【解決手段】トランス1は、巻線から成るコイルCと、コイルCから引き出された巻線端末3bがコイルCの巻軸方向に交差する方向に延在するように支持するホルダー6を備える。また、トランス1は、巻線端末3bの先端部3cと接合するための複数の挿通孔を有する基板9を備える。ホルダー6は、巻線端末3bの少なくとも一部を収容し、巻線端末3bの先端部3cを挿通孔に向かわせるように延在してガイドするガイド溝7、8を有する。また、ホルダー6は、基板9に垂直な方向への巻線端末3の移動を制限する挿通孔17、18の壁面17a、18aを有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明に係る製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0013】
<<概要>>
まず、本実施形態に係るトランス1の概要について、
図1〜
図3を主に参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るトランス1の上面側を示す斜視図、
図2は、トランス1の下面側を示す斜視図、
図3は、ベース5に対して、ホルダー6及び基板9を取り付ける前の状態のトランス1を示す斜視図である。
また、
図1に示すように、便宜上、XYZ直交三軸方向を定義する。
図2以下も共通とする。具体的には、ボビン25の軸線方向(コイルCの巻線方向)をX方向と呼称し、ボビン25の一方の端部にある支持部26と支持部27とを結ぶ方向をZ方向(上下方向)と呼称し、X方向及びZ方向に垂直な方向をY方向と呼称する。
【0014】
本実施形態に係るコイル部品(トランス1)は、巻線から成るコイルCと、コイルCから引き出された巻線端末2b、3bがコイルCの巻軸方向に交差する方向に延在するように支持するホルダー6と、を備える。更にコイル部品(トランス1)は、巻線端末2bの先端部と接合するための複数の接合部(挿通孔9a、9b)を有する基板9を備える。
ホルダー6は、巻線端末2b、3bの少なくとも一部を収容し、巻線端末2b、3bの先端部2c、3cを接合部(挿通孔9a、9b)に向かわせるように延在してガイドするガイド溝7、8を有する。また、ホルダー6は、基板9に垂直な方向への巻線端末2b、3bの移動を制限する移動制限部(挿通孔17、18の壁面17a、18a)と、を有する。
【0015】
ここで、「巻線端末2b、3bの先端部2c、3cを接合部(挿通孔9a、9b)に向かわせるように延在」するとは、巻線端末2b、3bの少なくとも一部がガイド溝7、8の内壁面に当接することによって、その延在方向が修正される構成を意味する。換言すると、ガイド溝7、8は、巻線端末2b、3bが引き出された部位に近い側から基板9側の接合部(挿通孔9a、9b)に向かって延在している。そして、直線的に延在するガイド溝7を含むとともに、ガイド溝7、8の延在方向における中間部分の形状は任意に設定可能である。
【0016】
「基板9に垂直な方向への巻線端末2b、3bの移動を制限する移動制限部」とは、巻線端末2b、3bが基板9に対する垂直な方向に移動する際に、巻線端末2b、3bのいずれか一部に当接可能に構成されているものである。例えば、後述する挿通孔17、18の壁面17a、18aや、後述する爪部56aがこれに該当する。
【0017】
このような構成によれば、ホルダー6のガイド溝7、8により、巻線端末2b、3bの先端部を接合部(挿通孔9a、9b)に接合する位置にガイドすることができる。さらに、移動制限部(挿通孔17、18の壁面17a、18a)で巻線端末2b、3bの移動を制限できる。このため、コイル部品(トランス1)に振動が加わったとしても、巻線端末2b、3bにおける基板9の接合部(挿通孔9a、9b)に接合される部位に加わる負荷を軽減することができる。なお、巻線端末2b、3bは、基板9の挿通孔9a、9bに通された先で半田によって基板9に接合されるものであり、本実施形態に係る接合部は、半田充填される挿通孔9a、9bとする。
【0018】
また、本実施形態に係るトランス1は、第1巻線から成る第1コイル(1次コイル2)と、第1コイル(1次コイル2)とは異なる巻数の第2巻線から成る第2コイル(2次コイル3)と、を備える。また、トランス1は、第1コイル(1次コイル2)から引き出された第1巻線端末(巻線端末2b)、及び第2コイル(2次コイル3)から引き出された第2巻線端末(巻線端末3b)を支持するホルダー6を備える。さらに、トランス1は、第1巻線端末(巻線端末2b)の先端部及び第2巻線端末(巻線端末3b)の先端部と接合する複数の接合部(挿通孔9a、9b)を有する基板9を備える。
ホルダー6は、第1巻線端末(巻線端末2b)の先端部及び第2巻線端末(巻線端末3b)の先端部を接合部(挿通孔9a、9b)に向かわせるように延在してガイドする複数のガイド溝7、8を有する。ガイド溝7、8は、第1巻線端末(巻線端末2b)の少なくとも一部及び第2巻線端末(巻線端末3b)の少なくとも一部を収容するものである。
さらに、ホルダー6は、基板9に垂直な方向への第1巻線端末(巻線端末2b)及び第2巻線端末(巻線端末3b)の移動を制限する複数の移動制限部(挿通孔17、18の壁面17a、18a)を有する。
【0019】
上記同様、「第1巻線端末(巻線端末2b)の先端部及び第2巻線端末(巻線端末3b)の先端部を接合部(挿通孔9a、9b)に向かわせるように延在」するとは、第1巻線端末(巻線端末2b)及び第2巻線端末(巻線端末3b)の少なくとも一部がガイド溝7、8の内壁面に当接することによって、その延在方向が修正される構成を意味する。
このような構成によれば、トランス1においても上記コイル部品と同様の効果を奏し得る。
【0020】
<<構成>>
次に、本実施形態に係るトランス1の構成の詳細について、
図1〜
図3に加えて、
図4〜
図8を参照して説明する。
図4は、ボビン25にコイルCが巻回される前のベース5を示す斜視図、
図5は、ボビン25にコイルCが巻回された後、コア11がベース5に取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
図6は、コア11がベース5に取り付けられた状態を示す斜視図、
図7は、一対のホルダー6及び基板9を示す斜視図である。
図8は、ホルダー6に巻線端末2b、3bが通され、巻線端末2b、3bがガイド溝7、8に沿って折り曲げられた状態を示す図であって、基板9との位置関係を示す模式的な正面図である。
【0021】
トランス1を構成するベース5は、コイルCを支持する部材である。ベース5及び後述するホルダー6は、フェノール樹脂等の樹脂材料によって形成されている。ベース5は、コイルCが取り付けられる略筒状のボビン25と、コイルCの巻線端末2b、3bがボビン25からホルダー6のガイド溝7、8に向かって延在するように、複数の巻線端末2b、3bを個別に支持する一対の支持部26、27と、を備える。
ここで、巻線端末2b、3bをガイド溝7、8に向かって延在するように支持するとは、支持部26、27における、巻線端末2b、3bに当接する部位の少なくとも一部がガイド溝7、8に向かって延在していることを意味するものとする。このような構成により、巻線端末2b、3bの移動を支持部26、27の当接する部位によって制限することで、ガイド溝7、8に向かって延在するように支持することができる。
ボビン25は、コイルCが巻回される筒部25aと、筒部25aの両端に一体的に形成された一対の鍔部25bと、から構成されている。
【0022】
図4において、支持部26は、一対の鍔部25bそれぞれの上部に設けられており、鍔部25bに対して、外側及び上方に突出するように一体的に形成されている。
支持部27は、一対の鍔部25bそれぞれの下部に設けられており、鍔部25bに対して、外側及び下方に突出するように一体的に形成されている。
支持部26、27により、後述するホルダー6のガイド溝7、8に向かって巻線端末2b、3bが延在するように、巻線端末2b、3bを支持することができ、ガイド溝7、8に挿入しやすくなる。
【0023】
特に、ボビン25の軸方向の両端に設けられたそれぞれ一対の支持部26、27は、複数の巻線端末2b、3bを個別に間隔を空けて支持可能となるように、櫛歯状に形成されている。
具体的には、一対の支持部26、27のそれぞれは、中心側壁26a、27aと、傾斜壁26b、27bと、立壁26c、27cと、対向壁26d、27dと、から主に構成されている。
【0024】
中心側壁26a、27aは、厚みを有した円弧状に形成されており、鍔部25bからボビン25の軸方向外側に突出するように形成されている。中心側壁26a、27aにおけるボビン25の径方向内側の面が、筒部25aの内面に連続して形成されており、後述するコア11のコア芯部11aの形状に沿うように形成されている。
傾斜壁26b、27bは、支持部26及び支持部27ごとに一対設けられており、中心側壁26a、27aの両端部からボビン25の軸線からZ方向に離れるにつれて末広がりとなるようにハの字状に延在している。傾斜壁26b、27bは、後述するコア11のコア端部11bの形状に沿うように形成されている。
立壁26c、27cは、支持部26及び支持部27ごとに一対設けられており、傾斜壁26b、27bにおける中心側壁26aとは逆側にある端部に連続して形成されている。立壁26cは上方に、立ち壁27cは下方にそれぞれ延在している。
対向壁26d、27dは、鍔部25bと連続して一体的に形成されて、後述するホルダー6の厚肉部6bに対向する位置に設けられている。
【0025】
対向壁26d、27dには、巻線端末2b、3bを通して突出する内壁面である爪部26g、27gによって保持する挿通孔26e、27eと、上記櫛歯を形成するように、挿通孔26e、27eから延在する切欠き26f、27fと、が形成されている。切欠き26f、27fは、巻線端末2b、3bをベース5の外方(上方又は下方)から挿通孔26e、27eへとガイドする機能を有する。具体的には、支持部26は、挿通孔26eから上方向に延在し、支持部27は、挿通孔27eから下方向に延在している。
挿通孔26e、27e及び切欠き26f、27fは、Y方向において、等間隔に設けられた3つを一組としたとき、水平方向の中央部分に間を空けて二組ずつ形成されている。
櫛歯状に形成された支持部26、27により、複数の巻線端末2b、3bを間隔を空けて個別に支持できることにより、巻線端末2b、3bの短絡を防止可能に支持することができる。
【0026】
特に、挿通孔26e、27eを形成する壁面には、切欠き26f、27fとの境目において、切欠き26f、27fの壁面に対して隆起した爪部26g、27gが形成されている。このように形成された爪部26g、27gが、挿通孔26e、27eに収容された巻線端末2b、3bに当接することで、巻線端末2b、3bにおける挿通孔26e、27eから切欠き26f、27fに向かって抜け出る向きの移動を制限することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る切欠き26fは、切欠き27fよりも長く形成されている。換言すると、切欠き26fは、上下方向においてボビン25の軸線に近い位置まで延在している。このように形成されていることで、切欠き26fの端部にある挿通孔26eの位置を、切欠き27fの端部にある挿通孔27eの位置からずらして配置することができる。そして、異なる位置から引き出される巻線端末2b、3bの引出方向の延長上に挿通孔26e、27eをそれぞれ配置することができる。このため、挿通孔26e、挿通孔27eに巻線端末2b、3bを挿通させた状態において、挿通孔26e、27eの壁面から巻線端末2b、3bに荷重が加わりにくくすることができる。
【0028】
ボビン25に巻回されたコイルCは、入力側の1次コイル2と、出力側の2次コイル3と、から構成されている。
図3及び
図5に示すように、1次コイル2の両端部にある巻線端末2bのそれぞれは、一対の支持部27のそれぞれの挿通孔27e、及び後述する一対のホルダー6のそれぞれの挿通孔17に通されて、ガイド溝7に沿って配設される。2次コイル3の両端部にある巻線端末3bのそれぞれは、一対の支持部26の挿通孔26e、及び後述するホルダー6の挿通孔18を通されて、ガイド溝8に沿って配設される。
【0029】
コア11は、通電されたコイルCが形成する磁束の磁路を構成する部材である。本実施形態のコア11は、いわゆるPQコアであり、閉磁路構造を有する。具体的には、コア11は、ボビン25に挿通されるコア芯部11aと、コア芯部11aのX方向における外側端部において延在するコア端部11bと、コア芯部11aとは逆向きに磁束が流れる2本の磁脚11cと、を備える。
【0030】
ホルダー6は、
図7及び
図8に示すように1次コイル2の巻線端末2b、2次コイル3の巻線端末3bを保持する部材であり、板状に形成されて一対設けられている。一対のホルダー6は、コア11を介して、ベース5のX方向の両端部を挟む位置に配設される。
ホルダー6は、平面状に延在する薄肉部6dと、Y方向において薄肉部6dの端部から中央側に離れて形成され、X方向において薄肉部6dから中央側に突出する厚肉部6a、6bと、を有する。具体的には、厚肉部6aは、支持部27に収まるように台形状に形成されており薄肉部6dの下側に配設されている。厚肉部6bは、支持部26に収まるように厚肉部6aと対称的に倒立台形状に形成されており、薄肉部6dの上側に配設されている。厚肉部6aに挿通孔17が貫通して形成されており、厚肉部6bに挿通孔18が貫通して形成されている。
【0031】
このように、巻線端末2bが通される挿通孔17が厚肉部6aに形成され、巻線端末3bが通される挿通孔18が厚肉部6bに形成されていることで、コア11と巻線端末2b及び巻線端末3bとの絶縁距離を確保することができる。具体的には、Z方向に離れた位置においてX方向に巻線端末2b及び巻線端末3bが延在する部分において、コア11と巻線端末2b及び巻線端末3bとの絶縁距離を確保することができる。
【0032】
巻線端末2b、3bのZ方向の移動を制限する移動制限部は、ホルダー6に形成された巻線端末2b、3bを通す挿通孔17、18の壁面17a、18aであり、挿通孔17、18と後述するガイド溝7、8とが連続して形成されている。
このような構成によれば、例えば車両の揺れ等によってトランス1に外力が加わったときに、巻線端末2b、3bの移動を制限することができる。具体的には、挿通孔17、18に通されてガイド溝7、8に沿って配設された巻線端末2b、3bが、挿通孔17、18の壁面17a、18aに当接することによって、巻線端末2b、3bの移動が制限されることになる。このようにして、巻線端末2b、3bに大きな繰り返し応力が加わることによって断線が生じることを抑制できる。
【0033】
ガイド溝7、8は、巻線端末2b、3bを、基板9の接合部にガイドする機能を有するとともに、巻線端末2b間、巻線端末3b間の沿面距離を長くすることによって耐圧を確保する機能を有する。
本実施形態に係るホルダー6のガイド溝7、8は、
図7及び
図8に示すように、基板9の第1接合部(挿通孔9a)に向かって延在する第1ガイド溝(ガイド溝7)と、基板9の第2接合部(挿通孔9b)に向かって延在する第2ガイド溝(ガイド溝8)と、を含む。
第1ガイド溝(ガイド溝7)は、Y方向の中央においてZ−X面対称に、ホルダー6におけるY方向の中央から外側に3本ずつ計6本形成されている。
そして、第1ガイド溝(ガイド溝7)は、第2ガイド溝(ガイド溝8)に交差しない位置で、基板9の第1接合部(挿通孔9a)に向かって基板9に対して垂直に延在している。
第2ガイド溝(ガイド溝8)は、Y方向の中央においてZ−X面対称に、ホルダー6におけるY方向の中央から外側に3本ずつ計6本形成されている。
そして、第2ガイド溝(ガイド溝8)は、基板9の第2接合部(挿通孔9b)に向かって直線的に延在する直線部8dと、直線部8dに対して交差する方向に延在する交差部8cと、を備える。
直線部8dは、交差部8cよりも基板9側に設けられ、基板9に対して垂直に延在している。
【0034】
このような構成によれば、ガイド溝が、異なる形状の第1ガイド溝(ガイド溝7)と第2ガイド溝(ガイド溝8)を含むことで、基板9の各位置に巻線端末2b、3bの先端部2c、3cを配設しやすくなる。また、ガイド溝8が、基板9側に基板9に対して垂直に延在している直線部8dを含むことで、巻線端末3bに、接合部(挿通孔9b)近傍において曲げ荷重が加わることを抑制でき、断線が生じることを抑制できる。
【0035】
本実施形態に係る交差部8cは、直線部8dの延在方向に対して、約30度の傾きでホルダー6の幅方向の中心側に傾斜している。
しかし、ガイド溝7と干渉しない位置まで巻線端末3bをガイドできれば、このような構成に限定されない。例えば、巻線端末3bになめらかに繋がるように円弧状に形成された交差部であってもよく、直線部8dに対して直交するように延在する交差部であってもよい。
【0036】
例えば、直線部8dに対して直交する向きで延在する、換言すると、基板9に平行に延在する交差部であれば、巻線端末3bの移動を好適に制限することができる。具体的には、基板9から上方に向かう荷重が巻線端末3bに加わり、上方に移動しようとするときでも、挿通孔18の壁面18aだけでなく、交差部の壁面に巻線端末3bが当接することによって、その移動を制限することができる。
【0037】
ガイド溝7、8は、ホルダー6の薄肉部6dの厚みの半分(約半分を意味する。)の深さまで形成されている。
挿通孔17、18の縁のうち、ガイド溝7、8と交差する部位には、R面取りが施されている。このため、巻線端末2b、3bの折り曲げ部位に当接する領域が局所的となり、集中荷重が、挿通孔17、18の縁に加わることが抑制されている。
【0038】
一対のホルダー6のそれぞれは、基板9に向かってホルダー6の底面から突出して形成された2つの係合突起(ボス6c)をY方向の両端部に1つずつ有する。そして、基板9には、係合突起(ボス6c)に係合する2つの被係合部(挿通孔9b)がY方向の両端部に形成されている。
このように係合突起(ボス6c)を被係合部(挿通孔9b)に係合させる構成によれば、巻線端末2bの先端部2cを挿通孔9aに通し、巻線端末3bの先端部3cを挿通孔9bに通した状態を好適に維持することができる。
なお、ホルダー6と基板9とを係合できればよく、基板9のそれぞれに、ホルダー6に向かって突出して形成された係合突起が形成されて、ホルダー6に係合突起に係合する被係合部が形成されていてもよい。被係合部の構成は、係合突起に係合可能なものであれば任意に選択可能であり、被係合部及び係合突起の数も任意に選択可能である。
【0039】
本実施形態に係るボス6cは、
図2に示すように、基板9の板厚よりも長く突出して、基板9の底面から下方に突出しているが、基板9の板厚程度の長さで形成されていてもよい。
基板9に対する一対のホルダー6の位置が定まることで、一対のホルダー6に挟持された一対のコア11、ベース5及びコイルCの位置が定まることになる。
【0040】
巻線端末2b、3bは、ガイド溝7、8に収容されて、その移動を制限できれば、その位置は任意である。
例えば、
図8に示すように、本実施形態に係る巻線端末3bは、ガイド溝8のうち少なくとも直線部8dにおけるY方向の外側の内側面に沿うように配設されていてもよい。そして、巻線端末3bの先端部3cを通す挿通孔9bは、このように配設された巻線端末3bの延長上の位置に形成されていてもよい。
この構成について具体的には、Y方向において、ボス6cの中心から、複数の直線部8dのそれぞれにおけるY方向の外側の内側面までの長さに巻線端末3bの半径を加えた長さと、被係合穴9cの中心から複数の挿通孔9bそれぞれの中心までの長さとが、同じ長さとなるように設定されている。
【0041】
本実施形態に係るトランス1においては、巻線端末2b、3bの先端部2c、3cを半田処理した端子とし、その端子を絶縁材料からなるホルダー6に設けられた挿通孔17、18及びガイド溝7、8に通すことにより引出位置を固定することができる。このように固定された巻線端末2b、3bは、基板9の挿通孔9a、9bへの挿入を容易に行うことができ、基板9の挿通孔9a、9b部分において半田付けによる接合を容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係るトランス1は、
図1及び
図2に示すように、一対のコア11と、一対のコア11を挟持する位置に配設された一対のホルダー6と、を固定する帯状部材(テープ10)を更に備える。
上記のように、ホルダー6は、コア11を挟持するように一対設けられている。帯状部材(テープ10)は、コア11と一対のホルダー6を囲って固定しており、巻線端末3bの少なくとも一部を覆うように、巻線端末3bを収容しているガイド溝8の少なくとも一部に亘って配設されている。
コア11とホルダー6とを接着等によって取り付けてもよいが、帯状部材(テープ10)を用いることで、テープ10によりコア11とホルダー6とを固定しつつ、ガイド溝8内に挿入された巻線端末3bが、ガイド溝8から抜け出ることを防止することができる。本実施形態に係るテープ10は、巻線端末3bの一部を覆うように、巻線端末3bを収容しているガイド溝8の一部に亘って配設されているが、巻線端末2bの一部を覆うように、巻線端末2bを収容しているガイド溝7の一部に亘って配設するようにしてもよい。
【0043】
本発明は多様なコイル部品に適用可能であるが、特にトランス1の場合、コイルCの端子数が多くなり、複数の端子それぞれの絶縁距離を確保する必要があるため、引き回しの位置固定が重要である。本実施形態に係るトランス1は、ホルダー6に複数本のガイド溝7、8を備えることによって、1次コイル2、2次コイル3の複数の巻線端末2b、3bに相応の距離を保証することが可能となる。
さらに、巻線端末2b、3bは、挿通孔18の壁面18aでその位置を制限されるため、振動による端子への負担が軽減できる。
【0044】
<<第1変形例>>
上記の実施形態においては、ガイド溝7、8の幅が、巻線端末2b、3bの線径よりも若干小さく形成されていれば、巻線端末2b、3bが径方向に弾性変形した状態でガイド溝7及びガイド溝8内に収まることになる。
このようにすれば、巻線端末2b、3bのそれぞれが、ガイド溝7、8のそれぞれにおける幅方向に対向する壁面に当接する状態で、巻線端末2b、3bに復元力が生じて、巻線端末2b、3bがガイド溝7、8から抜け出ることを抑制できる。
【0045】
次に、第1変形例に係るホルダー36を、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、第1変形例に係るホルダー36の断面の一部を示す図であり、
図3のIX-IX断面に対応する部位における模式的な断面図である。
図10は、他の例に係るホルダー6の断面の一部を示す図であり、
図3のIX-IX断面に対応する部位における模式的な断面図である。
本変形例に係るホルダー36は、巻線端末2bをガイドするガイド溝37、巻線端末3bをガイドするガイド溝38の壁面に、ガイド溝37、38内に挿入された巻線端末2b、3bの抜け出しを防ぐように係止する一対の係止爪39を備える。
一対の係止爪39は、ガイド溝37、38の開口を狭めるように形成されている。係止爪39により、ガイド溝37、38内に挿入された巻線端末2b、3bが、ガイド溝37、38から抜け出ることを防止することができる。
【0046】
具体的には、係止爪39としては、巻線端末2b、3bの線径と同じ開口幅を有するものであるか、小さい開口幅を有して弾性変形可能に構成されるものであれば、巻線端末2b、3bがガイド溝37、38から抜け出ることを少なくとも抑制できる。
なお、係止爪39は、一対設けられるものに限定されず、ガイド溝37、38の幅方向一方側のみからガイド溝37、38の開口を狭めるように形成されていてもよい。
さらには、係止爪39は、ガイド溝37、38の底部に向かうにつれて開口幅が狭められた傾斜形状の爪であってもよい。このような構成によれば、ガイド溝37、38に巻線端末2b、3bを挿入しやすいが、ガイド溝37、38に収容された巻線端末2b、3bの抜け出しを防ぎやすくなる。その他、係止爪39は、断面三角形状の爪であってもよい。
【0047】
また、本例に係る係止爪39は、
図9に示すように、ガイド溝37、38の深さ方向中途の内壁面から突出している。このような構成によれば、係止爪39とホルダー36の外面との間に凹部39aが形成されることになるため、巻線端末2b、3bを、凹部39aに押し当てながらガイド溝37、38に容易に押し込むことができるため好適である。しかしながら、本発明は、このような構成に限定されず、係止爪39は、ホルダー36の外面と面一に形成されていてもよい。
【0048】
他の例としては、
図10に示すように、トランス1が、ガイド溝7、8に取り付けられる封止材(シリコンゴム40)を備えるものであってもよい。
封止材(シリコンゴム40)は、ガイド溝7、8内に挿入された巻線端末2b、3bを覆うようにガイド溝7、8に取り付けられている。
封止材(シリコンゴム40)により、ガイド溝7、8内に挿入された巻線端末2b、3bが、ガイド溝7、8から抜け出ることを防止することができる。
また、シリコンゴム40を
図9に示す凹部39aに取り付けるようにしてもよい。
【0049】
<<第2変形例>>
上記実施形態においては、挿通孔18の壁面18aが巻線端末3bのZ方向の移動を制限するものとして説明した。しかし、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、第2変形例に係るホルダー36を、
図11を参照して説明する。
図11は、第2変形例に係る爪部56aを有するホルダー56の一部を示す上側斜視図である。
第2変形例に係る移動制限部は、ホルダー56の上端部に設けられて、ホルダー56における基板9側とは逆側(本実施形態においては上側)への巻線端末3bの移動を制限する一対の爪部56aである。
【0050】
第2変形例に係るホルダー56の上面には、巻線端末3bの上部をガイドする上部ガイド溝56cがガイド溝8と連続する位置に形成されている。
一対の爪部56aは、ホルダー56における基板9側とは逆側(本実施形態においては上側)から、上部ガイド溝56cに収容された巻線端末3bを覆うように形成されている。
【0051】
具体的には、爪部56aとしては、巻線端末3bの線径と同じ開口幅を有するものであるか、小さい開口幅を有して弾性変形可能に構成されるものであれば、巻線端末3bが上部ガイド溝56cから抜け出ることを少なくとも抑制できる。
なお、爪部56aは、一対設けられるものに限定されず、上部ガイド溝56cの幅方向一方側のみから上部ガイド溝56cの開口を狭めるように形成されていてもよい。
【0052】
トランス1の製造者は、巻線端末3bを上部ガイド溝56c内に上方から押し付けて収容させ、上部ガイド溝56cとガイド溝8とが交差する端部から、ガイド溝8に沿うように下方に折り曲げる。
このようにすれば、巻線端末3bを挿通孔18に通すよりも簡単にガイド溝8内に挿入することができ、爪部56aによって巻線端末3bの移動を制限することができる。特に、上記の実施形態に係る挿通孔18に巻線端末3bを通さずに、対向する爪部56aの間において外部と連続する上部ガイド溝56cに巻線端末3bを押し込むことによって、ホルダー56に巻線端末3bを取り付けることができる。
特に、巻線端末3bを下方に押圧する自動機(ベンダー)を用いることによって、巻線端末3bを上部ガイド溝56cに収容させて爪部56aに係止させつつ、ガイド溝8に沿って巻線端末3bを折り曲げることができ、製造効率を高めることができる。
【0053】
また、本例に係る爪部56aは、
図11に示すように、上部ガイド溝56cの深さ方向中途の内壁面から突出している。このような構成によれば、爪部56aとホルダー56の端面(上面)との間に凹部56dが形成されることになるため、巻線端末3bを、凹部56dに押し当てながら上部ガイド溝56cに容易に押し込むことができるため好適である。しかしながら、本発明は、このような構成に限定されず、爪部56aは、ホルダー56の上面と面一に形成されていてもよい。
【0054】
上記実施形態においては、巻線端末2b、3bをガイドするものとして、ホルダー6の正面から窪んで形成されたガイド溝7、8を例に説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、本発明に係るガイド溝としては、ホルダー6の正面と同じ高さにあるが、両側に一連の突出条が、ガイド溝7、8と同様に延在していることによって相対的に窪んで形成されるガイド溝であってもよい。この場合の突出条は、巻線端末2bの相互間、巻線端末3bの相互間の沿面距離を確保するため、断続的ではなく、連続的に形成されていると好適である。
【0055】
上記実施形態においては、1次コイル2及び2次コイル3を備えるトランス1を例に説明したが、本発明は、トランス1に係るものに限定されない。例えば、チョークコイル、リアクトルその他のコイル部品に適用することができ、この場合のコイル部品は、2種類のガイド溝7、8のうち、ガイド溝7のみを有するホルダーを備えるものであってもよい。
【0056】
上記実施形態においては、ホルダー6の正面(外側の面)に、ガイド溝7、8が形成されている例について説明したが、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、ホルダー6のコア11に対向する側の面にガイド溝が形成されていてもよい。この場合、コア11にバリアテープを巻いたり、溝の深さを十分に深くするようにしたりして、コア11と巻線端末2b、3bとの空間距離を十分に確保するようにして、コア11と巻線端末2b、3bとの絶縁が確保できればよい。
【0057】
上記各実施形態は、以下の技術思想のいずれかを包含する。
(1)巻線から成るコイルと、
該コイルから引き出された巻線端末が前記コイルの巻軸方向に交差する方向に延在するように支持するホルダーと、
前記巻線端末の先端部と接合するための複数の接合部を有する基板と、を備え、
前記ホルダーは、
前記巻線端末の少なくとも一部を収容し、前記巻線端末の先端部を前記接合部に向かわせるように延在してガイドするガイド溝と、
前記基板に垂直な方向への前記巻線端末の移動を制限する移動制限部と、を有することを特徴とするコイル部品。
(2)前記移動制限部は、前記ホルダーに形成された前記巻線端末を通す挿通孔の壁面であり、
前記挿通孔と前記ガイド溝とが連続して形成されている(1)に記載のコイル部品。
(3)前記移動制限部は、前記ホルダーの端部に設けられて、前記ホルダーにおける前記基板側とは逆側への前記巻線端末の移動を制限する爪部であり、
該爪部は、前記ホルダーにおける前記基板側とは逆側から前記巻線端末を覆うように形成されている(1)に記載のコイル部品。
(4)前記爪部と前記ホルダーの端部の端面との間に凹部が形成されている(3)に記載のコイル部品。
(5)前記ガイド溝は、直線的に延在する直線部と、該直線部に対して交差する方向に延在する交差部と、を備え
前記直線部は、前記交差部よりも前記基板側に設けられており、前記基板に対して垂直に延在している(1)から(4)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(6)前記ホルダーと前記基板との一方は、他方に向かって突出して形成された複数の係合突起を有し、
前記ホルダーと前記基板との他方には、前記係合突起に係合する複数の被係合部が形成されている(1)から(5)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(7)前記コイルに組付けられるコアと、
該コアと前記ホルダーとを固定する帯状部材と、を更に備え、
前記ホルダーは、前記コアを挟持するように一対設けられており、
前記帯状部材は、前記コアと前記一対のホルダーを囲って固定しており、前記巻線端末の少なくとも一部を覆うように、前記巻線端末を収容している前記ガイド溝の少なくとも一部に亘って配設されている(1)から(6)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(8)前記コイルが取り付けられるボビンと、
前記巻線端末が前記ボビンから前記ホルダーの前記ガイド溝に向かって延在するように、複数の前記巻線端末を個別に支持する支持部と、を更に備える(1)から(7)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(9)前記支持部は、複数の前記巻線端末を個別に間隔を空けて支持可能となるように、櫛歯状に形成されている(8)に記載のコイル部品。
(10)前記支持部は、前記巻線端末を挿通させる挿通孔と、該挿通孔に通された前記巻線が抜け出ることを防ぐ爪部と、を備える(8)又は(9)に記載のコイル部品。
(11)前記ガイド溝の壁面に、前記ガイド溝内に挿入された前記巻線端末の抜け出しを防ぐように係止する係止爪を備え、
該係止爪は、前記ガイド溝の開口を狭めるように形成されている(1)から(10)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(12)前記ガイド溝に取り付けられる封止材を更に備え、
該封止材は、前記ガイド溝内に挿入された前記巻線端末を覆うように前記ガイド溝に取り付けられている(1)から(11)のいずれか一項に記載のコイル部品。
(13)第1巻線から成る第1コイルと、
該第1コイルとは異なる巻数の第2巻線から成る第2コイルと、
前記第1コイルから引き出された第1巻線端末、及び前記第2コイルから引き出された第2巻線端末を支持するホルダーと、
前記第1巻線端末の先端部及び前記第2巻線端末の先端部と接合する複数の接合部を有する基板と、を備え、
前記ホルダーは、
前記第1巻線端末の少なくとも一部及び前記第2巻線端末の少なくとも一部を収容し、前記第1巻線端末の先端部及び前記第2巻線端末の先端部を前記接合部に向かわせるように延在してガイドする複数のガイド溝と、
前記基板に垂直な方向への前記第1巻線端末及び前記第2巻線端末の移動を制限する複数の移動制限部と、を有することを特徴とするトランス。
(14)前記複数のガイド溝は、前記基板の第1接合部に向かって延在する第1ガイド溝と、前記基板の第2接合部に向かって延在する第2ガイド溝と、を含み、
前記第1ガイド溝は、前記第2ガイド溝に交差しない位置で、前記基板の前記第1接合部に向かって前記基板に対して垂直に延在し、
前記第2ガイド溝は、前記基板の前記第2接合部に向かって直線的に延在する直線部と、該直線部に対して交差する方向に延在する交差部と、を備え、
前記直線部は、前記交差部よりも前記基板側に設けられ、前記基板に対して垂直に延在している(13)に記載のトランス。