から受信され得る。
【0130】
ブロック1312において、ECU102は、将来の時間ステップに対応する将来の所望の圧縮機速度を決定または受信することができる。一部の実施形態において、将来の時間ステップは、現在の時間ステップの直後の時間ステップであり得、一部の実施形態において、将来の時間ステップは現在の時間ステップを超えた多数の時間ステップであり得る。将来の所望の圧縮機速度は同様に経路制御装置412から受信され得る。
【0131】
ブロック1314において、ECU102は、現在の圧縮機速度と将来の所望の圧縮機速度の間の速度差を計算することができる。
【0132】
例えば、
図13A、13Bおよび14を簡単に参照すると、ブロック1310からブロック1314までの動作を行なうために制御システム1400が使用され得る。詳細には、所望の圧縮機速度1402が受信され得る。所望の圧縮機速度1402は、コンパレータ1404によって受信され得る。所望の圧縮機速度1402は同様に、第1の単位遅延ブロック1406および第2の単位遅延ブロック1408によって受信され得る。第1の単位遅延ブロック1406および第2の単位遅延ブロック1408の各々は、受信した所望の圧縮機速度1402を1以上の時間ステップだけ遅延させることができる。この点において、第2の単位遅延ブロック1408の出力を、先の所望の圧縮機速度1410と呼ぶことができ、所望の圧縮機速度1402は、先の所望の圧縮機速度1410よりも後の時点に対応するため、現在の所望の圧縮機速度1402と呼ぶことができる。一部の実施形態においては、第2の単位遅延ブロック1408の出力を、現在の所望の圧縮機速度と呼ぶことができ、所望の圧縮機速度1402は、それが第2の単位遅延ブロック1408により出力される速度に比べて将来のことである所望の速度に対応するという事実に起因して、将来の圧縮機速度と呼ぶことができる。
【0133】
コンパレータ1404は、先の(または現在の)所望の圧縮機速度1410と現在の(または将来の)所望の圧縮機速度1402とを比較し、2つの間の差に対応する速度差1412を出力することができる。
【0134】
図2、4、13Aおよび13Bに戻って参照すると、ブロック1316において、ECU102は、現在の時間ステップと将来の時間ステップの間の時間量に対応するこれら2つの間の時間遅延を決定することができる。
【0135】
ブロック1318において、ECU102は、圧縮機の所望の加速率を決定または受信することができる。所望の加速率は、ブロック1316において決定された時間遅延と共にブロック1314において決定された速度差に対応し得る。詳細には、ECU102は、速度差を時間遅延で除することができる。この除算の結果は、所望の加速率に対応する加速単位を提供する。
【0136】
一部の実施形態において、かつ上述の通り、経路制御装置412は、中間目標圧縮機加速値を提供することができ、この値は、所望の加速率として使用可能である。この点において、ブロック1310から1318は、経路制御装置412から所望の加速率を受信するブロックで置換可能である。一部の実施形態において、経路制御装置412は、所望の加速率の代りにまたはこれに加えて、圧縮機の所望の加速トルクを提供することができる。
【0137】
ブロック1320において、ECUは、ブロック1318で決定された所望の加速率に基づいて圧縮機の所望の加速トルクを決定することができる。詳細には、ECU102は、以下の等式17に類似する等式を用いて、圧縮機204の所望の加速トルクを決定することができる。
等式17:
【数17】
【0138】
等式17中、τ
accelerationは圧縮機204の所望の加速トルクである。Iは等価慣性であり、kg*m
2などの単位を有し得る。等価慣性は、ギヤボックス、シャフト、翼などの圧縮機204の構成要素の慣性に対応し得る。αは圧縮機204の所望の加速率に基づいて決定可能な角加速度である。
【0139】
ブロック1322において、ECU102は、圧縮機204の効率を決定することができる。例えば、メモリは、圧縮機流量値および圧縮機圧力比値を対応する効率に結び付ける効率マップを記憶することができる。この点において、ECU102は、現在の圧縮機流量値および現在の圧縮機圧力比を効率マップに適用して現在の効率を検索することにより、圧縮機204の効率を決定することができる。
【0140】
ブロック1324において、ECU102は、ブロック1322で決定された効率に基づいて、圧縮機204の圧縮トルクの決定することができる。例えば、ECU102は、以下の等式18に類似する等式を用いて圧縮トルクを計算することができる。
等式18:
【数18】
【0141】
等式18中、τ
compressionは、圧縮機204の圧縮トルクである。mは圧縮機204を通る気体の所望の質量流量であり、経路制御装置412から受信可能である。C
pは、圧縮機204内部の気体の比熱である。T
inは圧縮機204の入口228における気体の温度である。P
outは圧縮機204の出口230における気体の目標圧力であり、P
inは圧縮機204の入口228における気体の目標圧力である。P
outおよびP
inは経路制御装置412から受信され得る。γはバルブを通って流れる気体の比熱比を表わし、一定体積での気体の比熱に対する一定圧力での気体の比熱の比に対応する。Effはブロック1322において決定された効率である。ωは毎秒ラジアン数単位で測定され得る圧縮機速度である。ECU102は、以下の等式19を用いてωを計算することができる。
【0142】
一部の実施形態においては、変化する変数を用いて計算を行ないマップ内に結果を記憶することによって、圧縮トルクについてのマップが作成され得る。この点において、ECU102は、圧縮機速度または圧縮機比のうちの少なくとも1つを受信することができ、速度および圧力比をマップと比較し、マップとの比較に基づいて圧縮トルクを決定することができる。
等式19:
【数19】
【0143】
等式19中、ωは圧縮機速度である。ACP
spdは圧縮機204のモータ(例えば
図3の圧縮機300のモータ306)のモータ速度である。g
ratioは圧縮機のギヤボックス(例えば
図3の圧縮機300のギヤボックス308)の現在のギヤ比である。
【0144】
ブロック1326において、ECU102は、圧縮機204の摩擦トルクを決定することができる。例えば、ECUは、以下の等式20に類似する等式を用いて摩擦トルクを計算することができる。
等式20:
【数20】
【0145】
等式20中、τ
frictionは摩擦トルクである。visc
coef、Col
trq、brkwy
trq、およびtrans
coefは、同調された一定値である。ωは以上の等式19で計算された圧縮機速度である。
【0146】
一部の実施形態においては、変化する変数を用いて計算を行ないマップ内に結果を記憶することによって、摩擦トルクについてのマップが作成され得る。この点において、ECU102は、圧縮機速度または圧縮機圧力比のうちの少なくとも1つを受信することができ、速度および圧力比をマップと比較し、マップとの比較に基づいて摩擦トルクを決定することができる。
【0147】
一部の実施形態においては、変化する変数を用いて計算を行ないマップ内に結果を記憶することによって、摩擦および圧縮トルク値を組合せたものについてのマップが作成され得る。この点において、ECU102は、圧縮機速度および圧縮機圧力比を受信することができ、速度および圧力比をマップと比較し、マップとの比較に基づいて組合された摩擦圧縮トルク値を決定することができる。
【0148】
ブロック1328では、ECU102は、所望の加速トルク、圧縮トルクおよび摩擦トルクに基づいて、所望の圧縮機トルクの合計を決定することができる。例えば、ECU102は、所望の加速トルク、圧縮トルクおよび摩擦トルクの各々を加算することによって所望の圧縮機トルクの合計を決定することができる。
【0149】
ブロック1330では、ECU102は、ブロック1328で決定された所望の圧縮機トルクの合計を有するように圧縮機を制御することができる。
【0150】
ここで
図2、4、15Aおよび15Bを参照すると、バイパスバルブ212および制限バルブ214のフィードバック制御を行なうため、例えばフィードフォワードおよびフィードバック制御機構416などの中でECU102によって方法1500が使用され得る。詳細には、ECU102は、現在値と目標値を比較し、現在値と目標値の間の差に基づいてフィードバック制御を識別することができる。例えば、値には、制限バルブ214を制御するための燃料電池スタックの出口246における圧力およびバイパスバルブ212を制御するためのバイパスバルブ212を横断する圧力比が含まれてよい。
【0151】
詳細には、ブロック1502において、ECU102は、圧力値を対応するバルブ位置と結び付ける圧力マップを記憶することができる。例えば、
図2、16Aおよび16Bを参照すると、第1の圧力マップ1600が、燃料電池スタック208の出口246における圧力(X軸上)を、制限バルブ214のバルブ位置(Y軸上)と結び付ける。この点において、制限バルブ214のバルブ位置に対応するバルブ位置を、受信された圧力値に基づいて第1の圧力マップ1600から検索することができる。
【0152】
同様に、第2の圧力マップ1650が、バイパスバルブ212を横断する圧力比(X軸上)をバイパスバルブ212のバルブ位置(Y軸上)と結び付ける。この点において、バイパスバルブ212のバルブ位置に対応するバルブ位置を、受信された圧力比に基づいて第2の圧力マップ1650から受信することができる。
【0153】
図2、4、15Aおよび15Bに戻って参照すると、ブロック1504において、ECU102は、燃料電池回路内の気体の所望の圧力値を決定または受信することができる。所望の圧力値は、燃料電池スタック208の出口246における圧力またはバイパスバルブ212を横断する圧力比に対応することができる。
【0154】
ブロック1506において、ECU102は、燃料電池回路内の気体の現在の圧力値を決定または受信することができる。ここでもまた、現在の圧力値は、燃料電池スタック208の出口246における圧力またはバイパスバルブ212を横断する圧力比に対応し得る。
【0155】
ブロック1508では、ECU102は、所望の圧力値を圧力マップに適用して所望のバルブ位置を決定することができる。例えば、ECU102は燃料電池スタック208の出口246における所望の圧力を第1の圧力マップ1600に適用して、制限バルブ214の所望のバルブ位置を決定することができる。同様に、ECU102は、バイパスバルブ212を横断する所望の圧力比を第2の圧力マップ1650に適用して、バイパスバルブ212の所望のバルブ位置を決定することができる。
【0156】
ブロック1510において、ECU102は、現在の圧力値を圧力マップに適用して現在のバルブ位置を決定することができる。これを、制限バルブ214およびバイパスバルブ212の各々について行なうことができる。
【0157】
ブロック1512において、ECU102は、現在の圧力値を目標圧力値と比較して、現在の圧力値と目標圧力値の間の差に対応する差分信号を識別することができる。ECU102は、制限バルブ214およびバイパスバルブ212の各々についてこの動作を行なうことができる。
【0158】
ブロック1514において、ECU102は比例−積分−微分(PIDまたはPI)制御装置を差分信号に適用して、バルブ位置に対する所望の調整を決定することができる。PID制御装置は、エラー信号の過去および目下の値を分析し、エラー信号の目下のエラー値、過去のエラー値および潜在的な将来のエラーに基づいて、フィードバック制御信号を生成することができる。
【0159】
ここで
図2、4、16Aおよび17Aを参照すると、
図15Aおよび15Bの方法1500に類似する方法を用いて、制限バルブ214のフィードバック制御を行なうために、ECU102によって制御機構1700が使用されてよい。
【0160】
制御機構1700において、ECU102は、燃料電池スタック208の出口246における目標圧力または望ましい圧力に対応する目標燃料電池圧力1702を受信または決定することができる。例えば、目標燃料電池圧力1702は、状態メディエータ400によって決定され得る。ECU102はさらに、燃料電池スタック208の出口246における現在の圧力に対応する現在の燃料電池圧力1704を決定または受信することができる。例えば、現在の燃料電池圧力1704は、状態エスティメータ406から受信され得る。
【0161】
ECU102は次に、第1の圧力マップ1600内に目標燃料電池圧力1702を通して、目標燃料電池圧力1702に対応する目標バルブ位置または所望のバルブ位置1706を決定することができる。ECU102は、同様に、第1の圧力マップ1600内に現在の燃料電池圧力1704を通して、現在の燃料電池圧力1704に対応する現在のバルブ位置1708を決定することができる。
【0162】
目標または所望のバルブ位置1706および現在のバルブ位置1708は、差分ブロック1710により受信され得る。差分ブロック1710は、目標または所望のバルブ位置1706と現在のバルブ位置1708の間の差を識別することができ、その差を差分信号1712として出力することができる。
【0163】
差分信号1712は、PID制御装置1714によって受信され得る。PID制御装置1714は、差分信号の過去および目下の値を分析し、制限バルブ214のバルブ位置に対する所望の調整に対応するフィードバック調整信号1716を生成することができる。
【0164】
ここで
図2、4、16Bおよび17Bを参照すると、
図15Aおよび15Bの方法1500に類似する方法を用いて、制限バルブ214のフィードバック制御を行なうために、ECU102によって制御機構1750が使用されてよい。
【0165】
制御機構1750において、ECU102は、バイパスバルブ212を横断する目標圧力または望ましい圧力比に対応する目標バイパスバルブ圧力比1752を受信または決定することができる。例えば、目標バイパスバルブ圧力比1752は、状態メディエータ400によって決定され得る。ECU102はさらに、目標バイパスバルブ212を横断する現在の圧力比に対応する現在のバイパスバルブ圧力比1754を決定または受信することができる。例えば、現在のバイパスバルブ圧力比1754は、状態エスティメータ406から受信され得る。
【0166】
ECU102は次に、第2の圧力マップ1615内に目標バイパスバルブ圧力比1752を通して、目標バイパスバルブ圧力比1752に対応する目標バルブ位置または所望のバルブ位置1756を決定することができる。ECU102は、同様に、第2の圧力マップ1650内に現在のバイパスバルブ圧力比1754を通して、現在のバイパスバルブ圧力比1754に対応する現在のバルブ位置1758を決定することができる。
【0167】
目標または所望のバルブ位置1756および現在のバルブ位置1758は、差分ブロック1760により受信され得る。差分ブロック1760は、目標または所望のバルブ位置1756と現在のバルブ位置1758の間の差を識別することができ、その差を差分信号1762として出力することができる。
【0168】
差分信号1762は、PID制御装置1764によって受信され得る。PID制御装置1764は、エラー信号の過去および目下の値を分析し、バイパスバルブ212のバルブ位置に対する所望の調整に対応するフィードバック調整信号1766を生成することができる。
【0169】
図2、4、15Aおよび15Bに戻って参照すると、ブロック1516において、ECU102は、積分飽和現象と呼ばれる現象に起因する所望の調整の行き過ぎを削減する目的で、差分信号が既定の閾値だけ低減してしまうまでPID制御装置の積分項の適用を遅延させることができる。時として、差分信号が比較的大きい場合には、積分項は比例項と共に、当初非常に大きい可能性がある。差分信号が0に接近するにつれて、比例項は縮小するが、積分項は比較的大きいままである。したがって、積分項の当初の大きなサイズは、所望の調整い行き過ぎを発生させるのに充分なほどに蓄積し得る。
【0170】
PID制御装置の積分項の適用を遅延させることにより、積分項は、差分信号が比較的小さいときに導入され得る。この点において、既定の閾値は、それ以下になると積分飽和現象が発生する可能性が低い閾値差に対応し得る。この点において、ブロック1516を、積分飽和現象保護と呼ぶことができ、このブロックは方法1500内で任意であってよい。
【0171】
積分飽和現象保護の実施に加えてまたはそれに代って、ECU102は、ブロック1518および1520において「学習値」と呼ばれるものを実装することができる。詳細には、ブロック1518において、差分信号が所与の目標圧力値について0またはその近くに収束した場合(すなわち現在の圧力値が実質的に所望の圧力値に等しくなった場合)には、ECU102はメモリ内にPID制御装置からの最終積分項を記憶することができる。
【0172】
ブロック1520において、同じ所与の目標圧力値に向かう後続する収束の間に、ECU102は、PID制御装置に、記憶された最終積分項を用いた収束を開始させることができる。最終積分項を記憶することにより、同じ所与の目標圧力値に向かう各収束は、所与の目標圧力値に向かう比較的迅速で正確な収束を提供する確率の高い値に比較的近い積分値(すなわち記憶された最終積分値)で開始する確率が高くなる。
【0173】
ブロック1522において、ECU102は、バルブ位置に対する所望の調整に基づいて、対応するバルブ(すなわち制限バルブ214またはバイパスバルブ212)を調整することができる。一部の実施形態において、ECU102は、フィードフォワード制御信号に対してバルブ位置に対する所望の調整を加算し、加算の結果に基づいて、対応するバルブを制御することができる。一部の実施形態において、ECU102は、バルブ位置に対する所望の調整を用いて対応するバルブの制御を単純に調整することができる。
【0174】
ここで
図2、4、18Aおよび18Bを参照すると、圧縮機204のフィードバック制御を行なうため、例えばフィードフォワードおよびフィードバック制御機構416などの中でECU102によって方法1800が使用され得る。詳細には、ECU102は、現在値と目標値を比較し、現在値と目標値の間の差に基づいてフィードバック制御信号を識別することができる。例えば、値には、圧縮機204を通る空気量の合計が含まれてよい。
【0175】
詳細には、ブロック1802において、ECU102は、空気流値を対応する圧縮機速度と結び付ける空気流マップを記憶することができる。例えば、
図2および19を参照すると、空気流マップ1900が、圧縮機204を通る空気流(X軸上)を、圧縮機速度(Y軸上)と結び付ける。この点において、圧縮機204の速度に対応する圧縮機速度を、受信された空気流に基づいて第1の空気流マップ1900から検索することができる。
【0176】
図2、4、18Aおよび18Bに戻って参照すると、ブロック1804において、ECU102は、圧縮機204を通る合計空気流に対応する所望の圧縮機流量率を決定または受信することができる。ブロック1806において、ECU102は、現在の圧縮機流量率を決定または受信することができる。
【0177】
ブロック1808において、ECU102は、空気流マップに所望の圧縮機流量率を適用して、所望の圧縮機速度を決定することができる。ブロック1810において、ECU102は、空気流マップに現在の圧縮機流量率を適用して、現在の圧縮機速度を決定することができる。
【0178】
ブロック1812において、ECU102は、現在の圧縮機速度を目標圧縮機速度と比較して、現在の圧縮機速度と目標圧縮機速度の間の差に対応する差分信号を識別することができる。
【0179】
ブロック1814において、ECU102はPID制御装置を差分信号に適用して、圧縮機速度に対する所望の調整を決定することができる。
【0180】
ここで
図2、4、19および20を参照すると、
図18Aおよび18Bの方法1800に類似する方法を用いて、圧縮機204の圧縮機速度のフィードバック制御を行なうために、ECU102によって、制御機構2000が使用されてよい。
【0181】
制御機構2000において、ECU102は、圧縮機を通る気体の目標合計流量または望ましい合計流量に対応する目標合計圧縮機空気流2002を受信または決定することができる。例えば、目標合計圧縮機空気流2002は、状態メディエータ400によって決定され得る。ECU102はさらに、圧縮機204を通る現在の合計流量に対応する現在の合計圧縮機空気流2004を決定または受信することができる。例えば、現在の合計圧縮機流量2004は、状態エスティメータ406から受信され得る。
【0182】
ECU102は次に、空気流マップ1900内に目標合計圧縮機流量2002を通して、目標合計圧縮機空気流2002に対応する目標圧縮機速度または所望の圧縮機速度2006を決定することができる。ECU102は、同様に、空気流マップ1900内に現在の合計圧縮機流量2004を通して、現在の合計圧縮機空気流2004に対応する現在の圧縮機速度2008を決定することができる。
【0183】
目標または所望の圧縮機速度2006および現在の圧縮機速度2008は、差分ブロック2010により受信され得る。差分ブロック2010は、目標または所望の圧縮機速度2006と現在の圧縮機速度2008の間の差を識別することができ、その差を差分信号2012として出力することができる。
【0184】
差分信号2012は、PID制御装置2014によって受信され得る。PID制御装置12014は、差分信号2012の過去および目下の値を分析し、圧縮機204の圧縮機速度に対する所望の調整に対応するフィードバック調整信号2016を生成することができる。
【0185】
図2、4、18Aおよび18Bに戻って参照すると、ブロック1816において、ECU102は、積分飽和現象に起因する所望の調整の行き過ぎを削減する目的で、差分信号が既定の閾値だけ低減してしまうまでPID制御装置の積分項の適用を遅延させることができる。これは
図15Aおよび15Bのブロック1516と類似の方法で行なわれてよい。
【0186】
積分飽和現象保護の実施に加えてまたはそれに代って、ECU102は、ブロック1818および1820において「学習値」を実装することができる。これは
図15Aおよび15Bのブロック1518および1520と類似の方法で行なうことができる。
【0187】
ブロック1822において、ECU102は、圧縮機速度に対する所望の調整に基づいて、圧縮機速度を調整することができる。これは、
図15Aおよび15Bのブロック1522と類似の方法で行なうことができる。
【0188】
上述のように、圧縮機204は、別個に制御され得る圧縮機速度と圧縮機トルクとを有することができる。この点において、ブロック1824〜1830を用いて、圧縮機204の圧縮機トルクを制御することができる。
【0189】
圧縮機速度および圧縮機トルクは、圧縮機トルクが圧縮機速度に正比例するような形で関係付けされ得る。この点において、ブロック1824において、ECU102は、所望の圧縮機速度に基づいて所望の圧縮機トルク値を決定することができる。例えば、所望の圧縮機速度は、ブロック1808において決定され得る。所望の圧縮機トルクを決定するためには、合計空気流量に基づいて圧縮機速度が決定されるのと類似の方法で、所望の圧縮機速度をマップに適用することができる。しかしながら、圧縮機204のトルクと速度の間の比例関係に起因して、所望の圧縮機トルクを得るために、所望の圧縮機速度に対し比例利得を適用することができる。
【0190】
同様に、ブロック1826において、ECU102は、現在の圧縮機速度に基づいて、現在の圧縮機トルク値を決定することができる。現在の圧縮機速度は、ブロック1810において決定され得る。ECU102は、ブロック1824を参照して上述したように、マップまたは比例利得のいずれかを用いて、現在の圧縮機トルクを決定することができる。
【0191】
ブロック1828において、ECU102は、所望の圧縮機トルク値と現在の圧縮機トルク値の間のトルク差に対応するトルク差分信号を識別することができる。
【0192】
ブロック1830において、ECU102は、PID制御装置を差分信号に適用して、圧縮機トルクに対する所望の調整を決定することができる。
【0193】
一部の実施形態において、ECU102は、積分飽和現象保護または「学習値」のうちの一方または両方を実装することができる。
【0194】
ブロック1832において、ECU102は、圧縮機トルクに対する所望の調整に基づいて、圧縮機の圧縮機トルク値を調整することができる。
【0195】
ここで
図2、4および20Bを参照すると、
図18Aおよび18Bの方法1800に類似する方法を用いて、ECU102は、制御機構2050を使用して、圧縮機204の圧縮機トルクのフィードバック制御を行なうことができる。
【0196】
制御機構2050において、ECU102は、現在の圧縮機速度2054と共に目標または所望の圧縮機速度2052を決定することができる。これらの値は、フィードフォワードおよびフィードバック制御機構416、状態エスティメータ406または経路制御装置412のいずれかから決定または受信され得る。
【0197】
ECU102は、次に、関数2056内に目標圧縮機速度2052を通して、目標または所望の圧縮機トルク2060を決定することができる。関数2056は、マップまたは計算、例えば目標圧縮機速度2052に比例利得を適用するための計算、を含み得る。ECU102は同様に、関数2056内に現在の圧縮機速度2054を通して、現在の圧縮機トルク2062を決定することができる。
【0198】
目標または所望の圧縮機トルク2060および現在の圧縮機トルク2062は、差分ブロック2064によって受信され得る。差分ブロック2064は、目標または所望の圧縮機トルク2060と現在の圧縮機トルク2062の間の差に対応するトルク差分信号2066を識別することができる。
【0199】
トルク差分信号2066は、PID制御装置2068により受信され得る。PID制御装置2068は、トルク差分信号2066の過去および目下の値を分析することができ、圧縮機204の圧縮機トルクに対する所望の調整に対応するフィードバックトルク調整信号2070を生成することができる。
【0200】
本明細書およびクレーム全体を通して使用されている場合、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」なる言い回しは、「A」のみ、「B」のみ、または「AおよびB」を含む。方法/システムの例示的実施形態が、例証的様式で開示されてきた。したがって、全体を通して用いられている用語は、非限定的に読み取られるべきものである。当業者であれば本明細書中の教示に対するわずかな修正に気付くものであるが、本明細書で保証される特許の範囲内に入るよう意図されているのは、本明細書が寄与する進歩の範囲内に合理的に入る全ての実施形態であること、そして、この範囲は、添付のクレームおよびそれらの等価物に照らして以外制限を受けるものではないことが理解される。