【実施例1】
【0015】
図1から
図6Bを用いて本発明の実施例1に係る超音波検査装置について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る超音波検査装置は、送信センサ11及び受信センサ12を有するセンサ部10と、光信号を電気信号に変換する光学処理部20と、光学処理部20から入力される電気信号に基づき開口合成処理(画像処理)を行って被測定対象物50(
図2参照)を画像化する可視化部(例えば、モニタ等)30とを備えている。
なお、光学処理部20、可視化部30の構成は既知のものと同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施例において送信センサ11は、枠状の筐体13の内部に複数(例えば、9個)設けられ、後述する支持体としてのバックアッププレート14に形成された送信センサ用貫通孔に、相互に一定間隔で離間するように二次元的かつ間欠的に配設され固定されている。この送信センサ11は例えば圧電素子からなり、被測定対象物50に対して超音波を出射する。
なお、
図2中の符号40は媒質(例えば、不透明な液体ナトリウム等)である。
【0017】
また、受信センサ12は多数(例えば、約2500個)の貫通孔(以下、受信センサ用貫通孔という)14cを有して前記筺体13の開口部を覆うバックアッププレート14と、当該バックアッププレート14の表面及び受信センサ用貫通孔14cを覆うダイヤフラム(金属膜体)16とを備えている。
【0018】
本実施例においてバックアッププレート14は、板状に形成された磁石(例えば、キュリー温度が200℃を超えるネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石等)から構成され、筺体13の内周面に固定されている。受信センサ用貫通孔14cは各送信センサ11の周囲に相互に一定間隔で離間するように二次元的にそれぞれ複数配列されている。
【0019】
また、ダイヤフラム16は例えばニッケル等の強磁性体を材料とする金属箔により形成されている。当該ダイヤフラム16の送信センサ11に対向する部分は開口しており、これにより、送信センサ11の送信面は露出した状態となっている。ダイヤフラム16は、その外周縁のみが筺体13に溶接され、他の部分はバックアッププレート14に磁力により吸着されている。
【0020】
また、
図3及び
図4に示すように、バックアッププレート14の受信センサ用貫通孔14cには、それぞれ光ファイバ15がダイヤフラム16とは非接触に固定されており、光ファイバ15の先端がダイヤフラム16によって非接触に覆われた状態となっている。より具体的には、
図4に示すように光ファイバ15はその先端がバックアッププレート14のダイヤフラム16側の面より内側(ダイヤフラム16とは反対側)に位置付けられるようにフェルール17を介してバックアッププレート14に固定されている。
【0021】
これにより、ダイヤフラム16は、
図3に破線で示すように、受信センサ用貫通孔14cを覆う部分が、送信センサ11(
図1,2参照)から出射された超音波61の、被測定対象物50によって反射された反射波62により振動することができるようになっている。
【0022】
また、受信センサ12では、光ファイバ15を介してダイヤフラム16に対しレーザ光(以下、検査用レーザ光という)63が照射され、検査用レーザ光63のダイヤフラム16によって反射された反射レーザ光64が光ファイバ15に入射されるようになっている。すなわち、受信センサ12は、ダイヤフラム16の振動を反射レーザ光64の検査用レーザ光63に対する変調として捉え、これを受信信号(パルス)として受信するように構成されている。
【0023】
なお、
図3及び
図4では、光ファイバ15とダイヤフラム16との関係を分かり易くするため、光ファイバ15とダイヤフラム16との間の距離を誇張して示している。また、
図2,4に示すバックアッププレート14の厚さは一例であって、必要に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0024】
以下に、本実施例に係る超音波検査装置による作用効果を説明する。
図3に示すように、送信センサ11(
図1,2参照)から出射された超音波61は、被測定対象物50によって反射され、反射波62としてセンサ部10(
図1,2参照)に戻ってくる。一方、光ファイバ15から照射された検査用レーザ光63は、上述したようにダイヤフラム16によって反射され、反射レーザ光(受信信号)64として光ファイバ15に入射する。
【0025】
ここで、送信センサ11から出射され被測定対象物50によって反射された反射波62がダイヤフラム16に到達すると、上述したようにダイヤフラム16が振動し、これによりダイヤフラム16によって反射された反射レーザ光64が検査用レーザ光63に比較して変調される。
【0026】
本実施例の超音波検査装置では、この受信センサ12によって得られた検査用レーザ光63と反射レーザ光64との間の光の変調を光学処理部20において電気信号に変換し、可視化部30によって開口合成処理することにより、被測定対象物50の形状を画像化する。
【0027】
次に、
図5Aから
図6Bを用いて、本実施例に係る超音波検査装置による受信超音波波形と、従来のフッ素ゴムからなる伝搬防止板を採用した超音波検査装置による受信超音波波形とを比較した結果について説明する。
【0028】
まず、
図5Aに示すように、本実施例に係る超音波検査装置では、高温環境下(具体的には、200℃の液体ナトリウム中)において受信信号とノイズとの信号レベルの比率が約±110(mV):±25(mV)、換言すると、受信信号に対するノイズの信号レベルが0.23程度であるのに対し、
図5Bに示すように、従来のフッ素ゴム等からなる伝搬防止板を設けたものでは、高温環境下において受信信号とノイズとの信号レベルの比率が約±40(mV):±20(mV)、換言すると、受信信号に対するノイズの信号レベルが0.5程度であり、本実施例の超音波検査装置では、高温環境下において、従来のものに比較して受信信号に対するノイズの信号レベルが大幅に低減していることが分かる。
【0029】
また、
図6Aに示すように、本実施例に係る超音波検査装置では、常温環境下(具体的には、20℃の水中)において受信信号とノイズとの信号レベルの比率が約±80(mV):±20(mV)、換言すると、受信信号に対するノイズの信号レベルが0.25程度であるのに対し、
図6Bに示すように、従来のフッ素ゴム等からなる伝搬防止板を設けたものでは常温環境下において受信信号とノイズとの信号レベルの比率が約±70(mV):±15(mV)、換言すると、受信信号に対するノイズの信号レベルが0.21程度であり、本実施例の超音波検査装置が、常温環境下において、従来のものに比較して同等の性能を有し、受信信号に対するノイズの信号レベルを十分に抑制できていることが分かる。
【0030】
すなわち、本実施例に係る超音波検査装置では、バックアッププレート14を磁石により形成し、ダイヤフラム16を磁力によりバックアッププレート14に吸着させるように構成したことにより、バックアッププレート14とダイヤフラム16とを接着により固定する場合に比較して、バックアッププレート14とダイヤフラム16との実質的な接触面積を小さくすることができる。このため、
図9に示し上述したような従来の超音波検査装置に比較して、被測定対象物50によって反射された反射波62に対し、バックアッププレート14の内部に入射する一部の反射波65を低減し、この一部の反射波65が本来の受信信号のノイズとなることを抑制することができる。
さらに、磁石の吸着力によるダンパ効果によりダイヤフラム16の振動を抑制することが可能となり、
図9に示し上述したような従来の超音波検査装置に比較して、ダイヤフラム16(即ち、受信面)の表面を伝播する一部の反射波66がノイズとして本来の受信信号に影響することも低減できる。
【0031】
このようにして、本実施例に係る超音波検査装置では、常温環境下においては従来の性能を維持しつつ、高温環境下においては従来に比較して受信信号に対するノイズの信号レベルを低減させる(信号強度を向上させる)ことができ、高温環境下であっても一部の超音波65がバックアッププレート14の内部で反射されてダイヤフラム16に到達することを抑制することができ、受信信号に重畳するノイズを低減して相対的に受信信号の信号強度を向上させることが可能となり、可視化された画像の視認性を向上させることができる。また、高温環境下において、有効受信点数を低減しても可視化された画像について従来の超音波検査装置と同等の視認性を確保することができるため、受信センサ数の低減による製作コストの削減が可能となる。
【0032】
なお、上述した実施例においては、センサ部10の構成として、送信センサ11と受信センサ12とを一体的に備えた例を示したが、送信センサ11と受信センサ12とは一体的に設けられる必要はなく、超音波を出射する送信センサと、被測定対象物により反射された反射波を受信する受信センサとを備える装置であれば適用することが可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。これは以下に示す実施例においても同様である。
【0033】
また、上述した実施例においては、複数の送信センサ11を二次元的に配置するとともに、この送信センサ11の周囲に受信センサ用貫通孔14cを二次元的に配置する例を示したが、送信センサ11は一つであってもよく、また、送信センサ11及び受信センサ用貫通孔14cの配置は一次元的であってもよく、必要に応じて配置すればよい。
【0034】
また、上述した実施例においては、ダイヤフラム16の振動を検知する手段として光ファイバ15を介して伝送されるレーザ光を利用する例を示したが、ダイヤフラム16の振動を検知する手段としては、例えば振動子等、他の手段を用いることができる。
【実施例2】
【0035】
図7及び
図8を用いて本発明の実施例2に係る超音波検査装置について説明する。
本実施例に係る超音波検査装置は、
図1から
図4に示し上述した実施例1の構成に対し、バックアッププレートの構成が異なるものである。その他の構成は、上述した実施例1と概ね同様であり、以下、実施例1と異なる構成のみ説明し、実施例1と同様の構成については詳細な説明は省略する。
【0036】
図7及び
図8に示すように、本実施例は、
図1から
図4に示し上述したバックアッププレート14に代えて、支持体として、強磁性体からなる金属材71と、バックアッププレート14と同様の材料からなる磁石72とを採用するものである。
【0037】
金属材71は、板状に形成されてフェルール17を挿通する多数の受信センサ用貫通孔71cを有し、筺体13の開口部を覆っており、この金属材71の表面及び受信センサ用貫通孔71cがダイヤフラム16によって覆われている。金属材71は筺体13に固定され、ダイヤフラム16は、外周縁のみが溶接により金属材71に固着されている。
【0038】
また、磁石72は、ダイヤフラム16の外周縁に沿って(より詳細には、筺体13の内周面に沿って)枠状に形成され、金属材71の裏面(ダイヤフラム16によって覆われる面とは反対側の面)に当接されるとともに、筺体13に固定されている。
【0039】
このように構成されることにより、本実施例の超音波検査装置では、筺体13の開口部を覆う金属材71に磁石72を当接させて金属材71に磁力を付与し、磁力によって金属材71にダイヤフラム16を吸着させることができる。
【0040】
従って、本実施例に係る超音波検査装置においても、筺体13の開口部を覆う金属材71にダイヤフラム16を磁力により吸着させることで、金属材71にダイヤフラム16を接着して固定する場合に比較して、金属材71とダイヤフラム16との実質的な接触面積を小さくすることができ、これにより上述した実施例1と同等の作用効果を得ることができる。
【0041】
なお、
図7及び
図8に示す金属材71及び磁石72の形状(厚さや幅等)は一例であって、必要に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。また、磁石72は、金属材71に磁力を付与することができればよく、必ずしも枠状である必要はない。