【解決手段】コイル部品用コア100は、複数のコア片を備えて構成されており、複数のコア片には、互いに対向して配置されている第1板コア10及び第2板コア20と、第1板コア10と第2板コア20との対向間隔に配置されている中芯コア30と、第1板コア10と第2板コア20との対向間隔に配置されていて中芯コア30が挿通されているリングコア40と、が含まれ、複数のコア片のうち互いに隣接して配置されているコア片どうしの間に、それぞれ非磁性ギャップ50が形成されている。
互いに積層して配置されている複数の前記リングコアを備え、前記複数のリングコアどうしの間にも前記非磁性ギャップが形成されている請求項1に記載のコイル部品用コア。
互いに同軸に連ねて配置されている複数の前記中芯コアを備え、前記複数の中芯コアどうしの間にも前記非磁性ギャップが形成されている請求項1又は2に記載のコイル部品用コア。
前記第1板コアと前記リングコアとの間と、前記第2板コアと前記リングコアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて前記非磁性ギャップを構成する第1スペーサが介装されている請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
前記第1板コアと前記中芯コアとの間と、前記第2板コアと前記中芯コアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて前記非磁性ギャップを構成する第2スペーサが介装されている請求項1から6のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
前記第1板コアと前記リングコアとの間と、前記第2板コアと前記リングコアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成された第1スペーサが介装されており、
前記第1板コアと前記中芯コアとの間と、前記第2板コアと前記中芯コアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成された第2スペーサが介装されており、
一の前記第1スペーサと一の前記第2スペーサとが同一平面上に配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
前記中芯コアの軸心方向における前記リングコアの寸法よりも、前記中芯コアの軸心方向における前記第1板コア又は前記第2板コアの寸法が大きい請求項1から12のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
当該コイル部品の全磁路長のうち、前記複数のコア片の個々のコア片を通過する磁路長が、いずれも前記全磁路長の20%以下である請求項16又は17に記載のコイル部品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、
図1から
図5を用いて第1実施形態について説明する。
図2は中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心に沿ったコイル部品用コア100の断面図である。
図3においては、コイル部品200の構成のうち、第2板コア20、第1スペーサ61及び第2スペーサ62を、コイル部品200における他部から分離させて示している。
図4は中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るコイル部品用コア100は、複数のコア片を備えて構成されている。
複数のコア片には、互いに対向して配置されている第1板コア10及び第2板コア20と、第1板コア10と第2板コア20との対向間隔に配置されている中芯コア30と、第1板コア10と第2板コア20との対向間隔に配置されていて中芯コア30が挿通されているリングコア40と、が含まれ、複数のコア片のうち互いに隣接して配置されているコア片どうしの間に、それぞれ非磁性ギャップ50が形成されている。
すなわち、
図2に示すように、第1板コア10と中芯コア30との間(第1板コア10と第1中芯コア31との間)、第2板コア20と中芯コア30との間(第1板コア10と第2中芯コア32との間)、第1板コア10とリングコア40との間(第1板コア10と第1リングコア41との間)、及び、第2板コア20とリングコア40(第2板コア20と第2リングコア42との間)との間に、それぞれ非磁性ギャップ50が形成されている。
【0013】
このような構成のコイル部品用コア100によれば、当該コイル部品用コア100を構成する各コア片の形状を、板状、環状、柱状などの単純な形状にできるため、各コア片を均質に且つ良好な構造的安定性を持つように成形することが容易である。また、各コア片を高い圧力で圧縮成形することが容易となることから、各コア片の比透磁率を十分に高くすることができる。
また、コイル部品用コア100の複数箇所に分散して配置された非磁性ギャップ50を有する構造となるため、コイル部品用コア100の直流重畳特性も良好となる。
【0014】
第1板コア10及び第2板コア20の各々は、例えば、平板状に形成されている。なお、第1板コア10において第2板コア20と対向する面のうち中芯コア30と対向する部位を除く部位には、突起が形成されていても良い。同様に、第2板コア20において第1板コア10と対向する面のうち中芯コア30と対向する部位を除く部位には、突起が形成されていても良い。第1板コア10及び第2板コア20の平面形状は、特に限定されないが、例えば、正方形状などの矩形状となっている(
図5参照)。
例えば、第1板コア10の厚み寸法と第2板コア20の厚み寸法とは互いに等しい。ただし、第1板コア10の厚み寸法と第2板コア20の厚み寸法とは互いに異なっていてもよい。
【0015】
本実施形態の場合、コイル部品用コア100は、互いに積層して配置されている複数のリングコア40(例えば、第1リングコア41及び第2リングコア42の2つのリングコア40)を備えている。そして、複数のリングコア40どうしの間にも非磁性ギャップ50が形成されている。すなわち、第1リングコア41と第2リングコア42との間にも非磁性ギャップ50が形成されている。
これにより、コイル部品用コア100の直流重畳特性の更なる向上が期待できる。
【0016】
第1リングコア41及び第2リングコア42の各々は、平板状に形成されており、それぞれ平面視における中央部に開口41a、42aが形成されていることによって、環状の平面形状に形成されている。平面視における第1リングコア41及び第2リングコア42の外形形状は、例えば、第1板コア10及び第2板コア20の平面形状と同じ形状に形成されている。各開口41a、42aは、例えば、円形に形成されている。より詳細には、開口41aの径と開口42aの径とが互いに等しい。
例えば、第1リングコア41の厚み寸法と第2リングコア42の厚み寸法とは互いに等しい。例えば、第1リングコア41及び第2リングコア42の厚み寸法は、第1板コア10及び第2板コア20の厚み寸法と等しい。
ただし、第1リングコア41の厚み寸法と第2リングコア42の厚み寸法とは互いに異なっていてもよい。また、第1リングコア41及び第2リングコア42の厚み寸法と、第1板コア10及び第2板コア20の厚み寸法とは、互いに異なっていてもよい。
【0017】
本実施形態の場合、第2リングコア42において第2板コア20と対向する面には、後述するコイル70を構成するワイヤ71の第1引出配線部72及び第2引出配線部73をそれぞれ外部に引き出すための一対のワイヤ引出溝43(
図1、
図3)が形成されている。一対のワイヤ引出溝43は、開口42aを基準として互いに反対方向に延伸している。各ワイヤ引出溝43の両端は、開口42aの内部空間と、第2リングコア42の側方の空間と、に対してそれぞれ開放している。
【0018】
なお、本実施形態では、コイル部品用コア100が2つのリングコア40を備える例を説明するが、本発明は、この例に限らず、コイル部品用コア100は互いに積層して配置されている3つ以上のリングコア40を備えていて、隣り合うリングコア40どうしの間の各々に非磁性ギャップ50が形成されていてもよい。
【0019】
本実施形態の場合、コイル部品用コア100は、互いに同軸に連ねて配置されている複数の中芯コア30(例えば、第1中芯コア31及び第2中芯コア32の2つの中芯コア30)を備えている。そして、複数の中芯コア30どうしの間にも非磁性ギャップ50が形成されている。すなわち、第1中芯コア31と第2中芯コア32との間にも非磁性ギャップ50が形成されている。
【0020】
第1中芯コア31及び第2中芯コア32の各々は、柱状(本実施形態の場合、円柱状)に形成されている。第1中芯コア31の両端面の各々は、当該第1中芯コア31の軸心に対して直交する平面状に形成されている。同様に、第2中芯コア32の両端面の各々は、当該第2中芯コア32の軸心に対して直交する平面状に形成されている。例えば、第1中芯コア31と第2中芯コア32は互いに同径に形成されており、平面視において、第1中芯コア31の外形線と第2中芯コア32の外形線とが互いに一致している。
【0021】
なお、本実施形態では、コイル部品用コア100が2つの中芯コア30を備える例を説明するが、本発明は、この例に限らず、コイル部品用コア100は互いに同軸に連ねて配置されている3つ以上の中芯コア30を備えていて、隣り合う中芯コア30どうしの間の各々に非磁性ギャップ50が形成されていてもよい。
【0022】
図2に示すように、中芯コア30の軸心方向(
図2における上下方向)における中芯コア30の寸法とリングコア40の寸法とが互いに等しい。
すなわち、中芯コア30の軸心方向において、第1中芯コア31の寸法と第1リングコア41の寸法とが互いに等しく、第2中芯コア32の寸法と第2リングコア42の寸法とが互いに等しい。
【0023】
より詳細には、第1中芯コア31の軸心方向における第1中芯コア31の一方の端面と、第1リングコア41の一方の面とが同一面上に配置されており、中芯コア30の軸心方向における第1中芯コア31の他方の端面と、第1リングコア41の他方の面とが同一面上に配置されている。
同様に、第2中芯コア32の軸心方向における第2中芯コア32の一方の端面と、第2リングコア42の一方の面とが同一面上に配置されており、第2中芯コア32の軸心方向における第2中芯コア32の他方の端面と、第2リングコア42の他方の面とが同一面上に配置されている。
【0024】
第1板コア10、第2板コア20、各中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)、各リングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)は、例えば、金属磁性粉末材料を含んで構成されている。
すなわち、コイル部品用コア100が備える複数のコア片の各々は、例えば、金属磁性粉末材料を含んで構成されたダストコアである。各コア片の材料は、例えば、純鉄の磁性粉末や、鉄を主成分としクロム、シリコン、マンガンなどを添加した金属磁性粉末と、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水ガラスなどのバインダーとの混合物に、必要に応じて溶剤(ターピネオールなど)を添加して加圧成形され、その後熱硬化または高温で焼成して製造されている。また、コア材に交流磁界が印加された時に大きな渦電流が発生すると高周波特性が劣化するため、周波数1MHz以上でインダクタとして機能するためには、コア材の体積抵抗率は1×10
3Ω・m以上が望ましい。
ただし、本発明は、この例に限らず、コイル部品用コア100が備える複数のコア片の各々は、フェライト材料により構成されたフェライトコアであってもよい。
【0025】
コイル部品用コア100が備える複数のコア片の各々の比透磁率は、40以上であることが好ましく、45以上であることが更に好ましく、55以上であることが一層好ましい。
【0026】
一方、コイル部品用コア100が備える複数のコア片の各々の飽和磁束密度は、600mT以上であることが好ましい。このようにすることによって、良好な直流重畳特性が得られる。複数のコア片の各々の飽和磁束密度は、800mT以上であることがより好ましく、1000mT以上であることが一層好ましい。
複数のコア片の各々は、フェライトコアであるよりも、ダストコアであることが好ましい。
【0027】
各非磁性ギャップ50は、以下に説明するように、各コア片どうしの間に介装されている第1スペーサ61、第2スペーサ62、第3スペーサ63及び第4スペーサ64により構成されている。
【0028】
先ず、第1板コア10とリングコア40(第1リングコア41)との間と、第2板コア20とリングコア40(第2リングコア42)との間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて非磁性ギャップ50を構成する第1スペーサ61が介装されている。
本実施形態の場合、第1板コア10とリングコア40(第1リングコア41)との間と、第2板コア20とリングコア40(第2リングコア42)との間に、それぞれ第1スペーサ61が介装されている。第1スペーサ61は、例えば、平坦なシート状に形成されている。
第1スペーサ61の平面形状は、例えば、リングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)の平面形状と同じである。
【0029】
また、第1板コア10と中芯コア30との間と、第2板コア20と中芯コア30との間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて非磁性ギャップ50を構成する第2スペーサ62が介装されている。
本実施形態の場合、第1板コア10と中芯コア30(第1中芯コア31)との間と、第2板コア20と中芯コア30(第2中芯コア32)との間に、それぞれ第2スペーサ62が介装されている。第2スペーサ62は、例えば、平坦なシート状に形成されている。
第2スペーサ62の平面形状は、例えば、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の平面形状と同じである。
【0030】
更に、本実施形態の場合、一の第1スペーサ61と一の第2スペーサ62とが同一平面上に配置されている。
すなわち、
図2に示すように、第1板コア10と第1リングコア41との間の第1スペーサ61と、第1板コア10と第1中芯コア31との間の第2スペーサ62と、が同一平面上に配置されている。また、第2板コア20と第2リングコア42との間の第1スペーサ61と第2板コア20と第2中芯コア32との間の第2スペーサ62と、が同一平面上に配置されている。
第1スペーサ61の厚み寸法と第2スペーサ62の厚み寸法とは互いに等しく設定されている。
【0031】
また、第1リングコア41と第2リングコア42との間には、非磁性材料により構成されている第3スペーサ63が介装されており、第3スペーサ63により、第1リングコア41と第2リングコア42との間の非磁性ギャップ50が構成されている。
第3スペーサ63の平面形状は、例えば、リングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)の平面形状と同じである。
また、第1中芯コア31と第2中芯コア32との間には、非磁性材料により構成されている第4スペーサ64が介装されており、第4スペーサ64により、第1中芯コア31と第2中芯コア32との間の非磁性ギャップ50が構成されている。
第4スペーサ64の平面形状は、例えば、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の平面形状と同じである。
【0032】
第1スペーサ61、第2スペーサ62、第3スペーサ63、第4スペーサ64は、それぞれ、例えば、粘着剤、又は、両面テープなどの、粘着性を有するものであることが挙げられる。または、熱硬化性の粘着性のある樹脂が塗布された両面テープも良い。また、クリップなどのような保持手段が別途取り付けられる場合、単に、粘着性を有さない非磁性の材料でも良い。
【0033】
コイル部品用コア100を平面視したとき、例えば、第2板コア20、第2リングコア42、第1リングコア41、第1板コア10、各第1スペーサ61及び第3スペーサ63の外形線が互いに一致し、第2リングコア42の開口42aの内周、第1リングコア41の開口41aの内周、各第1スペーサ61の内周及び第3スペーサ63の内周が互いに一致し、第2中芯コア32、第1中芯コア31、各第2スペーサ62及び第4スペーサ64の外形線が互いに一致する。
【0034】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係るコイル部品200は、本実施形態に係るコイル部品用コア100と、コイル部品用コア100の中芯コア30が挿通されているコイル70と、を備えて構成されている。
【0035】
コイル70は、ワイヤ71を螺旋状に巻回することにより構成された巻回部を備えており、この巻回部に中芯コア30が挿通されている。すなわち、コイル70の巻回部は、第1板コア10と第2板コア20との対向間隔であって、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の外周面とリングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)の内周面との間の空間に収容されている。
【0036】
更に、コイル70は、巻回部から引き出された一対の引出配線部(第1引出配線部72、第2引出配線部73)を備えている。これら第1引出配線部72及び第2引出配線部73は、
図3に示すように、第2リングコア42に形成されている一対のワイヤ引出溝43の一方ずつを介してコイル部品用コア100の外部に引き出されている。
第1引出配線部72及び第2引出配線部73は、これら第1引出配線部72及び第2引出配線部73においてワイヤ引出溝43内に配置されている部分とコイル部品用コア100の外部に引き出されている部分との境界で折り曲げられている。第1引出配線部72及び第2引出配線部73においてコイル部品用コア100の外部に引き出されている部分は、コイル部品用コア100の側面に沿って延在(例えば、中芯コア30の軸心方向に対して平行に延在)している。
【0037】
図3及び
図4に示すように、コイル部品200は、コイル部品用コア100の底面から側面に亘って設けられている一対の電極(第1電極74及び第2電極75)を備えている。
第1電極74は、第1引出配線部72の端部をコイル部品用コア100の側方から覆うことによって、該端部と接触し、第1引出配線部72と電気的に接続されている。
同様に、第2電極75は、第2引出配線部73の端部をコイル部品用コア100の側方から覆うことによって、該端部と接触し、第2引出配線部73と電気的に接続されている。
第1電極74及び第2電極75は、金属板を断面L字状に折り曲げて、コイル部品用コア100の側面から底面に亘って接着することによって設けられている。
また、第1電極74と第1引出配線部72、並びに、第2電極75と第2引出配線部73は、半田接合されている。
第1電極74及び第2電極75の幅(
図4の紙面における奥行き方向の寸法)は、ワイヤ71の外径よりも大きい。
【0038】
ここで、第1電極74及び第2電極75において、コイル部品200の側面に配置されている部分は、第2板コア20の側面上のみ存在しており、第2板コア20と第1リングコア41との間の非磁性ギャップ50を覆わない配置とされている。換言すれば、第1電極74及び第2電極75においてコイル部品200の側面に配置されている部分の高さ寸法(コイル部品200の底面からの高さ寸法)は、第2板コア20の厚み寸法以下、好ましくは第2板コア20の厚み寸法未満に設定されている。
【0039】
すなわち、コイル70の一端部(第1引出配線部72)と他端部(第2引出配線部73)が、それぞれ、複数のコア片どうしの間を通って当該コイル部品200の側面に個別に引き出されており、コイル部品200は、当該コイル部品200の底面から側面にかけて配置されているとともにコイル70の一端部と電気的に接続されている第1電極74と、当該コイル部品200の底面から側面にかけて配置されているとともにコイル70の他端部と電気的に接続されている第2電極75と、を備え、第1電極74及び第2電極75における当該コイル部品200の側面に配置されている部分が、第2板コア20の側面上で終端している。
このような構成により、コイル部品200の渦電流損失を低減することができる。
【0040】
ここで、
図4及び
図5を用いてコイル部品200の磁路80について説明する。
図4に示すように、磁路80は、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)内においては、中芯コア30の軸心と中芯コア30の外周面との中間位置において、中芯コア30の軸心に対して平行に延びる。
図4及び
図5に示すように、磁路80は、第1板コア10内においては、第1板コア10の厚み方向における中間位置において、放射状に延びる。
図4に示すように、磁路80は、リングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)内においては、リングコア40の内周面(開口41a及び開口42aの内周面)と外周面との中間位置において、中芯コア30の軸心に対して平行に延びる。
【0041】
このため、コイル部品200に形成される磁路80の磁路長は、近似的に、以下のように表すことができる。なお、コイル部品200に形成される磁路80の磁路長、すなわち、磁路80のループ長は、個々のコア片を通過する磁路の長さと区別するため、以下では「全磁路長」と称する場合がある。
第1板コア10の厚み寸法をa、第2板コア20の厚み寸法をb、第1中芯コア31の厚み寸法(軸心方向における寸法)及び第1リングコア41の厚み寸法をc、第2中芯コア32の厚み寸法(軸心方向における寸法)及び第2リングコア42の厚み寸法をd、第1板コア10と第1中芯コア31及び第1リングコア41との間の第1スペーサ61及び第2スペーサ62の厚み寸法をe、第2板コア20と第2中芯コア32及び第2リングコア42との間の第1スペーサ61及び第2スペーサ62の厚み寸法をf、第3スペーサ63及び第4スペーサ64の厚み寸法をg、第1中芯コア31及び第2中芯コア32の外径を4h、平面視における第1板コア10及び第2板コア20の一辺の長さを4i、第1リングコア41及び第2リングコア42の開口41a及び開口42aの内径を4jとすると、全磁路長は、{a+b+2c+2d+2e+2f+2g+2(i+j−h)}となる。
【0042】
ここで、コイル部品200の全磁路長のうち複数のコア片の個々のコア片を通過する磁路長が、いずれも全磁路長の25%以下であることが好ましい。このようにすることによって、コイル部品200の直流重畳特性をより良好にすることができる。
【0043】
ここで、第1板コア10を通過する磁路長は近似的に{a+(i+j−h)}となり、第2板コア20を通過する磁路長は近似的に{b+(i+j−h)}となり、第1中芯コア31を通過する磁路長は近似的にcとなり、第2中芯コア32を通過する磁路長は近似的にdとなり、第1リングコア41を通過する磁路長は近似的にcとなり、第2リングコア42を通過する磁路長は近似的にdとなる。
【0044】
また、コイル部品200の全磁路長のうち複数のコア片の個々のコア片を通過する磁路長が、いずれも全磁路長の20%以下であることが更に好ましい。このようにすることによって、コイル部品200の直流重畳特性をより一層良好にすることができる。
【0045】
また、本発明において、コイル部品200の磁路80には、6箇所以上の非磁性ギャップ50が形成されていることが好ましく、8箇所以上の非磁性ギャップ50が形成されていることも好ましい。
本実施形態の場合は、
図4に示すように、一連の磁路80には、第1板コア10と第1中芯コア31との間の非磁性ギャップ50と、第1中芯コア31と第2中芯コア32との間の非磁性ギャップ50と、第2中芯コア32と第2板コア20との間の非磁性ギャップ50と、第2板コア20と第2リングコア42との間の非磁性ギャップ50と、第2リングコア42と第1リングコア41との間の非磁性ギャップ50と、第1リングコア41と第1板コア10との間の非磁性ギャップ50と、の合計6つの非磁性ギャップ50が、この順に形成されている。
【0046】
以上のような第1実施形態によれば、それぞれ単純な形状のコア片を個別に成形することができるため、各コア片の圧縮成形時における不具合の発生を抑制できる。このため、コイル部品用コア100の各コア片を均質に且つ良好な構造的安定性を持つように成形することが容易である。また、各コア片を高い圧力で圧縮成形することが可能となるため、高比透磁率の材料を用いたコア片とすることができる。そして、複数のコア片のうち互いに隣接して配置されているコア片どうしの間に、それぞれ非磁性ギャップ50が形成されているので、コイル部品用コア100の直流重畳特性も良好となる。
【0047】
また、第1板コア10及び第2板コア20が単純な平板状であることにより、コイル部品用コア100の製造コストを低減することができる。
【0048】
また、非磁性ギャップ50を、コア片どうしの間に非磁性のシートを挟み込むことで形成する場合には、非磁性ギャップ50のギャップ量(ギャップ間隔)を正確に制御することができるため、コイル部品用コア100のインダクタンス値を安定させることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、
図6から
図9を用いて第2実施形態を説明する。
図7は中芯コア30の軸心に沿ったコイル部品用コア100の断面図である。
図8においては、コイル部品200の構成のうち、第2板コア20、第1スペーサ61及び第2スペーサ62を、コイル部品200における他部から分離させて示している。
図9は中芯コア30の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
【0050】
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0051】
図6から
図8に示すように、本実施形態の場合、コイル部品用コア100及びコイル部品200は単一の中芯コア30を備えているとともに、単一のリングコア40を備えている。従って、第4スペーサ64及び第3スペーサ63(いずれも
図2参照)を備えていない。リングコア40には円形の開口40aが形成されており、この開口40a内に中芯コア30が配置されている。
図8に示すように、中芯コア30は、コイル70の巻回部に挿通されている。中芯コア30の軸心方向における中芯コア30の寸法と、リングコア40の厚み寸法とが互いに等しい。
図6及び
図8に示すように、ワイヤ引出溝43は、リングコア40の上面に形成されている。
【0052】
本実施形態によれば、第1実施形態においてコイル部品用コア100及びコイル部品200が複数の中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)を備えていてそれらの間に非磁性ギャップ50が形成されていることにより得られる効果、及び、第1実施形態においてコイル部品用コア100及びコイル部品200が複数のリングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)を備えていてそれらの間に非磁性ギャップ50が形成されていることにより得られる効果を除き、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、
図10及び
図11を用いて第3実施形態を説明する。
図11は中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0054】
図10及び
図11に示すように、本実施形態の場合、第1スペーサ61と第2スペーサ62とが一のシート状のスペーサ65の一部分ずつにより構成されている。このため、コイル部品用コア100及びコイル部品200の製造容易性が向上する。
【0055】
より詳細には、第1板コア10と第1リングコア41との間の第1スペーサ61と、第1板コア10と第1中芯コア31との間の第2スペーサ62とが、一のスペーサ65の一部分ずつにより構成されている。また、第2板コア20と第2リングコア42との間の第1スペーサ61と、第2板コア20と第2中芯コア32との間の第2スペーサ62とが、一のスペーサ65の一部分ずつにより構成されている。各スペーサ65は、第1スペーサ61と、第2スペーサ62と、第1スペーサ61と第2スペーサ62とを接続する接続部66と、を含んで構成されている。各スペーサ65の平面形状は、第1板コア10及び第2板コア20と同様の矩形状(例えば正方形状)となっている。平面視において、各スペーサ65の外形線が第1板コア10、第2板コア20、第1リングコア41及び第2リングコア42の外形線と一致するように、スペーサ65が配置されている。
スペーサ65は、粘着剤、又は、両面テープなどの、粘着性を有するものであることが挙げられる。
【0056】
〔第4実施形態〕
次に、
図12を用いて第4実施形態を説明する。
図12は中芯コア30の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0057】
本実施形態の場合、中芯コア30の軸方向における中芯コア30の寸法と、リングコア40の厚み寸法とが互いに異なっている。
例えば、
図12に示すように、中芯コア30の軸方向における中芯コア30の寸法の方が、リングコア40の厚み寸法よりも大きい。
より詳細には、コイル部品用コア100及びコイル部品200は単一の中芯コア30を備えており、第4スペーサ64(
図2参照)を備えていない。中芯コア30の軸心方向における中芯コア30の寸法は、第1リングコア41の厚み寸法と第2リングコア42の厚み寸法と第3スペーサ63の厚み寸法との和に等しい。
【0058】
なお、
図12に示す例とは逆に、中芯コア30の軸方向における中芯コア30の寸法の方が、リングコア40の厚み寸法よりも小さくてもよい。例えば、コイル部品用コア100及びコイル部品200が単一のリングコア40を備えているとともに、互いに同軸に連ねて配置されている複数の中芯コア30(例えば、
図2に示すように第1中芯コア31及び第2中芯コア32の2つの中芯コア30)を備えていてもよい。この場合、コイル部品用コア100及びコイル部品200は、第3スペーサ63を備えておらず、リングコア40の厚み寸法は、第1中芯コア31の厚み寸法と第2中芯コア32の厚み寸法と第4スペーサ64(
図2参照)の厚み寸法との和に等しい。
【0059】
〔第5実施形態〕
次に、
図13を用いて第5実施形態を説明する。
図13は中芯コア30の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第2実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200(
図6〜
図9)と相違しており、その他の点では、上記の第2実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0060】
本実施形態の場合、第1板コア10の中央部と第2板コア20の中央部とにそれぞれ円形の開口10a及び20aが形成されている。中芯コア30の一端部が開口10aに挿入されており、中芯コア30の他端部が開口20aに挿入されている。
そして、第1板コア10と中芯コア30との間、並びに、第2板コア20と中芯コア30との間に、それぞれ非磁性ギャップ50が形成されている。すなわち、第1板コア10の開口10aの内周面と中芯コア30の一端部の外周面との間、並びに、第2板コア20の開口20aの内周面と中芯コア30の他端部の外周面との間に、それぞれ非磁性ギャップ50を構成するスペーサ68が介装されている。各スペーサ68は、粘着剤、又は、両面テープなどの、粘着性を有するものであることが挙げられる。または、熱硬化性の粘着性のある樹脂が塗布された両面テープも良い。また、クリップなどのような保持手段が別途取り付けられる場合、単に、粘着性を有さない非磁性の材料でも良い。
本実施形態によれば、第1板コア10及び第2板コア20を通過する磁路長を短くできるため、コイル部品用コア100及びコイル部品200の直流重畳特性の更なる向上が可能である。
【0061】
なお、
図13の例では、コイル部品用コア100及びコイル部品200が単一の中芯コア30を備えている例を示しているが、第1実施形態と同様に複数の中芯コア30を備えていてもよい。
また、第1板コア10と第2板コア20とのうち一方にのみ中央部に開口が形成されていて、当該開口に中芯コア30の一方の端部が挿入されていてもよい。
【0062】
〔第6実施形態〕
次に、
図14及び
図15を用いて第6実施形態を説明する。
図15においては、コイル部品200の構成のうち、第2板コア20、第1スペーサ61及び第2スペーサ62を、コイル部品200における他部から分離させて示している。
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0063】
上記の第1実施形態では、
図3に示すように、第1引出配線部72においてコイル部品用コア100の側面に位置する部分が、第2リングコア42と第1リングコア41との間の非磁性ギャップ50を覆っている。同様に、図示は省略するが、第2引出配線部73において第1板コア10の側面に位置する部分が、当該非磁性ギャップ50を覆っている。
【0064】
これに対し、本実施形態の場合、
図15に示すように、第1引出配線部72においてコイル部品用コア100の側面に位置する部分が、第2リングコア42と第1リングコア41との間の非磁性ギャップ50を覆わないように、第1引出配線部72が配置されている。同様に、図示は省略するが、第2引出配線部73において第1板コア10の側面に位置する部分が、当該非磁性ギャップ50を覆わないように、第2引出配線部73が配置されている。
このような構成を実現するために、
図14に示すように、ワイヤ引出溝43が、第2リングコア42における第2板コア20側の面ではなく、第1リングコア41における第1板コア10側の面に形成されている。
【0065】
本実施形態によれば、第1引出配線部72及び第2引出配線部73が非磁性ギャップ50を覆う箇所を低減できるため、渦電流損失を更に抑制することができる。
【0066】
〔第7実施形態〕
次に、
図16を用いて第7実施形態を説明する。
図16は中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心に沿ったコイル部品200の断面図である。
本実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るコイル部品用コア100及びコイル部品200と同様に構成されている。
【0067】
本実施形態の場合、第1板コア10及び第2板コア20の厚み寸法が、第1リングコア41及び第2リングコア42の厚み寸法よりも大きい。
すなわち、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心方向におけるリングコア40(第1リングコア41及び第2リングコア42)の寸法よりも、中芯コア30の軸心方向における第1板コア10又は第2板コア20の寸法が大きい。
これにより、第1板コア10及び第2板コア20において、磁路方向に対して直交する断面積を十分に確保できることから、コイル部品用コア100及びコイル部品200の直流重畳特性を向上させることができる。
【0068】
より詳細には、本実施形態の場合、中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の軸心方向における中芯コア30(第1中芯コア31及び第2中芯コア32)の寸法よりも、当該軸心方向における第1板コア10又は第2板コア20の寸法が大きい。
【実施例】
【0069】
以下、
図17及び
図18を用いて各実施例および各比較例を説明する。
図17に示すように、実施例1〜6及び13のコイル部品の構造は、第1構造である。第1構造は、上記の第1実施形態の構造(
図4)であり、磁路には6箇所の非磁性ギャップが形成されている(ギャップ数=6)。
実施例7〜12及び14のコイル部品の構造は、第2構造である。第2構造は、上記の第2実施形態の構造(
図9)であり、磁路には4箇所の非磁性ギャップが形成されている(ギャップ数=4)。
【0070】
実施例1〜6のコイル部品の各コア片は、次のようにして作製した。先ず、絶縁性の表面処理を施した粒径が10μm以上20μm以下のFe−Si−Cr合金の粉末にバインダーとしてエポキシ樹脂を2質量%混合し、造粒粉末を得た。この造粒粉を用いて、一辺の長さが10mmの正方形状で厚さが1.2mmの板コア(第1板コア及び第2板コア)と、一辺の長さが10mmの正方形状で厚さが1.2mmで中央に内径8mmの開口が形成されたリングコア(第1リングコア及び第2リングコア)と、外径が3.8mmで軸心方向における寸法が1.2mmの円柱状の中芯コア(第1中芯コア及び第2中芯コア)と、を成形した。この時、成形圧力を変えて各コア片の密度を調整することで、各コア片の比透磁率を異ならせた。各コア片の比透磁率は、実施例1では40、実施例2では45、実施例3では50、実施例4では55、実施例5では70、実施例6では90とした。このように、実施例1〜6のコイル部品の各コア片は、金属磁性粉末材料を含んで構成されたダストコアである。
また、実施例13のコイル部品の各コア片は、それぞれフェライトにより実施例1〜6の各コア片と同じ形状に作製し、比透磁率を1100とした。
【0071】
また、実施例7〜12のコイル部品の各コア片の材料は実施例1〜6と同じにした。つまり、実施例7〜12のコイル部品の各コア片も、金属磁性粉末材料を含んで構成されたダストコアである。実施例7〜12のコイル部品の各コア片のうち、板コア(第1板コア及び第2板コア)は、実施例1〜6と同じであり、リングコア(第1リングコア及び第2リングコア)としては一辺の長さが10mmの正方形状で厚さが2.5mmで中央に内径8mmの開口が形成されたものを作製し、中芯コアとしては外径が3.8mmで軸心方向における寸法が2.5mmの円柱状のものを作製した。実施例7〜12でも、成形圧力を変えて各コア片の密度を調整することで各コア片の比透磁率を異ならせた。各コア片の比透磁率は、実施例7では40、実施例8では45、実施例9では50、実施例10では55、実施例11では70、実施例12では90とした。
また、実施例14のコイル部品の各コア片は、それぞれフェライトにより実施例7〜12の各コア片と同じ形状に作製し、比透磁率を1100とした。
【0072】
比較例1(第3構造)のコイル部品は、コアが一体成形されたメタルコンポジットコアである。比較例1のコアの材料は、実施例1と同じにした。また、比較例1のコアの比透磁率は25とした。
比較例2(第4構造)のコイル部品の各コア片は、実施例7の第2板コアを備えている他に、実施例7の中芯コア、リングコア及び第1板コアが一体化したポット型コアを備えている。比較例2においては、中芯コアと第2板コアとの間に非磁性ギャップが形成されているが、リングコアと第2板コアとは接触しておりそれらの間に非磁性ギャップは形成されていない。また、比較例2のコイル部品の各コア片の比透磁率は40とした。
比較例3(第5構造)のコイル部品としては、各コア片どうしが接していて、ギャップ幅が0mmである(つまり非磁性ギャップを有さない)点と、各コア片の比透磁率が25である点で、実施例1のコイル部品と相違する構成のものを用いた。
比較例4(第6構造)のコイル部品としては、各コア片どうしが接していて、ギャップ幅が0mmである(つまり非磁性ギャップを有さない)点と、各コア片の比透磁率が25である点で、実施例7のコイル部品と相違する構成のものを用いた。
比較例3、4のようなギャップ幅が0mmの構成は、上記各実施形態のような非磁性ギャップを有する構成には該当しない。
比較例5(第4構造)のコイル部品の各コア片は、実施例13の第2板コアを備えている他に、実施例13の中芯コア、リングコア及び第1板コアが一体化したポット型コアを備えている。比較例5においては、中芯コアと第2板コアとの間に非磁性ギャップが形成されているが、リングコアと第2板コアとは接触しておりそれらの間に非磁性ギャップは形成されていない。また、比較例5のコイル部品の各コア片の比透磁率は1100とした。
【0073】
各実施例1〜14及び各比較例1〜5のコイルとしては、外径が0.5mmの被覆導線を用い、コイルの外径が7.8mmとなりコイルの内径が4.0mmとなりコイルの軸心方向における寸法が2.4mm以下となり巻数が1.3ターンのものを作製し、用いた。
比較例1、3、4を除く各例では、各コア片どうしの間に、コア形状に打ち抜いた適宜の厚さのPETフィルムをスペーサとして介装して非磁性ギャップを形成し、初期のインダクタンス値(
図17中の初期L値)を約10μHに調整した。
また、比較例1、3、4においても、初期のインダクタンス値(
図17中の初期L値)を約10μHに調整した。
また、コイルの両端部は、リングコアのワイヤ引出溝を介して外部に導出し、電極(第1電極、第2電極)に接続した。電極は、コイル部品の底面と側面に絶縁塗装を施した上に接着剤で固定した。またこの電極は、非磁性ギャップの漏れ磁束の影響を避けるため、非磁性ギャップ部をまたがないように配置した。
【0074】
図17に示す直流重畳特性は、インダクタンス値(L値)が初期と比べて30%低減したときの直流電流の値である。この値が高いほど、大電流までインダクタンス値が保持される(つまり性能が優れている)と判断できる。
図17に示すAからDの判定は、各コアの材料が金属磁性粉末材料を含むもの(比較例1〜4、実施例1〜12)については、直流重畳特性が9.5以上のものをAとし、9.5未満のものをCとした。
また、各コアの材料がフェライトのもの(比較例5、実施例13、14)については、直流重畳特性が8.0以上のものをBとし、8.0未満のものをDとした。
各実施例1〜12の判定はAとなった。一方、各比較例1〜4の判定はCとなった。各実施例1〜12及び各比較例1〜4は、コアの材料が金属磁性粉末材料を含む例であるが、各実施例1〜12では、比較例1〜4と比べて直流重畳特性が向上することが分かった。
また、各実施例13、14の判定はBとなった。一方、比較例5の判定はDとなった。各実施例13、14と比較例5はそれぞれフェライトコアを用いた例であるが、各実施例13、14では、比較例5と比べて直流重畳特性が2倍以上に向上することが分かった。
【0075】
また、
図18は、ギャップ数が6の各例(実施例1〜6、比較例3)について、比透磁率(横軸)と直流重畳特性(縦軸)との関係をプロットしたグラフ(実線)と、ギャップ数が4の各例(実施例7〜12、比較例4)について、比透磁率(横軸)と直流重畳特性(縦軸)との関係をプロットしたグラフ(破線)と、を示している。
図18から、各実施例では、約10(A)以上の良好な直流重畳特性が得られている。比透磁率が45以上では比透磁率が40以下の場合と比べて直流重畳特性が飛躍的に向上したことが分かる。また、比透磁率が55以上では比透磁率が50以下の場合と比べて直流重畳特性が更に飛躍的に向上したことが分かる。
【0076】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0077】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)複数のコア片を備えて構成されたコイル部品用コアであって、
前記複数のコア片には、
互いに対向して配置されている第1板コア及び第2板コアと、
前記第1板コアと前記第2板コアとの対向間隔に配置されている中芯コアと、
前記第1板コアと前記第2板コアとの対向間隔に配置され、前記中芯コアが挿通されているリングコアと、
が含まれ、
前記複数のコア片のうち互いに隣接して配置されているコア片どうしの間に、それぞれ非磁性ギャップが形成されているコイル部品用コア。
(2)互いに積層して配置されている複数の前記リングコアを備え、前記複数のリングコアどうしの間にも前記非磁性ギャップが形成されている(1)に記載のコイル部品用コア。
(3)互いに同軸に連ねて配置されている複数の前記中芯コアを備え、前記複数の中芯コアどうしの間にも前記非磁性ギャップが形成されている(1)又は(2)に記載のコイル部品用コア。
(4)前記中芯コアの軸心方向における前記中芯コアの寸法と前記リングコアの寸法とが互いに等しい(1)から(3)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(5)前記中芯コアの高さが前記リングコアの高さと異なることを特徴とする(1)又は(2)に記載のコイル部品用コア。
(6)前記第1板コアと前記リングコアとの間と、前記第2板コアと前記リングコアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて前記非磁性ギャップを構成する第1スペーサが介装されている(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(7)前記第1板コアと前記中芯コアとの間と、前記第2板コアと前記中芯コアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成されていて前記非磁性ギャップを構成する第2スペーサが介装されている(1)から(6)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(8)前記第1板コアと前記リングコアとの間と、前記第2板コアと前記リングコアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成された第1スペーサが介装されており、
前記第1板コアと前記中芯コアとの間と、前記第2板コアと前記中芯コアとの間と、の少なくとも一方に、非磁性材料により構成された第2スペーサが介装されており、
一の前記第1スペーサと一の前記第2スペーサとが同一平面上に配置されている(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(9)前記第1スペーサと前記第2スペーサとが一のシート状のスペーサの一部分ずつにより構成されている(8)に記載のコイル部品用コア。
(10)前記第1スペーサは粘着性を有するものである(6)、(8)又は(9)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(11)前記第2スペーサは粘着性を有するものである(7)から(9)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(12)前記複数のコア片の各々が、金属磁性粉末材料を含んで構成されている(1)から(11)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(13)前記中芯コアの軸心方向における前記リングコアの寸法よりも、前記中芯コアの軸心方向における前記第1板コア又は前記第2板コアの寸法が大きい(1)から(12)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(14)前記複数のコア片の各々の比透磁率が45以上である(1)から(13)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(15)前記複数のコア片の各々の飽和磁束密度が600mT以上である(1)から(14)のいずれか一項に記載のコイル部品用コア。
(16)(1)から(15)のいずれか一項に記載のコイル部品用コアと、前記コイル部品用コアの前記中芯コアが挿通されているコイルと、を備えるコイル部品。
(17)当該コイル部品の全磁路長のうち、前記複数のコア片の個々のコア片を通過する磁路長が、いずれも前記全磁路長の25%以下である(16)に記載のコイル部品。
(18)当該コイル部品の全磁路長のうち、前記複数のコア片の個々のコア片を通過する磁路長が、いずれも前記全磁路長の20%以下である(16)又は(17)に記載のコイル部品。
(19)当該コイル部品の磁路には、6箇所以上の前記非磁性ギャップが形成されている(16)から(19)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(20)前記コイルの一端部と他端部が、それぞれ、前記複数のコア片どうしの間を通って当該コイル部品の側面に個別に引き出されており、
当該コイル部品は、
当該コイル部品の底面から前記側面にかけて配置されているとともに前記コイルの一端部と電気的に接続されている第1電極と、
当該コイル部品の底面から前記側面にかけて配置されているとともに前記コイルの他端部と電気的に接続されている第2電極と、
を備え、
前記第1電極及び前記第2電極における当該コイル部品の側面に配置されている部分が、前記第2板コアの側面上で終端している(16)から(19)に記載のコイル部品。