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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-170295(P2019-170295A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】辛味抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190913BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20190913BHJP
   A23L 27/23 20160101ALI20190913BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/10 G
   A23L27/10 C
   A23L27/23 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-63675(P2018-63675)
(22)【出願日】2018年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太幡 展司
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB06
4B047LB07
4B047LG21
4B047LG58
4B047LG59
4B047LG64
4B047LP05
4B047LP16
4B047LP18
4B047LP19
(57)【要約】
【課題】辛味抑制剤を提供すること。
【解決手段】(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品及び(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品を有効成分とする辛味抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品及び(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品を有効成分とする辛味抑制剤。
【請求項2】
さらに(C)ポリフェノールを有効成分とする請求項1に記載の辛味抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、辛味抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コショウやトウガラシ等の香辛料は独特な辛味を有しており、食品に辛味を付与するために利用されている。一方、香辛料は辛味付与の目的以外にも使用されており、例えば、畜肉、魚肉等の臭みを消すといったマスキング目的での使用や、抗菌、防腐又は防虫といった保存性向上目的での使用等が挙げられる。これらマスキング目的や保存性向上目的達成のために香辛料を大量に使用した場合、本来予定していない辛味が付与されてしまい、当該食品の風味を阻害してしまうことがある。そこで、辛味付与以外の目的のために香辛料を使用する場合に、当該目的を達成しつつも辛味を抑制できる技術の開発が試みられている。
【0003】
香辛料の辛味を抑制する技術としては、酸性リン脂質もしくはそのリゾ体を有効成分とする辛味抑制剤(特許文献1)、モノ又はジグリセリドとポリカルボン酸とのエステルを含有することを特徴とする辛味抑制剤(特許文献2)、ジグリセリドを有効成分とする辛味抑制剤(特許文献3)、酵母を有効成分として含んでなる、辛味抑制剤(特許文献4)等が開示されている。
しかしこれらの技術は、一長一短があり、必ずしも満足できるものではなかった。そこで、香辛料の辛味を抑制できる優れた辛味抑制剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−173083号公報
【特許文献2】特開平8−298957号公報
【特許文献3】特開平11−299448号公報
【特許文献4】特開2014−14279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、辛味抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、焼酎粕の加工品と、還元糖の加工品を併用することにより、香辛料の辛味を抑制できることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品及び(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品を有効成分とする辛味抑制剤、
(2)さらに(C)ポリフェノールを有効成分とする上記(1)に記載の辛味抑制剤、
から成っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の辛味抑制剤は、香辛料等及び香辛料等を含有する食品の辛味を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の辛味抑制剤に用いられる(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品(以下「(A)焼酎粕加工品」という)は、焼酎粕にグルカナーゼを作用させ、当該焼酎粕を加水分解(以下「グルカナーゼ処理」ともいう)し、当該加水分解物を加熱することにより得られる。
【0010】
グルカナーゼ処理に用いられるグルカナーゼとは、グルカンを分解する酵素である。グルカンとは、D−グルコースがグルコシド結合で繋がった多糖である。グルカナーゼの起源生物に特に制限はないが、例えば、微生物、植物等が挙げられる。微生物としては例えば、トリコデルマ・ロンギブラキアタム、アルペルギルス・ニガー、バチルス・ズブチリス等が挙げられる。
【0011】
グルカナーゼ処理の対象となる焼酎粕は、焼酎の製造過程で生じる蒸留残渣であれば良く、焼酎の原料や製造条件に特に制限はない。焼酎の原料としては、例えば、甘藷、米、麦、黒糖等が挙げられ、好ましくは米である。
【0012】
グルカナーゼ処理の方法としては、例えば、焼酎粕にグルカナーゼを加えて、酵素反応を施すことにより実施できる。酵素反応の条件は、その酵素の至適温度、至適pH、至適使用量に従うことが反応時間の短縮や酵素の安定性上好ましい。例えば、温度条件が通常35〜65℃、好ましくは45〜55℃、pH条件が通常pH3.0〜6.0、好ましくはpH3.5〜5.0、反応時間が通常1〜18時間、好ましくは3〜12時間、焼酎粕の固形分100質量部に対し、グルカナーゼの使用量が通常0.1〜2.0質量部、好ましくは0.5〜1.5質量部となる範囲内で行うことができる。なお、酵素反応の条件において、pHはガラス電極法pHメーターで測定した数値を採用することができ、焼酎粕の固形分は糖度計で測定した数値を採用することができる。
【0013】
また、グルカナーゼ処理において、pHの調整のため、食酢、果汁、酢酸、リン酸、乳酸、クエン酸及びそれらの塩、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のpH調整剤を使用しても良い。酵素反応中は、反応効率を高めるため、必要に応じ、撹拌又は振盪処理を行うことができる。
【0014】
このようにして得られるグルカナーゼ処理した焼酎粕(以下「グルカナーゼ処理焼酎粕」という)は、加熱処理される。
【0015】
上記加熱処理は、温度条件が通常80〜140℃、好ましくは100〜130℃、加熱時間が通常5〜320分間、好ましくは10〜80分間となる範囲内で行うことができる。
【0016】
このようにして得られる(A)焼酎粕加工品は、水溶液の形態のまま辛味改善剤に用いることもできるが、自体公知の方法により乾燥し、粉末状としても良い。乾燥方法としては、例えば真空凍結乾燥、凍結乾燥、通風乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。
【0017】
なお、乾燥の際、必要に応じデキストリン、乳糖等の賦形剤を用いても良い。また、乾燥前に、水溶液の形態の(A)焼酎粕加工品を濾過し、不溶物を除去することが好ましい。
【0018】
本発明の辛味抑制剤100質量%中の(A)焼酎粕加工品(固形分換算)の配合量としては、通常10〜85質量%、好ましくは15〜35質量%である。なお、該「固形分」は、デキストリン等の賦形剤の固形分は除外するものとする。
【0019】
本発明の辛味抑制剤に用いられる(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品(以下「還元糖加工品」という)は、還元糖を加熱することにより得られる。
【0020】
上記還元糖とは、開環して鎖状構造となった際に、アルデヒド基を有するアルドース又はケトン基を有するケトースを構成成分とし、還元性を示す糖をいう。還元糖としては、例えば、ブドウ糖、フラクトース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、2−デオキシリボース等の単糖類、マルトース、ラクトース等の二単糖類、マルトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等のオリゴ糖類等が挙げられ、好ましくはフラクトース、グルコオリゴ糖である。これら還元糖は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0021】
上記加熱処理は、温度条件が通常80〜150℃、好ましくは110〜140℃、加熱時間が通常2〜320分間、好ましくは5〜40分間となる範囲内で行うことができる。なお、還元糖が粉末状である場合は、固形分が10〜30質量%となるように水で希釈した上で、加熱することが好ましい。
【0022】
このようにして得られる(B)還元糖加工品は、水溶液の形態のまま辛味改善剤に用いることもできるが、自体公知の方法により乾燥し、粉末状としても良い。乾燥方法としては、例えば真空凍結乾燥、凍結乾燥、通風乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。なお、乾燥の際、必要に応じデキストリン、乳糖等の賦形剤を用いても良い。
【0023】
本発明の辛味抑制剤100質量%中の(B)還元糖加工品(固形分換算)の配合量としては、通常10〜85質%、好ましくは15〜35質量%である。なお、該「固形分」は、デキストリン等の賦形剤の固形分は除外するものとする。
【0024】
本発明の辛味抑制剤中の(A)焼酎粕加工品及び(B)還元糖加工品の配合量(固形分換算)の比率に特に制限はないが、例えば、(A)焼酎粕加工品:(B)還元糖加工品が通常10:90〜90:10(質量比)、好ましくは30:70〜70:30(質量比)である。
【0025】
本発明の辛味抑制剤は、(A)焼酎粕加工品及び(B)還元糖加工品の他に、(C)ポリフェノールを有効成分とすることが好ましい。
【0026】
本発明の辛味抑制剤に用いられる(C)ポリフェノールとは、分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称であり、種類に特に制限はないが、例えばタンニン酸、クロロゲン酸、カテキン、アントシアニジン、ルチン、イソフラボン等が挙げられ、好ましくはタンニン酸、クロロゲン酸である。これらポリフェノールは、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0027】
本発明の辛味抑制剤100質量%中の(C)ポリフェノールの配合量としては、通常0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
【0028】
本発明の辛味抑制剤中の(C)ポリフェノールの配合量の、(A)焼酎粕加工品及び(B)還元糖加工品の合計配合量(固形分換算)に対する比率に特に制限はないが、例えば、(A)焼酎粕加工品及び(B)還元糖加工品:(C)ポリフェノールが通常99.9:0.1〜60:40(質量比)、好ましくは99:1〜90:10(質量比)である。
【0029】
本発明の辛味抑制剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記(A)焼酎粕加工品、
(B)還元糖加工品、(C)ポリフェノール以外の物質、例えば、旨味調味料(L−グルタミン酸ナトリウム等)、酵母エキス、動植物油脂、リン酸塩(リン酸カリウム等)、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム等)等を配合しても良い。
【0030】
本発明の辛味抑制剤の製造方法としては特に制限はなく、例えば、粉末状の(A)焼酎粕加工品及び粉末状の(B)還元糖加工品の2成分、粉末状の(A)焼酎粕加工品、粉末状の(B)還元糖加工品及び粉末状の(C)ポリフェノールの3成分を均一になるように混合することにより得ることができる。混合方法としては特に制限はなく、自体公知の方法を用いることができる。
【0031】
本発明の辛味抑制剤により、香辛料、辛味を有する野菜及びこれらから抽出された辛味成分を含有する抽出物(以下「香辛料等」という)の辛味を抑制することができる。香辛料及び辛味を有する野菜としては、例えばトウガラシ、コショウ、サンショウ、ショウガ、タマネギ、ニンニク、カラシ、ワサビ等が挙げられる。
【0032】
上記辛味成分としては、例えばトウガラシの辛味成分であるカプサイシン、コショウの辛味成分であるピペリン、サンショウの辛味成分であるサンショール、ショウガの辛味成分であるジンゲロン及びショウガオール、タマネギ及びニンニクの辛味成分であるジアリルサルファイド、カラシの辛味成分であるp-ヒドロキシベンジル・イソチオシアネート、ワサビの辛味成分であるアリル・イソチオシアネート等が挙げられる。
【0033】
本発明の辛味抑制剤の使用方法としては、香辛料等に直接添加する方法の他、香辛料等を含有する食品に添加する方法も実施できる。当該食品としては香辛料等を含有する食品であれば特に制限はなく、例えば、漬物、キムチ、煮豆等の農産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、かまぼこ等の水産練製品、水産珍味、水産佃煮等の水産加工品、ハンバーグ、ハム・ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、シュウマイ、餃子、カレー、煮物、揚げ物等の調理食品、おにぎり、ピラフ、チャーハン、混ぜご飯、雑炊、お茶漬け等の米飯調理食品、豆板醤、コチジャン、たれ、鍋の素、ドレッシング等の調味料、トマトソース、ウスターソース等のソース類、卵入りスープ、ワカメ入りスープ、ふかひれ入りスープ、中華風スープ、カレー風味スープ等のスープ類等が挙げられる。
【0034】
これら食品は、本発明の辛味抑制剤を添加すること以外は、通常の食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。
【0035】
本発明の辛味抑制剤の香辛料等又は香辛料等を含有する食品に対する添加量は、添加対象物の形態にもよるので一概には言えないが、例えば香辛料等を含有する食品(喫食時)100質量部に対し、(A)焼酎粕加工品(固形分換算)の添加量が通常0.05〜9質量部、好ましくは0.1〜5質量部、(B)還元糖加工品(固形分換算)の添加量が通常0.05〜9質量部、好ましくは0.1〜5質量部、(C)ポリフェノールの添加量が通常0.002〜0.2質量部、好ましくは0.004〜0.1質量部となるように調整することが好ましい。
【0036】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するものであって、本発明を限定するものではない。
【0037】
<辛味抑制剤の作製>
(1)焼酎粕加工品及び非グルカナーゼ処理焼酎粕加工品の作製
(1−1)焼酎粕加工品の作製
(1−1−1)グルカナーゼ処理工程
1Lステンレス製容器に米焼酎粕(本坊酒造社製)500g(固形分6.8質量%;pH3.79)、グルカナーゼ(商品名:スミチームTG;新日本化学工業社製)0.5gを添加し、スリーワンモーター(型式:FBLh600;HEIDON社製)で撹拌しながら、ウォーターバス(型式:FBW‐240;Fine社製)で45℃に保温し7時間酵素処理を行い、グルカナーゼ処理焼酎粕を得た。
【0038】
(1−1−2)加熱処理工程
(1−1−1)で得たグルカナーゼ処理焼酎粕を、オートクレーブ(型式:LSX‐700;トミー精工社製)を用いて120℃で15分加熱処理を行い、液状の加熱処理物を得た。
【0039】
(1−1−3)濾過工程
(1−1−2)で得た加熱処理物を、濾紙(品番:No.2;ADVANTEC社製)を用いて吸引濾過後、約451gの濾液を得た。
【0040】
(1−1−4)粉末化工程
(1−1−3)で得た濾液に、デキストリン(商品名:サンデック#70;三和澱粉工業社製)22.3gを加え、これを上記スリーワンモーターで撹拌及び溶解し、真空凍結乾燥機(型式:RLE2−103;共和真空技術社製)で乾燥した。最後に、当該乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、フードプロセッサー(型式:MK‐K60P;パナソニック社製)を用いて1分間混合し、粉末状の焼酎粕加工品を得た。
【0041】
その後、上記焼酎粕加工品の作製工程における加熱処理工程、濾過工程及び粉末化工程と同様の処理をさらに5回行い、粉末状の焼酎粕加工品を合計約318g(デキストリンを除いた場合、約192g)得た。
【0042】
(1−2)非グルカナーゼ処理焼酎粕加工品の作製
上記(1−1−1)グルカナーゼ処理工程のグルカナーゼ0.5gの代わりにキチナーゼ(商品名:スミチームNAH;新日本化学工業社製)0.5gを用いたこと以外は、焼酎粕加工品の作製と同様に処理し、粉末状の非グルカナーゼ処理焼酎粕加工品約53gを得た。
【0043】
(2)還元糖加工品及び非還元糖加工品の作製
(2−1)還元糖加工品1の作製
(2−1―1)加熱処理工程
500mLステンレス製容器にフラクトース(商品名:純果糖S;加藤化学社製)40g、水160gを加え、スリーワンモーター(型式:FBLh600;HEIDON社製)で撹拌及び溶解した。次に、オートクレーブ(型式:LSX‐700;トミー精工社製)を用いて120℃で20分加熱し、液状の加熱処理物約193gを得た。
【0044】
(2−1−2)粉末化工程
上記(2−1−1)で得た加熱処理物に、デキストリン(商品名:サンデック#70;三和澱粉工業社製)60.3gを加え、これを上記スリーワンモーターで撹拌及び溶解し、真空凍結乾燥機(型式:RLE2‐103;共和真空技術社製)で乾燥した。最後に、当該乾燥物を乳鉢で軽く粉砕し、フードプロセッサー(型式:MK‐K60P;パナソニック社製)を用いて1分間混合し、粉末状の還元糖加工品1を得た。
【0045】
その後、上記還元糖加工品1の作製工程における加熱処理工程及び粉末化工程と同様の処理をさらに2回行い、粉末状の還元糖加工品1を合計約300g(デキストリンを除いた場合、約120g)得た。
【0046】
(2−2)還元糖加工品2の作製
上記(2−1−1)加熱処理工程のフラクトース40gの代わりにグルコオリゴ糖(商品名:ゲントース45;日本食品化工社製)40gを用いたこと以外は、還元糖加工品1の作製と同様に処理し、粉末状の還元糖加工品2を得た。
【0047】
その後、上記還元糖加工品2の作製工程における加熱処理工程及び粉末化工程と同様の処理をさらに1回行い、粉末状の還元糖加工品2を合計約140g(デキストリンを除いた場合、約56g)得た。
【0048】
(2−3)非還元糖加工品の作製
上記(2−1−1)加熱処理工程のフラクトース40gの代わりにトレハロース(商品名:トレハ;非還元糖;林原社製)40gを用いたこと以外は、還元糖加工品1の作製と同様に処理し、粉末状の非還元糖加工品約92g(デキストリンを除いた場合約36.8g)を得た。
【0049】
(3)辛味抑制剤の作製
(3−1)原材料
1)焼酎粕加工品及び非グルカナーゼ処理焼酎粕加工品
2)還元糖加工品1及び2
3)非還元糖加工品
4)ポリフェノール1(商品名:カフェノールP100;クロロゲン酸;富士化学工業社製)
5)ポリフェノール2(商品名:タンニン酸AL;タンニン酸;富士化学工業社製)
【0050】
(3−2)配合
上記原材料を用いて作製した辛味抑制剤1〜13の配合量を表1〜表4に示す。なお、辛味抑制剤1〜7は本発明の実施例であり、辛味抑制剤8〜13はそれに対する比較例である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
(3−3)作製方法
表1〜4に示した原材料の等倍量を500mL容のポリエチレン製の袋に入れ、その袋の口を縛ったものを手で持ち、1分間均一になるように混合し、粉末状の辛味抑制剤1〜7及び10〜13を作製した。なお、辛味抑制剤8及び9は表1に示した原材料の等倍量をそのまま粉末状の辛味抑制剤として用いた。
【0056】
<辛味抑制剤の評価>
(1)黒胡椒の辛味抑制効果についての官能評価試験
500mLビーカーに、黒胡椒(商品名:ブラックペッパー3280HJ;ケー・アイ・エス社製)1.2g、水400gを加え、マグネットスターラー(型式:MS‐3;SANPLATEC社製)を用いて30分間撹拌後、濾紙(品番:No2;125mm;ADVANTEC社製)を用いて吸引濾過して固形分を取り除き黒胡椒抽出液を得た。得られた黒胡椒抽出液20gに対し、表6に示す添加量に基づいて辛味抑制剤1〜13のうちいずれかを添加して溶解し、試験区1〜13とした。これらの黒胡椒抽出液について辛味抑制効果を評価するため、何ら添加していない黒胡椒抽出液を辛味の基準(対照)とし、官能試験を行った。試験では、表5に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均値を求め、下記基準に従って記号化した。結果を表7に示す。

◎◎: 平均点4.0以上
◎: 平均点3.5以上、4.0未満
○: 平均点2.5以上、3.5未満
△: 平均点1.5以上、2.5未満
×: 平均点1.5未満
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
結果から明らかなように、辛味抑制剤1〜7を添加した試験区1〜7では、「〇」以上の結果を得たことから本発明の辛味抑制剤は、辛味抑制効果に優れていることが分かった。これに対し、辛味抑制剤8〜13を添加した試験区8〜13では、いずれも「△」の結果であり、辛味抑制効果が十分ではなかった。
【0061】
(2)赤唐辛子の辛味抑制効果についての官能評価試験
500mLビーカーに、赤唐辛子(商品名:レッドペッパー松HJ60M;ケー・アイ・エス社製)0.2g、水400gを加え、マグネットスターラー(型式:MS‐3;SANPLATEC社製)を用いて30分間撹拌後、濾紙(品番:No2;125mm;ADVANTEC社製)を用いて吸引濾過して固形分を取り除き赤唐辛子抽出液を得た。得られた赤唐辛子抽出液20gに対し、辛味抑制剤5を0.86g添加して溶解し、試験区14とした。この赤唐辛子抽出液について辛味の抑制効果を評価するため、何ら添加していない赤唐辛子抽出液を辛味の基準(対照)とし、官能試験を行った。試験では、表8に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均値を求め、下記基準に従って記号化した。結果を表9に示す。

◎◎: 平均点4.0以上
◎: 平均点3.5以上、4.0未満
○: 平均点2.5以上、3.5未満
△: 平均点1.5以上、2.5未満
×: 平均点1.5未満
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
結果から明らかなように、辛味抑制剤5を添加した試験区14では、「◎◎」の結果を得たことから本発明の辛味抑制剤は、辛味抑制効果に優れていることが分かった。
【0065】
(3)鍋の素スープの辛味抑制効果についての官能評価試験
鍋の素(商品名:鍋キューブピリ辛キムチ;味の素社製)固形キューブ1個(9.5g)を水200gで溶解し、得られた鍋の素スープ20gに対し、辛味抑制剤5を0.86g添加し試験区15とした。この鍋の素スープについて辛味の抑制効果を評価するため、何ら添加していない鍋の素スープを辛味の基準(対照)とし、官能試験を行った。試験では、表10に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均値を求め、下記基準に従って記号化した。結果を表11に示す。

◎◎: 平均点4.0以上
◎: 平均点3.5以上、4.0未満
○: 平均点2.5以上、3.5未満
△: 平均点1.5以上、2.5未満
×: 平均点1.5未満
【0066】
【表10】
【0067】
【表11】
【0068】
結果から明らかなように、辛味抑制剤5を添加した試験区15では、「◎◎」の結果を得たことから本発明の辛味抑制剤は、辛味抑制効果に優れていることが分かった。
【0069】
[プロダクト・バイ・プロセスクレームについての不可能・非実際的事情の説明]
本願請求項1及び2は、製造方法によって物を特定するいわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレームであるが、これら請求項に係る発明は、物の構造又は特性を特定することについて下記の通り不可能・非実際的事情が存在する。
【0070】
(1)「(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品」の成分について
グルカナーゼ処理した焼酎粕には、ペプチド、アミノ酸、多糖類等の、原料及び微生物に由来する有効成分が多く含まれている。さらに、当該焼酎粕を加熱反応(メイラード反応)させることでストレッカー分解を始めとする多種多様な反応により多数の物質が生成される。従って、「(A)グルカナーゼ処理した焼酎粕を加熱して得られる焼酎粕加工品」は極めて多数の成分が含まれる組成物である。
【0071】
(2)「(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品」の成分について
還元糖を加熱すると、アノマー化及び異性化が起こると同時に、イソマルト―ス、ゲンチオビオース等の1,6‐グルコシド結合を持つ二糖類や、1,6‐アンヒドロ糖、オリゴ糖等が生成される。また、脱水縮合反応によって3‐デオキシグルコソン、5‐ヒドロキシメチルフルフラール、2‐ヒドロキシアセチルフラン等が生成される。さらには、コハク酸、酒石酸、ピルビン酸、レブリン酸、フランカルボン酸等の不揮発酸が生成される。従って、「(B)還元糖を加熱して得られる還元糖加工品」は極めて多数の成分が含まれる組成物である。
【0072】
(3)有効成分の特定の可能性について
このように上記(A)及び(B)には、極めて多数の成分が含まれるため、これら成分を分析によって特定することは著しく困難である。また、仮にその特定ができたとしても、本願発明の辛味抑制剤は、(A)及び(B)を併用することにより効果を発揮することが確認されている。このため、本願発明の辛味抑制剤の有効成分は、上記(A)及び(B)に含まれる成分から選ばれる2種以上の成分の組み合わせであることは想定できるものの、この組み合わせの数はまさに天文学的数字である。そうすると、このような組み合わせの各々について成分の抽出を行った上で官能評価試験を行い、有効成分を特定することは、著しく過大な経済的支出や時間を伴うことが容易に想像される。
【0073】
以上(1)〜(3)より、本願請求項1及び2に係る発明は、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又は著しく過大な経済的支出や時間を要するため、およそ実際的でないという事情が存在する。