【実施例】
【0019】
(実施例1)
図1〜8に示す実施例1はアナログ変調電波で計測開始信号を伝達させる例であり、被測定対象は大型橋で、その振動を計測するための装置例であり、計測センサーは振動センサーで大型橋の左右の2グループの2kmの範囲の橋構造体の4個所,5個所に振動センサー(計測装置)を取付け、そのデータサンプリングクロックの周波数は1KHzであり、解析装置に計測開始信号のアナログ変調電波を発信するアナログ変調電波発信器を付属させ、解析装置側の操作によりアナログ変調電波を送信できるようにしている。
【0020】
(符号の説明)
G
1は本発明の実施例1の多点同時計測システム、BRは計測センサー(計測装置)を取付けた被計測対象の大型橋、K
11,K
12,K
13,K
14,K
15,K
16,K
17,K
18,K
19は同大型橋に取付けた同じ回路の計測装置、KCOMは各計測装置K
1i(i=1〜9以下同様)に使用されているコンピュータ、CPUは同コンピュータKCOMの集中処理ユニット、KINTは同コンピュータKCOMのインターフェース、KDSは各計測装置K
1iのデジタル変調電波送信器、KDRは各計測装置K
1iのデジタル変調電波受信器、KDHはデジタル変調電波送信器KDSの前段のデジタル変調器、KDIはデジタル電波変調器KDHへのデジタル信号入力部、KDRFはデジタル電波変調受信器KDRのデジタル復調器、KDROはデジタル復調器KDRFからのデジタル信号出力部、KARは各計測装置K
1iのアナログ変調電波受信器、KARFはアナログ電波復調器、KAROはアナログ信号出力部、ANTは電波送受用アンテナである。
【0021】
SESは橋部材の振動を計測する振動センサーを用いた計測センサー、ADは同計測センサーSESのアナログ計測データをデジタル計測データに変換するA/D変換器、SACはデータサンプリングクロックを発生するデータサンプリングクロック発生回路であって、コンピュータKCOMによってそのクロック周波数を設定できるものとなっている。KCCはデータサンプリングクロック発生回路SACで出力されるクロック数をカウントしていくクロックカウンターで、原情報のクロック数を出力する。KSWはデータサンプリングクロック発生回路SACの出力クロックを前記A/D変換器ADとクロックカウンターKCCに印加するか決定する常開のクロック開閉器、KMEは各計測装置K
1iのメモリ、KMEKは同メモリKMEの中の基本ソフト(OS,計測ソフト,電波通信手順等)を記憶する基本ソフトメモリ部、KMEDはデジタル計測値,そのデータサンプリングクロックの原情報のクロック番号で前記クロックカウンターKCCが出力するクロック数(クロック番号値),計測装置ID,計測番号ID,解析装置からアナログ変調電波の計測開始信号の発信時のGPSの時刻データ,計測場所BR,計測装置が設置された場所の大気温度等を記憶するデータメモリ部である。
【0022】
MKは実施例1の解析装置、MCOMは解析装置MKのコンピュータ、MCPUはコンピュータMCOMのCPU、MINTはコンピュータMCOMのインターフェース、MMEは解析装置MKのコンピュータMCOMの主メモリ、MDSはデジタル変調電波送信器、MDRはデジタル変調電波受信器、MDHはデジタル変調器、MDIはデジタル変調器MDHへのデジタル信号入力部、MDRFはデジタル復調器、MDROはデジタル復調器MDRFからのデジタル信号出力部、MASは計測開始信号をアナログ変調電波で送信するアナログ変調電波発信器、MASFは計測開始信号のアナログ変調器、MABは計測開始信号を発生させる計測開始ボタンである。MANTは解析装置MKの電波アンテナ、MASIは計測開始信号入力部である。
【0023】
又、MMEKはコンピュータMCOMのOS,アナログ・デジタル電波の通信手順ソフト,修正プログラム等を収める基本ソフトメモリ部、MMEDは計測データを記憶するデータメモリ部で、計測装値ID,計測番号IDと関連付けてデジタルの原情報の計測値,計測時間t,その原情報のクロック番号,計測開始時点のクロック番号、修正クロック番号(原情報のクロック番号から計測開始時点の開始クロック番号を差し引いた修正クロック番号),計測開始時点のGPS時刻,計測開始時点からの経過時間tで、t=Δt(クロック周期Δt)*修正クロック番号,計測センサーの型式,計測センサーの取付場所,計測開始時の大気温度等を記憶している。
【0024】
又、MDISはコンピュータMCOMのディスプレイ、MKBはコンピュータMCOMの入力用キーボードとマウス、MHDはコンピュータMCOMの外付ハードディスクである。
【0025】
(計測手順)
まず、大型橋BRに2kmの範囲の左右両範囲に各計測装置K
1i(i=1〜9)を設置している(
図2参照)。
計測する時刻が決定したら、その時刻の数分前程に解析装置MKから計測準備命令と設定値情報(クロック周波数fHz,計測時間20sec,計測番号ID等)を先にデジタル電波送信器MDSから各計測装置K
1i(i=1〜9)へ送信する。
計測装置K
1iがこの計測準備命令のデジタル電波をデジタル変調電波受信器KDRで受信して、デジタル復調器KDRFで復調して、これら情報をデジタル信号出力部KDROからの出力信号によって、コンピュータKCOM,A/D変換器AD,計測センサーSES及びクロック発生回路SAC・起動回路等に主電源を供給して、装置のスタンバイ状態にする。同時にクロック周波数f,計測時間t,GPSの計測準備開始時刻等のメモリ書き込みと、ソフトデータに書き込みを行う。
【0026】
その後、解析装置MKに付属しているアナログ電波発信器MASの計測開始ボタンMABを押すと、単パルスが計測開始信号入力部MASIが発生し、アナログ変調器MASFへ入力され、アナログ電波発信器MASから特定の周波数のアナログ変調電波が送信される。
【0027】
このアナログ変調電波は光と略同速で伝播して、各計測装置K
1iのアナログ変調電波受信器KARによって受信されると、そのアナログ電波復調器KARFによって復調され、アナログ信号出力部KAROによって計測開始信号の単パルスがデジタルで出力される。このアナログ信号出力部KAROの出力信号は計測装置K
1iの常開のクロック開閉器KSWに印加されて、このクロック開閉器KSWを閉路してクロック発生回路SACのクロック信号をA/D変換器AD等に出力し、計測センサーSESのアナログ信号はA/D変換器ADに入力され、クロックの印加のタイミングで計測センサーSESの計測値はデジタル値で出力され、インターフェースKINTを介してコンピュータKCOMに入力される。又、同じクロック信号がクロックカウンターKCCに入力され、クロックと同期してクロックのカウンター数がクロック数(番号)としてインターフェースKINTを介してコンピュータKCOMによりデータメモリ部KMEDへ原情報として書き込まれる。この計測装置K
1iのメモリの状態を
図5に示している。
このように、各クロック毎に計測デジタル値とそのクロック数(番号)が計測装置K
1iのデータメモリ部KMEDに計測装置ID,計測番号IDと関連付けられて記憶される。このメモリ状態を
図5に示している。各計測装置K
1iのメモリKMEには各クロック毎に計測デジタル値とその時のクロック番号(数字)が原情報として記憶され、計測時間tの20secを過ぎると、クロック発生回路SACを停止させる。
【0028】
計測時間経過後に、メモリKME中の原情報のデジタルデータをデジタル変調送信器KDSから解析装置MKへデジタル変調電波で送信する。
解析装置MKがデジタル変調電波受信器MDRで受信し、デジタル復調器MDRF・デジタル信号出力部MDROから原情報が出力され、インターフェースMINTを介してコンピュータMCOMによって処理されて、主メモリMMEに原情報データとして書き込まれる。
【0029】
計測装置K
1iの計測値(デジタル値)及びそのクロック数(番号)等が原情報として主メモリMMEに記憶されると、コンピュータMCOMのソフトに従って計測開始時点、即ちクロック開閉器KSWが閉路した時点はアナログ変調の為、及び計測範囲が2km程の狭い範囲の為各計測装置K
1iにおいて同時刻と見なされる。
【0030】
このクロック開閉器KSWが閉じてクロックカウンターKCCが作動し、その最初のクロック数(番号)C0は「1」(初期値は零値とする)となる。
従って、このクロック数(番号)C0が「1」となる時点が計測開始時刻で、各計測装置K
1iとも同時刻となる。即ち、開始クロック番号値CN
1は「1」となる。
【0031】
解析装置MKの修正ソフトによって各計測値の対応の原情報のクロック数C0値から計測開始信号到着時点の開始クロック番号値CN
1=1を差し引いて、修正クロック数値C1(0,1,2,3,・・・・)とする。
C1=C0−CN
1=C0−1となる。
この修正クロック数値C1を原情報の計測(デジタル)値の真正情報として関連付けして(対応の)修正クロック数(番号)C1として主メモリに書き込む。又、計測開始信号時点からの経過時間tjをtj=Δt*修正クロック数C1として計算して、前記計測値と関連付けて主メモリMMEに書き込む。
この修正クロック番号のメモリ状態は
図6に示される。
【0032】
この主メモリの状態で、各計測装置K
1iで同じ修正クロック数(番号)C1が同一時刻となり、その対応の原情報の計測値が各計測センサーのデジタル値となる。
【0033】
このように、大型橋BRの取付位置を異にする各計測センサーの同時刻(同一修正クロック番号)のデジタル値を得ることができることから、大型橋BRの同時刻の各位置の計測値が分ることから大型橋の振動分析が正確にできることとなる。
【0034】
このように、本発明では種々の数kmから数十mにある複数の計測センサーの計測値の同時刻データを得ることで、被計測物の振動・荷重・亀裂等の計測・分析を正確にすることができる。
又、計測年月日毎にデータを保存することで、経年変化・亀裂等の問題点を正確に検査できる。上記、手順フローの一例を
図7,8のフローチャートに示している。
【0035】
(実施例2)
図9,10に示す実施例2の計測開始信号の伝達媒体は「光」を使用し、各計測装置の近くに面発光の照明装置SL又は複数の投光器を設置し、各計測装置にはそれからの光を感知する受光器LRを光が届く位置に設置し、同受光器LRの受光信号をもって実施例1の各計測装置のクロック開閉器KSWを常開から閉じて、クロック信号をA/D変換器AD,クロックカウンターKCC等に印加する。実施例1の計測開始信号をアナログ変調電波とその送受器に代えて、上記照明装置SL又は複数の投光器を有線又はアナログ無線で発光・投光をON/OFFさせ、各計測装置の受光器LRでその計測開信号を同時到着させるようにしている。他は実施例1の回路装置構成と同様である。
図10に実施例2の回路ブロック図の説明図を示す。
【0036】
そして、計測センサーSESからのデータのサンプリングのデータのメモリへの記憶・解析装置へのデータの送受信・メモリの構造及びクロック番号の修正は、実施例1と同様であるので省略する。
【0037】
この実施例2では、受光器に太陽光,車のヘッドランプ,街灯の光が入らないように工夫する必要がある。従って、室内・工場の特定場所での使用に適している。
【0038】
(実施例3)
図11,12に示す実施例3は、計測開始信号の伝達媒体と超音波とする例で、超音波の伝播速度は電波・光に比べると大巾に遅いので、計測装置と超音波発信器とが10m以下の狭い範囲の計測開始信号の同時到着させる場合に主に使用される。又、高い周波数の雑音がある場所には適さず、比較的騒音が少ない室内・工場での計測に適する。又、計測クロック周期が長く、又長時間の計測に適している。
【0039】
この実施例3では、実施例1の計測開始信号の伝播媒体として超音波を使用するため、実施例1のアナログ電波の送受信器のMAS,KAR,MASFに代え、特定周波数の超音波を発生させる超音波発信器SSHを解析装置MKに設け、又各計測装置K
1iにはアナログ電波受信器のKAR,KARF,KAROの回路に代わり、超音波受信器SSRを設け、同超音波受信器SSRの受信信号でクロック開閉器KSWと閉路させるものであり、他の構造・作用効果は実施例1と同様のフロー・手順であるので省略する。
【0040】
この実施例3では、各計測装置は装置を設置した位置における温度センサーも設けていて、計測温度Tiの情報も解析装置MKへデジタル変調電波で送信して、主メモリMMEに計測装置IDと計測番号IDと関連付けて記憶されている。
各計測装置では、実施例1同様に超音波受信器SSRが計測開始信号を受信すると、このときのクロック番号で計測データ値とそのクロック番号を対応付けしてメモリKMEに原情報として記憶する。そして、計測装置のメモリKMEの原情報等はデジタル変調電波で解析装置MKへ送信され、受信されると主メモリMMEに計測装置ID,計測番号IDと関連付けられ、記憶される。
【0041】
解析装置の修正プログラムでは、各計測装置の原情報のクロック数(番号)は計測開始時のクロック数の開始クロック数をまず差し引く。更に、各計測装置の超音波受信器SSRと超音波発信器SSHとの距離に応じた到着時間差に応じた位置補正クロック数とこれに計測値の温度Tを、各計測装置からの大気温度Tiの平均値の絶対温度Tとして計算し、これを
【数1】
として(但し、Mは空気分子量,Kは空気の比熱比,Rは気体定数)、温度補正を行った位置補正クロック数を算出し加算して(原情報のクロック数−開始クロック数−温度補正した位置補正クロック数)で調整した修正クロック数を算出し、原情報の計測デジタル値と修正クロック数とを関連付けして主メモリMMEに記憶する。
【0042】
主メモリの修正クロック数は、計測開始時からの経過時間tは、t=修正クロック数*Δt(クロック周期)として算出し、主メモリに計測装置ID,計測番号IDにおける原情報の計測値と対応付けして補正クロック数を記憶する。
各計測装置における同一計測番号IDの同じ修正クロック番号(数)が同一の値のものが同一時刻の計測データとなる。
この同一時刻の計測データを用いて被計測物の振動分析を行うことで、正確な振動状態・亀裂の有無等を分析できる。