未満の成分(III)を55〜65%の割合で含む(ただし、前記割合は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定によって得られた分子量分布曲線から求められる割合である。)プロピレン系重合体。
プロピレンを重合させて、またはプロピレンと他の重合性単量体とを共重合させて、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が7〜10dl/gであるプロピレン系重合体成分(H)を、前記プロピレン系重合体に占める割合が3〜10質量%となるように製造する工程と、
プロピレンを重合させて、またはプロピレンと他の重合性単量体とを共重合させて、前記プロピレン系重合体成分(H)よりも分子量の低いプロピレン系重合体成分(L)を製造する、1つまたは2つ以上の工程とを含む
プロピレン系重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るプロピレン系重合体等をさらに詳細に説明する。
[プロピレン系重合体]
本発明のプロピレン系重合体は、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が80〜250g/10分であり、
分子量が1.0×10
6以上の成分(I)を1.0〜5.0%の割合で、
分子量が1.0×10
4未満の成分(II)を5〜15%の割合で、および
分子量が1.0×10
4以上1.0×10
5未満の成分(III)を55〜65%の割合で含む(ただし、前記割合は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」とも記載する。)による測定によって得られた分子量分布曲線から求められる割合である。)
ことを特徴としている。
【0018】
本発明のプロピレン系重合体の、ISO 1133−1に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下「MFR」とも記載する。)は、80〜250g/10分であり、好ましくは100〜220g/10分であり、より好ましくは130〜200g/10分である。
【0019】
MFRが前記範囲よりも過大であると、プロピレン系樹脂組成物の強度または硬度が低下してしまい、MFRが前記範囲よりも過小であると、プロピレン系重合体およびこれを含むプロピレン系樹脂組成物の流動性が低下してしまう。
【0020】
プロピレン系重合体のMFRは、従来公知の手法、たとえば重合体製造時の重合触媒の種類、反応条件、または重合系内への水素の添加量の調整により、上記範囲に調整することができる。
【0021】
本発明のプロピレン系重合体は、
分子量が1.0×10
6以上の成分(I)を1.0〜5.0%、好ましくは1.2〜3.0%、より好ましくは1.5〜2.5%の割合で
分子量が1.0×10
4未満の成分(II)を5〜15%、好ましくは5〜10%の割合で、および
分子量が1.0×10
4以上1.0×10
5未満の成分(III)を55〜65%、好ましくは60〜65%の割合
で含んでいる。ただし、前記割合は、いずれも後述する実施例で採用した条件下でのGPC法による測定によって得られた分子量分布曲線から求められる割合である。
【0022】
分子量が1.0×10
6以上の前記成分(I)の割合が前記範囲よりも過大であると、プロピレン系重合体およびこれを含むプロピレン系樹脂組成物の流動性が低下してしまい、前記成分(I)の割合が前記範囲よりも過小であると、プロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物の剛性が低下してしまう。
【0023】
分子量が1.0×10
4未満の前記成分(II)の割合が前記範囲よりも過大であると、降伏強度などの靭性が低下してしまい、前記成分(II)の割合が前記範囲よりも過小であると、特に、高せん断速度における流動性が低下してしまう。
【0024】
分子量が1.0×10
4以上1.0×10
5未満の前記成分(III)の割合が前記範囲よりも過大であると、プロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物の強度または硬度が低下してしまい、前記成分(III)の割合が前記範囲よりも過小であると、プロピレン系重合体およびこれを含むプロピレン系樹脂組成物の流動性が低下してしまう。
【0025】
前記成分(I)、(II)および(III)の割合は、たとえば、重合条件を二段階以上に分割して、前記成分(I)、(II)および(III)を含むプロピレン系重合体成分を各成分の割合を調整しながら連続して製造することによって、上記範囲に調整することができる。
【0026】
本発明に係るプロピレン系重合体を用いることにより、流動性が高く、かつ機械的物性にも優れ(具体的には、耐衝撃性と、弾性率、熱ひずみ温度、硬度等により評価される剛性とがバランスよく優れ)、射出成形用の材料として好ましく用いることのできるプロピレン系材料を提供することができる。
本発明者らは、本発明に係るプロピレン系重合体によりこのような効果が発現する理由を、以下のように推察している。
【0027】
プロピレン系重合体を構成するプロピレン系重合体成分のうち、前記成分(I)のような高分子量成分は、射出成形においてせん断配向層を厚くする。せん断配向層は、結晶性が高いので、これを含むプロピレン系樹脂組成物ないし成形体の弾性率、および熱ひずみ温度を高める。その一方で、高分子量成分は、プロピレン系重合体ないしプロピレン系樹脂組成物の流動性を低下させてしまう。流動性の低下は、前記成分(II)のような低分子量成分を併用することにより抑制できるが、低分子量成分が多すぎると、結晶間のタイ分子が減るため、これを含むプロピレン系樹脂組成物ないし成形体は、座屈しやすく強度および硬度が低下してしまう。本発明のプロピレン系重合体は、高分子量成分と低分子量成分とを上述の割合で含んでいるため、高い流動性と、優れた機械的物性とを両立できると推察される。
【0028】
本発明に係るプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他の重合性単量体との共重合体であってもよい。
他の重合性単量体としては、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンが挙げられ、炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。また他の重合性単量体としては、非共役ジエンも挙げられ、その具体例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの環状非共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの鎖状の非共役ジエンが挙げられる。
【0029】
プロピレンと他の重合性単量体との共重合体に含まれる他の共重合性単量体から誘導される構成単位の量は、プロピレン系重合体中の構成単位の全量を100モル%とすると、好ましくは10モル%以下、より好ましくは6モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。
【0030】
(プロピレン系重合体の製造方法)
本発明に係るプロピレン系重合体は、たとえば、
プロピレンを重合させて、またはプロピレンと他の重合性単量体とを共重合させて、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が7〜10dl/gであるプロピレン系重合体成分(H)を、前記プロピレン系重合体に占める割合が3〜10質量%となるように製造する工程と、
プロピレンを重合させて、またはプロピレンと他の重合性単量体とを共重合させて、前記プロピレン系重合体成分(H)(以下「高分子量成分(H)」とも記載する。)よりも分子量の低いプロピレン系重合体成分(L)(以下「低分子量成分(L)」とも記載する。)を製造する、1つまたは2つ以上の工程とを含む
プロピレン系重合体の製造方法(以下「製造方法(P)」とも記載する。)
により製造することができる。より具体的には、この製造方法(P)によって、前記成分(I)、(II)および(III)を含むプロピレン系重合体成分を各成分の割合を調整しながら製造することによって、本発明に係るプロピレン系重合体を製造することができる。
【0031】
前記製造方法(P)において、本発明に係るプロピレン系重合体に占める前記高分子量成分(H)の割合は、3〜10質量%、好ましくは5〜10質量%である。
前記高分子量成分(H)の含有量が前記上限値以下であることから、本発明のプロピレン系重合体およびこれを含むプロピレン系樹脂組成物の流動性は高く、前記含有量が前記下限値以上であることにから、本発明のプロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物の剛性は高い。
【0032】
前記製造方法(P)において、前記高分子量成分(H)の、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は、7〜10dl/g、好ましくは8〜10dl/gである。
前記製造方法(P)において、各工程において得られるプロピレン系重合体成分の分子量および極限粘度[η]の調整方法は特に制限されないが、水素を分子量調整剤として使用する調整方法が好ましい。
【0033】
前記製造方法(P)としては、第1段目で、実質的に水素の非存在下で、前記高分子量成分(H)を製造した後、第2段目以降で前記低分子量成分(L)を製造する多段重合法が好ましい。
【0034】
前記製造方法(P)においては、第1段目で前記低分子量成分(L)を製造した後、第2段目以降で前記高分子量成分(H)を製造してもよいが、この場合には、第1段目の反応生成物中に含まれる水素などの分子量調整剤を、第2段目以降の重合開始前に限りなく除去する必要があるため、重合装置が複雑になり、また第2段目以降で製造されるプロピレン系重合体成分の極限粘度[η]が上がりにくい。
【0035】
前記製造方法(P)においては、後述するオレフィン重合用触媒を使用することができる。
前記製造方法(P)としては、後述するオレフィン重合用触媒の存在下に、第1段目の重合ステップにおいて、実質的に水素の非存在下で、プロピレンを重合、またはプロピレンとエチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれるオレフィンとを共重合させて、極限粘度[η]が7〜10dl/g、好ましくは8〜10dl/gの前記高分子量成分(H)を、本発明に係るプロピレン系重合体に占める割合が3〜10質量%、好ましくは5〜7質量%となる量で製造し、次いで、第2段目以降の重合ステップにおいて、プロピレンを重合、またはプロピレンとエチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれるオレフィンとを共重合させて、極限粘度[η]が1.05dl/g以下、好ましくは0.75〜1.0dl/g、より好ましくは0.8〜0.95dl/gの前記低分子量成分(L)を製造する方法(以下「製造方法(P1)」とも記載する。)が好ましい。
【0036】
前記製造方法(P)において、第1段目の重合ステップにおいて製造されるプロピレン系重合体成分の極限粘度[η]は、第1段目の重合ステップが終了した際に、得られたプロピレン系重合体成分を測定することにより確認できる。
【0037】
一方、第2段目以降の重合ステップにおいて製造されるプロピレン系重合体成分の極限粘度[η]は、直接的には測定できない。したがって、第2段目以降の重合ステップにおいて製造されるプロピレン系重合体成分の極限粘度[η]は、下記式(1)に基づいて推算される。
[η](1)×w(1)+[η](2)×w(2)・・・[η](n)×w(n)
=[η](t)・・・(1)
(式(1)中、
[η](1)は1段目で生成したプロピレン系重合体成分の極限粘度、
[η](2)は2段目で生成したプロピレン系重合体成分の極限粘度、
[η](n)はn段目で生成したプロピレン系重合体成分の極限粘度、
[η](t)はプロピレン系重合体全体としての極限粘度
を表し、
w(1)は1段目で生成したプロピレン系重合体成分の質量分率(プロピレン系重合体全体の質量を基準とする。)、
w(2)は2段目で生成したプロピレン系重合体成分の質量分率、
w(n)はn段目で生成したプロピレン系重合体成分の質量分率
を表す。)
【0038】
本発明に係るプロピレン系重合体を前記製造方法(P)により製造する場合、そのMFRは、高分子量成分(H)および低分子量成分(L)の極限粘度[η]および含有量により決定されるので、これらの組み合わせを選択することによっても、本発明に係るプロピレン系重合体のMFRを上記範囲に調整することができる。
【0039】
<オレフィン重合用触媒>
前記プロピレン系重合体の製造方法(製造方法(P))に用いられるオレフィン重合用触媒としては、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン系触媒などの公知の触媒が挙げられ、これらのうちチタン系触媒が好ましい。
【0040】
チタン系触媒として具体的には、固体状チタン触媒成分(I)と、周期表の第1族、第2族および第13族から選ばれる金属原子を含む有機金属化合物(II)と、必要に応じて電子供与体(III)とを含むオレフィン重合用触媒が挙げられる。
【0041】
《固体状チタン触媒成分(I)》
前記固体状チタン触媒成分(I)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有し、マグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体を常法により接触させることにより調製される。
【0042】
(a)マグネシウム化合物:
マグネシウム化合物としては、固体状チタン触媒成分の調製に使用される従来公知のマグネシウム化合物を使用することができ、たとえば、
塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;
メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド;
エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;
フェノキシマグネシウムなどのアリーロキシマグネシウム;
ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩
などが挙げられる。
【0043】
これらのマグネシウム化合物は、他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。
これらの中ではハロゲンを含有するマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン化マグネシウム、特に塩化マグネシウムがより好ましい。また、エトキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウムも好ましい。
【0044】
マグネシウム化合物(a)は、他の物質から誘導されたもの、たとえばグリニャール試薬のような有機マグネシウム化合物とハロゲン化チタンやハロゲン化珪素、ハロゲン化アルコールなどとを接触させて得られるものであってもよい。
これらのマグネシウム化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
(b)チタン化合物:
チタン化合物としては、固体状チタン触媒成分の調製に使用される従来公知のチタン化合物を使用することができ、たとえば一般式;
Ti(OR)
gX
4-g
(Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)
で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。より具体的には、
TiCl
4、TiBr
4などのテトラハロゲン化チタン;
Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O-n-C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(O-isoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(O-n-C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(O-2-エチルヘキシル)
4などのテトラアルコキシチタン
などを挙げることができる。
これらの中でもテトラハロゲン化チタンが好ましく、四塩化チタンが特に好ましい。これらのチタン化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
(c)電子供与体:
電子供与体(c)としては、固体状チタン触媒成分の調製に使用される従来公知の内部電子供与体を使用することができる。
【0047】
電子供与体(c)としては、アルコール類、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸ハライド、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート、含窒素環状化合物、含酸素環状化合物、国際公開第2006/077945号、国際公開第2006/077946号、国際公開第2010/032793号、国際公開第2008/010459号に記載の環状エステル化合物、国際公開第2000/063261号に記載のコハク酸エステル化合物、国際公開第2003/032793号に記載のポリオールエステル化合物、国際公開第2005/105858号に記載の二塩基酸エステル化合物、特開2014−181317号公報([0047]−[0081])に記載の環状エステル化合物(a)および(b)の組み合わせなどを例示することができる。
【0048】
より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素原子数1〜18のアルコール類;
トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数1〜18のハロゲン含有アルコール類;
フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基を有してもよい炭素原子数6〜20のフェノール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素原子数3〜15のケトン類;
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素原子数2〜15のアルデヒド類;
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸ジメチル、炭酸エチルなどの炭素原子数2〜30の有機酸エステル類;
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素原子数2〜15の酸ハライド類;
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数2〜20のエーテル類;
酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジエチルアミド、トルイル酸N,N-ジメチルアミドなどの酸アミド類;
メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類;
無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物、ピロール、メチルピロール、ジメチルピロールなどのピロール類;
ピロリン、ピロリジン、ンドール、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ジメチルピリジン、エチルメチルピリジン、トリメチルピリジン、フェニルピリジン、ベンジルピリジン、塩化ピリジンなどのピリジン類;
ピペリジン類、キノリン類、イソキノリン類などの含窒素環状化合物;
テトラヒドロフラン、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ピノールフラン、メチルフラン、ジメチルフラン、ジフェニルフラン、ベンゾフラン、クマラン、フタラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジヒドロピランなどの環状含酸素化合物などが挙げられる。
【0049】
また電子供与体(c)として、1-メトキシエタノール、2-メトキシエタノール、4-メトキシブタノール、2-ブトキシエタノールなどの多価ヒドロキシ化合物エーテルを特に好ましい例として挙げることができる。
【0050】
また上記の有機酸エステルとして、下記一般式で表される骨格を有する多価カルボン酸エステルを特に好ましい例として挙げることができる。
【0052】
上記式中、R
1は置換または非置換の炭化水素基、R
2、R
5およびR
6は、水素または置換もしくは非置換の炭化水素基、R
3およびR
4は、水素または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、好ましくはその少なくとも一方は置換または非置換の炭化水素基である。
またR
3とR
4とは互いに連結されて環状構造を形成していてもよい。炭化水素基R
1〜R
6は一般的に1〜15の炭素原子を有し、これらが置換されている場合の置換基は、N、O、Sなどの異原子を含み、例えばC−O−C、COOR、COOH、OH、SO
3H、−C−N−C−、NH
2などの基を有する。
【0053】
また、前記電子供与体(c)として、複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下「ポリエーテル」ともいう。)を用いることもできる。このポリエーテルとしては、エーテル結合間に存在する原子が、炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、ホウ素、イオウまたはこれらから選択される2種以上である化合物などを挙げることができる。このうちエーテル結合間の原子に比較的嵩高い置換基が結合しており、2個以上のエーテル結合間に存在する原子に複数の炭素原子が含まれた化合物が好ましく、例えば下記式で示されるポリエーテルが好ましい。
【0054】
【化2】
(式中、nは2≦n≦10の整数であり、R
1〜R
26は炭素、水素、酸素、ハロゲン、窒素、イオウ、リン、ホウ素およびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する置換基であり、任意のR
1〜R
26、好ましくはR
1〜R
2nは共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素以外の原子が含まれていてもよい。)
【0055】
これらのうち、1,3-ジエーテル類が好ましく用いられ、特に、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジフェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパンなどが好ましく用いられる。
【0056】
さらにこの電子供与体(c)として、後述するような少なくとも1個のアルコキシ基を有する有機シラン化合物、水、またはアニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤などを用いることもできる。
【0057】
電子供与体(c)として、上記化合物の中でもカルボン酸エステルが好ましく、特に多価カルボン酸エステル類、多価ヒドロキシ化合物エステル類、とりわけフタル酸エステル類等の芳香族カルボン酸エステル、脂肪族多価ヒドロキシ化合物エーテルおよび酸無水物が好ましく、フタル酸ジエステル類が特に好ましい。
これらの電子供与体は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0058】
《有機金属化合物触媒成分(II)》
有機金属化合物触媒成分(II)は、周期表の第1族、第2族および第13族から選ばれる金属原子を含む有機金属化合物であり、具体的には、第13族金属を含む化合物、たとえば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物などが挙げられる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0059】
有機アルミニウム化合物の例としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
R
anAlX
3-n
式中、R
aは炭素原子数1〜12の炭化水素基、たとえばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロペンチル基、シクロヘキシル、フェニル、トリルなどである。
Xはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。
【0060】
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
有機アルミニウム化合物の例としては、さらに下記式で示される化合物が挙げられる。
R
anAlY
3-n
式中、R
aは上記と同様であり、Yは−OR
b基、−OSiR
c3基、−OAlR
d2基、−NR
e2基、−SiR
f3基または−N(R
g)AlR
h2基であり、nは1〜2であり、R
b、R
c、R
dおよびR
hはメチル基(以下「Me」とも記載する。)、エチル基(以下「Et」とも記載する。)、イソプロピル基、イソブチル基(以下「iso-Bu」とも記載する。)、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R
eは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R
fおよびR
gはメチル基、エチル基などである。
【0061】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が挙げられる。
(i) R
anAl(OR
b)
3-nで表される化合物(例:ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、およびジイソブチルアルミニウムメトキシド)
(ii) R
anAl(OSiR
c)
3-nで表される化合物(例:Et
2Al(OSiMe
3)、(iso-Bu)
2Al(OSiMe
3)、および(iso-Bu)
2Al(OSiEt
3))
(iii) R
anAl(OAlR
d2)
3-nEt
2AlOAlEt
2、(iso-Bu)
2AlOAl(iso-Bu)
2 など。
(iv) R
anAl(NR
e2)
3-nで表される化合物(例:Me
2AlNEt
2、Et
2AlNHMe、Me
2AlNHEt、Et
2AlN(Me
3Si)
2、および(iso-Bu)
2AlN(Me
3Si)
2)
(v) R
anAl(SiR
f3)
3-nで表される化合物(例:(iso-Bu)
2AlSiMe
3)
(vi) R
anAl〔N(R
g)−AlR
h2〕
3-nで表される化合物(例:Et
2AlN(Me)−AlEt
2(iso-Bu)
2AlN(Et)Al(iso-Bu)
2)
さらにこれに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることもできる。
【0062】
より具体的には、(C
2H
5)
2AlOAl(C
2H
5)
2、(C
4H
9)
2AlOAl(C
4H
9)
2、(C
2H
5)
2AlN(C
2H
5)Al(C
2H
5)
2、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類を挙げることができる。
上記のような有機アルミニウム化合物のうちでも、R
a3Al、R
anAl(OR
b)
3-n、R
anAl(OAlR
d2)
3-nで表される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。
【0063】
また第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化合物は、下記一般式で示される。
M
1AlR
j4
式中、M
1はLi、Na、Kであり、R
jは炭素原子数1〜15の炭化水素基である。
具体的には、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4 などが挙げられる。
第2族金属の有機金属化合物は、下記一般式で示される。
R
kR
lM
2
式中、R
k、R
lは炭素原子数1〜15の炭化水素基またはハロゲンであり、互いに同一でも異なっていてもよいが、いずれもハロゲンである場合は除く。M
2はMg、ZnまたはCdである。
【0064】
具体的には、ジエチル亜鉛、ジエチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどが挙げられる。
これらの有機金属化合物は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0065】
《電子供与体(III)》
前記電子供与体(III)として、好ましくは有機ケイ素化合物が挙げられる。この有機ケイ素化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物を例示できる。
R
nSi(OR')
4-n ・・・(4)
(式中、RおよびR’は炭化水素基であり、nは1から3の整数である。)
【0066】
式(4)中、RおよびR'は、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ブチルメチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−アミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基等が好ましい。
【0067】
上記一般式(4)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランが挙げられる。
【0068】
前記有機ケイ素化合物の好ましい例として、国際公開第2004/016662号に記載されている下記式(5)で表されるシラン化合物も挙げられる。
Si(OR
a)
3(NR
bR
c) ・・・(5)
式(5)中、R
aは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1〜6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜6の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0069】
式(5)中、R
bは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子であり、好ましくは、炭素数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基または水素原子などが挙げられる。具体例としては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0070】
式(5)中、R
cは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素原子であり、好ましくは、炭素数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0071】
上記式(5)で表される化合物の具体例としては、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジメチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、エチル−iso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0072】
また、前記有機ケイ素化合物の他の例として、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
RNSi(OR
a)
3 ・・・(6)
式(6)中、RNは、環状アミノ基であり、この環状アミノ基として、例えば、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基等が挙げられる。R
aとしては、式(5)で定義したものと同様のものが挙げられる。
【0073】
上記式(6)で表される化合物の具体例としては、(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシランが挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
また、電子供与体(III)として他に有用な化合物としては、前記電子供与体(c)として挙げた、芳香族カルボン酸エステルおよび/または複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物(ポリエーテル化合物)も好ましい例として挙げられる。
【0075】
前記オレフィン重合用触媒は、上記のような各成分以外にも必要に応じてオレフィン重合に有用な他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、シリカなどの担体、帯電防止剤等、粒子凝集剤、保存安定剤などが挙げられる。
【0076】
<プロピレン系重合体の製造条件>
以下、本発明のプロピレン系重合体を前記製造方法(P)により製造する場合を例に説明する。
重合の際、前記オレフィン重合用触媒をそのまま用いてもよく、前記オレフィン重合用触媒を用いて予備重合(前重合)を行って得られる予備重合触媒(前重合触媒)を用いてもよい。
【0077】
予備重合は、オレフィン重合用触媒1g当り通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの量でオレフィンを予備重合させることにより行われる。
【0078】
予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりも高い濃度の触媒を用いることができる。
予備重合における前記固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で、通常約0.001〜200ミリモル、好ましくは約0.01〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜20ミリモルの範囲とすることが望ましい。
【0079】
予備重合における前記有機金属化合物(II)の量は、前記固体状チタン触媒成分(I)1g当り通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500gの重合体が生成するような量であればよく、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常約0.1〜300モル、好ましくは約0.5〜100モル、特に好ましくは1〜50モルの量であることが望ましい。
【0080】
予備重合では、必要に応じて前記電子供与体(III)等を用いることもでき、この際これらの成分は、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常0.1〜50モル、好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは1〜10モルの量で用いられる。
【0081】
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィン及び上記の触媒成分を加え、温和な条件下に行うことができる。
この場合、用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;あるいはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0082】
これらの不活性炭化水素媒体のうち、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。このように、不活性炭化水素媒体を用いる場合、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。
【0083】
一方、オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともでき、また、実質的に溶媒のない状態で予備重合することもできる。この場合には、予備重合を連続的に行うのが好ましい。
【0084】
予備重合で使用されるオレフィンは、プロピレンであっても、プロピレン以外のオレフィンであってもよいが、好ましくはプロピレンである。
予備重合の際の温度は、通常−20〜+100℃であり、好ましくは−20〜+80℃、さらに好ましくは0〜+40℃の範囲である。
【0085】
予備重合及び本重合は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施できる。
前記製造方法(P)は、前記高分子量成分(H)を含む工程と、前記低分子量成分(L)を製造する、1つまたは2つ以上の工程とを含んでいる。これらの工程、すなわち多段重合法における各段の重合は連続的に行ってもよく、バッチ式または半連続式に行ってもよいが、連続的に行うことが好ましい。第2段目以降の重合は、前段の重合に引き続いて、連続的に行うことが好ましい。重合をバッチ式で行う場合、1つの重合器を用いて多段重合を行ってもよい。
【0086】
本重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素を用いることもできるし、反応温度・圧力において液体であるオレフィンを用いることもできる。
【0087】
本重合において、前記固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜0.5ミリモル、好ましくは約0.005〜0.1ミリモルの量で用いられる。
【0088】
また、前記有機金属化合物(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、通常約1〜2000モル、好ましくは約5〜500モルとなるような量で用いられる。
【0089】
本重合において、重合温度は、通常、約0〜200℃、好ましくは約30〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。重合圧力(ゲージ圧)は、通常、常圧〜100kgf/cm
2(9.8MPa)、好ましくは約2〜50kgf/cm
2(0.20〜4.9MPa)に設定される。
【0090】
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、
上述した本発明に係るプロピレン系重合体(以下「プロピレン系重合体(A)」とも記載する。)を5〜50質量%、
プロピレン系ブロック共重合体(B)を95〜30質量%、および
任意成分であるエラストマー(C)を0〜30質量%
含むことを特徴としている。
【0091】
《プロピレン系ブロック共重合体(B)》
プロピレン系ブロック共重合体(B)の、ISO 1133−1に準拠して230℃、2.16kg荷重の条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは10〜200g/10分、より好ましくは20〜100g/10分、さらに好ましくは25〜50g/10分である。
【0092】
プロピレン系ブロック共重合体(B)は、n−デカン溶剤分別した場合、23℃のn−デカンに可溶な成分(以下「デカン可溶部」とも記載する。)と23℃のn−デカンに不溶な成分(以下「デカン不溶部」とも記載する。)とに分別される。後述する実施例で採用された方法により測定される、これらの成分の割合は、好ましくは、デカン可溶部が5〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%であり、好ましくは、デカン不溶部が70〜95質量%、より好ましくは75〜90質量%である。デカン可溶部およびデカン不溶部の含有割合が上記範囲内にあると、剛性、耐衝撃性等の機械的物性に優れた射出成形品(たとえば、自動車内外装材)を成形することができる。
【0093】
デカン不溶部は、通常プロピレンから導かれる構造単位のみからなるが、少量、たとえば10モル%以下、好ましくは5モル%以下の他のモノマーから導かれる構造単位を含有していてもよい。
【0094】
他のモノマーとしては、たとえば
エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等のプロピレン以外のα−オレフィン;
スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニル化合物;
酢酸ビニル等のビニルエステル;
無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;
共役ジエン;および
ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ポリエン類
が挙げられる。これらの中では、エチレン、炭素原子数4〜10のα−オレフィンなどが好ましい。これらは1種単独で共重合されていてもよく、2種以上が共重合されていてもよい。
【0095】
デカン可溶部は、主としてプロピレン・α−オレフィン共重合体からなるが、プロピレン単独重合体の一部、たとえば低分子量物等の重合の際に生じる副生物などが含まれ得る。
【0096】
デカン可溶部のプロピレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンは、エチレンおよび/または炭素原子数4〜12のα−オレフィンなどである。このようなα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセンが挙げられる。これらの中では、エチレンが好ましい。
【0097】
プロピレン系ブロック共重合体(B)のデカン可溶部の135℃デカリン中で測定される極限粘度([η])は、好ましくは1〜8dl/g、より好ましくは2〜6dl/gである。
【0098】
プロピレン系ブロック共重合体(B)は、従来公知の方法、たとえば特開2004−323545号公報の[0018]−[0026]に記載の方法を参照して製造することができる。
【0099】
《エラストマー(C)》
前記エラストマー(C)としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−a)、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−b)、水素添加ブロック共重合体(C−c)、その他弾性重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0100】
前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−a)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体ゴムである。上記炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0101】
前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−a)における、エチレンから誘導される構成単位とα−オレフィンから誘導される構成単位とのモル比(エチレン/α−オレフィン)は好ましくは95/5〜70/30、より好ましくは90/10〜75/25である。
【0102】
前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−a)の、ISO 1133−1に準拠して、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5〜5g/10分である。
【0103】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−b)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとのランダム共重合体ゴムである。上記炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、前記共重合体(C−a)における炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例と同じものが挙げられる。前記非共役ポリエチレンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの非環状ジエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどの鎖状の非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネンなどのトリエン等が挙げられる。これらの中では、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0104】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−b)における、エチレンから誘導される構成単位の割合は、好ましくは90〜30モル%、より好ましくは80〜40モル%であり、α−オレフィンから誘導される構成単位の割合は、好ましくは5〜45モル%、より好ましくは10〜40モル%であり、非共役ポリエンから誘導される構成単位の割合は、好ましくは5〜25モル%、より好ましくは10〜20モル%である。
【0105】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−b)の、ISO 1133−1に準拠して、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.05g/10分以上、好ましくは0.1〜10g/10分である。
【0106】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体(C−b)の具体例としては、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)が挙げられる。
前記水素添加ブロック共重合体(C−c)は、ブロックの形態が以下式(x)または(y)で表されるブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加率(共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のうち水素化されたものの割合)が90モル%以上、好ましくは95モル%以上の水素添加ブロック共重合体である。
X(YX)
n ・・・(x)
(XY)
n ・・・(y)
【0107】
前記式(x)または(y)のXで示される重合ブロックを構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレン、低級アルキル置換スチレン、ビニルナフタレン等のスチレンまたはその誘導体などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記式(x)または(y)のYで示される重合ブロックを構成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。ここれらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
nは1〜5の整数、好ましくは1または2である。
【0109】
水素添加ブロック共重合体(C−c)の具体例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)等のスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0110】
水素添加前のブロック共重合体は、例えば不活性溶媒中で、リチウム触媒またはチーグラー触媒の存在下に、ブロック共重合を行わせる方法により製造することができる。詳細な製造方法は、例えば特公昭40−23798号などに記載されている。水素添加処理は、不活性溶媒中で公知の水素添加触媒の存在下に行うことができる。詳細な方法は、例えば特公昭42−8704号、同43−6636号、同46−20814号などに記載されている。
【0111】
共役ジエンモノマーとしてブタジエンが用いられる場合、ポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量の割合は好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%である。
【0112】
水素添加ブロック共重合体(C−c)としては、市販品の例であれば、クレイトン(登録商標)G1657(クレイトンポリマージャパン(株)製)、セプトン(登録商標)2004(クラレ(株)製)、タフテック(登録商標)H1052(旭化成(株)製)が挙げられる。エラストマー(C)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
《無機充填材(D)》
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材(D)を含んでいてもよい。
【0114】
無機充填材(D)としては、プロピレン系樹脂組成物における従来公知の無機充填材、たとえばタルク、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アンモニウム塩、珪酸塩類、炭酸塩類およびカーボンブラック等の無機フィラー、ならびに木粉、セルロース、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、ジュード繊維、米粉、澱粉およびコーンスターチ等の有機フィラーが挙げられる。
【0115】
前記無機フィラーとしては、これらの中でもタルク、硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維が好ましく、タルクがより好ましい。
前記無機充填材(D)の具体例としては、特開2014−181317号公報の[0158]〜[0168]に記載の無機充填材が挙げられる。
【0116】
《他の成分(E)》
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上述した成分(A)〜(D)以外の成分(以下「他の成分(E)」と記載する。)を含んでいてもよい。
【0117】
他の成分としては、プロピレン系樹脂組成物における従来公知の添加剤、たとえば結晶核剤(造核剤)、発泡剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、塩化吸収剤、軟化剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、難燃剤、抗菌剤が挙げられる。
【0118】
前記結晶核剤(造核剤)の具体例としては、特開2014−181317号公報の[0189]〜[0202]に記載の結晶核剤が挙げられる。
前記発泡剤の具体例としては、特開2014−181317号公報の[0204]〜[0212]に記載の結晶核剤が挙げられる。
【0119】
各種安定剤の具体例としては、フェノール系安定剤、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、および無機酸化物が挙げられる。
【0120】
(プロピレン系樹脂組成物)
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、
本発明に係るプロピレン系重合体(A)を5〜50質量%含み、
前記プロピレン系ブロック共重合体(B)を95〜30質量%含み、
前記エラストマー(C)を0〜30質量%含む。
【0121】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、本発明に係るプロピレン系重合体を含んでいるため、流動性が高く、かつ剛性等の機械的物性にも優れている。従来、プロピレン系材料からなる自動車内外装部品には、優れた機械的物性を発現させるためにタルク等の無機充填材が配合されていたが、流動性が高く、かつ剛性等の機械的物性にも優れた本発明に係るプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、タルク等の無機充填材を殆どまたは全く配合することなく、剛性等の機械的物性に優れた自動車内外装部品を射出成形法により製造することができる。
【0122】
[成形体]
本発明に係る成形体は、上述した本発明に係るプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴としている。
また、本発明に係る成形体の製造方法は、上述した本発明に係るプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むことを特徴としている。
【0123】
成形体としては、各種成形体、たとえば射出成形体、発泡成形体、射出発泡成形体、押出成形体、ブロー成形体、真空・圧空成形体、カレンダー成形体、延伸フィルム、インフレーションフィルムが挙げられ、中でも、薄肉でかつ機械的特性に優れた成形体を製造できるという観点からは、射出成形体が好ましい。
【実施例】
【0124】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、プロピレン系重合体、プロピレン系樹脂組成物等の物性は下記の方法によって測定した。
【0125】
[プロピレン系重合体中の成分(I)、(II)および(III)の割合]
東ソー(株)製ゲル浸透クロマトグラフHLC−8321 GPC/HT型を用い、以下のようにしてGPC測定を行った。
分離カラムは、TSKgel GMH6−HTが2本およびTSKgel GMH6−HTLが2本であり、カラムサイズはいずれも内径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはオルトジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株)製)0.025重量%を用い、流速を1.0mL/分とし、試料濃度を30mg/20mLとし、試料注入量を0.4mLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準試料として、東ソー(株)製TSK標準ポリスチレン16点を用いた。
【0126】
分子量計算には、データ処理ソフトWaters社製Empower3を用い、得られた分子量分布曲線から、分子量が1.0×10
6以上の成分(I)、分子量が1.0×10
4未満の成分(II)、および分子量が1.0×10
4以上1.0×10
5未満の成分(III)のそれぞれの割合を算出した。
【0127】
[メルトフローレート(MFR)]
ISO 1133−1に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件下でMFRを測定した。
【0128】
[高分子量成分(H)の割合]
二段重合において、初めに高分子量成分(H)を重合した。二段目の重合槽に生成物を移送する途中で少量のサンプルを抜き取った。そして、最終的に得られた重合パウダーとともに、含有されている触媒濃度を定量分析した。最終的な重合パウダーの触媒濃度(X)と、最初に重合したサンプルの触媒濃度(Y)から、高分子量成分(H)の割合をX/Yとして求めた。
【0129】
[極限粘度([η])]
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度η
spを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈し、その後同様にして比粘度η
spを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のη
sp/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(η
sp/C) (C→0)
【0130】
[室温n−デカン可溶(不溶)部含有率]
ガラス製の測定容器にプロピレン系ブロック共重合体約3g(10
-4gの単位まで測定した。また、この重量を、下式においてb(g)と表した。)、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系ブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得、この重量を10
-4gの単位まで測定した(この重量を、下式においてa(g)と表した)。この操作の後、デカン可溶部含有率を下記式によって決定した。
室温n−デカン可溶部(Dsol)含有率
=100×(500×a)/(100×b)
室温n−デカン不溶部分(Dinsol)含有率
=100−100×(500×a)/(100×b)
【0131】
[密度]
ISO 1183に準拠して、23℃で密度を測定した。
[曲げ強さ、曲げ弾性率]
ISO 178に準拠して、下記の条件で曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
<測定条件>
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
【0132】
[シャルピー衝撃強さ]
ISO 179に準拠して、下記の条件でノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。
<測定条件>
温度:−30℃および23℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である。
【0133】
[荷重たわみ温度]
ISO 75に準拠して、荷重たわみ温度を測定した。すなわち、試験片の両端を加熱浴槽中で支え、下で中央の荷重棒によって試験片に所定の曲げ応力(0.45MPaの一定荷重)を加えつつ、加熱媒体の温度を2℃/分の速度で上昇させ、試験片のたわみが所定の量に達したときの加熱媒体の温度を荷重たわみ温度とした。
【0134】
[グロス]
ISO 2813に準拠して、Gloss Meter VG7000(日本電色工業社製)を用いて60°表面グロスを測定した。60°表面グロスは、屈折率1.567であるガラス表面において規定された入射角60°での鏡面光沢度0.1001を100%としたときの鏡面光沢度に相当する。
【0135】
[ロックウェル硬度]
ISO 2039−2に準拠して、下記の条件でロックウェル硬度(Rスケール)を測定した。
<測定条件>
試験片:30mm(幅)×30mm(長さ)×2mm(厚さ)
試験片を2枚重ねして測定した。
【0136】
<プロピレン系重合体の製造>
[実施例1]
(1) 前重合
固体触媒として東邦チタニウム(株)製THC C、トリエチルアルミニウム(以下「TEA」と略記する場合がある)、電子供与体として宇部興産(株)製U−ドナーを用いて、プロピレン自体を溶媒として管型重合器にて前重合を行った。重合温度は10℃であり、得られた前重合触媒は、遷移金属成分1g当たりポリプロピレンを3g含んでいた。
【0137】
(2) 本重合
第一段目の重合では一つの重合器、第二段目の重合では二つの重合器を用いて、連続二段重合法でプロピレン系重合体を製造した。所定量のプロピレン、前重合触媒、TEA、U−ドナーを重合器1に連続的に供給し、温度60℃、重合圧3.4MPa−Gで実質的に水素の存在しない条件下で重合した。重合器1から抜き出したサンプルの固有粘度と灰分を測定した。固有粘度は10dl/gであった。灰分はサンプルの触媒濃度を示しており、最終的に製造されたプロピレン重合体の触媒濃度と対比することにより、重合器1で生成した高分子量成分(H)は5重量%であった。
【0138】
二段目の重合では二つの重合器を用いて連続法で実施した。すなわち、重合器1の成形物を重合器2に連続的に送り、所定量の水素を添加してさらに重合した。重合器2の温度55℃、重合圧3.0MPa−Gであった。気相部の水素濃度は21.1モル%であった。次に重合器2の生成物を重合器3に連続的に送り、さらに重合した。重合器3の温度53℃、重合圧2.8MPa−Gであった。また、気相部の水素濃度は18.5モル%であった。
【0139】
(3) 後処理
得られたスラリーから気液分離を行い未反応のモノマーを除去したのち、80℃10時間乾燥を行った。得られたパウダーの灰分を測定し含まれている触媒の濃度を求めた。得られたポリマー100重量%にBASF社の耐熱安定剤IRGANOX1010を0.1重量%とIRGAPHOS168を0.05重量%、ステアリン酸カルシウム0.05重量%を溶融混練して、ペレット状のプロピレン重合体(A−1)を得た。MFRは200g/10分であった。
プロピレン重合体(A−1)の評価結果を表1に示す。
【0140】
[実施例2]
重合器2と3の水素濃度を、製造しようとするプロピレン系重合体のMFRが170g/10分となるように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系重合体(A−2)を得た。
プロピレン系重合体(A−2)の評価結果を表1に示す。
【0141】
[実施例3]
重合器2と3の水素濃度を、製造しようとするプロピレン系重合体のMFRが130g/10分となるように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系重合体(A−3)を得た。
プロピレン系重合体(A−3)の評価結果を表1に示す。
【0142】
[実施例4]
重合器2と3の水素濃度を、製造しようとするプロピレン系重合体のMFRが100g/10分となるように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系重合体(A−4)を得た。
プロピレン系重合体(A−4)の評価結果を表1に示す。
【0143】
[比較例1]
重合器1に所定量の水素を供給して、重合器2と3との水素濃度の差を実質的になくしたこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系重合体(a−1)を得た。
プロピレン系重合体(a−1)の評価結果を表1に示す。
【0144】
[比較例2]
一段目と二段目の重合時間を調整することにより高分子量成分(H)を13質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系重合体(a−2)を得た。
プロピレン系重合体(a−2)の評価結果を表1に示す。
【0145】
[比較例3]
一段目と二段目の重合時間を調整することにより高分子量成分(H)を13質量%に変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、プロピレン系重合体(a−3)を得た。
プロピレン系重合体(a−3)の評価結果を表1に示す。
【0146】
[比較例4]
一段目と二段目の重合時間を調整することにより高分子量成分(H)を13質量%に変更したこと以外は実施例4と同様の方法により、プロピレン系重合体(a−4)を得た。
プロピレン系重合体(a−4)の評価結果を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
<プロピレン系樹脂組成物の製造>
プロピレン重合体(A−1)〜(a−4)に加えて、以下の樹脂原料が使用された。
・プロピレン系ブロック共重合体(以下「ブロックPP」とも記載する。):
(密度:910kg/m
3、MFR(ISO 1133−1、230℃、2.16kg荷重):30g/10分、エチレン含量:9モル%、室温n−デカン可溶部含有率:13質量%、室温n−デカン可溶部の[η]:2.2dl/g)
・エチレン・オクテンランダム共重合体:
(1−オクテン含量:17モル%、密度:865kg/m
3、MFR(ISO 1133−1、190℃、2.16kg荷重):1.2g/10分)
【0149】
[実施例5]
製造例1で得られたプロピレン系重合体(A−1)を5質量部、ブロックPPを95質量部、タンブラーにて混合後、ISO 294−1に準拠して射出成形した。得られた射出成形品の物性を表2に示す。
【0150】
[実施例6]
プロピレン系重合体(A−1)およびブロックPPの量を、それぞれ10質量部および90質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、射出成形品を製造した。射出成形品の物性を表2に示す。
【0151】
[比較例5]
プロピレン系重合体(A−1)を5質量部のプロピレン系重合体(a−1)に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、射出成形品を製造した。射出成形品の物性を表2に示す。
【0152】
[比較例6]
プロピレン系重合体(A−1)を10質量部のプロピレン系重合体(a−1)に変更したこと以外は実施例6と同様の方法により、射出成形品を製造した。射出成形品の物性を表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
[実施例7]
製造例1で得られたプロピレン系重合体(A−1)を50質量部、ブロックPPを30質量部、エチレン・1−ブテン共重合体を20質量部、耐熱安定剤としてイルガノックス(登録商標)1010(BASF社製)を0.1質量部、耐熱安定剤としてイルガフォス(登録商標)168(BASF社製)を0. 05質量部、および造核剤としてNA11(ADEKA社製)を0.1質量部、タンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製し、ISO 294−1に準拠して射出成形した。
【0155】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 TEX−30α、(株)日本製鋼所製
混練温度:180℃
スクリュー回転数:600rpm
フィーダー回転数:60kg/時間
得られた射出成形品の物性を表3に示す。
【0156】
[実施例8〜10、比較例7〜10]
プロピレン系重合体(A−1)を、50質量部のプロピレン系重合体(A−2)〜(A−4)または(a−1)〜(a−4)にそれぞれ変更したこと以外は実施例7と同様の方法により、プロピレン系樹脂組成物を製造し、次いで射出成形した。得られた射出成形品の物性を表3に示す。
【0157】
【表3】