【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1導電形の第1半導体領域、第1電極、第2導電形の第2半導体領域、第1導電形の第3半導体領域、第2電極、第3電極、第1層、及び第2層を備える。第1半導体領域は、第1領域及び第2領域を有する。第1電極は、第1領域の上に設けられる。第2半導体領域は、第2領域の上に設けられる。第3半導体領域は、第2半導体領域の一部の上に設けられる。第2電極は、第3半導体領域の上に設けられ、第1電極から離間する。第3電極は、第2半導体領域の別の一部及び第1半導体領域の一部の上に設けられ、第1電極及び第2電極から離間する。第1層は、第3電極の上に設けられ、Ti、Ni、及びVからなる群より選択された少なくとも1つを含む。第2層は、第1層の上に設けられ、N及びOからなる群より選択された少なくとも1つと、Siと、を含む。
前記第1電極の上に設けられ、チタン、ニッケル、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む第3層をさらに備えた請求項1または2に記載の半導体装置。
前記第2電極の上に設けられ、チタン、ニッケル、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む第4層をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n
+、n、n
−及びpの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「−」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「−」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図1に表したように、第1実施形態に係る半導体装置100は、n
−形(第1導電形)半導体領域1(第1半導体領域)、p形(第2導電形)ベース領域2(第2半導体領域)、n形エミッタ領域3(第3半導体領域)、n
+形コレクタ領域4(第4半導体領域)、コレクタ電極11(第1電極)、エミッタ電極12(第2電極)、ベース電極13(第3電極)、第1層21、及び第2層22を有する。
【0009】
n
−形半導体領域1は、第1領域1a及び第2領域1bを有する。ここでは、第1領域1aから第2領域1bに向かう方向をX方向(第1方向)とする。また、X方向に垂直な方向をZ方向とし、X方向及びZ方向に垂直な方向をY方向とする。また、説明のために、図面において上方を「上」と言い、その反対方向を「下」と言うが、これらの方向は、重力の方向とは無関係である。
【0010】
第1領域1aと第2領域1bは、X方向において並んでいる。n
+形コレクタ領域4は、第1領域1aの上に設けられている。コレクタ電極11は、n
+形コレクタ領域4の上に設けられ、n
+形コレクタ領域4と電気的に接続されている。例えば、コレクタ電極11のX方向における長さは、n
+形コレクタ領域4のX方向における長さよりも長い。このため、コレクタ電極11は、n
+形コレクタ領域4の上及びn
−形半導体領域1の一部の上に設けられている。
【0011】
p形ベース領域2は、第2領域1bの上に設けられている。n形エミッタ領域3は、p形ベース領域2の一部の上に設けられている。エミッタ電極12は、n形エミッタ領域3の上に設けられ、n形エミッタ領域3と電気的に接続されている。エミッタ電極12は、X方向においてコレクタ電極11から離間している。例えば、エミッタ電極12のX方向における長さは、n形エミッタ領域3のX方向における長さよりも短い。
【0012】
ベース電極13は、p形ベース領域2の別の一部の上及びn
−形半導体領域1の一部の上に設けられ、これらの半導体領域と電気的に接続されている。ベース電極13は、コレクタ電極11及びエミッタ電極12から離間している。ベース電極13は、例えば、コレクタ電極11とエミッタ電極12との間に位置している。
【0013】
n
−形半導体領域1、p形ベース領域2、n形エミッタ領域3、及びn
+形コレクタ領域4は、例えば、シリコンを主成分として含む。あるいは、n
−形半導体領域1、p形ベース領域2、n形エミッタ領域3、及びn
+形コレクタ領域4は、炭化シリコン、ガリウムヒ素、又は窒化ガリウムを主成分として含んでいても良い。
コレクタ電極11、エミッタ電極12、及びベース電極13は、アルミニウム、コバルト、及びタングステンからなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0014】
第1層21は、ベース電極13の上に設けられている。第1層21は、ベース電極13の上に加えて、ベース電極13の周りにおいて、n
−形半導体領域1の上及びp形ベース領域2の上に設けられても良い。第1層21は、チタン、ニッケル、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0015】
第2層22は、第1層21の上に設けられている。第2層22は、窒素及び酸素からなる群より選択された少なくとも1つと、シリコンと、を含む。例えば、第2層22は、窒化シリコンを含む絶縁層である。
【0016】
第2層22の上には、絶縁層23が設けられていても良い。絶縁層23は、窒素及び酸素からなる群より選択された少なくとも1つと、シリコンと、を含む。例えば、絶縁層23は、酸化シリコンを含む。絶縁層23の厚さは、第2層22の厚さよりも大きい。
【0017】
図1に表したように、コレクタ電極11及びエミッタ電極12の上には、それぞれ、層21a(第3層)及び層21b(第4層)が設けられていても良い。第1層21、層21a、及び層21bは、X方向において互いに離間している。層21a及び21bは、第1層21と同様に、チタン、ニッケル、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。例えば、第2層22及び絶縁層23は、第1層21、層21a、及び層21bの上に連続的に設けられている。
【0018】
絶縁層23の上には、例えば、半導体装置100を封止するための、絶縁性の樹脂層28が設けられる。樹脂層28は、例えば、エポキシ樹脂またはポリイミドなどを含む。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置の等価回路を表す電気回路図である。
図2に表したように、半導体装置100では、n
−形半導体領域1(n
+形コレクタ領域4)、p形ベース領域2、及びn形エミッタ領域3により、バイポーラトランジスタBJTが構成されている。さらに、半導体装置100では、n
−形半導体領域1及びベース電極13とがショットキー接合することで、ショットキーバリアダイオードSBDが構成されている。このショットキーバリアダイオードSBDの順方向は、ベース電極13からコレクタ電極11に電流が流れる方向である。
【0020】
第1実施形態の効果を説明する。
第1実施形態に係る半導体装置100では、n
−形半導体領域1とベース電極13との間でショットキーバリアダイオードSBDが構成されている。すなわち、
図2に表したように、ショットキーバリアダイオードSBDがコレクタ電極11とベース電極13との間に接続される。これにより、ベース電極13に流入する電流(ベース電流)を所定の値に保ち、バイポーラトランジスタBJTの出力をより安定化できる。一方で、ショットキーバリアダイオードSBDの特性(例えば順方向電圧)は、n
−形半導体領域1とベース電極13との間の界面の状態に依存する。例えば、樹脂層28や半導体装置100の外部から水分等の不純物が界面に移動し、界面の状態が変化すると、ショットキーバリアダイオードSBDの特性も変動する。この結果、半導体装置100の特性が変動する。
n
−形半導体領域1とベース電極13との間の界面に不純物が移動することを抑制するためには、ベース電極13の上に、バリア性の高い、シリコンを含む絶縁層(第2層22)を設けることが効果的である。
【0021】
一方で、第2層22は、水素を含む場合がある。第2層22が水素を含む場合、時間の経過や半導体装置100の製造過程において、水素がn
−形半導体領域1とベース電極13との間の界面に移動し、ショットキーバリアダイオードSBDの特性を変動させる可能性がある。
そこで、半導体装置100では、ベース電極13と第2層22との間に、チタン、ニッケル、及びバナジウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む第1層21を設けている。これらの元素は、水素を吸蔵し易い。より具体的には、これらの元素は、ベース電極13に含まれるアルミニウム、コバルト、またはタングステン等よりも、水素を吸蔵し易い。第1層21を設けることで、第2層22に含まれる水素がn
−形半導体領域1とベース電極13との間の界面に到達し難くなり、ショットキーバリアダイオードSBDの特性の変動を抑制できる。
このため、本実施形態によれば、半導体装置100の特性の変動を抑制でき、半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0022】
第1層21は、さらに、ベース電極13の周りにおいて、n
−形半導体領域1の上及びp形ベース領域2の上に設けられていることが望ましい。この構成によれば、水分や水素が、ベース電極13の周りのn
−形半導体領域1やp形ベース領域2の表面に移動し、これらの表面を伝ってn
−形半導体領域1とベース電極13との界面へ移動してくることを抑制できる。このため、半導体装置100の信頼性をさらに向上できる。
【0023】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る半導体装置を表す断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置200は、
図3に表したように、n
−形半導体領域31(第1半導体領域)、n
+形カソード領域32(第2半導体領域)、p形ガードリング領域33、アノード電極41(第1電極)、カソード電極42(第2電極)、第1層21、及び第2層22を有する。
【0024】
n
+形カソード領域32は、カソード電極42の上に設けられ、カソード電極42と電気的に接続されている。n
−形半導体領域31は、n
+形カソード領域32の上に設けられている。p形ガードリング領域33は、n
−形半導体領域31の一部の周りに、環状に設けられている。
【0025】
アノード電極41は、n
−形半導体領域31の上及びp形ガードリング領域33の上に設けられ、n
−形半導体領域31と電気的に接続されている。アノード電極41は、n
−形半導体領域31とショットキー接合している。
【0026】
第1層21は、アノード電極41の上、p形ガードリング領域33の上、及びn
−形半導体領域31の外周上に設けられている。第2層22は第1層21の上に設けられ、絶縁層23は、第2層22の上に設けられている。絶縁層23の上には、例えば樹脂層28が設けられている。
【0027】
n
−形半導体領域31、n
+形カソード領域32、及びp形ガードリング領域33は、例えば、シリコンを主成分として含む。あるいは、n
−形半導体領域31、n
+形カソード領域32、及びp形ガードリング領域33は、炭化シリコン、ガリウムヒ素、又は窒化ガリウムを主成分として含んでいても良い。
アノード電極41及びカソード電極42は、アルミニウム、コバルト、及びタングステンからなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0028】
本実施形態においても、アノード電極41の上に、第1層21及び第2層22が設けられることで、水分及び水素による、ショットキーバリアダイオード(すなわち半導体装置200)の経時的な特性の変動を抑制できる。これにより、半導体装置200の信頼性を向上できる。
さらに、半導体装置200では、第1層21及び第2層22が、アノード電極41の上に加えて、n
−形半導体領域31の上にも設けられているため、半導体装置200の信頼性をさらに向上できる。
【0029】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。
また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0030】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。