特開2019-170335(P2019-170335A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-170335(P2019-170335A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20190913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190913BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20190913BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20190913BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20190913BHJP
【FI】
   A23L33/125
   A61P43/00 111
   A61K31/7004
   A61P1/12
   A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-65335(P2018-65335)
(22)【出願日】2018年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】相澤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】上野 友哉
(72)【発明者】
【氏名】森田 達也
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150DC13
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD28
4B018ME11
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA73
4C086ZC02
(57)【要約】
【課題】SCFAによる効果を効率的に発現させることができる腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物を提供し、また、そのような腸内短鎖脂肪酸生成促進作用を有する飲食品、機能性食品、医薬品、及び動物飼料を提供する。
【解決手段】フコースを有効成分として含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物を提供する。本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、腸内のプロピオン酸、及び/又は酢酸の濃度を上昇させることが好ましく、腸内細菌叢を改善するために用いられることが好ましく、飲食品、機能性食品、医薬品、及び動物飼料から選ばれたものであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコースを有効成分として含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物。
【請求項2】
腸内のプロピオン酸及び/又は酢酸の濃度を上昇させる、請求項1に記載の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物。
【請求項3】
腸内細菌叢を改善するために用いられる、請求項1又は2に記載の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物。
【請求項4】
飲食品、機能性食品、医薬品、及び動物飼料から選ばれたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコースを有効成分として含有する腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
短鎖脂肪酸(SCFA)は、腸内細菌が作る有機酸のことで、ヒトの健康維持に欠かせない役割を果たしている。ヒトの場合、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸の3種が代表的なSCFAであり、ヒト大腸で腸内細菌により作られ、大腸の粘膜上皮から吸収される。酪酸は大腸上皮細胞のエネルギー源として、酢酸とプロピオン酸は主に肝臓や筋肉で代謝利用される。
【0003】
SCFAは、腸内のpHを低下させることで病原性微生物が生育しにくい環境となり腸内細菌叢のバランスを整える、更に、腸管上皮のバリア機能を強化し、感染防御の手助けとなる(非特許文献1)、腸管を刺激して腸の蠕動運動を高めて便通を促す(非特許文献2)等の効果が知られている。
【0004】
このようなSCFAの生成を誘導する発明として、下記特許文献1には、腸内から分離される細菌の死菌体を有効成分として含有する腸内酪酸生成促進剤が開示され、これを配合した餌をブタに与えた場合、その盲腸内の酪酸濃度が増加することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fukuda S, Toh H, Hase K, et al: Nature. 2011; 469: 543-7
【非特許文献2】日本家政学会誌 Vol. 44, 4245-254(1993)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−346043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、盲腸内SCFAのうち、酪酸の濃度の増加が確認されているが、酢酸とプロピオン酸についての増加は確認されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、腸内短鎖脂肪酸を効果的に増加させることができる腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物、及び、腸内短鎖脂肪酸生成促進作用を有する飲食品、機能性食品、医薬品、並びに動物飼料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、フコースには、腸内短鎖脂肪酸の生成を促進させる作用効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一つは、フコースを有効成分として含有することを特徴とする腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物を提供するものである。
【0011】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、腸内のプロピオン酸、及び/又は酢酸の濃度を上昇させるものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、腸内細菌叢を改善するために用いられることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、飲食品、機能性食品、医薬品、及び動物飼料から選ばれたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フコースには腸内のSCFAの生成を促進する作用効果があるので、SCFAによる効果を効率的に発現させることができる。具体的には、腸内のpHを低下させ、病原性微生物が生育しにくい環境を作ることで、腸内細菌叢のバランスを整えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、フコース(fucose)を有効成分として含有する。この場合、フコースの含有量は、0.0001〜100質量%が好ましく、0.0005〜70質量%がより好ましく、0.001〜50質量%が更により好ましい。フコースの含有量が0.0001質量%未満では、ヒトや動物に投与した際の腸内短鎖脂肪酸生成促進作用が低減する傾向がある。
【0016】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、フコースを有効成分として含有するものであればよく、本発明の目的を損なわない限り、他の成分を含有することに特に制限はない。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0017】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物を投与する対象はヒトだけでなく、動物も含めることができる。投与量としては、投与形態、適用するヒト又は動物の健康状態や疾患の状態、目的等に応じて適宜設定すればよく、特に制限はないが、典型的に経口投与する場合には、フコース換算で、成人1日当りおよそ0.1〜20,000mgであることが好ましく、0.1〜10,000mgであることがより好ましい。
【0018】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物の投与形態は、特に限定されないが、経口投与組成物であることが好ましい。製品形態は、特に限定されない。経口投与組成物である場合の製品形態の例としては、フコースをそのまま用いてもよく、必要に応じて、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、粉末状(顆粒、細粒)、錠剤(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半液体状、クリーム状、ペースト状等の形態にしてもよい。
【0019】
上記、本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物を摂取することで、腸内の短鎖脂肪酸(SCFA:Short-chain fatty acid)の生成が促進される。
【0020】
短鎖脂肪酸は、具体的には酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、及びコハク酸のことを指す。本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物においては、プロピオン酸、及び/又酢酸の生成が促進されることで、プロピオン酸、及び/又酢酸の濃度を上昇させることが好ましい。
【0021】
腸内のSCFAの生成が促進されることで、腸内のpHが低下し、病原性微生物が生育しにくい環境となるで、腸内細菌叢のバランスが整うという効果を奏する。また、腸管上皮のバリア機能が強化され、感染防御の手助けとなる効果(Fukuda S, Toh H, Hase K, et al: Nature. 2011; 469: 543-7)、腸管を刺激して腸の蠕動運動を高めて便通を促す効果(日本家政学会誌 Vol. 44, 4245-254(1993))、低pH域に適応性の高いBifidobacteriumが増加することで、花粉症等アレルギー症状の緩和や、乳幼児に多いロタウイルスによる感染性腸炎を抑制する効果(澱粉科学 第37巻, 第3号, 123-127(1990))を奏する。
【0022】
さらには、腸内のプロピオン酸の生成が促進されることで、腸管のL細胞からGLP−1やPYYのような腸管ホルモンを分泌され、それらのホルモンが脳に作用して食欲を抑えたり、満腹感を持続させて過食を防ぐという効果(Hua V. Lin, et al. (2012). PLoS One 7 (4))、SCFA受容体GPR41が活性化され、過剰エネルギーを認識することで、エネルギー消費を高めるという効果、脂肪組織に豊富に存在するSCFA受容体GPR43が活性化し、インスリン作用を選択的に抑制することで、脂肪蓄積を抑制する効果(化学と生物 Vol. 53, No. 4, 2015 202-204)、胸腺由来のTreg細胞(tTreg)に作用し,腸管粘膜でのtTregの維持に寄与することで大腸炎を抑制する効果(同)を奏する。
【0023】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、腸内細菌叢を改善するために用いられることが好ましい。より具体的には、例えば、「おなかの調子を整える」、「腸内環境を改善する/整える」、「腸内環境を良好にする/良好に保つ」、「腸の調子を改善する/整える」、「腸内フローラ(腸内細菌叢)の菌のバランスを改善する/整える」、「腸内フローラ(腸内細菌叢)を良好にする/良好に保つ」、等の効果を期待して用いることが出来る。
【0024】
本発明の腸内短鎖脂肪酸生成促進組成物は、例えば飲食品、機能性食品、医薬品、及び動物飼料等の製品自体あるいはその原料として使用することができる。
【0025】
飲食品としては、例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(3)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(7)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(9)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(13)加工卵製品、(14)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。
【0026】
機能性食品としては、例えば、健康食品、健康ドリンク、サプリメント、栄養補助食品、保健機能食品、特定保健用食品、機能性表示許可食品、食品添加用素材等が挙げられる。これらの製品形態は、特に限定されないが、例えば、錠剤、カプセル、顆粒剤、粉末、液体として製品化することができる。
【0027】
動物飼料が対象とする動物としては、イヌ、ネコ、トリ等のペット類や、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜類や、マグロ、ハマチ、ウナギ、タイ、フグ等の養魚類等が挙げられる。この場合には、上記の他の成分の他、例えば、穀粉、糖、塩、油脂、ビタミン、アミノ酸、ポリフェノール類、核酸類、動物蛋白、植物蛋白、肉エキス、魚エキス、酵母エキス、呈味剤、色素、乳酸菌、抗生物質、ホルモン等を添加することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を含む試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0029】
<1.盲腸内容物の解析>
1.被験材料
フコースとして、L−フコース(焼津水産化学工業株式会社製、海藻由来、純度98%以上)を用いた。
【0030】
2.試験飼料
市販の動物用飼料(商品名「AIN−76」、オリエンタル酵母工業株式会社製)を対照群飼料とした(表1)。対照群飼料中のコーンスターチと置き換えでフコースを1質量%添加した飼料をフコース群飼料とした。
【0031】
【表1】
【0032】
3.動物試験
6週齢のWistar系雄ラット(日本SLC)12匹を、室温23±2℃、相対湿度45〜55%で12時間の明暗周期(7:00に点灯)の条件下、ステンレス製ケージ内で個別飼育した。試験に用いたラットは搬入後、対照群飼料で3日間予備飼育をした後、試験に供した。試験開始時に、ラットの体重を基準に2群に振り分け、対照群飼料又はフコース群飼料と水道水を2週間自由摂取させた。投与最終日に解剖を行い、盲腸を摘出した。盲腸は、内容物を採取し有機酸分析、内容物重量測定、及びpH測定に供した。
【0033】
4.盲腸内容物の有機酸分析
盲腸内容物の水溶性画分から有機酸を抽出し,電気伝導度検出HPLCを用いて内部標準法により分析した。
【0034】
5.結果
表2に示すように、盲腸内容物重量は、対照群に比べフコース群で有意に増加し、盲腸内容物pHは、対照群に比べフコース群で有意に低下した。
【0035】
【表2】
【0036】
表3に示すように、酢酸量及びプロピオン酸量は、対照群に比べフコース群で有意に増加した。また、短鎖脂肪酸量及び総有機酸量も、同様に増加した。このことから、フコース群では酢酸及びプロピオン酸が選択的に増加されることがわかった。
【0037】
【表3】
【0038】
<2.腸内細菌叢の解析(16Sメタゲノム解析)>
上記「3.試験動物」で得られたラットの試験飼料投与終了時の糞便から細菌のDNAを抽出した。これを、16S rRNA遺s伝子領域(V3−V4領域)をPCRにて増幅したのち、シーケンスを行った。
【0039】
得られた配列を用いて、16S rRNAデータベースに対する相同性検索及び系統分析解析を実施し、細菌種の同定を実施した。