【解決手段】農薬を含まない羅漢果抽出物であって、農薬不含羅漢果抽出物に含まれるモグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIの総量が、当該農薬不含羅漢果抽出物100重量%あたり少なくとも33重量%であり、所定の条件のHPLC分析において保持時間16分付近に検出されるピークの面積が全ピークの総面積の3%以下である、農薬不含羅漢果抽出物。農薬不含羅漢果抽出物からなるか、農薬不含羅漢果抽出物及び補助甘味成分を含有する甘味料組成物。農薬不含羅漢果抽出物は、羅漢果抽出物を、ヨウ素吸着量が1500mg/g以上である活性炭及びカラメル脱色能が85%以上である活性炭より選択される1つ以上の活性炭で処理して農薬を除去することにより調製される。
上記農薬が、ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMである請求項1または2に記載する農薬不含羅漢果抽出物。
農薬含有羅漢果抽出物を活性炭処理して農薬を除去する工程を有する、農薬不含羅漢果抽出物の調製方法であって、該活性炭処理で使用する活性炭が、ヨウ素吸着量が少なくとも1500mg/gである活性炭およびカラメル脱色能が少なくとも85%である活性炭よりなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの活性炭であり、
当該活性炭の処理によるモグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIからなる羅漢果配糖体の回収率が少なくとも70%である、調製方法、
を用いて、農薬含有羅漢果抽出物から調製された農薬不含羅漢果抽出物。
請求項1〜4のいずれか一項に記載する農薬不含羅漢果抽出物からなるか、または請求項1〜4のいずれか一項に記載する農薬不含羅漢果抽出物及び補助甘味成分を含有する甘味料組成物。
上記補助甘味成分が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、非糖質系甘味料、及び食物繊維類からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載する甘味料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(I)農薬不含羅漢果抽出物の調製方法
本発明は農薬を含む羅漢果抽出物(農薬含有羅漢果抽出物)を活性炭処理して農薬を除去する工程を有することを特徴とする、農薬不含羅漢果抽出物の調製方法である。
【0024】
当該方法において、出発材料として用いる農薬含有羅漢果抽出物は、羅漢果果実の抽出物であり、下記化学式1及び表1に示されるモグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、及び11−オキソ−モグロサイドVからなる群から選択される少なくとも1つの羅漢果配糖体を含有するものである。農薬含有羅漢果抽出物として、好ましくはモグロサイドIV、モグロサイドV、シアメノサイドI、及び11−オキソ−モグロサイドVをすべて含有するものである。
【0027】
上記抽出に用いる羅漢果果実は、生であってもよいし、また乾燥した状態であってもよい。抽出効率から、好ましくは乾燥した羅漢果果実である。また抽出は、羅漢果果実(生または乾燥物)そのままの形状で行ってもよいが、抽出に際して、事前に細断、破砕、または粉砕しておいてもよい。
【0028】
抽出に使用する溶媒は、羅漢果果実から上記羅漢果配糖体が抽出できる溶媒であればよく、例えば、水;メタノール,エタノール,ブタノール及びプロパノールなど低級アルコール;グリセリン,及びプロピレングリコール等の多価アルコール;アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2-トリクロロエテン、ブタン、プロパン、及びヘキサン等の有機溶媒;水とこれらの有機溶媒との混合液の中から選択して使用することができる。なお、上記有機溶媒として食用油脂を用いることもできる。抽出溶媒として好ましくは、水、低級アルコール、特にエタノール、及びこれらの混合液であり、より好ましくは水である。抽出は、定法に従って行うことができ、冷浸及び温浸の別、並びに静置及び撹拌の別を問わない。
また、抽出方法として超臨界抽出法または亜臨界抽出法を用いる場合は、抽出溶媒として二酸化炭素、及び亜酸化窒素を例示することができる。
【0029】
また出発材料として用いる農薬含有羅漢果抽出物は、農薬を含有し、且つ上記の羅漢果配糖体を含有するものするものであれば、上記抽出処理に加えて、濾過や遠心分離等の固液分離、吸着、分離、濃縮、及び乾燥などの各種処理を施したものであってもよい。
【0030】
ここで対象とする農薬は、羅漢果抽出物への残留が問題となっている、ジメトモルフ(CAS No.110488-70-5)、トリアジメノール(CAS No.55219-65-3)、テブコナゾール(CAS No.107534-96-3)、ジフェノコナゾール(CAS No.119446-68-3)、メタラキシル(CAS No.57837-19-1)及びメタラキシルM(CAS No.70630-17-0)からなる群から選択される少なくとも1つである。つまり、本発明が対象とする農薬含有羅漢果抽出物は、上記6種類からなる群から選択される少なくとも1つの農薬を含む羅漢果抽出物であり得る。当該農薬含有羅漢果抽出物はこれら6種類の農薬のうち2種以上、複数種有するものであってもよいし、6種類全てを含むものであってもよい。
【0031】
これらの農薬は、いずれも分配係数(LogPow)が1.71以上である化合物である。ここで分配係数とは、具体的には1−オクタノール/水分配係数(LogPow
OW)を意味する。より詳細には1−オクタノールと水の2つの溶媒相中(20−25℃)に対象の化合物を加えて平衡状態になった時の、その2相における化合物の濃度比(1−オクタノール/水)を意味する。当該分配係数はフラスコ法またはHPLC法によって求めることができる。当該分配係数は化合物の疎水性(脂質への溶けやすさ)を表す物理化学的指標であり、分配係数が高いほど疎水性が高いことを意味する。また疎水性が高くなるほど生体内での蓄積性が高くなり、毒性も強くなることが知られているため、分配係数が高いほど毒性が強い農薬であるということができる。
なお、参考までに、上記6種類のうちジメトモルフ、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシル及びメタラキシルMのLogPow 値を下記に示す。
【0033】
なお、トリアジメノールのLogPow値は、段落[0064]((C)農薬の分析の欄)に記載する条件のLC/MSの保持時間とトリアジメノールと同様にトリアゾール構造を有するテブコナゾール及びジフェノコナゾールのLogPow値から計算により求めるに2.96程度であると考えられる。これらのことから、本発明の方法によれば、上記特定の農薬に限らず、LogPow値(20〜25℃)が1.71以上である化合物(農薬を含む)を除去することができると考えられる。
【0034】
上記6種類のうち、トリアジメノール、テブコナゾール、及びジフェノコナゾールの3種は、トリアゾール構造、詳細には1,2,4−トリアゾール構造を有する化合物であって、分配係数(LogPow)2.9以上である。
農薬含有羅漢果抽出物における農薬含有量は、上記農薬の個々の量として0.01ppm以上である。
【0035】
本発明において活性炭処理に使用される活性炭は、ヨウ素吸着量が少なくとも1500mg/gである活性炭、及びカラメル脱色能が少なくとも85%である活性炭よりなる群から選択される少なくとも一種である。ヨウ素吸着量として、好ましくは1600mg/g以上を挙げることができる。またカラメル脱色能として、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を挙げることができる。活性炭はかかるヨウ素吸着量を有する活性炭及びカラメル脱色能を有する活性炭をそれぞれ一種単独で用いてもよいし、また二種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ここでヨウ素吸着量は、活性炭単位質量(1g)当たりに吸着されるヨウ素(分子径約5Å、半径2.29Å)の量(mg)であり、比表面積に相当する値である。
活性炭のヨウ素吸着量の測定方法としては、「JIS K 1474:2014活性炭試験方法」の「7.1吸着性能」「7.1.2.2よう素吸着性能」で規定されている方法を挙げることができる。
【0037】
[ヨウ素吸着量の測定]
ヨウ素カリウム25.0gを蒸留水30mLに溶解し、これにヨウ素約13gを加えて溶かし、蒸留水で1,000mLとして0.05mol/Lのヨウ素溶液を調製する。被験試料(活性炭)1.0gを共栓付三角フラスコに入れ、調製しておいたヨウ素溶液50mLを加え、アルミホイルで包む。室温(20〜30℃)で振盪機を用いて振盪した後、所定時間毎に取り出し、遠心分離用沈殿管50mLに移し入れ、遠心分離機を用いて3,000rpm、15分間で沈殿させる。この中から上澄液10mLを正確に取り、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、ヨウ素の黄色が薄くなったとき指示薬のでんぷん溶液(10g/L)1mLを加え、さらに滴定を続け、ヨウ素でんぷんの青色が消える時を終点とする。そして、残留しているヨウ素濃度(ヨウ素残留濃度)から供試炭のヨウ素吸着力を求める。
【0038】
ヨウ素残留濃度(g/L)は下式によって算出する。
【0040】
試料単位質量当たりのヨウ素吸着量(mg/g)は下式によって算出する。
【0042】
活性炭のカラメル脱色性能の測定方法としては、「JIS K 1474:2014活性炭試験方法」の「7.2カラメル脱色性能」で規定されている方法を挙げることができる。
【0043】
[カラメル脱色性能の測定]
予め115±5℃の恒温乾燥器中で3時間乾燥し、デシケーター中で室温まで放冷した被験試料(活性炭)150mgに、カラメル試験液50mLを加え、室温(20〜30℃)で振盪機を用いて30分間振盪する。その後、濾紙でろ過する。始めのろ液20mLは捨てて、その後のろ液の430nmの吸光度を測定する。別に空試験として、カラメル試験液50mLについて、上記振盪以降の操作を同様に行う。ろ液の吸光度とカラメル試験液(空試験)の吸光度からカラメル脱色性能を求める。
なお、ここでカラメル試験液は、下記の方法によって調製したものを用いる。
【0044】
(カラメル試験液の調製)
デシケーターの中で24時間以上乾燥させたスクロース60gを500mL容量の三角フラスコに入れる。これに水240mL加えて室温(20〜30℃)で溶解し、硫酸(硫酸1:水4)25mLを加え、80±1℃に調節した水浴中に浸漬する。三角フラスコ内の溶液をかき混ぜながら80℃近くまで上昇させ、さらに30分間、80±1℃の状態に保つ。水浴から三角フラスコを取り出し、直ちに水酸化ナトリウム溶液(200g/L)50mLを加え、直ちに沸騰水浴中に三角フラスコを入れて15分間加熱する。三角フラスコを沸騰水浴中から取り出して、室温で一夜放置した後、硫酸(硫酸1:水10)又は水酸化ナトリウム溶液(100g/L)を加えてpH7.0±0.1に調製する。三角フラスコ内の溶液を、全量フラスコ500mLに移し入れ、水を500mLの標線まで加える。
斯くして調製したカラメル原液を、水で体積比1:20に薄めて30分間放置した後、光度計を用いて波長430nmの吸光度を測定する。下記の色度標準液の吸光度に一致するように、希釈割合を調製し、調製した溶液をカラメル試験液とする。
【0045】
[色度標準液]
ニクロム酸カリウムをめのう乳鉢で砕き、105±5℃に調節した恒温乾燥器中で3〜4時間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、その0.310gを量り取り、水を加えて溶かす。これを全量フラスコに移し入れ、水を標線まで加えて色度標準液とする。この溶液を光度計を用いて波長430nmの吸光度を測定する。
【0046】
被験試料(活性炭)のカラメル脱色性能(%)は下式によって算出し、小数点以下二桁目を四捨五入して、小数点以下一桁とする。
【0048】
本発明で使用する活性炭は、その形状や大きさを特に制限するものではなく、粉末状活性炭、粒状活性炭(破砕炭、顆粒炭、造粒炭)、球状活性炭、及び繊維状活性炭のいずれかを使用することができる。そのなかでも、粉末状活性炭および粒状活性炭は、羅漢果抽出物からの残留農薬の除去効果が高く、しかも取り扱い性、吸着効率、経済性などに優れる点から好適に用いることができる。好ましくは、ヨウ素吸着量が少なくとも1500mg/gである粒状活性炭、及びカラメル脱色能が少なくとも85%である粉末状の活性炭よりなる群から選択される活性炭である。
【0049】
ここで粒状活性炭とは、通常直径または長径が0.15mm以上の大きさの粒状の活性炭を意味し、破砕炭、顆粒炭及び造粒炭が含まれる。好ましくはヤシ殻炭または木質材料(おが屑、木材チップ等)を破砕して調製される破砕炭であり、粒状であるものの、その形状や大きさは不規則である。また粉末状の活性炭とは、通常直径または長径が0.15mmより小さい粉末状の活性炭を意味する。好ましくは直径0.10mm以下の粉末状の活性炭である。
【0050】
なお、ものにより、粒度分布が0.15mmをまたぐことがある(例えば、0.13〜0.16mm等)。その場合の当該活性炭の形状は、重量当たりの粒度分布が50%以上であるか否かで判断することができる。例えば、0.15mm以上の大きさの活性炭の重量当たりの粒度分布が50%以上である場合は「粒状活性炭」であるといえるし、逆に0.15mm未満の大きさの活性炭の重量当たりの粒度分布が50%以上である場合は「粉状活性炭」ということができる。
【0051】
また、本発明で使用する活性炭の由来は特に制限されず、たとえば、ヤシ殻、木質材料(おが屑、木材チップ等)、石炭、及び石油のいずれかを原料として製造された活性炭を挙げることができる。なかでもヤシ殻や木質材料(おが屑、木材チップ等)を原料とする活性炭は、安全性や環境汚染防止の点から、食用甘味料組成物として用いられる羅漢果抽出物の調製に好適に用いられる。
【0052】
限定されるものではないが、本発明で用いられる活性炭として、たとえば、ヨウ素吸着量が少なくとも1500mg/gの粒状活性炭として日本エンバイロケミカルズ(株)製のFG−3;カラメル脱色能が少なくとも85%である粉末状の活性炭として日本エンバイロケミカルズ(株)製のFP−1、FP−3、及びFP−6、並びに(株)クラレケミカル製のクラレコールPK−Dなどを挙げることができる。
【0053】
農薬含有羅漢果抽出物に対する活性炭処理としては、例えば農薬含有羅漢果抽出物に上記の活性炭を加えて撹拌し、活性炭に上記抽出物中の農薬を吸着させた後、当該活性炭を分離する方法(バッチ法)、及び上記活性炭を充填したカラムに農薬含有羅漢果抽出物を通過させ、当該抽出物中の農薬をカラム内の活性炭に吸着させ、ろ液を回収する方法(カラム法)等を採用することができる。ここで活性炭処理に供する農薬含有羅漢果抽出物は、作業効率及びより高い効果を得るために、液状物であることが好ましく、必要に応じて農薬含有羅漢果抽出物を水で希釈して用いてもよい。
【0054】
カラム法によって農薬含有羅漢果抽出物から当該農薬を除去する場合、農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体の種類及びその量、農薬含有羅漢果抽出物中に含まれる農薬の種類及びその量等に応じて、使用する活性炭の種類、カラムに充填する活性炭の量、並びに活性炭充填カラムに対する農薬含有羅漢果抽出物の流下速度等を適宜選択調整することができる。例えば、活性炭として粒状活性炭を用いる場合、農薬含有羅漢果抽出物の乾燥重量100重量部に対して、粒状活性炭を100〜5000重量部の割合で用いることが望ましい。より好ましくは500〜2000重量部である。また、活性炭として粉末活性炭を用いる場合、農薬含有羅漢果抽出物の乾燥重量100重量部に対して、粉末活性炭を0.1〜150重量部の割合で用いることが望ましい。より好ましくは5〜50重量部である。
【0055】
活性炭として粒状活性炭を用いる場合、一例として下記の方法で、農薬含有羅漢果抽出物から農薬を除去し、当該農薬を含まない羅漢果抽出物を調製することができる。
(1)カラムに必要量の粒状活性炭を充填し、脱イオン水をカラムの頂部から底部へ流し、活性炭微粉等を洗い流す。
(2)上記で調製した粒状活性炭充填カラムに、予め水を加えて5〜20w/vol%、より好ましくは5〜10w/vol%に調整した羅漢果抽出物水溶液を注入する。
(3)上記カラムに脱イオン水を注入し、流出する羅漢果抽出物を含む溶液を分画する。(4)上記で分画した各溶液について、薄層クロマトグラフィーまたはHPLC等を用いてモグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIの有無を確認し、これらの羅漢果配糖体を含む画分をそれぞれ回収する。
(5)回収した各羅漢果配糖体を含む画分を一緒にして、農薬不含羅漢果配糖体とする。
【0056】
なお、上記羅漢果配糖体のうちモグロサイドVは、例えば下記(A)に記載するHPLC装置及び条件により分析(定性及び定量)することができ、またモグロサイドV以外の羅漢果配糖体(モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドVまたはシアメノサイドI)は例えば下記(B)に記載するHPLC装置及び条件により分析(定性及び定量)することができる。
【0057】
(A)モグロサイドVの分析
・HPLC装置:Prominence LC-20AD((株)島津製作所製)
・LCカラム:Shodex Asahipak NH2-50 4E(250mm×4.6mm I.D.、(株)昭和電工製)
・LC条件
注入量 :20μL
カラム温度:40℃
移動相:74容量%アセトニトリル/26容量%水
流速:1.0 mL/分
検出波長:UV 203nm。
【0058】
(B)モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV又はシアメノサイドIの分析・HPLC装置:Prominence LC-20AD((株)島津製作所製)
・LCカラム:Kaseisorb LC ODS 2000(150mm×4.6mm I.D.、(株)東京化成工業製)
・LC条件
注入量 :20μL
カラム温度:40℃
移動相:A相:水、B相:アセトニトリル
0→10分(イソクラティック):A相80容量%、B相20容量%
10→50分(リニアグラジエント):「A相80容量%、B相20容量%」→「A相45容量%、B相55容量%」
流速 :1.0 mL/分
検出波長:UV 203 nm。
【0059】
なお、上記において、カラムからの流出画分に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及び/又はシアメノサイドI)の確認は、示差屈折率(Refractive index)検出器を用いて、カラム流出液の成分組成の変化に基づく光屈折度の変化を検出することで行ってもよい。
【0060】
バッチ法によって農薬含有羅漢果抽出物から当該農薬を除去する場合、農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体の種類及びその量、農薬含有羅漢果抽出物中に含まれる農薬の種類及びその量等に応じて、使用する活性炭の種類及び量、撹拌時間等を適宜選択調整することができる。例えば、活性炭として粒状活性炭を用いる場合、農薬含有羅漢果抽出物の乾燥重量100重量部に対して、粒状活性炭を100〜5000重量部の割合で用いることが望ましい。より好ましくは500〜2000重量部である。また、活性炭として粉末活性炭を用いる場合、農薬含有羅漢果抽出物の乾燥重量100重量部に対して、粉末活性炭を0.1〜150重量部の割合で用いることが望ましい。より好ましくは5〜50重量部である。例えば、活性炭として粉末活性炭を用いる場合、任意の容器に農薬含有羅漢果抽出物及び必要量の粉末活性炭を加え、5分〜2時間程度、より好ましくは30分〜60分間程度撹拌することが望ましい。温度条件は特に制限されないが、25〜60℃を挙げることができる。なお、ここで農薬含有羅漢果抽出物は、水分含量が1〜50w/vol%、好ましくは5〜10w/vol%の範囲にあることが好ましく、必要に応じて、農薬含有羅漢果抽出物に水を加えて上記の水分含量に調製しておくことが望ましい。さらに撹拌後、ろ紙、より好ましくは精密濾過膜(microfiltration membrane)を使用して農薬を吸着した活性炭を除去することが望ましい。
【0061】
上記方法により、農薬含有羅漢果抽出物から農薬が除去され、当該農薬を含まない羅漢果抽出物(農薬不含羅漢果抽出物)を調製することができる。
【0062】
なお、本発明において「農薬不含羅漢果抽出物」とは、羅漢果抽出物中に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMからなる群より選択される少なくとも1種)の個々の量(残留濃度)が乾燥物換算で0.01ppm未満であるものをいう。なお、「0.01ppm」は、これらの農薬の検出限界値である。
また本発明において「農薬含有羅漢果抽出物から農薬を除去する」とは、ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMからなる群より選択される少なくとも1種の農薬を含む羅漢果抽出物(農薬含有羅漢果抽出物)から当該農薬を除去して、羅漢果抽出物中に含まれる当該農薬の個々の量(残留濃度)を乾燥物換算で0.01ppm未満にすることを意味する。
【0063】
なお、羅漢果抽出物中に含まれるこれらの農薬の分析(定性及び定量)は、例えば下記(C)に記載する液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)により行うことができる。
【0064】
(C)農薬の分析
・LC/MS装置:LCMS-2010EV((株)島津製作所製)
・LCカラム:Inertsil ODS-3(250mm×4.6mm,I.D.5μm、(株)ジーエルサイエンス製)
・LC条件
注入量 :30μL
カラム温度:40℃
移動相 :80容量%アセトニトリル/20容量%水
流速 :1.0mL/分
・MS条件
イオン化法 :APCI法、ポジティブモード
ネブライズガス流量 :2.5 L/分
APCIインターフェイス温度:350℃
CDL温度 :200℃
ヒートブロック温度
:300℃。
【0065】
上記本発明の方法により調製される上記農薬不含羅漢果抽出物は、上記するように、当該抽出物中に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMからなる群より選択される少なくとも1種の農薬)の個々の量(残留濃度)が乾燥物換算で0.01ppm未満であるということに加えて、下記(イ)、(ロ)及び(ハ)からなる少なくとも1つの特徴、好ましくは2つの特徴、より好ましくは全ての特徴を有する。
【0066】
(イ)本発明の羅漢果配糖体(モグロサイドV,モグロサイドIV,11−オキソ−モグロサイドVおよび/またはシアメノサイドI)の回収率が70%以上である。
【0067】
(ロ)農薬不含羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV,モグロサイドIV,11−オキソ−モグロサイドVおよびシアメノサイドI)の総量が、農薬不含羅漢果抽出物100重量%あたり、少なくとも33重量%である。
背景技術の欄に記載するように、モグロサイドV,モグロサイドIV,11−オキソ−モグロサイドVおよびシアメノサイドIからなる羅漢果配糖体の総量が全体、つまり農薬不含羅漢果抽出物の33重量%以上になるまで精製した羅漢果抽出物(高純度羅漢果配糖体)は、甘味の基本性能である、「後引き、しつこさ、くせ、渋味、刺激、すっきり感、まろやかさ、こく、苦み」のいずれの評価に対しても砂糖に極めて高い甘味質を有していることが知られている。
【0068】
このため本発明の方法で調製される農薬不含羅漢果抽出物も、当該抽出物100重量%中の羅漢果配糖体(モグロサイドV,モグロサイドIV,11−オキソ−モグロサイドVおよびシアメノサイドI)の総量が33重量%以上であることが好ましい。なお、本発明でいう農薬不含羅漢果抽出物100重量%に含まれる羅漢果配糖体の割合は、乾燥重量に換算した値(乾燥重量換算値)である。
【0069】
農薬不含羅漢果抽出物中の羅漢果配糖体の割合を上記するように33重量%以上にする方法としては、活性炭処理に供する前の農薬含有羅漢果抽出物を、予め抽出、濾過、濃縮、分離及び乾燥などの1または2以上の慣用の精製処理に供し、羅漢果配糖体以外の成分を除去し、農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体の割合をより多く、好ましくは33重量%以上になるように調製する方法を挙げることができる。
【0070】
なお、農薬不含羅漢果抽出物100重量%中に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV,モグロサイドIV,11−オキソ−モグロサイドVおよびシアメノサイドI)の割合(総量)は、下記に記載するHPLC分析により求めることができる。具体的には、当該HPLC分析により農薬不含羅漢果抽出物中に含まれる各羅漢果配糖体のピーク面積を、既知濃度の各羅漢果配糖体(標準物質)のピーク面積と対比することで、農薬不含羅漢果抽出物に含まれる各羅漢果配糖体の量を求めることができる。
【0071】
(ハ)HPLC分析で保持時間16分付近に検出されるピーク面積が全ピークの総面積の3%以下である。
後述する実験例3に示すように、本発明の方法で調製される農薬不含羅漢果抽出物は、下記条件のHPLCに供した場合、当該HPLC分析で検出される保持時間16分付近のピーク(以下、「P
16」という)の面積が全ピークの総面積の3%以下であることを特徴とする。
[HPLC条件]
カラム:Kaseisorb LC ODS2000(150mm×4.6mmI.D.)((株)東京化成工業製)移動相:アセトニトリルと水の混合液
0分→10分(イソクラティック):アセトニトリル20容量%、
10分→50分(リニアグラジエント):アセトニトリル20容量%→55容量%流速:1mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV 203nm。
【0072】
つまり、本発明の方法によれば、当該ピークとして検出される化合物(P
16成分)を有意に除去低減することができ、その結果、当該P
16成分の量が有意に除去低減された農薬不含羅漢果抽出物を取得することができる。実験例3に示すように、当該P
16成分は分子量358ダルトンの化合物であり、また実験例4に示すように、羅漢果抽出物の甘味質の低下(雑味)に深く関与している化合物である。従って、本発明の方法によれば、農薬含有羅漢果抽出物から残量農薬だけでなく、甘味質の低下(雑味)に関係する化合物(P
16成分)を効果的に除去低減することができる。
【0073】
(II)農薬不含羅漢果抽出物
ここで本発明が対象とする羅漢果抽出物は、下記(ロ)及び(ハ)の特徴を有する農薬を含まない羅漢果抽出物(農薬不含羅漢果抽出物)である。
(ロ)農薬不含羅漢果抽出物に含まれるモグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIの総量が、農薬不含羅漢果抽出物100重量%あたり少なくとも33重量%である。
(ハ)下記条件のHPLC分析において保持時間16分付近に検出されるピークの面積が全ピークの総面積の3%以下である:
ここで、限定はされないが、保持時間16分付近とは、例えば保持時間15分から17分の間に存在することを示す。ピーク面積は、例えば、解析ソフトLabSolution((株)島津製作所)を使用することで求めることができる。
[HPLC条件]
カラム:Kaseisorb LC ODS2000(150mm×4.6mmI.D.)(東京化成工業株式会社製)移動相:アセトニトリルと水の混合液
0分→10分(イソクラティック):アセトニトリル20容量%、
10分→50分(リニアグラジエント):アセトニトリル20容量%→55容量%流速:1mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV 203nm。
【0074】
上記(ロ)及び(ハ)の特徴は、(I)で説明した通りであり、上記(I)での説明がここに援用される。
【0075】
本発明が対象とする農薬不含羅漢果抽出物において対象とする農薬は、ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMである。つまり、本発明の農薬不含羅漢果抽出物は、農薬としてジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMからなる群より選択される少なくとも1種類以上を含有しないことを特徴とする。上記6種類のうち、例えば、トリアジメノール、テブコナゾール、及びジフェノコナゾールの3種のうちのいずれか1種類以上、またはこれらの3種類のすべてを含有しないことが好ましい。あるいは、本発明の農薬不含羅漢果抽出物は、農薬としてジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMのすべてを含有しないことを特徴とする。
【0076】
ここで「含有しない」とは、本発明の農薬不含羅漢果抽出物に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の個々の量(残留濃度)が、乾燥物換算で0.01ppm未満であることをいう。つまり、本発明の農薬不含羅漢果抽出物は、これらの特定の農薬の個々の量(残留濃度)が乾燥物換算で0.01ppm未満であるものである。
【0077】
本発明の農薬不含羅漢果抽出物は、制限はされないものの、さらに好ましくは下記に列挙する農薬のうちの少なくとも1種以上も含有しないものであることが好ましい。なお、ここで「含有しない」とは、下記に列記する個々の農薬の含有量が乾燥物換算で0.01ppm未満であることを意味する。
【0078】
1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-エチルフェニル)エタン、1-ナフタレン酢酸、2-(1-ナフチル)アセタミド、2,2-DPA(2,2-ジクロロプロピオン酸)、2,4,5-T(2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸)、2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)、2,4-DB(4-(2,4-ジクロロフェノキシ)酪酸)、4-クロルフェノキシ酢酸、BHC(ベンゼンヘキサクロリド)、DBEDC(ドデシルベンゼンスルホン酸ビスエチレンジアミン銅錯塩[II])、DCIP(2,6-ジクロロインドフェノール)、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)、EPN(エチルパラニトロフェニルチオベンゼンスルホネイト)、EPTC(ジプロピルチオカルバミド酸S-エチル)、MCPA(2-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)酢酸)、MCPB(4-(2-メチル-4-クロロフェノキシ)酪酸)、Sec-ブチルアミン、TCMTB([(ベンゾチアゾール-2-イルチオ)メチル]チオシアナート)、XMC(メチルカルバミン酸3,5-ジメチルフェニル)、γ-BHC(γ-ベンゼンヘキサクロリド)、アイオキシニル、アクリナトリン、アザコナゾール、アザフェニジン、アザメチホス、アシフルオルフェン、アシベンゾラル-S-メチル、アジムスルフロン、アシュラム、アジンホスメチル、アセキノシル、アセタミプリド、アセトクロール、アセフェート、アゾキシストロビン、アゾシクロチン、シヘキサチン、アトラジン、アニラジン、アニロホス、アバメクチン、アミトラズ、アミトロール、アメトリン、アラクロール、アラニカルブ、アラマイト、アルジカルブ、アルドキシカルブ、アルドリン、ディルドリン、イオドスルフロンメチル、イサゾホス、イソウロン、イソカルボホス、イソキサジフェンエチル、イソキサチオン、イソキサフルトール、イソフェンホス、イソプロカルブ、イソプロチオラン、イナベンフィド、イプロジオン、イプロバリカルブ、イプロベンホス、イマザキン、イマザメタベンズメチルエステル、イマザリル、イマゾスルフロン、イミシアホス、イミダクロプリド、イミノクタジン、イミベンコナゾール、インダノファン、インドキサカルブ、ウニコナゾールP、エスプロカルブ、エタメツルフロンメチル、エタルフルラリン、エチオフェンカルブ、エチオン、エチクロゼート、エチプロール、エディフェンホス、エテホン、エトキサゾール、エトキシスルフロン、エトフェンプロックス、エトフメセート、エトプロホス、エトベンザニド、エトリジアゾール、エトリムホス、エポキシコナゾール、エマメクチン安息香酸塩、エンドスルファン、エンドリン、オキサジアゾン、オキサジキシル、オキサジクロメホン、オキサベトリニル、オキサミル、オキシカルボキシン、オキシテトラサイクリン、オキシデメトンメチル、オキシフルオルフェン、オキスポコナゾールフマル酸塩、オキソリニック酸、オメトエート、オリサストロビン、オリザリン、オルトフェニルフェノール、カズサホス、カフェンストロール、カプタホール、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、カルバリル、カルフェントラゾンエチル、カルプロパミド、カルベタミド、カルベンダジム、チオファネート、チオファネートメチル、ベノミル、カルボキシン、カルボスルファン、カルボフラン、キザロホップエチル、キナルホス、キノキシフェン、キノクラミン、キノメチオナート、キャプタン、キントゼン、クマホス、クミルロン、グリホサート、グルホシネート、クレソキシムメチル、クレトジム、クロキントセットメキシル、クロジナホッププロパルギル、クロジナホップ酸、クロゾリネート、クロチアニジン、クロピラリド、クロフェンセット、クロフェンテジン、クロプロップ、クロマゾン、クロマフェノジド、クロメプロップ、クロランスラムメチル、クロラントラニリプロール、クロリダゾン、クロリムロンエチル、クロルエトキシホス、クロルスルフロン、クロルタールジメチル、クロルデン、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、クロルフェナピル、クロルフェンソン、クロルフェンビンホス、クロルブファム、クロルフルアズロン、クロルプロファム、クロルベンシド、クロルメコート、クロロクスロン、クロロタロニル、クロロネブ、クロロベンジレート、シアゾファミド、シアナジン、シアノホス、ジアフェンチウロン、ジウロン、ジエトフェンカルブ、シエノピラフェン、ジオキサチオン、ジカンバ、シクラニリド、シクロエート、シクロキシジム、ジクロシメット、ジクロスラム、シクロスルファムロン、ジクロトホス、ジクロフェンチオン、ジクロフルアニド、シクロプロトリン、ジクロベニル、ジクロホップメチル、ジクロメジン、ジクロラン、ジクロルプロップ、ジクロルボス、ナレド、ジクワット、ジコホール、ジスルホトン、ジチアノン、ジチオピル、ジニコナゾール、シニドンエチル、ジノカップ、シノスルフロン、ジノテフラン、シハロトリン、シハロホップブチル、ジヒドロストレプトマイシン、ストレプトマイシン、ジフェナミド、ジフェニル、ジフェニルアミン、ジフェノコナゾール、ジフェンゾコート、シフルトリン、シフルフェナミド、ジフルフェニカン、ジフルベンズロン、シプロコナゾール、シプロジニル、シペルメトリン、ジベレリン、シマジン、シメコナゾール、ジメタメトリン、ジメチピン、ジメチリモール、ジメチルビンホス、ジメテナミド、ジメトエート、ジメトモルフ、シメトリン、ジメピペレート、シモキサニル、シラフルオフェン、シロマジン、シンメチリン、スピノサド、スピロキサミン、スピロジクロフェン、スルフェントラゾン、スルプロホス、スルホスルフロン、スルホテップ、セトキシジム、ゾキサミド、ターバシル、ダイアジノン、ダイアレート、ダイムロン、ダゾメット、メタム、メチルイソチオシアネート、ダミノジッド、チアクロプリド、チアジニル、チアゾピル、チアベンダゾール、チアメトキサム、チオジカルブ、メソミル、チオベンカルブ、チオメトン、チジアズロン、チフェンスルフロンメチル、チフルザミド、テクナゼン、デスメディファム、テトラクロルビンホス、テトラコナゾール、テトラジホン、テニルクロール、テブコナゾール、テブチウロン、テブピリムホス、テブフェノジド、テブフェンピラド、テプラロキシジム、テフルトリン、テフルベンズロン、デメトン-S-メチル、デルタメトリン、トラロメトリン、テルブトリン、テルブホス、テレフタル酸銅、トラルコキシジム、トリアジメノール、トリアジメホン、トリアスルフロン、トリアゾホス、トリアレート、トリクラミド、トリクロピル、トリクロルホン、トリシクラゾール、トリチコナゾール、トリデモルフ、トリネキサパックエチル、トリブホス、トリフルスルフロンメチル、トリフルミゾール、トリフルムロン、トリフルラリン、トリフロキシストロビン、トリフロキシスルフロン、トリベヌロンメチル、トリルフルアニド、トルクロホスメチル、トルフェンピラド、ナプタラム、ナプロアニリド、ナプロパミド、ニコスルフロン、ニコチン、ニテンピラム、ニトラピリン、ニトロタールイソプロピル、ノバルロン、ノルフルラゾン、バーバン、パクロブトラゾール、バミドチオン、パラコート、パラチオン、パラチオンメチル、バリダマイシン、ハルフェンプロックス、ハロキシホップ、ハロスルフロンメチル、ビオレスメトリン、ピコリナフェン、ビスピリバックナトリウム塩、ビテルタノール、ビフェナゼート、ビフェノックス、ビフェントリン、ピペロニルブトキシド、ピペロホス、ヒメキサゾール、ピメトロジン、ピラクロストロビン、ピラクロニル、ピラクロホス、ピラゾキシフェン、ピラゾスルフロンエチル、ピラゾホス、ピラゾリネート、ピラフルフェンエチル、ピリダフェンチオン、ピリダベン、ピリダリル、ピリデート、ピリフェノックス、ピリフタリド、ピリブチカルブ、ピリプロキシフェン、ピリミカーブ、ピリミジフェン、ピリミノバックメチル、ピリミホスメチル、ピリメタニル、ピレトリン、ピロキロン、ビンクロゾリン、ファムフール、ファモキサドン、フィプロニル、フェナミホス、フェナリモル、フェニトロチオン、フェノキサニル、フェノキサプロップエチル、フェノキシカルブ、フェノチオカルブ、フェノトリン、フェノブカルブ、フェリムゾン、フェンアミドン、フェンクロルホス、フェンスルホチオン、フェンチオン、フェンチン、フェントエート、フェントラザミド、フェンバレレート、フェンピロキシメート、フェンブコナゾール、フェンプロパトリン、フェンプロピモルフ、フェンヘキサミド、フェンメディファム、フサライド、ブタクロール、ブタフェナシル、ブタミホス、ブチレート、ブトロキシジム、ブピリメート、ブプロフェジン、フラザスルフロン、フラチオカルブ、フラムプロップメチル、フラメトピル、プリミスルフロンメチル、フリラゾール、フルアクリピリム、フルアジナム、フルアジホップ、フルオピコリド、フルオメツロン、フルキンコナゾール、フルジオキソニル、フルシトリネート、フルシラゾール、フルスルファミド、フルチアセットメチル、フルトラニル、フルトリアホール、フルバリネート、フルフェナセット、フルフェノクスロン、フルフェンピルエチル、フルベンジアミド、フルミオキサジン、フルミクロラックペンチル、フルメツラム、フルリドン、フルロキシピル、プレチラクロール、プロクロラズ、プロシミドン、プロスルフロン、プロチオホス、フロニカミド、プロパキザホップ、プロパクロール、プロパジン、プロパニル、プロパホス、プロパモカルブ、プロパルギット、プロピコナゾール、プロピザミド、プロヒドロジャスモン、プロファム、プロフェノホス、プロヘキサジオンカルシウム塩、プロペタンホス、プロポキシカルバゾン、プロポキスル、ブロマシル、プロメトリン、ブロモキシニル、ブロモブチド、ブロモプロピレート、ブロモホス、ブロモホスエチル、フロラスラム、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサコナゾール、ヘキサジノン、ヘキサフルムロン、ヘキシチアゾクス、ベナラキシル、ベノキサコール、ペノキススラム、ヘプタクロル、ペルメトリン、ペンコナゾール、ペンシクロン、ベンスリド、ベンスルフロンメチル、ベンゾビシクロン、ベンゾフェナップ、ベンダイオカルブ、ベンタゾン、ベンチアバリカルブイソプロピル、ペンディメタリン、ペントキサゾン、ベンフラカルブ、ベンフルラリン、ベンフレセート、ホキシム、ホサロン、ボスカリド、ホスチアゼート、ホスファミドン、ホスメット、ホセチル、ホメサフェン、ホラムスルフロン、ホルクロルフェニュロン、ホルペット、ホルモチオン、ホレート、マラチオン、マレイン酸ヒドラジド、マンジプロパミド、ミクロブタニル、ミルベメクチン、メカルバム、メコプロップ、メソスルフロンメチル、メタアルデヒド、メタクリホス、メタベンズチアズロン、メタミドホス、メタミトロン、メタラキシル及びメフェノキサムの和、メチオカルブ、メチダチオン、メトキシクロール、メトキシフェノジド、メトコナゾール、メトスラム、メトスルフロンメチル、メトプレン、メトミノストロビン、メトラクロール、メトリブジン、メパニピリム、メピコートクロリド、メビンホス、メフェナセット、メフェンピルジエチル、メプロニル、モノクロトホス、モノリニュロン、モリネート、ラクトフェン、リニュロン、リムスルフロン、ルフェヌロン、レスメトリン、レナシル、酸化フェンブタスズ、酸化プロピレンおよび二臭化エチレン。
【0079】
当該農薬不含羅漢果抽出物は、ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルMから選択される少なくとも1つの農薬を有する農薬含有羅漢果抽出物を材料として、前述する(I)記載の調製方法を用いて、当該農薬を除去することで調製することができる。
【0080】
本発明の農薬不含羅漢果抽出物は、少なくとも農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)を含有していないことから安全性が高い。また上記(ロ)及び(ハ)の特徴を備えていることから、甘味質の低下(雑味)がなく、甘味の基本性能である8項目(後引き、しつこさ、くせ、渋味、刺激、すっきり感、まろやかさ、こく、苦み)で良好な甘味質を有しており、砂糖に近い良質な甘味質を有する甘味料組成物として有用である。
【0081】
(III)甘味料組成物、及びそれを含む製品
本発明の甘味料組成物は、前述する農薬不含羅漢果抽出物からなるか、または当該農薬不含羅漢果抽出物に加えて補助甘味成分を含有するものである。
【0082】
ここで補助甘味成分とは、甘味を有する或いは甘味料の甘味強度および甘味質を調整する成分を意味し、例えば単糖,二糖,オリゴ糖,及び糖アルコールなどの糖質系甘味料;非糖質系甘味料;及び食物繊維を挙げることができる。
【0083】
糖質系甘味料のうち、単糖としては、果糖,ブドウ糖,キシロース,ソルボース,ガラクトース,及び異性化糖などが挙げられる。二糖としては、麦芽糖,乳糖,トレハロース,ショ糖,異性化乳糖,及びパラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖としては、キシロオリゴ糖,フラクトオリゴ糖,ダイズオリゴ糖,イソマルトオリゴ糖,ラクトスクロース,ガラクトオリゴ糖,ラクチュロース,パラチノースオリゴ糖,シュクロオリゴ糖,テアンオリゴ糖,及び海藻オリゴ糖などが挙げられる。糖アルコールとしては、マルチトール,キシリトール,ソルビトール,マンニトール,及びパラチニットなどが挙げられる。また、非糖質系甘味料のうち、合成甘味料としては、アスパルテーム、アドバンテーム、アセスルファムK、スクラロース、及びネオテームなどが挙げられる。さらに非糖質系甘味料のうち、天然甘味料としては、甘草抽出物、ステビア抽出物、及びソーマチン抽出物などが挙げられる。
【0084】
食物繊維としては、ペクチン、グア豆酵素分解物、グルコマンナン、βグルカン、ポリデキストロース、イヌリン、アガロース、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン、及び難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;及びセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、及びキトサン等の不溶性食物繊維を挙げることができる。好ましくは水溶性食物繊維である。
【0085】
本発明の甘味料組成物が、農薬不含羅漢果抽出物に加えて補助甘味成分を含有するものである場合、甘味料組成物100重量%に含まれる農薬不含羅漢果抽出物の割合としては0.01〜99.99重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%を挙げることができ、補助甘味成分の割合としては0.01〜99.99重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%を挙げることができる。
【0086】
本発明の甘味料組成物は、前述するように、本発明の農薬不含羅漢果抽出物からなるか、または当該農薬不含羅漢果抽出物に加えて補助甘味成分を含有するものであるので、安全性が高いだけでなく、甘味質の低下(雑味)がなく、砂糖に近い良質な甘味質を有する。このため、飲食物、医薬部外品、医薬品、または化粧品の甘味料として好適に使用することができる。なお、ここで化粧品としては、口紅やリップクリームなど唇に適用される化粧品を例示することができる。
【0087】
本発明の甘味料組成物は、それが本発明の農薬不含羅漢果抽出物からなるものである場合、その甘味度は砂糖(スクロース)の200−400倍である。かかる甘味度は、農薬不含羅漢果抽出物に補助甘味成分を配合することで適宜調整することができる。
【0088】
本発明の方法によって調製した羅漢果抽出物、本発明の羅漢果抽出物、および本発明の甘味料組成物によれば、低エネルギー(低カロリー)またはゼロエネルギー(ゼロカロリー)の甘味料組成物をより安全な形で提供することができる。この低エネルギーまたはゼロエネルギーの甘味料組成物は、肥満症や糖尿病患者のようにエネルギー摂取が制限されている人、またはダイエットを必要若しくは希望する人の甘味料組成物として有用である。
【0089】
(IV)雑味除去羅漢果抽出物
本発明の方法によって調製した羅漢果抽出物または本発明の羅漢果抽出物によれば、モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIからなるモグロサイド類(羅漢果配糖体)を高い収率で回収するとともに、農薬が選択的且つ効率的に除去できるだけでなく、羅漢果抽出物に含まれている特定の雑味成分の除去低減も可能となる。このため、従来の方法で調製される羅漢果抽出物と比べて、良好な甘味質を有する羅漢果抽出物を得ることができる。
【0090】
従って、本発明の活性炭による処理方法は、農薬を使用しないかまたは農薬使用が少ない栽培方法などを用いて得られた羅漢果についても、適用することができる。すなわち、羅漢果を抽出する際の工程中に本発明の活性炭による処理方法を加えるか、または一旦従来法で抽出した羅漢果抽出物をさらに活性炭処理することによって、特定の雑味成分の除去低減も可能となる。このため、いずれにしても従来の方法で調製される羅漢果抽出物と比べて、良好な甘味質を有する羅漢果抽出物を得ることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実験例、実施例及び比較例などにより詳細に説明する。但し、これらの実験例等は例示を意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲内の他の局面、利点、および改変は、本発明に関係する分野の当業者には明らかである。
【0092】
参考例1 羅漢果配糖体の定量法
羅漢果抽出物に含まれるモグロサイドV及びその他の羅漢果配糖体(モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の定量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。使用した装置および条件は下記の通りである。
【0093】
(1)モグロサイドVの定量に使用した装置および条件・HPLC装置:Prominence LC-20AD((株)島津製作所製)
・LCカラム:Shodex Asahipak NH2-50 4E(250mm×4.6mm I.D.、(株)昭和電工製)
・LC条件
注入量 :20μL
カラム温度:40℃
移動相:74容量%アセトニトリル/26容量%水
流速:1.0 mL/分
検出波長:UV 203nm
【0094】
(2)その他の羅漢果配糖体の定量に使用した装置および条件
・HPLC装置:Prominence LC-20AD((株)島津製作所製)
・LCカラム:Kaseisorb LC ODS 2000(150mm×4.6mm I.D.、(株)東京化成工業製)
・LC条件
注入量 :20μL
カラム温度:40℃
移動相:A相:水、B相:アセトニトリル
0→10分(イソクラティック):A相80容量%、B相20容量%
10→50分(リニアグラジエント):「A相80容量%、B相20容量%」→「A相45容量%、B相55容量%」
流速 :1.0 mL/分
検出波長:UV 203 nm。
【0095】
参考例2 農薬含有量の測定
(1)前処理
羅漢果抽出物に含まれる農薬の量を液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)で定量するに先立ち、羅漢果抽出物を下記手順で前処理し、得られた処理物を「LS/MS測定用試料」とする。
【0096】
羅漢果抽出物2gを200mL容量のメスフラスコに量り取り、水を加えよく溶かした後、さらに水を加え200mLに定容し、「定容液1」とする。定容液1を20mL容量のホールピペットを用いて20mL分取し、これを、塩化ナトリウム10gを含む水200mLを入れた500mL容量の分液ロートに加える。これに酢酸エチル/n−ヘキサン=(1 : 3)50mLを加え、1分間振盪し、約30分間静置した後、有機層を分取する。この操作をさらに2回繰り返し、有機層を合わせる。分取した有機層に硫酸ナトリウム20gを加えて30分以上静置し乾燥させる。乾燥有機層から硫酸ナトリウムを濾紙(5A、125mm、(株)アドバンテック東洋製)を用いて濾過し、ろ液を回収する。使用した硫酸ナトリウムおよび濾紙は、20mLの酢酸エチル/n−ヘキサン=(1:3)で洗浄し、洗液を上記ろ液に合わせる。このろ液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固する。濃縮物を少量のアセトンに溶解し、50mL容量ナスフラスコに移し、濃縮乾固する。この乾固物をメタノールで溶解し2mL容量のメスフラスコに移す。さらに少量のメタノールで上記50mL容量のナスフラスコを洗浄し、洗液を先の2mL容量のメスフラスコに移した後、メタノールを加えて2mLに定容し、「定容液2」とする。この定容液2をエキクロディスク3((株)日本ジェネティクス製)でろ過し、ろ液を回収する。斯くして調製したろ液を「LS/MS測定用試料」とする。
【0097】
(2)羅漢果抽出物に含まれる農薬の定量
羅漢果抽出物に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の定量は、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)により行う。使用する装置および条件は下記の通りである。なお、当該方法による各種農薬の定量限界値はいずれも0.01ppmである。
【0098】
(2−1)農薬の定量に使用する装置および条件
・LC/MS装置:LCMS-2010EV((株)島津製作所製)
・LCカラム:Inertsil ODS-3(250mm×4.6mm,I.D.5μm、(株)ジーエルサイエンス製)
・LC条件
注入量 :30μL
カラム温度:40℃
移動相 :80容量%アセトニトリル/20容量%水
流速 :1.0mL/分
・MS条件
イオン化法 :APCI法、ポジティブモード
ネブライズガス流量 :2.5 L/分
APCIインターフェイス温度:350℃
CDL温度 :200℃
ヒートブロック温度
:300℃。
【0099】
(2−2)農薬除去率の算出方法
農薬除去処理による農薬除去率は、下式(1)から求めることができる。
【0100】
【数4】
【0101】
参考例3 原料羅漢果抽出物に含まれる農薬及び羅漢果配糖体の割合
桂林莱茵生物科技股▲分▼有限公司より入手した羅漢果抽出物(Luohanguo Glucoside 40% yellow type)(以下、これを「原料羅漢果抽出物」ともいう)中に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の含有量、及び農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の含有量を、上記参考例1及び2に記載する方法に従って求めた。
結果を表3及び4に示す。なお、各表に記載する値は、いずれも原料羅漢果抽出物(乾燥物)に含まれる各成分の乾燥物換算値である。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
実験例1 活性炭を用いた農薬不含羅漢果抽出物の調製
(1)原料羅漢果抽出物(桂林莱茵生物科技股▲分▼有限公司より入手、(Luohanguo Glucoside 40% yellow type))5gを、25容量%エタノールを含む水溶液に溶解し500mLに定容した。この定容液を、あらかじめ25容量%エタノール/75容量%水で一晩以上膨潤させておいた活性炭(粒状)(実施例1、比較例1〜3)40mLを充填したカラム(カラム内径:15mm、長さ:300mm)にポンプを用いて流速3.3mL/分で注入した。
【0105】
[活性炭]
実施例1:ヨウ素吸着能1610mg/g(FG−3:(株)日本エンバイロケミカルズ製)
比較例1:ヨウ素吸着能990mg/g(ブロコールCM:(株)太平化学産業製)
比較例2:ヨウ素吸着能≧1000mg/g、且つ<1500mg/g (クラレコールKL:(株)クラレケミカル製)
比較例3:ヨウ素吸着能>1000mg/g、且つ<1500mg/g (GCN 1240 PULS:(株)キャボット・ノリット ジャパン製)。
ここで、40mlでの膨潤した活性炭の重量は、FP−3は、13.84g、ブロコールCMは、17.46g、クラレコールKLは、18.04g、GCN 1240 PULSは、20.67gであった。
【0106】
(2)カラムに上記羅漢果抽出物溶液を全量(500mL)注入して溶出液を回収した後、25容量%エタノール/75容量%水200mLを流速3.3mL/分で注入して活性炭を洗浄し、洗浄液を回収した。回収した溶出液及び洗浄液を混合した回収液を減圧濃縮してエタノールを除去した後、凍結乾燥機VD−800R(タイテック)により粒状活性炭処理物を得た。
なお、上記の操作はいずれも室温で行った。
【0107】
(3)上記(2)より得た活性炭処理物(0.2w/w%水溶液)について、参考例1に記載する方法に従って各活性炭処理物(実施例1、比較例1〜3)に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の量を測定した。また参考例2(1)に記載する方法に従って前処理し、(2)の方法に従って各活性炭処理物(実施例1、比較例1〜3)に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の量を測定した。
【0108】
次いで、測定した各含量から各活性炭処理による羅漢果配糖体回収率(%)及び残留農薬除去率(%)を求めた。これらを表5及び表6に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
実施例1の活性炭処理物に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の量はいずれも検出限界未満(0.002 ppm未満)であり、これらの農薬はいずれも除去されたことが確認された。
【0112】
上記の結果から分かるように、ヨウ素吸着能が少なくとも1500mg/g以上である活性炭、好ましくは1600mg/g以上の活性炭を用いることで、羅漢果抽出物に含まれていた残留農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)が100%除去できることが確認された。なお、これらの残留農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の分配係数(logPow)は1.71以上である。このことから、少なくとも分配係数(logPow)は1.71以上の化合物は、ヨウ素吸着能が1500mg/g以上の活性炭、好ましくは1600mg/g以上の活性炭を用いた処理で除去可能であると考えられる。
【0113】
また、上記活性炭の処理によると、活性炭処理前の農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIの合計)が70%以上の収率で回収できることが確認された。また活性炭処理後の農薬不含羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の総量は、当該農薬不含羅漢果抽出物100重量%あたり33重量%以上であることが確認された。
【0114】
実験例2 活性炭を用いた農薬不含羅漢果抽出物の調製
(1)原料羅漢果抽出物(桂林莱茵生物科技股▲分▼有限公司より入手、(Luohanguo Glucoside 40% yellow type))5gを水に溶解し50mLに定容した。この定容液全量をビーカーに移し、これに活性炭(粉末状)(実施例2〜4、比較例4〜7)を1g添加した。これを、攪拌子を用いて30分間攪拌した後、0.45μmのメンブレンフィルターを用いて減圧濾過し、活性炭を除去した。得られたろ液を凍結乾燥して活性炭処理物を得た。なお、上記の操作はいずれも室温で行った。
【0115】
[粉末活性炭]
実施例2:カラメル脱色能86.2%(クラレコールPK-D:(株)クラレケミカル製)、粒度75 μm以下86 μm以上
実施例3:カラメル脱色能94.6%(FP-1:(株)日本エンバイロケミカルズ製)実施例4:カラメル脱色能95.7%(FP-6:(株)日本エンバイロケミカルズ製)比較例4:カラメル脱色能73.1%(FP-4:(株)日本エンバイロケミカルズ製)比較例5:カラメル脱色能17.6%(FP-8:(株)日本エンバイロケミカルズ製)比較例6:カラメル脱色能70.9%(FP-4:(株)日本エンバイロケミカルズ製)比較例7:カラメル脱色能80%(ブロコールB印活性炭:(株)太平化学産業製)
【0116】
(2)上記(1)で得た活性炭処理物について、参考例1に記載する方法に従って各活性炭処理物(実施例2〜4、比較例4〜7)に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の量を測定した。また参考例2(1)に記載する方法に従って前処理し、(2)の方法に従って各活性炭処理物(実施例2〜4、比較例4〜7)に含まれる農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)の量を測定した。次いで、測定した各含量から各活性炭処理による羅漢果配糖体回収率(%)、残留農薬検出量(ppm)及び残留農薬除去率(%)を求めた。これらを表7〜9に示す。
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
上記の結果から分かるように、カラメル脱色能が少なくとも85%である活性炭を用いることで、羅漢果抽出物に含まれていた残留農薬(ジメトモルフ、トリアジメノール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、メタラキシルおよびメタラキシルM)が100%除去できることが確認された(検出限界[0.002 ppm]未満)。なお、実施例4の活性炭処理物について、本件明細書の段落[0078]に記載する農薬の残存量を測定したところ、いずれも定量限界[0.01 ppm]未満であり、これらの農薬のいずれも含まれていないことが確認された。
【0121】
また、上記活性炭の処理によると、活性炭処理前の農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の総量の少なくとも85重量%、好ましくは90重量%もの高い収率で回収できることが確認された。このことから、カラメル脱色能が少なくとも85%である活性炭を用いることで、甘味料成分として有用な羅漢果配糖体を高い収率で回収しながらも、残留農薬を選択的且つ効率的に除去できることが判明した。
【0122】
また、上記活性炭の処理によると、活性炭処理前の農薬含有羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)が70%以上、具体的には80%以上、より具体的には85%以上の収率で回収できることが確認された。また活性炭処理後の農薬不含羅漢果抽出物に含まれる羅漢果配糖体(モグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドI)の総量は、当該農薬不含羅漢果抽出物100重量%あたり33重量%以上であることが確認された。
【0123】
実験例3 農薬不含羅漢果抽出物の成分分析及び甘味質評価
(1)成分分析
活性炭未処理物(原料羅漢果抽出物)及び活性炭処理物(実施例3及び4、比較例7)を、参考例1(羅漢果配糖体の定量法)(2)に記載するHPLC装置及び条件を有する高速液体クロマトグラフィーに供した。得られた活性炭未処理物のクロマトグラムと活性炭処理物のクロマトグラムを比較することで、保持時間16分付近に検出されるピーク(以下、このピークを「P
16」とも称する)の面積(以下「P
16面積」とも称する)が、活性炭処理によって顕著に減少することが確認された。
【0124】
また活性炭処理物のなかでも、実施例4及び3のP
16面積は、比較例7のP
16面積よりも有意に小さく、カラメル脱色能が少なくとも85%、好ましくは90%以上である活性炭を用いて処理することで、羅漢果抽出物からP
16成分が効率的に除去低減できることが確認された。
【0125】
表8に、上記条件のHPLCで検出される全ピークの総面積に対するP
16面積の割合(%)を示す。下記に示すように、活性炭処理物(実施例3及び4)はいずれも全ピークの総面積に対するP
16面積の割合(%)が3%以下、詳細には2.5%以下であった。
ここで、面積は、LabSolutions((株)島津製作所)により各ピークの面積値を求めた。P
16面積の割合(%)は、全ピーク面積合計値の比率で算出した。保持時間16分付近とは、ここでは保持時間15分から17分の間のピークが全ピーク面積に占める割合とした。
【0126】
【表10】
【0127】
なお、実験例1でヨウ素吸着能1500mg/g以上の活性炭で処理した羅漢果抽出物(活性炭処理物:実施例1)についても、同様に当該活性炭処理によって原料羅漢果抽出物からP
16成分が除去低減されることが確認された。
【0128】
【表11】
【0129】
(2)P
16成分の同定
上記P
16成分を分取し、参考例2(2)(2−1)に記載する条件のLC/MS分析に供したところ、当該成分は、分子量358ダルトンの化合物であることが確認された。
【0130】
(3)甘味質評価
上記(1)で調製した活性炭処理物(実施例3及び4、比較例7)を0.1 w/v%の水溶液(被験試料)に調製して、官能試験に熟練したパネリスト15名に対して官能試験を実施した。
【0131】
具体的には、各パネリストに各被験試料を味見してもらい、3つの被験試料について甘味質の雑味(苦味、しつこさ、くせ、渋み、刺激、すっきりしない(後引き)、まろやかでない、及びコクの総合評価)が少ない順に1〜3まで順位をつけ、順位の合計値を求めた。結果を表12に示す。
【0132】
【表12】
【0133】
この結果をクレーマー検定(サンプル数k=3、 被験者数n=15: p<0.05, a-b=23-37)により評価した結果、比較例7は3つの被験試料の中で有意に好まれず(実施例3及び4に対して雑味が多い方に有意差がある)、実施例4は3種類の中で有意に好まれることが確認された(比較例7及び実施例3に対して雑味が少ない方に有意差がある)。
【0134】
実験例4 農薬不含羅漢果抽出物の甘味質評価
官能試験に熟練したパネリスト5名を対象として、活性炭未処理物(原料羅漢果抽出物)及び活性炭処理物(実施例4)の甘味質(8項目)について、官能試験を実施した。
【0135】
(1)試料の調製
(1−1)前調製
活性炭未処理物(原料羅漢果抽出物)及び活性炭処理物(実施例4)をそれぞれ、下記条件のHPLCに供して、保持時間27分以前に溶出する画分(以下「分画物(前)」と称する)と保持時間27分以後に溶出する画分(以下「分画物(後)」と称する)をそれぞれ分取し、それぞれロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、凍結乾燥した。ここで、分取時は5w/w%水溶液であった。また、下記クロマトグラム時は、0.2%水溶液であった。
[HPLC条件]
・HPLC装置: LC-10ADvp((株)島津製作所製)
・LCカラム:Nucleosil 100-5C18(250 mm×20 mm I.D.、(株)GLサイエンス製)
・LC条件
注入量 :1 mL
カラム温度:40℃
移動相:A相:水、B相:アセトニトリル
0→10分(イソクラティック):A相80容量%、B相20容量%
10→50分(リニアグラジエント):「A相80容量%、B相20容量%」→「A相45容量%、B相55容量%」
流速 :9.999 mL/分
検出波長:UV 203 nm。
【0136】
活性炭未処理物の分画物(前)及び分画物(後)、並びに活性炭処理物の分画物(前)及び分画物(後)をそれぞれ実験例3に記載する条件のHPLCに供し、クロマトグラムを得た(
図1:活性炭未処理物、
図2:活性炭処理物)。各分画物(後)のクロマトグラム(
図1及び2)の対比からわかるように、活性炭処理することで保持時間16分付近のピーク成分が除去低減することが確認された。
【0137】
(1−2)試料調製
上記で調製した活性炭未処理物、活性炭未処理物の分画物(後)、及び活性炭処理の分画物(後)をそれぞれ0.05 g量り取り、水を加えて25 gとし、甘味質評価試料とした。
【0138】
(2)甘味質評価
健常被験者5名を対象に、羅漢果抽出物および実施例4で得られた活性炭未処理物、活性炭未処理物の分画物(後)、及び活性炭処理の分画物(後)を水に溶解し、0.2%の水溶液を調製した。この水溶液を絶対評価で、甘味質(8項目:苦味、しつこさ、くせ、渋味、刺激、すっきり、まろやか、コク)を視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale:VAS)方法により評価した。VASは、感覚を直線上の点として評価する方法であり、甘味などの基本味のスクリーニング検査に汎用されている(例えば、「高齢者における主観的健康感アセスメント法の検討」、Psychological Research 2004, No.3, 89−98:「4基本味における味覚機能のスクリーニング検査法の構築」、顎機能誌20; 115-129, 2014)。本実験において、VASは100mmの直線を示し、左端に「苦味が弱い」、右端には「苦味が強い」と示し、対象者には線上に点を記入してもらう。例えば、その記入した点が左端から50mmに記入されていればこの対象者は50点の苦味を感じたことにした(
図3)。つまり各苦味の数値が大きくなるほど悪く苦味が強く、逆に小さくなるほど苦味が弱く甘味質として良好である。なお、試験液は被験者へランダムに渡した。それぞれ項目でVAS線の左端からの点までの距離を測定し、その平均値を軸上にプロットしレーダーチャートを作成した。
【0139】
結果を
図3に示す。
図3に示すように、活性炭未処理物と活性炭未処理物の分画物(後)との甘味質に殆ど差異は認められなかった。このことから羅漢果抽出物の分画物(前)は、甘味質に殆ど関与していないことが確認された。一方、活性炭処理物の分画物(後)は、活性炭未処理物及び活性炭未処理物の分画物(後)と比較して、苦み、くせ、刺激、すっきり、及びコクの項目において評価合計点が低下しており、良好な甘味質を有することが確認された。
【0140】
また
図1及び2に示すように、活性炭未処理物の分画物(後)と活性炭処理物の分画物(後)とは分子量358ダルトンのP
16成分の有無において相違する。このことから、このP
16成分が羅漢果抽出物の甘味質の低下(雑味)に深く関与していると考えられる。このことから、本発明の活性炭処理によれば、羅漢果抽出物から、残留農薬だけでなく、甘味質の低下(雑味)に関係するP
16成分を効果的に除去低減することができるため、安全で且つ甘味質の良好な甘味料組成物を調製する方法として有用である。
農薬含有羅漢果抽出物を活性炭処理して農薬を除去する工程を有する、農薬不含羅漢果抽出物の調製方法であって、該活性炭処理で使用する活性炭が、ヨウ素吸着量が少なくとも1500mg/gである活性炭およびカラメル脱色能が少なくとも85%である活性炭よりなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの活性炭であり、
当該活性炭の処理によるモグロサイドV、モグロサイドIV、11−オキソ−モグロサイドV及びシアメノサイドIからなる羅漢果配糖体の回収率が少なくとも70%である、調製方法を用いて、農薬含有羅漢果抽出物から調製された農薬不含羅漢果抽出物。