特開2019-167824(P2019-167824A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマー株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019167824-エンジン制御装置 図000003
  • 特開2019167824-エンジン制御装置 図000004
  • 特開2019167824-エンジン制御装置 図000005
  • 特開2019167824-エンジン制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-167824(P2019-167824A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/20 20060101AFI20190906BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20190906BHJP
【FI】
   F01M1/20 A
   F02D45/00 358K
   F02D45/00 360D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-53680(P2018-53680)
(22)【出願日】2018年3月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】森田 友章
【テーマコード(参考)】
3G313
3G384
【Fターム(参考)】
3G313AB12
3G313AB13
3G313AB18
3G313EA12
3G384AA03
3G384AA24
3G384AA26
3G384CA01
3G384CA23
3G384DA42
3G384DA46
3G384ED11
3G384FA28Z
(57)【要約】
【課題】油圧スイッチの異常検出の精度を向上させる。
【解決手段】油圧スイッチ16は、エンジンオイルの油圧が閾値より低い場合に閉じられ、高い場合に開かれる。スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16の状態を、エンジンキーがON操作された後かつエンジン1の回転数が所定回転数未満のときに調べ、油圧スイッチ16が開かれているときは、油圧スイッチ16の常時開き異常が発生していると判定する。異常判定保留時間設定部28は、エンジン1が停止された場合に、エンジンオイルの油温を検出する油温センサ17の検出結果から、エンジンオイルの油温と異常判定保留時間との関係を示す保留時間情報26に基づいて、異常判定保留時間を設定する。異常判定阻止部30は、前記異常判定保留時間が経過していない場合に、油圧スイッチ16が開かれていても、油圧スイッチ16の常時開き異常が発生している旨のスイッチ異常判定部24による判定を阻止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルの油圧が閾値より高圧側か低圧側かに応じて開閉状態が変化する油圧スイッチの状態を、エンジンキーがON操作された後に、かつ、エンジンの回転数が所定回転数未満のときに取得し、前記油圧スイッチが高圧側の状態となっているときは、前記油圧スイッチが高圧側を示してしまう高圧側異常が発生していると判定するスイッチ異常判定部と、
前記エンジンを停止操作したタイミング又はその後に、前記エンジンオイルの油温を検出する油温検出部の検出結果から、前記エンジンオイルの油温と異常判定保留時間との関係を示す保留時間情報に基づいて、異常判定保留時間を設定する判定保留時間設定部と、
前記異常判定保留時間が経過したか否かを判定する時間経過判定部と、
前記異常判定保留時間が経過していないと前記時間経過判定部が判定した場合に、前記油圧スイッチが高圧側の状態となっていても、前記高圧側異常が発生している旨の前記スイッチ異常判定部による判定を阻止する異常判定阻止部と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン制御装置であって、
前記保留時間情報は、エンジンオイルの油温が高い場合は低い場合に比べて前記異常判定保留時間が短くなるように定められていることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジン制御装置であって、
前記スイッチ異常判定部は、前記異常判定保留時間が経過する前に前記エンジンが始動された場合は、前記油圧スイッチに前記高圧側異常が発生している旨の判定を前記異常判定阻止部により阻止されたまま判定を打ち切ることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のエンジン制御装置であって、
前記スイッチ異常判定部は、前記油圧スイッチの出力が高圧側の状態となっていても、エンジンが始動されるまで判定を反復して行うことを特徴とするエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンオイルの油圧が正常であるかを検出するための油圧スイッチと、この油圧スイッチ自体が正常に機能しているかを判定する異常判定手段と、を備えるエンジンの制御装置が知られている。特許文献1から特許文献3には、この種のエンジン制御装置が開示されている。
【0003】
特許文献1は、所定値以上の油圧によってオフとなる油圧スイッチと、油圧スイッチ回路のオンオフを検出して、油圧スイッチ回路の異常を判定する異常判定手段と、を備える内燃機関の油圧検出装置を開示する。この内燃機関の油圧検出装置は、機関の停止時に、油圧スイッチ回路の異常を検出することによって、油圧検出回路が導通不良となる種類の故障(接触不良や断線等)を自動的に検出する。また、この内燃機関の油圧検出装置は、機関の運転中に、油圧スイッチがオンになることによって、機関を緊急停止させる制御を行う。
【0004】
特許文献2は、油圧センサの検出値が所定値以下でONされる油圧スイッチと、エンジン停止中イグニッションスイッチがONされたとき、油圧スイッチがOFFならば当該油圧スイッチを異常と判断する判定手段と、を備える油圧スイッチ異常診断装置を開示する。特許文献2は、これにより、エンジン停止中、イグニッションスイッチがONされたとき、油圧スイッチがOFFなら油圧スイッチを異常ありと判断することができるので、エンジン運転前にドライバに対応を取らせることができるとする。また、この油圧スイッチ異常診断装置は、エンジン運転中に油圧スイッチがONならば、燃料噴射量を所定値以内に制限して、エンジンが高回転となるのを防止する制御を行う。
【0005】
特許文献3は、エンジンの潤滑油が所定圧以下でオンとなる油圧スイッチと、油圧スイッチのオン信号に基づいてエンジンの始動を可能とし、オフ信号に基づいてエンジンの始動を不可能とする始動時異常制御手段と、を備えるエンジン保護装置を開示する。特許文献3は、これにより、エンジンの始動前に油圧スイッチからの信号を判定することによって、油圧スイッチのリード線の断線等を認識することができるとする。また、特許文献3は、油圧スイッチからオフに相当する信号が出力された場合にエンジンの始動を見合わせることにより、正確で適切な油圧異常検出を確保してエンジンの破損を防止することができるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−288307号公報
【特許文献2】特開2000−345821号公報
【特許文献3】特開平10−169426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1から3の構成では、エンジンを停止させた後に、油圧スイッチがOFF(開き状態)になる程度の比較的に高い油圧が、エンジンに残圧として多少の時間滞留することがある。そして、エンジンキーをONにしてエンジンを再び始動させようとする場合に、エンジンに滞留した残圧の影響により、油圧スイッチに異常がなくても当該油圧スイッチがOFFとなるために、油圧スイッチに異常があると誤判定される原因となっていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、油圧スイッチの異常をより精度良く検出することができるエンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成のエンジン制御装置が提供される。即ち、このエンジン制御装置は、スイッチ異常判定部と、判定保留時間設定部と、時間経過判定部と、異常判定阻止部と、を備える。前記スイッチ異常判定部は、エンジンオイルの油圧が閾値より高圧側か低圧側かに応じて開閉状態が変化する油圧スイッチの状態を、エンジンキーがON操作された後に、かつ、エンジンの回転数が所定回転数未満のときに取得し、前記油圧スイッチが高圧側の状態となっているときは、前記油圧スイッチが高圧側を示してしまう高圧側異常が発生していると判定する。前記判定保留時間設定部は、前記エンジンを停止操作したタイミング又はその後に、前記エンジンオイルの油温を検出する油温検出部の検出結果から、前記エンジンオイルの油温と異常判定保留時間との関係を示す保留時間情報に基づいて、異常判定保留時間を設定する。前記時間経過判定部は、前記異常判定保留時間が経過したか否かを判定する。前記異常判定阻止部は、前記異常判定保留時間が経過していないと前記時間経過判定部が判定した場合に、前記油圧スイッチが高圧側の状態となっていても、前記高圧側異常が発生している旨の前記スイッチ異常判定部による判定を阻止する。
【0011】
これにより、エンジンが停止してから残圧が解消していないと見込まれる間は、油圧スイッチに高圧側異常がある旨の判定がスイッチ異常判定部によって行われない。従って、残圧を原因とした誤判定が発生する頻度を減らすことができる。
【0012】
前記のエンジン制御装置においては、前記保留時間情報は、エンジンオイルの油温が高い場合は低い場合に比べて前記異常判定保留時間が短くなるように定められていることが好ましい。
【0013】
これにより、油温が高くなればエンジンオイルの粘度が低くなり、残圧が解消するまでの時間が短くなる傾向を適切に考慮して、油圧スイッチの異常判定を行うことができる。
【0014】
前記のエンジン制御装置においては、前記スイッチ異常判定部は、前記異常判定保留時間が経過する前に前記エンジンが始動された場合は、前記油圧スイッチに前記高圧側異常が発生している旨の判定を前記異常判定阻止部により阻止されたまま判定を打ち切ることが好ましい。
【0015】
これにより、エンジンの始動を優先する制御によって、エンジンの利便性を高めることができる。
【0016】
前記のエンジン制御装置においては、前記スイッチ異常判定部は、前記油圧スイッチの出力が高圧側の状態となっていても、エンジンが始動されるまで判定を反復して行うことが好ましい。
【0017】
これにより、油圧スイッチの異常を検出する機会を増やすことができるので、油圧スイッチの異常を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの全体的な構成を示す図。
図2】エンジン停止後のエンジンオイル油圧の変化と、異常判定保留時間と、を概略的に説明するグラフ。
図3】保留時間情報の例を示す図。
図4】油圧スイッチの異常を検出するフローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、エンジン1の全体的な構成を示す図である。図2は、エンジン停止後のエンジンオイル油圧の変化と、異常判定保留時間と、を概略的に説明するグラフである。図3は、保留時間情報の例を示す図である。
【0020】
図1に示すエンジン1は、エンジン本体11と、エンジン制御装置21と、を備える。
【0021】
エンジン本体11は、作業機や船舶等に用いられるコモンレール式のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン本体11は、コモンレールに接続されたインジェクタから噴射された燃料を燃焼室で燃焼させることによって、当該燃焼室に配置されたピストンを往復運動させる。ピストンの往復運動は、クランクケース内のクランクシャフトの回転運動に変換される。これにより、クランクシャフトを回転駆動することができる。
【0022】
エンジン本体11は、クランクシャフトの動力が伝達されて駆動される図略のオイルポンプを備える。オイルポンプは、エンジン本体11の各部を潤滑するためのエンジンオイルを、シリンダブロック内に配置されているメインオイルギャラリに圧送する。
【0023】
エンジン本体11には、センサ群15が設けられている。センサ群15は、エンジン本体11を制御するために必要な情報を取得する様々なセンサにより構成されている。このセンサ群15には、エンジンオイルの状態を検出するための2つのセンサ、即ち、油圧スイッチ16及び油温センサ17が含まれる。
【0024】
油圧スイッチ16は、メインオイルギャラリや当該メインオイルギャラリに接続する油路等に配置されている。油圧スイッチ16は、エンジンオイルの油圧が所定値以上か否かを検出することができる。
【0025】
油圧スイッチ16の構成は公知であるので簡単に説明するが、この油圧スイッチ16は、例えばゴムで製造されたダイヤフラムを備える。ダイヤフラムは、油圧スイッチ16に導入されたエンジンオイルの圧力に応じて変位する。油圧スイッチ16は、ダイヤフラムの変位と連動して動作する電気的接点を備えており、圧力が所定の閾値より高圧側か低圧側かに応じて電気的接点の開閉状態が変化する。この構成で、油圧が所定値以上であるか否かを、接点の状態により検出することができる。この接点の状態は、後述のエンジン制御装置21に出力される。
【0026】
本実施形態では、油圧スイッチ16として、油圧が所定値以上であると開かれ、所定値未満であると閉じられるスイッチが用いられている。一般的に、エンジン1の始動中は油圧が高くなるので油圧スイッチ16が開かれるはずであり、そうでないなら油圧が異常であると考えることができる。
【0027】
ただし、油圧スイッチ16による油圧の検出が正常に機能しない可能性も考えられる。この原因として、例えば、油圧スイッチ16の内部の信号線の断線、又は、油圧スイッチ16から引き出される信号線の断線等が挙げられる。断線が生じると、油圧スイッチ16は、実際の油圧が高いか低いかにかかわらず、接点が開いた状態となる(常時開き異常)。この常時開き異常は、油圧スイッチ16の状態が実際の油圧と無関係に高圧側を示してしまう高圧側異常と言い換えることもできる。本実施形態のエンジン制御装置21は、油圧スイッチ16の高圧側異常を検出する機能を有しており、これにより油圧異常検出の信頼性を高めている。なお、この機能の詳細は後述する。
【0028】
油温センサ17は、エンジンオイルの油温を検出する。油温センサ17は、例えばサーミスタからなる公知の温度センサとすることができる。油温センサ17は、油圧スイッチ16と同様に、例えば、メインオイルギャラリや当該メインオイルギャラリに接続する油路に配置されている。この油温センサ17が検出する油温は、後述のエンジン制御装置21に出力される。
【0029】
エンジン制御装置21は、エンジン1の電子制御ユニットとして機能する。エンジン制御装置21は、図略のバッテリーから供給される電力により動作し、エンジン1の制御等の様々な処理を行う。
【0030】
エンジン制御装置21は、エンジン制御部22と、油圧異常監視部23と、スイッチ異常判定部24と、記憶部25と、油温取得部27と、異常判定保留時間設定部(判定保留時間設定部)28と、時間経過判定部29と、異常判定阻止部30と、情報出力部31と、を備える。
【0031】
具体的に説明すると、エンジン制御装置21は、CPU、ROM、RAM、タイマ回路等を有するコンピュータとして構成されている。前記ROMには、エンジン1の停止や始動の制御を行うプログラム、油圧の異常判定を行うプログラム、及び、油圧スイッチ16の動作の異常判定を行うプログラム等が記憶される。そして、上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、エンジン制御装置21を、エンジン制御部22、油圧異常監視部23、スイッチ異常判定部24、記憶部25、油温取得部27、異常判定保留時間設定部28、時間経過判定部29、異常判定阻止部30、及び情報出力部31等として動作させることができる。
【0032】
エンジン制御部22は、センサ群15から得られた情報に基づいて、エンジン本体11が備える様々なアクチュエータ(例えば、燃料噴射弁)を動作させ、これによりエンジン本体11を制御する。
【0033】
油圧異常監視部23は、エンジン1が始動してから停止するまでの間において、エンジンオイルの油圧が所定の閾値未満になっていないかを、油圧スイッチ16の状態に基づいて監視する。エンジン1の運転中に油圧スイッチ16が閉じ状態となった場合(即ち、低圧側を示している場合)、油圧異常監視部23は、エンジン制御部22及び後述の情報出力部31に対して、油圧が異常であることを示す信号(油圧異常信号)を出力する。
【0034】
エンジン制御部22は、油圧異常監視部23から油圧異常信号が入力された場合、それに対応した処理を行う。この処理としては、例えば、エンジンの機能の一部を制限した運転モード(制限運転モード)に自動的に切り換えたり、エンジン1を強制停止させたりすることが考えられる。
【0035】
スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16が、上記の常時開き異常(高圧側異常)となっているか否かを判定する。具体的には、スイッチ異常判定部24は、エンジン1が始動する前はエンジンオイルの油圧が低いはずであることを利用して、エンジン1の始動直前の処理において油圧スイッチ16の状態を調べる。油圧スイッチ16が開かれている場合(即ち、油圧が高いことを示している場合)、スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16に異常があると判定する。この場合、スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチに異常がある旨の信号を情報出力部31に出力する。
【0036】
ただし、上述したように、エンジン1を停止(言い換えれば、オイルポンプの駆動を停止)させた後、エンジンオイルの油圧が十分に低下するまでには多少の時間が必要になる。従って、例えばエンジン停止直後に再始動させようとする場合は、油圧が低下する前の高い圧力(以下、残圧と呼ぶことがある。)を検知して油圧スイッチ16が開き状態になることがある。これは、油圧スイッチ16自体が正常であるにもかかわらず、異常であるとスイッチ異常判定部24が誤判定してしまう原因になる。
【0037】
そこで、エンジン制御装置21は、直近にエンジンを停止させてからある程度の時間が経過するまでは、スイッチ異常判定部24が上記の高圧側異常の判定をしないように構成されている。以下の説明では、この時間を異常判定保留時間と呼ぶことがある。図2のグラフには、エンジンオイルの残圧が解消するまでの時間と、異常判定保留時間と、の関係が概略的に示されている。
【0038】
スイッチ異常判定部24は、残圧の滞留が解消したと考えられるタイミング(異常判定保留時間が経過したタイミング)以後に、油圧スイッチ16が開き状態であれば、油圧スイッチ16が異常である旨の判定を行う。これにより、残圧を原因とした誤判定の発生頻度を減らすことができる。
【0039】
記憶部25は、主として上記のROM及びRAM等により構成されており、エンジン制御装置21の動作に必要な様々な情報を記憶する。
【0040】
記憶部25には、保留時間情報26が記憶される。この保留時間情報26は、上記の異常判定保留時間を、エンジンオイルの油温と対応付けたものである。
【0041】
この異常判定保留時間は、エンジンオイルの油圧が十分に上昇した状態でエンジン1を停止させた場合に、当該停止時から、当該油圧が油圧スイッチ16の動作閾値未満となるまでに必要な時間(以下、「残圧時間」と呼ぶことがある。)を考慮して定められている。
【0042】
残圧時間は、エンジンオイルがエンジン本体11の各部を潤滑するために通過する経路の形状、エンジンオイルの粘度等によって様々に変化する。従って、保留時間情報26は、エンジン1の機種に応じて、また、用いられるエンジンオイルに応じて異なるように定められることが好ましい。
【0043】
保留時間情報26は、例えば図3に示すように、複数の油温範囲のそれぞれに対し、当該油温範囲内の油温にて実験することにより得られた残圧時間に適宜のマージン時間を加算した異常判定保留時間を対応付けたデータとすることができる。保留時間情報26は、油温が高くなるのに従って、異常判定保留時間が短くなるように定められている。これにより、油温によるエンジンオイルの粘度の変化を考慮し、適切なタイミングで油温センサ17の異常判定を行うことができる。
【0044】
油温取得部27は、始動状態のエンジン1が停止するタイミング、又は、それと前後するタイミングで、油温センサ17が検出する油温を取得する。油温取得部27は、取得した油温の情報を、異常判定保留時間設定部28に出力する。
【0045】
異常判定保留時間設定部28は、油温取得部27が取得した油温に基づいて、次回にエンジンを始動しようとする場合に適用される異常判定保留時間を設定する。具体的には、異常判定保留時間設定部28は、記憶部25に記憶されている保留時間情報26を参照して、油温取得部27が取得した油温を含む油温範囲に対応する異常判定保留時間を取得する。異常判定保留時間設定部28は、取得した異常判定保留時間を記憶部25に記憶する。
【0046】
記憶部25には、異常判定保留時間の起算タイミングを示す日時も併せて記憶される。この日時は、本実施形態ではエンジンキースイッチがOFF操作された日時となっているが、他の日時(例えば、エンジンが停止した日時)とすることもできる。
【0047】
時間経過判定部29は、エンジン制御装置21に電源が投入されてからエンジン1を始動するまでの処理において、現時点で上記の異常判定保留時間が経過しているか否かを判定する。この判定は、直近のエンジン停止時に設定された異常判定保留時間と、前記起算タイミングの日時と、現時点の日時と、により、簡単な計算で行うことができる。
【0048】
異常判定阻止部30は、異常判定保留時間が経過していると時間経過判定部29が判定した場合には、油圧スイッチ16に高圧側異常があるとスイッチ異常判定部24が判定するのを許可し、そうでない場合には、当該判定を阻止する。従って、スイッチ異常判定部24は、エンジン1の始動前において油圧スイッチ16が開き状態となっていても、異常判定保留時間が経過するまでは、当該油圧スイッチ16に異常があると判定することはない。
【0049】
情報出力部31は、エンジン1の制御に関する様々な情報を、エンジン制御装置21の外部に出力する。この情報出力部31は、例えば通信インタフェースとして構成することができる。図示しないが、例えば計器盤等における適宜の位置に、状況をオペレータ等に報知するための報知部が設けられており、この報知部が情報出力部31に接続されている。報知部は、例えば視覚又は聴覚によりオペレータに知らせる表示装置、ランプ、ブザー等として構成され、情報出力部31から出力される信号に基づいて、油圧の異常及び油圧スイッチ16の異常を報知する。これにより、オペレータに異常の発生を速やかに知らせ、対応を促すことができる。
【0050】
次に、本実施形態のエンジン1において油圧スイッチ16の異常判定を行うフローについて、具体的に説明する。図4は、油圧スイッチ16の異常を検出する処理を示すフローチャートである。なお、図4では、油圧スイッチ16の異常検出に関連しない処理については図示を省略している。
【0051】
図4の上側のフローは、エンジン始動後にオペレータがエンジンキースイッチをOFFにした場合の処理を示している。
【0052】
エンジンキースイッチのOFF操作がされた場合、エンジン制御装置21はエンジンを停止させるとともに、いわゆるアフターラン処理を行う。このアフターラン処理において、エンジン制御装置21は現在の日時(エンジンキースイッチのOFF操作の日時)を取得し、異常判定保留時間の起算タイミングの日時として記憶部25に記憶させる(ステップS101)。また、エンジン制御装置21の異常判定保留時間設定部28は、油温センサ17により取得した油温に基づいて異常判定保留時間を設定し、この異常判定保留時間の設定値を記憶部25に記憶させる(ステップS102)。ステップS101及びステップS102の処理において、情報は不揮発性のメモリに保存されるので、後にエンジン制御装置21の電源がOFFとなっても情報は失われない。アフターラン処理の完了後、エンジン制御装置21の電源が切断される。
【0053】
図4の下側のフローは、エンジン制御装置21の電源の切断後に、ユーザがエンジンキースイッチをONにして、エンジン制御装置21に電源が投入された直後の処理を示している。
【0054】
エンジンキースイッチのON操作がされた場合、エンジン制御装置21は、既にエンジンが始動されたか否かを判定する(ステップS201)。本実施形態では、エンジン制御装置21は、エンジン回転数が所定値以上(例えば、400rpm以上)になったことに基づいて、エンジンの始動が完了したと判定する。エンジンの始動が完了している場合、エンジンオイルの圧力が高くなっている可能性があるので、油圧スイッチ16の異常を検出する処理は終了する。
【0055】
エンジンが始動されていない場合、エンジン制御装置21のスイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16の状態を調べる(ステップS202)。油圧スイッチ16が閉じ状態ならば、エンジンオイルの油圧が低く、かつ、油圧スイッチ16の接続不良及び断線が何れも生じていないと考えられる。この場合も、油圧スイッチ16に将来的に断線等が生じた場合を検出できるようにするために、処理はステップS201に戻る。このように、油圧スイッチ16の動作に異常が生じていないか否かを判定する処理が繰り返されるので、異常検出の機会を多く確保することができる。
【0056】
ステップS202の判断で、油圧スイッチ16が開き状態である場合、油圧スイッチ16の断線が疑われるが、上述の残圧によってエンジンオイルの油圧が高くなっている可能性も考えられる。そこで、時間経過判定部29は、現在の日時から、記憶部25に記憶された前記の起算タイミングの日時を減算することにより経過時間を取得し、この経過時間が、記憶部25に記憶された異常判定保留時間を上回っているか否かを調べる(ステップS203)。異常判定保留時間が経過していた場合は、残圧の滞留はなくなっているはずであるので、スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16に常時開き異常があると判定する(ステップS204)。
【0057】
ステップS203の判断で、異常判定保留時間が経過していない場合は、異常判定阻止部30が、油圧スイッチ16に異常があるとスイッチ異常判定部24が判定するのを阻止する(言い換えれば、ステップS204の処理をスキップさせる)。従って、スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16に異常があると(その時点では)判定せず、処理はステップS201に戻る。
【0058】
以上の処理により、油圧スイッチ16が開き状態であったとしても、残圧が解消したと見込まれるまでは、油圧スイッチ16に異常がある旨の判定は行われないことになる。従って、残圧の滞留を原因として、油圧スイッチ16に異常がある旨の誤った判定がスイッチ異常判定部24によってされることを防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、異常判定保留時間が経過するまでエンジン1の始動を待機する制御は行われない。異常判定保留時間が経過するまでにエンジン1の始動が完了した場合は、当該ドライビングサイクルにおいては油圧スイッチ16の異常判定が阻止されたまま打ち切られ、実質的な判断が見送られることになる。なお、本明細書でドライビングサイクルとは、エンジン始動、運転状態及びエンジン停止状態を各1回含む期間をいう。このように構成することで、エンジン1の利便性を損なわないようにすることができる。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態のエンジン制御装置21は、スイッチ異常判定部24と、異常判定保留時間設定部28と、時間経過判定部29と、異常判定阻止部30と、を備える。スイッチ異常判定部24は、エンジンオイルの油圧が閾値より高圧側である場合に開かれ、低圧側である場合に閉じられる油圧スイッチ16の状態を、エンジンキーがON操作された後に、かつ、エンジン1の回転数が所定回転数未満のときに取得し、油圧スイッチ16が開かれているときは、油圧スイッチ16の常時開き異常が発生していると判定する。異常判定保留時間設定部28は、エンジン1を停止操作した後のタイミング(エンジンキースイッチOFFのタイミング)で、エンジンオイルの油温を検出する油温センサ17の検出結果から、エンジンオイルの油温と異常判定保留時間との関係を示す保留時間情報26に基づいて、異常判定保留時間を設定する。時間経過判定部29は、前記異常判定保留時間が経過したか否かを判定する。異常判定阻止部30は、前記異常判定保留時間が経過していないと時間経過判定部29が判定した場合に、油圧スイッチ16が開かれていても、油圧スイッチ16の常時開き異常が発生している旨のスイッチ異常判定部24による判定を阻止する。
【0061】
これにより、エンジン1が停止してから残圧が解消していない間は、油圧スイッチ16に常時開き異常がある旨の判定がスイッチ異常判定部24によって行われない。従って、残圧を原因とした誤判定が発生する頻度を減らすことができる。
【0062】
また、本実施形態のエンジン制御装置21において、保留時間情報26は、エンジンオイルの油温が高い場合は低い場合に比べて前記異常判定保留時間が短くなるように定められている。
【0063】
これにより、油温が高くなればエンジンオイルの粘度が低くなり、それに応じて残圧時間が短くなる傾向を適切に考慮して、油圧スイッチ16の異常判定を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態のエンジン制御装置21において、スイッチ異常判定部24は、異常判定保留時間が経過する前にエンジン1が始動された場合は、油圧スイッチ16の常時開き異常が発生している旨の判定を異常判定阻止部30により阻止されたまま判定を打ち切る。
【0065】
これにより、エンジン1の始動を優先する制御によって、エンジンの利便性を高めることができる。
【0066】
また、本実施形態のエンジン制御装置21において、スイッチ異常判定部24は、油圧スイッチ16が閉じられているときも、エンジン1が始動されるまで判定を反復して行う。
【0067】
これにより、油圧スイッチ16の異常を検出する機会を増やすことができるので、油圧スイッチ16の異常を早期に検出することができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
図4のステップS202で、油圧スイッチ16が閉じられていると判定された場合は、ステップS201に戻らずに(即ち、判定を繰り返さずに)判定処理を直ちに終了させても良い。
【0070】
ステップS203の判定が、ステップS202の判定よりも前に行われても良い。即ち、油圧スイッチ16の状態を調べる前に、異常判定保留時間が経過しているか否かを判定し、経過していない場合は、油圧スイッチ16の状態を調べないように構成しても良い。この構成でも、異常判定保留時間が経過していない場合は、油圧スイッチ16に異常がある旨の判定が実質的に阻止されることになる。
【0071】
ステップS101及びステップS102で、エンジンの停止日時と異常判定保留時間の双方を記憶部25に記憶する代わりに、エンジンの停止日時に異常判定保留時間を加算して得られる異常判定保留解除日時を記憶部25に記憶させても良い。
【0072】
油圧スイッチ16は、油圧が所定値以上の場合に閉じられ、所定値未満の場合に開かれるスイッチとされてもよい。この場合、スイッチ異常判定部24は高圧側異常として、常時開き異常ではなく、短絡等の常時閉じ異常を検出することになる。
【0073】
保留時間情報26は、油温範囲と、残圧時間と、を対応付けた表形式のデータとすることに代えて、他の任意の形式、例えば式の形で記憶部25に記憶されていてもよい。
【0074】
油温取得部27が油温を取得して、異常判定保留時間設定部28が異常判定保留時間を設定するタイミングは、エンジンキーがOFF操作されたタイミングに代えて、例えば、エンジンの停止操作がされたタイミング、クランクシャフトの回転が検出されなくなったタイミング、エンジン制御装置21の電源切断直前のタイミング等が用いられても良い(異常判定保留時間の起算タイミングについても同様である)。なお、クランクシャフトの回転を検出するセンサとしては、公知のものを用いればよい。
【0075】
油圧スイッチ16は、ダイヤフラム式に代えて、他の形式、例えばピストン式の油圧スイッチに変更することもできる。
【0076】
エンジン1は、ディーゼルエンジンに限定されず、例えばガソリンエンジンとされていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン
16 油圧スイッチ
17 油温センサ(油温検出部)
21 エンジン制御装置
24 スイッチ異常判定部
27 油温取得部
28 異常判定保留時間設定部
29 時間経過判定部
30 異常判定阻止部
図1
図2
図3
図4