特開2019-165612(P2019-165612A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000003
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000004
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000005
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000006
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000007
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000008
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000009
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000010
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000011
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000012
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000013
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000014
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000015
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000016
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000017
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000018
  • 特開2019165612-車両駆動装置 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-165612(P2019-165612A)
(43)【公開日】2019年9月26日
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20190830BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20190830BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20190830BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20190830BHJP
【FI】
   B60L15/20 S
   B60K1/00
   B60K7/00
   B60K6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-143353(P2018-143353)
(22)【出願日】2018年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2018-52636(P2018-52636)
(32)【優先日】2018年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐内 英樹
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB11
3D202BB23
3D202DD05
3D202EE02
3D202FF02
3D202FF03
3D235AA01
3D235CC12
3D235CC32
3D235CC42
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC14
5H125BA05
5H125BA06
5H125CA01
5H125EE42
5H125FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動機による駆動の強化と車両重量増加の悪循環に陥ることなく、インホイールモータを使用して、効率的に車両を駆動することができる車両駆動装置を提供する。
【解決手段】車両の駆動にインホイールモータを使用する車両駆動装置であって、車両の車輪に設けられると共に、車輪を駆動するインホイールモータと、車両の車体に設けられると共に、車輪を駆動する車体側モータと、運転者の要求出力に基づいてインホイールモータ及び車体側モータを制御する制御器と、を有する。制御器は、運転者の要求出力が所定の出力未満のときに、車体側モータに駆動力を発生させる一方、インホイールモータには駆動力を発生させず、さらに、制御器は、運転者の要求出力が所定の出力以上の場合において、車体側モータ及びインホイールモータに駆動力を発生させることを特徴としている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動にインホイールモータを使用する車両駆動装置であって、
上記車両の車輪に設けられると共に、上記車輪を駆動するインホイールモータと、
上記車両の車体に設けられると共に、車輪を駆動する車体側モータと、
運転者の要求出力に基づいて上記インホイールモータ及び上記車体側モータを制御する制御器と、を有し、
上記制御器は、運転者の要求出力が所定の出力未満のときに、上記車体側モータに駆動力を発生させる一方、上記インホイールモータには駆動力を発生させず、
さらに、上記制御器は、運転者の要求出力が上記所定の出力以上の場合において、上記車体側モータ及び上記インホイールモータに駆動力を発生させる、ように構成されていることを特徴とする車両駆動装置。
【請求項2】
さらに、上記車両のアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサを有し、上記制御器は、上記アクセル開度センサによって検出されたアクセルペダルの踏込量に基づいて運転者の要求出力を設定するように構成され、アクセルペダルの踏込量が大きい場合には、アクセルペダルの踏込量が小さい場合よりも、運転者の要求出力が大きな値に設定される、ように構成されている請求項1記載の車両駆動装置。
【請求項3】
上記インホイールモータは、減速機構を介することなく、上記インホイールモータが設けられた車輪を直接駆動する、ように構成されている請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
上記インホイールモータは、誘導電動機である請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
上記車体側モータは、永久磁石電動機である請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項6】
上記インホイールモータは上記車両の前輪を駆動し、上記車体側モータは上記車両の後輪を駆動するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項7】
上記インホイールモータは上記車両の後輪を駆動し、上記車体側モータは上記車両の前輪を駆動するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項8】
上記インホイールモータ及び上記車体側モータは、上記車両の前輪を駆動するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項9】
上記インホイールモータ及び上記車体側モータは、上記車両の後輪を駆動するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両駆動装置に関し、特に、車両の駆動にインホイールモータを使用する車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界各国において車両の排出ガス規制が強化され、車両の燃費、走行距離当たりの二酸化炭素排出量等に対する要求が厳しくなっている。また、内燃機関で走行する車両の市街地への進入を規制している都市も存在する。これらの要求を満足するため、内燃機関及び電動機を備えたハイブリッド駆動の車両や、電動機のみによって駆動される電気自動車が開発され、広く普及している。
【0003】
特許第5280961号公報(特許文献1)には、車両の駆動制御装置が記載されている。この駆動制御装置においては、車両の後輪側に駆動装置が設けられており、この駆動装置に備えられた2つの電動機が、車両の後輪を夫々駆動する。また、この駆動装置とは別に、内燃機関と電動機が直列に接続された駆動ユニットが車両の前部に設けられている。駆動ユニットの動力はトランスミッション及び主駆動軸を介して前輪に伝達され、駆動装置の動力は車両の後輪に伝達される。また、この駆動制御装置において、車両の発進時には、駆動装置の2つの電動機が駆動され、この駆動力が車両の後輪に夫々伝達される。さらに、車両の加速時には駆動ユニットも駆動力を発生し、駆動ユニット、及び駆動装置の2つの電動機による四輪駆動となる。このように、特許文献1記載の駆動制御装置においては、主に車両の後輪用に夫々設けられた2つの電動機が駆動力を発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5280961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機による車両の駆動は、走行中に二酸化炭素を排出しないため、年々強化される排出ガス規制をクリアするためには有利であるが、バッテリに蓄積可能な電力に限界があり、十分に長い航続距離を確保することが困難である。このため、車両用の駆動装置として、電動機と共に内燃機関を搭載したハイブリッド駆動装置が広く普及している。また、このようなハイブリッド駆動装置においても、走行中の二酸化炭素排出量を低減するため、特許文献1に記載されている車両のように、主として電動機による駆動力を利用する車両が増加している。
【0006】
このように、電動機の駆動力を主体とするハイブリッド駆動装置では、十分な走行性能を確保するために大容量のバッテリを搭載する必要がある。また、電動機により十分な駆動力を得るためには、比較的高電圧で電動機を作動させる必要がある。このため、電動機の駆動力を主体とするハイブリッド駆動装置では、大容量のバッテリが要求されると共に、電動機に高電圧を供給する電気系統を電気的に十分に絶縁する必要があり、これらが車両の全体的な重量を増加させ、車両の燃費を悪化させる。さらに、重量の大きい車両を電動機で駆動するために、更なる大容量のバッテリや高電圧が必要となり、これが更なる重量の増加を生む悪循環に陥るという問題がある。
【0007】
また、特許文献1記載の車両の駆動制御装置では、後輪を駆動する電動機が後輪のドライブシャフトに直結されているが、この電動機を後輪に内蔵させ、所謂インホイールモータとすることが考えられる。インホイールモータを採用した場合には、モータと車輪を連結するドライブシャフトが不要になるため、ドライブシャフト分の重量を削減することができるというメリットがある。しかしながら、特許文献1記載の発明のように、車両の発進、加速、クルーズ走行を行うための電動機としてインホイールモータを採用したとしても、十分な走行性能を得るためには大型の電動機が必要となり、重量の増加を避けることができない。このため、インホイールモータを採用したメリットを十分に享受することができない。
【0008】
従って、本発明は、電動機による駆動の強化と車両重量増加の悪循環に陥ることなく、インホイールモータを使用して、効率的に車両を駆動することができる車両駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両の駆動にインホイールモータを使用する車両駆動装置であって、車両の車輪に設けられると共に、車輪を駆動するインホイールモータと、車両の車体に設けられると共に、車輪を駆動する車体側モータと、運転者の要求出力に基づいてインホイールモータ及び車体側モータを制御する制御器と、を有し、制御器は、運転者の要求出力が所定の出力未満のときに、車体側モータに駆動力を発生させる一方、インホイールモータには駆動力を発生させず、さらに、制御器は、運転者の要求出力が所定の出力以上の場合において、車体側モータ及びインホイールモータに駆動力を発生させる、ように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、制御器は、運転者の要求出力に基づいて、車輪に設けられ、車輪を駆動するインホイールモータを制御する。また、制御器は、運転者の要求出力が所定の出力未満のときは、車体側モータに駆動力を発生させる一方、インホイールモータには駆動力を発生させない。さらに、制御器は、運転者の要求出力が所定の出力以上の場合において、車体側モータ及びインホイールモータに駆動力を発生させる。
【0011】
このため、本発明によれば、運転者の要求出力が所定の出力以上の場合に、車体側モータと共に、インホイールモータが駆動力を発生するように構成されているので、インホイールモータに大出力が要求されることはない。この結果、小出力の小型の電動機をインホイールモータとして採用することが可能となり、インホイールモータを使用して効率的に車両を駆動することが可能になる。
【0012】
本発明において、好ましくは、車両のアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサを有し、制御器は、アクセル開度センサによって検出されたアクセルペダルの踏込量に基づいて運転者の要求出力を設定するように構成され、アクセルペダルの踏込量が大きい場合には、アクセルペダルの踏込量が小さい場合よりも、運転者の要求出力が大きな値に設定される、ように構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、アクセルペダルの踏込量が大きい場合に、運転者の要求出力が大きな値に設定されるので、運転者の意図を、より正確に要求出力に反映させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、インホイールモータは、減速機構を介することなく、インホイールモータが設けられた車輪を直接駆動する、ように構成されている。
【0015】
本発明においては、要求出力が所定出力以上の場合にインホイールモータが、車体側モータと共に駆動力を発生するので、低出力域においてインホイールモータが大きなトルクを要求されることはない。このため、減速機構を設けなくともインホイールモータはトルクを要求される回転領域において十分なトルクを発生することができる。また、上記のように構成された本発明によれば、減速機構を介さずに車輪が直接駆動されるので、極めて重量が大きくなる減速機構を省略することができると共に、減速機構の回転抵抗による出力損失を回避することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、インホイールモータは、誘導電動機である。
一般に、誘導電動機は、高回転領域において大きな出力トルクが得られると共に、軽量に構成することができる。このため、本発明において、低回転領域において大きなトルクを要求されることがないインホイールモータに誘導電動機を採用することにより、必要な回転領域で十分なトルクを発生することができる電動機を軽量に構成することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、車体側モータは、永久磁石電動機である。
一般に、永久磁石電動機は、起動トルクが比較的大きく、低回転領域で大きなトルクを得ることができる。このため、本発明において、低回転領域においても大きなトルクを要求される車体側モータに永久磁石電動機を採用することにより、必要な回転領域で十分なトルクを発生することができる電動機を軽量に構成することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、インホイールモータは車両の前輪を駆動し、車体側モータは車両の後輪を駆動するように構成されている。
【0019】
本発明において、好ましくは、インホイールモータは車両の後輪を駆動し、車体側モータは車両の前輪を駆動するように構成されている。
【0020】
本発明において、好ましくは、インホイールモータ及び車体側モータは、車両の前輪を駆動するように構成されている。
【0021】
本発明において、好ましくは、インホイールモータ及び車体側モータは、車両の後輪を駆動するように構成されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハイブリッド駆動装置によれば、電動機による駆動の強化と車両重量増加の悪循環に陥ることなく、インホイールモータを使用して、効率的に車両を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図2】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両の前部を上方から見た透視図である。
図3】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両の前部を側面から見た透視図である。
図4図2のiv−iv線に沿う断面図である。
図5】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置における各種信号の入出力を示すブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置の電源構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置において、キャパシタに電力が回生された場合における電圧の変化の一例を模式的に示す図である。
図8】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置において使用されている各モータの出力と車速の関係を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置に採用されている副駆動モータの構造を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置における制御装置による制御のフローチャートである。
図11】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置の各モードにおける動作の一例を示すグラフである。
図12】本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置において、トランスミッションをシフトダウン又はシフトアップした場合における車両に作用する加速度の変化を模式的に示す図である。
図13】本発明の第2実施形態によるハイブリッド駆動装置における制御装置による制御のフローチャートである。
図14】本発明の第2実施形態によるハイブリッド駆動装置の各モードにおける動作の一例を示すグラフである。
図15】本発明の第1の変形実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図16】本発明の第2の変形実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図17】本発明の第3の変形実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。図2は本実施形態のハイブリッド駆動装置を搭載した車両の前部を上方から見た透視図であり、図3は車両の前部を側面から見た透視図である。図4は、図2のiv−iv線に沿う断面図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による車両駆動装置であるハイブリッド駆動装置を搭載した車両1は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2aを駆動する所謂FR(Front engine, Rear drive)車である。また、後述するように、後輪2aは主駆動電動機である主駆動モータによっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪2bは、副駆動電動機である副駆動モータによって駆動される。
【0026】
車両1に搭載された本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10は、後輪2aを駆動するエンジン12と、後輪2aに駆動力を伝達する動力伝達機構14と、後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、蓄電器であるバッテリ18と、前輪2bを駆動する副駆動モータ20と、キャパシタ22と、制御器である制御装置24と、を有する。
【0027】
エンジン12は、車両1の主駆動輪である後輪2aに対する駆動力を発生するための内燃機関である。図2乃至4に示すように、本実施形態においては、エンジン12として直列4気筒エンジンが採用されており、車両1の前部に配置されたエンジン12が動力伝達機構14を介して後輪2aを駆動するようになっている。また、図4に示すように、本実施形態においては、エンジン12は、フライホイールを備えていないフライホイールレスエンジンであり、車両1のサブフレーム4aにエンジンマウント6aを介して装着されている。さらに、サブフレーム4aは、フロントサイドフレーム4bの下部、及びその後端のダッシュパネル4c下部に締結固定されている。
【0028】
動力伝達機構14は、エンジン12が発生した駆動力を主駆動輪である後輪2aに伝達するように構成されている。図1乃至図3に示すように、動力伝達機構14は、エンジン12に接続されたプロペラシャフト14a、クラッチ14b、及び有段変速機であるトランスミッション14cを備えている。プロペラシャフト14aは、車両1の前部に配置されたエンジン12から、プロペラシャフトトンネル4d(図2)の中を車両1の後方へ向けて延びている。プロペラシャフト14aの後端は、クラッチ14bを介してトランスミッション14cに接続されている。トランスミッション14cの出力軸は後輪2aの車軸(図示せず)に接続され、後輪2aを駆動する。
なお、本実施形態において、トランスミッション14cは、所謂トランスアクスル配置である。これにより、エンジン12の直後の位置に外径の大きな変速機の本体が存在しなくなるので、フロアトンネル(プロペラシャフトトンネル4d)の幅を小さくすることができ、乗員の中央側足元空間を確保して乗員に真正面に正対した左右対称な下半身姿勢をとらせることが可能となる。更に、この乗員の姿勢を確保しつつ主駆動モータ16の外径や、長さを出力に応じた十分な大きさにすることが容易になる。
【0029】
主駆動モータ16は、主駆動輪に対する駆動力を発生するための電動機であって、車両1の車体上に設けられ、エンジン12の後ろ側に、エンジン12に隣接して配置されており、車体側モータとして機能する。また、主駆動モータ16に隣接してインバータ(INV)16aが配置されており、このインバータ16aにより、バッテリ18からの電流が交流に変換されて主駆動モータ16に供給される。さらに、図2及び図3に示すように、主駆動モータ16はエンジン12と直列に接続されており、主駆動モータ16が発生した駆動力も動力伝達機構14を介して後輪2aに伝達される。或いは、主駆動モータ16を動力伝達機構14の途中に接続し、動力伝達機構14の一部を介して駆動力が後輪2aに伝達されるように本発明を構成することもできる。また、本実施形態においては、主駆動モータ16として、48Vで駆動される25kWの永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。
【0030】
バッテリ18は、主として主駆動モータ16を作動させる電力を蓄積するための蓄電器である。また、図2に示すように、本実施形態においてバッテリ18は、プロペラシャフト14aをカバーするトルクチューブ14dを取り囲むように、プロペラシャフトトンネル4dの内部に配置されている。さらに、本実施形態においては、バッテリ18として、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ(LIB)が使用されている。
なお、上記のように、本実施形態においてはトランスアクスル配置が採用されているため、これにより生じたフロアトンネル(プロペラシャフトトンネル4d)前方の空間に向けて、バッテリ18を収容する容積を拡大することができる。これにより、フロアトンネルの幅を大きくして乗員の中央側空間を狭めることなく、バッテリ18容量の確保、拡大が可能になる。
【0031】
図4に示すように、副駆動モータ20は、副駆動輪である前輪2bに対する駆動力を発生するように、車両1のバネ下に、前輪2b各輪に設けられている。本実施形態においては、前輪2b各輪はダブルウイッシュボーンタイプのサスペンションで支持され、アッパアーム8a、ロアアーム8b、スプリング8c、及びショックアブソーバ8dにより懸架されている。また、副駆動モータ20はインホイールモータであり、前輪2b各輪のホイール内に夫々収容されている。従って、副駆動モータ20は、車両1の所謂「バネ下」に設けられて前輪2bを夫々駆動するように構成されている。また、図1に示すように、各副駆動モータ20には、キャパシタ(CAP)22からの電流が、各インバータ20aにより夫々交流に変換されて供給される。さらに、本実施形態においては、副駆動モータ20には減速機構である減速機が設けられておらず、副駆動モータ20の駆動力は前輪2bに直接伝えられ、車輪が直接駆動される。また、本実施形態においては、各副駆動モータ20として、17kWの誘導電動機が夫々採用されている。
【0032】
キャパシタ(CAP)22は、副駆動モータ20によって回生された電力を蓄積するように設けられている。図2及び図3に示すように、キャパシタ22はエンジン12の直前に配置されると共に、車両1の前輪2b各輪に設けられた副駆動モータ20に電力を供給する。図4に示すように、キャパシタ22は、その両側の側面から突出したブラケット22aが、キャパシタ用マウント6bを介してフロントサイドフレーム4bに支持されている。また、副駆動モータ20からキャパシタ22へ延びるハーネス22bは、ホイールハウス壁面の側部上端を通ってエンジンルーム内に通されている。さらに、キャパシタ22は、バッテリ18よりも高い電圧で電荷を蓄積するように構成されると共に、副駆動輪である左右の前輪2bの間の領域内に配置される。主としてキャパシタ22に蓄積された電力により駆動される副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動される。
【0033】
制御装置24は、エンジン12、主駆動モータ16、及び副駆動モータ20を制御して、電動機走行モード及び内燃機関走行モードを実行するように構成されている。具体的には、制御装置24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。制御装置24による制御の詳細は後述する。
【0034】
また、図1に示すように、キャパシタ22の近傍には、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26a及び低圧DC/DCコンバータ26bが夫々配置されている。これらの高圧DC/DCコンバータ26a、低圧DC/DCコンバータ26b、キャパシタ22、及び2つのインバータ20aはユニット化され、統合ユニットを構成している。
【0035】
次に、図5乃至図8を参照して、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10の全体構成、電源構成、及び各モータによる車両1の駆動を説明する。
図5は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10における各種信号の入出力を示すブロック図である。図6は、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10の電源構成を示すブロック図である。図7は、本実施形態のハイブリッド駆動装置10において、キャパシタ22に電力が回生された場合における電圧の変化の一例を模式的に示す図である。図8は、本実施形態のハイブリッド駆動装置10において使用されている各モータの出力と車速の関係を示す図である。
【0036】
まず、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10における各種信号の入出力を説明する。図5に示すように、制御装置24には、モード選択スイッチ40、車速センサ42、アクセル開度センサ44、ブレーキセンサ46、エンジン回転数センサ48、自動変速機(AT)入力回転センサ50、自動変速機(AT)出力回転センサ52、電圧センサ54、及び電流センサ56によって検出された検出信号が夫々入力される。また、制御装置24は、主駆動モータ用のインバータ16a、副駆動モータ20用のインバータ20a、高圧DC/DCコンバータ26a、低圧DC/DCコンバータ26b、燃料噴射弁58、点火プラグ60、及びトランスミッション14cの油圧ソレノイド弁62に制御信号を夫々送り、これらを制御するように構成されている。
【0037】
次に、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10の電源構成を説明する。図6に示すように、ハイブリッド駆動装置10に備えられているバッテリ18とキャパシタ22は直列に接続されている。主駆動モータ16はバッテリ18の基準出力電圧である約48Vで駆動され、副駆動モータ20はバッテリ18の出力電圧とキャパシタ22の端子間電圧を合算した48Vよりも高い、最大120Vの電圧で駆動される。このため、副駆動モータ20は、常にキャパシタ22を介して供給された電力によって駆動される。
【0038】
また、主駆動モータ16にはインバータ16aが取り付けられており、バッテリ18の出力を交流に変換した上で永久磁石電動機である主駆動モータ16が駆動される。同様に、各副駆動モータ20にはインバータ20aが夫々取り付けられており、バッテリ18及びキャパシタ22の出力を交流に変換した上で誘導電動機である副駆動モータ20が駆動される。なお、副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動されるため、副駆動モータ20に電力を供給するハーネス(電線)22bには高い絶縁性が要求される。しかしながら、各副駆動モータ20に近接してキャパシタ22が配置されているため、ハーネス22bの絶縁性を高くすることによる重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0039】
さらに、車両1の減速時等には、主駆動モータ16及び各副駆動モータ20は発電機として機能し、車両1の運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ16によって回生された電力はバッテリ18に蓄積され、各副駆動モータ20によって回生された電力は主としてキャパシタ22に蓄積される。
【0040】
また、バッテリ18とキャパシタ22の間には電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26aが接続されており、この高圧DC/DCコンバータ26aはキャパシタ22に蓄積された電荷が不足しているとき(キャパシタ22の端子間電圧が低下したとき)、バッテリ18の電圧を昇圧してキャパシタ22に充電する。一方、各副駆動モータ20によるエネルギーの回生により、キャパシタ22の端子間電圧が所定電圧以上に上昇した場合には、キャパシタ22に蓄積された電荷を降圧してバッテリ18に印加し、バッテリ18の充電を行う。即ち、副駆動モータ20によって回生された電力はキャパシタ22に蓄積された後、蓄積された電荷の一部が、高圧DC/DCコンバータ26aを介してバッテリ18に充電される。
【0041】
さらに、バッテリ18と車両1の12V電装品25の間には、低圧DC/DCコンバータ26bが接続されている。ハイブリッド駆動装置10の制御装置24や、車両1の電装品25の多くは12Vの電圧で作動するので、バッテリ18に蓄積された電荷を低圧DC/DCコンバータ26bにより12Vに降圧して、これらの機器に供給する。
【0042】
次に、図7を参照して、キャパシタ22に対する充電及び放電を説明する。
図7に示すように、キャパシタ22の電圧は、バッテリ18によるベース電圧と、キャパシタ22自体の端子間電圧の合計となる。車両1の減速時等には、各副駆動モータ20により電力の回生が行われ、回生された電力はキャパシタ22に充電される。キャパシタ22への充電が行われると比較的急激に端子間電圧が上昇する。充電によりキャパシタ22の電圧が所定電圧以上に上昇すると、高圧DC/DCコンバータ26aによりキャパシタ22の電圧が降圧され、バッテリ18への充電が行われる。図7に示すように、このキャパシタ22からバッテリ18への充電は、キャパシタ22への充電よりも比較的緩やかに行われ、キャパシタ22の電圧は適正電圧まで比較的緩やかに低下される。
【0043】
即ち、各副駆動モータ20により回生された電力は一時的にキャパシタ22に蓄積され、その後、バッテリ18へ緩やかに充電される。なお、回生が行われる期間によっては、各副駆動モータ20による電力の回生と、キャパシタ22からバッテリ18への充電がオーバーラップして行われる場合もある。
一方、主駆動モータ16によって回生された電力は、バッテリ18に直接充電される。
【0044】
次に、図8を参照して、本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10における車速と各モータの出力の関係を説明する。図8は、本実施形態のハイブリッド駆動装置10において、車両1の速度と、各速度における各モータの出力の関係を示すグラフである。図8において、主駆動モータ16の出力を破線で示し、1つの副駆動モータ20の出力を一点鎖線で、2つの副駆動モータ20の出力の合計を二点鎖線で、全てのモータの出力の合計を実線で示している。なお、図8は、車両1の速度を横軸とし、各モータの出力を縦軸として示しているが、車両1の速度とモータの回転数には一定の関係が存在するので、横軸をモータ回転数とした場合でも、各モータの出力は図8と同様の曲線を描く。
【0045】
本実施形態においては主駆動モータ16には永久磁石電動機が採用されているため、図8に破線で示すように、モータ回転数が低い低車速域で主駆動モータ16の出力が大きく、車速が速くなるにつれて出力可能なモータ出力が減少する。即ち、本実施形態において、主駆動モータ16は、約48Vで駆動され、1000rpm程度まで最大トルクである約200Nmのトルクを出力し、約1000rpm以上で回転数の増加と共にトルクが低下する。また、本実施形態において、主駆動モータ16は、最低速域において約20kW程度の連続出力が得られ、最大出力約25kWが得られるように構成されている。
【0046】
これに対して、副駆動モータ20には誘導電動機が採用されているため、図8に一点鎖線及び二点鎖線で示すように、低車速域では副駆動モータ20の出力は極めて小さく、車速が速くなるにつれて出力が増大し、車速約130km/h付近で最大出力が得られた後、モータ出力は減少する。本実施形態において、副駆動モータ20は、約120Vで駆動され、車速約130km/h付近で1台当たり約17kW、2台合計で約34kWの出力が得られるように構成されている。即ち、本実施形態において、副駆動モータ20は、約600乃至800rpmでトルクカーブがピークをもち、最大トルク約200Nmが得られる。
【0047】
図8の実線には、これら主駆動モータ16及び2台の副駆動モータ20の出力の合計が示されている。このグラフから明らかなように、本実施形態においては、車速約130km/h付近で最大出力約53kWが得られており、この車速における、この最大出力でWLTP試験において要求される走行条件を満足することができる。なお、図8の実線では、低車速域においても2台の副駆動モータ20の出力値が合算されているが、後述するように、実際には低車速域では各副駆動モータ20が駆動されることはない。即ち、発進時及び低車速域においては主駆動モータ16のみで車両が駆動され、高車速域で大出力が必要とされたとき(高車速域で車両1を加速させるとき等)のみ2台の副駆動モータ20が出力を発生する。このように、高回転領域で大きな出力を発生することができる誘導電動機(副駆動モータ20)を、高速域のみで使用することにより、車両重量の増加を低く抑えながら必要なとき(所定速度以上での加速時等)に十分な出力を得ることができる。
【0048】
次に、図9を参照して、本発明の第1実施形態のハイブリッド駆動装置10に採用されている副駆動モータ20の構成を説明する。図9は、副駆動モータ20の構造を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、副駆動モータ20は、ステータ28と、このステータの周囲で回転するロータ30から構成されたアウターロータタイプの誘導電動機である。
【0049】
ステータ28は、概ね円板状のステータベース28aと、このステータベース28aの中心から延びるステータシャフト28bと、このステータシャフト28bの周囲に取り付けられたステータコイル28cと、を有する。また、ステータコイル28cは電気絶縁液室32に収納されており、この中に満たされた電気絶縁液32aに浸漬され、これにより沸騰冷却される。
【0050】
ロータ30は、ステータ28の周囲を取り囲むように概ね円筒状に構成されており、一端が閉塞された概ね円筒形に構成されたロータ本体30aと、ロータ本体30aの内周壁面に配置されたロータコイル30bと、を有する。ロータコイル30bは、ステータコイル28cが生成する回転磁界により誘導電流が発生するように、ステータコイル28cに対向するように配置されている。また、ロータ30は、ステータ28の周囲で円滑に回転するように、ステータシャフト28bの先端に取り付けられたベアリング34によって支持されている。
【0051】
ステータベース28aは、車両1の前輪を懸架するアッパアーム8a及びロアアーム8b(図4)によって支持されている。一方、ロータ本体30aは、前輪2bのホイール(図示せず)に直接固定されている。ステータコイル28cには、インバータ20aによって交流に変換された交流電流が流され、回転磁界が生成される。この回転磁界によりロータコイル30bに誘導電流が流れ、ロータ本体30aを回転させる駆動力が発生する。このように、各副駆動モータ20により生成された駆動力は、直接、各前輪2bのホイール(図示せず)を回転駆動する。
【0052】
次に、図10及び図11を参照して、制御装置24により実行される電動機走行モード及び内燃機関走行モードの動作を説明する。図10は、制御装置24による制御のフローチャートであり、図11は、各モードにおける動作の一例を示すグラフである。なお、図10に示すフローチャートは、車両1の作動中、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0053】
図11に示すグラフは、上段から順に、車両1の速度、エンジン12が発生するトルク、主駆動モータ16が発生するトルク、副駆動モータ20が発生するトルク、キャパシタ22の電圧、キャパシタ22電流、及びバッテリ18電流を示している。なお、主駆動モータ16のトルク、及び副駆動モータ20のトルクを示すグラフにおいて、正の値は各モータがトルクを発生している状態を意味し、負の値は各モータが車両1の運動エネルギーを回生している状態を意味する。また、キャパシタ22電流、及びバッテリ18電流を示すグラフにおいて、負の値は各モータに電力を供給(放電)している状態を意味し、正の値は各モータにおいて回生された電力を充電している状態を意味する。
【0054】
まず、図10のステップS1においては、車両1が内燃機関走行モード(ENGモード)に設定されているか否かが判断される。即ち、車両1には内燃機関走行モードか、電動機走行モード(EVモード)の何れかを選択するモード選択スイッチ40(図5)が備えられており、ステップS1においては、どちらのモードに設定されているかが判断される。図11の時刻t1においては、電動機走行モードに設定されているため、図10のフローチャートにおける処理はステップS2に移行する。
【0055】
次に、ステップS2においては、車両1が所定車速以上であるか否かが判断され、所定車速以上である場合にはステップS6に進み、所定車速未満である場合にはステップS3に進む。図11の時刻t1においては、運転者が車両1を発進させており、車速が低いためフローチャートにおける処理はステップS3に移行する。
【0056】
さらに、ステップS3においては、車両1が減速されているか(車両1のブレーキペダル(図示せず)が操作されているか)否かが判断され、減速されている場合にはステップS5に進み、加速又は定速走行中である(ブレーキセンサ46(図5)によりブレーキペダルの操作が検出されていない)場合にはステップS4に進む。図11の時刻t1においては、運転者が車両1を発進させ、加速している(アクセル開度センサ44(図5)により、車両1のアクセルペダルの所定量以上の操作が検出されている)のでフローチャートにおける処理はステップS4に移行して、図10のフローチャートによる1回の処理が終了する。ステップS4においては、主駆動モータ16がトルクを発生し、車速が上昇する(図11の時刻t1〜t2)。この際、主駆動モータ16に電力を供給するバッテリ18から放電電流が流れる一方、副駆動モータ20はトルクを発生させないため、キャパシタ22からの放電電流はゼロのままであり、キャパシタ22の電圧も変化しない。これらの電流、電圧は、電圧センサ54及び電流センサ56(図5)によって検出され、制御装置24に入力される。また、図11の時刻t1〜t2では、電動機走行モードに設定されているため、エンジン12は駆動されない。即ち、制御装置24がエンジン12の燃料噴射弁58による燃料噴射を停止させ、点火プラグ60による点火を行わないため、エンジン12はトルクを発生しない。
【0057】
図11に示す例では、時刻t1〜t2の間、車両1を加速させた後、時刻t3まで車両1は定速走行されている。この間、図10のフローチャートによる処理は、ステップS1→S2→S3→S4の処理が繰り返し実行される。この低速走行中は、主駆動モータ16が発生するトルクが加速中よりも小さくなるため、バッテリ18から放電される電流も小さくなる。
【0058】
次に、図11の時刻t3において、運転者が車両1のブレーキペダル(図示せず)を操作すると、図10のフローチャートにおける処理は、ステップS3→S5に移行するようになる。ステップS5においては、主駆動モータ16による駆動が停止(トルクを発生しない)されると共に、副駆動モータ20により、車両1の運動エネルギーが電力として回生される。運動エネルギーの回生により車両1は減速され、バッテリ18からの放電電流がゼロとなる一方、副駆動モータ20による電力の回生により、キャパシタ22に充電電流が流れ、キャパシタ22の電圧が上昇する。
【0059】
図11の時刻t4において、車両1が停止すると、キャパシタ22への充電電流がゼロとなり、キャパシタ22の電圧も一定になる。次いで、時刻t5において再び車両1が発進され、定速走行に至った(時刻t6)後、車両1の減速が開始(時刻t7)されるまでは、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→S2→S3→S4の処理が繰り返し実行される。時刻t7において車両の減速が開始されると、図10のフローチャートにおいてはステップS1→S2→S3→S5の処理が繰り返し実行され、副駆動モータ20による電力の回生が行われる。このように、市街地の中などで比較的低速で発進、停止が繰り返される間は、電動機走行モードに設定され、車両1は純粋に電気自動車(EV)として機能し、エンジン12はトルクを発生しない。
【0060】
さらに、図11の時刻t8において車両1が発進されると、図10のフローチャートにおいてはステップS1→S2→S3→S4の処理が繰り返し実行され、車両1が加速される。次いで、時刻t9において、車速センサ42(図5)によって検出された車両1の速度が所定の第1車速を超えると、フローチャートにおける処理は、ステップS2→S6に移行するようになる。ステップS6においては、車両1が減速しているか(ブレーキペダルを操作しているか)否かが判断される。時刻t9において車両1は減速していないため、フローチャートにおける処理はステップS7に進む。ステップS7においては、車両1が所定値以上加速されているか(車両1のアクセルペダルが所定量以上操作されているか)否かが判断される。なお、本実施形態において、所定の第1車速は、走行速度=0km/hよりも大きい、時速約100km/hに設定されている。
【0061】
図11に示す例においては、時刻t9において車両1が所定値以上加速されているため、ステップS8に進み、ここでは主駆動モータ16が駆動されると共に、副駆動モータ20も駆動される。このように、電動機走行モードにおいて、モータに高出力が要求される所定の第1車速以上の車速で、所定値以上の加速が行われると、必要な動力を得るために主駆動モータ16及び副駆動モータ20に電力が供給され、これらによって車両1が駆動される。換言すれば、制御装置24は、主駆動モータ16に駆動力を発生させることにより、車両1を発進(時刻t8)させた後、車速センサ42によって検出された車両1の走行速度が第1車速に到達する(時刻t9)と、副駆動モータ20に駆動力を発生させるようになる。この際、主駆動モータ16にはバッテリ18から電力が供給され、副駆動モータ20にはキャパシタ22から電力が供給される。このようにキャパシタ22から電力が供給されることにより、キャパシタ22の電圧は低下する。主駆動モータ16及び副駆動モータ20により車両1が駆動されている間(時刻t9〜t10)、フローチャートにおいては、ステップS1→S2→S6→S7→S8の処理が繰り返し実行される。
【0062】
このように、副駆動モータ20は、車両1の走行速度が所定の第1車速以上の場合において駆動力を発生し、第1車速未満の場合には駆動力の発生が禁止される。なお、本実施形態においては、第1車速=約100km/hに設定されているが、採用した副駆動モータ20の出力特性に応じて、第1車速を約50km/h以上の任意の車速に設定することができる。一方、主駆動モータ16は、車両1の走行速度がゼロを含む所定の第2車速未満のとき、及び第2車速以上のとき、駆動力を発生するように構成されている。所定の第2車速は、第1車速と同じ車速に設定することも、異なる車速に設定することもできる。また、本実施形態においては、主駆動モータ16は、電動機走行モードにおいて駆動力が要求される場合には、常に駆動力を発生している。
【0063】
次に、図11の時刻t10において、車両1が定速走行に移行する(アクセルペダルの操作が所定量未満になる)と、フローチャートにおいては、ステップS1→S2→S6→S7→S9の処理が繰り返し実行されるようになる。ステップS9においては、副駆動モータ20による駆動が停止され(トルクを発生しなくなる)、主駆動モータ16のみによって車両1が駆動される。このように、車両1が所定車速以上で走行している状態であっても、所定量以上の加速が行われていない状態では、主駆動モータ16のみにより車両1が駆動される。
【0064】
また、時刻t9〜t10の間の副駆動モータ20の駆動により、キャパシタ22の電圧が所定値以下に低下したため、時刻t10において制御装置24は高圧DC/DCコンバータ26aに信号を送り、キャパシタ22への充電を行う。即ち、高圧DC/DCコンバータ26aは、バッテリ18に蓄積されている電荷を昇圧してキャパシタ22に充電を行う。これにより、図11の時刻t10〜t11においては、主駆動モータ16を駆動するための電流及びキャパシタ22を充電するための電流が、バッテリ18から放電される。なお、副駆動モータ20により大きな電力が回生され、キャパシタ22の電圧が所定値以上に上昇した場合には、制御装置24は高圧DC/DCコンバータ26aに信号を送り、キャパシタ22の電圧を降圧してバッテリ18への充電を行う。このように、副駆動モータ20により回生された電力は、副駆動モータ20によって消費されるか、又はキャパシタ22に一旦蓄積された後、高圧DC/DCコンバータ26aを介してバッテリ18に充電される。
【0065】
図11の時刻t11において、車両1が減速する(ブレーキペダルが操作される)と、フローチャートにおいては、ステップS1→S2→S6→S10の処理が繰り返し実行されるようになる。ステップS10においては、主駆動モータ16及び副駆動モータ20の両方で車両1の運動エネルギーが電力として回生される。主駆動モータ16によって回生された電力はバッテリ18へ蓄積され、副駆動モータ20によって回生された電力はキャパシタ22に蓄積される。このように、所定車速以上でブレーキペダルが操作された場合には、主駆動モータ16及び副駆動モータ20の両方で電力の回生が行われ、バッテリ18及びキャパシタ22に電荷が蓄積される。
【0066】
次に、図11の時刻t12において、運転者によってモード選択スイッチ40(図5)が操作され、車両1が電動機走行モードから内燃機関走行モードに切り替えられると共に、アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれる。車両1が内燃機関走行モードに切り替えられると、制御装置24における図10のフローチャートの処理はステップS1→S11に移行するようになり、ステップS11以下の処理が実行されるようになる。
【0067】
まず、ステップS11においては、車両1が停車しているか否かが判断され、停車していない場合(走行している場合)には、ステップS12において、車両1が減速中であるか否か(ブレーキペダル(図示せず)が操作されているか否か)が判断される。図11の時刻t12においては、車両1が走行中であり、運転者がアクセルペダルを操作しているので、図10のフローチャートにおける処理はステップS13に移行する。
【0068】
ステップS13においては、エンジン12への燃料の供給が開始され、エンジン12がトルクを発生するようになる。即ち、本実施形態においては、エンジン12の出力軸(図示せず)は主駆動モータ16の出力軸(図示せず)と直結されているため、エンジン12の出力軸は常に主駆動モータ16の駆動と共に回転されている。しかしながら、電動機走行モードにおいては、エンジン12への燃料供給が行われないためエンジン12はトルクを発生しておらず、内燃機関走行モードにおいて燃料供給(燃料噴射弁58による燃料の噴射、及び点火プラグ60による点火)が開始されることによりトルクを発生するようになる。
【0069】
また、電動機走行モードから内燃機関走行モードに切り替えられた直後は、制御装置24は、主駆動モータ16によりエンジン始動用のトルクを発生させる(図11の時刻t12〜t13)。このエンジン始動用のトルクは、エンジン12への燃料供給が開始された後、エンジン12が実際にトルクを発生するようになるまでの間、車両1を走行させると共に、エンジン12がトルクを発生する前後のトルクムラを抑制するために発生される。また、本実施形態においては、内燃機関走行モードに切り替えられた時点におけるエンジン12の回転数が所定回転数未満の場合にはエンジン12への燃料供給は開始されず、エンジン始動用のトルクによりエンジン12が所定回転数以上になった時点で燃料供給が開始される。本実施形態においては、エンジン回転数センサ48によって検出されたエンジン12の回転数が2000rpm以上に上昇したとき、燃料供給が開始される。
【0070】
エンジン12が始動された後、車両1が加速又は定速走行している間は、図10のフローチャートにおいては、ステップS1→S11→S12→S13の処理が繰り返し実行される(図11の時刻t13〜t14)。このように、内燃機関走行モードにおいては、車両1を駆動するための動力は専らエンジン12から出力され、主駆動モータ16及び副駆動モータ20が車両1を駆動するための動力を出力することはない。このため、運転者は、内燃機関により駆動される車両1の運転フィーリングを楽しむことができる。
【0071】
次いで、図11の時刻t14において、運転者がブレーキペダル(図示せず)を操作すると、図10のフローチャートにおける処理は、ステップS12→S14に移行するようになる。ステップS14においては、エンジン12への燃料供給が停止され、燃料の消費が抑制される。さらに、ステップS15においては、主駆動モータ16及び副駆動モータ20により、車両1の運動エネルギーが電気エネルギーとして回生され、バッテリ18及びキャパシタ22に夫々充電電流が流れる。このように、車両1の減速中においては、ステップS1→S11→S12→S14→S15の処理が繰り返し実行される(図11の時刻t14〜t15)。
【0072】
なお、内燃機関走行モードにおける車両1の減速中において、制御装置24は、有段変速機であるトランスミッション14cの切り替え時(変速時)に、副駆動モータ20を駆動してダウンシフトトルク調整を実行する。このトルク調整トにより発生されるトルクは瞬間的なトルク抜け等を補完するものであり、車両1を駆動するトルクには該当しない。トルク調整の詳細については後述する。
【0073】
一方、図11の時刻t15において、車両1が停止すると、図10のフローチャートにおける処理は、ステップS11→S16に移行するようになる。ステップS16において、制御装置24は、エンジン12のアイドリングを維持するために必要な最小限の燃料を供給する。また、制御装置24は、エンジン12が低回転数でアイドリングを維持できるよう、主駆動モータ16によりアシストトルクを発生させる。このように、車両1の停車中においては、ステップS1→S11→S16の処理が繰り返し実行される(図11の時刻t15〜t16)。
【0074】
本実施形態においては、エンジン12はフライホイールレスエンジンであるが、主駆動モータ16が発生するアシストトルクが擬似的なフライホイールとして作用し、エンジン12は低回転数で滑らかなアイドリングを維持することができる。また、フライホイールレスエンジンを採用することにより、内燃機関走行モードの走行中には、エンジン12の高い応答性が得られ、フィーリングの良い運転を楽しむことができる。
【0075】
また、内燃機関走行モードにおいて車両1が停車している状態から発進する場合には、制御装置24は主駆動モータ16に信号を送り、主駆動モータ16の回転数(=エンジン12の回転数)を所定回転数まで上昇させる。エンジン回転数が所定回転数まで上昇した後、制御装置24は、エンジン12にエンジン駆動用の燃料を供給して、エンジン12による駆動を発生させ、内燃機関走行モードによる走行が行なわれる。
【0076】
次に、図12を参照して、トランスミッション14cの切り替え時(変速時)におけるトルク調整を説明する。
図12は、トランスミッション14cをシフトダウン又はシフトアップした場合において、車両に作用する加速度の変化を模式的に示す図であり、上段から順にダウンシフトトルクダウン、ダウンシフトトルクアシスト、アップシフトトルクアシストの一例を夫々示している。
【0077】
本発明の第1実施形態によるハイブリッド駆動装置10は、内燃機関走行モードにおいて、自動変速モードに設定されている場合には、車速やエンジン回転数に応じて、制御装置24がクラッチ14b及び自動変速機であるトランスミッション14cを自動的に切り替えるように構成されている。図12の上段に示すように、減速時に車両1に負の加速度が作用している状態で、トランスミッション14cのシフトダウン(低速側に変速)を行う際(図12の時刻t101)、制御装置24はクラッチ14bを切り離し、エンジン12の出力軸と主駆動輪(後輪2a)が切り離される。このように、エンジン12が主駆動輪から切り離されると、エンジン12の回転抵抗が主駆動輪に作用しなくなるので、図12上段の破線に示すように、車両1に作用する加速度は瞬間的に正の側に変化する。次いで、制御装置24はトランスミッション14cに制御信号を送り、内蔵されている油圧ソレノイド弁62(図5)を切り替えてトランスミッション14cの減速比を上げる。さらに、シフトダウン完了時の時刻t102において制御装置24がクラッチ14bを接続すると加速度は再び負の側に変化する。一般に、シフトダウン開始から完了までの期間(時刻t101〜t102)は300〜1000msecであるが、車両に作用するトルクが瞬間的に変化する所謂トルクショックにより、乗員に空走感が与えられ、不快感を与えてしまうことがある。
【0078】
本実施形態のハイブリッド駆動装置10においては、制御装置24は、シフトダウン時において副駆動モータ20に制御信号を送ってトルク調整を行い、車両1の空走感を抑制する。具体的には、制御装置24がクラッチ14b及びトランスミッション14cに信号を送ってシフトダウンを行う際、制御装置24には、自動変速機入力回転センサ50及び自動変速機出力回転センサ52(図5)によって夫々検出されたトランスミッション14cの入力軸及び出力軸の回転数が読み込まれる。さらに、読み込んだ入力軸及び出力軸の回転数に基づいて車両1に発生する加速度の変化を予測し、副駆動モータ20にエネルギーの回生を実行させる。これにより、図12上段の実線に示すように、トルクショックによる車両1の加速度の瞬間的な上昇(正側への変化)が抑制され、空走感を抑制することができる。また、本実施形態においては、シフトダウンに伴う主駆動輪(後輪2a)におけるトルクショックを、副駆動モータ20により副駆動輪(前輪2b)で補完している。このため、エンジン12から主駆動輪に動力を伝達する動力伝達機構14の動特性の影響を受けることなくトルク調整を行うことができる。
【0079】
また、図12中段の破線に示すように、加速時に車両1に正の加速度が作用している状態で、時刻t103においてシフトダウンが開始されると、エンジン12の出力軸と主駆動輪(後輪2a)が切り離される。これにより、エンジン12による駆動トルクが後輪2aに作用しなくなり、トルクショックが発生するので、時刻t104においてシフトダウンが完了するまでの間に乗員に失速感が与えられる場合がある。即ち、シフトダウンが開始される時刻t103において瞬間的に車両1の加速度が負の側に変化し、シフトダウンが完了する時刻t104において加速度が正の側に変化する。
【0080】
本実施形態のハイブリッド駆動装置10において、制御装置24はシフトダウンを行う際、自動変速機入力回転センサ50及び自動変速機出力回転センサ52の検出信号に基づいて、車両1に発生する加速度の変化を予測し、副駆動モータ20に駆動力を発生させる。これにより、図12中段の実線に示すように、トルクショックによる車両1の加速度の瞬間的な低下(負側への変化)が抑制され、失速感が抑制される。
【0081】
さらに、図12下段の破線に示すように、加速時に車両1に正の加速度が作用している状態(正の加速度は時間と共に低下している)で、時刻t105においてシフトアップが開始されると、エンジン12の出力軸と主駆動輪(後輪2a)が切り離される。これにより、エンジン12による駆動トルクが後輪2aに作用しなくなり、トルクショックが発生するので、時刻t106においてシフトアップが完了するまでの間に乗員に失速感が与えられる場合がある。即ち、シフトアップが開始される時刻t105において瞬間的に車両1の加速度が負の側に変化し、シフトアップが完了する時刻t106において加速度が正の側に変化する。
【0082】
本実施形態において、制御装置24はシフトアップを行う際、自動変速機入力回転センサ50及び自動変速機出力回転センサ52の検出信号に基づいて、車両1に発生する加速度の変化を予測し、副駆動モータ20に駆動力を発生させる。これにより、図12下段の実線に示すように、トルクショックによる車両1の加速度の瞬間的な低下(負側への変化)が抑制され、失速感が抑制される。
【0083】
上記のように、トランスミッション14cのシフトダウン又はシフトアップ時における副駆動モータ20による駆動トルクの調整は、ごく短時間に行われるものであり、実質的に車両1を駆動するものではない。このため、副駆動モータ20が発生する動力は、副駆動モータ20によって回生され、キャパシタ22に蓄積された電荷によって生成することができる。また、副駆動モータ20による駆動トルクの調整は、トルクコンバータ付きの自動変速機や、トルクコンバータの無い自動変速機、自動化したマニュアルトランスミッション等に適用することができる。
【0084】
本発明の第1実施形態のハイブリッド駆動装置10によれば、減速機構を介さずに副駆動モータ20によって車輪(前輪2b)が直接駆動される(図4図9)ので、極めて重量が大きくなる減速機構を省略することができると共に、減速機構の回転抵抗による出力損失を回避することができる。
【0085】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置10によれば、運転者による要求出力が小さい低回転領域において大きなトルクを要求されることがない副駆動モータ20に(図10のステップS8)、インホイールモータとして誘導電動機を採用することにより(図4図9)、必要な回転領域で十分なトルクを発生することができる電動機を軽量に構成することができる。
【0086】
また、本実施形態のハイブリッド駆動装置10によれば、運転者による要求出力が小さい低回転領域においても大きなトルクを要求される(図10のステップS4)主駆動モータ16に、永久磁石電動機を採用することにより、必要な回転領域で十分なトルクを発生することができる電動機を軽量に構成することができる。
【0087】
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第2実施形態によるハイブリッド駆動装置である車両駆動装置を説明する。
本実施形態による車両駆動装置は、制御装置24によって実行される制御が上述した第1実施形態とは異なる。従って、図1乃至図9を参照して説明した車両駆動装置の構成は第1実施形態と同一であるため説明を省略し、ここでは本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明する。
【0088】
図13は、本発明の第2実施形態の車両駆動装置に備えられている制御装置による制御のフローチャートであり、図14は、電動機走行モードにおける動作の一例を示すグラフである。なお、図13に示すフローチャートは、車両1のモード選択スイッチ40が電動機走行モードに設定されている場合に実行される処理(図10に示すフローチャートのステップS2以下の処理に対応)を示している。本実施形態の車両制御装置のエンジン走行モードにおいて実行される処理は、第1実施形態と同様である。また、図13に示すフローチャートは、車両1の作動中、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0089】
図14に示すグラフは、上段から順に、車両1の速度、運転者の運転操作に基づいて設定される車両1の目標加速度、この目標加速度を達成するためにモータに要求される出力、エンジン12が発生するトルク、主駆動モータ16が発生するトルク、及び副駆動モータ20が発生するトルクを示している。なお、図14に示すグラフは電動機走行モードにおける作用を示しているため、エンジン12が発生するトルクは常にゼロにされている。また、主駆動モータ16のトルク、及び副駆動モータ20のトルクを示すグラフにおいて、正の値は各モータがトルクを発生している状態を意味し、負の値は各モータが車両1の運動エネルギーを回生している状態を意味する。
【0090】
まず、図13のステップS201においては、各種センサによる検出信号が読み込まれる。具体的には、車速センサ42、アクセル開度センサ44、ブレーキセンサ46等の検出信号が制御装置24に読み込まれる。
【0091】
次に、ステップS202においては、ステップS201において読み込まれた各センサの検出信号に基づいて、目標加速度が設定される。目標加速度は、主としてアクセル開度センサ44(図5)によって検出されたアクセルペダル(図示せず)の踏込量に基づいて設定される。換言すれば、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより、目標加速度が高く設定されて要求する出力が高くなり、アクセルペダルの踏込量が大きい場合には、踏込量が小さい場合よりも要求出力が大きな値に設定される。一方、運転者が車両1を減速することを意図してブレーキペダル(図示せず)を踏み込んでいる場合には、目標加速度は負の値に設定され、目標減速度が設定される。目標減速度(負の目標加速度)は、主としてブレーキセンサ46(図5)によって検出されたブレーキペダルの踏込量に基づいて設定される。
【0092】
次に、ステップS203においては、ステップS202において設定された目標加速度がゼロ以上であるか否かが判断され、ゼロ以上である場合(加速又は定速走行)にはステップS204に進み、ゼロ未満である場合(減速)にはステップS208に進む。図14の時刻t201においては、運転者が車両1を発進させており、車両1は加速中であるためフローチャートにおける処理はステップS204に移行する。
【0093】
さらに、ステップS204においては、ステップS202において設定された目標加速度を実現するために必要なモータ出力(運転者の要求出力)が所定出力以上であるか否かが判断され、所定出力よりも小さい場合にはステップS207に進み、所定出力以上である場合にはステップS205に進む。図14の時刻t201の直後は、運転者が車両1を発進させたばかりであり、車速がまだ低いため、要求出力も小さく、フローチャートにおける処理はステップS207に移行する。
【0094】
要求出力は、主として、アクセル開度(アクセルペダルの踏込量)と車速に基づいて算出され、車速が低い状態では要求出力は比較的小さくなる。上述した第1実施形態においては、車速に基づいて要求出力を推定し、処理を切り替えていたのに対し、本実施形態においては、直接、要求出力に基づいて処理を切り替えている。なお、本実施形態においては、目標加速度を実現するために必要なモータ出力が25kW以上である場合に、ステップS205が実行される。
【0095】
ステップS207においては主駆動モータ16の駆動力により目標加速度が得られるように、主駆動モータ16に対する制御パラメータが設定される。一方、ステップS207において、副駆動モータ20に対する制御パラメータは停止に設定(駆動力を発生せず、運動エネルギーの回生も実行しない)される。次に、ステップS206に進み、ステップS207において設定された制御パラメータが、制御装置24から主駆動モータ16及び副駆動モータ20に送信され、図13のフローチャートによる1回の処理が終了する。ステップS206において、制御パラメータが送信されることにより、主駆動モータ16がトルクを発生し、車速が上昇して目標加速度が実現される(図14の時刻t201〜t202)。
【0096】
図14に示す例では、時刻t201〜t202の間、車両1が加速されている。この間、図13のフローチャートにおいては、ステップS201→S202→S203→S204→S207→S206の処理が繰り返し実行される。
【0097】
次いで、図14の時刻t202において、運転者がアクセルペダルを踏み戻すと、図13のステップS202において設定される目標加速度がゼロ(定速走行)にされる。この状態においても、図13のフローチャートにおける処理は、ステップS203→S204→S207のように移行する。この状態では、ステップS207において、主駆動モータ16の駆動力により定速走行が維持されるように、主駆動モータ16に対する制御パラメータが設定される。即ち、主駆動モータ16が、車両1の走行抵抗に相当する駆動力を発生し、一定の速度が維持されるように制御パラメータが設定される。このため、主駆動モータ16が発生する駆動力は、車両1の加速中よりも低下する。一方、ステップS207において、副駆動モータ20に対する制御パラメータは停止に設定される。次に、ステップS206に進み、ステップS207において設定された制御パラメータが各モータに送信され、図13のフローチャートによる1回の処理が終了する。
【0098】
図14に示す例では、時刻t202〜t203の間、車両1が定速走行されている。この間、図13のフローチャートにおいては、ステップS201→S202→S203→S204→S207→S206の処理が繰り返し実行される。
【0099】
次いで、図14の時刻t203において、運転者が再びアクセルペダルを踏み込むと、図13のステップS202において設定される目標加速度が正の値にされる。この状態においても依然として、図13のステップS207においては、設定された目標加速度が実現されるように主駆動モータ16に対する制御パラメータが設定され、副駆動モータ20に対する制御パラメータは停止に設定される。図14に示す例では、時刻t203〜t204の間、車両1は加速度一定で走行され、速度が上昇する。
【0100】
次に、時刻t204において、運転者がアクセルペダルを更に踏み込むことにより、ステップS204において判断される要求出力が所定出力(例えば、25kW)以上になると、図13のフローチャートにおける処理は、ステップS204→S205に移行するようになる。ステップS205においては主駆動モータ16及び副駆動モータ20の駆動力により目標加速度が得られるように、主駆動モータ16及び副駆動モータ20に対する制御パラメータが設定される。即ち、主駆動モータ16の出力と、2つの副駆動モータ20の出力の和が要求出力となるように制御パラメータが設定される。
【0101】
このように、本実施形態において、制御装置24は、運転者の要求出力が所定の出力未満のときは、主駆動モータ16に駆動力を発生させる一方、副駆動モータ20には駆動力を発生させず、要求出力が所定出力以上になると、主駆動モータ16に加えて、副駆動モータ20にも駆動力を発生させる。即ち、主駆動モータ16及び副駆動モータ20が発生する駆動力により、ステップS202において設定された目標加速度が実現される。なお、図14に示す例では、運転者がアクセルペダルを踏み込むことにより、目標加速度が増大し、これにより要求出力が所定出力を超え、副駆動モータ20も駆動力を発生する状態に移行している。しかしながら、要求出力は、車速の増大によっても増大するので、一定の目標加速度で運転されている状態で、要求出力が所定出力を超え、副駆動モータ20による駆動が開始される場合もある。
【0102】
図14に示す例では、時刻t204〜t205の間、車両1は加速度一定で走行され、速度が上昇する。この間、図13のフローチャートにおいては、ステップS201→S202→S203→S204→S205→S206の処理が繰り返し実行される。
【0103】
次いで、図14の時刻t205において、運転者がアクセルペダルを踏み戻すと、図13のステップS202において設定される目標加速度がゼロ(定速走行)にされる。これにより、図13のフローチャートにおける処理は、再びステップS204→S207に移行するようになり、ステップS201→S202→S203→S204→S207→S206の処理が繰り返し実行される。ステップS207においては、主駆動モータ16の駆動力により定速走行が維持されるように、主駆動モータ16に対する制御パラメータが設定される。次に、ステップS206に進み、ステップS207において設定された制御パラメータが各モータに送信され、図13のフローチャートによる1回の処理が終了する。なお、高速走行時において、副駆動モータ20による駆動力のみで定速走行を維持させるように、本発明を構成することもできる。
【0104】
次に、図14の時刻t206において、運転者が車両1のブレーキペダル(図示せず)を操作すると、図13のフローチャートのステップS202において設定される目標加速度が負の値(目標減速度)に設定される。これにより、フローチャートにおける処理は、ステップS203→S208に移行するようになる。
【0105】
ステップS208においては、車速センサ42によって検出された車速が、所定の第2車速以上であるか否かが判断される。図14の時刻t206の直後においては車速が大きいため、フローチャートにおける処理は、ステップS208→S210に移行する。これにより、ステップS201→S202→S203→S208→S210→S206の処理が繰り返し実行される。なお、本実施形態においては、所定の第2車速は、時速100km/hに設定されているが、所定の第2車速は時速50km/h以上の任意の車速に設定することができる。
【0106】
ステップS210においては、主駆動モータ16及び副駆動モータ20が車両1の運動エネルギーを回生するように、これらのモータに対する制御パラメータが設定される。さらに、ステップS206において、設定された制御パラメータが主駆動モータ16及び副駆動モータ20に送信されると、これらのモータにおいて運動エネルギーが回生される。
【0107】
運転者のブレーキペダル(図示せず)の操作により車速が低下し、図14の時刻t207において、車両1の速度が所定の第2車速(本実施形態においては100[km/h])未満に低下すると、フローチャートにおける処理は、ステップS208→S209に移行するようになり、ステップS201→S202→S203→S208→S209→S206の処理が繰り返し実行される。ステップS209においては、主駆動モータ16は停止され(駆動力の発生も、運動エネルギーの回生も行わない)、副駆動モータ20は車両1の運動エネルギーを回生するように、これらのモータに対する制御パラメータが設定される。さらに、ステップS206において、設定された制御パラメータが主駆動モータ16及び副駆動モータ20に送信されると、副駆動モータ20において運動エネルギーが回生される。これにより車速が低下し、図14の時刻t208において、車両1が停止する。
【0108】
本発明の第2実施形態の車両駆動装置によれば、運転者の要求出力が所定の出力以上の場合に(図13のステップS204→S205)、車体側モータである主駆動モータ16と共に、副駆動モータ20であるインホイールモータが駆動力を発生する(図13のステップS205)ように構成されているので、インホイールモータに大出力が要求されることはない。この結果、小出力の小型の電動機をインホイールモータとして採用することが可能となり、インホイールモータを使用して効率的に車両を駆動することが可能になる。なお、本発明の第1実施形態による車両駆動装置も同等の効果を奏するものである。
【0109】
本実施形態の車両駆動装置によれば、アクセル開度センサ44によって検出されたアクセルペダルの踏込量に基づいて運転者の要求出力が設定され(図13のステップS201、S202)、アクセルペダルの踏込量が大きい場合に、運転者の要求出力が大きな値に設定されるので、運転者の意図を、より正確に要求出力に反映させることができる。
【0110】
以上、本発明の第1及び第2実施形態による車両駆動装置を説明した。上述した第1、第2実施形態においては、何れも本発明の車両駆動装置をFR車に適用していたが、車両の前方部分にエンジン及び/又は主駆動モータを配置して前輪を主駆動輪とする所謂FF車や、車両の後方部分にエンジン及び/又は主駆動モータを配置して後輪を主駆動輪とする所謂RR車等、様々なタイプの車両に本発明を適用することができる。
【0111】
本発明をFF車に適用する場合には、例えば、図15に示すように、車両101の前方部分にエンジン12、主駆動モータ16、及びトランスミッション14cを配置して、主駆動輪として前輪102aを駆動するようにレイアウトすることができる。また、副駆動モータ20をインホイールモータとして、副駆動輪である左右の後輪102bに配置することができる。このように、車体側モータである主駆動モータ16により、主駆動輪である前輪102aを駆動し、インホイールモータである副駆動モータ20により、副駆動輪である後輪102bを駆動するように本発明を構成することができる。このレイアウトにおいて、主駆動モータ16は、インバータ16aを介して供給されるバッテリ18に蓄積された電力により駆動することができる。また、キャパシタ22、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26a及び低圧DC/DCコンバータ26b、及び2つのインバータ20aをユニット化した統合ユニットを、車両101の後部に配置することができる。さらに、副駆動モータ20は、インバータ20aを介して供給される、直列に配置されたバッテリ18及びキャパシタ22に蓄積された電力により駆動することができる。
【0112】
また、本発明をFF車に適用する場合において、例えば、図16に示すように、車両201の前方部分にエンジン12、主駆動モータ16、及びトランスミッション14cを配置して、主駆動輪として前輪202aを駆動するようにレイアウトすることができる。また、副駆動モータ20をインホイールモータとして、主駆動輪である左右の前輪202aに配置することができる。このように、車体側モータである主駆動モータ16により、主駆動輪である前輪202aを駆動し、インホイールモータである副駆動モータ20によっても主駆動輪である前輪202aを駆動するように本発明を構成することができる。このレイアウトにおいて、主駆動モータ16は、インバータ16aを介して供給されるバッテリ18に蓄積された電力により駆動することができる。また、キャパシタ22、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26a及び低圧DC/DCコンバータ26b、及び2つのインバータ20aをユニット化した統合ユニットを、車両201の後部に配置することができる。さらに、副駆動モータ20は、インバータ20aを介して供給される、直列に配置されたバッテリ18及びキャパシタ22に蓄積された電力により駆動することができる。
【0113】
一方、本発明をFR車に適用する場合において、例えば、図17に示すように、車両301の前方部分にエンジン12、主駆動モータ16を配置し、プロペラシャフト14aを介して動力を車両301の後部へ導いて、主駆動輪として後輪302bを駆動するようにレイアウトすることができる。プロペラシャフト14aによって後部へ導かれた動力により、クラッチ14b、及び有段変速機であるトランスミッション14cを介して後輪302bが駆動される。また、副駆動モータ20をインホイールモータとして、主駆動輪である左右の後輪302bに配置することができる。このように、車体側モータである主駆動モータ16により、主駆動輪である後輪302bを駆動し、インホイールモータである副駆動モータ20によっても主駆動輪である後輪302bを駆動するように本発明を構成することができる。このレイアウトにおいて、主駆動モータ16は、インバータ16aを介して供給されるバッテリ18に蓄積された電力により駆動することができる。また、キャパシタ22、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ26a及び低圧DC/DCコンバータ26b、及び2つのインバータ20aをユニット化した統合ユニットを、車両301の前部に配置することができる。さらに、副駆動モータ20は、インバータ20aを介して供給される、直列に配置されたバッテリ18及びキャパシタ22に蓄積された電力により駆動することができる。
【0114】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、エンジン及び電動機を備えたハイブリッド駆動装置に本発明を適用していたが、エンジンを備えない、電動機のみによって車両を駆動する車両駆動装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0115】
1 車両
2a 後輪(主駆動輪)
2b 前輪(副駆動輪)
4a サブフレーム
4b フロントサイドフレーム
4c ダッシュパネル
4d プロペラシャフトトンネル
6a エンジンマウント
6b キャパシタ用マウント
8a アッパアーム
8b ロアアーム
8c スプリング
8d ショックアブソーバ
10 ハイブリッド駆動装置(車両駆動装置)
12 エンジン(内燃機関)
14 動力伝達機構
14a プロペラシャフト
14b クラッチ
14c トランスミッション(有段変速機、自動変速機)
14d トルクチューブ
16 主駆動モータ(主駆動電動機、車体側モータ)
16a インバータ
18 バッテリ(蓄電器)
20 副駆動モータ(副駆動電動機、インホイールモータ)
20a インバータ
22 キャパシタ
22a ブラケット
22b ハーネス
24 制御装置(制御器)
25 電装品
26a 高圧DC/DCコンバータ(電圧変換器)
26b 低圧DC/DCコンバータ
28 ステータ
28a ステータベース
28b ステータシャフト
28c ステータコイル
30 ロータ
30a ロータ本体
30b ロータコイル
32 電気絶縁液室
32a 電気絶縁液
34 ベアリング
40 モード選択スイッチ
42 車速センサ
44 アクセル開度センサ
46 ブレーキセンサ
48 エンジン回転数センサ
50 自動変速機入力回転センサ
52 自動変速機出力回転センサ
54 電圧センサ
56 電流センサ
58 燃料噴射弁
60 点火プラグ
62 油圧ソレノイド弁
101 車両
102a 前輪(主駆動輪)
102b 後輪(副駆動輪)
201 車両
202a 前輪(主駆動輪)
301 車両
302b 後輪(主駆動輪)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17