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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-167872(P2019-167872A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】チューブポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 5/00 20060101AFI20190906BHJP
【FI】
   F04C5/00 341D
   F04C5/00 341C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-56216(P2018-56216)
(22)【出願日】2018年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】597095957
【氏名又は名称】株式会社アクアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】玉川 長雄
(72)【発明者】
【氏名】井上 広昭
(57)【要約】
【課題】 チューブ内を通して流体を送液させるチューブポンプにおいて、iPS細胞懸濁液などの流体を送液させる場合に、iPS細胞懸濁液に含まれる細胞を損傷させたりすることなく適切に送液できるようにする。
【解決手段】 ハウジング10内に設けたチューブ収容凹部14内にチューブ13をリング状に配置し、このチューブを送液用押圧部材23によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体Xを送液させるチューブポンプにおいて、チューブ収容凹部内に配置されたチューブを送液用押圧部材により押圧させた部分におけるチューブの内周面が密着しないようにして隙間を形成するようにした。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けたチューブ収容凹部内にチューブをリング状に配置し、前記のリング状に配置されたチューブを送液用押圧部材によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるチューブポンプにおいて、前記のチューブ収容凹部内に配置されたチューブを前記の送液用押圧部材により押圧させた部分におけるチューブの内周面が密着しないようにして隙間を形成するようにしたことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載したチューブポンプにおいて、前記のチューブ収容凹部内に配置された前記のチューブの一部がチューブ収容凹部から突出するようにして、チューブ収容凹部内にチューブをリング状に配置させると共に、前記の送液用押圧部材として、回転装置における回転軸から放射方向に向けて設けられた回転用アームの先端部に送液用押圧ローラーを設け、前記の送液用押圧ローラーを前記のチューブ収容凹部の縁部に当接させるように付勢させて、チューブ収容凹部から突出した前記のチューブを押圧・変形させ、チューブの内周面が密着しないように隙間を形成した状態で、前記の送液用押圧ローラーを回転装置によりリング状に配置されたチューブに沿って移動させることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したチューブポンプにおいて、前記の送液用押圧部材の他に、前記のリング状に配置されたチューブの内周面が密着するように押圧・変形させる液吸引用押圧部材を設け、前記の液吸引用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させ、前記のチューブ内に流体を吸引させて、チューブ内に流体を充填させる一方、チューブ内に流体を充填させた状態で、前記の液吸引用押圧部材をチューブの内周面を密着させない位置に移動させることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載したチューブポンプにおいて、前記の液吸引用押圧部材として、前記の回転装置における回転軸から放射方向に向かう吸引用回転押圧アームを回転軸の軸方向に移動可能に設け、前記の吸引用回転押圧アームの先端部に液吸引用押圧ローラーを設けると共に、前記の吸引用回転押圧アームを回転軸の軸方向に移動させる移動手段を設け、前記の移動手段によって吸引用回転押圧アームに設けられた前記の液吸引用押圧ローラーを、前記のチューブを押圧・変形させてチューブの内周面を密着させる位置に移動させた状態で、前記の液吸引用押圧ローラーを前記の回転装置によりリング状に配置されたチューブに沿って移動させて前記のチューブ内に流体を充填させる一方、チューブ内に流体が充填された状態で、前記の移動手段によって吸引用回転押圧アームに設けられた前記の液吸引用押圧ローラーを、チューブの内周面を密着させない位置に移動させることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか1項に記載したチューブポンプにおいて、前記のチューブを収容させる前記のチューブ収容凹部のリング状になった縁部に沿って凹凸を設け、前記の送液用押圧ローラーを前記のチューブ収容凹部の縁部に当接させて、送液用押圧ローラーにより前記のチューブ収容凹部から突出したチューブを押圧させる状態を変化させ、送液用押圧ローラーにより押圧させた部分におけるチューブの内周面に形成される隙間を変化させることを特徴とするチューブポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に設けたチューブ収容凹部内にチューブをリング状に配置し、前記のリング状に配置されたチューブを送液用押圧部材により押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるチューブポンプに関するものである。特に、前記のチューブポンプを用いて、例えば、iPS細胞懸濁液等の流体を送液させる場合に、前記のiPS細胞懸濁液に含まれる前記の細胞を損傷させたりすることなく、前記のような流体を適切に送液できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からチューブ内を通して流体を送液させるにあたり、特許文献1、特許文献2等に示されるように、ハウジング内に設けたチューブ収容部にチューブをリング状に配置し、前記のリング状に配置されたチューブを押圧ローラーや偏芯回転部材等の送液用押圧部材により押圧・変形させながら、この送液用押圧部材を回転装置によりリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるようにしたチューブポンプが使用されている。
【0003】
ここで、このようなチューブポンプにおいて、前記のようにリング状に配置されたチューブを押圧ローラーや偏芯回転部材等の送液用押圧部材により押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、iPS細胞懸濁液等の流体を、チューブ内を通して送液させるにあたり、送液用押圧部材によりチューブの内周面を密着させるように押圧させるようにした場合、前記のiPS細胞懸濁液に含まれる前記の細胞が損傷するという問題があった。
【0004】
このため、前記のようなiPS細胞懸濁液等の流体をチューブポンプによって送液させるにあたり、前記の送液用押圧部材によってチューブを押圧させる場合に、チューブの内周面が密着しないようにすることが好ましく、送液させる細胞懸濁液の種類やチューブの内径等によって異なるが、例えば、チューブポンプによって毎分100μl以下の微小容量の送液を行うのに使用する内径が1.0mm以下のチューブを使用するような場合、チューブの内周面に0.1mm以上の隙間を設けることが好ましいとされている。
【0005】
しかし、内径が1.0mm以下のチューブを使用し、チューブの内周面に0.1mm以上の隙間を設けるようにして毎分100μl以下の微小容量の送液を安定して行うことは非常に困難であった。
【0006】
また、従来においては、特許文献3に示されるように、ハウジングに形成された円筒状の内壁面に沿わせてチューブをリング状に配置させ、このチューブを前記の内壁面に圧迫させる加圧部材を偏芯ローターによって偏芯運動させて送液させるにあたり、チューブの最大押圧量や最大偏芯量を可変することができるようにして、流体を送液させるようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、特許文献3に示されるものにおいては、チューブの最大押圧量や最大偏芯量を変更させるために、加圧部材や偏芯ローターの位置等を適切に調整することは非常に困難であり、また加圧部材や偏芯ローターの摺動部分が摩耗して、チューブの内周面における状態の精度を維持させることが困難になったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−68657号公報
【特許文献2】特開2006−29161号公報
【特許文献3】特開2012−189045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ハウジング内に設けたチューブ収容部内にチューブをリング状に配置し、前記のリング状に配置されたチューブを送液用押圧部材により押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるチューブポンプにおいて、iPS細胞懸濁液等の流体を送液させる場合に、前記のiPS細胞懸濁液に含まれる前記の細胞を損傷させたりすることなく適切に送液できるようにすることを課題とするものである。
【0010】
特に、iPS細胞懸濁液等の流体を送液させる場合に、チューブの内周面における隙間を簡単な構成で調整できるようにすると共に、前記の特許文献3に示されるもののように、加圧部材や偏芯ローターの摺動部分が摩耗して、チューブの内周面における状態の精度を維持させることが困難になるということのないチューブポンプを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のチューブポンプにおいては、前記のような課題を解決するため、ハウジング内に設けたチューブ収容凹部内にチューブをリング状に配置し、前記のリング状に配置されたチューブを送液用押圧部材によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるチューブポンプにおいて、前記のチューブ収容凹部内に配置されたチューブを前記の送液用押圧部材により押圧させた部分におけるチューブの内周面が密着しないようにして隙間を形成するようにした。
【0012】
そして、本発明におけるチューブポンプのように、チューブ収容凹部内にリング状に配置されたチューブを、送液用押圧部材によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるにあたり、前記の送液用押圧部材により押圧させた部分におけるチューブの内周面が密着しないように隙間を形成させるようにすると、iPS細胞懸濁液等の流体を送液させる場合に、iPS細胞懸濁液に含まれる前記の細胞を損傷させたりすることなく、送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させるだけで、前記のような流体を適切に送液できるようになる。
【0013】
ここで、本発明のチューブポンプにおいて、前記のようにリング状に配置されたチューブを、送液用押圧部材によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるにあたっては、前記のチューブの一部がチューブ収容凹部内から突出するようにして、チューブをチューブ収容凹部内にリング状に配置させると共に、前記の送液用押圧部材として、回転装置における回転軸から放射方向に向けて設けられた回転用アームの先端部に送液用押圧ローラーを設け、前記の送液用押圧ローラーを前記のチューブ収容凹部の縁部に当接させるように付勢させて、チューブ収容凹部内から突出した前記のチューブを押圧・変形させ、チューブの内周面が密着しないように隙間を形成した状態で、前記の送液用押圧ローラーを回転装置によりリング状に配置されたチューブに沿って移動させるようにすることができる。このようにすると、チューブをリング状に配置させるチューブ収容凹部の深さを前記のチューブに対応するように適切に設定するだけで、前記の送液用押圧ローラーをチューブ収容凹部の縁部に当接させるように付勢させてチューブを押圧・変形させることにより、チューブの内周面が密着しないようにして適切な隙間を簡単に形成することができ、前記の回転装置により送液用押圧ローラーをリング状に配置されたチューブに沿って移動させるだけで、前記のようなiPS細胞懸濁液等の流体を安定して送液させることができる。
【0014】
また、本発明のチューブポンプにおいては、前記の送液用押圧部材の他に、前記のリング状に配置されたチューブの内周面が密着するように押圧・変形させる液吸引用押圧部材を設け、前記の液吸引用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させ、前記のチューブ内に流体を吸引させて、流体をチューブ内に充填させる一方、チューブ内に流体を充填させた状態で、前記の液吸引用押圧部材をチューブの内周面を密着させない位置に移動させるようにすることができる。このように、チューブの内周面が密着するように押圧・変形させる前記の液吸引用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させると、この液吸引用押圧部材の移動に伴う呼び水作用によって、チューブ内に前記の流体が適切に吸引されて、チューブ内に前記の流体を速やかに充填させることができるようになる。
【0015】
そして、このようにチューブ内に流体を充填させた後、前記の液吸引用押圧部材をチューブの内周面を密着させない位置に移動させると、液吸引用押圧部材によるチューブの内周面の密着状態が解除され、前記のiPS細胞懸濁液等の流体がチューブ内を通して送液される際に、iPS細胞懸濁液等の流体に含まれる細胞が液吸引用押圧部材による押圧によって損傷するのが防止され、前記の送液用押圧部材によってチューブの内周面が密着しないように隙間が形成された状態で、前記の流体がチューブ内を通して適切に送液されるようになる。
【0016】
また、本発明のチューブポンプにおいて、前記のような液吸引用押圧部材を設けるにあたっては、例えば、前記の液吸引用押圧部材として、前記の回転装置における回転軸から放射方向に向かう吸引用回転押圧アームを回転軸の軸方向に移動可能に設け、前記の吸引用回転押圧アームの先端部に液吸引用押圧ローラーを設けると共に、前記の吸引用回転押圧アームを回転軸の軸方向に移動させる移動手段を設け、前記の移動手段によって吸引用回転押圧アームに設けられた前記の液吸引用押圧ローラーを、前記のチューブを押圧・変形させてチューブの内周面を密着させる位置に移動させた状態で、前記の液吸引用押圧ローラーを前記の回転装置によりリング状に配置されたチューブに沿って移動させて前記のチューブ内に流体を充填させる一方、チューブ内に流体が充填された状態で、前記の移動手段によって吸引用回転押圧アームに設けられた前記の液吸引用押圧ローラーを、チューブの内周面を密着させない位置に移動させるようにすることができる。
【0017】
また、本発明のチューブポンプにおいて、前記のように送液用押圧部材として、回転装置における回転軸から放射方向に向けて設けられた回転用アームの先端部に送液用押圧ローラーを設け、前記の送液用押圧ローラーをチューブ収容凹部の縁部に当接させるように付勢させて、チューブ収容凹部内から突出したチューブを押圧・変形させるにあたり、前記のチューブ収容凹部のリング状になった縁部に沿って凹凸を設け、前記の送液用押圧ローラーをチューブ収容凹部の縁部に当接させて、チューブ収容凹部内から突出したチューブを押圧させる状態を変化させ、送液用押圧ローラーにより押圧させた部分におけるチューブの内周面に形成される隙間を変化させるようにすることができる。このようにすると、送液用押圧ローラーにより押圧・変形されるチューブの内周面に形成される隙間が、チューブ収容凹部の縁部における凹凸に伴って変化し、これによって前記のようにチューブを通して送液される流体に乱流が生じ、iPS細胞懸濁液等の流体を送液する場合に、細胞に刺激を与えて培養時間を短縮させたり、iPS細胞においては、培養中に発生する球塊状細胞を乱流によって分散させたりすることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のチューブポンプにおいては、チューブ収容凹部内にリング状に配置されたチューブを、送液用押圧部材によりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させて、チューブ内を通して流体を送液させるにあたり、送液用押圧部材により押圧させた部分におけるチューブの内周面が密着しないように隙間を形成するようにしたため、iPS細胞懸濁液等の流体を送液させる場合に、iPS細胞懸濁液に含まれる前記の細胞を損傷させたりすることなく、送液用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させるだけで、前記のような流体を適切に送液できるようになる。
【0019】
また、本発明のチューブポンプにおいて、リング状に配置されたチューブの内周面が密着するように押圧・変形させる液吸引用押圧部材を設け、前記の液吸引用押圧部材をリング状に配置されたチューブに沿って移動させ、前記のチューブ内に流体を吸引させて、チューブ内に流体を充填させる一方、チューブ内に流体を充填させた状態で、前記の液吸引用押圧部材をチューブの内周面を密着させない位置に移動させるようにすると、リング状に配置されたチューブ内における空気を適切に排除させて、前記の流体を前記のチューブ内に速やかに充填させる操作を簡単に行えるようになると共に、チューブ内に流体を充填させた後は、前記の液吸引用押圧部材によるチューブの内周面の密着状態が解除され、前記のように送液用押圧部材により、チューブの内周面が密着しないように隙間を形成して、前記のiPS細胞懸濁液等の流体を適切に送液できるようになる。
【0020】
また、本発明のチューブポンプにおいて、送液用押圧部材として、回転装置における回転軸から放射方向に向けて設けられ回転用アームの先端部に送液用押圧ローラーを設け、前記の送液用押圧ローラーをチューブ収容凹部の縁部に当接させるように付勢させて、チューブ収容凹部内から突出したチューブを押圧・変形させるにあたり、前記のチューブ収容凹部のリング状になった縁部に沿って凹凸を設けると、送液用押圧ローラーにより押圧させた部分におけるチューブの内周面に形成される隙間を変化させることができ、前記のようにチューブを通して送液される流体に乱流が生じ、iPS細胞懸濁液等の流体を送液する場合に、細胞に刺激が与えられて培養時間を短縮させたり、iPS細胞においては、培養中に発生する球塊状細胞を乱流で分散させたりすることもできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るチューブポンプにおいて、本体部の上に蓋部を装着させるハウジングを用い、前記の蓋部に設けられたチューブ収容凹部内にチューブの一部がチューブ収容凹部内から突出するようにしてチューブを収容させた蓋部と、前記の本体部の下に設けられた回転装置によって回転される回転軸を本体部内に導入させ、この回転軸から放射方向両側に向けて設けられ回転用アームの各先端部に送液用押圧ローラーを取り付けると共に、前記の回転用アームを付勢バネにより上方に付勢させて止板により係止させた本体部とを分離させた状態を示した概略断面図である。
図2】前記の実施形態に係るチューブポンプにおいて、蓋部の下面にリング状になったチューブ収容凹部を設け、このチューブ収容凹部に沿ってチューブをリング状に配置させると共に、この蓋部に、チューブをチューブ収容凹部に導入される導入部とチューブ収容凹部から導出させる導出部とを設けた状態を示した概略説明図である。
図3】前記の実施形態に係るチューブポンプに用いる回転装置における回転軸の先端から下方に向かう保持溝を設けた状態を示した概略部分説明図である。
図4】前記の実施形態に係るチューブポンプにおいて、回転装置における回転軸の先端から下方に向かう保持溝に回転軸の放射方向両側に向けて回転用アームを上下方向にスライド可能に挿入させ、この回転用アームの両側の端部に送液用押圧部材として送液用押圧ローラーを取り付けると共に、この回転用アームを上方に付勢させた状態で止板により回転軸に保持させた状態を示した概略説明図である。
図5】前記の実施形態に係るチューブポンプの使用状態を示し、(A)は蓋部に設けたチューブ収容凹部内にリング状に配置したチューブを、送液用押圧ローラーによりチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、この送液用押圧部材をチューブに沿って回転移動させて、チューブ内を通して流体を送液させる平面状態を示した概略説明図、(B)は前記の回転装置によって回転移動される送液用押圧ローラーによりチューブをチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させて流体を送液させる場合に、チューブの内周面が密着させずに隙間が形成されて送液される断面状態を示した概略説明図である。
図6】前記の実施形態に係るチューブポンプにおいて、前記のように送液用押圧ローラーによりチューブをチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させて流体を送液させる場合に、チューブの内周面が密着させずに隙間が形成されて送液される部分を拡大した部分拡大説明図である。
図7】前記の実施形態に係るチューブポンプの第1の変更例において、(A)はリング状になったチューブ収容凹部における両側の縁部を、リング状になったチューブ収容凹部に沿って凹凸を有するように形成し、チューブ収容凹部の両側における凹凸を有する縁部に送液用押圧ローラーを当接させ、送液用押圧ローラーによりチューブをチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させながら、送液用押圧部材をチューブに沿って回転移動させて、チューブ内を通して流体を送液させる平面状態を示した概略説明図、(B)はチューブ収容凹部の縁部における凹凸に送液用押圧ローラーを当接させるようにして移動させる状態を示した概略説明図である。
図8】前記の第1の変更例において、(A),(B)はチューブ収容凹部の縁部における凹凸に送液用押圧ローラーを当接させて移動させた場合に、送液用押圧ローラーにより押圧させた部分におけるチューブの内周面に形成される隙間の大きさが変化する状態を示した部分拡大説明図である。
図9】前記の実施形態に係るチューブポンプの第2の変更例において、(A)は前記の実施形態と同様に、送液用押圧ローラーによりチューブをチューブ収容凹部内に向けて押圧・変形させ、チューブの内周面が密着しないように隙間を形成した状態で送液させる部分を示した部分概略説明図、(B)は前記の送液用押圧ローラーとは別に、回転装置の回転軸に対して軸方向に移動可能に設けた吸引用回転押圧アームの両側の先端部における支持部に液吸引用押圧部材として液吸引用押圧ローラーを設け、吸引用回転押圧アームを蓋部側に向けて上方に移動させて、前記の液吸引用押圧ローラーによりチューブ収容凹部内に配置されたチューブを押圧・変形させて、チューブの内周面を密着させた断面状態を示した概略説明図、(C)は前記の送液用押圧ローラーと液吸引用押圧ローラーとを回転装置によって回転移動させ、液吸引用押圧ローラーにより流体を蓋部における導入部からチューブ収容凹部に導入されたチューブ内に吸引させてチューブ内に流体を充填させながら、送液用押圧ローラーと液吸引用押圧ローラーとによって流体を送液させる平面状態を示した概略説明図である。
図10】前記の第2の変更例において、チューブ収容凹部内に導入されたチューブ内に流体を充填させた後、上方に移動されていた吸引用回転押圧アームを下方に移動させて、前記の液吸引用押圧ローラーによってチューブ収容凹部内に配置されたチューブを押圧・変形させるのを解除して、チューブの内周面を密着させないようにした断面状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態に係るチューブポンプを添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係るチューブポンプは、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態に係るチューブポンプにおいては、図1に示すように、ハウジング10として、本体部11の上に蓋部12を装着させるようにしたものを用いている。なお、ハウジング10としては、図示していないが、本体部の下に蓋部を装着させるようにしたものを用いることもできる。
【0024】
そして、前記の蓋部12においては、図2に示すように、本体部11と対面する蓋部12の下面にリング状になったチューブ収容凹部14を設け、このチューブ収容凹部14に沿ってチューブ13をリング状に配置させると共に、この蓋部12に、チューブ13をチューブ収容凹部14に導入される導入部15とチューブ収容凹部14から導出させる導出部16とを設けている。
【0025】
また、前記のチューブ13をチューブ収容凹部14内に収容させるにあたっては、図1に示すように、前記のチューブ13の一部がチューブ収容凹部14内から下方に若干突出するようにしている。
【0026】
また、この実施形態に係るチューブポンプにおいては、図1に示すように、前記の本体部11の下に回転装置20を設け、この回転装置20によって回転される回転軸21を本体部11内に導入させると共に、図3に示すように、この回転軸21に、その先端から下方に向かう保持溝21aを設けている。
【0027】
そして、図4に示すように、この保持溝21a内に回転軸21から放射方向両側に向けて延出された回転用アーム22を上下方向にスライド可能に挿入させ、この回転用アーム22の両側の端部に、前記のチューブ収容凹部14内から下方に若干突出するように設けたチューブ13を押圧・変形させる送液用押圧部材23として送液用押圧ローラー23を取り付けると共に、前記の回転用アーム22を付勢バネ24により保持溝21a内において上方に付勢させ、このように付勢された回転用アーム22が回転軸21における保持溝21a内から飛び出すのを防止する止板21bを前記の回転軸21に設けている。
【0028】
ここで、この実施形態に係るチューブポンプにおいては、図5(A),(B)及び図6に示すように、前記の本体部11の上に蓋部12を装着させ、前記のように付勢バネ24により保持溝21a内において上方に付勢された回転用アーム22の両側の端部に設けられた各送液用押圧ローラー23を、チューブ13を収容させたチューブ収容凹部14の両側の縁部14aに当接させるようにして、各送液用押圧ローラー23によってチューブ収容凹部14内から下方に若干突出したチューブ13を押圧させて変形させ、このように送液用押圧ローラー23により押圧させた部分におけるチューブ13の内周面が密着されずに、チューブ13の内周面に隙間が形成されるようにしている。
【0029】
そして、前記の回転装置20における回転軸21を回転させて、前記の回転用アーム22の両側の端部に設けられた各送液用押圧ローラー23を、前記のようにチューブ13を押圧させた状態でチューブ収容凹部14内にリング状に収容されたチューブ13に沿って回転移動させるようにしている。
【0030】
このようにすると、蓋部12における導入部15からチューブ収容凹部14に導入されたチューブ13内に、iPS細胞懸濁液等の流体Xが導かれると共に、各送液用押圧ローラー23の回転に伴ってチューブ収容凹部14内にリング状に配置されたチューブ13が順々に押圧・変形されて、チューブ13の内周面に形成される隙間が小さくなった位置がリング状に配置されたチューブ13に沿って順々に移動されて、前記のようにチューブ13内に導かれた前記の流体Xが、このチューブ13内を通して蓋部12における導出部16に移動され、チューブ収容凹部14内から前記の導出部16を通して導出されたチューブ13から所定量の流体Xが安定して送液されるようになる。
【0031】
このように、この実施形態に係るチューブポンプにおいては、前記の送液用押圧ローラー23により押圧させた部分におけるチューブ13の内周面を密着させずに、チューブ13の内周面に隙間を形成するようにして、iPS細胞懸濁液等の流体Xを、チューブ13内を通して送液させているため、iPS細胞懸濁液等の流体Xに含まれる前記の細胞を損傷させたりすることなく、チューブ13内を通して前記のような流体Xを安定して送液できるようになる。
【0032】
ここで、前記の実施形態におけるチューブポンプにおいては、送液用押圧ローラー23を当接させるチューブ収容凹部14の両側の縁部14aが一定した高さになるようにしており、送液用押圧ローラー23をチューブ収容凹部14の両側の縁部14aに当接させてチューブ収容凹部14内におけるチューブ13を押圧・変形させた場合、チューブ収容凹部14内におけるチューブ13は、その内周面が密着しない状態で一定した隙間が形成され、iPS細胞懸濁液等の流体Xが一定した状態で送液されるようになる。
【0033】
これに対して、前記のように送液用押圧ローラー23をチューブ収容凹部14の両側の縁部14aに当接させて、チューブ収容凹部14から突出したチューブ13を押圧・変形させて、チューブ収容凹部14内におけるチューブ13の内周面が密着しないようにして隙間を形成するにあたり、図7(A),(B)に示す第1の変更例のように、前記のリング状になったチューブ収容凹部14における両側の縁部14aを、リング状になったチューブ収容凹部14に沿って凹凸を有するように形成し、このようにチューブ収容凹部14の両側における凹凸を有する縁部14aに対して前記の送液用押圧ローラー23を当接させようにすることができる。
【0034】
このようにすると、図8(A),(B)に示すように、チューブ収容凹部14から突出したチューブ13を押圧させる状態を変化させ、送液用押圧ローラー23により押圧させた部分におけるチューブ13の内周面に形成される隙間の大きさを変化させるようにすることができ、チューブ13を通して送液されるiPS細胞懸濁液等の流体Xに乱流を生じさせることができるようになる。ここで、このようにチューブ13の内周面に形成される隙間の大きさを変化させて、iPS細胞懸濁液等の流体Xに乱流が生じるようにして送液させると、流体Xに含まれる細胞に刺激が与えられて培養時間が短縮され、またiPS細胞においては、培養中に発生する球塊状細胞が乱流によって分散されて、球塊状細胞の発生が抑制されるようになる。
【0035】
また、前記の実施形態におけるチューブポンプにおいては、前記の回転装置20を本体部11の下に設けるようにしたが、図9(A)〜(C)及び図10に示すように、回転装置20を本体部11内に設けるようにすることもできる。
【0036】
また、前記の実施形態におけるチューブポンプにおいては、前記のように各送液用押圧ローラー23を、チューブ収容凹部14の両側の縁部14aに当接させて、チューブ収容凹部14から突出したチューブ13を押圧・変形させ、チューブ収容凹部14内におけるチューブ13の内周面が密着しないようにして隙間を形成するようにしただけであるため、導入部15からチューブ収容凹部14に導入されたチューブ13内に前記の流体Xを吸引させる呼び水作用が弱く、チューブ13内に流体Xを充填させるのに多くの時間が必要になり、別に前記の流体Xをチューブ13内に充填させたりすることが必要になる。
【0037】
このため、前記の実施形態におけるチューブポンプにおいて、図9(A)〜(C)及び図10に示す第2の変更例においては、本体部11内に設けた前記の回転装置20の回転軸21に対して、前記のようにして回転用アーム22を設けると共に、この回転用アーム22の両端部にそれぞれ送液用押圧ローラー23を取り付け、また前記の回転用アーム22を付勢する付勢バネ24よりも下方の位置に、回転軸21の軸方向に移動可能な状態で吸引用回転押圧アーム25を前記の回転用アーム22と交差する放射方向両側から上方に向けて鉤型状に延出させると共に、この吸引用回転押圧アーム25の両側の先端部にそれぞれ凹型状になった支持部25aを設け、各支持部25aにそれぞれ液吸引用押圧部材26として液吸引用押圧ローラー26を設けている。
【0038】
また、この第2の変更例においては、前記の吸引用回転押圧アーム25を回転軸21の軸方向に移動させる移動手段30として、前記の吸引用回転押圧アーム25の両側の先端部に設けた凹型状になった各支持部25aの下面にそれぞれ永久磁石31を取り付けると共に、前記の永久磁石31と対向するようにして電磁石32を設けている。なお、吸引用回転押圧アーム25を回転軸21の軸方向に移動させる移動手段30は、このように磁力を用いたものに限定されず、様々な移動手段を採用することができる。
【0039】
ここで、第2の変更例に示すチューブポンプにおいて、導入部15からチューブ収容凹部14内に導入されたチューブ13内に流体Xを吸引させるにあたっては、前記の移動手段30における電磁石32の極性を各支持部25aの下面に設けた永久磁石31と同極性にして反発磁力を作用させ、前記の吸引用回転押圧アーム25を回転軸21の軸方向上方に移動させて、図9(B)に示すように、各支持部25aに設けられた液吸引用押圧ローラー26により前記のリング状に配置されたチューブ13を押圧・変形させて、チューブ13の内周面を密着させるようにする。そして、この状態で、図9(B),(C)に示すように、前記の回転装置20における回転軸21を回転させ、チューブ13の内周面を密着するように変形させた前記の各液吸引用押圧ローラー26を、チューブ収容凹部14内にリング状に収容されたチューブ13に沿って回転移動させ、前記の流体Xを蓋部12における導入部15からチューブ収容凹部14に導入されたチューブ13内に導くようにする。
【0040】
このようにすると、チューブ13の内周面を密着するように変形させた各液吸引用押圧ローラー26により、導入部15からチューブ収容凹部14に導入されたチューブ13内に前記の流体Xを吸引させる呼び水作用が強く働き、前記の流体Xがチューブ13内に速やかに充填されるようになる。
【0041】
そして、このように導入部15からチューブ収容凹部14に導入されたチューブ13内に前記の流体Xが十分に充填された後は、前記の移動手段30における電磁石32を停止させ、或いは電磁石32の極性を各支持部25aの下面に設けた永久磁石31と逆極性にして、図10に示すように、前記の吸引用回転押圧アーム25を回転軸21の軸方向下方に移動させて、各支持部25aに設けられた液吸引用押圧ローラー26によって前記のチューブ収容凹部14内にリング状に配置されたチューブ13を押圧させないようにする。
【0042】
このようにした状態で、前記の実施形態の場合と同様に、回転用アーム22の両側の端部に設けられた各送液用押圧ローラー23を、前記のようにチューブ13を押圧させた状態でチューブ収容凹部14内にリング状に収容されたチューブ13に沿って回転移動させ、前記のチューブ13内に前記の流体Xを導くと共に、各送液用押圧ローラー23の回転に伴ってチューブ収容凹部14内にリング状に配置されたチューブ13を順々に押圧・変形させて、チューブ13の内周面に形成される隙間を小さくなった位置をリング状に配置されたチューブ13に沿って順々に移動させ、前記のようにチューブ13内に導かれた前記の流体Xをこのチューブ13内を通して蓋部12における導出部16に移動させ、チューブ収容凹部14内から前記の導出部16を通して導出されたチューブ13から所定量の流体Xを安定して送液させるようにする。
【0043】
なお、前記の実施形態においては、チューブ収容凹部14内にリング状に収容されたチューブ13を押圧・変形させるのに、送液用押圧ローラー23や液吸引用押圧ローラー26からなるローラー部材を用いるようにしたが、チューブ13を押圧・変形させる部材はこのようなものに限定されず、偏芯回転するリング部材を用いるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 :ハウジング
11 :本体部
12 :蓋部
13 :チューブ
14 :チューブ収容凹部
14a :縁部
15 :導入部
16 :導出部
20 :回転装置
21 :回転軸
21a :保持溝
21b :止板
22 :回転用アーム
23 :送液用押圧ローラー(送液用押圧部材)
24 :付勢バネ
25 :吸引用回転押圧アーム
25a :支持部
26 :液吸引用押圧ローラー(液吸引用押圧部材)
30 :移動手段
31 :永久磁石
32 :電磁石
X :流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10