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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-166490(P2019-166490A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】気液混合装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/06 20060101AFI20190906BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20190906BHJP
   B01F 15/04 20060101ALI20190906BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20190906BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20190906BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20190906BHJP
【FI】
   B01F5/06
   B01F3/04 A
   B01F15/04 D
   B01F5/10
   B08B3/04 Z
   B08B3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-57159(P2018-57159)
(22)【出願日】2018年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井合 隆
【テーマコード(参考)】
3B201
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB45
3B201BB02
3B201BB38
3B201BB82
3B201BB88
3B201BB92
3B201BB98
3B201CD22
3B201CD42
3B201CD43
4G035AB08
4G035AC26
4G035AC30
4G035AE02
4G035AE13
4G037AA18
4G037BA03
4G037BB01
4G037BB06
4G037BC04
4G037BD04
4G037BD06
4G037BD09
4G037BE02
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】微細気泡を含む液体の機能をさらに高めることができる気液混合装置を提供する。
【解決手段】気液混合装置は、液体12を湛える液槽13と、指令信号に応じて指定された放出量で液槽13内の液体12に微細気泡を放出する気泡発生装置48a、48bと、液体12中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を受領し、気泡濃度に応じて気泡発生装置48a、48bから放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラーとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を湛える液槽と、
指令信号に応じて指定された放出量で前記液槽内の前記液体に微細気泡を放出する気泡発生装置と、
前記液体中で前記微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を受領し、前記気泡濃度に応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラーと、
を備えることを特徴とする気液混合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気液混合装置において、前記コントローラーは、前記微細気泡のサイズを特定する気泡サイズ信号を受領し、前記サイズに応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡のサイズを設定する指令信号を生成することを特徴とする気液混合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の気液混合装置において、前記液槽から流出する前記液体を前記液槽に戻す循環経路に接続される液溜めに結合されて、前記液溜め中の液体で前記微細気泡の気泡濃度を検出する計測器をさらに備えることを特徴とする気液混合装置。
【請求項4】
指令信号に応じて指定された放出量で液体に微細気泡を放出する気泡発生装置と、
前記液体中で前記微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を受領し、前記気泡濃度に応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラーと、
を備えることを特徴とする気液混合装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気液混合装置において、前記気泡濃度信号は前記微細気泡のサイズごとに前記気泡濃度を特定することを特徴とする気液混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽内の液体中に微細気泡を放出する気泡発生装置を備える気液混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体中で気泡に機械的圧力を加え、気泡の崩壊を引き起こし、微細な気泡を生成する洗浄液製造装置が開示される。微細な気泡は液体中に安定して存在し、洗浄効果の促進が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−88979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、微細な気泡を含む洗浄液がトイレや便器、キッチン、流し台、浴室、浴槽、洗面台の洗浄に用いられる。しかしながら、特許文献1の洗浄装置では、微細な気泡を含む洗浄液は単純に水に代わって利用されるだけで、洗浄装置そのものの改善は全く検討されていない。微細な気泡の有無に応じて洗浄効果は比較されるものの、洗浄効果を高める洗浄液の条件も全く検討されていない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、微細気泡を含む液体の機能をさらに高めることができる気液混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面は、液体を湛える液槽と、指令信号に応じて指定された放出量で前記液槽内の前記液体に微細気泡を放出する気泡発生装置と、前記液体中で前記微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を受領し、前記気泡濃度に応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラーとを備える気液混合装置が提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記コントローラーは、前記微細気泡のサイズを特定する気泡サイズ信号を受領し、前記サイズに応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡のサイズを設定する指令信号を生成する。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、気液混合装置は、前記液槽から流出する前記液体を前記液槽に戻す循環経路に接続される液溜めに結合されて、前記液溜め中の液体で前記微細気泡の気泡濃度を検出する計測器をさらに備える。
【0009】
本発明の第4側面によれば、指令信号に応じて指定された放出量で液体に微細気泡を放出する気泡発生装置と、前記液体中で前記微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を受領し、前記気泡濃度に応じて前記気泡発生装置から放出される前記微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラーとを備える気液混合装置が提供される。
【0010】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、前記気泡濃度信号は前記微細気泡のサイズごとに前記気泡濃度を特定する。
【発明の効果】
【0011】
第1側面によれば、放出量の設定に応じて液体中の気泡濃度は指定された値に設定されることができる。こうして液体中では最適な気泡濃度は維持されることができる。気液混合装置が洗浄装置として利用される場合には、洗浄効果は最大限に高められることができる。
【0012】
第2側面によれば、サイズの設定に応じて微細気泡のサイズは指定された値に設定されることができる。こうして液体中では最適な気泡サイズは維持されることができる。気液混合装置が洗浄装置として利用される場合には、洗浄効果は最大限に高められることができる。
【0013】
第3側面によれば、循環経路内では液体は流動するものの、液溜めには流動する液体から分離された静止状態の液体が保持されることができる。計測器では、流動する液体の気泡濃度に比べて高い精度で、静止する液体の気泡濃度は検出されることができることから、気液混合装置では液体中の気泡濃度は指定された値に確実に設定されることができる。
【0014】
第4側面によれば、放出量の設定に応じて液体中の気泡濃度は指定された値に設定されることができる。こうして液体中では最適な気泡濃度は維持されることができる。気液混合装置が洗浄装置として利用される場合には、洗浄効果は最大限に高められることができる。
【0015】
第5側面によれば、液体中では最適な気泡サイズは維持されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る気液混合装置の一具体例である洗浄装置の全体構成を概略的に示す模式図である。
図2】気泡発生ノズルの構成を概略的に示す拡大断面図である。
図3】洗浄装置の制御系を概略的に示すブロック図である。
図4】気泡径ごとに気泡数の分布を示すグラフである。
図5】第2実施形態に係る気液混合装置の一具体例である洗浄装置の全体構成を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(1)第1実施形態に係る洗浄装置の構成
図1は本発明の第1実施形態に係る気液混合装置の一具体例である洗浄装置11の構成を概略的に示す。洗浄装置11は、静的液体12を湛える液槽13と、静的液体12中で開口する供給口14および吸込口15を有して循環経路16に沿って液槽13内の液体を循環させる循環装置17とを備える。液槽13は、循環装置17の吸込口15の下方に付着物溜まり18を形成する底板13aを有する。底板13aは、循環装置17の吸込口15を区画する側壁に向かって水平面から前下がりに下降する。したがって、液体よりも比重の大きい物体は吸込口15に向かって流れる液体に巻き込まれて底板13aに沿って付着物溜まり18まで収集されることができる。液体には例えば水が用いられる。ただし、液体には、有機溶剤の溶媒に電解質や界面活性剤、気体などを溶解する液体が用いられてもよい。
【0019】
液槽13には、液槽13内の静的液体12の温度を調整する温度調整装置19が組み込まれる。温度調整装置19は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき静的液体12に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置19は、冷媒の熱交換に基づき静的液体12に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。
【0020】
液槽13の外側で大気中に室温センサー20が配置される。室温センサー20は、洗浄装置11の設置環境(例えば室内)で大気の温度を検出し、大気の温度を特定する室温信号を生成する。液槽13内の静的液体12中には温度センサー21が配置される。温度センサー21は、静止液体12の温度を検出し、静止液体12の温度を特定する液温信号を生成する。液槽13内の空間には液面センサー22が固定される。液面センサー22は、静止液体12の液面を検出し、指定された液面レベルの範囲から液面が逸脱するとレベル信号を生成する。
【0021】
循環装置17は、吸込口15および供給口14の間で循環経路16に組み込まれるポンプ23と、供給口14を区画し、供給口14から液槽13内の静的液体12中に流し込まれる液体の向きを調整する吐出ユニット24とを備える。吐出ユニット24は、ポンプ23の吐出圧に基づき静的液体12中に流し込まれる液体で液槽13内の静的液体12中に液流(以下「動的液体」という)を生成する。
【0022】
循環経路16は、ポンプ23の吸込ポートに液槽13の吸込口15を接続する上流管16aと、ポンプ23の吐出ポートに吐出ユニット24を接続する下流管16bとを有する。上流管16aにはゴミフィルター25および油水分離フィルター26が組み込まれる。ゴミフィルター25は上流管16aを流通する水からゴミを除去する。油水分離フィルター26は上流管16aを流通する水から油を分離する。こうしてポンプ23にはゴミおよび油から分離された水が流入する。ゴミおよび油は回収される。
【0023】
下流管16bには、下流管16bを流通する液体の流量を制御する流量制御装置27と、下流管16bを流通する液体の温度を調整する温度調整装置28とが組み込まれる。流量制御装置27は、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置28は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき液体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置28は、冷媒の熱交換に基づき液体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置28の下流で下流管16bには温度センサー29が組み込まれる。温度センサー29は、流通する液体の温度を検出し、液体の温度を特定する液温信号を生成する。
【0024】
洗浄装置11は、液槽13に接続される給液装置31および排液装置32を備える。給液装置31は、水源(液体源)から延びて、液槽13内の静的液体12中で開口する給液管33を有する。給液管33には、液体源から液体を汲み上げて、給液管33の開口端に向かって給液管33内で液体の流れを生成するポンプ34と、給液管33を流通する液体から不純物を除去するフィルター35と、給液管33を流通する液体の流量を制御する流量制御装置36と、給液管33を流通する液体の温度を調整する温度調整装置37とが組み込まれる。流量制御装置36は、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置37は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき液体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置37は、冷媒の熱交換に基づき液体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置37の下流で給液管33には温度センサー38が組み込まれる。温度センサー38は、流通する液体の温度を検出し、液体の温度を特定する液温信号を生成する。
【0025】
排液装置32は、液槽13内に配置されて、水平面に沿って上向きの吸込口41aを区画する吸込ユニット41と、吸込ユニット41から延びて指定された領域に液体を放出する開放端を有する排液管42とを備える。排液管42には、開放端に向かって、吸込ユニット41の吸込口41aから排液管42内で液体の流れを生成するポンプ43と、排液管42を流通する水からゴミを除去するゴミフィルター44と、排液管42を流通する水から油を分離する油水分離フィルター45とが組み込まれる。ゴミおよび油は回収される。
【0026】
洗浄装置11は、被洗浄物Wを保持する保持具46を有する。保持具46には例えばカゴが用いられる。保持具46は静的液体12中に浸される。保持具46には位置決め機構47が接続されてもよい。位置決め機構47は例えば水平面に沿って保持具46の移動を生み出す駆動力を発揮する。
【0027】
洗浄装置11は、液槽13に接続される第1気泡発生装置48aおよび第2気泡発生装置48bを備える。第1気泡発生装置48aは、微細気泡を含有する気泡含有液の溶媒として機能する液体を供給する液体系49aと、溶媒としての液体中で微細気泡を生成する気体を供給する気体系51aとで構成される。
【0028】
液体系49aは、静的液体12中で開口する供給口52aおよび吸込口53aを有して液槽13内の液体を循環させる循環経路を形成する液管54aと、液管54aに組み込まれて、吸込口53aから供給口52aに向かって液管54a内で液体の流れを生成するポンプ55aと、ポンプ55aの上流で液管54aに組み込まれて、液管54aを流通する液体からゴミを除去するゴミフィルター56aと、ポンプ55aの上流で液管54aに組み込まれて、液管54aを流通する水から油を分離する油水分離フィルター57aと、ポンプ55aの下流で液管54aに組み込まれて、液管54aを流通する液体の流量を制御する流量制御装置58aと、流量制御装置58aの下流で液管54aに組み込まれて、液管54aを流通する液体の温度を調整する温度調整装置59aとを備える。流量制御装置58aは、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置59aは、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき液体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置59aは、冷媒の熱交換に基づき液体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置59aの下流で液管54aには温度センサー61aが組み込まれる。温度センサー61aは、流通する液体の温度を検出し、液体の温度を特定する液温信号を生成する。
【0029】
気体系51aは、温度調整装置59aの下流で液管54aに接続されて、液管54a中の液体に向けて気体を噴出する気泡発生ノズル62aと、気泡発生ノズル62aに接続されて、気泡発生ノズル62aに向けて気体源から気体を供給する供給経路を形成する気体管63aと、気体管63aに組み込まれて、気体源から気体を吸い込み、気泡発生ノズル62aに向かって気体管63a内で気体の流れを生成するコンプレッサー64と、コンプレッサー64の下流で気体管63aに組み込まれて、気体管63aを流通する気体からゴミを除去するゴミフィルター65aと、コンプレッサー64の下流で気体管63aに組み込まれて、気体管63aを流通する気体の流量を制御する流量制御装置66aと、流量制御装置66aの下流で気体管63aに組み込まれて、気体管63aを流通する気体の温度を調整する温度調整装置67aとを備える。流量制御装置66aは、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置67aは、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき気体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置67aは、冷媒の熱交換に基づき気体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置67aの下流で気体管63aには温度センサー68aが組み込まれる。温度センサー68aは、流通する気体の温度を検出し、気体の温度を特定する気体温信号を生成する。気体源には設置環境の大気が含まれる。ただし、気体は空気以外であってもよく窒素や水素のほかいかなる種類の気体であってもよい。液管54a内を流通する液体に、気泡発生ノズル62aから気体が吹き込まれると、微細気泡を含有する第1微細気泡群は生成される。微細気泡はマイクロバブルおよびナノバブル(=ウルトラファインバブル)を含む。
【0030】
第2気泡発生装置48bは第1気泡発生装置48aと同様な構成を有する。すなわち、第2気泡発生装置48bは液体系49bおよび気体系51bを備える。液体系49bでは、供給口52bまで吸込口53bから延びる液管54bに、ポンプ55b、ゴミフィルター56b、油水分離フィルター57b、流量制御装置58b、温度調整装置59bおよび温度センサー61bが組み込まれる。気体系51bでは、気体源から気泡発生ノズル62bまで延びる気体管63bに、コンプレッサー64、ゴミフィルター65b、流量制御装置66b、温度調整装置67bおよび温度センサー68bが組み込まれる。ただし、ここでは、第2気泡発生装置48bと第1気泡発生装置48aとは気体系51bのコンプレッサー64および気体源を共有する。第2気泡発生装置48bの気体管63bはコンプレッサー64の下流であって流量制御装置66aの上流で第1気泡発生装置48aの気体管63aから分岐する。液管54b内を流通する液体に、気泡発生ノズル62bから気体が吹き込まれると、微細気泡を含有する第2微細気泡群は生成される。微細気泡はマイクロバブルおよびナノバブル(=ウルトラファインバブル)を含む。
【0031】
第1気泡発生装置48aの液管54aおよび第2気泡発生装置48bの液管54bには共通に液質確認装置69が接続される。液質確認装置69は、液槽13から流出する液体を液槽13に戻す液管54a、54bに接続される液溜め69aと、液溜め69aに接続されて、液溜め69a内の液体で微細気泡の気泡濃度を検出する計測器69bとを備える。液溜め69aには2つの液管54a、54bから液体が流れ込むことができる。計測器69bは、微細気泡のサイズごとに気泡濃度を検出し、気泡サイズごとに気泡濃度を特定する液質信号を生成する。
【0032】
図2に示されるように、気泡発生ノズル62a、62bは、先端で液管54a、54bの管壁に差し込まれて、気体管63a、63bから延びて液管54a、54bの内壁面で開口する通路71を区画するハウジング72と、通路71の一端でハウジング72に組み込まれて、空孔を含み、通路71を流通する気体を透過させる多孔質体73とを備える。多孔質体73は例えば金属焼結体から形成される。多孔質体73は液管54a、54bの内壁に連続する露出面74を有する。多孔質体73は、液管54a、54b内を流通する液体に露出面74で接触する。気体は、気体管63a、63bから通路71に進入し、多孔質体73を通過して露出面74から液体内に噴出する。
【0033】
図3に示されるように、洗浄装置11は、洗浄装置11の動作を制御するコントローラー75を備える。コントローラー75には、室温センサー20、液槽13の温度センサー21および液面センサー22、循環経路16の温度センサー29、給液管33の温度センサー38、液管54aの温度センサー61a、液管54bの温度センサー61b、気体管63aの温度センサー68a、気体管63bの温度センサー68b、並びに、計測器69bがそれぞれ接続される。コントローラー75には、室温センサー20から室温信号が供給され、温度センサー21、29、38、61a、61bから液音信号が供給され、液面センサー22からレベル信号が供給され、温度センサー68a、68bから気体温信号が供給され、計測器69bから液質信号が供給される。
【0034】
コントローラー75には液槽13の温度調整装置19が接続される。コントローラー75は、静的液体12中の温度センサー21から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される静的液体12の温度に応じて静的液体12の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置19に供給される。温度調整装置19は、指令信号に応じて指定された温度に液槽13内の静的液体12の温度を調整する。その他、コントローラー75は、室温センサー20から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて静的液体12の温度を調整する指令信号を生成してもよい。この場合には、温度調整装置19は、指令信号に応じて指定された温度に液槽13内の静的液体12の温度を調整する。
【0035】
コントローラー75には位置決め機構47が接続される。コントローラー75は、保持具46の移動の要求に応じて、要求される変位量で保持具46の移動を実現する制御信号を生成する。生成された制御信号は位置決め機構47に供給される。位置決め機構47は、指令信号で特定される三次元座標値に応じて保持具46を駆動する。こうして動的液体の供給口14や気泡含有液の供給口52a、52bに対して被洗浄物Wの位置は調整されることができる。
【0036】
コントローラー75には給液装置31のポンプ34、流量制御装置36および温度調整装置37がそれぞれ接続される。コントローラー75は、液槽13内の液面センサー22からレベル信号を受領し、受領したレベル信号で特定される静的液体12の液面レベルに応じて液槽13への液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ34および流量制御装置36に供給される。ポンプ34は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置36は、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液槽13内で静的液体12の液面が指定された液面よりも下降すると、ポンプ34から液体は供給され、予め決められた液面レベルまで静的液体12の液面が上昇する。
【0037】
液体の供給にあたって、コントローラー75は、温度センサー38から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、補充される液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置37に供給される。温度調整装置37は、指令信号に応じて指定された温度に、給液管33内の液体の温度を調整する。その他、コントローラー75は、温度センサー21から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて給液管33内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、室温センサー20から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて給液管33内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。これらの場合には、温度調整装置37は、指令信号に応じて指定された温度に給液管33内の液体の温度を調整する。
【0038】
コントローラー75には排液装置32のポンプ43が接続される。コントローラー75は、液槽13内の液面センサー22からレベル信号を受領し、受領したレベル信号で特定される静的液体12の液面レベルに応じて液槽13からの液体の排出を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ43に供給される。ポンプ43は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。こうして液槽13内で静的液体12の液面が指定された液面よりも上昇すると、ポンプ43から液体は排水される。その結果、予め決められた液面レベルまで静的液体12の液面が下降する。
【0039】
コントローラー75には循環装置17のポンプ23、流量制御装置27および温度調整装置28がそれぞれ接続される。コントローラー75は、静的液体12中で流れる動的液体の生成の要求に応じて、要求で指定される流量で供給口14から噴き出す液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ23および流量制御装置27に供給される。ポンプ23は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置27は、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液体は循環経路16を循環し、指定された流量で吐出ユニット24の供給口14から液体は噴き出す。
【0040】
液体の循環にあたって、コントローラー75は、温度センサー29から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、供給口14から噴き出す液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置28に供給される。温度調整装置28は、指令信号で指定された温度に、下流管16b内の液体の温度を調整する。その他、コントローラー75は、温度センサー21から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて下流管16b内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、室温センサー20から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて下流管16b内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。これらの場合には、温度調整装置28は、指令信号で指定された温度に下流管16b内の液体の温度を調整する。
【0041】
コントローラー75には第1気泡発生装置48aの流量制御装置66aおよび第2気泡発生装置48bの流量制御装置66b並びにコンプレッサー64がそれぞれ接続される。コントローラー75は、第1微細気泡群および(または)第2微細気泡群の生成の要求に応じて気泡発生ノズル62a、62bに対して気体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置66a、66bおよびコンプレッサー64に供給される。コンプレッサー64は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置66aは、指令信号で指定される流量に応じて気体管63aを流通する気体の流量を制御する。流量制御装置66bは、指令信号で指定される流量に応じて気体管63bを流通する気体の流量を制御する。気体は、液管54a、54bに流通する液体中に気泡発生ノズル62a、62bから噴き出す。ここでは、流量制御装置66aは気体管63a内の気体の流通を遮断することができ、流量制御装置66bは気体管63b内の気体の流通を遮断することができる。したがって、コンプレッサー64の作動中であっても気泡発生ノズル62a、62bのいずれか一方で気体の噴出は停止されることができる。
【0042】
コントローラー75には、第1気泡発生装置48aのポンプ55a、流量制御装置58aおよび温度調整装置59aがそれぞれ接続される。コントローラー75は、第1微細気泡群の生成の要求に応じて、供給口52aに向けて液管54a内を流通する液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ55a、流量制御装置58aおよび温度調整装置59aに供給される。ポンプ55aは指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置58aは、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液体は液管54a内を流通し、指定された流量で供給口52aから液体は噴き出す。
【0043】
液体の供給にあたって、コントローラー75は、温度センサー61aから液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、供給口52aから噴き出す液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度制御装置59aに供給される。温度制御装置59aは、指令信号で指定された温度に、供給口52aから噴き出す液体の温度を調整する。
【0044】
コントローラー75には、第2気泡発生装置48bのポンプ55b、流量制御装置58bおよび温度調整装置59bがそれぞれ接続される。コントローラー75は、第2微細気泡群の生成の要求に応じて、供給口52bに向けて液管54b内を流通する液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ55b、流量制御装置58bおよび温度調整装置59bに供給される。ポンプ55bは指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置58bは、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液体は液管54b内を流通し、指定された流量で供給口52bから液体は噴き出す。
【0045】
液体の供給にあたって、コントローラー75は、温度センサー61bから液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、供給口52bから噴き出す液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度制御装置59bに供給される。温度制御装置59bは、指令信号で指定された温度に、供給口52bから噴き出す液体の温度を調整する。
【0046】
コントローラー75には第1気泡発生装置48aの温度調整装置67aが接続される。コントローラー75は、温度センサー68aから気体温信号を受領し、受領した気体温信号で特定される気体の温度に応じて、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置67aに供給される。温度調整装置67aは、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する。その他、コントローラー75は、室温センサー20から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、温度センサー21から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、温度センサー29から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。いずれの場合でも、温度調整装置67aは、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル62aに供給される気体の温度を調整する。
【0047】
コントローラー75には第2気泡発生装置48bの温度調整装置67bが接続される。コントローラー75は、温度センサー68bから気体温信号を受領し、受領した気体温信号で特定される気体の温度に応じて、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置67bに供給される。温度調整装置67bは、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する。その他、コントローラー75は、室温センサー20から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、温度センサー21から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー75は、温度センサー29から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。いずれの場合でも、温度調整装置67bは、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル62bに供給される気体の温度を調整する。
【0048】
コントローラー75は、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器69bから受領し、気泡濃度に応じて第1気泡発生装置48aから放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置66aに供給される。流量制御装置66aは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管63aを流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル62aの噴き出し圧力が調整されることで、微細気泡の放出量は調整されることができる。
【0049】
コントローラー75は、同様に、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器69bから受領し、気泡濃度に応じて第2気泡発生装置48bから放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置66bに供給される。流量制御装置66bは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管63bを流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル62bの噴き出し圧が調整されることで、微細気泡の放出量は調整されることができる。
【0050】
コントローラー75は、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器69bから受領し、気泡濃度に応じて第1気泡発生装置48aから放出される微細気泡のサイズを設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置58aおよび流量制御装置66aに供給される。流量制御装置58aは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、液管54aを流通する液体の流量を制御する。流量制御装置66aは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管63aを流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル62aの露出面74に沿って流れる液体の流速が調整されることで、微細気泡のサイズ(径寸法)は調整されることができる。併せて、気泡発生ノズル62aの噴き出し圧が調整されることで、微細気泡のサイズは調整されることができる。
【0051】
コントローラー75は、同様に、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器69bから受領し、気泡濃度に応じて第2気泡発生装置48bから放出される微細気泡のサイズを設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置58bおよび流量制御装置66bに供給される。流量制御装置58bは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、液管54bを流通する液体の流量を制御する。流量制御装置66bは、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管63bを流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル62bの露出面74に沿って流れる液体の流速が調整されることで、微細気泡のサイズ(径寸法)は調整されることができる。併せて、気泡発生ノズル62bの噴き出し圧が調整されることで、微細気泡のサイズは調整されることができる。
【0052】
(2)第1実施形態に係る洗浄装置の動作
洗浄装置11の液槽13には静的液体12が湛えられる。保持具46には被洗浄物Wが搭載される。被洗浄物Wは静的液体12に浸される。静的液体12の液面が規定の範囲を超えて下降すると、給液装置31が作動し、液槽13内に給液管33から液体は供給される。静的液体12の液面が規定の範囲を超えて上昇すると、排液装置32が作動し、液槽13内の静的液体12は吸込ユニット41に流入する。このとき、静的液体12の液面に浮かぶ油その他の不純物は吸込ユニット41から吸い込まれる。液面に浮かぶ油その他の不純物は液槽13から除去される。
【0053】
第1気泡発生装置48aが作動すると、気泡発生ノズル62aは、コントローラー75から供給される指令信号に応じて指定された放出量で液管54a内の液体に微細気泡を放出する。微細気泡を含有する第1微細気泡群は液管54a内の液体に巻き込まれながら液管54aの供給口52aから静的液体12中に流入する。
【0054】
第2気泡発生装置48bが作動すると、気泡発生ノズル62bは、コントローラー75から供給される指令信号に応じて指定された放出量で液管54b内の液体に微細気泡を放出する。微細気泡を含有する第2微細気泡群は液管54b内の液体に巻き込まれながら液管54bの供給口52bから静的液体12中に流入する。
【0055】
図4に示されるように、第1微細気泡群は第1径D1(=100nm未満)の平均気泡径(平均サイズ)を有する。第1気泡発生装置48aは最大数[個]で第1径D1の微細気泡を噴き出す。気泡径が第1径D1から増大し、あるいは減少するにつれて、気泡の数量[個]は減少する。すなわち、数量分布は第1径D1でピークを示す。その一方で、第2微細気泡群は第2径D2(=100nm以上50μm以下)の平均気泡径を有する。第2気泡発生装置48aは最大数で第2径D2の微細気泡を噴き出す。気泡径が第2径D2から増大し、あるいは減少するにつれて、気泡の数量は減少する。すなわち、数量分布は第2径D2でピークを示す。単位体積当たりで第1微細気泡群aの気泡数[個]は全気泡数の50%を超える。単位体積当たりで第2微細気泡群の気泡数[個]は全気泡数の50%未満である。直径100nm未満の気泡濃度は1ミリリットル当たり1x10個以上であることが望まれる。
【0056】
洗浄装置11では、静的液体12中に、第1温度の気体で形成され第1径D1の平均気泡径を有する第1微細気泡群と、第2温度の気体で形成され第2径D2の平均気泡径を有する第2微細気泡群とを含有する洗浄液は生成される。吹き出された第1微細気泡群および第2微細気泡群は被洗浄物Wに衝突する。被洗浄物Wの表面と汚染物との境界(界面の輪郭)に温度の異なる微細気泡が次々に接触する。温度の異なる微細気泡が同一箇所に作用することで、界面の輪郭で温度変化の繰り返し(温度の振動)が生じる。温度の振動は界面で剥離を引き起こす。剥離の進行に伴って輪郭から内側に微細気泡は進入していく。こうして汚染物は被洗浄物Wの表面から剥離する。汚染物は被洗浄物Wから分離される。こうした温度の振動の働きで、洗浄液は、気泡の崩壊のエネルギーを必ずしも利用しなくとも、これまでに比べて飛躍的に良好な洗浄効果を発揮する。特に、大きい平均気泡径の第2微細気泡群が被洗浄物Wの表面に接触すると、微細気泡に含まれる気体の熱エネルギーは広い範囲で被洗浄物Wの表面に作用する。小さい平均気泡径の第1微細気泡群が被洗浄物Wの表面に接触すると、微細気泡に含まれる熱エネルギーは狭い範囲で集中的に被洗浄物Wの表面に作用する。第1微細気泡群と第2微細気泡群とは温度差を有することから、第2微細気泡群の微細気泡で影響を受けた被洗浄物Wの表面に第1微細気泡群の微細気泡が接触すると温度変化が生じる。第2微細気泡群の微細気泡は広い領域で温度を拘束するので、小さい第1微細気泡群の微細気泡でも、第2微細気泡群の微細気泡で拘束される温度の領域に接触する。小さい平均気泡径の微細気泡群同士で温度差を有する場合よりも、より高い確率で温度変化は生じる。微細気泡は小さいほど物質と物体の表面との境界に入り込みやすく剥離を促進するものの、温度差を有する微細気泡の気泡径が相違することでさらなる洗浄効果の向上が実現されると考えられる。本実施形態では、第2温度は第1温度よりも低く設定されるものの、第2温度は第1温度に等しくてもよく第1温度より高くてもよい。
【0057】
静的液体12の温度は第2温度以上であって第1温度以下で任意に設定されればよい。静的液体12が例えば純水または水溶液の場合には、静的液体12の温度は摂氏80度以下に設定されることが望まれる。純水または水溶液の温度が摂氏80度を超えると、気泡は安定的に高い個数密度を維持できない。
【0058】
本実施形態に係る洗浄装置11は、静的液体12を湛える液槽13と、指令信号に応じて指定された放出量で液槽13内の静的液体12に第1微細気泡群および第2微細気泡群をそれぞれ放出する第1気泡発生装置48aおよび第2気泡発生装置48bと、静的液体12中で微細気泡の気泡濃度を特定する液質信号(気泡濃度信号)を受領し、気泡濃度に応じて第1気泡発生装置48aおよび第2気泡発生装置48bからそれぞれ放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成するコントローラー75とを備える。放出量の設定に応じて静的液体12中の気泡濃度は指定された値に設定される。こうして静的液体12中では最適な気泡濃度は維持される。その結果、洗浄効果は最大限に高められる。
【0059】
本実施形態に係るコントローラー75は、微細気泡のサイズを特定する液質信号(気泡サイズ信号)を受領し、微細気泡のサイズに応じて第1気泡発生装置48aおよび第2気泡発生装置48bから放出される微細気泡の気泡径(サイズ)を設定する指令信号を生成する。サイズの設定に応じて微細気泡のサイズは指定された値に設定される。こうして静的液体12中では最適な気泡サイズは維持される。その結果、洗浄効果は最大限に高められる。特に、液質信号は微細気泡のサイズごとに気泡濃度を特定することから、1つの液質信号に基づき第1微細気泡群および第2微細気泡群で最適な気泡サイズは維持されることができる。静的液体12中で気泡サイズの分布は最適に維持されることができる。
【0060】
洗浄装置11では、液槽13から流出する液体を液槽13に戻す液管54a、54bに接続される液溜め69aに結合されて、液溜め69a中の液体で微細気泡の気泡濃度を検出する計測器69bを備える。液管54a、54b内では液体は流動するものの、液溜め69aには流動する液体から分離された静止状態の液体が保持される。計測器69bでは、流動する液体の気泡濃度に比べて高い精度で、静止する液体の気泡濃度は検出されることから、洗浄装置11では静的液体12中の気泡濃度は指定された値に確実に設定される。
【0061】
本実施形態では例えば少なくとも第1微細気泡群および第2微細気泡群のいずれか一方は供給口14から噴き出す動的液体に巻き込まれてもよい。動的液体は微細気泡を巻き込みながら被洗浄物Wに到達する。動的液体の働きで洗浄効果はさらに高められることができる。
【0062】
(3)第2実施形態に係る洗浄装置の構成
図5は本発明の第2実施形態に係る気液混合装置の一具体例である洗浄装置101の構成を概略的に示す。洗浄装置101は、静的液体102を湛える液槽103と、静的液体82中で開口する供給口104および吸込口105を有して循環経路106に沿って液槽103内の液体を循環させる循環装置107とを備える。液槽103は、循環装置107の吸込口105の下方に付着物溜まり108を形成する底板103aを有する。底板103aは、循環装置107の吸込口105を区画する側壁に向かって水平面から前下がりに下降する。したがって、液体よりも比重の大きい物体は吸込口105に向かって流れる液体に巻き込まれて底板103aに沿って付着物溜まり108まで収集されることができる。液体には例えば水が用いられる。ただし、液体には、有機溶剤の溶媒に電解質や界面活性剤、気体などを溶解する液体が用いられてもよい。
【0063】
液槽103には、液槽103内の静的液体102の温度を調整する温度調整装置109が組み込まれる。温度調整装置109は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき静的液体102に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置109は、冷媒の熱交換に基づき静的液体102に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。
【0064】
液槽103の外側で大気中に室温センサー111が配置される。室温センサー111は、洗浄装置101の設置環境(例えば室内)で大気の温度を検出し、大気の温度を特定する室温信号を生成する。液槽103内の静的液体102中には温度センサー112が配置される。温度センサー112は、静止液体102の温度を検出し、静止液体102の温度を特定する液温信号を生成する。液槽103内の空間には液面センサー113が固定される。液面センサー113は、静止液体102の液面を検出し、指定された液面レベルの範囲から液面が逸脱するとレベル信号を生成する。
【0065】
循環装置107は、吸込口105および供給口104の間で循環経路106に組み込まれるポンプ114と、供給口104を区画し、供給口104から液槽103内の静的液体102中に流し込まれる液体の向きを調整する吐出ユニット115とを備える。吐出ユニット115は、ポンプ114の吐出圧に基づき静的液体102中に流し込まれる液体で液槽103内の静的液体102中に液流(以下「動的液体」という)を生成する。循環経路106は、ポンプ114の吸込ポートに液槽103の吸込口105を接続する上流管106aと、ポンプ114の吐出ポートに吐出ユニット115を接続する下流管106bとを有する。上流管106aにはゴミフィルター116および油水分離フィルター117が組み込まれる。ゴミフィルター116は上流管106aを流通する水からゴミを除去する。油水分離フィルター117は上流管106aを流通する水から油を分離する。こうしてポンプ114にはゴミおよび油から分離された水が流入する。ゴミおよび油は回収される。
【0066】
下流管106bには、下流管106bを流通する液体の流量を制御する流量制御装置118と、下流管106bを流通する液体の温度を調整する温度調整装置119とが組み込まれる。流量制御装置118は、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置119は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき液体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置119は、冷媒の熱交換に基づき液体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置119の下流で下流管106bには温度センサー121が組み込まれる。温度センサー121は、流通する液体の温度を検出し、液体の温度を特定する液温信号を生成する。
【0067】
洗浄装置101は、液槽103に接続される給液装置122および排液装置123を備える。給液装置122は、水源(液体源)から延びて、液槽103内の静的液体102中で開口する給液管124を有する。給液管124には、液体源から液体を汲み上げて、給液管124の開口端に向かって給液管124内で液体の流れを生成するポンプ125と、給液管124を流通する液体から不純物を除去するフィルター126と、給液管124を流通する液体の流量を制御する流量制御装置127と、給液管124を流通する液体の温度を調整する温度調整装置128とが組み込まれる。流量制御装置127は、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置128は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき液体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置128は、冷媒の熱交換に基づき液体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置128の下流で給液管124には温度センサー129が組み込まれる。温度センサー129は、流通する液体の温度を検出し、液体の温度を特定する液温信号を生成する。
【0068】
排液装置123は、液槽103内に配置されて、水平面に沿って上向きの吸込口131aを区画する吸込ユニット131と、吸込ユニット131から延びて指定された領域に液体を放出する開放端を有する排液管132とを備える。排液管132には、開放端に向かって、吸込ユニット131の吸込口131aから排液管132内で液体の流れを生成するポンプ133と、排液管132を流通する水からゴミを除去するゴミフィルター134と、排液管132を流通する水から油を分離する油水分離フィルター135とが組み込まれる。ゴミおよび油は回収される。
【0069】
洗浄装置101は、被洗浄物Wを保持する保持具136を有する。保持具136には例えばカゴが用いられる。保持具136は静的液体102中に浸される。保持具136には位置決め機構137が接続されてもよい。位置決め機構137は例えば水平面に沿って保持具136の移動を生み出す駆動力を発揮する。
【0070】
洗浄装置101は、液槽103に接続される単一の気泡発生装置141を備える。気泡発生装置141は、吐出ユニット115に接続されて、管内の液体に向けて気体を噴出する気泡発生ノズル142と、気泡発生ノズル142に接続されて、気泡発生ノズル142に向けて気体源から気体を供給する供給経路を形成する気体管143と、気体管143に組み込まれて、気体源から気体を吸い込み、気泡発生ノズル142に向かって気体管143内で気体の流れを生成するコンプレッサー144と、コンプレッサー144の下流で気体管143に組み込まれて、気体管143を流通する気体からゴミを除去するゴミフィルター145と、コンプレッサー144の下流で気体管143に組み込まれて、気体管143を流通する気体の流量を制御する流量制御装置146と、流量制御装置146の下流で気体管143に組み込まれて、気体管143を流通する気体の温度を調整する温度調整装置147とを備える。流量制御装置146は、例えば電力の供給に応じて開き度を調整する流量調整弁を備える。温度調整装置147は、例えば熱エネルギーの発生源(例えばヒーター)に基づき気体に対して熱エネルギーの付与を実現する。その他、温度調整装置147は、冷媒の熱交換に基づき気体に対して熱エネルギーの授受を実現してもよい。温度調整装置147の下流で気体管143には温度センサー148が組み込まれる。温度センサー148は、流通する気体の温度を検出し、気体の温度を特定する気体温信号を生成する。気体源には設置環境の大気が含まれる。ただし、気体は空気以外であってもよく窒素や水素のほかいかなる種類の気体であってもよい。吐出ユニット115内を流通する液体に、気泡発生ノズル142から気体が吹き込まれると、微細気泡を含有する微細気泡群は生成される。微細気泡はマイクロバブルおよびナノバブル(=ウルトラファインバブル)を含む。気泡発生ノズル142は、気泡発生ノズル62a、62bと同様に、先端で吐出ユニット115の管壁に差し込まれて、気体管143から延びて吐出ユニット115の内壁面で開口する通路71を区画するハウジング72と、通路71の一端でハウジング72に組み込まれて、空孔を含み、通路71を流通する気体を透過させる多孔質体73とを備える。
【0071】
気泡発生装置141の下流管106bには液質確認装置149が接続される。液質確認装置149は、液槽103から流出する液体を液槽103に戻す循環経路106に接続される液溜め149aと、液溜め149aに接続されて、液溜め149a内の液体で微細気泡の気泡濃度を検出する計測器149bとを備える。液溜め149aには循環経路106から液体が流れ込むことができる。計測器149bは、微細気泡のサイズごとに気泡濃度を検出し、気泡サイズごとに気泡濃度を特定する液質信号を生成する。
【0072】
洗浄装置101は、洗浄装置101の動作を制御するコントローラー151を備える。コントローラー151には、室温センサー111、液槽103の温度センサー112および液面センサー113、循環経路106の温度センサー121、給液管124の温度センサー129、気体管143の温度センサー148、並びに、計測器149bがそれぞれ接続される。コントローラー151には、室温センサー111から室温信号が供給され、温度センサー112、121、129から液音信号が供給され、液面センサー113からレベル信号が供給され、温度センサー148から気体温信号が供給され、計測器149bから液質信号が供給される。
【0073】
コントローラー151には液槽103の温度調整装置109が接続される。コントローラー151は、静的液体102中の温度センサー112から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される静的液体102の温度に応じて静的液体102の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置109に供給される。温度調整装置109は、指令信号に応じて指定された温度に液槽103内の静的液体102の温度を調整する。その他、コントローラー151は、室温センサー111から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて静的液体102の温度を調整する指令信号を生成してもよい。この場合には、温度調整装置109は、指令信号に応じて指定された温度に液槽103内の静的液体102の温度を調整する。
【0074】
コントローラー151には位置決め機構137が接続される。コントローラー151は、保持具136の移動の要求に応じて、要求される変位量で保持具136の移動を実現する制御信号を生成する。生成された制御信号は位置決め機構137に供給される。位置決め機構137は、指令信号で特定される三次元座標値に応じて保持具136を駆動する。こうして動的液体の供給口104に対して被洗浄物Wの位置は調整されることができる。
【0075】
コントローラー151には給液装置122のポンプ125、流量制御装置127および温度調整装置128がそれぞれ接続される。コントローラー151は、液槽103内の液面センサー113からレベル信号を受領し、受領したレベル信号で特定される静的液体102の液面レベルに応じて、液槽103に対して液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ125および流量制御装置127に供給される。ポンプ125は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置127は、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液槽103内で静的液体102の液面が指定された液面よりも下降すると、ポンプ125から液体は供給され、予め決められた液面レベルまで静的液体102の液面が上昇する。
【0076】
液体の供給にあたって、コントローラー151は、温度センサー129から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、補充される液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置128に供給される。温度調整装置128は、指令信号に応じて指定された温度に、給液管124内の液体の温度を調整する。その他、コントローラー151は、温度センサー112から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて給液管124内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー151は、室温センサー111から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて給液管124内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。これらの場合には、温度調整装置128は、指令信号に応じて指定された温度に給液管124内の液体の温度を調整する。
【0077】
コントローラー151には排液装置123のポンプ133が接続される。コントローラー151は、液槽103内の液面センサー113からレベル信号を受領し、受領したレベル信号で特定される静的液体102の液面レベルに応じて液槽103に対して液体の排出を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ133に供給される。ポンプ133は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。こうして液槽103内で静的液体102の液面が指定された液面よりも上昇すると、ポンプ133から液体は排水され、予め決められた液面レベルまで静的液体102の液面が下降する。
【0078】
コントローラー151には循環装置107のポンプ114、流量制御装置118および温度調整装置119がそれぞれ接続される。コントローラー151は、静的液体102中で流れる動的液体の生成の要求に応じて、要求で指定される流量で供給口104から噴き出す液体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号はポンプ114および流量制御装置118に供給される。ポンプ114は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置118は、指令信号で指定される流量に応じて液体の流量を制御する。こうして液体は循環経路106を循環し、指定された流量で吐出ユニット115の供給口104から液体は噴き出す。
【0079】
液体の循環にあたって、コントローラー151は、温度センサー121から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、供給口104から噴き出す液体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置119に供給される。温度調整装置119は、指令信号で指定された温度に、下流管106b内の液体の温度を調整する。その他、コントローラー151は、温度センサー112から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて下流管106b内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー151は、室温センサー111から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて下流管106b内の液体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。これらの場合には、温度調整装置119は、指令信号で指定された温度に下流管106b内の液体の温度を調整する。
【0080】
コントローラー151には気泡発生装置141のコンプレッサー144、流量制御装置146および温度調整装置147がそれぞれ接続される。コントローラー75は、微細気泡群の生成の要求に応じて気泡発生ノズル142に対して気体の供給を制御する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置146およびコンプレッサー144に供給される。コンプレッサー144は指令信号に応じて動作のオンオフを実施する。流量制御装置146は、指令信号で指定される流量に応じて気体管143を流通する気体の流量を制御する。気体は、吐出ユニット115に流通する液体中に気泡発生ノズル142から噴き出す。
【0081】
コントローラー151は、温度センサー148から気体温信号を受領し、受領した気体温信号で特定される気体の温度に応じて、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する指令信号を生成する。生成された指令信号は温度調整装置147に供給される。温度調整装置147は、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する。その他、コントローラー151は、室温センサー111から室温信号を受領し、受領した室温信号で特定される大気の温度に応じて、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー151は、温度センサー112から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。あるいは、コントローラー151は、温度センサー121から液温信号を受領し、受領した液温信号で特定される液体の温度に応じて、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する指令信号を生成してもよい。いずれの場合でも、温度調整装置147は、指令信号で指定された温度に、気泡発生ノズル142に供給される気体の温度を調整する。
【0082】
コントローラー151は、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器149bから受領し、気泡濃度に応じて気泡発生装置141から放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置146に供給される。流量制御装置146は、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管143を流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル142の噴き出し圧力が調整されることで、微細気泡の放出量は調整されることができる。
【0083】
コントローラー151は、液体中で微細気泡の気泡濃度を特定する気泡濃度信号を計測器69bから受領し、気泡濃度に応じて気泡発生装置141から放出される微細気泡のサイズを設定する指令信号を生成する。生成された指令信号は流量制御装置118および流量制御装置146に供給される。流量制御装置118は、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、循環経路106を流通する液体の流量を制御する。流量制御装置146は、指令信号で指定される微細気泡の放出量に応じて、気体管143を流通する気体の流量を制御する。こうして気泡発生ノズル142の露出面74に沿って流れる液体の流速が調整されることで、微細気泡のサイズ(径寸法)は調整されることができる。併せて、気泡発生ノズル142の噴き出し圧力が調整されることで、微細気泡のサイズは調整されることができる。
【0084】
(4)第2実施形態に係る洗浄装置の動作
洗浄装置101の液槽103には静的液体102が湛えられる。保持具136には被洗浄物Wが搭載される。被洗浄物Wは静的液体102に浸される。静的液体102の液面が規定の範囲を超えて下降すると、給液装置122が作動し、液槽103内に給液管124から液体は供給される。静的液体102の液面が規定の範囲を超えて上昇すると、排液装置123が作動し、液槽103内の静的液体102は吸込ユニット131に流入する。このとき、静的液体102の液面に浮かぶ油その他の不純物は吸込ユニット131から吸い込まれる。液面に浮かぶ油その他の不純物は液槽103から除去される。
【0085】
循環装置107が作動すると、循環経路106に沿って液体は循環する。液体は吐出ユニット115内を流通して供給口104から噴き出す。気泡発生装置141が作動すると、気泡発生ノズル142は、コントローラー151から供給される指令信号に応じて指定された放出量で吐出ユニット115内の液体に微細気泡を放出する。微細気泡を含有する第1微細気泡群は循環経路106内の液体に巻き込まれながら吐出ユニット115の供給口104から静的液体102中に流入する。静的液体102中に、第1温度の気体で形成され第1径D1の平均気泡径を有する第1微細気泡群を含有する洗浄液は生成される。
【0086】
その後、循環経路106内の液体の流速が調整され、気泡発生ノズル142の噴き出し圧が調整されることで、微細気泡のサイズ(径寸法)は変更される。第1温度から相違する第2温度の気体で形成され、第1径D1から相違する第2径D2の平均気泡径を有する第2微細気泡群を含有する洗浄液は吐出ユニット115の供給口104から静的液体102中に流入する。こうして液槽13内では、静的液体12中に、第1温度の気体で形成され第1径D1の平均気泡径を有する第1微細気泡群と、第2温度の気体で形成され第2径D2の平均気泡径を有する第2微細気泡群とを含有する洗浄液は生成される。
【0087】
吹き出された第1微細気泡群および第2微細気泡群は被洗浄物Wに衝突する。被洗浄物Wの表面と汚染物との境界(界面の輪郭)に温度の異なる微細気泡が次々に接触する。温度の異なる微細気泡が同一箇所に作用することで、界面の輪郭で温度変化の繰り返し(温度の振動)が生じる。温度の振動は界面で剥離を引き起こす。剥離の進行に伴って輪郭から内側に微細気泡は進入していく。こうして汚染物は被洗浄物Wの表面から剥離する。汚染物は被洗浄物Wから分離される。こうした温度の振動の働きで、洗浄液は、気泡の崩壊のエネルギーを必ずしも利用しなくとも、これまでに比べて飛躍的に良好な洗浄効果を発揮する。特に、大きい平均気泡径の第2微細気泡群が被洗浄物Wの表面に接触すると、微細気泡に含まれる気体の熱エネルギーは広い範囲で被洗浄物Wの表面に作用する。小さい平均気泡径の第1微細気泡群が被洗浄物Wの表面に接触すると、微細気泡に含まれる熱エネルギーは狭い範囲で集中的に被洗浄物Wの表面に作用する。第1微細気泡群と第2微細気泡群とは温度差を有することから、第2微細気泡群の微細気泡で影響を受けた被洗浄物Wの表面に第1微細気泡群の微細気泡が接触すると温度変化が生じる。第2微細気泡群の微細気泡は広い領域で温度を拘束するので、小さい第1微細気泡群の微細気泡でも、第2微細気泡群の微細気泡で拘束される温度の領域に接触する。小さい平均気泡径の微細気泡群同士で温度差を有する場合よりも、より高い確率で温度変化は生じる。微細気泡は小さいほど物質と物体の表面との境界に入り込みやすく剥離を促進するものの、温度差を有する微細気泡の気泡径が相違することでさらなる洗浄効果の向上が実現されると考えられる。本実施形態では、第2温度は第1温度よりも低く設定されるものの、第2温度は第1温度に等しくてもよく第1温度より高くてもよい。
【0088】
本実施形態に係る洗浄装置101では、コントローラー151は、静的液体102中で微細気泡の気泡濃度を特定する液質信号(気泡濃度信号)を受領し、気泡濃度に応じて気泡発生装置141から放出される微細気泡の放出量を設定する指令信号を生成する。放出量の設定に応じて静的液体102中の気泡濃度は指定された値に設定される。こうして静的液体102中では最適な気泡濃度は維持される。その結果、洗浄効果は最大限に高められる。
【0089】
本実施形態に係るコントローラー151は、微細気泡のサイズを特定する液質信号(気泡サイズ信号)を受領し、微細気泡のサイズに応じて気泡発生装置141から放出される微細気泡の気泡径(サイズ)を設定する指令信号を生成する。サイズの設定に応じて微細気泡のサイズは指定された値に設定される。こうして静的液体102中では最適な気泡サイズは維持される。その結果、洗浄効果は最大限に高められる。特に、液質信号は微細気泡のサイズごとに気泡濃度を特定することから、静的液体102中では気泡サイズの分布は最適に維持されることができる。
【0090】
洗浄装置101では、液槽103から流出する液体を液槽103に戻す循環経路106に接続される液溜め149aに結合されて、液溜め149a中の液体で微細気泡の気泡濃度を検出する計測器149bを備える。循環経路106内では液体は流動するものの、液溜め149aには流動する液体から分離された静止状態の液体が保持される。計測器149bでは、流動する液体の気泡濃度に比べて高い精度で、静止する液体の気泡濃度は検出されることから、洗浄装置101では静的液体102中の気泡濃度は指定された値に確実に設定される。
【0091】
本実施形態では、例えば第1温度の気体で形成され第1径D1の平均気泡径を有する第1微細気泡群を含有する静的液体102中で、第2温度の気体で形成され第2径D2の平均気泡径を有する第2微細気泡群を含有する動的液体が生成されてもよい。動的液体の生成にあたって、気泡発生装置141の流量制御装置118は、循環経路106を流通する液体の流量を調整すればよい。動的液体の働きで洗浄効果はさらに高められることができる。
【符号の説明】
【0092】
11…気液混合装置(洗浄装置)、12…液槽内の液体(静的液体)、13…液槽、48a…気泡発生装置(第1気泡発生装置)、48b…気泡発生装置(第2気泡発生装置)、75…コントローラー、101…気液混合装置(洗浄装置)、102…液槽内の液体(静的液体)、103…液槽、141…気泡発生装置、151…コントローラー。
図1
図2
図3
図4
図5