特開2019-169575(P2019-169575A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019169575-半導体装置 図000003
  • 特開2019169575-半導体装置 図000004
  • 特開2019169575-半導体装置 図000005
  • 特開2019169575-半導体装置 図000006
  • 特開2019169575-半導体装置 図000007
  • 特開2019169575-半導体装置 図000008
  • 特開2019169575-半導体装置 図000009
  • 特開2019169575-半導体装置 図000010
  • 特開2019169575-半導体装置 図000011
  • 特開2019169575-半導体装置 図000012
  • 特開2019169575-半導体装置 図000013
  • 特開2019169575-半導体装置 図000014
  • 特開2019169575-半導体装置 図000015
  • 特開2019169575-半導体装置 図000016
  • 特開2019169575-半導体装置 図000017
  • 特開2019169575-半導体装置 図000018
  • 特開2019169575-半導体装置 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-169575(P2019-169575A)
(43)【公開日】2019年10月3日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20190906BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20190906BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20190906BHJP
【FI】
   H01L29/78 655E
   H01L29/78 652Q
   H01L29/78 653C
   H01L29/78 652P
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301V
   H01L29/78 655F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-55402(P2018-55402)
(22)【出願日】2018年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 常雄
(57)【要約】
【課題】電流集中による破壊の抑制を可能とする半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の第1の面の側に設けられたエミッタ電極と、半導体層の第2の面の側に設けられたコレクタ電極と、半導体層の第1の面の側に設けられた第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられた第2のゲート電極パッドと、半導体層の中に設けられた第1のトレンチと、第1のトレンチの中に設けられ第1のゲート電極パッドに接続された第1のゲート電極と、を有するセル領域と、半導体層の中に設けられた第2のトレンチと、第2のトレンチの中に設けられ第2のゲート電極パッドに接続された第2のゲート電極と、を有し、セル領域に隣り合うセル端領域と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられたエミッタ電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられたコレクタ電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられた第1のゲート電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられた第2のゲート電極パッドと、
前記半導体層の中に設けられた第1のトレンチと、前記第1のトレンチの中に設けられ前記第1のゲート電極パッドに電気的に接続された第1のゲート電極と、を有するセル領域と、
前記半導体層の中に設けられた第2のトレンチと、前記第2のトレンチの中に設けられ前記第2のゲート電極パッドに電気的に接続された第2のゲート電極と、を有し、前記セル領域に隣り合うセル端領域と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記セル領域は、前記半導体層の中に設けられ前記コレクタ電極に接する第一導電型コレクタ領域と、前記第一導電型コレクタ領域と前記第1の面との間に設けられた第二導電型ドリフト領域と、前記第二導電型ドリフト領域と前記第1の面との間に設けられた第一導電型ベース領域と、前記第一導電型ベース領域と前記第1の面との間に設けられ前記エミッタ電極に接する第1の第二導電型エミッタ領域と、を有し、
前記セル端領域は、前記第一導電型コレクタ領域と、前記第二導電型ドリフト領域と、前記第一導電型ベース領域と、前記第一導電型ベース領域と前記第1の面との間に設けられ前記エミッタ電極に接する第2の第二導電型エミッタ領域と、を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記セル端領域は、前記半導体層の中に設けられた第3のトレンチと、前記第3のトレンチの中に設けられ前記第1のゲート電極パッドに電気的に接続された第3のゲート電極と、を有する請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極に閾値以上の電圧が印加されたオン状態から、オフ状態に移行する際に、前記第2のゲート電極に閾値以下の電圧を印加した後、前記第1のゲート電極に閾値以下の電圧を印加する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記セル領域は、前記半導体層の中に設けられ前記コレクタ電極に接する第一導電型コレクタ領域と、前記第一導電型コレクタ領域と前記第1の面との間に設けられた第二導電型ドリフト領域と、前記第二導電型ドリフト領域と前記第1の面との間に設けられた第一導電型ベース領域と、前記第一導電型ベース領域と前記第1の面との間に設けられ前記エミッタ電極に接する第二導電型エミッタ領域と、を有し、
前記セル端領域は、前記第一導電型コレクタ領域と、前記第二導電型ドリフト領域と、前記第二導電型ドリフト領域と前記第1の面との間に設けられた第一導電型領域と、を有する請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
隣りあう2個の前記第2のトレンチの間隔は、隣り合う2個の前記第1のトレンチの間隔よりも狭い請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第一導電型領域の前記第1の面から前記第2の面に向かう方向の深さが、前記第2のトレンチの前記方向の深さよりも深い請求項5又は請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
隣りあう2個の前記第2のトレンチの間に第二導電型領域が設けられた請求項5ないし請求項7いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第一導電型領域の前記第1の面から前記第2の面に向かう方向の深さが、前記第2のトレンチの前記方向の深さよりも浅い請求項5又は請求項6記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第一導電型領域の前記方向の深さが、前記第一導電型ベース領域の前記方向の深さと略同一である請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1のゲート電極パッドに閾値以上の電圧が印加されたオン状態から、オフ状態に移行する際に、前記第2のゲート電極パッドに負電圧を印加した後、前記第1のゲート電極パッドに閾値以下の電圧を印加する請求項5ないし請求項10いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)がある。IGBTは、例えば、コレクタ電極上に、p型コレクタ領域、n型ドリフト領域、p型ベース領域が設けられる。そして、p型ベース領域を貫通し、n型ドリフト領域に達するトレンチ内に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。さらに、p型ベース領域表面のトレンチに隣接する領域に、エミッタ電極に接続されるn型エミッタ領域が設けられる。
【0003】
上記IGBTでは、ゲート電極に閾値電圧より高い正電圧が印加されることにより、p型ベース領域にチャネルが形成される。そして、n型エミッタ領域からn型ドリフト領域に電子が注入され、p型コレクタ領域からn型ドリフト領域に正孔が注入される。これにより、コレクタ電極とエミッタ電極間に電子と正孔をキャリアとする電流が流れる。
【0004】
IGBTのチャネルが形成される領域をセル領域(もしくはセル)と定義した際、IGBTのセル領域の端部、たとえば終端領域とセル領域の境界領域では、IGBTがオン状態の際にセルの存在しない領域までキャリアが広がる。IGBTがオン状態からオフ状態に移行するターンオフ動作の際に、広がったキャリアがセル領域の端部に近いセルに集中して排出されるため、局所的に電流密度が高くなる。このため、IGBTの破壊が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−98415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電流集中などによる破壊の抑制を可能とする半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられたエミッタ電極と、前記半導体層の前記第2の面の側に設けられたコレクタ電極と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられた第1のゲート電極パッドと、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられた第2のゲート電極パッドと、前記半導体層の中に設けられた第1のトレンチと、前記第1のトレンチの中に設けられ前記第1のゲート電極パッドに電気的に接続された第1のゲート電極と、を有するセル領域と、前記半導体層の中に設けられた第2のトレンチと、前記第2のトレンチの中に設けられ前記第2のゲート電極パッドに電気的に接続された第2のゲート電極と、を有し、前記セル領域に隣り合うセル端領域と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式平面図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図3】比較形態の半導体装置の模式平面図。
図4】比較形態の半導体装置の模式断面図。
図5】比較形態の半導体装置の作用の説明図。
図6】比較形態の半導体装置の作用の説明図。
図7】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図8】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図10】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図11】第3の実施形態の半導体装置の模式平面図。
図12】第3の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図13】第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図14】第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図15】第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図。
図16】第4の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図17】第5の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0010】
本明細書中、n型、n型、n型との表記がある場合、n型、n型、n型の順でn型の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p型、p型、p型の表記がある場合、p型、p型、p型の順で、p型の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の第1の面の側に設けられたエミッタ電極と、半導体層の第2の面の側に設けられたコレクタ電極と、半導体層の第1の面の側に設けられた第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられた第2のゲート電極パッドと、半導体層の中に設けられた第1のトレンチと、第1のトレンチの中に設けられ第1のゲート電極パッドに電気的に接続された第1のゲート電極と、を有するセル領域と、半導体層の中に設けられた第2のトレンチと、第2のトレンチの中に設けられ第2のゲート電極パッドに電気的に接続された第2のゲート電極と、を有し、セル領域に隣り合うセル端領域と、を備えた。
【0012】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図2図1のAA’断面図である。以下、第一導電型がp型、第二導電型がn型である場合を例に説明する。
【0013】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート型のIGBT100である。以下、第一導電型がp型、第二導電型がn型である場合を例に説明する。
【0014】
第1の実施形態のIGBT100は、セル領域101、セル端領域102、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、第2のゲート電極パッド112を備える。IGBT100は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0015】
半導体層10の中には、メイントレンチ20(第1のトレンチ)、コントロールトレンチ22(第2のトレンチ)、メインゲート電極24(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極26(第2のゲート電極)、p型コレクタ領域28(第一導電型コレクタ領域)、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32(第二導電型ドリフト領域)、p型ベース領域34(第一導電型ベース領域)、第1のn型エミッタ領域36(第1の第二導電型エミッタ領域)、第2のn型エミッタ領域37(第2の第二導電型エミッタ領域)、p型周辺領域38、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42、周辺トレンチ44、トレンチ電極46が設けられる。
【0016】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0017】
エミッタ電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。エミッタ電極12は、例えば、セル領域101の全面を覆う。エミッタ電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。エミッタ電極12は、例えば、金属である。エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
【0018】
コレクタ電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。コレクタ電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。コレクタ電極14は、例えば、金属である。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0019】
第1のゲート電極パッド111は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極パッド111は、セル領域101のメインゲート電極24に電気的に接続さる。第1のゲート電極パッド111には、第1のゲート電圧が印加される。
【0020】
第2のゲート電極パッド112は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第2のゲート電極パッド112は、セル端領域102のコントロールゲート電極26に電気的に接続さる。第2のゲート電極パッド112には、第2のゲート電圧が印加される。
【0021】
セル端領域102は、セル領域101の端部に設けられる。セル端領域102は、セル領域101に隣り合って設けられる。セル端領域102は、例えば、セル領域101の両側の端部に隣り合って設けられる。終端領域103は、セル領域101とセル端領域102の周囲に設けられる。終端領域103は、セル領域101とセル端領域102を囲む。
【0022】
セル領域101は主にIGBT100のオン状態にて電流を流す機能を有する。セル端領域102は、IGBT100のターンオフ動作の際に電流集中を緩和する機能を有する。終端領域103は、IGBT100がオフ状態つまり逆バイアス時、IGBT100の耐圧の低下を抑制する機能を有する。
【0023】
セル領域101は、エミッタ電極12、コレクタ電極14、メイントレンチ20、メインゲート電極24、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、第1のn型エミッタ領域36、ゲート絶縁膜42を有する。
【0024】
セル端領域102は、エミッタ電極12、コレクタ電極14、コントロールトレンチ22、コントロールゲート電極26、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、第2のn型エミッタ領域37、ゲート絶縁膜42を有する。
【0025】
終端領域103は、エミッタ電極12、コレクタ電極14、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型周辺領域38、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42、周辺トレンチ44、トレンチ電極46を有する。
【0026】
p型コレクタ領域28は、p型の半導体領域である。p型コレクタ領域28は、コレクタ電極14に電気的に接続される。p型コレクタ領域28は、コレクタ電極14に接する。
【0027】
p型コレクタ領域28は、IGBT100のオン状態の際に正孔の供給源となる。
【0028】
n型バッファ領域30は、n型の半導体領域である。n型バッファ領域30は、第1の面P1とp型コレクタ領域28との間に設けられる。n型バッファ領域30は、IGBT100のオフ状態の際に、空乏層の伸びを抑制する機能を有する。n型バッファ領域30を設けない構成とすることも可能である。
【0029】
n型ドリフト領域32は、n型の半導体領域である。n型ドリフト領域32は、第1の面P1とn型バッファ領域30との間に設けられる。n型ドリフト領域32のn型不純物濃度は、n型バッファ領域30のn型不純物濃度より低い。
【0030】
n型ドリフト領域32は、IGBT100のオン状態の際にオン電流の経路となる。n型ドリフト領域32は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBT100の耐圧を維持する機能を有する。
【0031】
p型ベース領域34は、p型の半導体領域である。p型ベース領域34は、第1の面P1とn型ドリフト領域32との間に設けられる。p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、6μm以下である。p型ベース領域34は、メインゲート電極24に、セル領域101のトランジスタの閾値電圧を超える電圧が印加されたIGBT100のオン状態の際にn型反転層が形成され、トランジスタのチャネル領域として機能する。
【0032】
第1のn型エミッタ領域36は、n型の半導体領域である。第1のn型エミッタ領域36は、セル領域101に設けられる。第1のn型エミッタ領域36は、第1の面P1とp型ベース領域34との間に設けられる。第1のn型エミッタ領域36のn型不純物濃度は、n型ドリフト領域32のn型不純物濃度より高い。
【0033】
第1のn型エミッタ領域36は、エミッタ電極12に電気的に接続される。第1のn型エミッタ領域36は、エミッタ電極12に接する。第1のn型エミッタ領域36は、IGBT100のオン状態の際に電子の供給源となる。
【0034】
メイントレンチ20は、セル領域101に設けられる。メイントレンチ20は、例えば、第1の面P1に略平行な第1の方向に伸長するストライプ形状を有する。
【0035】
メイントレンチ20は、p型ベース領域34を貫通する。メイントレンチ20の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、6μm以下である。
【0036】
メインゲート電極24は、メイントレンチ20の中に設けられる。メインゲート電極24は、例えば、n型不純物又はp型不純物を含む多結晶シリコンである。メインゲート電極24は、図示しない配線層を用いて、第1のゲート電極パッド111に電気的に接続される。
【0037】
メインゲート電極24とp型ベース領域34の間には、ゲート絶縁膜42が設けられる。ゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0038】
第2のn型エミッタ領域37は、n型の半導体領域である。第2のn型エミッタ領域37は、セル端領域102に設けられる。第2のn型エミッタ領域37は、第1の面P1とp型ベース領域34との間に設けられる。第2のn型エミッタ領域37のn型不純物濃度は、n型ドリフト領域32のn型不純物濃度より高い。第2のn型エミッタ領域37は、例えば、第1のn型エミッタ領域36と同一の深さ、及び、同一のn型不純物濃度を有してもよい。
【0039】
第2のn型エミッタ領域37は、エミッタ電極12に電気的に接続される。第2のn型エミッタ領域37は、エミッタ電極12に接する。第2のn型エミッタ領域37は、IGBT100のオン状態の際に電子の供給源となる。
【0040】
コントロールトレンチ22は、セル端領域102に設けられる。コントロールトレンチ22は、例えば、第1の面P1に略平行な第1の方向に伸長するストライプ形状を有する。
【0041】
コントロールトレンチ22は、p型ベース領域34を貫通する。コントロールトレンチ22の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、6μm以下である。
【0042】
コントロールトレンチ22は、メイントレンチ20と同一の形状を有していてもよい。コントロールトレンチ22は、メイントレンチ20と同一のピッチで配置されてもよい。
【0043】
コントロールゲート電極26は、コントロールトレンチ22の中に設けられる。コントロールゲート電極26は、例えば、n型不純物又はp型不純物を含む多結晶シリコンである。コントロールゲート電極26は、図示しない配線層を用いて、第2のゲート電極パッド112に電気的に接続される。
【0044】
コントロールゲート電極26とp型ベース領域34の間には、ゲート絶縁膜42が設けられる。ゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコン膜である。
【0045】
p型周辺領域38は、p型の半導体領域である。p型周辺領域38は、終端領域103に設けられる。p型周辺領域38は、第1の面P1とn型ドリフト領域32との間に設けられる。p型周辺領域38は、例えば、セル領域101とセル端領域102とを囲んで設けられる。p型周辺領域38は、例えば、p型ベース領域34に接する。
【0046】
p型周辺領域38の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さよりも深い。p型周辺領域38の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、6μm以上12μm以下である。
【0047】
p型周辺領域38は、オフ状態の際のセル領域101及びセル端領域102の端部での電界強度を緩和する機能を有する。
【0048】
周辺トレンチ44は、p型周辺領域38の中に設けられる。トレンチ電極46は、周辺トレンチ44中に設けられる。トレンチ電極46は、例えば、n型不純物又はp型不純物を含む多結晶シリコンである。トレンチ電極46は、例えば、フローティングである。トレンチ電極46とp型周辺領域38の間には、ゲート絶縁膜42が設けられる。なお、周辺トレンチ44を設けない構成とすることも可能である。
【0049】
p型ガードリング領域40は、終端領域103に設けられる。p型ガードリング領域40は、第1の面P1とn型ドリフト領域32との間に設けられる。p型ガードリング領域40は、セル領域101とセル端領域102とを囲んで設けられる。p型ガードリング領域40は、フローティングである。p型ガードリング領域40の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さよりも深い。
【0050】
p型ガードリング領域40は、IGBT100がオフ状態の際のセル領域101及びセル端領域102の端部での電界強度を緩和する機能を有する。
【0051】
IGBT100は、セル領域101のメインゲート電極24と、セル端領域102のコントロールゲート電極26が電気的に分離されている。メインゲート電極24には、第1のゲート電極パッド111から第1のゲート電圧を印加することができる。コントロールゲート電極26には、第2のゲート電極パッド112から第2のゲート電圧を印加することができる。
【0052】
第1のゲート電圧と第2のゲート電圧は、異なるタイミングで印加することが可能である。また、第1のゲート電圧と第2のゲート電圧を異なる電圧とすることも可能である。
【0053】
次に、IGBT100の動作について説明する。
【0054】
IGBT100のオフ状態では、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0055】
IGBT100をターンオン動作させて、オン状態にする際に、第1のゲート電極パッド111、及び、第2のゲート電極パッド112にターンオン電圧を印加する。メインゲート電極24、及び、コントロールゲート電極26にもターンオン電圧が印加される。
【0056】
ここで、ターンオン電圧とは、セル領域101、及び、セル端領域102のトランジスタの閾値電圧を超える電圧である。ターンオン電圧は、例えば、15Vである。セル領域101のトランジスタと、セル端領域102のトランジスタの両方のトランジスタがオン状態になる。
【0057】
次に、IGBT100をターンオフ動作させて、オフ状態にする際に、最初に第2のゲート電極パッド112にターンオフ電圧を印加する。したがって、コントロールゲート電極26にもターンオフ電圧が印加される。ここで、ターンオフ電圧とはセル領域101、及び、セル端領域102のトランジスタがオン状態とならない閾値以下の電圧であり、例えば、0Vである。セル端領域102のトランジスタが、セル領域101のトランジスタに先行してオフ状態になる。
【0058】
次に、第1のゲート電極パッド111に、ターンオフ電圧を印加する。メインゲート電極24にもターンオフ電圧が印加される。セル端領域102のトランジスタに続いて、セル領域101のトランジスタがオフ状態になり、IGBT100がオフ状態になる。ただし、セル領域101のトランジスタと、セル端領域102のトランジスタは明確に分離された構造ではないが、動作説明の便宜上、セル領域101のトランジスタ、セル端領域102のトランジスタという記載をするものとする。
【0059】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0060】
IGBTのセルが形成されたセル領域の端部では、セルがオン状態の際にセルの存在しない終端領域の一部にまでキャリアが広がる。セルがオン状態からオフ状態に移行するターンオフ動作の際に、広がったキャリアがセル領域の端部に近いセルに集中して排出されるため電流密度が高くなる。このため、IGBTの破壊が生じるおそれがある。また、終端領域に広がったキャリアを排出するために時間がかかり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失が大きくなるおそれがある。
【0061】
図3は、比較形態の半導体装置の模式平面図である。図4は、比較形態の半導体装置の模式断面図である。図4図3のBB’断面図である。
【0062】
比較形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート型のIGBT900である。
【0063】
比較形態のIGBT900は、セル領域101、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、を備える。IGBT900は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0064】
半導体層10の中には、メイントレンチ20、メインゲート電極24、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、第1のn型エミッタ領域36、p型周辺領域38、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42、周辺トレンチ44、トレンチ電極46が設けられる。
【0065】
比較形態のIGBT900は、セル端領域102、及び、第2のゲート電極パッド112を備えない点で、第1の実施形態のIGBT100と異なる。また、比較形態のIGBT900は、コントロールトレンチ22、コントロールゲート電極26、第2のn型エミッタ領域37を備えない点で、第1の実施形態のIGBT100と異なる。
【0066】
図5は、比較形態の半導体装置の作用の説明図である。図5は、比較形態のIGBT900のオン状態のキャリアの蓄積状態を示す図である。
【0067】
図5に示すように、終端領域103の一部にもキャリアが広がり、終端領域103の一部にもキャリアが多量に蓄積されている。
【0068】
図6は、比較形態の半導体装置の作用の説明図である。図6は、比較形態のIGBT900のターンオフ動作時の電流の状態を示す図である。矢印が電流の流れを示す。矢印の太さが電流密度を示す。
【0069】
IGBT900では、セル領域101のメインゲート電極24にターンオフ電圧が印加されると、セル領域101のトランジスタが一斉にオフ状態になる。
【0070】
終端領域103、特にp型ガードリング領域40の直上には、キャリアの排出経路が無い。このため、終端領域103の一部にも蓄積された多量のキャリアが、セル領域101の端部に集中する。したがって、セル領域101の端部の電流密度が高くなる。よって、IGBT900が破壊するおそれがある。また、IGBT900が破壊しなかったとしても、キャリアの排出に時間がかかり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失が大きくなるおそれがある。
【0071】
図7は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図7は、第1の実施形態のIGBT100のオン状態のキャリアの蓄積状態を示す図である。
【0072】
図7に示すように、比較形態の場合と同様、終端領域103の一部にもキャリアが広がり、終端領域103の一部にもキャリアが多量に蓄積されている。
【0073】
図8は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図8は、第1の実施形態のIGBT100をオフ状態にする際に、セル端領域102のトランジスタを、セル領域101のトランジスタに先行してオフ状態にした状態でのキャリアの蓄積状態を示す図である。
【0074】
セル端領域102のトランジスタは、オフ状態であるため、セル端領域102での電子の注入は遮断されている。したがって、図8に示すように、終端領域103及びセル端領域102のキャリアの蓄積量が、セル領域101の蓄積量よりも少なくなる。しかし、セル領域101はオン状態のため、IGBT100自体はオン状態にある。
【0075】
図9は、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図9は、第1の実施形態のIGBT100の、ターンオフ動作時の電流の状態を示す図である。矢印が電流の流れを示す。矢印の太さが電流密度を示す。
【0076】
IGBT100では、セル端領域102のトランジスタがオフ状態になった後に、セル領域101のメインゲート電極24にターンオフ電圧が印加され、セル領域101のトランジスタがオフ状態となる。
【0077】
終端領域103及びセル端領域102のキャリアの蓄積量が、既に少なくなっているため、セル端領域102あるいはセル領域101の端部でのキャリアの集中は生じない。したがって、電流密度が高くなることがない。よって、IGBT100の破壊が抑制される。また、キャリアの排出に要する時間も短くなり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加が抑制される。
【0078】
以上、第1の実施形態によれば、IGBT100の電流集中による破壊を抑制することが可能となる。また、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加を抑制することが可能となる。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、セル端領域は、半導体層の中に設けられた第3のトレンチと、第3のトレンチの中に設けられ第1のゲート電極パッドに接続された第3のゲート電極と、を有する点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0080】
図10は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図10図1のAA’断面図に相当する断面図である。
【0081】
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチ型のIGBT200である。
【0082】
第2の実施形態のIGBT200は、セル領域101、セル端領域102、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、第2のゲート電極パッド112を備える。IGBT200は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0083】
半導体層10の中には、メイントレンチ20(第1のトレンチ)、コントロールトレンチ22(第2のトレンチ)、メインゲート電極24(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極26(第2のゲート電極)、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、第1のn型エミッタ領域36、第2のn型エミッタ領域37、p型周辺領域38、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42、周辺トレンチ44、トレンチ電極46が設けられる。
【0084】
半導体層10の中には、更に、メイントレンチ23(第3のトレンチ)、メインゲート電極25(第3のゲート電極)が設けられる。
【0085】
メイントレンチ23、及び、メインゲート電極25は、セル端領域102に設けられる。セル端領域102のメイントレンチ23、及び、メインゲート電極25は、例えば、2つのコントロールトレンチ22の間に設けられる。
【0086】
メインゲート電極25は、第1のゲート電極パッド111に電気的に接続される。したがって、セル端領域102内に、一部、セル領域101のトランジスタと同じ動作をするトランジスタが設けられる。
【0087】
第2の実施形態のIGBT200によれば、セル端領域102に、セル領域101のトランジスタと同じ動作をするトランジスタを設けることにより、終端領域103のキャリアの蓄積量を調整することが可能となる。したがって、IGBT200の特性の最適化を図ることが容易になる。
【0088】
以上、第2の実施形態によれば、IGBT200の電流集中による破壊を抑制することが可能となる。また、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加を抑制することが可能となる。更に、IGBT200の特性の最適化を図ることが容易になる。
【0089】
なお図10では、コントロールトレンチ22の間にメイントレンチ23を配置しているが、コントロールトレンチ22とメイントレンチ23の配置は自由に変えられる。
【0090】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、セル領域は、半導体層の中に設けられコレクタ電極に接するp型コレクタ領域と、p型コレクタ領域と第1の面との間に設けられたn型ドリフト領域と、n型ドリフト領域と第1の面との間に設けられたp型ベース領域と、p型ベース領域と第1の面との間に設けられエミッタ電極に接するn型エミッタ領域と、を有し、セル端領域は、p型コレクタ領域と、n型ドリフト領域と、n型ドリフト領域と第1の面との間に設けられたp型領域と、を有する。
【0091】
第3の実施形態の半導体装置は、セル端領域にエミッタ領域が設けられない点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0092】
図11は、第3の実施形態の半導体装置の模式平面図である。図12は、第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図12図11のCC’断面図である。
【0093】
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート型のIGBT300である。
【0094】
第3の実施形態のIGBT300は、セル領域101、セル端領域102、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、第2のゲート電極パッド112を備える。IGBT300は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0095】
半導体層10の中には、メイントレンチ20(第1のトレンチ)、コントロールトレンチ122(第2のトレンチ)、メインゲート電極24(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極126(第2のゲート電極)、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、n型エミッタ領域136、p型領域138((第一導電型領域))、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42が設けられる。
【0096】
第1のゲート電極パッド111は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極パッド111は、セル領域101のメインゲート電極24に電気的に接続さる。第1のゲート電極パッド111には、第1のゲート電圧が印加される。
【0097】
第2のゲート電極パッド112は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第2のゲート電極パッド112は、セル端領域102のコントロールゲート電極126に電気的に接続さる。第2のゲート電極パッド112には、第2のゲート電圧が印加される。
【0098】
セル領域101は、エミッタ電極12、コレクタ電極14、メイントレンチ20、メインゲート電極24、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、n型エミッタ領域136、ゲート絶縁膜42を有する。セル領域101の構成は、第1の実施形態のIGBT100と同様である。
【0099】
セル端領域102は、エミッタ電極12、コレクタ電極14、コントロールトレンチ122、コントロールゲート電極126、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、ゲート絶縁膜42、p型領域138を有する。セル端領域102には、n型エミッタ領域が存在しない。
【0100】
終端領域103は、コレクタ電極14、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ガードリング領域40を有する。
【0101】
n型エミッタ領域136は、n型の半導体領域である。n型エミッタ領域136は、セル領域101に設けられる。n型エミッタ領域136は、第1の面P1とp型ベース領域34との間に設けられる。n型エミッタ領域136のn型不純物濃度は、n型ドリフト領域32のn型不純物濃度より高い。
【0102】
n型エミッタ領域136は、エミッタ電極12に電気的に接続される。n型エミッタ領域136は、エミッタ電極12に接する。n型エミッタ領域136は、IGBT300のオン状態の際に電子の供給源となる。
【0103】
メイントレンチ20は、セル領域101に設けられる。メイントレンチ20は、例えば、第1の面P1に略平行な第1の方向に伸長する。
【0104】
メインゲート電極24は、メイントレンチ20の中に設けられる。メインゲート電極24は、図示しない配線層を用いて、第1のゲート電極パッド111に電気的に接続される。
【0105】
p型領域138は、p型の半導体領域である。p型領域138は、セル端領域102に設けられる。p型領域138は、第1の面P1とn型ドリフト領域32との間に設けられる。p型領域138は、例えば、セル領域101を囲んで設けられる。p型領域138は、p型ベース領域34に接する。p型領域138は、例えば、エミッタ電極12に接する。
【0106】
p型領域138の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図12中のd2)は、例えば、p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図12中のd1)よりも深い。p型領域138の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さd1は、例えば、6μm以上12μm以下である。
【0107】
コントロールトレンチ122は、セル端領域102に設けられる。コントロールトレンチ22は、例えば、第1の面P1に略平行な第1の方向に伸長する。
【0108】
コントロールトレンチ122は、p型領域138内に設けられる。コントロールトレンチ22の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図12中のd3)は、p型領域138の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さd2よりも浅い。コントロールトレンチ22の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さd3は、例えば、4μm以上6μm以下である。
【0109】
隣りあう2個のコントロールトレンチ122の間隔(図12中のs2)は、隣り合う2個のメイントレンチ20の間隔(図12中のs1)より大きくても小さくても良い。あるいは、等しくても良い。
【0110】
コントロールゲート電極126は、コントロールトレンチ122の中に設けられる。コントロールゲート電極126は、図示しない配線層を用いて、第2のゲート電極パッド112に電気的に接続される。
【0111】
コントロールゲート電極126とp型領域138の間には、ゲート絶縁膜42が設けられる。
【0112】
第1の実施形態のIGBT100と異なり、セル端領域102には、トランジスタは形成されない。
【0113】
次に、IGBT300の動作について説明する。
【0114】
IGBT300のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0115】
第1のゲート電極パッド111、及び、第2のゲート電極パッド112には、ターンオフ電圧が印加されている。メインゲート電極24、及び、コントロールゲート電極126にもターンオフ電圧が印加されている。ターンオフ電圧はセル領域101のトランジスタがオン状態とならない閾値以下の電圧であり、例えば、0Vである。
【0116】
IGBT300をターンオン動作させて、オン状態にする際に、第1のゲート電極パッド111にターンオン電圧を印加する。メインゲート電極24にもターンオン電圧が印加される。
【0117】
ターンオン電圧とは、セル領域101のトランジスタの閾値電圧を超える電圧である。ターンオン電圧は、例えば、15Vである。セル領域101のトランジスタがオン状態になる。なお、セル端領域102には、トランジスタが形成されていないため、トランジスタ動作は生じない。
【0118】
IGBT300をターンオフ動作させて、オフ状態にする際に、最初に第2のゲート電極パッド112に負電位を印加する。コントロールゲート電極126にも負電位が印加される。セル端領域102のコントロールトレンチ122の周囲のp型領域138に、p型蓄積層が形成される。
【0119】
次に、第1のゲート電極パッド111に、ターンオフ電圧を印加する。メインゲート電極24にもターンオフ電圧が印加される。セル領域101のトランジスタがオフ状態になりし、IGBT300がオフ状態になる。
【0120】
第2のゲート電極パッド112に負電位を印加するのと、第1のゲート電極パッド111にターンオフ電圧を印加するのは同時でもよい。第1のゲート電極パッド111にターンオフ電圧を印加したあとに、第2のゲート電極パッド112に負電位を印加してもよい。第2のゲート電極パッド112に負電位を印加したあとに、第1のゲート電極パッド111にターンオフ電圧を印加してもよい。
【0121】
次に、第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0122】
図13は、第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図13は、第3の実施形態のIGBT300のオン状態のキャリアの蓄積状態を示す図である。
【0123】
図13に示すように、終端領域103の一部にもキャリアが広がり、終端領域103の一部にもキャリアが多量に蓄積されている。
【0124】
図14は、第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図14は、第3の実施形態のIGBT300において、セル端領域102のコントロールゲート電極126に負電圧を印加し、p型領域138にp型蓄積層を形成した状態でのキャリアの蓄積状態を示す。
【0125】
p型領域138にp型蓄積層が形成されることで、セル端領域102からのキャリアの排出が促進される。したがって、図14に示すように、終端領域103及びセル端領域102のキャリアの蓄積量が、セル領域101の蓄積量よりも少なくなる。
【0126】
図15は、第3の実施形態の半導体装置の作用及び効果の説明図である。図15は、第3の実施形態のIGBT300のターンオフ動作時の電流の状態を示す図である。矢印が電流の流れを示す。矢印の太さが電流密度を示す。
【0127】
IGBT300では、コントロールゲート電極126に負電位を印加し、セル端領域102のp型領域138にp型蓄積層を形成する。セル領域101のメインゲート電極24にターンオフ電圧が印加され、セル領域101のトランジスタがオフ状態になる。
【0128】
セル端領域102はp型領域138にp型蓄積層を形成しているためキャリアの排出が効果的に行われるためセル端領域102あるいはセル領域101の端部のキャリアの集中は生じない。したがって、電流密度が高くなることがない。よって、IGBT300の破壊が抑制される。また、キャリアの排出に要する時間も短くなり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加が抑制される。
【0129】
p型領域138にp型蓄積層を数多く形成するためには、隣りあう2個のコントロールトレンチ122の間隔s2が、隣り合う2個のメイントレンチ20の間隔s1よりも狭いことが好ましい。
【0130】
以上、第3の実施形態によれば、IGBT300の電流集中による破壊を抑制することが可能となる。また、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加を抑制することが可能となる。
【0131】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、隣りあう2個の第2のトレンチの間にn型領域が設けられた点で、第3の実施形態と異なる。以下、第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0132】
図16は、第4の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図16は、図11のCC’断面図に相当する断面図である。
【0133】
第4の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチ型のIGBT400である。
【0134】
第4の実施形態のIGBT400は、セル領域101、セル端領域102、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、第2のゲート電極パッド112を備える。IGBT400は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0135】
半導体層10の中には、メイントレンチ20(第1のトレンチ)、コントロールトレンチ122(第2のトレンチ)、メインゲート電極24(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極126(第2のゲート電極)、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、n型エミッタ領域136、p型領域138、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42、n型領域50(第二導電型領域)が設けられる。
【0136】
n型領域50は、セル端領域102に設けられる。n型領域50は、n型の半導体領域である。n型領域50は、2個のコントロールトレンチ122の間に設けられる。n型領域50は、上下をp型領域138に挟まれる。
【0137】
n型領域50をもうけることより、疑似的に、コントロールゲート電極126をゲート電極とするpチャネル型MOSFET(Metal Oxide Field Effect Transistor)がセル端領域102に形成される。n型領域50は、pチャネル型MOSFETのチャネル領域として機能する。
【0138】
次に、IGBT400の動作について説明する。
【0139】
IGBT400のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0140】
第1のゲート電極パッド111には、ターンオフ電圧が印加されている。メインゲート電極24にもターンオフ電圧が印加されている。
【0141】
IGBT400をターンオン動作させて、オン状態にする際に、第1のゲート電極パッド111にターンオン電圧を印加する。メインゲート電極24にもターンオン電圧が印加される。コントロールゲート電極126には0Vもしくはメインゲート電極24と同じ電圧を印加する。
【0142】
ターンオン電圧は、セル領域101のトランジスタの閾値電圧を超える電圧である。ターンオン電圧は、例えば、15Vである。セル領域101のトランジスタがオン状態になる。なお、セル端領域102に形成されているpチャネル型MOSFETは、オフ状態である。このため、セル端領域102でのキャリアの排出は抑制される。
【0143】
IGBT400をターンオフ動作させて、オフ状態にする際に、第2のゲート電極パッド112に負電位を印加する。コントロールゲート電極126には負電位の電圧が印加される。このため、セル端領域102のコントロールトレンチ122の周囲のp型領域138にp型蓄積層が形成される。また、セル端領域102に形成されているpチャネル型MOSFETはオン状態となる。
【0144】
第1のゲート電極パッド111に、ターンオフ電圧を印加する。メインゲート電極24にもターンオフ電圧が印加される。セル領域101のトランジスタがオフ状態になり、IGBT400がオフ状態になる。
【0145】
IGBT400が、オン状態の際には、第3の実施形態と同様、終端領域103の一部にもキャリアが広がり、終端領域103の一部にもキャリアが多量に蓄積されている。セル端領域102に形成されているpチャネル型MOSFETは、オフ状態にある。このため、セル端領域102でのキャリアの排出は抑制される。したがって、第3の実施形態と比較して、オン抵抗は低減される。
【0146】
IGBT400を、オフ状態にする際に、セル端領域102のコントロールトレンチ122に負電圧を印加すると、p型領域138にp型蓄積層が形成される。また、セル端領域102に形成されているpチャネル型MOSFETもオン状態になる。
【0147】
pチャネル型MOSFETがオン状態になり、p型領域138にp型蓄積層が形成されることで、セル端領域102からのキャリアの排出が行われる。したがって、終端領域103及びセル端領域102のキャリアの蓄積量が、セル領域101の蓄積量よりも少なくなる。
【0148】
セル領域101のメインゲート電極24にターンオフ電圧が印加され、セル領域101のトランジスタがオフ状態になる。終端領域103及びセル端領域102の下でのキャリアの蓄積量が、既に少なくなっているため、セル端領域102あるいはセル領域101の端部のキャリアの集中は生じない。したがって、電流密度が高くなることがない。よって、IGBT400の破壊が抑制される。また、キャリアの排出に要する時間も短くなり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加が抑制される。
【0149】
以上、第4の実施形態によれば、IGBT400の電流集中による破壊を抑制することが可能となる。また、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加を抑制することが可能となる。また、第3の実施形態と比較してオン抵抗が低減する。 なお、第1のゲート電極パッド111にターンオフ電圧を印加するのと、第2のゲート電極パッド112に負電位の電圧を印加するのとは、同時でもよい。
【0150】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、p型領域の第1の面から第2の面に向かう方向の深さが、第2のトレンチの方向の深さよりも浅く、p型領域の第1の面から第2の面に向かう方向の深さが、p型ベース領域の第1の面から第2の面に向かう方向の深さと略同一である点で、第3の実施形態と異なる。以下、第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0151】
図17は、第5の実施形態の半導体装置の模式断面図である。図17は、図11のCC’断面図に相当する断面図である。
【0152】
第5の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチ型のIGBT500である。
【0153】
第5の実施形態のIGBT500は、セル領域101、セル端領域102、終端領域103、第1のゲート電極パッド111、第2のゲート電極パッド112を備える。IGBT500は、半導体層10、エミッタ電極12、コレクタ電極14を備える。
【0154】
半導体層10の中には、メイントレンチ20(第1のトレンチ)、コントロールトレンチ122(第2のトレンチ)、メインゲート電極24(第1のゲート電極)、コントロールゲート電極126(第2のゲート電極)、p型コレクタ領域28、n型バッファ領域30、n型ドリフト領域32、p型ベース領域34、n型エミッタ領域136、p型領域138、p型ガードリング領域40、ゲート絶縁膜42が設けられる。
【0155】
p型領域138の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図17中のd2)が、コントロールトレンチ122の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図17中のd3)よりも浅い。コントロールトレンチ122は、p型領域138を突き抜け、n型ドリフト領域32に達している。
【0156】
また、p型領域138の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さd2は、p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さ(図17中のd1)と略同一である。
【0157】
また、p型ガードリング領域40の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さも、p型ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さd1と略同一である。
【0158】
第5の実施形態のIGBT500では、コントロールトレンチ122は、p型領域138を突き抜けている。このため、コントロールトレンチ122の周囲のp型領域138にp型蓄積層が形成された際の、セル端領域102からのキャリアの排出が促進される。したがって、IGBT500の破壊が更に抑制される。また、キャリアの排出に要する時間も更に短くなり、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加が抑制される。
【0159】
また、IGBT500では、p型領域138やp型ガードリング領域40の深さが第3の実施形態のIGBT300よりも浅い。したがって、例えば、p型不純物拡散のための長時間の熱工程が不要となる。したがって、低コストで製造することが可能となる。また、例えば、低温プロセスで製造されるロジックデバイスやメモリデバイスとの同一チップへの混載が容易となる。
【0160】
以上、第5の実施形態によれば、IGBT500の電流集中による破壊を更に抑制することが可能となる。また、ターンオフ動作の際のスイッチング損失の増加を更に抑制することが可能となる。また、低コストで製造が可能となる。また、ロジックデバイスやメモリデバイスとの同一チップへの混載が容易となる。
【0161】
第1ないし第5の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素等、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0162】
第1ないし第5の実施形態においては、セル端領域のコントロールトレンチの数が2個から4個の場合を例に説明したが、コントロールトレンチの数は、例えば、5個以上であっても構わない。
【0163】
第1ないし第5の実施形態においては、メイントレンチやコントロールトレンチが、ストライプ形状を有する場合を、例に説明したが、メイントレンチやコントロールトレンチの形状は特に限定されるものではなく、例えば、メッシュ形状等、その他の形状であっても構わない。
【0164】
第1ないし第5の実施形態においては、終端領域として、p型ガードリング領域を有する構造を例に説明したが、終端領域の構造は、その他の構造であっても構わない。例えば、フィールドプレートを有する構造であっても構わない。
【0165】
第1ないし第5の実施形態においては、第一導電型がp型、第二導電型がn型である場合を例に説明したが、第一導電型をn型、第二導電型をp型とすることも可能である。
【0166】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
10 半導体層
12 エミッタ電極
14 コレクタ電極
20 メイントレンチ(第1のトレンチ)
22 コントロールトレンチ(第2のトレンチ)
23 メイントレンチ(第3のトレンチ)
24 メインゲート電極(第1のゲート電極)
25 メインゲート電極(第3のゲート電極)
26 コントロールゲート電極(第2のゲート電極)
28 p型コレクタ領域
32 n型ドリフト領域
34 p型ベース領域
36 第1のn型エミッタ領域
37 第2のn型エミッタ領域
50 n型領域
100 IGBT(半導体装置)
101 セル領域
102 セル端領域
111 第1のゲート電極パッド
112 第2のゲート電極パッド
122 コントロールトレンチ(第2のトレンチ)
126 コントロールゲート電極(第2のゲート電極)
136 n型エミッタ領域
138 p型領域
200 IGBT(半導体装置)
300 IGBT(半導体装置)
400 IGBT(半導体装置)
500 IGBT(半導体装置)
P1 第1の面
P2 第2の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17