前記水性離型剤が、前記水溶性粘結剤に作用するプロトン供与性を有する、カルボキシル基、カルボニル基、シラノール基、及びフェノール基から選択される少なくとも一つの官能基を有する鎖状構造物質である請求項1に記載の鋳型用骨材混合物。
前記水溶性粘結剤が、前記水性離型剤の有する官能基と作用する無機塩及び有機塩、並びに前記水性離型剤とグリコシド結合を形成する炭水化物から選択される少なくとも一つを含む請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鋳型用骨材混合物。
a)骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、水性離型剤、及び水を含有する鋳型用骨材混合物を攪拌することにより該鋳型用骨材混合物中で発泡を生じさせ、気泡を含む発泡骨材混合物を調製する発泡骨材混合物調製工程と、
b)前記発泡骨材混合物を金型における鋳型造型用の空間に充填する充填工程と、
c)充填した前記発泡骨材混合物の水分を蒸発させて前記発泡骨材混合物を固化させ、鋳型を造型する鋳型造型工程と、
d)造型された前記鋳型を前記鋳型造型用の空間から取り出す取出工程と、
を有する鋳型の造型方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る鋳型用骨材混合物(以下単に「骨材混合物」とも称す)は、骨材と、水溶性粘結剤と、水溶性発泡剤と、水性離型剤と、水と、を含有する。
【0021】
本発明に係る鋳型用骨材混合物は、鋳型の材料として用いられる組成物である。なお、本明細書において鋳型とは中子を含む意味で用いる。
【0022】
本発明に係る鋳型用骨材混合物は、前記の構成を備えることにより、鋳型を造型する際の金型への離型剤塗布を必要としないか又は低減することができる。
この効果が奏される理由は以下のように推察される
【0023】
本発明に係る鋳型用骨材混合物は、離型剤が含有されていると共にその離型剤が水性であり、水を含む骨材混合物を攪拌し発泡させる際にこの水性離型剤が良好に分散される。この発泡された鋳型用骨材混合物が金型のキャビティに圧入され、加熱されている金型から骨材混合物に熱が与えられて水分が蒸発し、鋳型が造型される。発泡した鋳型用骨材混合物は、圧入によりキャビティ内に充填し、金型へ押し付けられる。これにより、金型と骨材混合物の界面部分において骨材混合物に分散している水性離型剤が、金型界面側に押し出される。さらに界面部分では、加熱した金型と接して熱が与えられ、これらの熱と圧力により水性離型剤の官能基が水溶性粘結剤へ作用を促進し、水性離型剤の主鎖である鎖状構造物質が界面にて集中固定化する。界面からの熱による蒸発の起点がキャビティ内部方向からも起こり、蒸発により内圧が上昇する。そのため金型界面側に水性離型剤が造型の終わるまで押し出され続けて、金型界面には水性離型剤の鎖状構造物質が集中する。このような仕組みで、鋳型を金型から取り外す際に鋳型に含まれる離型剤によって良好な離型性能が発揮され、金型への離型剤塗布の作業を必要としないか又は低減することができるものと考えられる。
そして、金型への離型剤塗布の作業を必要としないか又は低減することができるため、鋳型造型の簡易化(繰り返しの造型サイクルにおける時間短縮化)を達成することができる。
さらに、離型剤を金型へ塗布する際の飛散が低減されると共に、骨材混合物中に含有される水性離型剤は、上記の通り水に良好に分散していることから骨材混合物の外に飛散し難い状態となっているため、離型剤の周囲環境への飛散も抑制されるものと考えられる。
【0024】
次いで、本発明に係る鋳型用骨材混合物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0025】
〔水性離型剤〕
本発明に係る鋳型用骨材混合物は、水性離型剤を含有する。
【0026】
ここで、「水性」とは、常温(20℃)で水に分散するエマルションであることを指し、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を示すことが好ましい。
また、「離型剤」とは、骨材混合物に含有させて造型した鋳型の表面の離型性能を、含有させずに造型した鋳型よりも向上させ得る添加物を指す。
【0027】
−鎖状構造物質−
水性離型剤は、鎖状構造を有する物質(鎖状構造物質)であることが好ましい。鎖状構造物質としては、例えば炭素原子が並ぶ炭素鎖やシリコーンの骨格であるシロキサン鎖を有する高分子化合物を表す。
【0028】
・発泡作用を妨げない性能
水性のエマルションには、油成分が分散しており、油成分は消泡作用を有するものが多いが、エマルションを形成する界面活性剤を適切に選択する等の方法により発泡作用を妨げない性能を付与することができる。こうすることで、安定した発泡を行うことができ、金型に充填する際の骨材混合物の粘度を求められる範囲に制御し易くなる。
【0029】
ここで、発泡作用を妨げない性能を有する水性離型剤について説明する。骨材(フラタリーサンド)100質量部、水溶性粘結剤(ポリビニルアルコール)1.0質量部、水溶性発泡剤(陰イオン界面活性剤)0.03質量部、及び水5.0質量部に対し、さらに「水性離型剤」1.0質量部を加えて200rpmで5分間攪拌混合して発泡させた際の〔粘度A〕(Pa・s)が、「水性離型剤」を加えずに200rpmで5分間攪拌混合して発泡させた際の〔粘度B〕(Pa・s)に対して、100倍以下である場合に、その水性離型剤を「発泡作用を妨げない性能」を有するものとする。
なお、〔粘度A〕は〔粘度B〕に対して、さらに10倍以下であることが好ましく、1倍に近いほど好ましい。
【0030】
・官能基
水性離型剤は、水溶性粘結剤に作用する官能基を有することが好ましい。ここで、官能基について説明する。本発明における官能基は、酸性の性質を付与するプロトン供与性を有する官能基である。例としては、フェノール基(−C
6H
4−OH)、カルボキシル基(カルボキシ基、−COOH)、カルボニル基(−C(=O)−)、及びシラノール基(−SiH
2OH)があるが、本発明の官能基は、前記に記した官能基に限定されるものではなく、プロトン供与性を有するものであれば、水溶性粘結剤に作用するものである。
【0031】
・骨材混合物に含まれる官能基当量
骨材混合物中における前記官能基の量は、骨材混合物に対する官能基当量で2.0×10
−7mol/kg以上1.0×10
−4mol/kg以下であることが好ましく、1.0×10
−6mol/kg以上4.0×10
−5mol/kg以下がより好ましい。この官能基は水性離型剤より然るべき量で加えられるものである。
骨材混合物中に含まれる官能基当量が2.0×10
−7mol/kg以上であることで、鋳型の金型からの離型性がより向上する。一方、官能基当量が4.0×10
−5mol/kg以下であることで、安定した発泡を行うことができ、金型に充填する際の骨材混合物の粘度を求められる範囲に制御し易くなる。
【0032】
〔骨材〕
本発明における骨材としては、特に限定されず従来公知のいかなるものも用いることができる。例えば、珪砂(天然珪砂)、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂等の骨材が挙げられ、更には各種の人工骨材(いわゆる人工砂)を用いてもよい。
これらの中でも、骨材に対し粘結剤の添加量を低減しても十分な鋳型強度が得られ易く且つ高い骨材再生率が得られ易いとの観点で、特に天然珪砂及び人工砂の少なくとも一方が好ましい。
【0033】
本発明における骨材の粒度指数としては、AFS;30(JIS;38)以上AFS;150(JIS;243)以下が好ましく、AFS;40(JIS;52)以上AFS;120(JIS;184)以下がより好ましい。
粒度指数がAFS;30以上であることにより、流動性に優れ鋳型を造型する際の充填性が向上する一方、AFS;150以下であることにより鋳型として通気性が良好に保たれる。特に、AFS;40以上であると、骨材が細かく微細な形状の金型の転写性が向上し、かつ鋳型強度も高められる。一方AFS120以下であると、砂がある程度粗くハンドリング性が向上し、再生も容易に行うことができる。
【0034】
尚、本明細書においてはJIS Z 2601−1993付属書2(鋳物砂の粒度試験方法)にて測定された粒度指数を表す。
【0035】
本発明における骨材の形状としては、特に限定されるものではなく、丸型、角丸型、多角型、尖扁角型等、いかなる形状であってもよい。なお、流動性に優れ鋳型を造型する際の充填性が向上し、また鋳型として通気性が良好に保たれるとの観点から、特に丸型が好ましい。
【0036】
〔水溶性粘結剤〕
水溶性粘結剤は、常温及び注湯される溶湯の温度域において鋳型の形状を良好に保持させるとの観点で、骨材に粘結力を付与するために含有される。
なお、水溶性とは常温(20℃)で水に可溶性であることを指し、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を示すことが好ましい。
【0037】
本発明における水溶性粘結剤としては、例えば珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム(珪酸カリ)、珪酸アンモニウム、オルソりん酸塩、ピロりん酸塩、トリメタりん酸塩、ポリメタりん酸塩、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルキルシリケート等の、水性離型剤の有する官能基と作用する無機塩および有機塩が挙げられる。
これらの中でも、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム(珪酸カリ)がより好ましい。
【0038】
なお、珪酸ナトリウム(水ガラス)としてはモル比(SiO
2・Na
2Oの分子比)が1.2以上3.8以下のものが好ましく、更にはモル比が2.0以上3.3以下のものがより好ましい。モル比が上記下限値以上であることにより低温での長期保管においても水ガラスの変質が抑制できるとの利点があり、一方、上記上限値以下であることにより粘結剤の粘度を調整し易いとの利点がある。
【0039】
また、水溶性粘結剤としては、後述する発泡性を有する水溶性粘結剤を用いることもできる。
なお、水溶性粘結剤は、例えば上記に列挙されたものの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明における水溶性粘結剤の骨材に対する含有量は、用いる粘結剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましいが、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、更に0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0041】
〔水溶性発泡剤〕
また、本発明に係る骨材混合物を用いて鋳型を造型するに際しては、水溶性発泡剤を用いて骨材、水溶性粘結剤等と共に混合し攪拌して発泡を生じさせ、発泡した骨材混合物を調製して流動性を向上した上で鋳型を造型することが好ましい。
なお、水溶性とは常温(20℃)で水に可溶性であることを指し、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を示すことが好ましい。
【0042】
上記水溶性発泡剤としては、さらに粘結剤としての機能を併せ持つこと(つまり発泡性を有する水溶性粘結剤)が好ましい。また、骨材混合物における上記の発泡をより効率的に生じさせる観点から、発泡性を有し、且つ水性離型剤の有する官能基と作用する有機塩である水溶性粘結剤、および水性離型剤とグリコシド結合を形成する炭水化物である水溶性粘結剤が好ましい。
発泡性を有する水溶性粘結剤としては、例えば界面活性剤(具体的には、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等)、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、サポニン、澱粉もしくはその誘導体、その他の糖類等が挙げられる。なお、その他の糖類としては、例えば、多糖類としてセルロース、フルクトース等が、四糖類としてアカルボース等が、三糖類としてラフィノース、マルトトリオース等が、二糖類としてマルトース、スクラトース、トレハロース等が、単糖類としてブドウ糖、果糖、その他オリゴ糖等が挙げられる。
【0043】
陰イオン界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エーテル硫酸ナトリウムなどがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシドなどがある。両性界面活性剤としては、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどがある。
【0044】
水溶性発泡剤は、例えば上記に列挙されたものの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明における水溶性発泡剤の骨材に対する含有量は、用いる発泡剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましい。
陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤の総含有量は、骨材に対し0.001質量%以上0.1質量%以下が好ましく、更に0.005質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。
ポリビニルアルコール及びその誘導体、サポニン、澱粉及びその誘導体、並びにその他の糖類の総含有量は、骨材に対し0.1質量%以上20.0質量%以下が好ましく、更に0.2質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0046】
〔水〕
本発明に係る鋳型用骨材混合物は、水を含有する。
本発明における水の骨材に対する含有量は、用いる粘結剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましいが、0.5質量%以上10.0質量%以下が好ましく、更に1.5質量%以上7.5質量%以下がより好ましい。
【0047】
〔その他の組成物〕
また、本発明に係る鋳型用骨材混合物には、上記のほかにも、触媒、酸化促進剤等、従来公知の組成物を添加することができる。
【0048】
〔混練方法〕
本発明に係る鋳型用骨材混合物の作製は、上述した各種成分を混合することにより行われる。添加の順番や混練の方法は特に限定されるものではない。
上記各成分を混練する際の混練装置としては、特に限定されることなく従来公知の混練装置が用いられ、例えば自転・公転ミキサー、アイリッヒ・インテンシブ・ミキサー、新東シンプソン・ミックスマラー等が用いられる。
【0049】
〔鋳型の造型方法〕
本発明に係る鋳型用骨材混合物を用いた鋳型の造型は、造型機による造型であっても、また手込めによる造型であってもよい。
【0050】
ただし、上記各成分を混合し攪拌して発泡させて発泡状の骨材混合物を作り、鋳型造型用の金型における加熱した鋳型造型用空間(キャビティ)へ圧入して充填し造型することが好ましく、圧入の際に射出により充填することがより好ましい。
【0051】
より具体的には、以下のa)〜d)の工程を含む造型方法によって鋳型を造型することが好ましい。
a)骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、水性離型剤、及び水を含む骨材混合物を攪拌することにより該骨材混合物中で発泡を生じさせ、気泡を含む発泡骨材混合物を調製する発泡骨材混合物調製工程
b)前記発泡骨材混合物を金型における鋳型造型用の空間(キャビティ)に充填する充填工程
c)充填した前記発泡骨材混合物の水分を蒸発させて前記発泡骨材混合物を固化させ、鋳型を造型する鋳型造型工程
d)造型された鋳型を前記鋳型造型用の空間から取り出す取出工程
【0052】
高温に加熱された金型の鋳型造型用空間に圧入充填された発泡骨材混合物では、攪拌により発泡骨材混合物中に分散した気泡と、加熱された金型の熱により発泡骨材混合物中の水分から発生する水蒸気と、が鋳型の中心部に集まる現象が起きる。そのため、中心部においては骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び水性離型剤の充填密度(つまり固形分の密度)が低い鋳型となり、逆に表面は骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び水性離型剤の充填密度(固形分の密度)が高い鋳型となる。
鋳型の金型からの離型性には、鋳型表面に存在する水性離型剤が大きく影響するため、上記の通り表面における水性離型剤の充填密度が高くなる本発明では、水性離型剤による離型性がより良好に発揮される。また、表面における水性離型剤の充填密度が高くなるため、水性離型剤の添加量を低減することにも有効である。
【0053】
なお、鋳型において、中心部の固形分の密度が表面部の固形分の密度より小さいか否かを確認するには、鋳型の中心部の断面及び表面における固形分(骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び水性離型剤)の詰まり具合を目視で確認することで判別できる。
【0054】
骨材混合物は鋳型造型用空間への充填性を向上させるため、及び上記充填密度向上のために、ホイップクリーム状となるまで発泡しておくことが好ましい。より具体的には、前記発泡骨材混合物(つまり攪拌後の鋳型用骨材混合物)の粘度が0.5Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましく、該粘度は更に0.5Pa・s以上8Pa・s以下がより好ましい。
なお、発泡骨材混合物(つまり攪拌後の鋳型用骨材混合物)の粘度の測定は以下のようにして行われる。
−測定方法−
底部に直径6mmの細孔を有する内径42mmの円筒容器に発泡骨材混合物を投入し、重量1kg、直径40mmの円柱状おもりにて、おもりの自重で加圧することで細孔より発泡骨材混合物が排出される。この時、おもりが50mm移動するのに要した時間を計測し、下記数式にて粘度を求める。なお、粘度測定時の温度は20℃とする。
式 μ=πD
4P
pt/128L
1L
2S
μ:粘度[Pa・s]
D:底部細孔の直径[m]
P
p:おもりの加圧力[Pa]
t:おもりが50mm移動するのに要した時間[s]
L
1:おもりの移動距離(=50mm)
L
2:底部細孔の板厚[m]
S:円柱状おもりの底部の面積と円筒の内部の中空領域(つまり内径部分)の断面積との平均値[m
2]
【0055】
また、発泡骨材混合物の鋳型造型用空間(キャビティ)への充填方法としては、シリンダ内におけるピストンによる直接加圧、シリンダ内に圧縮空気を供給することによる充填、スクリュー等による圧送、流し込みなどがあるが、充填スピードや発泡骨材混合物への均一加圧による充填安定性から、ピストンによる直接加圧及び圧縮空気による充填が好ましい。
【0056】
鋳型造型用空間(キャビティ)に充填した発泡骨材混合物の水分の蒸発は、例えば加熱された金型からの熱、鋳型造型用空間(キャビティ)への加熱された空気の流動、この両者の併用等の方法によって行われる。
【0057】
〔鋳型を用いた鋳物の製造〕
本発明に係る鋳型用骨材混合物を用いた鋳型は各種金属又は合金の鋳造に用いられる。鋳造に用いられる溶湯の材料としては例えば以下のものが挙げられる。なお、下記注湯温度とは、下記の材料が注湯するのに適当な程度に溶解する温度を表す。
アルミニウム又はアルミニウム合金(注湯温度:670℃〜700℃)
鉄又は鉄合金(注湯温度:1300℃〜1400℃)
青銅(注湯温度:1100℃〜1250℃)
黄銅(注湯温度:950℃〜1100℃)
【0058】
鋳造は、上記に列挙するような材料による溶湯を鋳型(中子)及び金型中の空間に注湯し、その後冷却して鋳型を除去することにより行われる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を表す。
【0060】
<実施例A1>
表1に示す組成の材料を、混合機(愛工舎製作所製、卓上ミキサ)を用いて約200rpmで約5分間攪拌混合して発泡させて、発泡骨材混合物を調製した。
水性離型剤(LC−9試作)の量は0.05質量部(骨材混合物に対する官能基当量1.0×10
−6mol/kg)であった。
【0061】
【表1】
【0062】
次いで、この発泡骨材混合物を、離型剤を塗布していない220℃に加熱された曲げ試験用造型金型の容量約80cm
3のキャビティに、シリンダ面圧0.4MPaで加圧充填した(充填工程)。
加熱された金型に充填された発泡骨材混合物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、発泡骨材混合物を固化させた(固化工程)。
その後、金型のキャビティから鋳型(中子)を取り出した。
【0063】
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。なお、曲げ強さの測定はJACT試験法SM−1、曲げ強さ試験法に準拠して行った。その結果、3.5MPaの強度がそれぞれ得られた。鋳型強度で2MPa以上あれば鋳型の取り扱いには問題ない強度であり、鋳型として充分使用できる強度である。
【0064】
<実施例A2>
水性離型剤(LC−9試作)の量を0.5質量部(骨材混合物に対する官能基当量1.0×10
−5mol/kg)に変更した以外は、実施例A1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.0MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0065】
<実施例A3>
水性離型剤(LC−9試作)の量を0.01質量部(骨材混合物に対する官能基当量2.0×10
−7mol/kg)に変更した以外は、実施例A1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.2MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0066】
<実施例A4>
水性離型剤(LC−9試作)の代わりに鎖状構造の異なる試作液8(株式会社テトラ)を用い、且つその量を0.1質量部(骨材混合物に対する官能基当量3.0×10
−5mol/kg)に変更した以外は、実施例A1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.0MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0067】
<比較例A1>
表2に示す組成の材料を、混合機(愛工舎製作所製、卓上ミキサ)を用いて約200rpmで約5分間攪拌混合して発泡させて、発泡骨材混合物を調製した。
【0068】
【表2】
【0069】
次いで、この発泡骨材混合物を、離型剤を塗布していない220℃に加熱された曲げ試験用造型金型の容量約80cm
3のキャビティに、シリンダ面圧0.4MPaで加圧充填した(充填工程)。
加熱された金型に充填された発泡骨材混合物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、発泡骨材混合物を固化させた(固化工程)。
その後、金型のキャビティから鋳型(中子)を取り出した。
【0070】
鋳型(中子)は金型キャビティに一部残存し、割れ及び欠けが生じたため、曲げ試験片を作製することが出来なかった。
【0071】
<比較例A2>
発泡骨材混合物の金型への加圧充填前に、金型キャビティにジメチルシリコーン系離型剤を塗布したこと以外は、比較例A1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.5MPaの強度がそれぞれ得られた。
ただし、金型への離型剤塗布の作業を行っている分、鋳型の造型1サイクルに要する時間は、実施例A1の場合に比べて10%増であった。
【0072】
<実施例B1>
表3に示す組成の材料を、混合機(愛工舎製作所製、卓上ミキサ)を用いて約200rpmで約5分間攪拌混合して発泡させて、発泡骨材混合物を調製した。
水性離型剤(LC−9試作)の量は0.05質量部(骨材混合物に対する官能基当量1.0×10
−6mol/kg)であった。
【0073】
【表3】
【0074】
次いで、この発泡骨材混合物を、離型剤を塗布していない220℃に加熱された曲げ試験用造型金型の容量約80cm
3のキャビティに、シリンダ面圧0.4MPaで加圧充填した(充填工程)。
加熱された金型に充填された発泡骨材混合物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、発泡骨材混合物を固化させた(固化工程)。
その後、金型のキャビティから鋳型(中子)を取り出した。
【0075】
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.2MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0076】
<実施例B2>
水性離型剤(LC−9試作(株式会社テトラ))の量を0.5質量部(骨材混合物に対する官能基当量1.0×10
−5mol/kg)に変更した以外は、実施例B1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、2.8MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0077】
<実施例B3>
水性離型剤(LC−9試作(株式会社テトラ))の量を0.01質量部(骨材混合物に対する官能基当量2.0
−7mol/kg)に変更した以外は、実施例B1と同様にして鋳型(中子)得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.3MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0078】
<実施例B4>
水性離型剤(LC−9試作)の代わりに鎖状構造の異なる試作液8(株式会社テトラ)を用い、且つその量を0.1質量部(骨材混合物に対する官能基当量3.0×10
−5mol/kg)に変更した以外は、実施例B1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、4.1MPaの強度がそれぞれ得られた。
【0079】
<比較例B1>
表4に示す組成の材料を、混合機(愛工舎製作所製、卓上ミキサ)を用いて約200rpmで約5分間攪拌混合して発泡させて、発泡骨材混合物を調製した。
【0080】
【表4】
【0081】
次いで、この発泡骨材混合物を、離型剤を塗布していない220℃に加熱された曲げ試験用造型金型の容量約80cm
3のキャビティに、シリンダ面圧0.4MPaで加圧充填した(充填工程)。
加熱された金型に充填された発泡骨材混合物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、発泡骨材混合物を固化させた(固化工程)。
その後、金型のキャビティから鋳型(中子)を取り出した。
【0082】
鋳型(中子)は金型キャビティに一部残存し、割れ及び欠けが生じたため、曲げ試験片を作製することが出来なかった。
【0083】
<比較例B2>
発泡骨材混合物の金型への加圧充填前に、金型キャビティにジメチルシリコーン系離型剤を塗布したこと以外は、比較例B1と同様にして鋳型(中子)を得た。
鋳型(中子)は金型キャビティに残存すること無く、割れ及び欠け無く取り出すことが出来た。
この鋳型から曲げ試験片を作製し、60分経過後に曲げ強さを測定した。その結果、3.0MPaの強度がそれぞれ得られた。
ただし、金型への離型剤塗布の作業を行っている分、鋳型の造型1サイクルに要する時間は、実施例B1の場合に比べて10%増であった。
【0084】
なお、表1〜表4に示す各材料の詳細は以下の通りである。
(水性離型剤)
・メーカー:株式会社テトラ、製品名:LC−9試作
成分:特殊シリコーン水分散液
(官能基:カルボニル基、鎖状構造:シロキサン鎖)
分散液中の官能基当量:2.0×10
−3mol/kg
・メーカー:株式会社テトラ、製品名:試作液8
成分:特殊ワックス水分散液
(官能基:カルボニル基、鎖状構造:炭素鎖)
分散液中の官能基当量:3.0×10
−2mol/kg
(骨材)
・天然珪砂(フラタリーサンド、ケープフラタリー・シリカ・マインズ社)
・人工骨材(エスパール#60、山川産業社)
(水溶性粘結剤)
・ポリビニルアルコール(メーカー:クラレ、製品名:PVA105)
・珪酸ナトリウム(水ガラス、モル比2.0、富士化学株式会社製、1号)
(水溶性発泡剤)
・陰イオン界面活性剤(エーテルサルフェートNa塩、日油株式会社)