【解決手段】 第1第1基板1と、電極層3と、主走査方向xに配列された複数の発熱部40を含む抵抗体層4と、を備え、電極層3は、第1第1基板1の副走査方向y端に位置する第1基板第1端縁131に沿って配置された複数の第1パッド31を有し、複数の第1パッド131に導電性接合材6を介して接合される複数の第2パッド24を有する配線層23および当該配線層23を支持する絶縁材料からなり可撓性を有する支持層21を具備する第2基板2をさらに備えており、第2パッド24は、第1第1基板1の厚さ方向z視において第1第1基板1と重なる第2パッド第1部241と、第1基板第1端縁131から副走査方向yに露出する第2パッド第2部242と、を有し、第2パッド第2部242の副走査方向y寸法は、第2パッド第2部242の主走査方向x寸法よりも大きい。
前記導電性接合材は、前記第2パッド第1部に付着した導電性接合材第1部と、前記第2パッド第2部に付着した導電性接合材第2部と、を有する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
前記第2パッド第2部の副走査方向寸法は、前記厚さ方向視において前記第1パッドと前記第2パッドとが重なるパッド第1領域の副走査方向寸法の1/2以上である、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッド。
前記電極層および前記抵抗体層は、金属を含むペーストを印刷および焼成することにより形成されている、請求項1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0012】
図1〜
図10は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、第1基板1、第2基板2、電極層3、抵抗体層4、保護層5、導電性接合材6、駆動IC71、封止樹脂72および放熱部材75を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、たとえばバーコードシートやレシートを作成するために感熱紙に対する印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。なお、理解の便宜上、
図1および
図3においては、保護層5を省略している。これらの図においては、主走査方向をx方向、副走査方向をy方向、第1基板1の厚さ方向をz方向としている。
【0013】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。
図6は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図7は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図8は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大底面図である。
図9は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大底面図である。
図10は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの導電性接合材を示す一部断面要部拡大斜視図である。
【0014】
第1基板1は、基材11およびグレーズ層12を有する。基材11は、たとえばAlN、Al
2O
3などのセラミックからなり、たとえばその厚さが0.6〜1.0mm程度とされている。
図1に示すように、第1基板1は、主走査方向xに長く延びる長矩形状とされている。第1基板1は、第1基板第1端縁131および第1基板第2端縁132を有する。第1基板第1端縁131は、副走査方向y上流側に位置する端縁である。第1基板第2端縁132は、副走査方向y下流側に位置する端縁である。第1基板1の下面には、たとえばAlなどの金属からなる放熱部材75が設けられている。
【0015】
グレーズ層12は、基材11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば800〜850℃である。グレーズ層12は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。本実施形態においては、グレーズ層12は、膨出部121および補助部122を有する。
【0016】
膨出部121は、基材11から厚さ方向zに膨出する形状であり、x方向に長く延びている。補助部122は、膨出部121のy方向両側に設けられており、基材11のほとんどを覆う平坦な部分である。なお、グレーズ層12は、このような構成に限定されず、たとえば全体が平坦な形状であってもよい。
【0017】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、導電性材料によって形成されている。
【0018】
電極層3は、グレーズ層12上に形成されており、たとえば添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたAuまたはPt、あるいはAgからなる。電極層3の厚さは、たとえば0.4〜2.5μm程度である。電極層3は、たとえば、有機化合物を含むレジネートAuのペーストやAgとガラスフリットとを含むガラスフリットAgペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。
【0019】
図3に示すように、電極層3は、共通電極33および複数の個別電極36および複数の第1パッド31を有している。図示された共通電極33および個別電極36は、Auを含む部分であることが好ましい。
【0020】
共通電極33は、複数の共通電極帯状部34および共通電極連結部35を有している。共通電極連結部35は、第1基板1の副走査方向y下流側端寄りに配置されており、第1基板第2端縁132に沿って主走査方向xに延びる帯状である。複数の共通電極帯状部34は、各々が共通電極連結部35から副走査方向yに延びており、主走査方向xに等ピッチで配列されている。また、本実施形態においては、
図4に示すように、共通電極連結部35には、Ag層351が積層されている。Ag層351は、共通電極連結部35の抵抗値を低減させるためのものである。
【0021】
複数の個別電極36は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極33に対して逆極性となる部位である。個別電極36は、抵抗体層4から駆動IC71に向かって延びている。複数の個別電極36は、主走査方向xに配列されており、各々が個別電極帯状部38、個別電極連結部37およびボンディング部39を有している。
【0022】
各個別電極帯状部38は、副走査方向yに延びた帯状部分であり、共通電極33の隣り合う2つの共通電極帯状部34の間に位置している。個別電極36の個別電極帯状部38と共通電極33の共通電極帯状部34とは、幅がたとえば25μm以下とされており、隣り合う個別電極36の個別電極帯状部38と共通電極33の共通電極帯状部34との間隔はたとえば40μm以下となっている。
【0023】
個別電極連結部37は、個別電極帯状部38から駆動IC71に向かって延びる部分であり、そのほとんどが副走査方向yに沿った部位および副走査方向yに対して傾斜した部位を有している。個別電極連結部37のほとんどの部位は、その幅がたとえば40μm以下とされており、隣り合う個別電極連結部37どうしの間隔はたとえば40μm以下となっている。
【0024】
図3に示すように、ボンディング部39は、個別電極36の副走査方向y端部に形成されており、個別電極36と駆動IC71とを接続するためのワイヤ69がボンディングされている。隣り合う個別電極36のボンディング部39どうしは、副走査方向yに互い違いに配置されている。これにより、ボンディング部39は、個別電極連結部37のほとんどの部位よりも幅が大きいにも関わらず、たがいに干渉することが回避されている。
【0025】
個別電極連結部37のうち隣り合うボンディング部39に挟まれた部位は、個別電極36において最も幅が小さく、その幅がたとえば10μm以下である。また、個別電極連結部37と隣のボンディング部39との間隔もたとえば10μm以下となっている。このように、共通電極33および複数の個別電極36は、線幅および配線間隔が小さい微細パターンとなっている。ボンディング部39は、たとえばAgを含む部位である。
【0026】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大であるたとえば酸化ルテニウムなどからなり、主走査方向xに延びる帯状に形成されている。抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部34と複数の個別電極36の個別電極帯状部38とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部34と複数の個別電極36の個別電極帯状部38に対して第1基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部34と各個別電極帯状部38とに挟まれた部位が、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部40とされている。発熱部40の発熱によって印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば4μm〜6μmである。
【0027】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものである。保護層5は、たとえば非晶質ガラスからなる。ただし、保護層5は、複数の個別電極36のボンディング部39を含む領域を露出させている。
【0028】
駆動IC71は、複数の個別電極36を選択的に通電させることにより、抵抗体層4を部分的に発熱させる機能を果たす。駆動IC71には、複数のパッドが設けられている。駆動IC71のパッドと複数の個別電極36とは、それぞれにボンディングされた複数のワイヤ69を介して接続されている。ワイヤ69は、Auからなる。
図1および
図2に示すように、駆動IC71およびワイヤ69は、封止樹脂72によって覆われている。封止樹脂72は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。
【0029】
複数の第1パッド31は、第1基板1と第2基板2とを接続するために用いられる。複数の第1パッド31は、第1基板1の第1基板第1端縁131に沿って主走査方向xに配列されている。複数の第1パッド31には、配線部301や配線部302が接続されている。複数の第1パッド31は、配線部301や配線部302と複数のワイヤ69とを介して駆動IC71と導通している。
【0030】
図7は、理解の便宜上、第2基板2の主要部位を想像線で示している。同図には、複数の第1パッド31のうち4つの第1パッド31が選択的に示されている。複数の第1パッド31の個数は特に限定されず、本実施形態においては、たとえば20個程度の第1パッド31が設けられている。
【0031】
複数の第1パッド31は、第1基板1の第1基板第1端縁131から副走査方向y上流側に離間して配置されている。副走査方向yにおいて第1基板第1端縁131と第1パッド31との間の部分は、第1基板第1部141である。また、第1パッド31と後述の第2基板2の第2パッド24とが厚さ方向zにおいて重なる領域が、パッド第1領域P1である。
【0032】
第2基板2は、第1基板1に接続されており、サーマルプリントヘッドA1が組み込まれるプリンタ等の機器の電源部や制御部との接続を担うものである。第2基板2は、支持層21、絶縁層22および配線層23を有する。
【0033】
支持層21は、配線層23を支持する層である。支持層21は、絶縁材料からなり、可撓性を有する。支持層21の具体的構成は特に限定されず、一例として、ポリイミド樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0034】
絶縁層22は、支持層21とともに配線層23を挟む層である。絶縁層22は、たとえばソルダーレジストであり、ポリイミド樹脂やPET等からなる薄膜である。絶縁層22は、複数の絶縁層第1端縁221を有する。絶縁層第1端縁221は、厚さ方向z視において配線層23と重なる絶縁層22の副走査方向y端縁の部位である。
【0035】
配線層23は、サーマルプリントヘッドA1の電極層3と機器の電源部や制御部との導通を図るものである。配線層23は、導体箔であり、たとえばCuからなる。
図8は、第1基板1の主要部分を想像線で示した第2基板2および導電性接合材6の要部拡大底面図であり、
図9は、さらに導電性接合材6を省略した要部拡大底面図である。配線層23は、複数の第2パッド24を有する。
【0036】
複数の第2パッド24は、導電性接合材6を介して複数の第1パッド31と導通接合されるものであり、支持層21に支持されており、且つ絶縁層22から露出している。複数の第2パッド24は、主走査方向xに配列されている。複数の第2パッド24の配列ピッチは、複数の第1パッド31の配列ピッチと略同じである。
【0037】
複数の第2パッド24は、第2パッド第1部241および第2パッド第2部242を有する。第2パッド第1部241は、厚さ方向z視において第1基板1と重なる部分である。第2パッド第2部242は、厚さ方向z視において第1基板1の第1基板第1端縁131から副走査方向y上流側に露出する部分である。また、図示された例においては、第2パッド24は、厚さ方向に貫通する孔を有さない。
【0038】
また、配線層23は、曲線端縁231を有する。曲線端縁231は、主走査方向xにおいて隣り合う絶縁層第1端縁221の端部に繋がっており、絶縁層22に覆われている。
【0039】
図7および
図9に示す例において、各部の寸法はたとえば以下の関係である。第2パッド24の副走査方向y寸法である寸法y24は、たとえば2.491mmである。第2パッド第1部241の副走査方向y寸法である寸法y241は、たとえば1.681mmであり、第2パッド第2部242の副走査方向y寸法である寸法y242は、たとえば0.81mmである。また、第2パッド24の主走査方向x寸法である寸法x24は、たとえば0.726mmである。これらより、寸法y242は、寸法x24よりも大きい。すなわち、第2パッド第2部242は、厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする長矩形状である。また、隣り合う第2パッド24の主走査方向xにおける間隔d24は、たとえば0.51mmである。すなわち、寸法y242は、間隔d24よりも大きい。また、寸法x242は、間隔d24よりも大きい。
【0040】
第1パッド31の副走査方向y寸法である寸法y31は、たとえば1.616mmであり、第1パッド31の主走査方向x寸法である寸法x31は、たとえば1.041mmである。隣り合う第1パッド31の主走査方向xにおける間隔d31は、たとえば0.20mmである。また、パッド第1領域P1の副走査方向y寸法であるyP1は、たとえば、1.329mmであり、パッド第1領域P1の主走査方向x寸法であるxP1は、x24と同じくたとえば0.726mmである。これにより、第2パッド第2部242の寸法y242は、パッド第1領域P1の寸法yP1の1/2以上である。また、寸法y242は、第1基板第1部141の寸法y141よりも大きい。また、寸法y242は、第1パッド31の寸法y31の1/2以上である。また、第1パッド31の寸法x31は、第2パッド24の寸法x24よりも大きい。
【0041】
導電性接合材6は、第1基板1と第2基板2とを接続するためのものであり、導電性を有する接合材である。導電性接合材6としては、たとえばはんだが挙げられる。導電性接合材6は、第1基板1の電極層3の複数の第1パッド31と、第2基板2の配線層23の複数の第2パッド24とを、各別に接合している。
【0042】
図5および
図8に示すように、本実施形態においては、導電性接合材6は、導電性接合材第1部61および導電性接合材第2部62を有する。
【0043】
導電性接合材第1部61は、導電性接合材6のうち第2パッド24の第2パッド第1部241に付着した部分であり、厚さ方向z視において第2パッド第1部241と重なる。導電性接合材第1部61は、第2パッド24と第1パッド31とのそれぞれに一部ずつが接合されている。導電性接合材第1部61は、第2パッド第1部241と第1パッド31とによって挟まれることにより、
図5に示すような偏平な形状となることが一般的である。
【0044】
導電性接合材第2部62は、導電性接合材6のうち第2パッド24の第2パッド第2部242に付着した部分であり、厚さ方向z視において第2パッド第2部242と重なる。すなわち、導電性接合材第2部62は、第1基板1から副走査方向y上流側に露出しており、厚さ方向z視において第1基板1と重なっていない。また、
図5に示すように、図示された例においては、導電性接合材第2部62は、第1基板1の上面(グレーズ層12の上面)に対して寸法z62だけ、厚さ方向z図中下方に突出する程度の厚さを有する膨出形状である。
【0045】
図8は、導電性接合材6が表れた要部拡大平面図であり、
図10は、厚さ方向z下方からみた導電性接合材6を示す斜視図である。図示された例においては、導電性接合材第2部62は、矩形状の第2パッド第2部242に付着した部分であることにより、厚さ方向z視において矩形状である。さらに、導電性接合材第2部62は、第2パッド第2部242と同様に、厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする長矩形状である。また、導電性接合材第2部62は、複数の稜線状部621を有する。稜線状部621は、第2パッド第2部242の四隅から延びており、導電性接合材第2部62の最膨出部622に向かって広がる形状である。
図10の部分断面図に示すように、稜線状部621は、第2パッド第2部242の四隅に近い部分において、厚さ方向zに急峻に盛り上がる形状を呈している。図示された例においては、導電性接合材第2部62は、4つの稜線状部621を有する。
【0046】
導電性接合材第2部62の形成工程の一例を挙げる。たとえば、第1基板1と第2基板2との接合において、溶融した導電性接合材6が厚さ方向z下方(重力方向下方)を向く第2パッド第2部242に付着する。この付着した導電性接合材6が重力と、第2パッド第2部242の形状および溶融した導電性接合材6の粘度に起因する表面張力と重力とのバランスによって、厚さ方向z下方に膨出した形状を呈する。この際、表面張力がより強く作用する第2パッド第2部242の四隅において、稜線状部621の形状を呈する。この状態で、冷却等によって硬化すると、図示された導電性接合材6が得られる。
【0047】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、第2パッド第2部242は、第1基板1から副走査方向yに露出している。この第2パッド第2部242には、第1基板1と第2基板2との接合に用いられる導電性接合材6が溶融した際に付着しうる。導電性接合材6の量が不足すると、第1パッド31と第2パッド24との接合が十分に行えず、導通不良が懸念される。一方、導電性接合材6の量が多すぎると、隣り合う第1パッド31同士や隣り合う第2パッド24同士が不当に導通してしまうおそれがある。第2パッド第2部242が、副走査方向yの寸法y24が主走査方向xの寸法x24よりも大きいことにより、余分となった溶融した導電性接合材6を、第2パッド第2部242に沿って副走査方向yへとより確実に導くことができる。これにより、十分な量の導電性接合材6を設けることによって導通不良を回避しつつ、隣り合う第1パッド31同士や隣り合う第2パッド24同士の不当な導通を抑制することができる。したがって、サーマルプリントヘッドA1の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、第2パッド24の副走査方向yの寸法y24は、隣り合う第2パッド24の主走査方向xにおける間隔24よりも大きい。これは、溶融した導電性接合材6を第2パッド第2部242へと付着させ、隣の第2パッド24へと向かうことを抑制するのに好ましい。
【0050】
また、第2パッド24の副走査方向yの寸法y24は、パッド第1領域P1の副走査方向yの寸法yP1の1/2以上である。パッド第1領域P1は、第1パッド31と第2パッド第1部241とが厚さ方向z視において重なる領域であり、導電性接合材6の導電性接合材第1部61が第1パッド31と第2パッド第1部241とによって挟まれる領域である。このようなパッド第1領域P1に対する大きさが上述の関係であることにより、パッド第1領域P1における導通接合を十分に達成可能な程度の導電性接合材6を設けた場合に、副走査方向y上流側に溢れた溶融した導電性接合材6を第2パッド第2部242により確実に付着させることができる。
【0051】
また、第2パッド24の副走査方向yの寸法y24は、第1基板第1部141の副走査方向yの寸法y141よりも大きい。これは、溶融した導電性接合材6が第1基板第1部141に意図せず滞留してしまうことを回避して、第2パッド第2部242により多くの溶融した導電性接合材6を付着させるのに有利である。
【0052】
また、第2パッド24の副走査方向yの寸法y24は、第1パッド31の副走査方向yの寸法y31の1/2以上である。このような構成によっても、副走査方向y上流側に溢れた溶融した導電性接合材6を第2パッド第2部242により確実に付着させる効果を高めることができる。
【0053】
第2パッド第2部242が厚さ方向z視において矩形状であることにより、第2パッド第2部242に付着した導電性接合材第2部62を厚さ方向z視において矩形状とすることができる。また、本実施形態の導電性接合材第2部62は、膨出形状であり、4つの稜線状部621を有するものである。このような形状の稜線状部621は、溶融状態の導電性接合材6が、表面張力と重力とのバランスによって拘束された結果、形成される。
【0054】
すなわち、導電性接合材第2部62の形成過程において、所定量の溶融した導電性接合材6が溢れて第2パッド第2部242に付着するものの、表面張力と重力とのバランスによって安定した膨出形状を維持する。4つの稜線状部621は、このようなバランスによって膨出形状が維持された場合に、主に表面張力の作用によって明瞭に形成される部位である。
【0055】
図11は、本実施形態とは異なり、第2パッド第2部242の副走査方向yの寸法y242が寸法x242よりも短いような比較例のサーマルプリントヘッドXを示している。この比較例においては、パッド第1領域P1から溶融した導電性接合材6が溢れてくると、第2パッド第2部242に付着する。しかし、第2パッド第2部242の副走査方向yの寸法y242が十分ではないため、溢れた導電性接合材6が厚さ方向z下方に大きく膨出した形状となる。この場合、表面張力を超えて重力が作用することとなり、第2パッド第2部242に付着した溶融した導電性接合材6が、ますます厚さ方向z下方に膨出する。このため、本来は、パッド第1領域P1において第1パッド31と第2パッド第1部241との間に滞留すべき導電性接合材6が、第2パッド第2部242の側へと吸い出されることが懸念される。この結果、パッド第1領域P1における導電性接合材6の量が不足し、図示したような第1パッド31と第2パッド第1部241との接合不良が発生しうる。
【0056】
本実施形態においては、より多くの量の導電性接合材6を第2パッド第2部242に付着させつつ、重力と表面張力とがバランスされた形状の導電性接合材第2部62が形成されることにより、第1パッド31と第2パッド第1部241との接合をより確実に行うことが可能であり、サーマルプリントヘッドA1の信頼性を向上させることができる。
【0057】
図12は、第2基板2の変形例を示している。変形例においては、複数の第2パッド24が第2パッド24Aを含んでいる。
【0058】
第2パッド24Aは、第1基板1の第1パッド31と対面し、導電性接合材6によって第1パッド31と接合されるものの、第2基板2における導通経路に接続されていない、非導通のパッドである。
【0059】
このような変形例によっても、サーマルプリントヘッドA1の信頼性を向上させることができる。また、非導通の第2パッド24Aを設けることにより、絶縁距離を確保すべき第2パッド24同士の距離を拡大したり、第1基板1と第2基板2との接合強度を高めたりするといった効果を奏する。
【0060】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0061】
〔付記1〕
第1基板と、
電極層と、
主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記電極層は、前記第1基板の副走査方向端に位置する第1基板第1端縁に沿って配置された複数の第1パッドを有し、
前記複数の第1パッドに導電性接合材を介して接合される複数の第2パッドを有する配線層および当該配線層を支持する絶縁材料からなり可撓性を有する支持層を具備する第2基板をさらに備えており、
前記第2パッドは、前記第1基板の厚さ方向視において前記第1基板と重なる第2パッド第1部と、前記第1基板第1端縁から副走査方向に露出する第2パッド第2部と、を有し、
前記第2パッド第2部の副走査方向寸法は、前記第2パッド第2部の主走査方向寸法よりも大きい、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記導電性接合材は、前記第2パッド第1部に付着した導電性接合材第1部と、前記第2パッド第2部に付着した導電性接合材第2部と、を有する、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記第2パッド第2部の副走査方向寸法は、前記複数の第2パッドの主走査方向における間隔よりも大きい、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第2パッド第2部の副走査方向寸法は、前記厚さ方向視において前記第1パッドと前記第2パッドとが重なるパッド第1領域の副走査方向寸法の1/2以上である、付記2または3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記第1基板は、副走査方向において前記第1基板第1端縁と前記第1パッドとの間に位置する第1基板第1部を有し、
前記パッド第2部の副走査方向寸法は、前記第1基板第1部の副走査方向寸法よりも大きい、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記2パッド第2部の副走査方向寸法は、前記第1パッドの主走査方向寸法の1/2以上である、付記4または5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第1パッドの主走査方向寸法は、前記第2パッドの主走査方向寸法よりも大きい、付記2ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記第2パッドは、前記厚さ方向視において矩形状である、付記2ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記導電性接合材第2部は、膨出形状であり且つ前記第2パッド第2部の四隅から延びる4つの稜線状部を有する、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記第2パッドは、厚さ方向に貫通する孔を有さない、付記2ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記第2基板は、前記配線層の一部を覆う絶縁層を有しており、
前記複数の第2パッドは、前記配線層のうち前記絶縁層から露出した部位である、付記2ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記絶縁層は、前記第2パッドに接する絶縁層第1端縁を有し、
前記配線層は、主走査方向において隣り合う前記絶縁第1端縁の端部に繋がり且つ前記絶縁層に覆われた曲線端縁を有する、付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記複数の第2パッドは、電気導通に用いられない非導通第2パッドを含む、付記11または12に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記第1基板は、セラミックスからなる、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記電極層および前記抵抗体層は、金属を含むペーストを印刷および焼成することにより形成されている、付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
前記電極層は、Agを含む、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記17〕
前記配線層は、Cuを含む、付記1ないし16のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。