【解決手段】本開示の集中管理装置MC1は、調整対象電力を目標電力に制御するための制御指標を用いた最適化問題に基づいて出力電力を制御する電力制御装置を管理する集中管理装置MC1であって、目標電力を設定する目標電力設定部11と、調整対象電力を検出する調整対象電力検出手段(連系点電力検出部12)と、調整対象電力と目標電力とに基づいて制御指標を算出する指標算出部13と、制御指標を電力制御装置に送信する送信部14と、を備えており、指標算出部13は、調整対象電力と目標電力との偏差を入力信号とし、制御指標を出力信号とする第1伝達関数を、伝達関数表現から状態空間表現に変換した状態方程式に基づいて、制御指標を算出し、第1伝達関数は、定数以外の第2伝達関数と積分要素とを含んでいる。
前記指標算出手段は、前記状態方程式に基づいて前記指標を算出する際、上記(4)式および上記(5)式に示す微分方程式の状態方程式を離散化した差分方程式の状態方程式を用いる、
請求項5に記載の集中管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の電力システムの実施の形態について、電力系統に連系された系統連系型の太陽光発電システムを例に説明する。
図1は、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1の全体構成を示している。太陽光発電システムPVS1は、
図1に示すように、電力線90、電力負荷L、複数の太陽電池SP
i(i=1,2,・・・,n;nは正の整数)、複数のパワーコンディショナPCS
PVi、複数の蓄電池B
k(k=1,2,・・・,m;mは正の整数)、複数のパワーコンディショナPCS
Bk、および、集中管理装置MC1を備えている。なお、以下の説明において、太陽光発電システムPVS1から電力系統Aに電力が出力されている場合に、すなわち、逆潮流している場合に、太陽光発電システムPVS1と電力系統Aとの連系点における電力は正の値になるものとする。一方、電力系統Aから太陽光発電システムPVS1に電力が出力されている場合に、連系点における電力は負の値になるものとする。
【0017】
電力線90は、太陽光発電システムPVS1内の電力網を構築するためのものである。電力線90は、連系点を介して電力系統Aに接続されている。また、電力線90には、電力負荷L、複数のパワーコンディショナPCS
PVi、および、複数のパワーコンディショナPCS
Bkが接続されている。
【0018】
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものである。電力負荷Lは、電力線90を介して、電力系統A、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkから電力が供給される。電力負荷Lの一例としては、工場や一般家庭などがある。なお、太陽光発電システムPVS1は、電力負荷Lを有していなくてもよい。
【0019】
複数の太陽電池SP
iはそれぞれ、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。各太陽電池SP
iは、直列・並列に接続された複数の太陽電池パネルを含んで構成されている。太陽電池パネルは、例えば、シリコンなどの半導体で生成された太陽電池セルを複数接続したものを、屋外で利用できるように樹脂や強化ガラスなどで保護したものである。各太陽電池SP
iは、発電した電力(直流電力)を各パワーコンディショナPCS
PViに出力する。なお、各太陽電池SP
iにおいて、発電可能な電力の最大量を太陽電池SP
iの発電量P
iSPとする。
【0020】
複数のパワーコンディショナPCS
PViはそれぞれ、各太陽電池SP
iが発電した電力(直流電力)を交流電力に変換して、出力する。なお、各パワーコンディショナPSC
PViは、各太陽電池SP
iが発電した電力を最大限出力可能なように最大電力点追従制御(MPPT制御)を行う。本実施形態においては、パワーコンディショナPCS
PViは、MPPT制御において、例えば1sec周期で出力が変化する程度の応答性で動作する。なお、この周期は1secに限定されない。各パワーコンディショナPCS
PViは、インバータ回路、変圧器、および、制御回路などをそれぞれ含んでいる。各パワーコンディショナPCS
PViにおいて、インバータ回路は、太陽電池SP
iから入力される直流電力を電力系統Aと同期がとれた交流電力に変換する。変圧器は、インバータ回路から出力される交流電圧を昇圧(または降圧)する。制御回路は、インバータ回路などを制御する。なお、各パワーコンディショナPCS
PViは、上記のように構成されたものに限定されない。
【0021】
複数の蓄電池B
kはそれぞれ、繰り返し充放電を行うことができる電池である。蓄電池B
kは、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池である。また、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。蓄電池B
kは、蓄積された電力を放電して、直流電力をパワーコンディショナPCS
Bkに供給する。
【0022】
複数のパワーコンディショナPCS
Bkはそれぞれ、蓄電池B
kから入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。さらに、各パワーコンディショナPCS
Bkは、電力線90を介して、電力系統Aや各パワーコンディショナPCS
PViから入力される交流電力を直流電力へ変換し、蓄電池B
kに供給することで、蓄電池B
kを充電する。各パワーコンディショナPCS
Bkは、各蓄電池B
kの充電および放電を制御している。したがって、各パワーコンディショナPCS
Bkは、蓄電池B
kの充電を行う充電回路および蓄電池B
kの放電を行う放電回路として機能する。
【0023】
各パワーコンディショナPCS
PViから出力される有効電力をP
PViout、無効電力をQ
PVioutとすると、各パワーコンディショナPCS
PViからP
PViout+j・Q
PVioutの複素電力が出力されている。また、各パワーコンディショナPCS
Bkから出力される有効電力をP
Bkout、無効電力をQ
Bkoutとすると、各パワーコンディショナPCS
BkからP
Bkout+j・Q
Bkoutの複素電力が出力されている。したがって、複数のパワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkからは、合計(Σ
iP
PViout+Σ
kP
Bkout)+j(Σ
iQ
PViout+Σ
kQ
Bkout)の複素電力が出力されている。なお、本実施形態においては、連系点における電圧変動抑制などに主に活用される無効電力Q
PViout,Q
Bkoutの出力制御については、特に考慮しない。すなわち、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkが制御する個別出力電力は、それぞれ有効電力P
PViout,P
Bkoutとなる。したがって、各パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力をP
PVioutとし、各パワーコンディショナPCS
Bkの個別出力電力をP
Bkoutとし、電力負荷Lの消費電力P
Lとすると、連系点における電力(以下、「連系点電力」という)P(t)は、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの個別出力電力P
PViout,P
Bkoutと電力負荷Lの消費電力P
Lとの総和(Σ
iP
PViout+Σ
kP
Bkout−P
L)である。
【0024】
集中管理装置MC1は、複数のパワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkを集中管理する。集中管理装置MC1は、例えば無線通信により、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkとの間で、各種情報の送受信を行う。なお、無線通信ではなく、有線通信であってもよい。
【0025】
このように構成された太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1は、所定の調整対象電力を監視し、当該調整対象電力と調整対象電力の目標値である目標電力とに基づいて、調整対象電力を目標電力にするための指標を算出する。そして、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkは、当該指標を用いて、分散的に制御して、調整対象電力を目標電力にする。調整対象電力は、太陽光発電システムPVS1全体の出力電力である。本実施形態においては、太陽光発電システムPVS1全体の出力電力は、各パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVioutと各パワーコンディショナPCS
Bkの個別出力電力P
Bkoutと電力負荷Lの消費電力P
Lとの総和である。また、上記するように、連系点電力P(t)は、各パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVioutと各パワーコンディショナPCS
Bkの個別出力電力P
Bkoutと電力負荷Lの消費電力P
Lとの総和である。したがって、本実施形態においては、調整対象電力として、連系点電力P(t)を用いる場合を説明する。すなわち、太陽光発電システムPVS1は、連系点電力P(t)を目標電力P
Cにするための制御を行っている。
【0026】
具体的には、太陽光発電システムPVS1において、集中管理装置MC1は、連系点電力P(t)を監視し、連系点電力P(t)と目標電力P
Cとを一致させるための制御指標pr(t)を算出する。本実施形態においては、制御指標pr(t)として、制御指標pr
PVと制御指標pr
Bとが算出される。制御指標pr
PVは、連系点電力P(t)を目標電力P
Cにするための情報であり、各パワーコンディショナPCS
PViに個別目標電力P
PVirefを算出させるための情報である。制御指標pr
Bは、連系点電力P(t)を目標電力P
Cにするための情報であり、各パワーコンディショナPCS
Bkに個別目標電力P
Bkrefを算出させるための情報である。また、制御指標pr
Bは、蓄電池B
kをどれくらい充電するか放電するかを決定するための情報でもある。そして、集中管理装置MC1は、制御指標pr
PVを各パワーコンディショナPCS
PViに送信し、制御指標pr
Bを各パワーコンディショナPCS
Bkに送信する。各パワーコンディショナPCS
PViは、集中管理装置MC1から受信する制御指標pr
PVに基づき、個別目標電力P
PVirefを算出し、算出した個別目標電力P
PVirefに基づいて、個別出力電力P
PVioutを制御する。また、各パワーコンディショナPCS
Bkは、集中管理装置MC1から受信する制御指標pr
Bに基づき、個別目標電力P
Bkrefを算出し、算出した個別目標電力P
Bkrefに基づいて、個別出力電力P
Bkoutを制御する。これにより、連系点電力P(t)を目標電力P
Cに一致させている。
【0027】
本実施形態においては、上記目標電力P
Cとして、抑制目標値、ピークカット目標値、逆潮流回避目標値、スケジュール目標値などが設定される。これらは、太陽光発電システムPVS1が行う各種電力制御に応じて、適宜設定される。
【0028】
抑制目標値は、電力会社から指示される出力抑制指令に従い、出力電力を抑制する出力抑制制御を行うための目標値である。太陽光発電システムPVS1が出力抑制制御を行う場合には、目標電力P
Cとして抑制目標値が設定される。近年、電力系統Aに連系する太陽光発電システムが増えてきており、電力系統Aへの電力の供給が需要に比べて過多となる可能性がある。この供給過多の状態を解消するために、電力会社などから各太陽光発電システムに個々の出力電力を抑制するように指示される。そこで、電力会社などからの出力抑制指令に従い、電力系統Aに供給する電力を抑制するために、目標電力P
Cとして抑制目標値を設定する。これにより、連系点電力P(t)が抑制目標値になるように制御される。したがって、連系点電力P(t)が抑制目標値を超えないため、出力抑制指令に従い、電力系統Aに供給する電力を抑制できる。
【0029】
ピークカット目標値は、電力系統Aから供給される電力(買電電力)のピーク値を抑えるピークカット制御を行うための目標値である。太陽光発電システムPVS1がピークカット制御を行う場合、目標電力P
Cとしてピークカット目標値が設定される。たとえば、太陽光発電システムPVS1に電力負荷Lが含まれている場合、電力系統Aから太陽光発電システムPVS1に電力が供給されることがある。このとき、電力会社から電力を買っており、この買電によって電気料金を支払う必要がある。買電電力のピーク値が高いと電気料金も高くなる。そこで、買電電力のピーク値を抑えるために、目標電力P
Cとしてピークカット目標値を設定する。これにより、連系点電力P(t)がピークカット目標値になるように制御される。したがって、連系点電力P(t)がピークカット目標値を超えないために、買電電力のピーク値を抑えることができる。
【0030】
逆潮流回避目標値は、逆潮流の発生を抑制する逆潮流回避制御を行うための目標値である。太陽光発電システムPVS1が逆潮流回避制御を行う場合、目標電力P
Cとして逆潮流回避目標値が設定される。例えば、太陽光発電システムPVS1が自家消費型のシステムである場合、逆潮流が禁止されている。そこで、逆潮流の発生を抑制するために、目標電力P
Cとして、逆潮流回避目標値を設定する。これにより、連系点電力P(t)が逆潮流回避目標値になるように制御される。したがって、連系点電力P(t)が逆潮流回避目標値を超えないため、逆潮流が回避できる。また、逆潮流が禁止されている太陽光発電システムPVS1においては、電力系統Aとの連系点に逆電力継電器の設置が必要となる。逆電力継電器は、リレーの一種であり、逆潮流の発生を検出すると、太陽光発電システムPVS1を電力系統Aから解列させる。したがって、逆潮流回避制御によって、逆電力継電器を動作させないようにできる。
【0031】
スケジュール目標値は、連系点電力P(t)を所定の時間帯毎に自由に設定された値に制御するスケジュール制御を行うための目標値である。所定の時間帯とは1日を複数個に分けた所定の期間であり、例えば30分毎に分けた場合48個の時間帯毎に設定可能である。なお、所定の時間帯は上記した例に限定されず、朝、昼、夕、晩、深夜などの時間帯に分けてもよいし、1日単位ではなく、1週間単位で所定の時間帯に分けてもよい。太陽光発電システムPVS1がスケジュール制御を行う場合、目標電力P
Cとしてスケジュール目標値が設定される。目標電力P
Cとして、スケジュール目標値を設定することで、連系点電力P(t)が所定の時間帯毎に設定されたスケジュール目標値になるように制御される。したがって、所定の時間帯毎に、連系点電力P(t)を自由な値に制御できる。
【0032】
図2は、
図1に示す太陽光発電システムPVS1の電力制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、
図2においては、太陽電池SP
iおよび蓄電池B
kの図示を省略している。また、複数のパワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkについては、それぞれ1つ目(パワーコンディショナPCS
PV1,PCS
B1)のみを記載している。
【0033】
集中管理装置MC1は、
図2に示すように、電力制御における制御系として、目標電力設定部11、連系点電力検出部12、指標算出部13、および、送信部14を含んでいる。
【0034】
目標電力設定部11は、連系点電力P(t)の目標値を設定する。すなわち、上記目標電力P
Cを設定する。上記するように、目標電力P
Cとしては、抑制目標値、ピークカット目標値、逆潮流回避目標値、および、スケジュール目標値などがあり、これらのうちのいずれかが目標電力P
Cとして設定される。
【0035】
太陽光発電システムPVS1が電力制御として出力抑制制御を行う場合、目標電力設定部11は、電力会社から指令される出力指令値を取得し、取得した出力指令値に基づく抑制目標値を目標電力P
Cとして設定する。例えば、取得する出力指令値が出力電力の上限値を指定する値である場合、出力指令値を抑制目標値として設定する。あるいは、取得する出力指令値が出力抑制率[%]である場合、例えば、当該出力抑制率[%]と各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力の合計Σ
iP
PVilmtとに基づき、出力電力の上限値を算出し、これを抑制目標値として設定する。例えば、目標電力設定部11は、出力抑制率として20%である指令を取得したとき、太陽光発電システムPVS1の定格出力Σ
iP
PVilmtの80%(=100−20)を出力電力の上限値として算出し、これを抑制目標値として設定する。なお、電力会社から出力指令値を直接取得するものに限定されない。例えば、ユーザが所定のコンピュータに電力会社から指令される出力指令値を手入力で入力し、目標電力設定部11が前記コンピュータから出力指令値を取得する構成であってもよい。あるいは、他の通信装置を中継して、電力会社から指令される出力指令値を取得する構成であってもよい。
【0036】
太陽光発電システムPVS1が電力制御としてピークカット制御を行う場合、目標電力設定部11は、ユーザによって指定されたピークカット目標値を目標電力P
Cとして設定する。連系点電力P(t)が負の値かつ小さいほど、電力系統Aから供給される電力が大きくなるので、買電電力が大きくなる。ピークカット制御は、ピークカットは買電電力のピーク値を抑えるための制御であるため、買電電力がユーザによって指定された上限値を超えないように制御する。したがって、ピークカット制御時には、連系点電力P(t)が上記買電電力の上限値を負の値としたピークカット目標値を下回らないように、連系点電力P(t)をピークカット目標値に一致させている。よって、ピークカット目標値は負の値である。
【0037】
太陽光発電システムPVS1が電力制御として逆潮流回避制御を行う場合、目標電力設定部11は、ユーザによって指定された逆潮流回避目標値を目標電力P
Cとして設定する。連系点電力P(t)が正の値である場合に逆潮流が発生しているので、逆潮流の発生を抑制するためには、連系点電力P(t)が正の値にならないように、負の値を維持すればよい。したがって、逆潮流回避制御時には、連系点電力P(t)が負の値になるように、連系点電力P(t)を逆潮流回避目標値に一致させている。よって、逆潮流回避目標値は負の値である。
【0038】
太陽光発電システムPVS1が電力制御としてスケジュール制御を行う場合、目標電力設定部11は、ユーザによって指定されたスケジュール目標値を目標電力P
Cとして設定する。スケジュール制御においては、連系点電力P(t)がユーザの好みの値に制御されるため、スケジュール目標値は自由に設定可能である。
【0039】
目標電力設定部11は、設定した目標電力P
Cを指標算出部13に出力する。なお、目標電力設定部11は、目標電力P
Cの設定がないとき、指標算出部13にその旨を伝達する。たとえば、電力会社の出力抑制の指令がないときや太陽電池SP
iが発電した電力を最大限に出力するときなどにおいて、目標電力P
Cの設定がない。本実施形態においては、目標電力設定部11は、目標電力P
Cの設定の有無を示すフラグ情報を指標算出部13に出力するように構成されている。当該フラグ情報は、例えば、目標電力P
Cの設定がない場合「0」であり、目標電力P
Cの設定がある場合「1」である。目標電力P
Cの設定がある場合(フラグ情報が「1」の場合)には、当該フラグ情報とともに目標電力P
Cの設定値を指標算出部13に出力する。このようにして、目標電力設定部11は、目標電力P
Cの設定の有無を指標算出部13に伝達している。なお、目標電力P
Cの設定がないことを指標算出部13に伝達できれば、その手法は限定されない。例えば、目標電力設定部11は、目標電力P
Cの設定がないとき、目標電力P
Cとして数値「−1」を指標算出部13に出力するように構成してもよい。
【0040】
連系点電力検出部12は、連系点電力P(t)を検出する。そして、検出した連系点電力P(t)を指標算出部13に出力する。なお、連系点電力検出部12を、集中管理装置MC1とは別の検出装置として構成してもよい。この場合、当該検出装置(連系点電力検出部12)が、無線通信または有線通信により、連系点電力P(t)の検出値を集中管理装置MC1に送信する。
【0041】
指標算出部13は、目標電力設定部11から入力される目標電力P
Cと、連系点電力検出部12から入力される連系点電力P(t)とを用いて、連系点電力P(t)を目標電力P
Cにするための指標(制御指標pr
PV,pr
B)を算出する。指標算出部13は、制御指標pr
PV,pr
Bの算出を所定時間毎に行う。本実施形態においては、当該所定時間を1[sec]とするが、これに限定されない。
【0042】
指標算出部13には、連系点電力P(t)と目標電力P
Cとの差分(P(t)−P
C(t))を入力信号、制御指標pr(t)を出力信号、λ(t)を状態変数として、下記(8)式および下記(9)式に示す状態方程式(連立微分方程式)が設定されている。なお、下記(8)式および下記(9)式において、目標電力P
Cが、時間tに対して変化する値であるとして、目標電力P
C(t)と記載している。また、[A]は状態係数の行列、[B]は入力係数の行列、[C]は出力係数の行列、[D]は直達係数の行列である。以下の説明において、これらを総称して係数行列ということがある。これらの係数行列[A],[B],[C],[D]は、下記(10)式で定義される。なお、下記(10)式において、Rは実数の集合、p,q,rはそれぞれ自然数である。下記(8)式および下記(9)式に示す、指標算出部13に設定される状態方程式は、所定の伝達関数を状態空間表現に変換したものであり、その伝達関数に応じて各係数行列[A],[B],[C],[D]が決定される。これら、状態方程式および伝達関数についての詳細は後述する。
【数6】
【0043】
指標算出部13は、目標電力設定部11から入力される目標電力P
Cと、連系点電力検出部12から入力される連系点電力P(t)との偏差(P(t)−P
C)を算出し、その偏差を用いて、上記(8)式および上記(9)式に示す状態方程式を演算することにより、制御指標pr(t)を算出する。そして、算出した制御指標pr(t)をそれぞれ制御指標pr
PV,pr
Bとする。なお、指標算出部13は、目標電力P
Cの設定がない場合(たとえば目標電力設定部11からのフラグ情報が「0」である場合)には、制御指標pr
PV,pr
Bとして所定の値「0」を用いる。また、指標算出部13は、太陽光発電システムPVS1がピークカット制御を行う場合には、制御指標pr
PVとして算出した制御指標pr(t)の代わりに所定の値「0」を用い、制御指標pr
Bとして、算出した制御指標pr(t)を用いる。
【0044】
送信部14は、指標算出部13が算出した制御指標pr
PV,pr
Bを各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkにそれぞれ送信する。送信部14は、指標算出部13によって制御指標pr
PV,pr
Bが算出される度に、算出された制御指標pr
PV,pr
Bを送信する。したがって、本実施形態においては、制御指標pr
PV,pr
Bが、1secごとに各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkに送信される。
【0045】
各パワーコンディショナPCS
PViは、
図2に示すように、電力制御に関する制御系として、受信部21、目標電力算出部22、および、出力制御部23を含んでいる。
【0046】
受信部21は、集中管理装置MC1から送信される制御指標pr
PVを受信する。受信部21は、例えば無線通信により、集中管理装置MC1から制御指標pr
PVを受信する。なお、無線通信ではなく、有線通信であってもよい。
【0047】
目標電力算出部22は、受信部21が受信した制御指標pr
PVに基づき、自装置(パワーコンディショナPCS
PVi)の個別目標電力P
PVirefを算出する。具体的には、目標電力算出部22は、下記(11)式に示す制約付き最適化問題を解くことで、個別目標電力P
PVirefを算出する。下記(11)式における下記(11a)式は、最適化問題における評価関数を示している。また、下記(11)式における下記(11b)式および下記(11c)式はそれぞれ、最適化問題における制約条件を示している。当該制約条件において、下記(11b)式は各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力による制約であり、下記(11c)式は各パワーコンディショナPCS
PViの出力電流制約である。なお、下記(11c)式に示す各パワーコンディショナPCS
PViの出力電流制約の代わりに、下記(11d)式に示すパワーコンディショナPCS
PViの定格容量制約を用いてもよい。
【数7】
【0048】
上記(11a)式において、w
PViは、パワーコンディショナPCS
PViの有効電力抑制に関する重みを表わしており、設計値である。また、Pφ
iは、パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVioutの抑制を優先するか否かを示す設計パラメータ(以下、「優先度パラメータ」という)を示しており、設計値である。当該優先度パラメータPφ
iを小さくすると、蓄電池B
kの充電量を少なくし、個別出力電力P
PVioutが抑制され易くなる。一方、当該優先度パラメータPφ
iを大きくすると、蓄電池B
kの充電量を多くし、個別出力電力P
PVioutが抑制され難くなる。よって、優先度パラメータPφ
iは、蓄電池B
kの充電を優先するか否かを示す設計パラメータであるとも言える。さらに、この優先度パラメータPφ
iによって、パワーコンディショナPCS
PViの定格出力による出力限界とは別に、パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVioutの疑似的な出力限界が設定されていると考えられる。そのため、優先度パラメータPφ
iは、疑似有効出力限界とも言える。上記重みw
PViおよび上記優先度パラメータPφ
iはユーザによって設定変更が可能である。
【0049】
上記(11b)式において、P
PVilmtは、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力(出力限界)を表わしている。よって、上記(11b)式は、算出される個別目標電力P
PVirefが定格出力P
PVilmtを超えないように制限している。
【0050】
上記(11c)式において、Q
PViは各パワーコンディショナPCS
PViの無効電力、S
PVidは各パワーコンディショナPCS
PViの出力可能な最大の皮相電力、V
0は設計時における連系点の基準電圧、V
PViは各パワーコンディショナPCS
PViにおける連系点の電圧をそれぞれ表している。
【0051】
本実施形態においては、各パワーコンディショナPCS
PViの有効電力抑制に関する重みw
PVi(上記(11a)式参照)は、下記(12)式で算出される値を用いている。下記(12)式において、pr
PVlmtは、制御指標限界を示している。当該制御指標限界pr
PVlmtは、個別出力電力P
PVioutを0にするときの制御指標、すなわち、個別出力電力P
PVioutを100%抑制するときの制御指標である。また、P
PVilmtは、上記各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力である。なお、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVilmtの代わりに、疑似有効出力限界Pφ
iを用いてもよい。すなわち、下記(12’)式で算出される値を用いてもよい。または、複数のパワーコンディショナPCS
PViにおいて、すべて同じ有効電力抑制に関する重みw
PViを用いてもよい。
【0052】
図3は、上記のように各パワーコンディショナPCS
PViの有効電力抑制に関する重みw
PViを用いた場合の、制御指標pr
PVと個別出力電力P
PVioutとの関係を示している。なお、
図3には、定格出力P
PVilmtが互いに異なる3つのパワーコンディショナPCS
PViそれぞれについて示している。本実施形態においては、個別出力電力P
PVioutは、上記目標電力算出部22が算出する個別目標電力P
PVirefとなるように制御されるので、同図は、制御指標pr
PVと個別目標電力P
PVirefとの関係を示しているともいえる。
図3においては、上記制御指標限界pr
PVlmtを100とした。また
図3において、定格出力P
PVilmtが500kWのものを実線、定格出力P
PVilmtが250kWのものを破線、定格出力P
PVilmtが100kWのものを一点鎖線で示している。
【0053】
図3が示すように、制御指標pr
PVが0から100(制御指標限界pr
PVlmt)の間で20上昇する毎に、定格出力P
PVilmtが500kWの場合100kW、定格出力P
PVilmtが250kWの場合50kW、定格出力P
PVilmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVilmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVilmtに対する割合で個別出力電力P
PVioutを抑制している。また、各パワーコンディショナPCS
PViはともに、制御指標pr
PVが上記制御指標限界pr
PVlmtのときに、個別出力電力P
PVioutが0となっている。すなわち、100%抑制している。さらに、制御指標pr
PVが0のときに、個別出力電力P
PVioutが定格出力P
PVilmtとなっている。すなわち、最大限出力可能な電力が出力されている。そして、
図3に示すように、制御指標pr
PVが0から制御指標限界pr
PVlmt(100)の間では、各パワーコンディショナPCS
PViの個別出力電力P
PVioutが線形的に変化している。なお、各パワーコンディショナPCS
PViは、その定格出力P
PVilmt以上の電力を出力できないため、制御指標pr
PVが負の値であるときは、
図3が示すように、一定値(定格出力P
PVilmt)となっている。以上のことから、有効電力抑制に関する重みw
PViの設定において、上記(12)式を用いることで、制御指標pr
PVの変化に伴い、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVilmtに対する割合で、個別出力電力P
PVioutを抑制することができる。よって、複数のパワーコンディショナPCS
PViにおいて、それらの定格出力P
PVilmtが異なっていても、制御指標pr
PVが制御指標限界pr
PVlmtのときに、個別出力電力P
PVioutの出力を100%抑制することができる。なお、有効電力抑制に関する重みw
PViとして同じ値を用いた場合は、各パワーコンディショナPCS
PViの定格出力P
PVilmtが異なっていても、一律に同じ量ずつ個別出力電力P
PVioutが低下するように構成できる。
【0054】
出力制御部23は、自装置(パワーコンディショナPCS
PVi)の上記インバータ回路を制御して、個別出力電力P
PVioutを制御する。出力制御部23は、個別出力電力P
PVioutを、目標電力算出部22が算出した個別目標電力P
PVirefにする。
【0055】
各パワーコンディショナPCS
Bkは、
図2に示すように、電力制御に関する制御系として、受信部31、目標電力算出部32、および、出力制御部33を含んでいる。
【0056】
受信部31は、上記受信部21と同様に構成され、集中管理装置MC1から送信される制御指標pr
Bを受信する。
【0057】
目標電力算出部32は、受信部31が受信した制御指標pr
Bに基づき、自装置(パワーコンディショナPCS
Bk)の個別目標電力P
Bkrefを算出する。具体的には、目標電力算出部32は、下記(13)式に示す最適化問題を解くことで、個別目標電力P
Bkrefを算出する。下記(13)式における下記(13a)式は、最適化問題における評価関数を示している。また、下記(13)式における下記(13b)〜(13e)式はそれぞれ、最適化問題における制約条件を示している。当該制約条件において、下記(13b)式は各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力による制約であり、下記(13c)式は蓄電池B
kのCレート制約であり、下記(13d)式は各蓄電池B
kの残量制約であり、下記(13e)式は各パワーコンディショナPCS
Bkの出力電流制約である。Cレートとは、蓄電池の有する全容量に対する充電時あるいは放電時の電流の相対的な比率であり、蓄電池の有する全容量を1時間で充電あるいは放電するときを1Cとしたものである。本実施形態におけるCレートには、充電側のCレートと放電側のCレートとがある。充電側のCレートは、各蓄電池B
kの充電するときの電流に対するCレートであり、以下の説明において「充電レート」という。放電側のCレートは、各蓄電池B
kの放電するときの電流に対するCレートであり、以下の説明において「放電レート」という。なお、下記(13e)式に示す各パワーコンディショナPCS
Bkの出力電流制約の代わりに、下記(13f)式に示すパワーコンディショナPCS
Bkの定格容量制約を用いてもよい。
【数8】
【0058】
上記(13a)式において、w
Bkは、パワーコンディショナPCS
Bkの有効電力に関する重みを表わしている。重みw
Bkは、ユーザが設定可能である。w
SOCkは、蓄電池B
kのSOC(States Of Charge:充電率)に応じた重みを表している。この重みw
SOCkは、下記(14)式で算出される。下記(14)式において、A
SOCは重みw
SOCkのオフセット、K
SOCは重みw
SOCkのゲイン、s
swは重みw
SOCkのオン/オフスイッチ(例えば、オンのとき1,オフのとき0)、SOC
kは現在の蓄電池B
kのSOC、SOC
dは基準となるSOCをそれぞれ示している。
【数9】
【0059】
上記(13b)式において、P
Bklmtは、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力(出力限界)を表わしている。よって、上記(13b)式は、算出される個別目標電力P
Bkrefが定格出力P
Bklmtを超えないように制限している。
【0060】
上記(13c)式において、P
SMklmtは、蓄電池B
kの充電定格出力を表しており、充電レートをC
rateMとし、蓄電池B
kの定格容量をWH
Slmtとしたときに、−C
rateM×WH
Slmtで求められる。なお、蓄電池B
kの充電定格出力P
SMklmtは、補正開始SOCをSOC
C、SOCの充電制限閾値をcMAXとして、下記(15)式に示すSOCに応じた蓄電池充電量補正が考慮されている。当該蓄電池充電量補正は、補正開始SOCまでは、通常通りの運転を行い、補正開始SOCからSOC上限までは、SOC上限で出力が0となるように一次関数的に出力を補正するように構成している。P
SPklmtは、蓄電池B
kの放電定格出力を表しており、放電レートをC
ratePとし、蓄電池B
kの定格容量をWH
Slmtとしたときに、C
rateP×WH
Slmtで求められる。よって、上記(13c)式は、算出される個別目標電力P
Bkrefが、設定されているCレート(充電レートおよび放電レート)に基づいて規定される充電定格出力と放電定格出力との範囲内に収まるように制限している。すなわち、上記(13c)式による制約によって、各パワーコンディショナPCS
Bkの出力電流(個別出力電力P
Bkout)を蓄電池B
kの定格容量で除算した値が設定されているCレートを超えないように制御されている。よって、Cレートは、各パワーコンディショナPCS
Bkにおける出力電流(個別出力電力P
Bkout)を制限するための特性値といえる。
【数10】
【0061】
上記(13d)式において、α
k,β
kは、蓄電池B
kの残量によって調整できる調整パラメータを表わしている。たとえば、蓄電池B
kの充電率SOC
kが90%以上のとき、α
kを0、β
kをP
Bklmtと設定することで、上記(13d)式により放電のみを行うように制限できる。また、蓄電池B
kの充電率SOC
kが10%以下のとき、α
kを−P
Bklmt、β
kを0と設定することで、上記(13d)式により充電のみを行うように制限できる。さらに、蓄電池B
kの充電率SOC
kがこれらの間(10%より大きく90%未満)であるとき、α
kを−P
Bklmt、β
kをP
Bklmtと設定することで、充電も放電も行うように制限できる。
【0062】
上記(13e)式において、Q
Bkは各パワーコンディショナPCS
Bkの無効電力、S
Bkdは各パワーコンディショナPCS
Bkの出力可能な最大の皮相電力、V
0は設計時における連系点の基準電圧、V
Bkは各パワーコンディショナPCS
Bkにおける連系点の電圧をそれぞれ表している。
【0063】
本実施形態においては、各パワーコンディショナPCS
Bkの有効電力に関する重みw
Bk(上記(13a)式参照)は、下記(16)式で算出される値を用いている。下記(16)式において、pr
Blmtは、制御指標pr
Bの制御指標限界を示している。当該制御指標限界pr
Blmtは、最大限出力可能な電力で蓄電池B
kを充放電するときの制御指標、すなわち、個別出力電力P
Bkoutが定格出力P
Bklmtの100%で充放電するときの制御指標である。また、w
SOCkは、上記蓄電池B
kのSOCに応じた重みを示しており、P
Bkmaxは、蓄電池B
kにおける各種制約を考慮したときに最大限出力可能な電力(以下、「制約最大出力」という。)を示している。当該制約最大出力P
Bkmaxは、上記蓄電池B
kの充電定格出力P
SMklmt、上記蓄電池B
kの放電定格出力P
SPklmtおよびパワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtに基づいて設定される。具体的には、充電定格出力P
SMklmtの正負の符号を反転させた値と放電定格出力P
SPklmtの値とを比較し、いずれか大きい方の値を求める。そして、この大きい方の値と、定格出力P
Bklmtの値とを比較し、いずれか小さい方の値を制約最大出力P
Bkmaxとして設定する。なお、複数のパワーコンディショナPCS
Bkにおいて、すべて同じ有効電力に関する重みw
Bkを用いてもよい。
【0064】
図4は、上記のように各パワーコンディショナPCS
Bkの有効電力に関する重みw
Bkを用いた場合の、制御指標pr
Bと個別出力電力P
Bkoutとの関係を示している。なお、
図4には、定格出力P
Bklmtが互いに異なる3つのパワーコンディショナPCS
Bkそれぞれについて示している。本実施形態においては、各パワーコンディショナPCS
Bkは、個別出力電力P
Bkoutが負の値のとき蓄電池B
kを充電し、個別出力電力P
Bkoutが正の値のとき蓄電池B
kを放電する。また、個別出力電力P
Bkoutは、上記目標電力算出部32が算出する個別目標電力P
Bkrefとなるように制御されるので、同図は、制御指標pr
Bと個別目標電力P
Bkrefとの関係を示しているともいえる。
図4においては、上記制御指標限界pr
Blmtを100とした。また、
図4において、定格出力P
Bklmtが500kWのものを実線、定格出力P
Bklmtが250kWのものを破線、定格出力P
Bklmtが100kWのものを一点鎖線で示している。
【0065】
図4に示すように、制御指標pr
Bが−100(制御指標限界pr
Blmtを負の値にしたもの)から100(制御指標限界pr
Blmt)の間で20上昇する毎に、定格出力P
Bklmtが500kWの場合100kW、定格出力P
Bklmtが250kWの場合50kW、定格出力P
Bklmtが100kWの場合20kWずつ低下している。これは、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtの20%ずつ低下していることになる。すなわち、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtに対する割合で個別出力電力P
Bkoutを制御している。したがって、同じ制御指標pr
Bの変化量であっても、パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtに応じて、蓄電池B
kの充放電量が変化している。また、各パワーコンディショナPCS
Bkはともに、制御指標pr
Bが制御指標限界pr
Blmtを負の値にしたもの(−pr
Blmt)であるときに、定格出力P
Bklmtと同じ値の個別出力電力P
Bkoutで蓄電池B
kを放電する。一方、制御指標pr
Bが制御指標限界pr
Blmtであるときに、定格出力P
Bklmtと同じ値の個別出力電力P
Bkoutで蓄電池B
kを充電する。すなわち、最大限出力可能な電力で蓄電池B
kを充放電する。さらに、制御指標pr
Bが0のときに、個別出力電力P
Bkoutが0になっている。そして、
図4に示すように、個別出力電力P
Bkoutが線形的に変化している。以上のことから、有効電力に関する重みw
Bkの設定において、上記(16)式を用いることで、制御指標pr
Bの変化に伴い、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtに対する割合で、蓄電池B
kを充放電することができる。よって、複数のパワーコンディショナPCS
Bkにおいて、それらの定格出力P
Bklmtが異なっていても、制御指標pr
Bの絶対値が制御指標限界pr
Blmtのときに、定格出力P
Bklmtの100%で蓄電池B
kを充放電することができる。具体的には、制御指標pr
Bが制御指標限界pr
Blmtの負の値であるときに、定格出力P
Bklmtの100%で蓄電池B
kを放電し、制御指標pr
Bが制御指標限界pr
Blmtの値であるときに、定格出力P
Bklmtの100%で蓄電池B
kを充電することができる。なお、有効電力に関する重みw
Bkとして同じ値を用いた場合、各パワーコンディショナPCS
Bkの定格出力P
Bklmtが異なっていても、一律に同じ量ずつ個別出力電力P
Bkoutが低下するように構成できる。
【0066】
出力制御部33は、上記出力制御部23と同様に構成される。出力制御部33は、蓄電池B
kの放電および充電を制御することで、個別出力電力P
Bkoutを、目標電力算出部32が算出した個別目標電力P
Bkrefにする。具体的には、目標電力算出部32によって算出された個別目標電力P
Bkrefが正の値の場合、蓄電池B
kに蓄積された電力(直流電力)を交流電力に変換し、電力線90を介して出力する。すなわち、パワーコンディショナPCS
Bkを放電回路として機能させる。一方、個別目標電力P
Bkrefが負の値の場合、電力線90を介して入力される交流電力を直流電力に変換し、蓄電池B
kに供給する。すなわち、パワーコンディショナPCS
Bkを充電回路として機能させる。
【0067】
次に、太陽光発電システムPVS1において、指標算出部13が制御指標pr(t)(制御指標pr
PV,pr
B)の算出に用いる、上記(8)式および上記(9)式に示す状態方程式について説明する。
【0068】
図5は、集中管理装置MC1における制御指標pr(t)の演算処理を行うシステム(以下、「制御指標演算システム」という)を、伝達関数G(s)を用いたブロック線図で表現したものである。
図5に示すように、当該制御指標演算システムは、伝達関数がG(s)である伝達要素に、連系点電力P(t)と目標電力P
C(t)との差分(P(t)−P
C(t))が入力され、制御指標pr(t)が出力されるシステムである。
【0069】
図5に示すブロック線図を、s領域において、式で表現すると、下記(17)式で示される。本実施形態における伝達関数G(s)には、伝達関数K(s)と積分要素1/s(sはラプラス演算子)とを含んだものを用いており、例えば、G(s)=K(s)/sである。したがって、
図5に示す伝達要素には積分要素が含まれている。なお、伝達関数G(s)は、伝達関数K(s)と積分要素1/sとを含んでいれば、他の伝達関数であってもよい。
【数11】
【0070】
そして、本実施形態における伝達関数K(s)は、1つ以上のラプラス演算子sを含んでおり、定数ではない。伝達関数K(s)の例をいくつか挙げると、下記(18−a)式〜(18−i)式などがある。これらの伝達関数K(s)において、ε
a(a=1〜23)は任意の定数パラメータである。また、下記に例示した伝達関数K(s)を組み合わせてもよい。ただし、伝達関数K(s)は、伝達関数G(s)がプロパーな伝達関数となるように設定される。なお、プロパーな伝達関数とは、分母の次数が分子の次数以上である伝達関数のことである。したがって、伝達関数K(s)は、伝達関数G(s)において分母の次数が分子の次数以上となるように設定される。
【0071】
ところで、下記(19)式に示す厳密にプロパーなn次の伝達関数表現(伝達関数P(s))は、可制御標準形と呼ばれる下記(20)式および下記(21)式に示すn次の状態空間表現(状態方程式)に変換できる。なお、厳密にプロパーな伝達関数P(s)とは、分子の次数が分母の次数より小さい伝達関数のことである。下記(20)式および下記(21)式において、u(t)は入力信号、y(t)は出力信号、x(t)は状態変数を示しており、nは自然数である。
【数12】
【0072】
そこで、上記した厳密にプロパーなn次の伝達関数表現を可制御標準形のn次の状態空間表現に変換する手法を用いて、本実施形態における伝達関数G(s)を状態方程式に変換する。具体的には、まず、伝達関数G(s)を厳密にプロパーな伝達関数部分と定数部分との2つの部分に分ける。次に、伝達関数G(s)における厳密にプロパーな伝達関数部分と上記(19)式に示す伝達関数P(s)との係数を比較する。そして、この係数比較の結果を用いて、各係数行列[A],[B],[C]を算出する。また、伝達関数G(s)における定数部分は、その値を直達係数の行列[D]とする。よって、定数部分の値をγ
0とすると、[D]=γ
0となる。なお、この場合の直達係数の行列[D](=γ
0)はスカラー量であり、特に伝達関数G(s)が厳密にプロパーな伝達関数である場合、直達係数の行列[D]は0となる。これにより、上記(8)式および上記(9)式に示す状態方程式における、各係数行列[A],[B],[C],[D]が下記(22)式のように得られる。この下記(22)式におけるα
0〜α
n-1、β
0〜β
n-1、γ
0は用いる伝達関数G(s)により決定する。以上のことから、伝達関数G(s)を伝達関数表現から状態空間表現に変換した状態方程式が得られ、集中管理装置MC1(指標算出部13)に設定される。
【数13】
【0073】
以下に、上記(18−a)式〜上記(18−i)式に例示した複数の伝達関数K(s)のうちの幾つかにおいて、集中管理装置MC1(指標算出部13)に設定される状態方程式の具体例を示す。
【0074】
伝達関数K(s)をε
1/s(上記(18−a)式)とした場合、伝達関数G(s)は、G(s)=K(s)/s=ε
1/s
2となる。よって、伝達関数G(s)は、厳密にプロパーな伝達関数であり、かつ、分母の次数が2である。2次の厳密にプロパーな伝達関数P(s)は上記(19)式より(β
1s+β
0)/(s
2+α
1s+α
0)であり、これと伝達関数G(s)との係数を比較する。その結果、α
0=0,α
1=0,β
0=ε
1,β
1=0が得られる。また、伝達関数G(s)は、上記定数部分がないので、γ
0=0である。これらのことから、下記(23)式に示す各係数行列[A],[B],[C],[D]が算出される。したがって、集中管理装置MC1の指標算出部13には、下記(24)式および下記(25)式に示す状態方程式が設定される。なお、状態空間表現から伝達関数表現へは、各係数行列[A],[B],[C],[D]を用いた変換式G(s)=[C](s[I]−[A])
-1[B]+[D]によって変換できる。なお、[I]は単位行列である。この変換式と下記(23)式に示す各係数行列[A],[B],[C],[D]とを用いて、伝達関数G(s)を演算すると、ε
1/s
2となる。すなわち、伝達関数K(s)をε
1/sとした場合の伝達関数G(s)と一致する。したがって、下記(24)式および下記(25)式に示す状態方程式は、伝達関数G(s)が適切に変換されたものである。
【数14】
【0075】
伝達関数K(s)を(ε
3+ε
4s)/s(上記(18−c)式)とした場合、伝達関数G(s)は、Gs=K(s)/s=(ε
3+ε
4s)/s
2となる。よって、伝達関数G(s)は、厳密にプロパーな伝達関数であり、かつ、分母の次数が2である。2次の厳密にプロパーな伝達関数P(s)は上記(19)式より(β
1s+β
0)/(s
2+α
1s+α
0)であり、これと伝達関数G(s)との係数を比較する。その結果、α
0=0,α
1=0,β
0=ε
3,β
1=ε
4が得られる。また、伝達関数G(s)は、上記定数部分がないので、γ
0=0である。これらのことから、下記(26)式に示す各係数行列[A],[B],[C],[D]が算出される。したがって、集中管理装置MC1の指標算出部13には、下記(27)式および下記(28)式に示す状態方程式が設定される。なお、下記(27)式および下記(28)式に示す状態方程式を、上記変換式G(s)=[C](s[I]−[A])
-1[B]+[D]によって、伝達関数G(s)に変換すると、(ε
3+ε
4s)/s
2となる。すなわち、伝達関数K(s)を(ε
3+ε
4s)/sとした場合の伝達関数G(s)と一致する。したがって、下記(27)式および下記(28)式に示す状態方程式は、伝達関数G(s)が適切に変換されたものである。
【数15】
【0076】
伝達関数K(s)をε
20/(ε
17+ε
18s+ε
19s
2)(上記(18−h)式)とした場合、伝達関数G(s)は、G(s)=K(s)/s=ε
20/(ε
17s+ε
18s
2+ε
19s
3)となる。よって、伝達関数G(s)は、厳密にプロパーな伝達関数であり、かつ、分母の次数が3である。3次の厳密にプロパーな伝達関数P(s)は上記(19)式より(β
2s
2+β
1s+β
0)/(s
3+α
2s
2+α
1s+α
0)であり、これと伝達関数G(s)との係数を比較する。その結果、α
0=0,α
1=ε
17/ε
19,α
2=ε
18/ε
19,β
0=ε
20/ε
19,β
1=0,β
2=0が得られる。また、伝達関数G(s)は、上記定数部分がないので、γ
0=0である。これらのことから、下記(29)式に示す各係数行列[A],[B],[C],[D]が算出される。したがって、集中管理装置MC1の指標算出部13には、下記(30)式および下記(31)式に示す状態方程式が設定される。なお、下記(30)式および下記(31)式に示す状態方程式を、上記変換式G(s)=[C](s[I]−[A])
-1[B]+[D]によって、伝達関数G(s)に変換すると、ε
20/(ε
17s+ε
18s
2+ε
19s
3)となる。すなわち、伝達関数K(s)をε
20/(ε
17+ε
18s+ε
19s
2)とした場合の伝達関数G(s)と一致する。したがって、下記(30)式および下記(31)式に示す状態方程式は、伝達関数G(s)が適切に変換されたものである。
【数16】
【0077】
伝達関数K(s)をε
5+ε
6s(上記(18−d)式)とした場合、伝達関数G(s)は、G(s)=K(s)/s=(ε
5+ε
6s)/sとなる。この伝達関数G(s)は、G(s)=ε
5/s+ε
6として、厳密にプロパーな伝達関数部分(ε
5/s)と定数部分(ε
6)とに分割できる。そして、厳密にプロパーな伝達関数部分(ε
5/s)においては、1次の厳密にプロパーな伝達関数P(s)であるβ
0/(s+α
0)との係数を比較することで、α
0=0,β
0=ε
5が得られる。また、定数部分(ε
6)においては、この値(ε
6)を直達係数の行列[D]とするので、γ
0=ε
6が得られる。これらのことから、下記(32)式に示す各係数行列[A],[B],[C],[D]が算出される。したがって、集中管理装置MC1の指標算出部13には、下記(33)式および下記(34)式に示す状態方程式が設定される。なお、下記(33)式および下記(34)式に示す状態方程式を、上記変換式G(s)=[C](s[I]−[A])
-1[B]+[D]によって、伝達関数G(s)に変換すると、ε
5/s+ε
6となる。すなわち、伝達関数K(s)をε
5+ε
6sとした場合の伝達関数G(s)と一致する。したがって、下記(33)式および下記(34)式に示す状態方程式は、伝達関数G(s)が適切に変換されたものである。
【数17】
【0078】
次に、第1実施形態に係る太陽光発電システムPVS1の作用効果について説明する。
【0079】
第1実施形態によれば、指標算出部13による制御指標pr
PV,pr
Bの算出において、定数以外の伝達関数K(s)と積分要素1/sとを含んだ伝達関数G(s)を、状態空間表現に変換した状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)を用いている。これにより、伝達関数G(s)(伝達関数K(s))の設定に応じて、指標算出部13が制御指標pr
PV,pr
Bを算出する際の、過渡応答性、外乱耐性、ノイズ除去特性、ロバスト安定性などを柔軟に調整することができる。例えば、K(s)=ε
1/sとし、定数パラメータε
1を大きくすると、外乱耐性を向上させることができる。また、K(s)=ε
2sとし、定数パラメータε
2を大きくすると、過渡応答性を向上させることができる。その他、上記(18−a)式〜上記(18−i)式に示す各伝達関数K(s)の組み合わせや定数パラメータε
a(a=1〜23)の設定値などにより、ノイズ除去特性やロバスト安定性などを調整することができる。
【0080】
第1実施形態では、指標算出部13は、太陽光発電システムPVS1がピークカット制御を行う場合に、制御指標pr
PVとして所定の値「0」を用いる例を示したが、これに限定されない。例えば、指標算出部13に、制御指標pr
PVを算出するための状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)と、制御指標pr
Bを算出するための状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)とを、それぞれ別々に設定しておく。そして、指標算出部13が、これらの状態方程式をそれぞれ演算することで、制御指標pr
PVと制御指標pr
Bとを別々に算出するようにしてもよい。このとき、指標算出部13には、異なる2つの状態方程式が設定されていてもよいし、当該異なる2つの状態方程式を1つにまとめた共通の状態方程式が設定されていてもよい。
【0081】
第1実施形態では、指標算出部13に設定される状態方程式において、上記(8)式および上記(9)式に示す微分方程式を用いた場合を示したが、これに限定されない。例えば、上記(8)式および上記(9)式に示す微分方程式の代わりに、当該微分方程式を離散化した差分方程式を用いてもよい。この場合の差分方程式は、求める状態変数をλ(k)、求める制御指標をpr(k)、前回算出した状態変数をλ(k−1)、制御指標pr(k)の算出周期をTsとして、下記(35)式および下記(36)式で表される。なお、下記(35)式および下記(36)式においては、後進差分を用いた差分方程式を示したが、後進差分の代わりに、前進差分あるいは中心差分などであってもよい。
【数18】
【0082】
第1実施形態では、厳密にプロパーなn次の伝達関数表現を可制御標準形のn次の状態空間表現に変換する手法を用いて、伝達関数G(s)を状態方程式に変換する場合を示したが、これに限定されない。例えば、上記(19)式に示す厳密にプロパーなn次の伝達関数P(s)は、下記(20’)式および下記(21’)式に示す可観測標準形と呼ばれるn次の状態空間表現(状態方程式)に変換できる。そこで、上記(19)式に示す厳密にプロパーな伝達関数表現(伝達関数P(s))を、可制御標準形のn次の状態空間表現に変換する手法の代わりに、下記(20’)式および下記(21’)式に示す可観測標準形のn次の状態空間表現に変換する手法を用いて、伝達関数G(s)を状態方程式に変換してもよい。この場合も、上記した可制御標準形を用いた変換手法と同様に、伝達関数G(s)を状態方程式に変換すればよい。すなわち、伝達関数G(s)を厳密にプロパーな伝達関数部分と定数部分とに分け、厳密にプロパーな伝達関数部分と定数部分とのそれぞれに基づき、各係数行列[A],[B],[C],[D]を求めればよい。
【数19】
【0083】
第1実施形態では、制御指標演算システムを伝達関数表現から状態空間表現に実現する際、伝達関数G(s)と上記(19)式に示す厳密にプロパーな伝達関数P(s)とを比較することによって、伝達関数G(s)を上記(8)式および上記(9)式に示す状態方程式に変換する手法を示したが、これに限定されない。例えば、次のようにして、伝達関数G(s)を状態方程式に変換してもよい。例えば、伝達関数K(s)が上記(18−a)式に示すε
1/sである場合、すなわち、伝達関数G(s)がε
1/s
2である場合、制御指標演算システムの伝達関数表現は、下記(37)式で示される。
【数20】
【0084】
上記(37)式を下記(38)式に示すように変形した後、s領域からt領域に変換し、ベクトルを用いて表現すると、下記(39)式が得られる。そして、下記(40)式に示す新しい変数λ
1(t),λ
2(t)を下記(39)式に導入することで、下記(41)式が得られる。下記(41)式において、変数λ
1(t),λ
2(t)を状態ベクトル(状態変数)λ(t)として扱うことで、下記(42)式となる。
【数21】
【0085】
また、上記(40)式におけるλ
1(t)=pr(t)より、下記(43)式が得られ、下記(43)式においても、変数λ
1(t),λ
2(t)を状態ベクトル(状態変数)λ(t)として扱うことで、下記(44)式となる。
【数22】
【0086】
上記(42)式および上記(44)式による連立微分方程式が、本変形例で得られる状態方程式であり、制御指標演算システムを伝達関数表現から状態空間表現に実現することができる。なお、このような変形例に係る状態方程式(上記(42)式および上記(44)式参照)においても、上記変換式G(s)=[C](s[I]−[A])
-1[B]+[D]によって、伝達関数G(s)に変換すると、ε
1/s
2となる。すなわち、伝達関数K(s)をε
1/sとした場合の伝達関数G(s)と一致する。したがって、上記(42)式および下記(44)式に示す状態方程式は、伝達関数G(s)が適切に変換されたものである。なお、上記例では、伝達関数K(s)が上記(18−a)式に示すε
1/sである場合を示したが、その他の伝達関数K(s)(例えば上記(18−b)式ないし上記(18−i)式のいずれか)であっても、同様に変換することで、制御指標演算システムを伝達関数表現から状態空間表現へ実現できる。
【0087】
集中管理装置MC1(指標算出部13)に設定される状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)は、伝達関数G(s)を状態方程式に変換したものであれば限定さない。すなわち、制御指標演算システムを伝達関数表現から状態空間表現へ実現する手法は、上記したものに限定されない。たとえば、最小実現、平衡実現などの他の実現手法を用いてもよい。したがって、集中管理装置MC1(指標算出部13)に設定される状態方程式を伝達関数で表したときに、伝達関数G(s)となれば、具体的な状態方程式は特に限定されない。
【0088】
次に、第2実施形態に係る太陽光発電システムPVS2について説明する。なお、第1実施形態と同一あるいは類似の構成要素については、同じ符号を付して、その説明を省略する。第1実施形態においては、調整対象電力として、連系点電力検出部12が検出する連系点電力P(t)を用いた場合を示した。本実施形態においては、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの個別出力電力P
PViout,P
Bkoutおよび電力負荷Lの消費電力P
Lの総和を算出し、これを調整対象電力として用いる場合を示す。以下の説明において、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの個別出力電力P
PViout,P
Bkoutおよび電力負荷Lの消費電力P
Lの総和を「システム総出力」という。したがって、太陽光発電システムPVS2は、システム総出力を目標電力P
Cにするように制御する。
【0089】
図6は、太陽光発電システムPVS2の全体構成を示している。同図に示すように、太陽光発電システムPVS2は、複数の太陽電池SP
i,複数のパワーコンディショナPCS
PVi,複数の蓄電池B
k,複数のパワーコンディショナPCS
Bk、および、集中管理装置MC2を有して構成される。
【0090】
本実施形態に係る太陽光発電システムPVS2は、連系点電力P(t)を検出せず、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの個別出力電力P
PViout,P
Bkoutおよび電力負荷Lの消費電力P
Lの総和(システム総出力P
total(t))を算出する。システム総出力P
total(t)は、演算式「Σ
iP
PViout+Σ
kP
Bkout−P
L」によって求められる。そして、算出したシステム総出力P
total(t)を太陽光発電システムPVS2全体の出力(調整対象電力)として、目標電力P
Cに一致させるように制御している。すなわち、太陽光発電システムPVS2は、連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力P
total(t)を用いて各種電力制御を行う。
【0091】
図7は、
図6に示す太陽光発電システムPVS2の電力制御に関する制御系の機能構成を示している。なお、
図7においては、太陽電池SP
iおよび蓄電池B
kの図示を省略している。また、それぞれ1つ目のパワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkのみ記載している。太陽光発電システムPVS2は、第1実施形態に係る集中管理装置MC1の代わりに、集中管理装置MC2を備えている点で異なる。また、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkの構成も異なる。
【0092】
第2実施形態においては、各パワーコンディショナPCS
PViはそれぞれ、
図7に示すように、電力制御における制御系として、出力電力検出部24および送信部25をさらに備えている。また、各パワーコンディショナPCS
Bkはそれぞれ、
図7に示すように、電力制御における制御系として、出力電力検出部34および送信部35をさらに備えている。
【0093】
出力電力検出部24は、各パワーコンディショナPCS
PViに備えられており、自装置の個別出力電力P
PVioutを検出する。出力電力検出部34は、各パワーコンディショナPCS
Bkに備えられており、自装置の個別出力電力P
Bkoutを検出する。
【0094】
送信部25は、出力電力検出部24が検出した個別出力電力P
PVioutを集中管理装置MC2に送信する。送信部35は、出力電力検出部34が検出した個別出力電力P
Bkoutを集中管理装置MC2に送信する。
【0095】
集中管理装置MC2は、
図7に示すように、電力制御における制御系として、目標電力設定部11、受信部15、総出力算出部16、指標算出部17、および、送信部14を含んでいる。すなわち、第1実施形態に係る集中管理装置MC1と比較して、連系点電力検出部12および指標算出部13の代わりに、受信部15、総出力算出部16、および、指標算出部17を備えている点で異なる。
【0096】
受信部15は、各パワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkから送信される個別出力電力P
PViout,P
Bkoutを受信する。また、受信部15は、電力負荷Lから送信される消費電力P
Lを受信する。
【0097】
総出力算出部16は、受信部15が受信した、個別出力電力P
PViout,P
Bkoutと電力負荷Lの消費電力P
Lとの総和であるシステム総出力P
total(t)を算出する。本実施形態においては、総出力算出部16は、入力されるすべての個別出力電力P
PViout,P
Bkoutおよび電力負荷Lの消費電力P
Lを加算したシステム総出力P
total(t)を算出する。
【0098】
指標算出部17は、総出力算出部16が算出したシステム総出力P
total(t)を、目標電力P
Cにするための指標(制御指標pr
PV,pr
B)を算出する。このとき、指標算出部17は、上記(8)式および上記(9)式に示す状態方程式における連系点電力P(t)の代わりにシステム総出力P
total(t)を用いて、制御指標pr(t)(制御指標pr
PV,pr
B)を算出する。算出された制御指標pr
PVは、送信部14を介して、各パワーコンディショナPCS
PViに送信される。また、算出された制御指標pr
Bは、送信部14を介して、各パワーコンディショナPCS
Bkに送信される。
【0099】
以上のように構成された太陽光発電システムPVS2においても、上記第1実施形態と同様に、指標算出部17による制御指標pr(t)(制御指標pr
PV,pr
B)の算出において、定数以外の伝達関数K(s)と積分要素1/sとを含んだ伝達関数G(s)を、状態空間表現に変換した状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)を用いている。これにより、伝達関数G(s)および伝達関数K(s)の設定に応じて、指標算出部17が制御指標pr
PV,pr
Bを算出する際の、過渡応答性、外乱耐性、ノイズ除去特性、ロバスト安定性などを柔軟に調整することができる。
【0100】
また、第2実施形態におけるスケジュール制御においては、調整対象電力として、太陽光発電システムPVS2全体の出力電力(システム総出力P
total(t))を用いるのでなく、複数のパワーコンディショナPCS
PVi,PCS
Bkを複数のグループに分けたときの当該グループ毎の出力電力を用いてもよい。この場合、グループ毎に目標電力を設定して、各グループにおける出力電力が当該グループの目標電力となるようにスケジュール制御を行う。例えば、複数のパワーコンディショナPCS
PViを第1グループとし、複数のパワーコンディショナPCS
Bkを第2グループとして、2つのグループに分ける。そして、第1グループと第2グループとでそれぞれ、スケジュール制御してもよい。このように、複数のグループ毎にスケジュール制御を行う場合、指標算出部17には、複数のグループ毎に制御指標pr(t)を算出するための状態方程式(上記(8)式および上記(9)式参照)が設定される。例えば、複数のパワーコンディショナPCS
PViを第1グループとし、複数のパワーコンディショナPCS
Bkを第2グループとして、2つのグループに分けた場合、指標算出部27には、制御指標pr
PVを算出するための状態方程式と制御指標pr
Bを算出するための状態方程式とが設定される。この指標算出部17に設定される状態方程式は、複数のグループ毎にそれぞれ異なる状態方程式が設定されていてもよいし、当該異なる複数の状態方程式を1つにまとめた共通の状態方程式が設定されていてもよい。
【0101】
なお、上記第1実施形態においても、電力線90の配線によっては、複数の連系点電力検出部12を設けることで、複数のグループ毎に、スケジュール制御することも可能である。この場合、上記と同様に、指標算出部13には、複数のグループ毎に異なる状態方程式が設定されていてもよいし、上記共通の状態方程式が設定されていてもよい。
【0102】
第1および第2実施形態では、太陽光発電システムPVS1,PVS2に、複数のパワーコンディショナPCS
Bkを備えている場合を示したが、これを備えていなくてもよい。この場合、集中管理装置MC1,MC2は、第1実施形態,第2実施形態と同様に制御指標pr(t)(制御指標pr
PV)を算出し、算出した制御指標pr
PVを複数のパワーコンディショナPCS
PViのそれぞれに送信する。そして、複数のパワーコンディショナPCS
PViは、上記(11)式に示す最適化問題の代わりに下記(11’)式に示す最適化問題に基づいて、個別目標電力P
PVirefを算出する。これにより、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【数23】
【0103】
第1および第2実施形態では、本開示の電力システムが太陽光発電システムである場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、他の再生可能エネルギー(風力、水力、バイオマス、地熱など)を利用した発電システム、燃料電池による発電システム、化石燃料を利用した発電システム、回転機形の発電機による発電システム、ネガワット取引を行うアグリゲータによる、需要家の負荷を管理する仮想的な発電システム、各種コジェネレーションシステム、あるいは、EV(Electric Vehicle)スタンドを利用した電力システムなどであってもよい。なお、アグリゲータは、実際に発電を行っているのではないが、ネガワット取引により、節約できた電力を発電した電力とみなしている。また、EVスタンドは、EVやPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの充放電を行う設備である。EVスタンドは、実際に発電を行っているのではないが、EVやPHEVに蓄積された電力を放電させて、この電力を発電した電力とみなしている。これらの電力システムの場合でも、集中管理装置は、連系点電力を検出するか個別出力電力の総和を算出して調整対象電力とし、指標を算出して各電力制御装置に送信する。そして、各電力システムの電力制御装置は、受信した指標を用いた最適化問題に基づいて、自装置の個別目標電力を算出し、当該個別目標電力となるように個別出力電力を制御する。再生可能エネルギーを利用した発電システムや燃料電池による発電システムの場合、電力制御装置は、パワーコンディショナである。また、回転機形の発電機による発電システムや各種コジェネレーションシステムの場合、電力制御装置は、発電機およびこれを制御する制御装置である。また、アグリゲータによる発電システムの場合、電力制御装置は、需要家の負荷およびこれを制御する制御装置である。なお、アグリゲータによる発電システムにおいては、節約できた電力を発電した電力とみなしているので、需要家の負荷の通常の消費電力から削減した電力が個別出力電力になる。また、EVスタンドを利用した電力システムの場合、電力制御装置は、EVやPHEVを接続したEVスタンドおよびこれを制御する制御装置である。なお、EVスタンドを利用した電力システムは、EVやPHEVに備えられたバッテリーが蓄電池B
kに相当し、EVスタンドおよびこれを制御する制御装置がパワーコンディショナPCS
Bkに相当するようにも考えられる。また、上記電力システムは、上記した発電システムを併用したものとしてもよい。例えば、太陽光発電システムに回転機形の発電機を追加して、集中管理装置が太陽光発電システムの各パワーコンディショナおよび発電機の制御装置に指標を送信して全体の出力を制御する構成としてもよい。
【0104】
本開示に係る集中管理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載の内容を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。