【解決手段】上部開口が蓋材11で気密に閉じられる内釜2と、この内釜2の外側に設けられるジャケット3と、内釜2内の気体を外部へ吸引排出する第一排気路27と、ジャケット3内へ蒸気を供給する第一給蒸路13とを備える。内釜2からの第一排気路27には、熱交換器29と弁30Aと真空ポンプ31とが順に設けられる。熱交換器29と弁30Aとの間の第一排気路27に、洗浄流体路44が接続される。真空ポンプ31を停止すると共に弁30Aが閉じられた状態で、洗浄流体路44から第一排気路27を介して内釜2内へ洗浄流体を供給して、内釜2内と、内釜2から弁30Aまでの第一排気路27とを洗浄または殺菌する。洗浄流体として、たとえば蒸気が用いられる。
上部開口が蓋材で気密に閉じられる内釜と、この内釜の外側に設けられるジャケットと、前記内釜内の気体を外部へ吸引排出する第一排気路と、前記ジャケット内へ蒸気を供給する第一給蒸路と、制御器とを備え、
前記内釜からの前記第一排気路には、熱交換器と弁と真空ポンプとが順に設けられ、
前記熱交換器と前記弁との間の前記第一排気路に、洗浄流体路が接続され、
前記真空ポンプを停止すると共に前記弁が閉じられた状態で、前記制御器は、前記洗浄流体路から前記第一排気路を介して前記内釜内へ洗浄流体を供給して、前記内釜内と、前記内釜から前記弁までの前記第一排気路とを洗浄または殺菌する
ことを特徴とする蒸気釜。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内釜内の減圧手段を備える蒸気釜では、内釜内から真空引きする排気路や、この排気路に熱交換器を設ける場合にはその熱交換器に、真空引きによって飛散した食品が付着する。また、内釜内に撹拌装置を設ける場合には、その撹拌装置にも食品が付着するし、撹拌軸の軸シール部にも食品が付着するおそれがある。そのため、これらの箇所について洗浄または殺菌が望まれるが、従来、手作業により洗浄しており、非常に手間を要した。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、減圧系統や内釜内などを、容易に確実に洗浄または殺菌できる蒸気釜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上部開口が蓋材で気密に閉じられる内釜と、この内釜の外側に設けられるジャケットと、前記内釜内の気体を外部へ吸引排出する第一排気路と、前記ジャケット内へ蒸気を供給する第一給蒸路と、制御器とを備え、前記内釜からの前記第一排気路には、熱交換器と弁と真空ポンプとが順に設けられ、前記熱交換器と前記弁との間の前記第一排気路に、洗浄流体路が接続され、前記真空ポンプを停止すると共に前記弁が閉じられた状態で、前記制御器は、前記洗浄流体路から前記第一排気路を介して前記内釜内へ洗浄流体を供給して、前記内釜内と、前記内釜から前記弁までの前記第一排気路とを洗浄または殺菌することを特徴とする蒸気釜である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、内釜からの第一排気路には、熱交換器と弁と真空ポンプとが順に設けられる。そして、熱交換器と弁との間の第一排気路に、洗浄流体路が接続される。従って、真空ポンプを停止すると共に弁が閉じられた状態で、洗浄流体路から第一排気路を介して内釜内へ洗浄流体を供給することで、容易に確実に、内釜内と、内釜から弁までの第一排気路とを洗浄または殺菌することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記第一給蒸路に給蒸遮断弁が設けられる一方、前記洗浄流体路に洗浄弁が設けられ、前記内釜からの前記第一排気路には、前記熱交換器よりも上流に、第一真空弁が設けられ、前記給蒸遮断弁よりも下流の前記第一給蒸路と、前記第一真空弁と前記熱交換器との間の前記第一排気路とが、第二真空弁を備える第二排気路で接続され、前記給蒸遮断弁および前記洗浄弁を閉じる一方、前記第二真空弁を開けた状態で、前記真空ポンプにより前記ジャケット内を減圧可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気釜である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、洗浄弁を閉じた状態で、第一真空弁を開けて真空ポンプにより内釜内を減圧可能であると共に、給蒸遮断弁および洗浄弁を閉じた状態で、第二真空弁を開けて真空ポンプによりジャケット内を減圧可能である。これにより、内釜内の減圧手段と、ジャケット内の減圧手段とを共通化することができる。ジャケット内を減圧後にジャケット内への給蒸を制御することで、ジャケット内を大気圧未満の圧力としつつ、100℃未満の蒸気で内釜内の食品を加熱することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記洗浄流体路による洗浄流体は、蒸気とされ、前記内釜内に蒸気を供給して、前記内釜内を設定圧力または設定温度で設定時間保持して、前記内釜内と、前記内釜から前記弁までの前記第一排気路とを洗浄または殺菌することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気釜である。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、洗浄流体路から第一排気路を介して内釜内に蒸気を供給して、内釜内を設定圧力または設定温度で設定時間保持する。これにより、内釜内と、内釜から弁までの第一排気路とを洗浄または殺菌することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記洗浄流体路による洗浄流体は、液体とされ、前記内釜内に設定液位まで液体を貯留した状態で、貯留液の設定温度までの加熱と、前記内釜内の減圧による貯留液の沸騰とを、設定回数繰り返して、前記内釜内を洗浄または殺菌することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気釜である。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、洗浄流体路から第一排気路を介して内釜内に液体を供給することで、内釜から弁までの第一排気路を洗浄または殺菌することができる。また、内釜内に設定液位まで液体を貯留した状態で、貯留液の設定温度までの加熱と、内釜内の減圧による貯留液の沸騰とを、設定回数繰り返すことで、内釜内を洗浄または殺菌することができる。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記内釜内の食品の撹拌装置を備え、前記内釜内から食品を排出後、前記撹拌装置を作動させた状態で、前記内釜内を洗浄または殺菌することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気釜である。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、蒸気ニーダとして構成することで、撹拌装置により内釜内の食品を撹拌しながら加熱することができる。また、内釜内から食品を排出後、撹拌装置を作動させた状態で、内釜内を洗浄または殺菌することで、撹拌装置の洗浄や殺菌も図ることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸気釜によれば、減圧系統や内釜内などを、容易に確実に洗浄または殺菌することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の蒸気釜1を示す概略図である。
【0019】
本実施例の蒸気釜1は、食品が収容される内釜2と、この内釜2の外側に設けられるジャケット3と、このジャケット3内へ蒸気を供給する給蒸手段4と、ジャケット3内へ供給した蒸気の凝縮水(ドレン)を排出するドレン排出手段5と、内釜2内やジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段6と、減圧下の内釜2内へ外気を導入して復圧する復圧手段7と、減圧手段6による減圧系統を介して内釜2内へ洗浄流体を供給する洗浄流体供給手段8と、前記各手段4〜8を制御する制御手段(図示省略)とを備える。なお、一点鎖線の囲いで示すように、本実施例の蒸気釜1は、釜ユニット9と流体ユニット10とに分けられており、釜ユニット9に対し、流体ユニット10により、蒸気を供給したり、真空引きしたりすることができる。
【0020】
内釜2は、上方へ開口した有底の中空容器である。内釜2は、その形状を特に問わないが、たとえば、上方へ開口した有底円筒状とされ、底壁は略半球状に下方へ膨出して形成されている。あるいは、内釜2は、軸線を左右方向へ沿って配置された横向き略円筒状で、その左右両端部が左右方向外側へ円弧状に膨出する端壁にて閉塞されると共に、左右両端部を除いた周側壁の上部に、上方へ開口するホッパーが設けられた構成とされる。いずれにしても、内釜2は、上部開口が蓋材11で開閉可能とされる。蓋材11を閉めた状態では、内釜2内を密閉することができる。
【0021】
内釜2には、所望により、食品の撹拌装置(図示省略)が設けられる。たとえば、内釜2内の左右を架け渡すように撹拌軸が設けられ、その撹拌軸に径方向外側へ延出するアームを介して撹拌羽根が設けられる。駆動装置により、撹拌軸ひいては撹拌羽根を回転させることができる。
【0022】
ジャケット3は、蒸気が供給されることで、内釜2内を加熱する。ジャケット3は、本実施例では、内釜2の上下方向中途部から下方領域に設けられる。具体的には、内釜2は、前記下方領域が底壁も含めて二重壁構造とされ、内外の壁体間の空間がジャケット3とされる。
【0023】
ジャケット3付きの内釜2は、蓋材11を開けた状態で、上部開口を前方へ倒すように、所定角度だけ回転可能とされる。そのために、内釜2は、左右両端部が図示しない部材に回転自在に、浮いた状態で支持される。具体的には、内釜2の左右端壁の中央部には、左右方向外側へ延出して回転支持軸12が設けられており、この回転支持軸12が、図示しない部材に、回転自在に支持される。
図1では、左側の回転支持軸12のみが示される。また、内釜2と回転支持軸12とを離隔して示しているが、実際には両者一体である。撹拌装置の撹拌軸を左右方向へ配置する場合、回転支持軸12は筒状とされ、その中空穴に撹拌軸が通される。そして、一方(図示例で右側)の回転支持軸(図示省略)や撹拌軸に、内釜2や撹拌軸を回転させる駆動装置が接続され、他方(図示例で左側)の回転支持軸12には、後述する第一給蒸路13やドレン排出路19が設けられる。なお、ジャケット3付きの内釜2は、ドレン排出手段5を伴って(つまり両者一体として)、回転可能とされる。
【0024】
給蒸手段4は、ジャケット3内へ蒸気を供給する。具体的には、給蒸手段4は、給蒸口からジャケット3への第一給蒸路13を備える。第一給蒸路13は、給蒸遮断弁14、ナックルジョイント15、回転支持軸12およびジャケット圧制御弁16を介して、ジャケット3に接続される。
【0025】
ドレン排出手段5は、ジャケット3内へ供給した蒸気の凝縮水(ドレン)を排出する。具体的には、ドレン排出手段5は、ドレンを貯留するドレンタンク17と、ジャケット3とドレンタンク17との連通路18と、ドレンタンク17からのドレン排出路19と、ドレンタンク17へのタンク給蒸路20とを備える。
【0026】
ドレンタンク17は、ジャケット3の下部に設けられる。ジャケット3とドレンタンク17とは、連通路18を介して接続され、その連通路18には連通切替弁21が設けられる。連通切替弁21を開けることで、重力により、ジャケット3内からドレンタンク17内へドレンを排出することができる。ドレンタンク17からのドレン排出路19は、図示例ではスチームトラップ22と逆止弁23とが順に設けられ、回転支持軸12を介してドレン排出口へ開口される。ドレンタンク17へのタンク給蒸路20は、ジャケット圧制御弁16の一次側(蒸気流の上流側)の第一給蒸路13と、ドレンタンク17とを接続する。タンク給蒸路20には、タンク給蒸弁24が設けられている。
【0027】
ジャケット3内を大気圧未満として真空蒸気により内釜2内の食品を加熱する場合、スチームトラップ22からのドレン排出を円滑に行えないおそれがある。ところが、本実施例のドレン排出手段5によれば、詳細は後述するが、連通切替弁21を閉じた状態でタンク給蒸弁24を開けることで、大気圧を超える蒸気をドレンタンク17に供給して、スチームトラップ22を介してドレンを円滑に排出することができる。なお、ドレンタンク17の底部には、排水などのために、排出弁25を備えた排出路26を設けておいてもよい。
【0028】
減圧手段6は、内釜2内やジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する。具体的には、内釜2からの第一排気路27には、第一真空弁28、蒸気凝縮用の熱交換器29、ポンプ遮断弁30A、逆止弁30、および水封式の真空ポンプ31が順に設けられる。また、給蒸遮断弁14とナックルジョイント15との間の第一給蒸路13と、第一真空弁28と熱交換器29との間の第一排気路27とが、第二排気路32で接続され、その第二排気路32には第二真空弁33が設けられる。そのため、給蒸遮断弁14を閉めた状態で、第二真空弁33を開ければ、給蒸遮断弁14よりも下流側の第一給蒸路13を介して、ジャケット3内からの減圧が可能となる。つまり、第一給蒸路13の内、第二排気路32との接続部よりもジャケット3側の管路は、状況に応じて、ジャケット3内からの排気路としても機能する。
【0029】
このような構成であるから、減圧手段6は、内釜2から第一真空弁28を介した第一排気路27と、ジャケット3から第二真空弁33を介した第二排気路32とが、合流して共通排気路(第一排気路27,第二排気路32)とされ、その共通排気路(27,32)に、熱交換器29、ポンプ遮断弁30A、逆止弁30および真空ポンプ31が順に設けられた構成ということもできる。
【0030】
熱交換器29は、前記共通排気路(27,32)内の流体とその冷却水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。熱交換器29により、前記共通排気路27,32内の蒸気を、冷却水により冷却し凝縮させることができる。熱交換器29には、熱交給水路34を介して冷却水が供給され、熱交排水路35を介して冷却水が排出される。熱交給水路34には、熱交給水弁36が設けられている。なお、前記共通排気路(27,32)には、熱交換器29の出口側に、排気側熱交排水路42Aが分岐して設けられ、この排気側熱交排水路42Aには排気側熱交排水弁42Bが設けられている。図示例では、熱交換器29は、シェルアンドチューブ式の熱交換器とされ、シェル側に冷却水が通され、チューブ側が共通排気路(27,32)に接続されている。
【0031】
真空ポンプ31は、本実施例では水封式であり、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されつつ運転される。そのために、真空ポンプ31には、封水給水路37を介して水が供給される。封水給水路37には封水給水弁38が設けられており、封水給水弁38を開けることで、真空ポンプ31に封水を供給することができる。封水給水弁38の開閉は、真空ポンプ31の発停と連動して切り替えられる。
【0032】
ポンプ遮断弁30Aは、後述する洗浄殺菌運転中の所定の場合に閉鎖する以外は、開けた状態に維持すれば足りるが、場合により、真空ポンプ31の発停と連動して開閉させてもよい。
【0033】
真空ポンプ31の吸気側に設けられた逆止弁30は、真空ポンプ31の作動中には開放し、真空ポンプ31の停止中には閉鎖する。この開閉動作は、機械的に自力でなされる。
【0034】
復圧手段7は、減圧された内釜2内へ外気を導入して、内釜2内を復圧する。具体的には、内釜2内への給気路39に、エアフィルタ40および給気弁41が順に設けられて構成される。内釜2内が減圧された状態で、給気弁41を開けると、外気がエアフィルタ40を介して内釜2内へ導入され、内釜2内を復圧することができる。
【0035】
第一排気路27と給気路39とは、本実施例では、蓋材11に接続されている。内釜2に対し蓋材11を開閉可能とする関係上、第一排気路27および給気路39の一部に、たとえばフレキシブル配管が利用されている。また、蓋材11には、正圧解除弁43が設けられており、内釜2内が大気圧を超える場合には自力で機械的に開いて、内釜2内の加圧が防止される。
【0036】
洗浄流体供給手段8は、熱交換器29とポンプ遮断弁30Aとの間の第一排気路27に、洗浄流体を供給する。本実施例では、洗浄流体として、蒸気が用いられる。具体的には、給蒸遮断弁14よりも上流側の第一給蒸路13には、洗浄流体路としての第二給蒸路44が分岐して設けられ、この第二給蒸路44は、熱交換器29とポンプ遮断弁30Aとの間の第一排気路27に接続されている。第二給蒸路44には、洗浄弁45が設けられている。
【0037】
蒸気釜1には、内釜2内の圧力を検出する第一圧力センサ46、ジャケット3内の圧力を検出する第二圧力センサ47が設けられる。その他、所望により、内釜2内の温度を検出する温度センサ(図示省略)や、ドレン排出路19内の温度を検出するドレンセンサ48なども設けられる。なお、第一圧力センサ46は、内釜2または蓋材11に設けられる以外に、第一真空弁28と内釜2との間の第一排気路27に設けられてもよい。また、第二圧力センサ47は、ジャケット3に設けられる以外に、ジャケット圧制御弁16とジャケット3との間の第一給蒸路13に設けられてもよい。さらに、温度センサは、内釜2に設けられる以外に、撹拌装置(たとえば撹拌軸)に設けられてもよい。
【0038】
制御手段は、前記各センサ46〜48の検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段4〜8などを制御する制御器(図示省略)である。具体的には、内釜2や撹拌軸を回転させる駆動装置、真空ポンプ31、給蒸遮断弁14、ジャケット圧制御弁16、連通切替弁21、タンク給蒸弁24、排出弁25、第一真空弁28、ポンプ遮断弁30A、第二真空弁33、熱交給水弁36、封水給水弁38、給気弁41、排気側熱交排水弁42B、洗浄弁45の他、第一圧力センサ46、第二圧力センサ47、温度センサおよびドレンセンサ48などは、制御器に接続される。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、内釜2内の食品の加熱調理運転と、第一排気路27や内釜2内の洗浄殺菌運転とを実行可能とされる。以下、各運転内容の具体例について説明する。
【0039】
≪加熱調理運転≫
加熱調理運転では、空気排除工程と加熱工程とを順次に実行する。内釜2内への食品の投入は、加熱調理運転の開始前、または遅くとも加熱工程の開始までになされる。
【0040】
空気排除工程では、減圧手段6により、ジャケット3内から空気を排除する。具体的には、給蒸遮断弁14を閉じる一方、ポンプ遮断弁30A、第二真空弁33およびジャケット圧制御弁16を開けた状態で、減圧手段6を作動(つまり熱交換器29に通水すると共に真空ポンプ31を作動)させて、ジャケット3内の気体を外部へ吸引排出する。なお、排出弁25、第一真空弁28、給気弁41、排気側熱交排水弁42Bおよび洗浄弁45は閉じられており、連通切替弁21(および/またはタンク給蒸弁24)は、開けられている。所定圧力(または所定時間)までジャケット3内を減圧した後、第二真空弁33を閉じると共に減圧手段6を停止して、次工程へ移行する。但し、空気排除工程の内容は、これに限らず、たとえば、減圧手段6によるジャケット3内の減圧と、給蒸手段4によるジャケット3内への給蒸とを、所定に繰り返してもよい。
【0041】
加熱工程は、給蒸遮断弁14を開けてジャケット3内へ給蒸し、ジャケット3内を設定加熱圧力(ジャケット3内は飽和蒸気で満たされるので設定加熱温度ということもできる)にした後、その状態を保つことで、内釜2内の食品を加熱する。たとえば、第二圧力センサ47の検出圧力を設定加熱圧力(食品の加熱目標温度を飽和温度とする圧力)に維持するように、ジャケット圧制御弁16の開閉または開度を調整すればよい。この際、ジャケット3内を大気圧未満の圧力として、内釜2内の食品を100℃未満の比較的低温(たとえば60℃以上100℃未満)で加熱することもできる。加熱工程では、次に述べる場合を除き、連通切替弁21およびタンク給蒸弁24は閉じられた状態に維持される。
【0042】
加熱調理運転中(特に加熱工程中)、ジャケット3からは、所定のタイミング(たとえば定期的)に、ドレンの排出が図られる。ジャケット3からドレンを排出するには、タンク給蒸弁24を閉じた状態で、連通切替弁21を所定時間、開ければよい。それにより、ジャケット3内のドレンは、ドレンタンク17へ排出される。その後、連通切替弁21を閉じる一方、タンク給蒸弁24を開けることで、大気圧よりも高圧の蒸気により、ドレンタンク17内のドレンを、スチームトラップ22を介して外部へ排出することができる。タンク給蒸弁24の開放から所定時間経過するか、ドレンセンサ48の検出温度が所定以上になる(好ましくは所定温度以上を第一規定時間継続後にさらに第二規定時間経過する)と、ドレンタンク17からドレンが排出されたとして、タンク給蒸弁24を閉じる。以後、同様に、たとえば定期的に、ジャケット3からドレンタンク17を介して、ドレンの排出を図ればよい。
【0043】
ジャケット3内へ給蒸して食品を加熱中、内釜2内を真空下に保持することができる。具体的には、内釜2の蓋材11を閉じた状態で、第一真空弁28を開けて、減圧手段6により内釜2内を減圧すればよい。また、食品の加熱中、撹拌装置により、食品の撹拌を図ることもできる。
【0044】
所定の終了条件を満たすと、ジャケット3内への給蒸を停止すると共に、内釜2内の減圧を停止する。具体的には、給蒸遮断弁14および第一真空弁28を閉じると共に、減圧手段6を停止する。その後、給気弁41を開けて、内釜2内を大気圧まで復圧した状態で、蓋材11を開ければよい。その状態では、内釜2を回転させて開口部を下方へ向けることができるので、内釜2内からの食品の排出を容易に行うことができる。
【0045】
≪洗浄殺菌運転≫
洗浄殺菌運転は、毎回または一日の加熱調理運転の終了後や、定期的なメンテナンス時に、内釜2内に食品がない状態で実施される。洗浄殺菌運転の前には、所望により、内釜2内や撹拌装置を、軽く水洗いするか、目立った固形物や汚れを除去しておくのがよい。また、本実施例のように、洗浄流体が蒸気の場合、図示しない弁により、熱交換器29内から冷却水を抜いておいてもよい。そして、ユーザが制御器に運転開始を指示することで、洗浄殺菌運転が開始される。
【0046】
洗浄殺菌運転では、内釜2の蓋材11を閉じた状態で、減圧手段6により内釜2内を減圧後、洗浄流体供給手段8により第一排気路27を介して内釜2内に給蒸して、内釜2内と、内釜2からポンプ遮断弁30Aまでの第一排気路27とを洗浄または殺菌する。具体的には、次のとおりである。
【0047】
まず、給気弁41、洗浄弁45および排気側熱交排水弁42Bを閉じると共に第一真空弁28およびポンプ遮断弁30Aを開けた状態で、減圧手段6を作動(つまり熱交換器29に通水すると共に真空ポンプ31を作動)させて、内釜2内を所定圧力(たとえば−0.9kgf/cm
2)まで減圧する。その後、ポンプ遮断弁30Aを閉じると共に減圧手段6を停止した状態で、洗浄弁45を開けることで、第二給蒸路44からの蒸気を、熱交換器29を介して内釜2内へ供給する。そして、第一圧力センサ46または温度センサの検出値に基づき、洗浄弁45の開閉を制御するか、洗浄弁45を開けたまま第一真空弁28の開閉または開度を調整する。これにより、内釜2内を設定圧力または設定温度で設定時間保持して、内釜2内と、内釜2からポンプ遮断弁30Aまでの第一排気路27とを洗浄または殺菌することができる。
【0048】
なお、設定圧力は、大気圧未満の圧力(たとえば−0.2kgf/cm
2)とされ、内釜2内は100℃未満で加熱される。そして、その温度に応じて時間を設定することで、所望の殺菌を図ることができる。所望の洗浄および殺菌の終了後、洗浄弁45を閉じる一方、排気側熱交排水弁42Bを開けて、第一排気路27内の高温凝縮水を排出する。この際、第一真空弁28および給気弁41を開けておくことで、内釜2を介して外気を導入しつつ、熱交換器29などからの排水を容易に行うことができる。その後、給気弁41および排気側熱交排水弁42Bを閉じる一方、ポンプ遮断弁30Aを開けた状態で、減圧手段6により内釜2内の蒸気を排出した後、減圧手段6を停止して給気弁41を開けて、内釜2内を大気圧まで復圧する。
【0049】
このように、洗浄殺菌運転では、減圧手段6による減圧工程と、洗浄流体供給手段8による給蒸工程と、圧力または温度の保持工程とを順次に実行した後、熱交換器29からの排水工程と、減圧手段6による減圧を用いた湯気取り工程とを実行する。但し、これら一連の工程を複数回繰り返してもよい。
【0050】
ところで、蒸気釜1が撹拌装置を備える場合、内釜2や第一排気路27の洗浄または殺菌中、撹拌装置を作動させておくのがよい。これにより、撹拌装置の各部品や、撹拌軸の軸シール部についても、洗浄または殺菌を図ることができる。また、洗浄殺菌運転では、加熱調理運転と同様にして、ジャケット3内へ給蒸して、ジャケット3により内釜2内を設定温度に加熱してもよいし、そのような加熱を行わなくてもよい。
【0051】
次に、本実施例の蒸気釜1の変形例について説明する。
前記実施例では、洗浄流体として、蒸気を用いたが、本変形例では、液体が用いられる。この液体は、たとえば、水、温水、または洗浄液とされる。図示例の場合、二点鎖線で示すように、熱交換器29とポンプ遮断弁30Aとの間の第一排気路27に、液体タンク49からの液体が通される洗浄流体路50が接続される。そして、その洗浄流体路に、洗浄弁45Aが設けられる。但し、液体タンク49からの液体ではなく、給水路からの水、または温水路からの温水を、第一排気路27に供給可能としてもよい。
【0052】
なお、前記実施例で用いた第二給蒸路44および排気側熱交排水路42Aは、設置を省略することができるが、給水に蒸気を混入して温水とする場合には、第二給蒸路44を利用することもできる。また、洗浄流体として、蒸気と液体とを選択的に利用可能に、第二給蒸路44などを設置したままとしてもよい。
【0053】
本変形例の場合、洗浄殺菌運転が、前記実施例と異なる。本変形例では、洗浄殺菌運転において、減圧手段6により内釜2内を所定圧力(たとえば−0.9kgf/cm
2)まで減圧した後、減圧手段6を停止すると共にポンプ遮断弁30Aを閉じた状態で、洗浄弁45Aを開けて、熱交換器29を介して内釜2内へ液体を供給する。その際、液体タンク49を大気圧下に開放しておけば、洗浄弁45Aを開けることで、液体タンク49内の液体が内釜2内へ吸引される。液体として、常温水または温水を供給する場合、予め内釜2内に洗剤を投入しておけば、内釜2内で洗浄液とすることもできる。
【0054】
内釜2内への液体の供給は、内釜2内が設定液位になるまでなされる。この液位は、内釜2内の圧力または温度で検知することができる。たとえば、第一圧力センサ46の検出圧力が規定圧力(たとえば−0.1kgf/cm
2)になると、内釜2内に設定液位まで水が貯留されたとして、洗浄弁45Aを閉める。内釜2内への液体の供給操作により、内釜2からポンプ遮断弁30Aまでの第一排気路27に液体が通されるので、この第一排気路27の洗浄または殺菌を図ることができる。
【0055】
内釜2内に設定液位まで液体を貯留した状態で、貯留液の設定温度(たとえば90℃)までの加熱と、内釜2内の減圧による貯留液の沸騰とを、設定回数繰り返して、内釜2内を洗浄または殺菌する。貯留液の加熱は、前記加熱工程と同様に、給蒸遮断弁14を開けて、ジャケット3内に蒸気を供給すればよい。設定温度まで加熱後、給蒸遮断弁14(またはジャケット圧制御弁16)を閉じた状態で、第一真空弁28を開けて、減圧手段6により、内釜2内を一気に減圧する。それにより、内釜2内の貯留液は、減圧沸騰し、内釜2内や撹拌装置の洗浄または殺菌が図られる。減圧沸騰を利用することで、内釜2内を加圧させるおそれはない。所定まで減圧すると、液温の低下により沸騰が止むので、減圧を停止した状態で、貯留液を再加熱して、同様の操作を設定回数繰り返せばよい。
【0056】
いずれにしても、最終的には、減圧手段6および給蒸手段4を停止した状態で、復圧手段7により内釜2内を大気圧まで復圧する。そして、蓋材11を開けて、内釜2を傾けて内釜2から排水すればよい。その後、所望により、洗浄殺菌運転と同様の操作で、内釜2内などの濯ぎを図ってもよい。その他の構成および制御は、前記実施例と同様のため、説明を省略する。
【0057】
本発明の蒸気釜1は、前記実施例の構成(制御を含む)に限らず適宜変更可能である。特に、下記(a)〜(d)の構成を備えるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0058】
(a)上部開口が蓋材11で気密に閉じられる内釜2と、この内釜2の外側に設けられるジャケット3と、内釜2内の気体を外部へ吸引排出する第一排気路27と、ジャケット3内へ蒸気を供給する第一給蒸路13と、制御器とを備える。
(b)内釜2からの第一排気路27には、熱交換器29とポンプ遮断弁30Aと真空ポンプ31とが順に設けられる。
(c)熱交換器29とポンプ遮断弁30Aとの間の第一排気路27に、洗浄流体路44(および/または50)が接続される。
(d)真空ポンプ31を停止すると共にポンプ遮断弁30Aが閉じられた状態で、制御器は、洗浄流体路44から第一排気路27を介して内釜2内へ洗浄流体を供給して、内釜2内と、内釜2からポンプ遮断弁30Aまでの第一排気路27とを洗浄または殺菌する。
【0059】
たとえば、前記実施例(および変形例(以下同様))では、熱交換器29と真空ポンプ31との間に、ポンプ遮断弁30Aと逆止弁30とを設けたが、場合により、いずれか一方を省略してもよい。
【0060】
また、前記実施例では、ドレンタンク17からのドレン排出路19には、スチームトラップ22を設けたが、スチームトラップ22の手前に開閉弁を設けたり、スチームトラップ22の代わりに開閉弁を設けたり、スチームトラップ22の設置を省略したりしてもよい。開閉弁を設ける場合、その開閉弁の開閉は、タンク給蒸弁24の開閉と連動するよう制御される。
【0061】
また、前記実施例において、撹拌軸の軸シール部の外側から内側(内釜内)へ向けて、蒸気を供給可能に構成してもよい。その場合、洗浄殺菌運転において、たとえばジャケット3内へ蒸気を供給するタイミング付近で、軸シール部にも蒸気を吹き込んで、軸シール部の洗浄殺菌も可能となる。
【0062】
さらに、前記実施例では、蒸気釜1は、食品の撹拌装置を備える蒸気ニーダとされたが、撹拌装置の設置を省略することもできる。その場合でも、内釜2内と、内釜2から逆止弁30までの第一排気路27とを洗浄または殺菌することができる。