特開2019-166790(P2019-166790A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

特開2019-166790塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法
<>
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000003
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000004
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000005
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000006
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000007
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000008
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000009
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000010
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000011
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000012
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000013
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000014
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000015
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000016
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000017
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000018
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000019
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000020
  • 特開2019166790-塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-166790(P2019-166790A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20190906BHJP
   B29C 39/12 20060101ALI20190906BHJP
   B29C 39/28 20060101ALI20190906BHJP
   B29C 44/06 20060101ALI20190906BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20190906BHJP
【FI】
   B29C44/00 A
   B29C39/12
   B29C39/28
   B29C44/06
   B29K105:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-57999(P2018-57999)
(22)【出願日】2018年3月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AA31
4F202AB02
4F202AC05
4F202AD11
4F202AG03
4F202AH17
4F202AM33
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB22
4F202CK19
4F202CL02
4F202CN01
4F204AA31
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD11
4F204AG03
4F204AH17
4F204AM33
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB22
4F204EF05
4F204EK01
4F204EK21
4F204EW22
4F214AA31
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD11
4F214AG03
4F214AH17
4F214AM33
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB22
4F214UF05
4F214UK31
4F214UW22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バリ除去を円滑になし得、ポリウレタン発泡成形品の表面側を覆う塗膜を確実に存在させる、品質良好な塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタン発泡成形品の発泡成形で、その表面8bに塗膜8FLが被覆一体化する塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法において、型開状態下、パーティングラインを形成する下型型合せ面25にも及んで下型キャビティ面20に塗料を吹付けて塗膜8FLを形成した後、ポリウレタン発泡原料Gを下型キャビティ面20上に注入し、次に下型型合せ面25とその上方側型合せ面35間を透かして型閉じし、続いて、下型型合せ面25上の塗膜8FLへポリウレタン発泡原料Gが付く状態にして発泡成形を進行させ、その後、透かしをなくす方向の型締めをし、下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料Gとを一緒に圧縮硬化させたバリを形成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡成形品の発泡成形で、その表面に塗膜が被覆一体化する塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法において、
型開状態下、パーティングラインを形成する下型型合せ面にも及んで下型キャビティ面に塗料を吹付けて塗膜を形成した後、ポリウレタン発泡原料を下型キャビティ面上に注入し、次に前記下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じし、続いて、前記下型型合せ面上の塗膜へ前記ポリウレタン発泡原料が付く状態にして発泡成形を進行させ、その後、前記透かしをなくす方向の型締めをし、前記下型型合せ面上の塗膜とこれに付いた該ポリウレタン発泡原料とを一緒に圧縮硬化させたバリを形成して、塗膜が被覆一体化するポリウレタン発泡成形品を発泡成形することを特徴とする塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
前記下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じした状態で、前記下型型合せ面上の塗料へ前記ポリウレタン発泡原料が付くように発泡成形を進行させ、且つその後の発泡成形の進行途中で、前記下型型合せ面と前記上方側型合せ面間を透かしていた隙間をより大きく広げる操作を行い、その後、前記型締めをする請求項1記載の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
前記下型型合せ面上の塗膜とこれに付いた前記ポリウレタン発泡原料とを一緒に圧縮硬化させた前記バリを形成して、前記塗膜が被覆一体化する前記ポリウレタン発泡成形品を発泡成形した後、脱型し、しかる後、前記バリを取り除く請求項1又は2に記載の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン発泡成形品の成形で塗膜を被覆一体化する塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ポリウレタン発泡成形品の表面を塗料の塗膜で覆った車両部品がある。このような塗膜付きポリウレタン発泡成形品は、例えばその発泡成形で、型キャビティ面に予め付与した塗膜を転写する方法でも造ることができる。型キャビティ面に塗料を塗布した後、同じキャビティ内でポリウレタン発泡成形品を成形し、その成形時に塗膜を被覆一体化する製法であり、改良発明もいくつか提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−60714号公報
【特許文献2】特開平2−248218号公報
【特許文献3】特公平5−79005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3の発明は、通常のプラスチック成形と同様、型合せ面同士を密着させてパーティングラインにできるバリをできるだけ出さないようにしている。
しかるに、車両に搭載されるエンジンのエンジン本体の側面に直か当て又は近接させるエンジンインシュレータになると、特許文献1〜3等を含む従来技術の製法は対応困難になる。
該エンジンインシュレータは、エンジン本体にエンジンオイルが付着していると、エンジンインシュレータ本体のポリウレタン発泡成形品が損傷を受け易い。この損傷を回避すべく、ポリウレタン発泡成形品8の取付けで、ボンネットを開けて見える外面8a以外のエンジン側当たり面8b(表面)を、エンジンオイル等に耐性のある塗膜8FLで全て覆った図1図2のような塗膜付きポリウレタン発泡成形品8が求められる。斯かる塗膜付きポリウレタン発泡成形品8を、バリを抑えて発泡成形して造るとなると、エンジン側当たり面8bに形成する塗膜8FLをポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85にまで全て良好に施すのは難しく、歩留まりが低下する。反対に、ポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85にも塗膜用塗料が行き届くよう塗布すると、出来たバリBLは図18の鎖線図示のごとくちぎり切ろうとしても、その力に追随して該バリBLが伸びて除去困難になる。
【0005】
耐油性が要求された塗膜8FLは、図19(イ)のごとくバリBLを取り除こうと同図(ロ)の矢印方向に引っ張ってもその力方向に伸び、バリ除去が容易でない。特に脱型直後は塗膜8FLが温められており柔らかく、余計伸びやすい。必要な製品部BMまで破れて、不良品発生に至る場合もある。これを解決すべく、ハサミ等でカットすることが考えられるが、そうすると手間取って作業工数大になる。しかも、前記塗膜付きポリウレタン発泡成形品8には湾曲部86が存在し、その周縁に沿ってカットするのは至難である。マスキングするにしても難しい。
とりわけ、エンジンインシュレータ用ポリウレタン発泡成形品8FMは、その外面周縁85にまで塗膜8FLが存在しないと、エンジンオイル等が付着して悪さをし、支障をきたす。塗膜付きポリウレタン発泡成形品8の発泡成形で、外面周縁85で塗膜8FLが少しでも欠ければ不良になる。また前記ハサミ等のバリ取りで、切り取り過ぎても不良になる問題があり、逆にバリが残っても見栄えを損なう問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、バリ除去を円滑になし得、しかも、そのバリ除去によって、ポリウレタン発泡成形品の表面側を覆う塗膜を確実に存在させ、品質良好な塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、ポリウレタン発泡成形品の発泡成形で、その表面に塗膜が被覆一体化する塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法において、型開状態下、パーティングラインを形成する下型型合せ面にも及んで下型キャビティ面に塗料を吹付けて塗膜を形成した後、ポリウレタン発泡原料を下型キャビティ面上に注入し、次に前記下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じし、続いて、前記下型型合せ面上の塗膜へ前記ポリウレタン発泡原料が付く状態にして発泡成形を進行させ、その後、前記透かしをなくす方向の型締めをし、前記下型型合せ面上の塗膜とこれに付いた該ポリウレタン発泡原料とを一緒に圧縮硬化させたバリを形成して、塗膜が被覆一体化するポリウレタン発泡成形品を発泡成形することを特徴とする塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法にある。請求項2の発明たる塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法は、請求項1で、下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じした状態で、前記下型型合せ面上の塗料へ前記ポリウレタン発泡原料が付くように発泡成形を進行させ、且つその後の発泡成形の進行途中で、前記下型型合せ面と前記上方側型合せ面間を透かしていた隙間をより大きく広げる操作を行い、その後、前記型締めをすることを特徴とする。請求項3の発明たる塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法は、請求項1又は2で、下型型合せ面上の塗膜とこれに付いた前記ポリウレタン発泡原料とを一緒に圧縮硬化させた前記バリを形成して、前記塗膜が被覆一体化する前記ポリウレタン発泡成形品を発泡成形した後、脱型し、しかる後、前記バリを取り除くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法は、道具を使わずして作業者の手で簡便に且つスピーディにバリを取り除くことができ、バリ除去の低コスト化が図れるだけでなく、バリ除去跡にバリを残さず、さらにポリウレタン発泡成形品の表面側を覆う必要な塗膜を確実に存在させることができるなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1で、エンジン本体にあてがう当たり面側から見た塗膜付きポリウレタン発泡成形品の斜視図である。
図2】外面側から見た塗膜付きポリウレタン発泡成形品の斜視図である。
図3】型開状態で下型に塗料を塗布する姿態の説明断面図である。
図4】下型にポリウレタン発泡原料を注入する説明断面図である。
図5図4の後、下型型合せ面と上型型合せ面間を透かして型閉じする様子の説明断面図である。
図6】下型型合せ面上の塗膜へポリウレタン発泡原料が進行する様子の拡大断面図である。
図7図6の発泡成形が進行している全体説明断面図である。
図8】透かしをなくす方向の型締めをし、図1のVIII-VIII線矢視による塗膜付きポリウレタン発泡成形品の発泡成形を終えた説明断面図である。
図9図8の部分拡大図である。
図10】他態様の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法で、図7の後の発泡成形の進行途中で、隙間を広げる操作を行った説明断面図である。
図11図10の部分拡大図である。
図12】バリ付き製品の斜視図である。
図13】(イ)がバリ付き製品の部分断面図で、(ロ)が(イ)のバリが取り除かれた塗膜付きポリウレタン発泡成形品の部分断面図である。
図14】バリ付き製品からバリを取り除く姿態の説明斜視図である。
図15】実施形態2で、下型にポリウレタン発泡原料の注入を終えた説明断面図である。
図16図6に対応し、下型型合せ面上の塗膜へポリウレタン発泡原料が進行する様子の拡大断面図である。
図17図11に対応し、図16の後の発泡成形の進行途中で、隙間を広げる操作を行った説明断面図である。
図18】従来技術の説明斜視図である。
図19】従来技術の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法について詳述する。
(1)実施形態1
図1図14は本発明の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法の一形態で、塗膜付きポリウレタン発泡成形品をエンジン本体の側面に取付けるエンジンインシュレータに適用する。図1,図2はその塗膜付きポリウレタン発泡成形品の斜視図、図3は型開状態で下型に塗料を塗布する断面図、図4は下型にポリウレタン発泡原料を注入する断面図、図5図4の後、下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じした断面図、図6は下型型合せ面の塗膜上へポリウレタン発泡原料が進行する断面図、図7図6の発泡成形が進行している全体説明断面図、図8は型締めをし、発泡成形を終えた説明断面図、図9図8の部分拡大図、図10は他態様の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法で、隙間を広げる操作を行った断面図、図11図10の部分拡大図、図12はバリ付き製品の斜視図、図13図14はバリ除去の様子を描く断面図,斜視図を示す。各図は図面を判り易くするため発明要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を簡略化又は省略する。
【0011】
塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法は、ポリウレタン発泡成形品8FMの発泡成形で、その表面8bに塗料Pの塗膜8FLが被覆一体化する塗膜付きポリウレタン発泡成形品8を得る製法である。下型キャビティ面20に塗料Pを吹付けた後、該下型キャビティ面20上へポリウレタン発泡原料Gを注入して型閉じし、その後、ポリウレタン発泡成形品8FMの発泡成形で、その表面8bに塗料Pの塗膜8FLを転写一体化して塗膜付きウレタン発泡成形品8を造る。
【0012】
本実施形態の塗膜付きウレタン発泡成形品8は、エンジン本体の側面に当接(又は近接)させて、エンジン音を小さくする図1,図2ごとくの吸音用インシュレータとする。エンジン本体への取付けで、ボンネットを開けた際に見えるポリウレタン発泡成形品8の外面8aはそのままにするが、該外面8aを除くエンジン本体側表面8b全てが厚みtの塗膜8FLで被覆された板状インシュレータとする。塗膜8FL用の塗料Pは、主部たる吸音性を有するポリウレタン発泡成形品8FMをエンジン本体に付着したオイル等から保護する耐油性,撥水性のものである。ここでの塗料Pは、ポリウレタン発泡成形品8FMと親和性の良い一液性のウレタン系塗料を用いる。図1,図2中、符号82は外面8aから頂面84へ向かう立壁、符号83は斜面、符号86は湾曲部で、エンジン本体側面への当たり面8b側はその形状に合わせた凹凸になる。
【0013】
塗膜付きウレタン発泡成形品8用の発泡成形型1は、図5図7のように下型2と、その型合せ面25とでパーティングラインを形成する上方側型合せ面たる上型型合せ面35を有する上型3と、を備える。尚、図示を省くが、上方側型合せ面は中型が存在するとその型合せ面になる場合もある。
下型2にはエンジン本体側面に合わせた図3のような断面凹形の下型キャビティ面20が形成される一方、上型3のキャビティ面30は、塗膜付きウレタン発泡成形品8の外面8aに合わせた平らな面とする。そして、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を透かして型閉じすることができるよう、下型2に透かし手段4たる油圧シリンダ5(アクチュエータ)を組み込んでいる。下型キャビティ面20と下型型合せ面25が接する角部23よりも外方の下型型合せ面25上にロッド52が出没するよう油圧シリンダ5が設置される(図3)。シリンダ本体51から進退動するロッド52を図6の進出状態にし、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を透かして型閉じ設定でき、さらに、両型合せ面25,35間を透かしていた隙間ε2を、図11のごとくより大きく広げる隙間ε3への設定もできる。一方、ロッド52を退動させれば、下型2,上型3の両型合せ面25,35を型締め密着でき、バリが介在すれば、型締めで圧縮し、図9のような薄膜状のバリ9に押し潰すことのできる発泡成形型1になっている。
【0014】
前記発泡成形型1を用いて、塗膜付きウレタン発泡成形品8が例えば次のように製造される。
まず、発泡成形型1の型開状態下、下型キャビティ面20に離型剤(図示せず)を吹き付けた後、パーティングラインを形成する下型型合せ面25にも及んで下型キャビティ面20に塗料Pを吹付ける(図3)。下型キャビティ面20と下型型合せ面25との境界まで確実に行き届くよう、吹付けた塗料Pは下型型合せ面25にも図3のように載せつつ、下型キャビティ面20の全域に塗料Pを吹き付ける。ポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85にまで塗膜8FLを形成すべく、図3の実線図示で吹付ける塗料Pの噴霧ホースPHを紙面垂直方向に動かし、下型型合せ面25に塗料Pが載る形で、下型キャビティ面20との境の下型角部23の全周に亘って塗布する。塗料Pはやがて硬化し、下型キャビティ面20上と共に下型型合せ面25上にも角部23の全周域に亘って載る塗膜8FLを形成する。
【0015】
次に、下型キャビティ面20上(詳しくは塗膜8FL上)にウレタン発泡成形品用軟質ポリウレタン発泡原料G(以下、単に「ポリウレタン発泡原料」という。)を、可動ノズルNLで注入する(図4)。ここでのポリウレタン発泡原料Gはポリエーテル系のウレタン原料とし、発泡成形後のポリウレタン発泡成形品8FMの密度が密度150kg/mとなるように調整されている。尚、塗料Pは下型型合せ面25にも及んで塗布したが、ポリウレタン発泡原料Gについては下型型合せ面25にまで付与するに及ばない。
【0016】
次いで、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を透かして型閉じする(図5)。型閉じに先立ち、予め図4のごとくロッド52を進出させる。可動側分割型の上型3を下動させて型閉じすると、上型3がロッド52の頂部に当って止まる。ロッド52が進出した状況下の型閉じで、図6のように下型型合せ面25と上型型合せ面35間に0.1〜0.2mm(ここでは、0.14mm)の透かした隙間ε2を確保する。
【0017】
続いて、前記隙間ε2が確保された型閉じ状態を保って、下型型合せ面25上の塗膜8FLへ前記ポリウレタン発泡原料Gが付く状態まで発泡成形を進める。下型キャビティ面20に注入された前記ポリウレタン発泡原料Gは発泡倍率の高い発泡成形品を造る。そのため、型を閉じた図5の時点から発泡を進めて、時間経過に伴い、図6,図7のごとく下型型合せ面25上に載る塗膜8FLへポリウレタン発泡原料Gが付く状態に至るように発泡成形を進めることができる。図6の上向き矢印方向への発泡が進み、型閉じ後のキャビティCを充満したポリウレタン発泡原料Gは、中からの発泡におされて、前記隙間ε2を形成した下型型合せ面25と上型型合せ面35間にはみ出す。図6のごとく塗膜8FL上に発泡硬化前の液状ポリウレタン発泡原料Gがふくれ出て、塗膜8FLとポリウレタン発泡原料Gの第一はみ出し部G1との積層部分ができる。
【0018】
そして、図5の型閉じから図6の発泡成形へと進め、その後、前記透かしをなくす方向の型締めをする。型締めにより、下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料G(第一はみ出し部G1)とを一緒に圧縮硬化させたバリ9の形成と同時進行で、塗膜8FLが被覆一体化するポリウレタン発泡成形品8FMの発泡成形終結へと向かう(図8,図9)。図9の白抜矢印方向の型締めに伴って、型閉じ下の下型型合せ面25と上型型合せ面35間の前記隙間ε2が、該隙間よりも小さな隙間ε1へと移行する。下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料G(第一はみ出し部G1)とを一緒に圧縮することで、型閉じ下の下型型合せ面25上の塗膜8FLとポリウレタン発泡原料Gのはみ出し部G1との積層部分は、両者が圧縮一体化した剛性大のバリ9になる。図9のバリ9で、符号91が塗膜の構成部を示し、符号92がポリウレタン発泡原料の構成部で、詳しくは第一はみ出し部G1による構成部92aを示す。
型締めでポリウレタン発泡原料Gの気泡が追い出されて、該ポリウレタン発泡原料Gが圧縮,薄膜化し、ウレタン密度大の剛性が上がったバリ9(積層バリ)に変わる。エンジン側表面8bを塗膜8FLが被覆一体化したポリウレタン発泡成形品8の発泡成形を終えると、ポリウレタン発泡成形品8FMは、薄膜状のバリ9(積層バリ)が、図9のごとく外面周縁85でつながったバリ付き製品7になる。図9中、符号88は塗膜8FLの端面、符号89はその端面88上のポリウレタン発泡成形品8FMの周縁部分を示す。
【0019】
しかる後、塗膜付きポリウレタン発泡成形品8のバリ付き製品7を、脱型して取出す(図12)。ポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85でつながるバリ9(図9)は、作業者が手で図13,図14の矢印のごとく引き裂くようにして、外面8aの周縁85に沿って切り離される。このバリ除去によって所望の塗膜付きポリウレタン発泡成形品8が得られる。
【0020】
ちなみに、本実施形態は図5の型閉じから図6,図7の発泡成形まで進めた後、隙間ε2をなくす方向の型締めへと移行したが、図6の発泡成形まで進めた後、隙間ε2を大きく広げて時間をおいてから、型締めするとより好ましくなる。下型型合せ面25上の塗料Pへポリウレタン発泡原料Gが付く図6,図7の状態まで発泡成形を進めた後、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を透かしていた隙間ε2をより大きく広げる操作を行い、発泡成形をさらに進行させ、その後、型締めする製法である。図6の発泡成形まで進めた後、隙間ε2を隙間ε3へと大きく広げた図10の段階では、発泡成形が未だ完結するに至っておらず、下型型合せ面25に載る図6の第一はみ出し部G1上に図11のように更なる液状ポリウレタン発泡原料の第二はみ出し部G2が乗り上げるとともに発泡成形中に発生したガスが抜ける。尚、図6の隙間ε2の状態から隙間ε3へ広げた直後の図10は、キャビティC内の一部を発泡成形終了の断面表示しながら、残りは液状ポリウレタン発泡原料Gが発泡,充満して、第一はみ出し部G1が下型型合せ面25上にあふれ出た図であり、発泡成形が未だ完結に至っていないことを便宜的に描いたものである。
【0021】
隙間ε2を隙間ε3に広げて、更なる第二はみ出し部G2のポリウレタン発泡原料Gが乗り上げることによって、その後の型締めを終えると、第二はみ出し部G2の厚みが増した分、圧縮,薄膜化しウレタン密度が増大し、剛性もより上がったバリ9が出来る。単に塗膜8FLだけからなるバリ(例えば図19のバリBL)と比較して剛性の違いが一層際立つ。したがって、ポリウレタン発泡成形品8の外面周縁85に沿ってできたバリ9が伸びることなく、該バリ9の切り離しをより円滑除去でき、バリ付き製品7から所望の塗膜付きポリウレタン発泡成形品8を得ることができる。
【0022】
(2)実施形態2
本実施形態は実施形態1の透かし手段4たる油圧シリンダ5に代え、図15図17のような着脱自在の薄板状シム6(スペーサ)の透かし手段4を採用した塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法とする。
実施形態1と同様、まず型開状態下、パーティングラインを形成する下型型合せ面25にも及んで下型キャビティ面20に塗料Pを塗布し塗膜8FLの形成後、ポリウレタン発泡原料Gを下型キャビティ面20の塗膜8FL上に注入する(図15)。その後、型閉じするが、これに先立ち、上型キャビティ面30との接合部分から少し外方に離れた上型型合せ面35に、型閉じで隙間ε2を確保するシム6が係止具(図示せず)によって取付けられる。そうして、可動側分割型の下型2を上動させ、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を隙間ε2に透かして型閉じする。次いで、下型型合せ面25上の塗膜8FLへ図16のごとくポリウレタン発泡原料Gが付く状態にまで発泡成形を進行させる。
【0023】
その後、前記透かしをなくす方向の型締めをし、下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料Gとを一緒に圧縮硬化させたバリ9を形成して、塗膜8FLが被覆一体化するポリウレタン発泡成形品8を発泡成形することも可能ではある。しかるに、ここでは下型型合せ面25上の塗膜8FLへポリウレタン発泡原料Gが付いた状態後の発泡成形の進行途中で、下型型合せ面25と上型型合せ面35間を透かしていた隙間ε2をより大きな隙間ε3へと広げる操作を行う(図17)。下型2を下動させて隙間ε3へと広げる操作に併せて、シム6を上型3から抜き取る。この段階では、図10と同様に発泡成形がまだ完結していない。上下型の型合せ面25,35間の隙間ε2が隙間ε3へと大きく広がることによって、図16で示す下型型合せ面25上の塗膜8FLに載った第一はみ出し部G1たるポリウレタン発泡原料Gの上に、更に第二はみ出し部G2たる液状ポリウレタン発泡原料Gが乗り上げて(図17)、この部分のバリ9に占めるポリウレタン発泡原料Gの厚みが増す。
【0024】
その後、隙間ε3が隙間ε2よりも小さくなるまで型締めをし、下型型合せ面25上の塗膜8FLと、これに載った先のポリウレタン発泡原料G1と、この上に図17で示す更に乗り上げたポリウレタン発泡原料G2と、を圧縮硬化させてバリ9を形成すると共に、塗膜8FLが被覆一体化するポリウレタン発泡成形品8の発泡成形を完結させる(図9参照)。しかる後、脱型し、塗膜付きポリウレタン発泡成形品8にバリ9がついたバリ付き製品7を得る(図12参照)。
バリ付き製品7に係るバリ9は、図16で示す下型型合せ面25上の塗膜8FLに載ったポリウレタン発泡原料G1の上に、図17のように更にポリウレタン発泡原料G2が乗り上げて、ポリウレタン発泡原料Gの厚みが増す分、型締めでウレタン密度が大きく、剛性が上がったバリ9になる。該バリ9は、塗膜8FLのみからなるバリとは剛性が大きく異なる。脱型後、ポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85でバリ9を切り離して、所望の塗膜付きポリウレタン発泡品8を得る。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。図15図17で、実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0025】
(3)効果
このように構成した塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造方法は、バリ付き製品7からバリ9をスムーズに且つ綺麗に切り取って塗膜付きポリウレタン発泡成形品8を製造でき、作業性向上,品質向上に貢献できる。
パーティングラインを形成する下型型合せ面25にも及んで下型キャビティ面20に塗料Pを吹付けて塗膜8FLを形成するので、ポリウレタン発泡成形品8FMのエンジン側表面8bを被覆するなかでも欠けが生じやすい外面周縁85にまで塗膜8FLを良好に施すことができる。下型キャビティ面20との境にあたる下型型合せ面角部23の全周に亘って塗料Pを、下型型合せ面25にも載る形で吹付けて塗膜8FLを形成すると、ポリウレタン発泡成形品8FMの外面8aの全周縁85にまで塗膜8FLを施すことができるので、ポリウレタン発泡成形品8FMのエンジン側表面8bを覆う塗膜8FLに欠け等の品質不良が起こらない。
【0026】
また、下型型合せ面25とその上型型合せ面35間を透かして型閉じし、発泡成形すると、透かした隙間の存在で、下型型合せ面25上の前記塗膜8FLへポリウレタン発泡原料Gが付く状態にして発泡成形を進行させることができる。そうしてから、透かしをなくす方向の型締めをし、下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料Gとを薄く圧縮硬化させたバリ9を形成して、塗膜8FLが被覆一体化するポリウレタン発泡成形品8FMを発泡成形すると、バリ9の剛性を上げることができる。型締めをし、下型型合せ面25上の塗膜8FLとこれに付いたポリウレタン発泡原料G1とを一緒に圧縮硬化させたバリ9を形成するが、ポリウレタン発泡原料G1側は押し潰され、同じく塗膜8FLが押し潰されて両者が結合一体化するバリ9になる。その過程でポリウレタン発泡原料G側の気泡が放出して圧縮,薄膜化し、ウレタン密度が大で剛性が上がったバリ9(積層バリ)ができる。
このように、脱型後のバリ付き製品7は、その外面周縁85で剛性大で伸びないバリ9が接続するので(図9)、手でも該外面周縁85の箇所でバリ8の切り離しが楽なバリ付き製品7になる。湾曲部86が存在しても、カッターによるバリ除去と違って手間がかからず、簡単にバリ除去できる。しかも、バリ9はポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85で薄膜状となっているので、外面周縁85に達する塗膜8FLを残し、バリ9を綺麗に取り除いた品質良好な塗膜付きポリウレタン発泡成形品8を得ることができる。剛性大のバリ9になるので、図18の鎖線図示のごとく、ちぎり切ろうとした際、その力に追随して該バリBLが伸びて除去困難になることも勿論ない。
【0027】
加えて、前記下型型合せ面とその上方側型合せ面間を透かして型閉じした状態で、下型型合せ面25上の塗膜8FLへポリウレタン発泡原料G1が付く状態にして発泡成形を進行させ、さらにその発泡成形の進行途中で、下型型合せ面25と上型型合せ面30間を透かしていた隙間ε2をより大きく広げる操作を行うと、バリ9の剛性を一段と上げることができ、脱型後のバリ9の切り離しが一層スムーズに進む。
発泡成形は未だ終了しておらず、図6(又は図16)の状態から図11(又は図17)の隙間ε3に広げることによって、下型型合わせ面25の塗膜8FLに付いたポリウレタン発泡原料G1上へ更なるポリウレタン発泡原料G2が乗り上げる。下型型合せ面25上のポリウレタン発泡原料G側の厚みが増す分、型締めにより圧縮,薄膜化しウレタン密度が一層大きくなり、剛性もより上がったバリ9が出来る。薄膜で剛性の高いバリ9となるので、ポリウレタン発泡成形品8FMの外面周縁85に沿ってできたバリ9の切り離しがより簡単且つ除去後の外面周縁85の見栄えも良くなり、作業性向上,品質向上に有益となる。
【0028】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。発泡成形型1,透かし手段4,塗膜付きポリウレタン発泡成形品8,バリ9等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、エンジンインシュレータの製造を例にしたが、エンジンカバーなど、その他の塗膜付きポリウレタン発泡成形品の製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 発泡成形型
2 下型
20 下型キャビティ面
25 下型型合せ面
35 上型型合せ面(上方側型合せ面)
4 透かし手段
8 塗膜付きポリウレタン発泡成形品
8FL 塗膜
8FM ポリウレタン発泡成形品
8b 表面(エンジン本体側面への当たり面)
9 バリ(積層一体バリ)
P 塗料
G ポリウレタン発泡原料
G1 第一はみ出し部(ポリウレタン発泡原料)
ε1,ε2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19