【解決手段】シフトレンジ切替制御装置1の制御部70は、接触部51の接触位置から回転方向遅角側に隣接する他の谷部のディテントプレート30の回転方向遅角側の所定位置まで接触部を移動させるためのモータ回転軸11の目標回転角度を設定する目標回転角度設定部と、モータ回転軸11を目標回転角度まで回転後に停止させるモータ駆動制御部と、モータ回転軸11の停止後に、ディテントプレート30で接触部が他の谷部の底に移動するモータ回転軸11の回転移動角度を算出するモータ回転軸回転移動角度算出部と、算出された回転移動角度に基づき目標回転角度を変更する目標回転角度補正部と、を有する。
前記目標回転角度補正部は、前記他の谷部の前記所定位置と、前記モータ回転軸回転移動角度算出部によって算出された前記モータ回転軸の回転移動角度と、に基づいて、前記モータ回転軸の回転角度に対する前記マニュアルシャフトの回転角度の角度差の有無を判定し、前記角度差が有る場合に、前記目標回転角度を増大する補正を行う
請求項1に記載のシフトレンジ切替制御装置。
前記制御部は、前記目標回転角度補正部によって増大補正される前記目標回転角度が、前記他の谷部よりも前記ディテントプレートの回転方向遅角側に隣接する谷部に前記接触部が移動可能な角度である場合には、前記モータ駆動制御部による前記モータの駆動制御を停止させる
請求項1に記載のシフトレンジ切替制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るシフトレンジ切替制御装置について説明する。本実施形態では、自動車等の車両に搭載される自動変速機の制御を行うシフトレンジ切替制御装置について説明する。また、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、
図1に示すモータのモータ回転軸と直交する方向と平行な方向、すなわち、
図1の上下方向とする。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0012】
また、以下の説明においては、軸方向の正の側(+Z側)を「リア側」と記し、Z軸方向の負の側(−Z側)を「フロント側」と記す。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と記し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記す。
【0013】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係るシフトレンジ切替制御装置の概略構成図である。
図2は、ディテントプレートの正面図である。本実施形態のシフトレンジ切替制御装置1は、
図1に示すように、モータ10と、減速機15と、マニュアルシャフト20と、ディテントプレート30と、停止位置保持部50と、回転角度検出部60と、制御部70とを有する。本実施形態では、シフトレンジ切替制御装置1は、パーキング機構23をさらに有する。
【0015】
モータ10は、軸方向に延びる中心軸Jを中心とするモータ回転軸11を有する。モータ回転軸11には減速機15が連結される。減速機15の出力軸16にはマニュアルシャフト20が連結される。マニュアルシャフト20には、
図1及び
図2に示すように、複数のシフトレンジに対応する複数の谷部31、32、33、34及び複数の谷部31、32、33、34間の山部35,36,37が連続的に設けられたディテントプレート30が連結される。ディテントプレート30の複数の谷部31、32、33、34のいずれかにマニュアルシャフト20の径方向外側から径方向内側方向に向かって付勢する接触部51が接触した状態でディテントプレート30の停止位置を保持する停止位置保持部50が配置される。また、モータ10は、モータ回転軸11の回転角度を検出する回転角度検出部60を有する。モータ10は、制御部70によってモータ回転軸11の回転角度が制御される。以下、構成部材毎に詳細に説明する。
【0016】
<モータ10>
モータ10は、例えばスイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)等の同期モータである。モータ10は、通電することで、モータ回転軸11が回転する。
【0017】
<回転角度検出部60>
回転角度検出部60は、例えば、非接触式ポテンショメータである。非接触式ポテンショメータは、モータ10のモータ回転軸11を含む回転体の外周に磁石が取付けられ、固定部側の部材にホール素子が取付けられる。ホール素子からの出力に基づいて回転体の回転角度が求められる。回転角度検出部60はエンコーダでもよい。エンコーダは、相対位置センサであり、例えば磁気式のロータリエンコーダである。
【0018】
<減速機15>
減速機15は、モータ10で発生する回転動力を減速して出力するプラネタリギヤあるいは歯車列等を有する。減速機15は、モータ10の回転動力を減速するとともにトルクを増大する。本実施形態では、減速機15は、モータ10のフロント側(−Z側)に配置される。減速機15の出力軸16には、マニュアルシャフト20が連結される。
【0019】
<マニュアルシャフト20>
マニュアルシャフト20のリア側(+Z側)の端部は、減速機15の出力軸16に同軸上に連結される。また、マニュアルシャフト20のフロント側(−Z側)の端部は、図示ししいないが、例えば自動変速機のケース等に回動可能に支持される。これにより、モータ10のモータ回転軸11を回転させると、ディテントプレート30が回転して、パーキング機構23のパーキングロッド24が押し引きされる。パーキング機構23については、後述する。
【0020】
<ディテントプレート30>
図2は、ディテントプレートの正面図である。ディテントプレート30は、
図1及び
図2に示すように、軸方向視において径方向内側から外側に進むに従って周方向に広がる扇状である。ディテントプレート30の径方向内側端部には、マニュアルシャフト20が貫通する孔部38が設けられる。孔部38にマニュアルシャフト20が貫通した状態で、マニュアルシャフト20にディテントプレート30が一体的に取付けられる。このため、マニュアルシャフト20が回転すると、ディテントプレート30も回転する。
【0021】
ディテントプレート30の径方向外側の周縁部には、複数のシフトレンジに対応する複数の谷部31,32,33,34及び複数の谷部1,32,33,34間の山部35,36,37が連続的に設けられる。本実施形態では、周方向一方側から他方側へ向かって、Pレンジに対応する谷部31と、Rレンジに対応する谷部32と、Nレンジに対応する谷部33と、Dレンジに対応する谷部34が設けられる。これらの谷部31,32,33,34は、径方向外側から内側方向に向かって延びる。Pレンジに対応する谷部31は、他の谷部32,33,34と比較して大きい。山部35,36,37は、径方向外側へ突出する。
【0022】
<停止位置保持部50>
停止位置保持部50は、接触部51とディテントスプリング53とを有する。ディテントスプリング53は、板状であり、X軸方向に沿って延びる。ディテントスプリング53は、弾性変形可能な材料製である。ディテントスプリング53は、一端側がマニュアルシャフト20に近接した配置された部材55に固定された片持ち支持状態である。ディテントスプリング53の自由端側は、接触部51が回転自在に設けられる。接触部51は、円筒状であり、接触部51内に軸部が相対回転自在に通される。軸部の軸方向両端がディテントスプリング53の自由端側の二股部53aに取り付けられる。このため、接触部51は軸部に対して回転自在である。
【0023】
接触部51は、複数の谷部31,32,33,34のいずれかの底に接触した状態で、マニュアルシャフト20の径方向外側から径方向内側方向に向かって谷部31,32,33,34を付勢する。すなわち、接触部51が谷部31,32,33,34に接触した状態では、ディテントスプリング53は弾性変形して接触部51をマニュアルシャフト20の中心軸と交差する方向に付勢する。したがって、ディテントプレート30は、接触部51が谷部31,32,33,34に接触した状態で、ディテントプレート30の停止位置が保持される。
【0024】
<パーキング機構23>
パーキング機構23は、図示していない自動変速機の出力軸を回転不可能にロックする状態(Pレンジが成立した状態)と、図示していない自動変速機の出力軸を回転可能にアンロックする状態((Pレンジ以外のレンジが成立した状態)とに切り替え可能である。パーキング機構23は、パーキングギヤ25、パーキングロックポール26、パーキングロッド24等を有する。
【0025】
<制御部70>
図3は、制御部70のブロック図である。制御部70は、
図3に示すように、目標回転角度設定部71と、モータ駆動制御部73と、モータ回転軸回転移動角度算出部75と、目標回転角度補正部77と、を有する。さらに、制御部70は、回転移動角度判定部79を有する。制御部70には、シフトレバー83の操作に応じた操作信号を出力するシフトセンサ84と、モータ10のモータ回転軸11の回転角度を検出する回転角度検出部60が電気的に接続される。なお、シフトレバー83は、シフトスイッチでもよい。
【0026】
(目標回転角度設定部71)
目標回転角度設定部71は、
図2及び
図3に示すように、回転角度検出部60による回転角度の検出値に基づいて、停止位置保持部50によって保持されたディテントプレート30の谷部31、32,33、34に接触している接触部51の接触位置からディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接して位置する他の谷部の底よりもディテントプレートの回転方向遅角側の他の谷部の所定位置Psまで接触部51を移動させるのに必要なモータ回転軸11の目標回転角度を設定する。
【0027】
例えば、目標回転角度設定部71は、接触部51がRレンジに対応する谷部32に位置しているときに、シフトレバー83の操作によって、シフトレバー83がNレンジに移動された場合には、目標回転角度設定部71は、谷部32(Rレンジに対応)と他の谷部33(Nレンジに対応)の所定位置Psまでの角度θ1を設定する。ここで、他の谷部33の所定位置Psは、接触部51が他の谷部33よりもディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接する谷部34(Dレンジに対応)に移動しない範囲内に設定される。なお、所定位置Psは、他の谷部33の底よりもディテントプレート30の回転方向遅角側の他の谷部33の傾斜面33aにおいて、底から傾斜面33aの長さのa/bの位置として設定してもよい。但し、a、bは整数であり、a<bである。
【0028】
(モータ駆動制御部73)
モータ駆動制御部73は、回転角度検出部60による回転角度の検出値に基づいて、モータ回転軸11を目標回転角度まで回転させた後に停止させる。モータ駆動制御部73は、モータ回転軸11の停止時にモータ10への電力供給を遮断する。モータ駆動制御部73は、モータ回転軸11の停止時にモータ10への電力供給を遮断することで、モータ回転軸11の回転をフリーとすることができる。なお、モータ10は、電力供給が無い場合でも、モータ10内の永久磁石やロータの回転抵抗等により、モータ回転軸11には、一定のトルク(コギングトルク)が作用する。このため、接触部51の付勢によってディテントプレート30を回転させるためには、コギングトルクよりも大きなトルクをディテントプレート30に作用させる必要がある。
【0029】
(モータ回転軸回転移動角度算出部75)
モータ回転軸回転移動角度算出部75は、回転角度検出部60の回転角度の検出値に基づいて、モータ回転軸11が目標回転角度で停止後に、接触部51の付勢力によってディテントプレート30が回転して接触部51が他の谷部32の底に移動するまでのモータ回転軸11の回転移動角度を算出する。
【0030】
また、モータ回転軸回転移動角度算出部75は、接触部51が目標回転角度に移動したときのモータ回転軸11の回転角度と、接触部51が他の谷部32の底に移動したときのモータ回転軸11の回転角度と、の差を算出する。この算出されたモータ回転軸11の回転角度差をモータ回転軸11の回転移動角度とする。
【0031】
(目標回転角度補正部77)
図4は、ディテントプレート30の回転角度に対するディテントプレート30に作用するトルクの関係を示すグラフである。
図6は、停止位置保持部50によってディテントプレート30が回転移動する際の角度変化を表したグラフである。
【0032】
目標回転角度補正部77は、モータ回転軸回転移動角度算出部75により算出されたモータ回転軸11の回転移動角度に基づき目標回転角度を変更する。ここで、目標回転角度設定部71は、前述したように、谷部31に接触している接触部51の接触位置からディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接して位置する他の谷部32の底よりもディテントプレート30の回転方向遅角側の他の谷部32の所定位置Psまで接触部51を移動させるのに必要なモータ回転軸11の目標回転角度を設定する。したがって、モータ回転軸11が目標回転角度まで回転すると、接触部51は他の谷部32の底よりも遅角側に移動する。この場合、減速機15にガタがあっても減速機15のガタは詰まっているので、停止位置保持部50によって、ディテントプレート30を機械的に遅角側へ回転させる。このため、マニュアルシャフト20と伴にモータ回転軸11も一緒に遅角側へ回転する。
【0033】
ここで、
図4Aに示すように、接触部51がNレンジに対応する谷部33に移動したときに、減速機15のガタが小さい場合には、ディテントプレート30によって接触部51を谷部33の底に戻すトルク(ディテントトルク)によって、接触部51は谷部33の底に戻される。
【0034】
一方、
図4Bに示すように、減速機15が劣化してガタが大きくなると、接触部51は目標回転角度よりも小さい角度の位置に移動し、ディテントトルクが小さくなる。したがって、接触部51は谷部33の底に戻され難くなる。
【0035】
そこで、
図4Cに示すように、減速機15が劣化してガタが大きくなると、目標回転角度を増大する補正を行うことで、ディテントトルクによって、接触部51を谷部33の底に戻し易くすることができる。
【0036】
なお、
図6A及び
図6Bに示すように、ディテントトルクによって接触部51が谷部33の底に戻される場合、接触部51が谷部33の底よりもディテントプレート30の回転方向進角側から戻される場合(
図6A)及び、接触部51が谷部33の底よりもディテントプレート30の回転方向遅角側から戻される場合(
図6B)ともに、接触部51は、時間の経過とともに谷部33の底まで移動する。
【0037】
本実施形態では、目標回転角度補正部77は、他の谷部33の所定位置と、モータ回転軸回転移動角度算出部75によって算出されたモータ回転軸11の回転移動角度と、に基づいて、モータ回転軸11の回転角度に対するマニュアルシャフト20の回転角度の角度差の有無を判定し、角度差が有る場合に、目標回転角度を増大する補正を行う。このため、制御部70は、減速機15にガタが生じた場合でも、モータ回転軸11の遅角側への回転を認識することができる。
【0038】
また、ガタの量が増大すると、ディテントプレート30を機械的に遅角側へ回転させる角度が減少して、モータ回転軸回転移動角度が小さくなる。したがって、制御部70は、減速機15にガタが生じているか否かの判断がし難くなる。そこで、本実施形態では、制御部70は、モータ回転軸回転移動角度算出部75によって算出されたモータ回転軸11の回転移動角度が、所定範囲内にあるか否かを判定する回転移動角度判定部79を、更に有する。また、目標回転角度補正部77は、回転移動角度判定部79によりモータ回転軸11の回転移動角度が所定範囲内にあると判定された場合、目標回転角度を増大する補正を行う。
【0039】
(回転移動角度判定部79)
回転移動角度判定部79は、モータ回転軸回転移動角度算出部75によって算出されたモータ回転軸11の回転移動角度が、所定範囲内にあるか否かを判定する。ここで、所定範囲とは、接触部51が他の谷部33の所定位置Psと他の谷部33の底との間を移動する際のディテントプレート30の回転角度として設定される。
【0040】
<シフトレンジ切替制御装置1の作用・効果>
次に、シフトレンジ切替制御装置1の作用・効果について説明する。
図5は、制御部70によって目標回転角度を補正処理するフローチャートである。
【0041】
図3及び
図5に示すように、ステップ100において、制御部70は、シフトセンサ84からのシフト指令があるか否かを判断し、シフト指令がある場合には、ステップ101へ進む。シフト指令がない場合には、ステップ100に戻る。
【0042】
ステップ101において、制御部70の目標回転角度設定部71は、停止位置保持部50によって保持されたディテントプレート30の谷部32に接触している接触部51の接触位置からディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接して位置する他の谷部33の底よりもディテントプレート30の回転方向遅角側の他の谷部33の所定位置Psまで接触部51を移動させるのに必要なモータ回転軸11の目標回転角度を設定する。目標回転角度設定部71が目標回転角度を設定すると、ステップ102に進む。
【0043】
ステップ102において、モータ駆動制御部73は、回転角度検出部60による回転角度の検出値に基づいて、モータ回転軸11を目標回転角度まで回転させた後に停止させる。モータ回転軸11の回転が停止すると、ステップ103に進む。
【0044】
ステップ103において、モータ回転軸回転移動角度算出部75は、停止位置保持部50によって、ディテントプレート30が機械的に遅角側へ回転されるに伴うモータ回転軸11の遅角側への回転移動角度を算出する。モータ回転軸11の回転移動角度が算出されると、ステップ104に進む。
【0045】
ステップ104において、回転移動角度判定部79によって、算出されたモータ回転軸11の回転移動角度が所定範囲内にあるか否かが判定される。回転移動角度が所定範囲内にある場合には、ステップ105に進む。回転移動角度が所定範囲内にない場合には、終了する。
【0046】
ステップ105において、目標回転角度補正部77は、回転移動角度判定部79によりモータ回転軸11の回転移動角度が所定範囲内にあると判定された場合、目標回転角度を増大する補正を行う。目標回転角度を増大する補正が行われると、ステップ106に進む。
【0047】
ステップ106において、制御部70は、増大補正された目標回転角度が、所定範囲を超えるか否かを判定する。増大補正された目標回転角度が所定範囲を超える場合には、制御部70は、シフト変更を終了し、所定範囲を超えていなければステップ100に進む。
【0048】
(1) ここで、本実施形態に係るシフトレンジ切替制御装置1の目標回転角度設定部は、谷部32に接触している接触部51の接触位置からディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接して位置する他の谷部33の底よりもディテントプレート30の回転方向遅角側の他の谷部33の所定位置Psまで接触部51を移動させるのに必要なモータ回転軸11の目標回転角度を設定する。したがって、モータ回転軸11が目標回転角度まで回転すると、接触部51は他の谷部33の底よりも遅角側に移動する。この場合、減速機15にガタがあっても減速機15のガタは詰まっているので、停止位置保持部50によって、ディテントプレート30を機械的に遅角側へ回転させる。このため、マニュアルシャフト20と伴にモータ回転軸11も一緒に遅角側へ回転する。よって、制御部70は、回転角度検出部60を介して、モータ回転軸11の遅角側への回転を認識することができる。
【0049】
また、減速機15にガタがある場合には、目標回転角度補正部77は、モータ回転軸11の回転移動角度に基づき目標回転角度を変更する。したがって、ガタの量が増大してモータ回転軸11の遅角側への回転移動角度が小さくなる場合でも、目標回転角度を増大する補正が可能であるので、制御部70は、モータ回転軸11の遅角側への回転角度を容易に認識することができる。
【0050】
(2)また、回転移動角度判定部79によりモータ回転軸11の回転移動角度が所定範囲内にあると判定された場合、目標回転角度が増大補正される。このため、減速機15のガタの量が増大すると、回転移動角度が小さくなるのでモータ回転軸11の遅角側への回転角度も小さくなる。しかしながら、目標回転角度補正部77は、目標回転角度を増大する補正を行うので、モータ回転軸11の遅角側への回転角度の低下を抑制することができる。
【0051】
(3)また、他の谷部33の所定位置は、接触部51が他の谷部33よりもディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接する谷部34に移動しない範囲内に設定される。このため、接触部51がディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接する谷部34側へ移動するのを防止することができる。
【0052】
(4)また、モータ回転軸11の回転角度に対するマニュアルシャフト20の回転角度の角度差が有る場合、たとえば、減速機15にガタがある場合には、目標回転角度補正部77は、目標回転角度を増大する補正を行う。このため、制御部70は、減速機15にガタが生じた場合でも、モータ回転軸11の遅角側への回転を認識することができる。
【0053】
(5)また、所定範囲は、接触部51が所定位置Psと他の谷部33の底との間を移動する際のディテントプレート30の回転角度である。このため、停止位置保持部50によって、ディテントプレート30が機械的に遅角側へ回転される場合、減速機15にガタが生じていると、接触部51は、所定範囲内の位置から他の谷部33の底へ移動し、減速機15にガタが生じていないときには、接触部51は、所定位置から他の谷部33の底へ移動する。よって、制御部70は、ガタの有無に拘わらずに、停止位置保持部50によってディテントプレート30が機械的に遅角側へ回転されるにともなう、モータ回転軸11の遅角側への回転を認識することができる。
【0054】
(6)また、モータ駆動制御部73は、モータ回転軸11の停止時にモータ10への電力供給を遮断する。このため、モータ回転軸11の回転はフリーとなるので、停止位置保持部50によって、ディテントプレート30が機械的に遅角側へ回転される動作をスムースにすることができる。
【0055】
(7)また、増大補正される目標回転角度が、他の谷部33よりもディテントプレート30の回転方向遅角側に隣接する谷部34に接触部51が移動可能な角度である場合には、モータ駆動制御部73によるモータ10の駆動制御を停止させる。このため、誤ったシフレンジの切替えを防止することができる。
【0056】
[第1実施形態の変形例]
(減速機15の構造を変えた変形例)
図7は、減速機15の変形例に係る構成図である。
図1に示した第1実施形態に係る減速機15は、プラネタリギヤあるいは歯車列等を有して構成される。しかしながら、この構造に限定されるものではなく、例えば、
図7に示すように、減速機15は、モータ回転軸11に取り付けられた第1歯車17と、第1歯車17と噛み合って出力軸16に取り付けられた第2歯車18と、を有し、第1歯車17のピッチ円直径φP1は、モータ回転軸11の外径φmよりも大きく、第2歯車18のピッチ円直径φP2は、第1歯車17のピッチ円直径φP1と比較して同一又は大きくしてもよい(変形例1)。
【0057】
第1歯車17及び第2歯車18は、平歯車であり、同一平面上に配置される。この変形例では、第1歯車17のピッチ円直径φP1は、モータ回転軸11の外径φmよりも大きく、第2歯車18のピッチ円直径φP2は、第1歯車17のピッチ円直径φP1と比較して同一又は大きい。このため、モータ回転軸11に対するマニュアルシャフト20の回転数を低減することができ、また、マニュアルシャフト20に伝達される回転トルクを増大することができる。また、第1歯車17及び第2歯車18は、同一平面上に配置されるので、減速機15の軸方向の厚さを薄くすることができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発名とその均等の範囲に含まれる。